お城の天守閣に1泊100万円で泊れるとしたらどっすか。
なんか「城泊(しろはく)」とか称するプロジェクトらしいんですが。
何丘的には……正直、オワッテルかなと。
ちょい他の選択肢と比べたりしながら検討してみる。
日本の「城泊」(大洲城、平戸城)
先日こんなニュースが。
要するに、愛媛の大洲城が宿泊施設としてオープンするらしい。
今月23日に最初のお客を迎える。
宿泊は1日1組限定、つまり貸切利用。
宿泊費100万円~とのことだ。
……いや待て。
ひゃ、ひゃくまんえん!?
建物そのものに歴史は無い
大洲城は鎌倉時代末期からの歴史があり、明治時代に取り壊されましたが、平成16年に復元された木造の天守は2階までが吹き抜けの珍しい構造となっていて……
NHK NEWS WEB
平成16年に復元てことは、建物自体はメチャ築浅。
歴史的建造物でも何でもない、言ってしまえば、ただお城の形した現代の建物。
それで一泊100万……?
いろいろ「特典」ついてるが……
まぁいろいろ特典がついてはいるらしい。
鉄砲隊による歓迎や伝統芸能の鑑賞、豪華な食事などVIP待遇が受けられ……
朝日新聞DIGITAL
売りは、城主気分を味わえる体験型イベント。……白馬に乗って入城……大洲藩鉄砲隊による祝砲などで歓迎……地元の保存会が市の伝統芸能「河辺鎮縄神楽(しめかぐら)」を披露……伊予牛や大洲米など地元食材を使ったディナー……
朝日新聞DIGITAL
……え、終わり?
待て待て……白馬に乗って入場? それってごめんVIP待遇どころか辱しめ……そのサマをそこらの観光客がおもしろがって撮るんでしょ?
(追記:大洲城公式によると、正しくは「宿泊者には馬で入城する城主をサポートする影武者の役割を体験していただけます」らしい。う~~ん……それって楽しいの……?)
あと、地元の保存会による伝統芸能とか言うけど、それ多分、地元の祭会館とかで土日に無料で観られるやつ……。
それから伊予牛や大洲米とかいうけど、第一ごめん聞いたことないし、第二に、別にまぁ他所でも食えるよね……。
もちろん、その空間で観てこそ・食べてこそ、ということはある。体験は要素の和でなく積である、云々。でもそれで100万……いくかなぁ……?
狙いはガイジン
朝日の同じ記事には次のようにある。
政府は「城泊」をインバウンド(外国人旅行客)向けに各地で展開するよう呼びかける。長崎県の平戸城でも来夏(引用者注:今夏)から城泊が始まる予定。
朝日新聞DIGITAL
「城は外国人に訴求力がある。城下町全体の活性化を図る大洲城が城泊の先進事例になることを期待したい」
朝日新聞DIGITAL
なるほどガイジン向けの商売ね。
でも、第一に、今は防疫鎖国で外人来れないし、
第二に、仮に外国人が続々泊ってくれて、ビジネスとして成功したとしても、なんか人の無垢に乗じて大金ふんだくるようで悪いよ。
何しろ高すぎる。あり得ない高さだ。好きじゃない。
こんなインバウンド狙いは間違ってると思う。こういうのを殿様商売というんじゃないのかい。
ヨーロッパの古城に泊る
参考事例として、外国における「城泊」を見てみたい。
ヨーロッパの古いお城とかけっこう宿泊できたりするやん。何丘かてスペインで泊ったことあるよ。
ま、具体例を見ていこう。
このJHCとかいう旅行会社のサイトに泊れるお城40個くらいまとまっている。
デスクリモン城/フランス
フランスの「デスクリモン城」。
16世紀の古城。パリから1時間弱だそうだ。広大な森に囲まれてるそうだ。
お値段は1泊(朝食付き)、2万6000円。
アソール宮/イギリス
イギリスの「アソール宮」。
19世紀。館内プールあり。ゴルフコース併設。
お値段は1泊(朝食付き)、1万8100円。
オビドス城/ポルトガル
ポルトガルの「オビドス城」。
14世紀の城塞。丘の上、石造り。
お値段は1泊(朝食付き)、2万2300円。
断然こっちのがいいと思うんですが
ほんの若干の例を見てきたわけだが、どっすか。
何丘は、すんません、大洲城より断然こっちっすわ。
どうせならモノホン泊りたいっすわ。築15年の「昔っぽい」建物より、築150年300年600年の、掛け値なし「昔の」建物に。
……大洲城の50分の1の値段で。
「貸切」できるとこもある
中には大洲城のように貸切利用できる欧州古城もあるようだ。
たとえば VOGUEのこの記事 にまとまってる。
小体・瀟洒なお城を数十万~百数十万円で「一週間貸切」できるようだ。
偽の城ならディズニーでええやん
どうせ歴史の気息の通わない空虚な箱、「城っぽい建物」なら、いっそディズニーランドホテルに泊まってはどうだろう。
一番高い「ウォルト・ディズニー・スイート」が一泊50万円だそうだ。
大洲城とウォルト・ディズニー・スイート、どちらがいい夢見られるかな。
結語
You may say「ハコに泊るんじゃねえ物語の中に眠るんだ、いい夢見れたでしょ、なら100万円払いなさい、だ。何が問題か」
いや、ハコのauthenticityは「いい夢」成立の根本条件だと思うんだけどなあ。
私たち日本人は欧州古城で中世の夢をものの数万で楽しませてもらえる。
でも世界の人たちは日本の城(の形をした平成建築)に一夜宿るのに100万円も費やさねばならない?
おそるべく均衡を失している、と思うのである。