オデッサニュース:半壊の「ゴーゴリの家」修復へ?

オデッサ/ウクライナ/ロシア

ども、オデッサ(ウクライナ)在住の何丘ですー。

文豪ゴーゴリの住んだ家がオデッサにあるんだが倒壊寸前みたいな状態で長らく放置されていた。市当局がようやく動きだすようだ。

(ローカルメディア「TIMER」7/30付け記事より)

8/15追記しました。

「半壊の街」の象徴

何丘撮影。ウクライナ語で「死せる魂」て落書きしてある

オデッサ中心部の一等地にゴーゴリ通りがあり、そこにゴーゴリが晩年の一時期を暮らした「ゴーゴリの家」がある。

プレートには「ロシアの作家ニコライ・ゴーゴリ、1850-1851年この家に住む」とある。

見てほしいのはこのボロさだ。築170年(以上)というのはオデッサ旧市街でもかなり古い部類だが、にしても無残。

裏側はこんな感じ↑。廃屋になって久しいのが見て取れる。

何丘的には、この「ゴーゴリの家」は、半壊の街(полуразрушенный город)というオデッサの印象の象徴であった。

ゴーゴリほどのビッグネームの住んだ家にして、これである。
(先ほどからゴーゴリ知ってる前提ですみませんね。19世紀ロシア文学の名匠ですよ、ひとつ読むなら『外套』を。どんな遅い人でも2時間あれば読めます)

悪いけどウクライナ出身で世界文学全集に入るような作家なんて他に誰もいない。シェフチェンコという国民詩人がロシアでいうプーシキンの格だが、ロシア文学に相当詳しい人でも「シェフチェンコ? サッカー選手ですか?」てなもんだろう。

つかこれほど古くてなお残喘を保っている建物はそれだけでも保護の対象だ。まして一年の僅かにもせよ、かのスーパースター・ゴーゴリが暮らしたのである。

実際のところ、オデッサ中心部には、無主無住で荒廃した古い建物が少なくない。「半壊の街」という印象の依って来たるところである。
ウクライナがいかに貧しいか、いろいろなことに手が回っていないかということだ。

市長はん頼んます

オデッサのローカルメディア「TIMER」によると、トゥルハーノフ市長のイニシアチヴで、ようやく保護修繕に向けた動きが始まるようだ。

「可及的速やかに調査を行い、この記念碑的建造物の救出のために何をしなければならないか、専門家に結論を出させる必要がある」

トゥルハーノフ市長談

しかし……いまさら何が「可及的速やかに」だ、と思ってしまう。何丘が初めて見た2014年にはもう建物はこの状態だったぜ。

「遺憾ながら旧市街の多くの記念碑的建造物が民間人・団体により買い上げられ、のち実質的に放棄され、いま倒壊しかかっている。市はこれを看過しない。いわばこれは、文化的・歴史的記念碑の状態を監督する責任のある、我々市当局、引いては州および国の当局にとっての試金石なのだ」

トゥルハーノフ市長談

周回遅れで勇ましいこと言ってて失笑ものだが、言ってることは正しい。オデッサはもっともっと美しい街であり得る。期待はできないが、どうか頼みます。

もとの記事に建物内部の写真があるので、覗いてみてほしい。
いや、ここまでひどい状態だったとはね。

追記:市はまぁなんとかやってくれそうな感じではある

オデッサのローカルメディアTIMERの続報(8/14付)によると、

「ゴーゴリの家」は所有権が錯綜しており、そのため永らく復旧に手が付けられないでいたのだが、法規に基づく強制執行で何とかする模様だ。

「ゴーゴリの家」は、大部分が市の所有、地下空間を含む数ユニットが私人の所有であった。にも関わらず建物全体の管理権は私人の側にあった。

文化遺産保全に関する法律によれば、問題の建物を「居住不適格」「設備基準・衛生基準不適合」と認定することで、地方自治体が、所有者の同意なしに保全・復旧を行えるようになる。

「ルソフの家」の先例に習い、市予算で保全・修復そして接収を行うものと見られる。

なお「ルソフの家」はオデッサ聖堂前広場に面する美しい建物で、こんな感じ。↓

これができたんならゴーゴリの家も、とがぜん希望が見えてきた。

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