もう一周する。マラソン。
これから一週間、毎日この記事を更新する。毎日何かしら、読者にとっての発見があるように努力する。完走のあかつき、読者は、ウクライナ越冬支援の募金に協力してほしい。
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2/18(7日目)
かなり寒い日が続いている。キエフ10日予報↓

・和平協議
17-18の両日、ウ米露3者協議がジュネーヴ(スイス)で行われた。政治部会と軍事部会の二手で開催、後者には一定の進展とか(停戦が成立した後の停戦遵守状況の監視に米が参加することの確約が得られた由、УП)、だが前者は十分な成果が得られたとは言い難いとのこと(by交渉団から報告うけたゼレンスキー)、要は領土問題について妥結に近づけなかった。露交渉団を率いたメヂンスキーの強硬な立場で話が行き詰ったとの内部報告もあり(УП、УП)。ゼレはかねて領土問題(つまりはD州維持地からのウ軍の撤兵)は首脳レベルでのみ解決可能と主張、今度のジュネーヴ交渉でも自分とプーチンとの会談に道をつけろとウ交渉団に指示していた由(УП)、だがその首脳会談についても進展は得られなかった。УП
なお今回は、ウ米露3者のほか、ウ露2者の直接協議や、また一部欧州諸国の代表者が参加する時間もあったらしい。欧州の関与がこれから増えてくるのだろうか(必ずしもそれは交渉が加速することを意味しない)
・不一致
気になる報告、英The Economistによれば、和平交渉を担うウ代表団は必ずしも一枚岩でない、実質的な交渉団長であるブダーノフ大統領府長官(前情報総局長)を支持する一派すなわち時機を逸せばたださえ狭い交渉の窓がすっかり閉まってしまうのではないかとの危惧から露との早期ディールを是とする現実主義派のほか、前交渉団長のイェルマーク(前大統領府長官→更迭)のシンパつまり非妥協的原理主義勢力もなお残存している由。УП
・不協和
かつて「2人のЗ(ぜー)」としてゼレンスキーと並び称されたザルージヌィ(前ウ軍総司令官、現駐英大使)がAP通信のインタビューで政権批判ととれる発言。現在のウ軍の窮状の起点となった23年夏季反転攻勢の失敗は自身の作戦の実現に必要なリソースをゼレンスキーとその一党が割いてくれなかったからである、と。ザル自身の当初の考えは一点突破でザポロージエ州の一部を解放しザポロージエ原発を奪還して南進、アゾフ海へ到達して露の陸上回廊を分断しクリミアを孤立させるというもの、それには極大の戦力集中と敵の意表をつく電撃性が不可欠のところ、結果的には戦力を広域に分散させて突破力が失われた、その責めは政治部の不決断にあると。УП
夢のような話だ。本当に。全てが違っていただろう。ザポロージエ原発がウ側にあれば今のような冬季のエネルギー危機もあり得なかった。全てが、今とは全然違っていた。だが、自分はこのザルージヌィという人物には一定の反感を持っている。後からなら何とでも言えるし、今さらそんなこと言いっこなしだ、総司令官の側に作戦の失敗の責任がないなど言える筈がなかろう。軍人から外交官へ転身したこの人物は世論調査で一貫してゼレンスキーを凌ぐ高い支持を集め、大統領選挙で決選投票となればゼレンスキーを下すとされる(人気順でいうと①ザルージヌィ②ブダーノフ③ゼレンスキー)。国民は今度の戦争でウ軍が強くまたウ軍に明るい展望があった時代(22年中。キエフ防衛、ヘルソン&ハリコフ解放)の幻影を見ていると思う。ザルージヌィがいた頃はよかった、ザルージヌィが帰ってくればウにまた明るい展望が開ける、と。そんなうまい話があるかと思う。
2/17(6日目)
・ISW(米シンクタンク戦争研究所)によればウ軍は2月11-15日の5日間で領土201平方kmを奪還した。23年6月反攻以来最速最大の奪還で、計算上、露軍が昨年12月ひと月かけて占領した面積に相当するという。例のStarlink遮断による露軍の混乱に乗じての戦果。УП
・ミュンヘン安保会議の総括:ひと月前のダヴォス(世界経済フォーラム)で中心議題がグリーンランドに持っていかれたのと対照的に、今回は明確にウクライナが主題。全体の論調として、米の変節受け欧州は自衛力の強化の要に覚醒、その文脈で「(ウクライナに欧州が必要である以上に)欧州にはウクライナが必要」との認識が深まり、あらゆるセッションにウクライナ代表が迎え入れられウの貴重な経験に各国が傾聴。仏マクロン「ウ戦争の帰趨は欧州の存亡に関わる重大事ゆえ対ウ支援が弱まることはあり得ない、時間は露に味方しない」。ゼレンスキーもダヴォスで衆目を驚かせた欧州批判から一転、自身の演説に30回のThank youを散りばめ融和路線。УП
・アレクセイ・ナヴァーリヌィ獄死(毒殺)2周年。命日の16日、モスクワ市内の墓所に弔問の列。沿道に警察が並んで参列者に対しカメラを構えて無言の脅迫。だが誰も顔隠さない。「彼は恐れなかった、自分も恐れない」(→「黒い帽子」の演説)。前日の降雪で足場の悪いなか、また零下13度の寒さをおして、参列者は引きも切らず、英独ポ大使館職員の姿も。アレクセイの母御もくる。十字架の一端に触れて落涙。
会衆はソビエトアニメ「ブレーメンの音楽隊」の夜明けの歌を合唱した。
Ночь пройдет, наступит утро ясное,(夜は過ぎ、明るい朝がくる)
Знаю, счастье нас с тобой ждет,(ぼくときみとを幸いが待つ)
Ночь пройдет, пройдет пора ненастная,(夜は過ぎ、暗いときは過ぎて)
Солнце взойдет.(日がのぼる。)
※おまけ:昨日紹介したナヴァーリヌィの演説(2018、テレグラム規制反対集会)は以前ロシア語教室の教材にしたことがあって、そのとき作った駄訳があるので載せておく。動画と合わせて読み進めていけば大体わかると思う
よう、ナヴァーリヌィだ! デジタル・レジスタンス(←抗議行動の標語)とはよく言ったもの、いい名をつけたなパーシャ・ドゥーロフ(←テレグラム創始者)、黙ってやられっぱなしにならない、歯向かう、あらがう、そうでなくちゃな。抗おうぜおい!(おう!)
ひとつのフレーズがずーっと頭で鳴っている。この国の現状について読むたび聞くたび、毎日毎日、朝から晩まで、テレビをつける、ニュースを見る、ひとつのフレーズが頭にこだます、それは…(会衆:「くたばれプーチン!」)←それもある! それが題2のフレーズだ! だが第1のフレーズはこうだ。俺は・忍従・しない。俺は黙って耐え忍びはしない!
テレビをつける。ニュースがやってる。どっかの誰か脂ぎったでかい顔した奴らが突然なんだか悟ったらしい、「そうだ、国民のテレグラム上のやりとりは、全部当局が読んどくべきだ」。これがお国の方針というわけだ。「ご覧の通り、私たち権力者には、警察を動員する力がある、すなわち、皆さんの通信内容を、悉皆知っとく権利がある!」←皆はこれを我慢するんですか?(しない!)俺は我慢しない!
またどっかの誰かの話だ、そいつの知り合いかと言われれば否、俺はそいつを知らん、ニュースで言ってた、そいつはSNSで「いいね」を押して、それだけの理由で投獄されちまったんだそうだ。知らない、俺は知らない、そいつの行状なんて知る由もない、そいつの家族が裁判所で泣いてる姿を拝むこともない、俺は自宅でただニュースを見てる、だが俺は言う。俺はこんなこと我慢しない。皆さんは我慢するのか?(否!)
ここはモスクワ、華の都だ、豊かな街だ、そうだろう? でもな、俺は知ってんだ、この国は極貧だ。正直、底辺の国だ。将来の希望なんて誰も持てやしない。そんな国で、しかし近年、国家の関与なしに、助成金も優遇措置もなしに、自力で大成したものがたった一つある。それがインターネットだ、そうだろ?(そうだ!)
そこへ連中がやって来て言う。「君たちはどうもそのインターネットとやらで素行が不良なようだ、インターネットは召し上げることとする」。俺はこんなこと我慢しない。皆さんは我慢するのか?(否!)
こんな横暴と極貧の一方で、役人どもの給料は一年で+128%の爆上がりだ。なんでだと思う? 言うまでもない、泥棒してるからだよ。連中は泥棒なんだ、ペテン師なんだ。ペテン師(泥棒!)ペテン師(泥棒!)ペテン師(泥棒!)
俺は忍従しない、愛する自分の国がペテン師と泥棒どもに支配されているなんて耐えられない。だから俺は抵抗するんだ。だから俺たちは抵抗するんだ、そうだろ?(そうだ!)毎日毎日、朝起きて、顔洗って、飯食って、いや朝飯を食うより前に、考えるんだ――今日自分に何ができるだろう、何をすれば政権には具合が悪くなり、国民には具合が良くなるか。そうだろう?(そうだ!)それが行動指針であるべきだ。毎日毎日、何かをするんだ、奴らの具合が悪くなり、国民の具合が良くなるように。何かしろ! この政権を弱体化させるために! だって、これはもう、「権威主義的民主主義」 ですらない。君主制だ。そうだろ?(そうだ!)
奴らは権力を完全に牛耳っている。奴らの息子や孫たちさえ要所に入り込んでいる。世襲の君主制だ。奴らは決めたらしい、自分の次には自分のジュニアたちが国民を支配するのだと。皆さんはこれを受け入れるのか?(否!)俺は忍従する気はない! 一秒たりとも忘れるものか、忍従などしてたまるかと!
テレビをつける。テレビが俺に語り掛けてくる。「アレクセイ、お前知ってるか、いま我が国は、君主制なんだ。ロシアを統治してるのは、ツァーリ(皇帝)だ」。俺は画面に向かって言う。ツァーリよ、失せろ!(会衆の怒号:ツァーリよ失せろ!ツァーリよ失せろ!……)
さて、盛り上がってきたところで、そろそろ舞台を降りようと思う。だが、警察の皆さんが厳しい目でこちらを見ている。というのも、会場に到着したとき、その後も2度までも、紙とカメラを携えた人たちに、こう言われた。「アレクセイ、何があっても絶対に、5月5日のデモの呼びかけをしてはならんぞ」(喝采)
服従しないわけにはいかない! だって肩章をつけた人たちじゃないか、見てくれよ、金色の、カッコいい肩章だ。おまわりさんたちがまじめな顔して言うことだ。だからまずは、皆さんにお聞きしたい。皆さんは5月5日、デモに行くのか?(会衆:行く!)5月5日、場所はどこだ?(トヴェルスカヤ通り!)なに通りですって?(トヴェルスカヤ!)いやいや、行かないでくれ。
だって皆さんがデモに行ったら権力者たちは、こんなにたくさんの人が汚職に反対しているのかと、驚いてしまうじゃないか。行かないでくれ! もし皆さんがデモに行ったら連中はびっくりしてしまう、あんなに禁止したのに、それでも人たちは街路へ出て、検閲や規制に反対の意を表明するのかと。行くのか?(会衆:行く!)(ナヴァーリヌィ、警察の方を見て)説得してるんですけどねえ、この人たち聞こうとしないんですよ。すいません、もう一度やってみますね。(また聴衆に向き直り)頼むから、行かないでくれ!(行く!)「あの方はドミ公なんかじゃありません」なんて叫ばないでくれ!(「あの方はドミ公なんかじゃない!」「あの方はドミ公なんかじゃない!」……)(←当時首相のドミートリイ・メドヴェージェフの汚職を暴いた自身の動画「あの方はドミ公じゃない」より)
プーチンが皆さんについて言ったことは本当だった、皆さんは本当に制御不能で非建設的な反体制派だ。デモには行かないでくれ! ツァーリはそれをお望みでない! 街路で皆さんを見たらガッカリなさる。行くのか?(行くとも!)行くのか?(行く!)5月5日、トヴェルスカヤ通り、14時! ロシアは自由な国になる! ツァーリよ、失せろ!
2/16(5日目)
今日は「3人のイノベーターとウ戦争」というテーマにて
・イーロン・マスク
やや旧い話題だが、マスクがウ軍にだけ使わせている筈の衛星通信システムStarlinkに露軍がただ乗りしている状況があり、これにFedorov国防相とその副官”Flash”が声をあげるとマスクが機敏に反応して露側のStarlink使用を遮断した(2/5)。以降同システムはウクライナ国籍者の本人確認済み端末でのみ使用可能な状態に。露軍は通信手段を失い前線における連携を大いに乱した。
今回は明確にウ側の味方をしてくれた。この人物をどう捉えたらいいか分からない。独自の戦争観でStarlinkの蛇口をきゅっきゅ開閉して神のごとくに戯れている(ウ側のStarlink使用を制限して露への攻撃を妨害したこともあった)。禍王とデキてた時分は悪魔にしか見えなかった。いま何考えてる?
なお露側は捕虜にとったウ兵の家族を脅してStarlink登録させウ攻撃に使う外法に走っている由(УП)。連中の考えそうなこと。
・パーヴェル・ドゥーロフ
テレグラムというSNS兼メッセンジャー(XとLINEを合わせたようなもの)があり露やウの人はよく使う。その創始者がドゥーロフというロシア人である。この人物もどう捉えたらいいか分からない。通信の匿名性や言論の自由の擁護者というポジショニングで表向き露政権とべったりではないが密通説あり。傍証1:政権と敵対して国外流亡してたはずが謎に頻回の本国渡航記録が独立系メディアの調査で発覚。傍証2:発信が(しばしば錯誤に基づく)西側批判に偏ってる。露の言論状況は棚に上げつつ、西欧当局による極右政党の扇動取り締まりを言論封殺呼ばわりしたり。傍証3:ウ情報長官時代のキリル・ブダーノフは「テレグラムの通信は敵方にだだ洩れの可能性があるから自分は使わないし皆も使うべきでない」と語っていた。
前置きが長くなった。露でそのテレグラムがBANされかかっている。露人は生活に必須のコミュニケーションツールを失う。露軍の前線における連携にも一定の影響が出る可能性がある。代替品として、露国営SNS「Max」が提案されている(嘔吐!このネーミングセンス!)。露政権としては国民みんなに「Max」を使ってもらいたい。露では既にYouTubeとFacebookとInstagramがほぼBANされてるが、政権の目指すところはひとつ、情報の全体主義的管理統制である。①不都合なコンテンツが国民の目に触れないようにする。②国民の通信を網羅的に傍受する。
で、この状況に、パーヴェル・ドゥーロフ、さすがに明確に、露政権を批判した。検閲制限ばっかすんなと。テレグラムは通信の秘密と言論の自由の味方だよと。中韓日とか特定SNSが一人勝ちしてる市場はあるけどいずれも競争の結果自然にそうなったのであって、国営SNSへの強制移住が成功した例なんかどこにもないよと。
・ヴィタリック・ブテリン
イーサリアム作った人がロシア人だとは知らなかった。イーサリアムを作った人というのがいるのも知らなかった。イーサリアムが何なのかもよく分かってはいない。ビットコインに次ぐ仮想通貨の二番手、という程度の認識。
そのブテリン氏が、2/24開戦4周年を前に、ウ戦争と露の将来をめぐる私見を開陳した。X上に露語で長文の投稿。全文は読んでないが(Xはやらない・見ないを主義としてるので)、報道で内容を知って二度びっくりした。①露の侵略の犯罪性、ウクライナ支援の必要性を力説していた。②露の将来について、テクノロジストらしい大変興味深いヴィジョンを提示していた。
ここでMeduzaの抜粋記事を抄訳しようと思ったが、
日本語のこの記事によくまとまっているので、こちらをお読みいただければ足りるわ。↓
https://jp.beincrypto.com/vitalik-buterin-decentralized-governance-russia-ukraine/
(分散型ガバナンス、クォドラティック投票、デジタル・デモクラシー、これらが何を意味するのか、全然しらない。だが、「目指すべきは、国民生活の向上が目的なら最大限に強力であり、逆に少数派の抑圧や近隣国への侵略が目的となった場合には最大限にまとまりがなく脆弱であるような社会の構築だ」←こんなことが、テクノロジーによって可能になるのか?)
私はこの人物(ブテリン氏)に好感をもった。この状況で露の輝かしい未来なんぞに思いを巡らすこと自体が犯罪的なのではないか、短期的には何しろウクライナを支えることだけ考えるべきだ、との立場には完全に共感・同意。だがウや欧、また世界にとっての究極の安全保障は、露自身が無害な国へと変貌することだ、というのも、全く真。
(番外)アレクセイ・ナヴァーリヌィ
ナヴァーリヌィが独房で死んで2年だそうだ。ちょうど検死の結果で毒殺であったことが(2年越しに)判明した。南アフリカのなんとかいう蛙の毒だそうだ。
2018年の一番好きなナヴァーリヌィ演説を見返してまた涙ぐんでしまった。ここにいるこの人たちいまいずこ。生前一度もナヴァーリヌィに期待したことがなかった。だがいま完全に烏合の衆と化している露反体制派を見るにつけ、失ったものの大きさを思う。このときの集会はちょうどテレグラムBANの動きへの抗議であった。露語でちんぷんかんぷんだと思うが、見て何か感ずるものがあると思う、動画を載せておく。アジテーターとしてその能力の絶頂を迎えたナヴァーリヌィの入神のステージング。
2/15(4)
東京は春の陽気だった。半袖でいいくらいだった。もう梅も株によって満開に近い。Lの保育園の皆で近所のコミセンに集まった。これから小学校でばらばらになってしまうので繋がりを保つためにもそういうことをした方がいいと思って自分が企画した。子12人とその親たちで40人くらいになっただろうか。皆でご飯食べてドッジボールしたり即席お芝居したり、とても楽しかった。




とても、とても楽しかった。
オクサーナ(キエフ)
かつて夜は安息のときであったがいまは何ごとか起こる恐怖と何事も起こらない希望のあわいで打ち震えている時間。この戦争には終わりがないと思えてくる。かつてどこか外にいた戦争がいまは家の中にまで入り込んでいる。頭の中にも空気のなかにも匂いや音にも戦争が染みついている。過去。――逃げ込める場所はもうそこだけ。
マクシム(クリヴォイ・ローク)
文字通り、生存をかけた闘争。地上では発電機がぶんぶん。空中では絶え間ないサイレン。ドローンとミサイル、それを撃ち落とそうとする試み。僕は寒くて暗い部屋にいて、ただ待っている。通電のときを。早く充電したい、食器を洗いたい。それまでに自分ちにドローンが飛んでこなければ。
マクシム(キエフ)
50年後このすべてはどう評価されているのだろうか。その日も「ロシア史」はあるであろうが、そこでこの「ファシスト」との戦争は、どう語られているか。勝利のために寒さを兵器にして民間人を殺戮しようとしたことは。……逆説めいて聴こえようが、自分はロシア人が哀れでしょうがない。肉体的にはよりしんどいのはそれはウクライナ人のほう、だが精神的にはどうであろう。政権が建てた高い壁の中で、良心の虜囚となっているあの人たち。
2/14(day3)
ゼレンスキー独ミュンヘン安保会議に出席し一連の会談(NATO事務総長、各国首脳、米高官)&演説。その発言抜粋(分かりやすさのためだいぶパラフレーズしている。意味は損ねていない):
・和平交渉の最難関である領土問題について、露は米に対し「もしウが自発的にドンバスから撤兵するなら平和はより早く来る」と主張、あたかも和平の成否は一にかかってウの「善意」であるかの外観を創り出そうとしているが、これは奸計であると。「なるほどドンバス占領は露が『勝利』として国内世論に打ち出せるミニマムであろう。だがこの勝利を露に与えることの危険を知れ。2014年クリミア占領を世界が黙認したことは歴史的な過ちであった。露軍は軍服を着ないで隠然とそれを遂行した――反発を一応は恐れていたのだ。22年は盛大にミサイルを撃ち込むことから始めた、露軍は堂々と軍服を着て侵入してきた。この勝利に味を占めたら次は何してくることか」УП
・Pは1938年ミュンヘン協定の二匹目の泥鰌を狙っている。ナチスにチェコスロヴァキアを明け渡せば欧州は大戦を免れると考えたのが大いなる錯誤であったように、ウを分割すれば(=露が喉手で欲するドンバスを明け渡せば)戦争は金輪際終わると考えるのはとんだ幻想である。УП
・もし大統領選の実施が和平の条件だというならば、実施にやぶさかでない。制度的に不可能で技術的に困難だが制度(法制)の方は変えてもいい、ただ技術的な困難(3つの難題:1000万の在外投票どうするのか、兵士たちの投票をどうするのか、投票中の安全をどう保障するのか)はクリアされる必要がある。我々の立場はシンプルだ。「2か月の停戦をくれ。そしたら選挙やる」УП
(※戦争中の選挙不実施はウ国内法に照らして完全に合憲・合法であって本来ゼレンスキーと議会の権限にイチャモンつける余地は全く無い。しかもこの状況はウ国民も明示的に是認している(世論調査は一貫して戦争中の国政選挙実施にウ国民の大多数が反対であることを示している)。にも関わらず選挙の実施が争点になっているのは、シンプルに露の無理筋な要求、またその意を謎に汲んだ米の圧力の故である)
・マクロン仏大統領がPと話すのに反対はしない。本人から計画の詳細を聞いているが、特に文句は言わなかった。彼を信頼している。だが一般論として、個別に行動するとPのマニピュレーションの餌食になりがちなので(飴をちらつかせて操ってくる。各人が、事態の打開は俺にかかっている!と意気込み、妙なイニシアチヴに走り、結果的に取り組みが分裂・分散して力をなくす)、欧州は協調して行動をとることが大事。УП
(※いま和平交渉は完全にウ米露3者協議が主体となっていて、欧州は蚊帳の外である。だがウ露戦争の帰趨は欧州の安保に直結する、他人事では全くない。それで遅ればせながら、俺たちは俺たちでPと話した方がいいんじゃないかということで、一部の欧州諸国、特に仏が前向きになっている。早晩マクロンとPの会談が実現するものと思う)
・露が支払っている戦争の対価について。露は日に1000人、月間3万人を失って(死亡もしくは重傷で戦線離脱して)いる。12月は3.5万人、1月は3万人。また距離に換算すると、ドネツク州における1kmの進軍(占領地拡大)ごとに156人の兵士を喪失している計算。
これら侵略の対価を、現時点でPは気にしていない。月に4万人を新規動員していて侵略軍の勢力は維持できているから。だが、気にし始める水準はある。我々は具体的な目標として「月に5万人を失わせる」を定めている。こうなればPも考えざるを得ない。УП
・敵ミサイルとりわけ弾道ミサイルは限られた防空兵器でしか防げない。木曜(12日)の攻撃で敵弾道弾を防いだのは日曜に取得した迎撃ミサイルであった。取得したそばから使っているのだ。まま、こういうことがある:防空チームより「ミサイル撃ち尽くした」との報告を左耳に聞き、一方では諜報チームより「新次の大規模攻撃が明日明後日にもありそうだと」と右耳に聞く。最高司令官として、これほど最悪なことは無い。
なお、大半の防空ミサイルはPURL(※米兵器を欧州が買ってウに送る制度。日本も非殺傷装備で貢献)から取得している。欧州に深謝。УП
なお、ミュンヘン安保会議の場裏では、ウのシビガ外相と中国の王毅外相が会談し、中国がウに追加のエネルギー人道支援を送ることを約した。ほぅ、中国が? 「両者は領土一体性への相互尊重を基礎とした両国関係および相互貿易の発展の道のりを協議。またウ側より中国とのハイレベル交渉への関心を表明。またウ側より、戦況や露によるウEシステムへの攻撃、またそれによる中国企業の損失について説明。今後もコンタクトと相互訪問を継続することで合意」とのこと。習→Pへの電話一本で戦争終わらせられるとも噂される中国であるが。УП
2/13(2日目)
今日は3つの話題。①次回3者協議 ②数字の話 ③イーサリアム
①ウ米露の3者協議(第3次)は17-18日@ジュネーヴだそうだ。悲報:露の交渉団長はメディンスキー。曲学阿世の似非歴史家。かつてこいつとイェルマーク(前ウ大統領府長官)で交渉やってた時代は悪しき停滞の時代(双方とも原則論に終始して事態一歩も動かず)として否定されている。イェルマークに代わってキリル・ブダーノフ(前ウ国防省情報総局長・現大統領府長官)が交渉の実権を握ると露側も交渉団長をコスチュコフ露軍参謀本部情報総局長に変え、インテリジェンスオフィサー同士の極めてプラグマティックな交渉へとがらり様変わり、外交解決の模索がいよよリアルに始まったと期待が高まっていた。だが交渉第3次にして露は再び長広舌のデマゴーグに団長役を戻した。後退である。交渉意欲減退のシグナル。УП、УП、УП
②数字が色々出てきた。これら数字を押さえたうえでこれからのニュースを見ていこう。お勉強の時間だ。
まずエネルギー事情。シュムィガリE相によれば、いまのウクライナの国全体の電力需要量は約16GW(=1600万kW)。対して供給可能量は約12GW。差し引き4GWほど電気が足りていない。これは寒が緩んでだいぶ改善した数字で、ちょっと前は需要が18GWで赤字が6GWほどもあった。
供給可能量12GWの内訳は、原発7.5GW、外国からの輸入2GW、ほか。火力発電所は撃滅されまくって5基ほどしか稼働しておらず、出力計1GWに満たない。再エネは、最近天気がよくなってきて、太陽光で2GW弱ほど発電できている由。春雨よくふれば水力にも期待。УП
なお、需要量16GWは、日本のだいたい10分の1ほど。
(※GW=ギガワット。1GW=1000MW=100万kW)
次に、人身数え。調査機関Conflict Intelligence Team (CIT) がウ露双方の民間人の死傷数について2025年の総括レポートを表した。25年は民間人の犠牲が22年開戦以来最大だった由。
【概括】
・2025年の1年間、ウ露双方の合計で、民間人2919人が死亡した。うち96人が子供。
・同、1万7770人が負傷した。うち1000人が子供。
・上記の合計、約2万。毎月1500人ほどの無辜が死傷している計算。
【前年比】
・2024年と比べると、死者は12%増、負傷者は25%増。
【実例】
・一撃で多数の死傷者を生んだ例として、11/19のチェルノポリ攻撃で38人死亡92人負傷。4/13のスームィ攻撃で35人死亡129人負傷。7/31のキエフ攻撃で32人死亡158人負傷。6/24のドニェプル攻撃では21人死亡319人負傷。いずれもウクライナの地名。
【陣地別】
・総計2万の死傷者のうち、ウクライナの施政権が及ぶ領域における死傷者は、1万6300人を数える(全体の約8割。なお内訳は、死亡2348、負傷13952)。対して、被占領地における死傷者は298+1751人、露本土では273+2072人。
【武器別】
・無辜殺傷の手段は、ドローンが最多。両陣営併せてドローンによる死者1376人、負傷1万人強。24年の3倍という。ほか、砲弾による死傷者2673人、ミサイル3580人、航空爆弾2648人。
レポートの結論部より:和平協議は終戦どころか戦争の烈度低減すら齎せていない、むしろ民間人の犠牲の増大という観点からは、戦争は激化している。ウ側ではるかに多くの犠牲が出ているのは攻撃手段の量的な差のみで説明はできない。露の側の攻撃が遥かに無差別的であり、しばしば明白に民生インフラ(住居等)を標的としているためだ。Meduza
イーサリアムについては他日取り上げることとする
2/12(第1日)
前回の記事(1月の7日間)からの経過を書いておこう。
ウ露間で1週間のエネルギー停戦がありそうだと話していた。この話はざっくり言うと、米の禍王が「露の珍帝と電話した。ウクライナ寒すぎるので電力破壊せめて一週間やめてくれんかと申し入れた。この申し入れは、珍に容れられた」と藪から棒に言い出したことから始まった。その一週間がいつ何日から始まっていつ何日に終わるのか、もう始まってるのかこれから始まるのか(いつ始まるのか?)というのが曖昧だった。露は「2月1日を終日とする一週間である」と声明した。だがウの観測する事実としては「1月30日に突如として攻撃が止んだ」。1月30日が始日なら、2月5日くらいまでE停戦が続く筈であった。
ゼレンスキーは、真率に平和を希求したと思う。2月4・5日に予定されていたウ米露3者協議(第二次)で実務者たちが領土問題等の難題で進展を得られるよう、ガラス細工のE停戦を懸命に守っていたと思う。30日か、ウのE省が「E施設に攻撃あり!停戦は破られた!」と発表した1時間後に、ゼレ自ら「攻撃はE施設を故意に狙ったものではなかった」と敵を擁護するかの発言。また31日のブラックアウト(全土停電)も、露に責任を帰する言説をいくらでも展開できたろうところ、サイバー攻撃等の外部干渉は「確認されていない」、むしろ悪天候による事故の線が濃厚である、といち早く声明を出した。
だが2月3日、エネルギー停戦は破られた。明白に一方的、かつ極度に暴力的に。今年に入って最大規模の複合攻撃がキエフ他へ。折しもウクライナにマイナス20度の今季最強寒波が訪れていた。

↑その件伝えるMeduza記事の見出し。「露が-20度のウのエネ施設を大規模攻撃した」
露側の言い分ではE停戦は2/1に終わっている(のでもう何をどう撃とうが俺様の勝手)。ウ側の観測する事実としては1週間のE停戦は1/30に始まったばかり(1月29日までは普通にE施設が撃たれていた)、2月3日はまだその4日目である。そこへ米の禍王が声明。「プーチンは約束を守った。1週間とは1月25日日曜から2月1日日曜までのことであった。一週間は長い時間だ」。私はブログを更新する気力を失った。
そのあと、アブダビで、上述の通り、ウ米露3者協議があった。特段の進展は報じられていない。次回は初めて米国で、2/17ないし18に3者協議の方向で調整中。
露は変わらずウのE施設を攻撃し続け、今朝次点でキエフの多層住宅2600棟に暖房なし。7日の攻撃によりДарницкая火発が大破で市内の多層住宅1000棟ほどが春まで中央暖房来ないことが確定している。ここ数日はオデッサもかなり撃ち込まれている。いま特に状況がひどいのはキエフとオデッサの両州だる由。露は無罰である。米王はスルー。ちまたではおりんぴっくおりんぴっく。世界の無関心の裏側で進む進む破壊。
気温はしかし、快方へ向かっている。キエフ10日間予報↓

10日で寒のピークは過ぎた。今は0度前後の穏やかな寒さ(とはいえ、東京の感覚からいえば、相当寒い)。だが週明けからまた冷え込む。冬は長い……。
