アアアッア・アッアア氏(あああっあ・あっああし)
出席番号、1番しかなったことない。声に出して読みたい日本人名。あなたも音読してご覧、口の中がかゆくなるから。
井野健一(いの・けんいち)
イノケンチイ(Иннокентий)というロシア人名がある。聖名目録(святцы)にも載っている、古式ゆかしい名。これをもじってイノケンイチ(井野健一)。原音との一致率は70%といったところか。
※世界史に詳しい人は魔女狩り教皇イノケンティウスの名に覚えがあるかも知れない、そのロシア語版がイノケンチイ
上原杏奈(うえはら・あんな)
ロシア語でуехала Анна(ウイェーハラ・アンナ)といえば「アンナは去った」の意味である。姓名セットで完結した一文になっている珍例。文法上の性も主語と述語でちゃんと一致していて瑕疵がない、ごく自然なセンテンスである。
アンナのところは女性の名前なら何でもいいっちゃいいのだが(未希でも香織でも富士子でも)やはり望ましくはa音終わりの、できればロシア人の名前としても通用するようなマリナとかマリヤとかそういう名前がいい。
とはいえまぁ凡庸なギャグだ。このくらいちょっとロシア語かじった日本人なら誰でも思いつく。珍名辞典的には低級。
雲丹下邪亞油(うにした・じゃあゆ)
これは現実には存在し得ない名だ。雲丹下はさておき、邪亞油がひどすぎる。創作物の登場人物向け。
「うにした(うにちた)じゃーゆ」とは、ロシア語で、「殲滅するぞ」の意である。(動詞уничтожать無に帰さしめる、の一人称単数現在形)
氏名がそのまま脅迫であるような名。「うにしたじゃあゆと申します」といって名刺を渡されたときは尻をまくってその場を逃げ去ったほうがよい。
浦中熱汰(うらなか・ねつた)
「ヤッターマン」の中の人。ロシア語でUra Nakanetsta(Ура, наконец-то)とは「やったぜ、ついにやってやったぜ!」の意である。
これはかなりあざとい名前だ。自然には到底出てこない。浦中の家に熱汰さんが出てきたとしたら、名付け親はロシア語知識がある人(に入れ知恵された)と見てまず間違いがない。
柿家隆二(かきいえ・りゅうじ)
柿家と書いて<かきや>と読む姓は実際にあるらしい。でも入家と書いていりやともいりいえとも読むんだから<かきいえ>だっていないこともないだろう。
какие люди(カキーエ・リュージ)とは、ロシア語で「なんて人たちだ!」の意である。英語にすると、なんだろう、What the people!て感じか。感嘆文。
原音との一致率は100%に近い。イントネーション(音の高低)が完全に一致していて、かなり名作感のある珍名。ロシア人に「柿家隆二と申します」と名乗ったら噴き出されることは必至である。
加来卓(かく・たく)あるいは角田拓(かくた・たく)
ロシア語でкак так(カーク・ターク?)とは、「なんでそうなる?」の意である。
んでまたロシア語でкак-то так(カーク・タ・ターク)といえば「おおよそそんな感じ」という意味になる。
つまり、加来卓(カク・タク)と角田拓(カクタ・タク)という、それ自体決してあり得なくはない名前の日本人男性を二人並べると、ロシア語的にはギャグみたいな状況になる。この列にさらに先ほどの柿家(カキイエ)さんを加えることもできるし、さらに栫(カコイ)さんを加えることもできる。疑問詞祭りだ。
イメージのために逆の状況を想定してみると、イタリアでは女性の名にDonna(どんな)という敬称をつけたりするらしいじゃん、日本人的には「Donna Annaってどんなアンナだよ」とツッコミを入れたくなる。同じツッコミを、ロシア人が日本人名に対して行い得る、ということだ。
神父シンプソンさん(しんぷ・しんぷそんさん)
もし仮にSimpsonというアメリカ人の神父さんがいたら「神父さん!」と呼び掛けるときシンプソンというその名を、「シンプソンさん」と呼び掛けるとき神父という彼の職業を、想わずにはいられないであろう。
住吉シャア(すみよし・しゃあ)
シャアという名前は当然可能だ(疑いの余地はない)。であれば、住吉シャアがあり得る。ロシア語でスミヨーシスャア(смеёшься)といえば「(お前が)笑う」の意味である。という説明でロシア語わからない人には「は?」であろうが、わかるやつは言ってくれる筈だ、よくぞ思いついたと。
竹里のの子(たけさと・ののこ)
「たけのこのさと」を並び変えると「竹里のの子」。字面がかわいい。
「きのこのやま」を並び変えると……これが難しい。辛うじて思いついたのが「鋸乃木麻弥」(のこのき・まや)である。もっといい案はあるだろうか?
多田尊々(ただ・そんだけ)
私には多田尊々という知り合いがいる。
そう言うと、あらゆる局面・部面において私に立ち勝りたい福田という友人が向こうを張ってきた。
「自分はもっと珍しい苗字の奴を知っている」
「ホウ。どんな」
「多只田(たただだ)」
「ホウ。ちなみにそいつ、下の名は?」
「尊々」
何丘イワン(なにおか・いわん)
この名前については何をかいわんやである。私(ブログ運営者・何丘)のことだ。
なお、妻の名はエヴァ、息子の名は太郎という。
私:何丘イワン
妻:何丘エヴァ
子:何丘太郎
馬場知佳(ばば・ちか)
ロシア語でバーバチカ(бабочка)は「蝶」。
響きの一致率は98%ほどで、ロシア人が馬場ちかさんと知り合ったら「え!!それ我が国の言葉で《ちょうちょ》の意味ぃ!」と歓喜すること請け合い。
全国に数人いるだろう「馬場ちか」さんのうち、一体何人が、ほぼ全く同音の単語がロシア語にあることを知っているだろう?
堀疾人(ほり・しっと)
Holy shit(聖なるウンコ)とは、英語における悪態の一つ。
堀疾人、字面はカッコいいのだが……。
※本当は「はやと」と読むのである
昔野義実(むかしの・よしみ)
昔野という苗字がまずあり得ないのだが。でもこういうありそで無さそな苗字が好きなのだ。「何丘」しかり。
山口文太(やまぐち・ぶんた)
ロシア語でЯ могучий бунтарь(ヤー・マグーチイ・ブンターリ)と言えば「われ強力なる反逆者なり」の意味で、氏名が完結したひとつの文章になっている稀有な例。(原音からやや遠いのではないかと思ったが、妻(ネイティブ)がウケてるので、多分だいじょうぶだ)
文太はともかく、「山口=われ強大」のほうは結構よくできた一致で、好き。昔年の(くだらぬ)疑問なのだが、かつてプーチンが山口県を訪れ、そこで当時の安倍首相と会談したことがあった。そのときプーは「ヤマグチ?<われ剛の者>?」とチラとでも思っただろうか?(いや、それは思ったに違いない)
さらにそのとき、字義的には「世界征服」と解せる自らのファーストネーム「ウラジーミル」と掛け合わせて、長門の温泉につかりながら「ふぃー……、ウラジーミル@ヤーマグーチイ……俺、強大なる世界征服者……」と呟かなかったかどうか。プーチンに一個だけ質問できるとしたら、聞いてみたいのはそれ。