2023年6月末、4泊5日で北海道旅行してきた。人のするなる旅行記なるものわれもしてみむとす。今回は実際に北海道旅行を計画してる人(特に子連れで)の参考になるように基本情報またtipsとかライフハックとかテクニックとかわりと細かく書いてくので煩わしく感じる人もあるかもしれないが信じてる。最後には必ず許して・そして愛してくれるものと。
※なんか途中で止まっちゃってます。そのうち書き上げます。(9月4日記す)
登場人物紹介
①何丘。筆者。この記事では一人称「俺」。
②妻丘。ウクライナ国籍者。ロシア語母語話者。日本語能力検定1級(N1)保持。
③太郎。3歳児。バイリンガル。
何丘と妻丘はもともと旅行好き。北海道は2018年冬(電車で札幌~小樽~函館)以来2度目。
太郎は複数泊の旅行は人生3度目。1度目は異色の旅だったので本人の主観としては先の鹿児島に続きこれが人生2度目の旅行という感じだと思う。
※太郎の人生初の大旅行については→流亡の記(ウクライナ~モルドバ~ルーマニア)
※太郎の人生第二の旅行については→鹿児島旅行記(2023年4月中旬)
計画概要
時は2023年6月末、期間は4泊5日。今度の旅は一言で言えば、レンタカーで道央を周る。
5年前に夫婦で旅したときは電車で札幌・小樽・函館と北海道の西の端っこだけ周った。
今回は車を借りて道央、即チ、北海道の真ん中のほうを攻める。
北海道はど真ん中に大雪山という山塊があって、それおよびその周辺が道央、という認識だ。
大雪山の西の麓には美瑛(びえい)ちゅうところがある。ここは丘陵地帯で広大な畑や牧草地が広がっていて、写真で見たところウクライナのステップ地帯(オデッサ郊外)にそっくりな感じで、妻には懐かしかろうと思った。
また、そのちょっと下に富良野ちゅう町がある。ここはラベンダー畑が有名で、これも妻には懐かしい花だ。ラベンダーといえばクリミア。まだ全きウクライナ領土だったころのクリミア。
これら良き土地を訪れて風景に癒されることが旅の主眼だる。でも根が欲張りというか貧乏性なので、ちょいちょい他の場所にも足を延ばす。あと、子供を楽しませることにも特段の注意を払う。人生最初期に「旅っていいもんだな」とぜひ思ってもらいたい。以上がざっと旅のテーマだ。
Day1:札幌~小樽
飛行機
新千歳空港へは羽田からも成田からも出ている。私らは成田からのに乗った。東北地方の上空を通っていくのか太平洋上を飛ぶのか分からなかったがいずれにしろ景色がいいのは左側だろうと思って進行左側に席を取った。
それ自体は間違ってなかったと思う。だが、結果的に、雲ばっかでほとんど何も見えなかった。出発間もなく遠くに富士山の頭の先だけは見えた。
それより悪かったのは、翼のすぐ横に陣取ってしまったこと。翼が邪魔して太郎は景色が見にくかった。こんな初歩的なミスをすることに自分でガッカリした。海千山千気取りが。銘記せよ、翼のすぐ横の席はとるな。
翼が見えることにはメリットもある。離陸前はむしろ機体を感じられてよい。「飛行機に乗る」こと自体が一大イベントであるような乗り物好きの子供には。だから多分、翼が見えて、しかしその真横ではない、そうさな、翼のふたつくらい後ろの席がベストだ。
太郎が離陸の瞬間だとか窓からの景色をすごい楽しむので、その影響で妻のフライト恐怖症も治ってしまった。子供の力はすごい。大事なのは逆に大人のフォビアを子供に伝染させぬこと。
レンタカー
新千歳空港ですぐレンタカー借りた。むろん予約していた。日産レンタカーにした。鹿児島のときはローカル店を利用して大変満足だったが今回はなんかローカル店2つくらい見たところ口コミが悪くて、その悪さというのは車が古くて臭かったとかそういう種類の悪さで、子供いるし数日使うのでちゃんとしたやつがいいなと思って、大手にした。
日産のノートとかいう車種だった。車のことは全然わかんないがすごい乗り心地よかった。いいやつなんだと思う。高速道路と山道が多かったが馬力も全く問題なかった。発進がスムーズ。全方向にセンサー?がついてるようで、ぶつかりそうなときはぴーぴー鳴いてくれるので安心(ぶつかりそうになる時点で何丘終わってる説あり)。ナビも使いやすくて高性能に感じた。
ただ、車体が白くて残念だった。鹿児島のときがきれいなブルーだったので、今度の車は何色かなぁ、赤かな、オレンジだといいな、と子供が期待していた。子供の期待は私たちの期待である。俺たちのね。こういうのは予約時に指定とかできるものだろうか。
モエレ沼公園
最初の目的地は札幌郊外のモエレ沼公園というところ。GoogleMapによれば空港から高速で50分、下道で1時間13分。
モエレ沼公園はイサム・ノグチとかいう彫刻家?が設計したちゅう話で、同氏のデザインした風変わりな遊具がいろいろある。旅の開幕早々に子供に楽しいこと(かつ、東京ではできないこと)をもってきて「お、すごい日々がこれから始まるのだな!」とテンションを上げさせたく思い、ここを第一の目的地とした。下記画像、同公園HPより
空港からモエレ沼公園へは一発目の移動なので、あえて下道で行った。景色楽しみたいと思って。でも、なんだかんだ1時間半くらいかかってしまって、正直、大人しく高速乗れば良かった。だがまぁ、カモミールの白い花や白樺など東京では見られない植生に触れられたのは良かった。冬季道路冠雪を前提とした車歩境界線や中央線の指示標識、車線がなくだだっ広い道なども面白く感じた。ローカルコンビニ「セイコマート」も嬉しかった。
文字数多いな。画に語らせよう。モエレ沼公園。入口付近の白樺林。
すばらしかった。白樺は妻に(私にさえ)懐かしい木だ。オデッサに白樺は少ないがモスクワやキエフの緯度では白樺はもっともありふれた樹種である。妻はモスクワ州で幼少期を過ごした。
ワイドで撮った。
妻が花摘んだ。
ポプラの綿毛が積もっていた。トーポリ。懐かしい。
イサム・ノグチの遊具の上でオオカミになっている太郎。
高いところに犬座りして「あうー、あうー」と言っていて、それ何と聞いたら「オオカミ」という。私から二つダメ出し。月を見てそれをやりなさい。あと、悲しい感じを出しなさい。上の写真はダメ出し後の姿。視線の先に月があるのが見えますか。
この日は暑くてね、関東の人間が北海道まで来て感想「暑い」は妙な話だが、日差しが強くて。湿気はないのだけども。あまり日向を歩いてられなかった。影を伝って歩いた。
そんな日だったので、公園内にあるこの「モエレビーチ」というやつは大変うれしかった。ここで長らくぱちゃぱちゃしていた。
上の写真の奥のほうに写ってるが、この人工の浅瀬を取り巻いて芝生があり、そこに人たちはテントを張っている。実際、いい休日の過ごし方だと思う。この公園は入場無料。かつ駐車場も無料(都内では考えられぬ)。ここに子供たちは防水シューズと水鉄砲の重装備でやってきていつまでも遊んでられる。大人たちはそれを見ながらテントの中で読書。最高。私らも札幌住んでたら頻繁にここ使う。
ほか、広い敷地に、いろんなオブジェクトがある。
かなり広いのでレンタサイクルおすすめ。チャイルドシートつきのんもある。2時間200円とかだったと記憶する。安いものだ。銀色構造物のうしろに見える森も小山もモエレ沼公園の一部で、この小山に登ることもひとつのアトラクションである。私らも登った。登る道は気持ちよく、頂上からの眺めもとても良い。「ほっかいどうでっかいどう」を感じられる。モエレ沼公園、おすすめ。
小樽
どこかで何丘とかいうやつが「今度の北海道旅行のテーマは『車で道央めぐり』です!」とか言ってた気がするが、モエレ沼公園を出たあと私たちは、小樽に向かうのである。
そしてこの日は小樽に泊まる。
お宿は「OTARU TAP ROOM」、石造りの蔵をリフォームしたゲストハウス。こういうのが好き。外観(ストリートビュー)↓
手前に見える木造の建物がレセプション兼BARになっていて、そのBARでウェルカムドリンクとしてビール一杯もらえる。私らは着いて早々これを頂いた。あ、車はこのすぐそば、コメダ珈琲の隣に一晩600円(やす!)のとこがあった。
ほんで奥に見えている石造りの蔵が宿泊棟になっている。私らはこの二階、屋根裏の部屋をとった。下記、お宿HPより
んで下の写真は、上階から下階のラウンジ(共用スペース)を見下ろしたところ。雰囲気よい。こういう古い建物に泊まるのめっちゃ好き。なお、丸テーブルの上に見える赤い物体は太郎のプテラノドン。
明治大正期に海運と金融で栄えた小樽は石造りまたは煉瓦造りの蔵が多数残っており、(行ったり来たりですいませんけど)さっきのストリートビューを見てもらうと、右端に見切れてる建物これも石造りの蔵であって、その蔵から路面へ防火壁が突き出しているのが見える。これ小樽のあちこちにあった。そもそも石造りにしてるのは防火のためなわけだが、最悪燃えても隣が延焼しないように、義務あるいはマナーとして?防火壁をつけている。
さて荷物だけ置いて小樽散策へ。小樽といえば運河ですよ。
だがここで痛恨事①、上の写真に見られる小樽運河クルージングへの参加をまさに予定していたのだが、私らが小樽運河に到着した17時半とかの時点で、もうすでにその日のソレは完売御免であった。私らは19:30~ないし20:00~のナイトクルーズを狙っていたのだが。甘く見ていた。予約しておくべきだった。
私らは基本的に、私らにとって楽しいイベントと子供にとって楽しいイベントをおおよそ交互くらいに発生させたい。モエレ沼公園はどちらかというと子供寄りのイベントだった。子供はそれでかなり満たされた。しかして次なる街、小樽にきた。私や妻としては、5年前にも訪れた美しい街並みを「散策」したい。順番でいきゃ、私らがそれをして楽しむ権利はある。だが、新しく来たこの小樽という街が、子供にとって呪わしい退屈極まりない「散策」だけの街になってしまわないように、何か子供にももう一盛り上がり、小樽に行ってこれをしたと言えるような、パンチのきいたイベントを設けてやりたい。
そこで私らが考えたのが、船に乗る、あるいは、ロープウェーに乗る(天狗山というのがあり、夜景の名所。太郎には夜景などどうでもいいだろうが、ロープウェーに乗ること自体は面白いはず)というイベントであった。だがロープウェー乗り場はちと遠く、私はもう酒を飲んでしまったので、車は出せない。小樽駅からバスは出ているが、その小樽駅まで行くのがすでにしんどい。手軽なところで船に乗りたかった。
つい字数が多くなる。運河もう一発。いいよね。
痛恨事②。晩飯に予定していた「小樽バイン」という洋食店が、行ってみると予約で満席御免であった。これも、人気店なのは知っていたわけだから、予約しておくべきだった。ぬかった。甘く見た。
小樽バイン↓
バインちゅうのはワインの謂で、北海道産ワインとうまいもんのマリッジを楽しめるという触れ込み。歴史建造物(旧北海道銀行本店)をリノベーションした店で雰囲気よし、地下にはワイン蔵、というとお高そうだが、パスタ790円~、ピザ950円~と庶民派の価格設定。5年前の冬の北海道旅行で利用してたいそう気に入っていた。晩飯はぜひここで、と思っていたのだが。
船といい、晩飯といい、全く情けない、ブッたるんでいた。晩飯に関してはプランBも用意していなかったので、まー歩いて探してみますかといって、食う店のありそうな道を歩き出したのだが、全然見つからない。いや、あるにはあるのだが、子供にも何か食べられるものがある店、かつ、やたら小樽はウニ推しだがウニは別に好きでもないし好きでもないウニに4000円とか出せない、またやたら海鮮丼推しなのだが丼ものは犬の食い物と内田百閒が言っていたその犬の食い物にやはり数千円は出せない、という観点からは、何一つ見つかるものがない。歩いた。それはもはや「散策」ですらなかった。食いモノにありつくという一念のみを頭蓋に灯した餓鬼どもの行進であった。
登場人物紹介(改めて)
何丘餓鬼。このブログの筆者餓鬼。
妻丘餓鬼。ウクライナ、ロシア、日本、餓鬼。
太郎餓鬼。バイリンガル餓鬼。三歳。
ほんで結局、ビアホールに入った。上の写真。
これは実はひとつ前の写真(運河の)に写ってる、煉瓦造りの古い倉庫である。ここは5年前の旅でもビール飲みに立ち寄っていて、そうだあっこがあるじゃんと思い出して、入った。
結果的には、最高だった。ビールも料理もめっちゃうまかった。えーと店名、「小樽ビール」でいいのかな。お店HP
望まぬ店で子供に海老天丼1900円、私と妻に望まぬ海鮮丼または握り一人2500円、計7000円を使わされたかも知れぬことを思えば、ほとんど金に糸目をつけず豪遊していい気がした。それでザウアークラウトのサラダとシーザーサラダ各500円、肉料理二品各1500円と2000円、モッツァレラチーズを挟んだ何やらすごいパン800円、また季節限定メニューの平目のカルパッチョ、そして妻がピルスナー、私はドゥンケル2杯。しめて8800円ほど飲みかつ食った。一切後悔がなかった。
帰り道で見た運河。
ゲストハウスの宿泊代がちょうど同じ8800円だった(3人分)。
いい宿だった。ベッドの質は高かった。古い建物だが見事に快適かつ現代的にリノベーションしていた。オンシーズンで満室かつ相客が外国の方々だとラウンジが遅くまでうるさいかも知れない(幸い私らはそれはなし、ただ、遮音性の低さは感じた)が、基本的にゲストハウス「OTARU TAP ROOM」、全然おすすめできる。気に入った。
Day2:神威岬~美瑛
神威岬
おかしい。おかしい。絶対におかしい。
だが、「レンタカーで道央めぐり」がテーマだったはずの私たちは、小樽からさに西へ、
神威岬(かむいみさき)を目指しているのである。
実は、道央めざして新千歳空港から東に走り出すべき私たちが札幌・小樽とまず西へ向かったのは、そもそもこの神威岬に行きたいがためであった。
まー写真みればあなたも黙るさ。そうら!
片道20分くらい右手に海・左手にも海を見ながら尾根伝い歩いて、岬の突端まで行ける。右手の海は「しゃこたんブルー」と呼ばれる美しい青!
(しゃこたんというのは、ここが積丹(しゃこたん)町なので)
マップ↓
「風に吹かれて」とあるのは、ボブ・ディランもエレファントカシマシも関係なくて、リアルにこの岬、すさまじい風が吹くのである。路程は、ご覧の通り、Pのとこから歩きだして、尾根伝い北をさして歩き、③とこに灯台があって、ほんで②突端まで行くとご褒美に①奇岩の突出が見られる。
歩きだしの感じ。ここからすでにわくわく。
↑生い茂るくまざさ、不思議に丈の高いたんぽぽ。
↑この「女人禁制の地 神威岬」と書かれた門をくぐると本格的に崖路。この門はよほどの強風のとき閉まるらし。正直、歩いた感想は、これで「強風」でないなら、門が閉まるほどの「強風」て一体!?て感じ。
↓振り返ったところの陸側の景色も見事だ。ガイアを感じる。にっぽんの北のヘリ。
↓ほんでこっち側(突端に向かって右手)の海こそがしゃこたんブルー。
伝わるかな。この特別な青の感じ。(お花は黄色いのがゆりだかにっこうきすげみたいの、白いのは不明)
こんなとこも通っていくよ。私は高所恐怖症ぎみだが意外に大丈夫だった。これも子供を媒介にしたフォビアの克服か。
ほんで宿儺の指。
という感じで行って帰ってきた。太郎は全路程をほぼ独力で歩ききり、3歳にして、すでに親子でちょっとしたトレッキングが可能であることが分かって嬉しかった!
写真からは様子が伝わらないと思うがが、なにしろ風がすごくて、手すりの支柱(崖路なので沿道ずーっと手すりがついている)を吹き抜けるとき風が歌う。「風の歌を聴け」。その風の歌でダンスダンスダンス。小さいやつ吹き飛ばされやしないかと怖いくらいだったが朝コメダ珈琲のモーニング食べて元気もりもりだった太郎は自らの足で歩くことにこだわり、果たして全路程踏破したことに大得意だった。
神威岬、激しくおすすめ。
余談だが、宿儺の指みたいな岩礁の屹立はこの隣の岬にもあって、そっちのやつはアイヌの人たちに男性器の神様として崇められていたのだけど、ある日色きちがいのアイヌの海女がその岩のてっぺんに登ってひとりよがりの行為をしたところ、翌日から魚がぱたりと獲れなくなった。すわカムイはご立腹だということで大騒ぎして供物やら何やらして、しばらくしたら沖で謎の光が光ってそれが「許されたぞ」との合図で、その次の日からまた魚がわんさと獲れるようになりました、ちゃんちゃん。みたいな話があるとかで、いかにも素朴、おおらかでいいなぁと思った。
札幌①スープカレー
さーて大きな寄り道をしてしまった。こっから改めて道央を目指すというのだから大変だ。
今日は美瑛に宿をとってある。道のりは果てしない。とりあえず中間地点の札幌で休憩がてら昼飯を食う。スープカレーだ。うちら夫婦は最近カレーにハマってるので、これはこれですごい楽しみ。
じゃんっ。シンプルなチキンとお野菜のスープカレー。「kanakoの スープカレー屋さん」札幌大通店(HP)。サイトからお席を予約できるのだけど、朝見たときには全枠空いてたのだが11時くらいに再度サイト見てみたらもう15時半以降の枠しか選択できなくなってて、前日小樽のトラウマから「やばい、また予約を怠ったせいで食いっぱぐれるのか!?」と焦り、途中わざわざ車を止めてお店に電話したところ、「全然空いてますよ、入れますよ」とのことだった。実際行ってみると、12時半の時点でガラ空きだった。心配してソンした。
辛さは0~100まで選べた。子供は辛さ0、わが人は辛さ10、俺(私)は辛さ30にした。子供は全部食い切らなかったので残りを引き受けたが、辛さ30をおいしく食べた後に辛さ0は物足りないだろうと思い、「追いで辛くできますか」と聞いたら快く引き受けてくれた。逆のことはできないが、後から辛くする分には問題ないと。
札幌スープカレーは他にも赤トウガラシのグラム数で辛さを0~100段階にしてるとこがちょいちょいあるっぽかった。ご参考まで。
札幌②時計台
札幌は北海道の首都であるしベタな観光地も一応見しときたかった。時計台(旧札幌農学校演武場)は何かというと使われる画のひとつなので、実見させとけば「ほら、見たよね、札幌だよ」とのちのちまで話ができると思い。……というのが親側の都合。
ほんで具合のいいことに、太郎は太郎で、時計台を見たがった。これは実は「魔女の宅急便」の影響で、最近太郎はこれにハマってるので(映画じたいは昔一回見たきりなのだが、その後ジブリ美術館行ったり絵本を読んだり、決定的だったのは仲良しのライオンちゃん5歳と先日公園で魔女宅ごっこをして、それが人生初の本格的ごっこ遊びだったもんで本人えらい楽しかったみたいで)、あの魔女の宅急便に出てくる時計塔が見られるのか!とすごい期待していた。「時計塔じゃなく、時計台だよ、あんなすごすごいものじゃないよ」とハードルは下げておいたけども。
果たして、さほど興味は喚起しなかった。大人の目にはいろいろ面白そうな展示があったけども、子供のペースに付き合ったので全く何も見られなかった。大人2名分の入場料、かすみと消えた。子供はどういうわけか時計の機構を裏から見られると思い込み、かつそれを見ることに異常な情熱を燃やして、とっとと二階に上がり、そして二階からさらに上へ行く道がないことを悟ると落胆した。だが毎正時に鳴る時鐘は面白く聞いていた。
札幌③大通公園
冬場は有名な札幌雪祭りのメイン会場となる大通公園は、大通りそのものが公園になっているという珍しい存在だが、これはロシア語でいうブリヴァールというやつで、私らにはけっこう馴染みの現象である。一度目の時も思ったが、北海道は気候・植生から街の作り、全体的なサイズ感まで、ウクライナとかロシアによく似ている。本州よりは大陸との連続性を強く感じる。
暑くてねぇ。私(俺)は大丈夫なのだが、人と子供が暑さに弱いので、人と子供が楽しんでいないとこちらも楽しくないので、要するに楽しくない。大通公園の散歩は早々に切り上げることにした。ら……
なんかこのときたまたま大通公園でガーデニングのコンクールやってて、道内の造園業者が沿道各所で展示を行っていた、その中に農業系の高校生の出展もあって。うちの一つ、こちら岩農(岩見沢農業高校)の展示が体験型で、この汽車ぽっぽに乗って勝手に走らせてよいことになっていた。
「こちら札幌、時計台駅。これから大通公園駅に向かいまーす」。乗り物好きのぽっちゃんは、この初めて乗る風変わりな「汽車」を、何往復も何往復もしたよ。私らが何やら楽しげなので、通りゆく他の子連れの人たちも「あ、あれ乗っていいやつなんだー」と気づいて、最終的にちょっとした列ができた。
カレーはうまかったが時計台に失望し、歩き始めた大通公園は暑く眩しく、つまんない気持ちになりかかってた太郎が、このひとイベントのお陰で蘇生した。旅の活力を取り戻し、札幌についてとびきりの思い出を持つことができた。岩見沢農業高校生活科学科の皆さん、ありがとう。感謝です。
この隣のこちらの展示もよかったな。これも高校生の作品だった。太郎はここでお花屋さんごっこを楽しんだ。雪祭りの季節以外にも、大通公園では何かしら面白いことが行われています。
戸外炉峠
さて、美瑛到着までにあと2か所立ち寄るところがある。吾輩がいかに欲張りかがお分かりいただけると思う。まずの一つが戸外炉峠(トトロとうげ)というやつである。
ぽちろうちゃんはトトロが大好きだ。これも映画は1回しか見たことないのだが。そのトトロと名のつく峠に、なんと、猫バスがいるというのだ。
それがこれだ。
このぽつんとある感じがいい。廃バスをラッピングして置いといたのだ。一応中に入れるが、入ってもよいことはない(太郎は足を踏み入れて、内部がふわふわもこもこでないことに明らかにショックを受けていた)
ま、ちょっとしたアトラクションですよ。ついでに立ち寄って、見てちょっと嬉しい、という程度の。子供の英気がちょっと盛り返す。こうした点と点をつないでいく旅さ。
峠というだけあって、ふつうに景色がいい。夕刻にさしかかり、光の感じもいい。「世界ふれあい街歩き」のエンディングテーマが自然に脳内再生される。ちゃらーら、ちゃらーら。
神居古潭
戸外炉峠から目と鼻の先のところに神居古潭(カムイコタン)というところがある。石狩川沿いの、コタンというのは集落のことだから、もとアイヌの集落のあったとこならん。
吾輩は北方への憧れから(よく聞かれる質問:なんでロシア語とかやろうと思ったんですか。ひとつ間違いなくあったのは”北”への憧憬)、大学時代1年間アイヌ語をとった。例によって全然授業に出なかった。覚えてるのはワッカククルスイナ(水を飲みたいな)とかヤイコシラムスイパ(動詞「考える」)といった片言節句。
そこにはまずこんな美しい白木の橋がかかっている。石狩川。石狩シーツ。吉増剛造。女坑夫(おんなこうふ)さん、女坑夫さん、女坑夫さん。
ここにも「とぽりんぬぃ・ぷふ」こと、ポプラの綿毛。あ、ぽっちゃん、行かないで、と声をかけたくなる写真。少し怖くなる。
石狩川。美しい。この倒木は、ぽっちゃんによれば、「カムイコタンサウルス」が薙ぎ倒したものだ。
ここにはもと鉄道が通っていて、神居古潭駅というのがあった。廃線になった今も可愛い駅舎が残っていて、
ほんで真っ黒いでっかい機関車が3台も展示してある。これが太郎には嬉しいだろうと踏んで旅程に組み込んだのさ。
かつて汽車が通ったトンネル。今はサイクリングコースの一部に組み込まれているみたい。ちょっとおっかないが、入ってみる。(何よりも怖いのはクマの出現。だから歌いながらゆく)
美瑛(お宿・Alp Lodge BIEI)
もう日も暮れかけた19時、美瑛に到着。ようやく「道央」に至ったわけだ。だいぶがんばった。ガソリンがもう半分になってたので給油。
丘の景色に癒されるのは明日のことにして、今日はもう宿でまったりするだけ。お宿は「Alp Lodge BIEI(あるぷロッジ、美瑛)」
いわゆるペンションというやつ。「太郎、今日のお宿はペンションだよ」「ペンションてなに」「ペンションというのはね。というのはね。というのはね。ペンション。
開いたカッコを閉じさえしない不誠実。このエリアにはペンションがいっぱいある。私らはペンションが好きなので、このエリアではぜひペンションに泊まりたかった。
美瑛町のサイトには33件のペンションが登録されていて、ここをベースに絞り込んだ。逐一見ていった。
料金はどこも大体同じで、二食付きで一人1万円前後。どこも素敵で選びかねた。結局ほぼロケーションで決めた。美瑛のペンション群の中で「Alp Lodge」が一番神居古潭から近く、この日は移動が長いのでとっつきのとこに宿とっちゃおうと思った。
・・大正解だった。
「Alp Lodge」、すばらしかった。正直、ホームページの写真は魅力をよく伝えきれていない気がする。とりわけ子連れ旅行に最高だった。①ちょっとしたプレイルーム(おもちゃとか絵本がある部屋)がある。②宿のあるじがめっちゃ親切。③ごはんがおいしい。
ごはんはホームページ掲載の写真ほぼまんまだった。
だがこれも、うまく撮ればもっとうまそうに写る気がする。実物は非常に食欲をそそるヴィジュアルで、味も上等だった。お替り自由の白米が不思議なほどおいしくて、「これ何か秘密ありますか?」と聞いたら「これ北海道のゆめぴりかというお米だよ」とのこと、ぴりかとはハラショーのこと、なるほどハラショー。そんであるじの親切なのは、子供は素泊まりだったのだけど(親が自分の分を分け与える前提)、子供のために晩は肉団子をひとつ、朝はソーセージを1本サービスしてくれた。晩はちなみにこれにシフォンケーキがついた。
(一応言っとくと、こういう不文のサービスは、必ずしてくれるというものではない。そうしてくれるのを前提にしてかかるのは間違っている。とはいえ、そういうことをしてくれるような気のいいあるじの宿ではありますよ、ということ)
あと、このお宿はアルコール持ち込みOKをうたっていて、うちらもそれを当てにして道中ビールを買っていた。実際お食事の段になると、部屋食でもないし、相客もいるし、一応お宿のメニューとしても瓶ビールなどあるので、「自前の飲んでいいですか」とは言いだしにくく、それでも買ってきてしまったのだもの、腐らしとくわけにもいかなくて、あるじに「あのぅ……実は道中でビールを買ってしまったのですけども」と言ったら実に気さくに「どうぞどうぞ、持ち込みOKですので」と言ってくれた。それで有難くビールと一緒にいただいた。
「Alp Lodge」外観(翌朝撮影)
すごく素敵なのは、リヴィングにぶらんこが下がってるン。
ぽっちゃんはこれに揺られたり、この居間に隣接するプレイルームで珍しいおもちゃで遊んだり、本読んだり。あるじの息子さん(中学生)がすごく子供好きのいい子で、ちょっとだけ一緒に遊んだ。全体としてきれいでぴかぴかで、やわらかい感じでぬくもりあって、遊び心がある空間。
ご主人はもと東京の方で、20年前に移住してペンション開いたと言っていた。美瑛町の面積は町としては日本で二番目に大きくて東京23区がすっぽり入る。けれども人口は1万人しかいなくて、うち1割が移住者だと言っていた(数字間違っていたら筆者の記憶違いをまず疑ってください)。ちなみに美瑛町がその西麓に位置するところの大雪山は、北海道の中央部を占める巨大な山塊であるが、その面積はなんと神奈川県と同じという。スケールの大きさに圧倒される。でっかい。デッケ。でっけぇ、北海道でっけえ!!
こういう話が宿の人とゆっくりできるのもペンションのいいところだ。ちなみに相客も素敵な人たちだった。相客は一組(ひと家族)しかおらず、貸し切り感があった。6月末、もういい季節だと思うが、北海道のハイシーズンは飽くまで7月からであるとのことだ。その関係で、私たちはお部屋もグレードアップしてもらった(狭い部屋の料金で広い部屋に泊まらせてもらった)。繰り返すが、そういうことをしてくれるような気のいいあるじの宿である、ということが言いたくてこれを言っている。
【Alp Lodge BIEI(あるぷロッジ、美瑛)】
大人一人一泊二食付き 8500円(部屋・シーズンによって変動)
幼児素泊まり 無料
ホームページ
Day3:美瑛
この日はほとんど車を運転しない。ずっと美瑛にいる。レンタサイクルして美瑛の丘を走る。夜は美瑛市内の別のペンションに泊まる。
……乞うご期待。