11/08
ウクライナは全国的に暖房シーズンに入っている。まだそこまで寒くはない。東京よりはだいぶ寒いが札幌ほどではない(今のところ)。キエフの10日間予報↓

オデッサ↓

(読み方:左端:11月8日土曜、曇り、最高気温10度、最低気温9度)
露によるウのE網破壊は順調に進んでいる。全土で終日、時間単位の計画停電。少ないところで1日2時間、多いところで8時間の停電。今後これより良くはならない。
ともしび、ぬくもり。にんげんを野生状態と文明状態にわかつもの。それがなくては生きていかれないもの。とりわけ北国の、冬には。
わたくしは、40年の人生で、3度の冬を、ウクライナで過ごしたので、その暗いこと、寒いことを、よく知っており、(同じ暗さ、同じ寒さの、モスクワでも、4度ほど冬を過ごしたが)、この3年は、冬がくるたび、心が痛く、ウクライナ越冬支援に協力をといって、要は、日本の一般市民に募金を呼び掛けるということを、どこぞかに拙文を寄せて載せてもらったり、なんだり、してきたが、年を追うごと尻つぼみになり、昨年は、なんやかややぁやぁ言いはしたが、結局は、私らがウクライナで使っていた発電機(露の攻撃でウが停電しても、それがあれば、少なくとも一軒の家に、灯りが灯る)と同型の発電機が日本円にして9万円で買えることを確認し、その同じ9万円を、発電機一台分のつもりで、UNHCRに寄付した、その個人的な、欺瞞的な、自己満足みたいなことで終わった。赤い羽根募金に100円投じたのと変わらない。今年は? 「日本人ファースト」が幅を利かせる今の日本に、何を訴えることができるか。
イルミネーションの季節だ。三鷹の商店街にもともしびが灯る。なくてもよい光。余計な光。贅沢な光。それがなくても凍えない、それがなくても夜が短い、過ごしやすい東京の冬の、要らない電気。今年限りそれを中止して、余剰のお金をウクライナに送ってあげたら、という論法を、用いて、市役所だの、市長だの、商工会だのにかけあった、成果ゼロ、それが去年。ますます忘れられ関心外へと追いやられつつあるウクライナ。
猫が多い。東京を歩いていても、三鷹くらい田舎でもだ、野良猫を見ることは極端に少ない、だがオデッサにはうじゃうじゃと猫がいる、海辺にもいる、冬の海は寒い、だがもこもこに着込んだおばちゃんとかが、わざわざビーチまで降りてきて、海棲みの、猫たちに、魚のお頭とか、かりかりとか、撒いてやっている。この冬もきっとそうする。猫たちはそうして生きていく。
慈しみ。人間の、慈しむ心。その反対のものの、そのまた反対のもの。私たちはどちらの側にと言うならば大停電のその日にも着込んで頬を赤くして浜へと降りていき猫に餌を撒くものの側に立つべきだ。
その側に立つとは、何をすることであろうか。どのような心の状態で、何を言い、何をすることが、そちらの側に立つ人に相応しいだろうか。
千たび、単純な、暫定的な、回答は……関心を持ち続けること、露を安易に許さぬこと、可能であれば、端的に言って、ウクライナ(と、それを支えるもの)に金銭を送ることだ。
10/18
東部の灰色地帯に二色旗たてた・三色旗たてたの戦いと同時進行でもうひとつ、E戦争、すなはち、エネルギー戦争、あるいは、エンジニア戦争
E戦争は新たなフェーズに入った 露の戦術は、かつての絨毯爆撃から、段階的蚕食へ さらなる冷血主義の深みへ 電気を一部屋一部屋パチンパチンと消していくように 一つのエリアから一つのエリアへと 順繰りウのEシステムを破壊していく 緻密に、組織的に 今はたくさん持ってるドローンをぶんぶん飛ばして よりよく当たるようになったミサイルをつこて
ブラックアウトの基礎戦略:ウのEシステムを2つに切り裂き統合不能に ざっくり言って、ドニエプル左岸と右岸を分断する 「断層」は、イメージ的には、УПによれば、こう走る

3ステップを踏む 第1に、戦線ないし露との国境に近い左岸(東部)側の発電力を徹底的に叩いて根絶やしにする 第2に、右岸(西部)から左岸への電力供給ラインを叩いてずたぼろにする これで電力需給が黒字の西と赤字の東に分断する しまいに第3、西側の発電力を叩く
戦争4年で最悪の冬は22-23年のシーズンだった 22年11月23日のブラックアウト(大停電)では水なし電灯なし暖房なしの状態に1000万市民が陥った(その状態が地域により短くて1昼夜、長くて1週間続いた)
この冬を痛みなしに乗り越えられる確率はゼロである 電力不足は確実に起こる 秋時点で既に全土が緊急停電を経験している スームィおよびチェルニーゴフの両州では計画停電が常態化している 一つの予測によれば「4×2体制」が敷かれる、すなはち、4時間停電が続き、2時間通電し、また4時間停電し、2時間通電…… 最も深刻な電力不足に見舞われる見込みなのは、やはり前線沿い・(露との)国境沿いの諸州である すなはち チェルニーゴフ スームィ ハリコフ ザポロージエ ドニエプロペトロフスク ニコラエフ ヘルソン そしてオデッサ
なぜこうなった ひとつには 露の攻撃の厚みと巧みの向上 膨大なドローンと 精度を増したミサイル
またひとつには ウの防空能力の不足 それをきたしたのは 西側の支援の及び腰もあるが ウの内部統制の問題もあり かつて提唱された3層防御(土嚢と鉄筋・コンクリを複合利用)も所管曖昧で結局未完 西側パートナーから声望高かったウクルエネルゴのクドリツキー社長の解任など人事のごたごた また先立つ24-25冬が比較的穏やかに越せたことによる油断から予見可能だったはずの今冬の再攻撃への備えを怠った、との指摘もあり(最高指導部会合では一体誰が何の担当なんだと毎度ゼレンスキーの怒号が飛ぶとの証言もあり)
露の攻撃をコンサルしてるのは露側の電力技士たちである ウ側の同業の問題点・弱点を知悉してる彼ら エンジニアの戦争とこれを呼ぶ この者たちが大学で電気工学を教わったのは 光を灯すためでなかったのか 敵対者の光を消すためではなかったはずだ
この戦争を実態として担う沢山のプロフェッショナルたち そのそれぞれの人生のうえの学問、恩師、学友、青春 人を殺せと教えしや 人間が人間を殺す 人間が人間の街を壊す、この酷薄・・
10/10
ウクライナは北国である
「黒海沿岸の温暖なビーチリゾート」オデッサの緯度は北海道・宗谷岬と同じ 冬は暗く(日照時間僅少)かつ長い(11-4月) 真冬は日の平均気温が零下10度という日も珍しくない 寒波到来で零下20度ともなると不凍の黒海も水際は氷結する
そんな寒いウクライナでは家に暖房があることは基本的人権である(生存に直結) だので
都市部では、暖房は各戸任せでない、インフラでまかなう、中央でどかっと熱水を作ってパイプラインで各戸に配給する 集合住宅の壁にはこのパイプラインの枝変われしたものが縦横に張り巡らされている それが壁暖房になって冬でも屋内は暖かである それで生きていける
こうした都市インフラはソビエト時代から受け継いだものである キエフもモスクワも同様のシステムを使っている モスクワは素晴らしくよく分かっている キエフがどれだけ寒いかも、それでも冬場キエフで人たちが凍えないのは何ゆえであるかも、裏を返せば、この暖房システムを止めてしまえば、キエフがどのような寒さと闇に閉じ込められるかを
上記セントラルヒーティングは電力に依存している 熱水は電力で作る 電力が止まればウクライナの冬を明るくするもの(光)と暖かくするもの(熱)を同時に奪える モスクワはそれを素晴らしくよくわかっている
露はまた開始した 冬のとば口 ウクライナの電力網に対する攻撃を 変電所など枢要な電力施設をミサイルとドローンで破壊して回る 連日報じられている 昨日はキエフでドニエプル左岸が大停電、きょうはオデッサ州44市村が停電・・
このかん報じられたところでは、露はミサイルとドローンを用いた複合攻撃に戦術的イノベーションを起こし(弾道弾2種(イスカンデルM、キンジャル)の機動性向上でPatriotすり抜け)、ウの防空体制はいまだこれにキャッチアップできないでいる ずっと見ている私としても、このごろの露の攻撃成功率、つまりはウの電力網の被害発生率とその規模は印象的 また被弾を許したのか、それもそんな規模でか、と驚かされる
ながい冬が待つ
キエフの病院学校等では既に中央暖房が始まっている
今はまだ大丈夫だ、キエフの日中最高気温は10度前後で推移(10日間予報10/11~20日)
だがこれから長い冬がくる
繰り返す、モスクワは素晴らしくよく分かっている ウクライナの冬の寒さ、暗さ、ウクライナがどのような防寒体制を敷いているかを だって自分たちだって同じような緯度で、同じような寒さと暗さで、おんなじ暖房システムを使っているのだもの 自分がされたらいやだと思うことを相手に対してやる いや、これは言葉がやさしすぎた 「こうされたら自分が死ぬと知っていることを相手に対してする」
兄弟殺し、とこれを言う 露がウの電力網を破壊する 冬を兵器に使った虐殺 去年も一昨年もその前もやろうとしたがうまくいかなかった 今年はそれが少し巧くなった 戦争4度目の冬
