オデッサ(ウクライナ)情勢、現地報道まとめ

オデッサ/ウクライナ/ロシア

オデッサ逃げ出した直後くらいから毎日つづってる一種の日記。この戦争をオデッサがどう生きたか、最後まで見届ける。心はオデッサとともにありたいと願う。その痛み、苦しみ、哀しみ、怒り、喜びもすべて。

(略記法:ローカル紙「オデッサライフ」Одесская Жизнь→「ОЖ」、オデッサ市公式テレグラム→「Т」、ウクラインスカヤ・プラヴダ→「УП」)

  1. 6/28(ミサイル/蛇島/沿ドニ/ビーチ/平和)
  2. 6/27(生活の破壊)
  3. 6/26(オデッサ無事)
  4. 6/25(乱れ撃ち/海開き/総主教を名乗る某ロシア人)
  5. 6/24(4か月が経った)
  6. 6/23(EU加盟候補/さらばロシア語)
  7. 6/22(この戦争におけるオデッサの役割so far、他)
  8. 6/21(ミサイル/蛇島/情報戦)
  9. 6/20(ドカドカ撃ってきた)
  10. 6/19(電車で帰る/歌も聞こえない)
  11. 6/18(電撃訪問)
  12. 6/17(ハープーン、病院)
  13. 6/15(顕彰/欠乏/蟄居)
  14. 6/14(防衛/バカンス/オペラ)
  15. 6/13(浜の公序良俗/お酢/大英広場/美味い。)
  16. 6/12(青姦/横浜/緑がもえる)
  17. 6/11(浜の悲劇、劇場再開)
  18. 6/10(無事。フェイク/レーニン/召集令状)
  19. 6/9(無事。戦時ナイトライフ/地下経済)
  20. 6/8(無事。ロシア世論分析)
  21. 6/7(無事。ドイツ文化相/治安/花火/緑)
  22. 6/6(無事。脱露/海水浴)
  23. 6/5(海)
  24. 6/4(ダーチノエ、花火、オフシャニコワ)
  25. 6/3(100日目)
  26. 6/2(99日目)
  27. 6/1(赤の月)
  28. 5/31(踏みにじられた春)
  29. 5/30(第5次橋破壊)
  30. 5/29(無事。海のはなし)
  31. 5/28(無事。卒業式/食糧危機)
  32. 5/27(無事。ハープーン/食糧危機)
  33. 5/26(無事。人生の時間/狂プリマ/抗戦是非)
  34. 5/25(塩がない)
  35. 5/24(安)
  36. 5/23(無事。学校/切手/浜)
  37. 5/22(汚職ばんざい)
  38. 5/21(静穏)
  39. 5/20(20年探したテロリストをついに便所に見つけたらしい)
  40. 5/19(オデッサ映画スタジオ破壊宣言?)
  41. 5/18(畑/半建築/カタコンベ)
  42. 応援のお願い
  43. 5/17(執拗に狙われる橋/ガソリン/アカシア/浜)
  44. 5/16(橋、悪いミサイル)
  45. 5/15(無)
  46. 5/14(静穏)
  47. 5/13(横浜/蛇島/ウォッカ)
  48. 5/12(オデッサっ子を世界遺産に)
  49. 5/11(幸運な街)
  50. 5/10(敵の3つの武器:新旧ミサイルとフェイクニュース)
  51. 5/9(朝に夕に夜に)
  52. 5/8(16発)
  53. 5/7(10発)
  54. 5/6(2発/厳戒)
  55. 5/5(無事)
  56. 5/4(静かな日)
  57. 5/3(やたらめったら撃ってきた)
  58. 5/2(ミサイル攻撃で住宅が被弾、死傷者あり)
  59. 5/1(わりと大丈夫だった)
  60. 4/30(オデッサ国際空港の滑走路がミサイルで破壊される)
  61. 4/29(大丈夫/外出禁止)
  62. 4/28(暗鬱のGWが始まる)
  63. 4/27(橋/墓/幽霊/ロシア人はなぜ「特殊作戦」を支持するのか)
  64. 4/26(ドニエストル)
  65. 4/25(あやしい話が多い)
  66. 4/24(何もない日)
  67. 4/23(オデッサにミサイル攻撃)
  68. 4/22(もうすぐパスハですね)
  69. 4/21(昨日に同じ)
  70. 4/20(ファシストの駆逐艦には”Z”の名がついてるんだよ)
  71. 4/18・19(戦時アネクドート)
  72. 4/17(ハリネズミと地雷原と祭)
  73. 4/16(あらゆる活動が最前線)
  74. 4/15(オデッサが少し安全になった?)
  75. 4/14(巡洋艦モスクワ撃沈)
  76. 4/13(ライオン、銃、消去される街)
  77. 4/11(静か)
  78. 4/10(オデッサ解放記念日、ネコ)
  79. 4/8(外出禁止令)
  80. 4/7(ミサイルは撃ち込まれるものの)
  81. 4/6(事もなし)
  82. 4/5(花を植える)
  83. 4/4(無事)
  84. 4/3(オデッサへの攻撃が過熱している)
  85. 3/31(またお酒を飲んでもいい)
  86. 3/30(停戦交渉で進展というが)
  87. 3/29(ゆるみ過ぎ禁物)
  88. 3/27・28(「オデッサは多分もう大丈夫だね」)
  89. 3/26(この状況で固定化するのか)
  90. 3/25(オデッサ市営動物園が営業再開)
  91. 3/24(切り取り方次第)
  92. 3/23(どうかこのまま何ごともなく)
  93. 3/22(わりと静かな日)
  94. 3/21報道(海からの攻撃)
  95. 3/19記事(世論調査:オデッサ市民は戦争をどう受け止めている?)
  96. 3/18記事(ウクライナの防空能力と空襲警報)
  97. 3/18・19報道(イーロン・マスクとオデッサ、Timer編集長拘束)
  98. 3/17報道(国境ガラ空き、社会混乱に乗じた犯罪)
  99. 3/16報道(海からの攻撃、国境越えの悲喜劇)
  100. 3/15報道(海からの攻撃、市民への武器の配布)

6/28(ミサイル/蛇島/沿ドニ/ビーチ/平和)

オデッサ州のイズマイル地区に6発ミサイルが撃ち込まれたが特段の被害なし(ОЖ)。同地区は州のはじっこ、ルーマニアとの国境に近い。海に目を転じるとすぐ沖合に蛇島(ロシア軍の拠点になっている)。

その蛇島をウクライナ軍が叩いて戦果を上げている由(ウクライナ軍の発表によれば)。「パンツィリS1三基目ぶっ壊した。敵は島に船を近づけるのを恐れ、島は孤立している」ОЖ

モルドヴァのサンドゥ大統領がキエフを訪れゼレンスキーと会談した。会談後の共同会見でゼレンスキーが沿ドニエストルからの脅威についてコメント:5月ごろにはロシアの特務機関の挑発で沿ドニ参戦の兆候もあったが、今現在はそう大きい脅威があるとは見ていない、だがもし一朝沿ドニが攻撃してくるようなことがあれば、「沿ドニの攻撃なんぞ我々には拳固でなく平手打ちである。ともあれそれに対して我々は拳固で返す(для нас это будут не удары, а пощечина, мы точно ответим ударом)」ОЖ

オデッサ随一のビーチリゾートエリアとされる「アルカディア」さんぽ。28日の様子。

時刻は12時ごろ、気温は28度で「耐えがたい暑さ」とか言ってる(笑止)。戦争などなきがごとしのオデッサです。人は少なく見えるがこの時間は大概イビサとかリゾートクラブで休んでるんでしょう。周辺道路は車いっぱいで今はもうガソリン不足になる前と何ら変わらない感じです。……だそうだ。同じように今日のここらあたりは戦争などなきがごとしですなと言い交わしながらショッピングしていたのだろう。そこへ鋭角にミサイルが飛び込んできた。クレメンチュク、最新の情報では、死者18人、不明36人。市FB

更新(だいたい)100日目。この記事はここで終わります。

オデッサが自分にとって過去に/よその街にならないようにと、流亡中ブカレストの宿で書き始めたのでした。この間いろいろありましたが、一向に平和は近づかない、死の影は濃くなり薄くなり、今また濃くなりつつあるという感じがします。

今ばーと見返しましたが、いろんなトピックがあったものです。非翼賛メディア封鎖、日本におけるロシア語狩り、オデッサ世界遺産登録へ、戦時下のユーモア、たたかうネコ、巡洋艦モスクワ轟沈、暗鬱のGW、橋、沿ドニ、恐怖の便所破壊弾、浜の死、浜の愛、浜の赤紙…。

世迷いごともいろいろ申しましたが、そのときどきの一応の考えなので、そのまま残しておきます。帰国後いろんな方と話し、いろいろと読んで、少しは視野も広がり、悪意のある言葉使いも抑えられるようになってきたかと思います。

101日目からは、また別に記事を立てて、オデッサ(ウクライナ)の現地報道を伝えていきます。平和への一章となりますように。このマラソンのゴールが実はそう遠くないのでありますように。

(下記ボタンより応援くださると嬉しいです)

何丘に「投げ銭」してみる

6/27(生活の破壊)

高名なスラヴ学者である私の恩師は戦争が文化の破壊であることを慷慨したが(ロシアによるウクライナの文化施設の直接破壊はもとより遠い日本におけるロシア語・ロシア文化キャンセルの風潮も含めて)、私にとってロシアのやっていることは何よりもまず生活の破壊である。NATO東方拡大にシリア・アフガン・コソヴォ、歴史家は何と結びつけるもいいしどんな尺度も用いるといいが、①まのあたり行われているこの破壊を絶対的に非難する、そして②このすべてはロシア指導部の決定ひとつでただちに終わる、のにそれをしないロシア指導部を絶対的に非難する。これが私の原則的ポジションである。

27日未明、オデッサ近郊のとある村落にミサイルが撃ち込まれ民家65棟に被害、うち4棟が全焼、子供2人を含む8人が負傷。УП

村の名は明かされず。爆発音が義父母に聞こえず義父母のネットワークで情報がないということは少なくとも義父母の村またはその近隣ではない。だが写真や動画(↓)に見える風景は私たちの村そのものだ。

村の景色はどこも似通っている、私たちの村に見える。妻は動画の視聴を拒否した。今晩また義父母の説得を試みる(日本への避難を)。

たとえばこの動画を自作自演だとかディープフェイクだとかといって疑い、国境に大軍を集めながらウクライナに侵攻しないしその計画もないと国を挙げて強弁し続けた挙句ある一朝侵略を開始し・その後も軍事行動の理由/目的の説明を二転三転させ・現地からの夥しき証言/写真/映像にも関わらずあらゆる攻撃を高精度かつ軍事施設のみを標的にしたものと言い張るロシアを信じる理由は私にはない。

また同じ27日、内陸部ポルタワ州クレメンチュクでは、白昼・営業中であり1000人からの人がいたショッピングセンターにミサイルが撃ち込まれ、少なくとも16人が死亡。ОЖУП

感情的な語を排除しながら書き綴っているが、あえて一言だけ言わせてもらうと、ふつふつと、怒りを感じています。こんな感情は多分、ロシア指導部の安全保障感覚とかその世界戦略の一貫性・継続性の理知的理解によって解消できる。だがそれをしたいという希求をもたない。知的怠惰を免れればたちまち感性的怠惰に陥る。ただ、このような現実を瞥見仄聞せぬでもないのになお「特殊軍事作戦」を支持するロシアの民衆の心性を理解したいとは、強く思う。

ビーチ一部解禁へ

市長「シーズン到来でビーチへ降りてくる人が引きも切らずパトロールが追いつかないので、仕方ない、ビーチでの水浴・日光浴を一部解禁する」。ある一区画につき、海に特殊な防護ネットを仕掛けて漂流してくる機雷から守り、かつ監視塔を立てる。ウクライナ軍が自ら仕掛けた浜の地雷はもちろん一掃するんだろう。どの浜が選ばれるんだろう個人的に興味があります。ОЖ

ウクライナ語学習アプリ

今度のことで自分たちの国の国語であるウクライナ語にきちんと向き合いたいと思ったロシア語話者のための「おすすめウクライナ語学習アプリ集」→ОЖ。私もやってみよ。一通り試して別記事で紹介してもええわ。付録として記事末尾にウクライナ語化政策担当大臣による「どうすればウクライナ語でしゃべれるようになりますか?」8つの実践的アドバイス。

6/26(オデッサ無事)

クリミアからオデッサへ2発の対艦ミサイルが発射されたが無事に撃ち落とした。かなり街に近いところで迎撃したようで大変大きな爆発音が街の端から端まで鳴り響いたということだ。ОЖ

この日行われたキエフへのミサイル攻撃についてブラチュク(オデッサ州軍政報道官)「平和な街をあえて攻撃する戦術だ。我々をして平和を懇願せしめ、無条件降伏を迫るためだ。この戦術の延長上で多くの街が攻撃されているし、オデッサも今後攻撃を受けると思っておいた方がいい」「敵は攻撃する理由に事欠かない。ウクライナがEU加盟候補となったと言っては攻撃し、G7サミットが開かれると言っては攻撃する」ОЖ

ゼレンスキーは26日の動画の後半ロシア語に切り替えてベラルーシに訴え。ベラルーシは戦争に引き込まれようとしている、皆さまの運命をクレムリンはもう決定してしまった、彼らにとって皆さまの命は鴻毛より軽い、だが皆さまは奴隷ではない、自分たちの国の行く末は自分たち自身で決めるのだ。動画

6/25(乱れ撃ち/海開き/総主教を名乗る某ロシア人)

オデッサ無事。だがウクライナ全土に半日で45発のミサイルが撃ち込まれた。ゼレンスキー「これは何を意味するか。ロシアに対する制裁が十分でないこと、ウクライナへの軍事支援がもっと必要であること、いまパートナー諸国の演習場や保管庫に蔵われている最新鋭の対空防衛システムが、それを今地球上で最も必要としている場所に届けられるべきこと、を意味する」。

海開き

この不時の乱れ撃ちについてオデッサ州トップ「ウクライナのEU加盟プロセスは既に始動した。ミサイル攻撃なんぞでこれを止めることはできない。加盟候補国というステータスによってすでにウクライナはEUの開発プログラムや破壊されたインフラ復旧プログラムにアクセスすることが可能になっている」ОЖ

なぜ今こんな矢鱈な攻撃してきたかについては「激しい戦闘が行われているルガンスク・ドネツクから意識をそらすための陽動であろう」とオデッサ州軍政報道官。ОЖ

浜の事情は相変わらずで、地雷機雷ミサイルの3種の脅威につき日光浴海水浴禁止、だが人らは言っても聞かぬので、とりま地雷機雷の面での安全を確保した特区ビーチを近日オープンさせるので、それまで待っとけと。ОЖ

その一方でオデッサを代表するビーチ(ということになっている)アルカディアではリゾートクラブが続々オープンしている。「イビサ」↓

柵一枚向こうに地雷原と化した無人の砂浜が広がっていて寒々しいが、とりあえず柵のこちら側では、まぁ潮風を感じながらビーチベッドに横たわりプールでぱちゃぱちゃできるというわけ。

ただ空があるだけ

またひとつ明るい話題。オデッサ中心部の都市庭園(горсад)のロトンダではプロの楽団・ミュージシャンたちによる無料の青空コンサートが恒例になっていて、晴れたこの週末は多くの人で賑わってるようだ。楽しみがあるのはいいこと。ОЖ

Просто неба(ただ空があるだけ)と銘打たれた一連のコンサート。この題、ジョン・レノンの「イマジン」の一節(Above us only sky)からかと思ったり。(крылатые качелиからかも。ちなみに映画Приключение Электроникаはオデッサ映画スタジオの制作)

横浜市の支援

オデッサ市議会の次期会期で環境保全および改善に関する5か年計画(2022-27年)が審議されるのだそうで、その中の「代替的浄水供給源の確保」の問題につき、姉妹都市=横浜の名が言及されている。横浜市から供与される特殊な浄水装置(多分、前に話があったやつ)などによって非常時における浄水の確保量が大幅に増大するそうだ。T

キリル転倒について宇メディア報道

ロシア正教会のトップ(ロシアの侵略戦争を公然と支持し世界の宗教界から白眼視されている)がロシア国内某所の教会で聖水に足を滑らせ尻餅ついたという(どうでもいい)一件を報じるУП記事全文↓

ロシア正教会の首魁キリル(ウラジーミル・グンジャエフ)がノヴォシビルスク市の教会で清めの儀式の最中に転倒した。
キリルは大理石の床に足を滑らせ平衡を失い、「主よ赦したまえ」の歌が響くなか転倒した。近侍がすばやくロシア人総主教を抱き起した。

このぞんざいな感じ。「モスクワ及び全ルーシ総主教」との称号も用いない、わざわざ俗名を示す、あまつさえрусскийでなくроссийскийと。全行間が「ざまぁみろ・いい気味だ」と語っている。現地報道の色調の一例として紹介した。比較のためMeduza記事こちら。

6/24(4か月が経った)

2月24日の侵攻開始から4か月のこの日、オデッサ無事。検察によるとこの4か月でオデッサは42回攻撃を受けた。オデッサに対して発射されたミサイルは総計70発あまり。民間人10人が死亡、うち2人が子供。負傷29人。軍人の死傷者数は非公表。民間施設も数多く損壊した。ショッピングセンター、空港、海辺の休養施設、石油貯蔵施設、橋、民家、アパート。これがこの戦争で最も幸運なウクライナの街。ОЖ

LITTLE BIG、反戦MV発表して亡命

バカバカしいMVで有名な(これとか)ロシアの人気アーティストLITTLE BIGが新曲「ジェネレーション・キャンセレーション」に戦争/政権/社会批判をふんだんに盛り込んだMVをつけて発表し、国外に逃れる(逃れた?)そうだ。

洗脳、箝口、権力者の飽食……まぁ見れば分かると思う。「自分の国(ロシア)が大好きだが、ウクライナにおける戦争には全面的に反対であるし、そもそもあらゆる戦争は容されざるものであると信じる。我々はロシア政府の行為を非難する。ロシアの戦争プロパガンダマシーンは我々にはあまりにおぞましいので、全てをなげうって国を去ることに決めた」とバンド声明。Meduza

6/23(EU加盟候補/さらばロシア語)

基本的に無事。オデッサに2発ミサイルが発射されたが両方とも撃ち落とした由(ОЖ)。撃墜率が上がっているのは間違いないと思う。言われるように敵方で超音速ミサイルが涸渇して旧式のミサイルに頼らざるを得なくなっているのか、それともウクライナ側が欧米の新式対空兵器を得て防衛能力が向上しているのか。一方、お隣のニコラエフには3発の巡航ミサイルが撃ち込まれて製造および社会インフラに被害、負傷者も出ているという。そのミサイルの発射ポイントは、露軍の支配下に落ちているヘルソンだそうだ。

オデッサに撃ち込まれるミサイルの発射ポイントはクリミアないし海上の船団であることが多い。ニコラエフ(上地図ではムィコラーイウ)にはヘルソンから撃たれるか。この距離ではいかにミサイルが旧式で対する防衛兵器が新式でも間に合わないか。ニコラエフが陥落したら今度はニコラエフからオデッサへ撃たれるのであろう。・・(書く手が止まる)

EU加盟候補国に

ウクライナがEU加盟「候補」国になった。モルドヴァと一緒に。こんなこと言うのは何だが、オデッサの情勢ほどには、関心がない。ウクライナがEUに入るのをいいこととも悪いこととも思わない。好きなようにしたらいい。とりあえず喜んでいる人に、おめでとう。ゼレンスキー、読んでるかい、あんた嬉しいかい、ならおめでとう。

オデッサ州軍政長官マルチェンコ「ロシアが制裁下で石器時代に逆戻りしているその頃、ウクライナは敵の砲撃下でさえ発展と前進を続ける」。「行く手は険しく、多くの改革が必要であるが、我々は(EU)加盟という目的を達成する」。ОЖ

改革というのは、7項目から成る「ウクライナおよびモルドヴァが加盟候補のステータスを維持するための条件」というのが欧州委員会から示されているそうで、司法改革、汚職取り締まり、資金洗浄対策、反オリガルヒ法の施行といった項目が見られる(Европейская правда)。

要するに欧州スタンダードのちゃんとした国になったら入れてあげるよということだと思うのだけど、ルーマニアはEUだけど汚職ばりばりだよと言ってた人もいるし(流亡記)、何が決定的なポイントなのか、7か条通覧したけどいまひとつ分からない。

海の様子(蛇島、石油採掘施設)

蛇島における占領軍掃討作戦が続いていて戦果も上がっているそう(ОЖ)。それはそれとして、例のロシアの石油採掘施設だが、これはいつの間にそういうことになったのだろう、ウクライナ側も同施設を攻撃したことを認めていて、ブラチュク(オデッサ州軍政報道官)は「同施設には露軍の地対空兵器、警備隊、無線電波諜報装置が設置されており、小規模な軍事基地そのものと化していた」「同施設はオデッサ港の封鎖にも利用されていた」として正当化に走っている(ОЖ)。本当にそうだったらもっと早くそう言えたと思うが。だって戦果じゃないですか、それも赫々たる!

ロシア語の抹消

言語の問題は悪くなる一方だ。オデッサの学校(小学~高校)はいま夏休みで、9月からは新年度が始まるわけだが、もうロシア語・ロシア文学は一切教えないという方向になっている(まだ決定ではない)。現状でもすでに必修科目としてのロシア語は存在しないが、今後は選択科目としても存在できなくなるらしい。ロシアの作家は外国の作家に置き換えられるそうだ。たぶん私立の学校はさすがに大丈夫だと思うのだが、ふつうの一般の公立学校では、プーシキンを一行も習わない、トルストイもドストエフスキーも読まないということになる。

私はロシア語を母語とする人(それはオデッサに、控えめに言って「決して少なくない」)がロシア語で学び、読み、生活する権利を飽くまで擁護したい。だが……こうなるしかないのか。言語というのは空中を漂うなんらかのサブスタンスなどではなく、具体的個人に受肉することによってしか存在しない。そしてその個人にとって言語とはすなわち精神であり世界である。それを政治だの国家だのが干渉・訓導・矯正するなどおぞましきこと……とはいうものの、言語Aが言語Bに置き換わってもその人はどうかこうか精神を構成し世界を把握する、じっさい歴史上、世界のあちこちで、言語の改造ということは行われてきた。今は誰も話さなくなっている言語(方言)・使用しなくなっている文字などいくらもある。それらもいつかは誰かの内的宇宙を構成していたはずだが、今はもう惜しむ者もいない。同じことか。もう5年か10年この言語浄化が続いて、ウクライナは全きウクライナ語の国、になるのか。

だが一方で、もしこの状況でウクライナが、私たちは頓風珍ランドと化した今のロシアを憎むが、それでもロシア語とロシア文化を尊重すると、ウクライナに暮らすロシア語話者を、その宗主国を僭称するロシアでなく、ウクライナ自身が守ると、宣言したなら――。私ゃ泣くだろうな。世界は感動し、ロシアの侵略はロシア国民の目に明らかに正当性を失うと思う。だが、それはもはや人間に可能な寛容を超えている、という気もする。

オデッサの学校教育からロシア語ロシア文学が完全排除されるかどうか。その決定は、8月に市長が下すのだそうだ。ОЖ

道路名称の改定

これも似た話題だが、オデッサの道路名称のうちロシアやロシア語ならびにソ連と関係があるもの(あって、かつ、ウクライナやオデッサと特に関係がないもの)を別の名に改めましょうという例のあれ。有識者会議でとりあえず39の道路名について問題が指摘され、改定案が示された。ちょっとマニアックな話だが、多くが「疑似ウクライナ語の純正ウクライナ語化」であって、たとえば小舟通りЛодочний переулокというのがあるが、これはロシア語の小舟лодка→лодочныйをウクライナ語で正書してлодочнийにしたもので、けれどもそもそもウクライナ語で小舟はчовенというのであって、同じ意味でもЛодочный/ЛодочнийでなくЧовновийとするのが正しいと。そういう技術的な改定が多い。つまり、第何波めかとなる今度の道路名称「脱共産化」で実質的に行われていることは、先行する改定のやっつけだった部分の精緻化である。ОЖ

この話をするときに、実はしておかなければならない話だと思いながら、いつもしないで済ませてしまう話があるのだけど(話話うるさいね)、ウクライナでは原則的に、裏路地一本に至るまで全ての道路に名前がつけられている。これはロシアもそうだし、たぶん欧州全域でそう。住所は××市〇〇通りの何番という形でほぼ特定できる。日本は基本的に道に名なんぞついてませんよというと結構びっくりされる。地球の文明化された領域ではすべからく道路に名前がつけられていると思っているのである、すべからくの使い方合ってますか。「ホンジュラスじゃあるまいし! それじゃどうやって住所を特定するんだね日本の人たちは?」「郵便配達の人は特殊な地図と首っ引きあるいは鍛えた土地勘で町名と番地(クヴァルタール)と表札を頼りになんとか目当てを探り当てますが、ふつうの人は『二つ目の信号を右曲がってローソンの手前で左』とかそういう言い方をします。あとは今ならGoogleMapですね」

6/22(この戦争におけるオデッサの役割so far、他)

22日オデッサは空襲警報鳴りやまず。ミサイル一発撃たれたが撃墜した(ОЖ)。だが隣のニコラエフが7発撃ち込まれて民間人に死傷者も出ている(УПУП)。ロシア側は22日の発表で「21日の攻撃でニコラエフの造船所を破壊しウクライナ軍人500人を殲滅」としている(TASS)。ニコラエフはソ連時代から造船業の盛んな街で立派なドックが並び壮観である。あの一つがやられたのだろうか。ニコラエフは義父の故郷。

オデッサの今の状況を一言でいうと

アメリカの映画監督?のMarty Ollsteinという人がウクライナ戦争のドキュメンタリーを撮ってるそうで、オデッサを訪ねたその人にオデッサ市長が語った言葉がオデッサの今をよく要約してたので紹介す。「今日オデッサは人道支援センターの機能を果たしており、ウクライナ諸都市へ定期的に食料や医薬品を送っている。今日オデッサが無事を保っているのはハリコフ、チェルニーゴフ、ニコラエフの英雄的防衛のお陰である。我々の責務は、ウクライナ軍及びこれら諸都市の住民を支援するべく力の限りを尽くすことである」T

蛇島

ロシア軍の拠点になっているオデッサ沖の蛇島(「ズミイヌイ島」)へのウクライナ軍の攻撃が続いている。軍は「島の完全解放をめざす」としているが、前に読んだ論考でこの孤島は攻めるに易く守るに難いとか言ってたので、奪還は目指さなくてもいいんじゃないか、敵装備をおびき寄せては叩いて粉微塵にするということを延々繰り返せばいいのじゃないか、と素人考え。ОЖ

機雷(浜の安全)

時化(シケ)で繋留を解かれた機雷がオデッサ沖に漂着して、自然に爆発したり、あるいは沿岸警備に発見されて無害化されたりする話をこのごろとみによく聞く。どのくらいの威力なんだろうか、知識がないので想像するほかないが、何しろ波打ち際で炸裂して「海の家」のシャッターがぶっ壊れるくらいの衝撃波だそうだ。ОЖ

適時に伝えそびれたニュースだが、なんでも今月18日、ウクライナ内務大臣という人が「オデッサの一部ビーチをやっぱり開放する」とかTVで述べたということだ。特定区画につき、浜の地雷を全面撤去し、機雷が漂着してないかよく確認したうえで、水浴・日光浴を許すということらしい。どんなに口を酸っぱくノーヴィクトリー・ノーヴァカンスと言っても聞かぬのでガス抜きを用意するということか。続報がないのだが。こう頻々と機雷が流れてくるようじゃ、やっぱ無理なんじゃないか。この夏ひと夏くらい……我慢できないものか。ОЖ

ОЖ「今日のアネクドート」

生きていることの証として今日も笑うのであるが、というのは妙な前置きだが、こんなものも果たしてアネクドートと呼べるのかなぁと疑わしいものも含めて、相変わらずОЖが綴っている「今日のアネクドート」。その今日の一発。ОЖ

「よそから来た人にどう説明したもんか。デヴォラン坂は爆撃されたのではなく、はじめからこんな姿だったのであると」

オデッサ市中心部に街と港をつなぐデヴォラン坂というのがあって東京国立/国分寺の「多摩蘭坂」と姉妹坂なのであるが、並び立つ帝政時代の建物が老朽化で定期的に自然崩落する。たしかに、これがウクライナの今です、オデッサの今ですと上掲2枚の写真を提示して、露軍にぶっ壊されたと思わない人はいないだろう。

にしても、応援している同情していると言いながらオデッサまたウクライナをくささずにはいられない私のこの癖(ヘキ)はなんだろう。

6/21(ミサイル/蛇島/情報戦)

オデッサ無事。20日の突然気が触れたようなミサイル大量発射で、結局一人が死亡したそうだ。食糧貯蔵庫の警備員。ОЖ

蛇島強襲

侵攻初日にロシアに占拠され現在ロシア軍の拠点になっているオデッサ沖の蛇島остров Змеиныйにウクライナ軍が猛攻を仕掛けたとか。敵損失は甚大、ただ「作戦は続行中であり、その完遂のためには<情報上の静寂>が必要である(Военная операция продолжается и требует информационной тишины для ее завершения)」ОЖ

露側の発表

ロシア側がいま盛んに言い立てている、黒海海上の石油採掘施設(ロシアに属する)に対するウクライナ軍による攻撃(これにより3人が死亡7人が不明とか)、これについてウクライナ側メディア一言もなし。ロシア側はむしろ昨日の黒海北岸一帯へのミサイル大量発射は本件の「報復」であると明言している。何らかの事象はあったのだと思う。つまり、ウクライナ軍の攻撃で露側の民生施設が破壊され民間人が死亡した。でもひとまず作戦が一段落するまで「情報上の静寂」のため、オフィシャルのアナウンスは行わないし、人らも飛語するなと。

21日のコナシェンコフ(露国防省報道官)報ではウクライナ軍は蛇島強襲・上陸に失敗し(そこで使用された兵器・手段やウクライナ側の損失についても詳述されている)、石油採掘施設の破壊という「挑発行動」の挙に出た。これに対する「報復」として、オデッサ州の飛行場=無人機基地ほか複数の拠点を攻撃・破壊したと。そういう整理になっている。TASS

報復という言葉は小論理としてこの一連の出来事をよく説明するかもしれないが、そもそも連中がやっていること、ウクライナの脱ナチ化とかドンバス解放とか、その大論理にこれがどう整合するのか。そもそも連中が即時戦火を収めて占領地から撤退すれば、全ては終わる。それをしない(むしろなおも拡張しようと砲火を用いている)者が何を言うか。この原則的ポジションから一歩も動かぬこと。

ロシア語図書の今後

敵性図書の輸入禁止(6/19記)をめぐるMeduza記事。なんでも、ロシア・ベラルーシ並びにウクライナの被占領地域で出版された本のウクライナへの輸入が禁止されるほか、23年からはウクライナ国内でのロシア語図書の刊行にも厳しい制限がかかるのだそうで、たとえば海外人気小説の翻訳出版はウクライナ語のみ可。ただしトルストイとかプーシキンとかロシア文学の古典についてはロシア語のままで出版可だそうだ。

なお、私人によるロシア語図書のウクライナへの持ち込みは10冊まで許される。ただしウクライナ政府が作成する禁止本リストに入っている「反ウ的」図書は不可。また、持ちこんだ図書の売却は不可。

Meduzaが今度の禁書法についてロシアの複数の出版社に聞いたところ、既に破綻して久しい図書交流の実態が法文に反映しただけだという人もあれば、損失甚大なりという人もいる。得意の言語で手軽に読める本がなくなることでウクライナの読書人口は減るであろうという声も。興味深いのは、近年のロシア語離れの中で外国語図書のウクライナ語訳の品質が向上していて、いまや外国で書かれた人気書籍がまずウクライナ語に翻訳され、それがロシア語に再翻訳されてロシア国内で流通するというコースも見えてきているそうだ。

今次の侵略戦争を受けてロシア語の地位は国際的に低下した/するだろうか。古巣(早大露文)では22年度の露文専修進学者ならびに1年生のロシア語選択者に目だった増減はないそうだ。ひとつ確かなことは、今度のことで逆にウクライナ語への需要は高まる、ということだ。ウクライナ語を学びたいという人は世界的に増えるに違いなく、その意味で、ウクライナ語の国際的地位は間違いなく向上した/する。

禁書法2022原文→https://itd.rada.gov.ua/billInfo/Bills/pubFile/1375427

ある芸術家の反戦アクション(のその後)

ロシアの若い映画監督エカテリーナ・セレンキナという人が今月1日の世界「こどもの日」に風変りな反戦活動を行い、のち当局の追跡を恐れて国外に逃亡していたのだが、このほど同氏へのMeduzaのインタビューが出た。かいつまんで紹介する。

どういうアクションだったかというと、何しろ深い深いモスクワの地底に降りてって、1時間ほどメトロに揺られて車両から車両へと歩き回った。「ロシアの軍人がウクライナで子供を殺している」と繰り返しながら。その手には血塗れのおくるみにくるんだ赤ちゃん(のマネキン)。

女史はいう。死んだ赤ちゃんというのは強すぎるイメージであって、それを目にした人の心を傷つけてしまうかもしれない、たとえばもし実際に子供をなくした人がたまたまこれを目にしたら。そう考えて、これが「死んだ子供」でなく「子供の死」の寓意であることが明らかであるように、なるべく元気そうに見えるマネキンを選んだし、血に染めるものはおくるみ(布)に限った。でも一方で、日常性にひび割れを起こし、見た人の心を揺さぶり、戦争の残酷な現実に目を向けさせるためには、過激さは避けて通れないとも分かっていた。

すぐに通報され、逮捕されるだろうと思った。帰宅ラッシュが始まる前の16~17時という時間帯を選んで、パルク・パベードィ(勝利公園)駅の長いエスカレーターを降りていった。はじめ小声で「ロシアの軍人がウクライナで……」と唱えていたうちは、これが反戦パフォーマンスであることが外見上分明でなく、心配した人たちが優しく声をかけてくれた(ロシアの人らは、ウクライナもだが、日本人には想像できないほど知らぬ他人によく話しかける)。そのうち官憲の影がささないことに勇気を得て、大声で「ロシアの軍人がウクライナで子供を殺している!」と唱えだすと、人らのかける声は「罵声・怒声」か「支持・声援」のどちらかになった。

罵声を浴びせたり脅迫的なことを言ったり攻撃的な反応を見せた人と支持してくれた人はだいたい半々だった。ロシアで戦争反対を公然と唱えることが危険であるようなご時世にだ。戦争を支持しない人の多くは多分、だんまりを決め込んでいたのだろうと思う。なんにも反応しない人が大半だった。より正確には、反応を「表さなかった」ということで、でもどうかこうかこちらを見てはいたし、何らかの内的反応があったことはほとんどすべての人の顔つきに明らかであった。彼らの内面に何が起きていたかは私に知る由もない。

セレンキナ氏はこのアクションののちベルリンに逃れる。本件の捜査が行われていることは露メディアの報道にて知った。現在もベルリン。

映画監督としての今後の活動については、今の状態では戦争に関係ないものを作るということは自分には不可能で、むしろ「戦争とかロシア軍の犯罪行為とは無縁な情報やモノで公共空間を満たすことを努めて避けている」。ドイツで反戦活動を続けるかどうかについては「当然続けるが、どんなアクションをとるかについてはもっとよく考えなければならない」というのも「ロシアにいるのであればフェイスブックのポスト一つでも重みをもつが、国外にいてあなたは一人じゃないとか皆が皆戦争に賛成しているわけじゃないとか言っても『外から言うは易し』との誹りを免れない」。ドイツにいるのであればむしろドイツ政府に対して圧力を(たとえばウクライナへの支援をもっととか、石油・ガスの輸入を禁止せよとか)かけるような活動を行うのがいいのではないか、と。

この戦争を止めるために本気で何かをしようと思っている人には大変参考になる内容と思う。反戦活動の「模範例」という感じがする。どういうことに気をつけて表現を行うべきかという点も含めて。また、人たちの反応に関するレポートも興味深い。こういう色んな報告を集めて、いまひとつ得心のいかない世論調査の結果を補強する必要がある。

何より、今のロシアで、逮捕や迫害のリスクを承知の上で、たった一人で反戦の声を上げるその勇気に、限りない敬意を覚える。

↓活動について述懐しているインタビュー動画(別チャンネル)

【お知らせ】
本記事の更新はウクライナに平和の鐘が鳴るその日まで果てしなく続くのですが、いささか長くなり過ぎたようで、読み込みも遅くなってきたので、間もなく迎える更新100日目を機に別記事を立てたいと思います。(いま94日目)

それで、毎度こういうことを言うのは金の亡者みたいで我ながら浅ましいなと思うのですが、募金をいただけると嬉しいです。ウハウハの生活を送るためでなく、このことがふつうに持続可能であるために、いくばくかの収益が上がることが必要です。

これまで本記事10万字ほど書いていますが、皆さんの「知る」もしくは「考える」に少しでも裨益できているのでしたら、下掲ボタンより応援いただけると、本当に助かります。

何丘に「投げ銭」してみる

6/20(ドカドカ撃ってきた)

オデッサへ大量のミサイルが撃ち込まれた。大した被害も出ていない……ようだが実相はわからない。とにかく鳴りっぱなしの空襲警報と間歇的な爆発音でしんどい一日だった(ことだろう)。

まず朝方、複数発のミサイルが撃ち込まれたが、いずれも空中で爆破。しかしその衝撃波で窓ガラス80枚ほどが破れたという。ОЖ

つづいて日中、3時間にわたりウクライナ南部(オデッサ含む)に14発のミサイルが撃ち込まれた。ОЖ

ウクライナ側の発表では農場だとか食糧貯蔵庫に被害となっている。負傷者も複数出ているとか(ОЖ)。一方ロシア側の発表では、オデッサ州の飛行場に攻撃が加えられて無人戦闘機「バイラクタルTB2」二機およびその管制基地が撃滅されたという(TASS)。

忘れた頃に南を叩く。何がしたい?ウクライナ大統領が南部を訪れた、それを事前に関知できなかった、仕方がないから事後的に威圧?

オデッサはウクライナ語を話すべき?

オデッサ市長がウォールストリートジャーナルのインタビューで言語の問題について何か言ったみたい。Tにその断片がある。

すべてのウクライナ人が国語(ウクライナ語)をマスターし、国語で話せるのでなければならない。オデッサの文化的多層性や独自性を語るなら、それをきちんとウクライナ語でやってのけること。「そうすれば全ウクライナが我々を支持するだろう」と市長。

動画では市長めずらしく頑張ってウクライナ語で喋っている(最後ロシア語に戻ってるが)。恐らくだがオデッサがロシア語の街(人たちがロシア語を話すウクライナの街)であり続けるためにはウクライナ語を「も」使う必要があるということを語っている。全文読みたいが見たとこWSJにまだ記事がないのと、あとどうも会員にならなきゃいけない感じすね。

たとえば妻とその兄および両親はウクライナ語を読んだり聞いたりする分には100%理解できると豪語するが多分話せない。話しているのを聞いたことがないし、たまにウクライナ語話者を相手どっても、自分は飽くまでロシア語で通している。ウン十年ろくにプラクティスがない言語を「実は話せる」なんてことがあるとは思えない。そういう人はオデッサに少なくないはずだ。と思えば、ロシア語喋ってるとこしか見たことない知人が、何かの拍子に流暢なウクライナ語を話し出して、そのときはじめて彼が完全なバイリンガルであったことを知る、というケースもままある。

にしても、こういうのを逆説的というんですよね、オデッサがロシア語というアイデンティティを保つためにはウクライナ語ができなければならない、とは。本当はそんなこともないはずなんだが。スイスは独仏伊語ぜんぶ国語。ウクライナも話者人口からいえば露語・ウ語の少なくとも2つが国語であって然るべきだった。つい最近までロシア語はそれでもオデッサ含む南部諸州で地域公用語に指定されていたのだが、現政権の言語浄化政策でその地位も剥奪されてしまった。

これについてはこのブログで何度も書いてるが改めて言う。ゼレンスキー政権下で上からの言語浄化・文化浄化(ロシア語・ロシア文化の抑圧)は事実として行われていた。私はその政策を絶対に肯定しない。だがここに3つの「だが」。だが①そのことはロシアによる侵略を寸毫も正当化しない。だが②そこには情状酌量の余地もある(ロシア世界なる恐るべき拡張的ドクトリンを奉じる隣国に自国領土の一部を現に占拠されている国としては)。だが③、心情的には今はそのことはあげつらいたくない。まのあたり行われている余りの悪逆非道に際しては、ウクライナは私にとって第一に応援すべき国であり、第二にそれについて語るべき国であり、やっと第三になって(建設的)非難を向けるべき国だ。

6/19(電車で帰る/歌も聞こえない)

未明クリミアからオデッサ方面へ2発の超音速巡行ミサイルが発射されたが両方とも撃ち落としたということだ。この一週間、オデッサ州に対して6発のミサイルが発射されたが全て撃ち落としたという。なんだろう。ドキドキ。防衛能力が向上しているのだろうか。西側供与の新式兵器によって? ОЖОЖ

ゼレンスキー、北へ還る

そうか電車で(来て電車で)帰るのか。ご苦労なことだ。オデッサ←→キエフ間には高速鉄道は存在しない。電車で9時間とか10時間とかだ。もちろん最上等の客車ではあろうがこの鈍行感、揺れ、およそ大統領待遇らしからぬ。

何しろその言うことにゃ、「南は誰にも渡さない。全部取り返す。ウクライナの海の安全も取り戻す」そして「ロシアにミサイル何発あろうとも人たちの生きたいという願いを滅ぼすには足りない(Нет у россии столько ракет, сколько у наших людей желания жить)」。

敵性ソングBAN

敵性語・敵性ソング・敵性図書BAN。ウクライナ最高会議でメイドイン侵略国の楽曲の公然使用を禁止する法案が可決。

1991年以降侵略国(ロシア連邦)市民であったミュージシャンの音源・映像・ミュージッククリップの公然使用・公然上映・公然披露・公然表示を完全かつ無期限に禁止する

ただしロシアによるウクライナ侵略に反対の立場を表明したミュージシャンについては使用可だそうだ。これから国家安全保障会議および国防省がホワイトリストを作って公表するそう。(たとえばGBとかDDTとかは大丈夫ということ)

あわせて決まったことには、ラジオで使う曲の4割がウクライナ語ソングであるべきこと(現状35%から引き上げ)、一日に放送するいろいろな番組(ニュースとか娯楽番組とか)でアナウンサーやパーソナリティが喋る言葉の75%がウクライナ語であるべきこと。ОЖ

さらに図書についても、ロシア及びベラルーシ並びにウクライナの被占領地域で刊行された図書その他出版物の輸入が禁止された。Meduza

敵性語・敵性文化排除は今に始まった話ではない。私らがいた頃(3月まで)のオデッサでもリアル書店における外国語図書の売り場占有率の上限は定められていたし、ロシアの一部出版社の刊行物は輸入禁止指定されていた。とはいえロシア語の本はわりとふつうに買えた。某ショッピングセンターのロシア語新刊図書専門店、若者に人気のジャパニーズコミックス(NARUTOとかハガレンとかDEATH NOTEとか)のロシア語バージョンが棚にずらり並ぶアニメショップ、ネット通販(並行輸入?)、ソ連時代~近刊のロシア語図書が山積してる青空古書市。少し手に入りにくくはなっても、引き続き買おうと思えばロシア語の本は買える状況と思う。

ラジオに関しては、男女2人が喋っていて男の方がロシア語・女の方がウクライナ語で互いバー喋り続けてふつうに会話が進行していくみたいなのをよく耳にして、面白いなと思っていた。そういうのもなるべく完全ウクライナ語でやりましょうということになる(もうなっている)のかな。

(テレビに関してはこの記事の内容を紹介しようと思いながらなかなか果たせない)

核開発

「世界がコロナで大変なことになっていた2021年、核保有9か国は核兵器に総計824億ドルを費やして、それでロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったばかりか、むしろ世界を一国の核の罠に引き込んでしまった」(Global Nuclear Weapons Spending 2021)。ひたすらに世界を悪くするだけの悪魔の技術。禁断の果実。癌。УП

桜桃

Tの19日の「きょうの天気」の一枚画がさくらんぼで嬉しかった。6月19日は桜桃忌。

6/18(電撃訪問)

ゼレンスキーがオデッサ来た。さすがに予告がなかったのでちょっとびっくりした。オデッサは嬉しかったろうと思う。ニコラエフの戦線視察のあと立ち寄ったものらしい。4/23のミサイル攻撃で住人8人が死亡(うち1人は3か月の赤ちゃん)したアパートを視察するなどした。
ゼレンスキーは基本的にキエフを離れない。今月6日のドンバス訪問に次ぐ遠征になる。国内の移動の安全がある程度保証できているということだ。TMeduza

ジョンソンのキエフ訪問

電撃訪問といえば、英ジョンソン首相が17日にキエフを訪れゼレンスキーと会談した。その後でジョンソンの名による西側諸国に対する4ヶ条の提案というのが出て(The Sunday Timesへの寄稿)、第1条に「西側はウクライナに必要な武器弾薬弾頭を供与し並びに兵士の訓練を行うこと」第2条に「西側はウクライナの国家機構安定化のために財政支援を行うこと」第3に「ウクライナ産品とりわけ穀物の陸上輸送を保障すること」第4に「ウクライナの港湾の封鎖を解除し小麦・トウモロコシ2500万トンの輸出を助けること」。これら穀物がロシアの海上封鎖により輸出できないことにより発展途上国に飢餓が引き起こされかねない。これを阻止するためウクライナに適切な兵器を供与し、オデッサからの安全な航路を創設するべく国連などを通じて外交努力を払わねばならない、と。УП

ゼレンスカヤへのインタビュー

英ガーディアン紙によるウクライナ大統領夫人へのインタビューがMeduzaで紹介されてて面白かった。夫人のゼレンスキー評。

(直接会うことがなかなか叶わない中で)国民へのメッセージ動画を毎日見てたんですが、非常にボルテージが高かったです。彼をよく知る身として言わせてもらうと、もうエモーショナルなレバレッジを全面開放しているなと。もう使えるものは全部使って自分の考えをなんとか届けようとしているなと。といって何もそれは人心掌握術とかそういうのではなくて、真率な、本当に自分が感じている感覚を述べているのだということは絶対に確かなんですが。あの人は非常に素早く台本を暗記して自信たっぷりに台詞を言うことができるんです。カメラにどう映ればいいかということも分かっています。というのは何もあの人が演技をしているとかそういうことではなくて、単純にそういうことを上首尾にやってのけるコツを理解しているということです。

台本がないわけはないと思うんだが「読んでる」感じでもないよな、と思いながらいつも見てたんだが、やっぱりそういうことなんだろうな。いわゆるактерское мастерство、俳優スキルを遺憾なく発揮してるということだ。もちろん口から出まかせでも相当喋れる人であるのはインタビュー動画など見ていて知ってるし、そこに真率な感情があることも信じる。

「規律」こそは夫の第二の名前です。目覚ましが鳴れば起き、歯を磨き、服を着て出かけていく、その間わずか5分。私なら30分はわたわたするところ。そういう特質があるんです、精神的な。ストレスに耐えて規律を遵守する、そういう特質が。ですから私はあの人の精神的な健康のことはあまり心配してないんです。心配なのは体の方です。あの人、困難な時期を過ごすと、そのあと決まって体を悪くするんです。緊張がとけたところへウィルスか何かを引っ張り込んでしまう。そうならないよう監督に努めてるんですが、あの人もまた世の男性の例に倣って、自分の体温とか血圧を測るのを億劫がるんです。それでもなんとか言うことを聞かせようとして小言を言ったりなぞします。

ゼレンスキーについてはコメディアン出身という紹介がよくされるが、んで私はコメディアンとしてのゼレンスキーをよく知らんのだが(ちんこでピアノを弾いたそうですね)、あちらのコメディアンを日本語でいう「お笑い芸人」と同じものと見ると誤ると思う。中にはおそろしく本を読むゴリゴリのインテリゲンツィヤで政治社会にも一家言もつがそれを特に売りにするでもなくバカなことばかり言ったりやったりしてる人も。と書きつつ私が思い浮かべてるのはイワン・ウルガンという人、侵攻第一日に政府を批判して国営第1テレビの看板番組を降りイスラエルに亡命した。

私はゼレンスキーが好きだ。この人の素の語りを聞いてると義兄を思い出す。義兄やその仲間たち、私によくしてくれた私のちょっと年長の兄ちゃんたちのまさにあの感じ。どこにでもいる気のいいあんちゃん。その彼が短躯一身に引き受けることとなった国一つ分の苦患を思うといたたまれない。戦争が終わったらゆっくり休んでほしい。もう大統領など続けないでほしい。第一、戦時のリーダーとしてまさにハマり役だった彼も、平時のリーダーとしてウクライナの根の腐った部分を根治する任に堪えるかどうか分からない。変に味噌をつけたり、薄汚い権力者になったりしないで、美しいままで退いてほしい。この素敵な奥さんと子供たちの待つ家庭へ。

以上は何も、ゼレンスキーが何丘ブログの読者だから言うのではない。

6/17(ハープーン、病院)

オデッサ無事。このまましばらく、望むらくは永遠に。

銛の一撃

黒海でウクライナ軍の攻撃によりロシア軍の補給船が撃沈された。使用された兵器は「ハープーン」だそうだ。

当該補給船は例の蛇島に武器弾薬および人員を輸送中であった。そこを西側供与の対艦ミサイル「ハープーン」でドン。乗員33人のうち10人死亡23人が不明だそうだ。以上はウクライナ側の発表(ОЖОЖ)。米国防総省筋も裏付けているらしい(Meduza)。まずこれ自体戦果として相当なものであるし、供与されますぞというところで情報が止まっていたハープーンによる最初の攻撃(命中)という点も大きいのでは。

「病院内に兵器が搬び込まれている」

16日ロシア国防省がまたぞろオデッサ市内の病院(複数)が火点化しているとのブラフ発表をなしたのに対しオデッサ側の要人たちのアクション。①オデッサ州トップ「ナチスを探してる?鏡を見てごらん。あんたらの間抜け面は今や世界全部の笑いものだ」ОЖ。②オデッサ市長、問題の病院を実地検分し医師看護師たちを前にスピーチ「不快・陋劣・醜悪な話ではあるが基本的に耳新しいものではなく、連中から期待すべきものは(こうしたフェイクニュースの)他に何もない」

6/15(顕彰/欠乏/蟄居)

オデッサ無事。

ゼレンスキーよりオデッサ州上空の防衛に当たっている地対空ミサイル部隊にその「勇猛果敢」を称える栄誉バッジが下された(ОЖ)。実際オデッサが撃ち落としている敵ミサイルは必ずしもオデッサを狙ったものだけでなく、キエフ含めより北方西方を破壊するべく呪せられたものを中途で迎撃しているケースもままあるとのことなので、ウクライナ全土を防衛していると言っても過言でない。

〇〇不足(続)

オデッサ州では塩も、砂糖も、酢も、重曹も足りている(から変に買い占めに走って問題を創り出すな)とオデッサ州軍政副長官。ОЖ

義父によるとガソリン不足はまだ続いていて、先日やっと満タン給油できたので嬉しくて久しぶりに車で仕事に行ったということだ。「え。節約すべきだったのではないですか」。まぁ嬉しかったんだね。一回だけ自分を甘やかして、翌日からはまた公共交通機関に切り替えたということだ。前にも書いたがオデッサは公共交通網が劣弱で、義父のケースだと村発なら電車、団地発ならマルシュルートカ(ミニバス)だが、前者は低頻度かつ通勤帰宅時の需要増を考慮しないアホダイヤ、後者は芋洗いで不快指数常時閾値越え。給油に成功した義父が一日Uriah Heepなどお気に入りのUKロックを聴きながらトヨタ・アヴェンシスを走らせたとしてそのちょっとした贅沢を誰が責められますか。義母だ。

あの男女のその後

浜で衆人環視下愛蜜舐めていた例の男女だが、裁判所は審理に先立つ中間措置として両人に蟄居を命じた。男性は完全蟄居だが女性の方は20時から翌6時までの「夜間蟄居」らしい。この軽減措置にはどういう理屈があると思われますか、皆さんのお考えは。23時からは普通に外出禁止(戦時の夜間早朝外出禁止令)なので、実質一日3時間しか外出できないのだが。ま、どうでもいいが。ОЖ

追記:なんと間抜けな奴。許可と禁止が裏表だった。女性の方は日中自由に外出できるというわけか。失礼しました。

6/14(防衛/バカンス/オペラ)

朝方クリミアよりオデッサ州へミサイル2発が発射されたが、対空防衛兵器が守備よく海上で撃ち落としたということだ。ОЖОЖ

ゼレンスキーも定例ビデオメッセージで言ってる。「ウクライナにはいま最新鋭の対ミサイル兵器が必要だ。パートナー諸国に繰り返し呼び掛けている。現状では数が足りない。いま欧州で最も対ミサイル兵器を必要としているのはウクライナだ。供与の遅延を正当化することはできない」(動画)。本当に、敵兵を殺す兵器でなく街をミサイルから守る兵器なら、下さらない理由がないのじゃありませんか。

選べ:バカンスか、戦場か

ついにここまで来たか。禁を破って海辺に憩ってる若い衆にその場で召集令状が発行されるようになった。ОЖ

「ビーチ大好き海で泳ぎたい」しかし「地雷ふんで爆死したくない」この二重拘束で、日本人ならまぁ命は大事にしましょう水浴しません勝つまではとなる筈のところ、オデッサ民は「それでも海で泳ぎたい(まぁ大丈夫っしょ!)」の方へ行く。ガッツあるよね。

当局は再三警告してるしおどろおどろしい立て札も立ってるし、パトロールも巡回してるのだが、それでも家族連れで海水浴したり潜水してムール貝をとったりする人があとを絶たないので、今度からパトロールに軍事委員会のリクルーターが同行するようになった。今は戦時特例で路上でも赤紙を渡せる(本来は住民登録地にて本人に手渡し。6/10参照)。あんちゃん元気やんかどや戦場行くか、んー?名前いうてみ?みたいなことになるから「わかったか。浜行くな。」

オペラ劇場再開

オデッサの心であるオペラ劇場が4か月ぶりに公演を行うそうだ。ОЖ。ポスター。

↑今月~来月の演目。仮面舞踏会、ジゼル、セビリアの理髪師、トスカ、アイーダなどバレエ・オペラの古典演目が並ぶ。

オデッサでは劇場ぼちぼち再開してこうかという流れになっている。昨日はムスコメディヤこと音楽喜劇劇場の再開が報じられてた(ОЖ)。何しろ空襲警報が鳴ったらただちに芝居を中断してシェルターへ避難。観客数はシェルターに収容可能な人数を上限とする。

オデッサのオペラ劇場をめぐる過去の何丘ツイート↓

6/13(浜の公序良俗/お酢/大英広場/美味い。)

オデッサ無事。

海の状況は、敵船団の編成にマイナーチェンジがあって、今はミサイル艦3隻、潜水艦1隻、揚陸艦3隻となっていて、これら艦船に総計36発の「カリブル」型巡行ミサイルが搭載されており、いつなんどきミサイルが飛んできてもおかしくない状況ではある。ОЖ

sex on the 続報

昨日の青姦カップルだが、やはり軍隊にはとられないことになったそうだ。よくよく調べてみると男性の方は外国人で(ベラルーシ人?)、女性の方はよその州の人だったらしい。ふぅん。州が違うとダメか。

軍隊にはとられないものの警察は公序良俗を乱したかどで二人をしょっぴく構え。該当する刑法何条とかによると5年以下の自由制限ないし4年以下の自由剥奪やらいう自由刑が科される可能性がある。後者はさしずめ禁固、前者は何だろうな。ОЖ

〇〇不足

今度は酢が不足するという投機的観測があって、値上がりとか、品不足が起きているらしい。セヴェロドネツクのAzotなる工場(いま第二のアゾフスターリとなるかと注目が集まっている「アゾト化学工場」か)からの酢酸の供給が止まりウクライナ全土でお酢が品薄、オデッサにもその波が及んでいる由。ただ、言うて買い占めみたいな騒ぎにはなっていないし、そうひどい値上がりも見られないし、他の工場での増産の報もあって、別に心配するほどではありませんよということになっている。ОЖ

先には塩不足やガソリン不足の話もあり、本記事でも取り上げた。今どうなってるだろう。〇〇不足の話はときどき持ち上がるが、それが「解消されました」というニュースは通常聞かれない気がする。逆に、なくて困っているうちはそうと報じられ続けるであろうから、音沙汰なくなったということは、まぁ問題自体が消滅(軽快)したのだと思っていいか。あとで義父母に聞いてみる。

ちなみに酢って何に使いますっけ。妻「ブリンチキ焼くとき使う。重曹と酢を少し混ぜる」。ブリンチキ(ブリヌィ)はクレープ。あと義母のレパートリーだと瓶詰の保存食系、ザウアークラウトとかアジーカ(という名のスパイシーなソース)とかに使ってた。
あと夏場、虫さされ痕に酢を塗ったりしてた。不快除去のためにわざわざムヒなど開発したりしない質実剛健な国民性。

道路名称の改変マジありそう

オデッサの道路名称のうちロシアくさいものを改称して街を脱臭漂白せよとの市議何某のイニシアチヴ(5/20参照)、これに市長まで呼応した。ということは、改称成るのだろうな。「いまわが街・わが国を地表から消し去ろうと試みている国家と何ごとかを共有したいという願いを我々は持たない」。オデッサの歴史と何ら関わりのないロシアくさい道路名、ノヴォモスコフスカヤとかボロジンスカヤとかクルスカヤとか、これらをオデッサおよびウクライナの新たな歴史の開闢に与って力あった人・モノ・コトの名に付け替えるべきだ、即ち、オデッサに「マリウポリの英雄たち」通り「グレートブリテン広場」といった地名が新たに誕生すべきだ、と市長。アングロサクソンをこよなく憎むроссийскомыслящиеには後者はキツイものがあるだろうな。T

ロシア版マクドナルド爆誕

日本でも報じられてるこの話題。「ロシアから撤退したアメリカのハンバーガーチェーン大手、マクドナルドの店舗を利用して、ロシア資本の新たなハンバーガーチェーンが12日、15の店舗で営業を始めました」(NHK

妙な話だよな、と思う。皆さんどう思われますか。結局全設備と全レシピ、店員の全ノウハウがそっくり盗まれちゃったわけじゃん。侵略国ではビジネスしませんといって体面というかイメージのために行動した結果がこれ。企業としては、ロシアで得られたはずの利益を手放して残りの全世界の方へ走ってその抱擁の中で幸せを掴んだのであろうが、「侵略国」の側に目を向けると、これで何か傷を負ったのだろうか。かえって得をしたのじゃないのか。

基本的には悪いのは最上層部であって平民諸氏には同情あるのみ、とは、思……わなければならないのだろうが、住む場所を追われ家族とは別れさせられ、悲報とサイレンと爆発音の中に生きる苦しみに少しでも均衡ということがあるように、せめてマクドナルド(と同じもの)を食べる喜びくらいは奪われてね、と願うことは、正当な……権利であると思われてならぬ。グローバル企業のロシア市場からの撤退とは、そのためのものであってほしかった。

(Meduzaの「いまロシアに暮らしながら自己の良心に背かないでいることはどうやって可能か」読者の声まとめ、と題する(全然題さない)記事にも、撤退した外国ブランドを踏襲する代替企業のサービスは絶対に利用しない、との声があった。この記事もいつか紹介したい)

バイデン「侵攻前に警告したのにゼレンスキーは聞こうとしなかった」

ちょっと前のニュースだがバイデン米大統領の発言「ロシアが侵攻を開始する確証があり疑問の余地はなかった、ウクライナ側に警告したのに彼らは聞き入れなかった」。これにウクライナ大統領府長官顧問が反発「侵攻の予兆は我々だって関知してたし戦争の準備は昨年から進めていた。リソースで自軍を遥かに上回る敵に対し100日以上も効果的な戦闘を続けている国を非難するとは愚かなことだ。ましてや、そんなにはっきり分かっていながらロシアの軍事的食欲を予防的に阻止できなかった国に何も言われる筋合いはない」(Meduza

だが、2月の時点でまさに両者の言うことに自己の破滅をかけて耳を傾けていた人間から言わせてもらうと、ゼレンスキー以下ウクライナ当局の発していたシグナルは、確実にミスリーディングであった。戦争なんか始まらない、落ち着け、アメリカは脅威を誇張して緊張を助長している、と最後の日まで言っていたのは、あれは何だったのか。戦後絶対に検証されなければならないポイントだ。侵攻が始まると急に諜報の感度が上がり知恵が昂進してコミュニケーションが真率になったかのような変な印象がある。なんだったのマジで?

【きょうの新出単語】
・しょっぴく構え しょっぴこうと意志し、そのために姿勢をやや前傾させる。
・酢酸 さくさん。C2H4O2
・マジありそう マジでありそうであるさま。
・抱擁の中で幸せを掴む 昨日あなたが買ったビッグマックのこと。

ひとつ賢くなった、こんな感じで明日も読みたいものだ、と思われた方、下記ボタンより応援ください。

何丘に「投げ銭」してみる

6/12(青姦/横浜/緑がもえる)

6月12日という文字並びがたまらなく好きなんだが前世で誕生日か何かだったろうか。

オデッサ無事。ちょいちょい市中に爆発音とか響くことあるけど訓練の音だから心配しないで、訓練は絶えず行っている、よりよく街を市民を守れるように、とブラチュク兄。昨日のデス・オン・ザ・ビーチを受け「ミサイルが飛んでこないことは戦争が終わったことを意味しない。皆さんが自分の命を無意味に散らせばそのときこそ前線で兵士が散華した意味も霧消する」とマルチェンコ兄。ОЖОЖ

sex on the beach

オデッサの海辺で週末の人だかりの中、若いふたりがお慰みを始めて、眉をひそめつ広角あげつの人らが勝手に撮った動画がSNSを駆け巡ったらしい。でオチは、これにブラチュク兄のコメントが出て、「この二人は特定されて召集令状が出されました、こんどメディカルチェックを受けることになります。前線に出ればホルモン過剰も抑えられるでしょう」。ОЖ

先日のファイトクラブの一件といい、いい教訓。戦時下で変に人目に立つことしないこと。

横浜市からのプレゼント

姉妹都市の横浜市から非常事態(水質汚染)の際に使える携帯用浄水器33セットが送られるという。コルスンスキイ駐日大使いわく「ニコラエフとシェアしてください。こんなものが必要とされる事態がそもそも出来しないと信じたいですが、置いといて損はないと思うので」。ОЖ

お隣のニコラエフは露軍の攻撃で浄水施設が破壊され一時は深刻な水不足となった。今は一応水道水は出るが飲用・調理に適さず、きれいな水はオデッサ含む近隣都市村落から運び込んでいる。

街角スナップ

ОЖマリヤ・カタワヤ記者のフォトルポルタージュ。週末のシェフチェンコ公園のようす。

緑が燃えてる。噴水もやってる。子供が遊んでる。猫が寝てる。街のことば:ベンチに腰かけていた女性「子供たちの様子を見ていると、なんだかとっても辛いんです。何か彼らに対して罪を犯しているような感じがして」。母子の会話「ママ、なんで海行っちゃいけないの?」「今年は海はダメなの。この前ちゃんと話したでしょ」。

記事内に他にもいっぱい写真があります。覗いてみてやってください、一番いい季節のオデッサ。私たちもよくこの公園へ遊びに来ていました。ОЖ

6/11(浜の悲劇、劇場再開)

オデッサ無事。

death on the beach

浜の悲劇。言わないことではない、とはいえ、気の毒に。ドンバスからオデッサに来ていた一家(避難か行楽か)が一日浜に遊んで、50歳家長氏が波打ち際にて未確認物体の作動によって爆死した。妻子の面前で。T(←リンク先動画)

今日も今日とて沖から機雷も漂着していた(ОЖ)。地雷と機雷。「これ以上何の証明が要るだろうか、いま黒海で水浴するのは危険であることの?」「何度繰り返せばいい、どうすればこの叫びがあんたらに届く。黒海に・オデッサの浜に、皆さんの手が・足が・頭が乱舞するのを見たくないんだ」とブラチュク兄。わかって。ОЖ

演劇活動再開へ

オデッサには劇場がいっぱいある。ランドマークのオペラ劇場は正直ウィーンのそれにも見劣りしないし、古典やるウクライナ劇場にロシア劇場(の方は最近改称してロシアの字がとれた)、現代劇やるチャイナヤ、大箱のムスコメヂヤ(音楽喜劇劇場)、人形劇場、ハウス・オブ・クラウン。こんなもんか。多くもなかった。で、今度のことでどの劇団も活動停止していたのだが、当局は「空襲警発令時に逃げ込めるシェルターが付いている施設に限り、そのシェルターに収容可能な人数を観客数の上限として」活動再開を許可する方針だそうだ。ОЖ

NHK

この日オデッサ市長に対するNHKのインタビューがあり、NHKの日別タイムライン記事にオデッサの話題が多く載った。海上封鎖と穀物危機の話など。現地報道まとめが趣旨の当記事として別に捕捉することはないので普通にそちら読んでください。NHK

なおNHKの取材に応じましたよという報告は一応短く市公式テレグラムにてなされた。T

6/10(無事。フェイク/レーニン/召集令状)

オデッサ無事。

フェイクニュースの出所

改めて、オデッサ州にコレラ蔓延の兆しありとの流言が広がっているがこれは「フェイクニュース」であると当局。まずオデッサ州軍政長官マルチェンコの兄貴によると、水質調査はぬかりなく水際対策も万全であり、州内にまだ1件もコレラ感染は認められていないとのこと。またオデッサ州軍政報道官ブラチュクの兄貴によると、本件は侵略軍による情報工作で、敵の狙いは那辺にといえば、いま敵が支配しているマリウポリではマジにコレラ蔓延の恐れがあり、それが自らの支配領域だけの問題でなく地域全体の問題であるかのように見せかけることなんだとか。ОЖОЖ

撤去を免れたレーニンとスターリン

ウクライナから共産主義の痕跡を一掃せよ勢がかねてオデッサ駅の駅舎に見られるレーニンとスターリンのレリーフを撤去するよう求めていたのだが、国営鉄道は「当該レリーフは歴史的・芸術的価値の高い建造物の一部をなすものである」としてこれを却下した。健全な理性というやつ。よかった。ОЖ

召集令状の出る仕組み

昨日付けでファイトクラブ野郎たちに赤紙が出た話をしたが、総動員態勢のウクライナで徴兵適齢の男性がふつうに存在、できているのだろうか(できているのだ、義兄もその仲間たちも知人らも現に応召していない)、でもどうしてできるのだろうか、徴兵の問題はどうなっているのだろうか、よう分からないでいる。

ちょうどОЖに召集令状(повестка)に関する記事が出た。ここに書かれてるのは、まず、総動員態勢なので、本来なら住民登録地に宅配して手渡しするものだが、往来での手渡しも可能・有効であると。次に、召集令状を受け取ることがただちに前線に送られることを意味するわけではないと。指定の日時に指定の場所に赴いてメディカルチェックを受けて兵役の適不適を判断される、赤紙とは一義的にはその呼び出し状である。しかし、召集令状を受けとりながら、正当な理由もなく、指定の日時に指定の場所に現れないと、過料をとられる。その金額は1700~3400グリヴニャ。私のいたころは数字を4倍で円換算できたが今どんなもんだろうか、まぁいっても1万5000円とかか。んで、(兵役好適と判断されて)動員令が出たにもかかわらずこれを忌避した場合には、3~5年の刑期をもらうらしい。ОЖ

召集令状は原則的に本人への手渡しが必要で、義兄はかつて兵役義務から逃れるために家族共謀で居留守その他の手管を使いまくったと聞いている。I don’t wanna be a soldier mama, I don’t wanna dieの人たちは今もそんな感じで逃げ回っているんだろか。逃げ切ってほしい。義兄の手に銃が握らされるという想像は堪えがたい。

6/9(無事。戦時ナイトライフ/地下経済)

オデッサ無事。

フェイクニュース

「コレラ菌による水質汚染」の情報がSNSで流布されたが事実無根であると当局が火消し。いわゆるフェイクニュース、社会を混乱させるための敵の情報工作なのか、それとも自然発生的に湧いてくるのか。ОЖ

節度をもって海を楽しむ

オデッサはビーチリゾートで夏こそはっちゃけたい住民心理があるが当局から改めて釘。ビーチは地雷原ゆえ立入禁止。あと、ナイトクラブ/ディスコテークはやってもいいけどルールを守り節度をもって営業せよとのこと。具体的には、22時閉店(外出禁止時間が始まる23時までに客が家に帰れるよう)、酒類の提供は9~18時の間のみ。ОЖОЖ

どう思われますかね。4つの感想。営業していいんや(意外)。クラブで18時以降酒類提供なしはいかにも中途半端というか生殺しというか(酒も飲まんと何するの?)。とはいえガス抜きは必要か。18時以降も密かに酒類は提供されるに100万円賭けてもいい。

なお、先日お伝えしたアルカディアのファイトクラブ野郎たち(6/5の項参照)はきっちりしょっぴかれて赤紙の発行を受けることになったそうだ。ОЖ

地下経済撲滅宣言

定例の短信動画でゼレンスキー、戦中・戦後の望ましい経済社会のありかたを語り、その中で、ウクライナ経済に「陰の部分」があってはならないと語った。いわゆる地下経済のことである。今(言葉合ってんのかなと思って)「地下経済」て調べてみたら、ウクライナなかなかに高い位置につけていた。こちらより

Не ту страну назвали Гондурасомホンジュラスちゃらわいらのことじゃきというお決まりの自嘲の句があるが(オデッサ生活で何度か耳にした)、そのホンジュラス(18位)より順位が高い。ちなみに日本を含む先進国の対GDP地下経済比率は大体10%前後。

地下経済の割合が分厚いことは生活者に容易に感得されるところで、実際どう考えても国庫をうるおさない現金授受が多い。街路に勝手にふろしき広げて青果を売ってる人。エレクトリーチカ(郊外列車)車内検札が乗車券不所持者に対し「発券する、しない?」と問う慣行(しないと答えた客からは少額の闇運賃を徴収し、それがそっくり検札のポケットに入る。鉄道会社の売り上げには貢献しない)。ソ連時代からの伝統で医療費原則無料のはずが、医師看護師に何かしてもらうたびに寸志を手渡す不文律。

まぁ多分こういう状況をさしてゼレンスキー、「社会には2つの部分しか存在すべきでない、すなわち、国家の独立を防衛する人たちと、その人たちに飯を食わせる人たちだ。これは経済ドクトリンとか政治的立場とかいう以前の話で、単純に、経済生活の中に『陰の部分』の存在を許す余地が我々にはないのだ」。合法な商取引によって税金がきちんと納められ、もって国防が強化されるべきであると。

戦時下のユーモア

ОЖは戦時ジョークとかよく紹介していて、基本まったく笑えないのだが、これちょっとうまいなと思ったので。「ロシア兵でもわかる!白旗のかんたんな作り方」。三色旗に鋏を入れて上段残す、下二段捨てる、以上。ОЖ

ウクライナ側の世論調査

どこの何の調査か知らないが、ブラチュク兄によると、ウクライナ南部(オデッサ州?)においては、市民の92%がロシア人を「好きでない、敬意を覚えない、憎んでいる」。ロシア人に好意的な立場の人は1%しかいない。ОЖ

これは昨日の話とは逆で、後者に不利な統計の歪みが発生していると見るべきと思う。むろん趨勢は疑わない。

6/8(無事。ロシア世論分析)

オデッサ無事。

ロシア世論分析

Meduzaが3日付けで出した戦争支持不支持をめぐるロシア世論の分析記事をやっと読んだ。いろいろ教わるところがあった。

まず前提として、Levada Centerの5月末の調査では、「ウクライナにおけるロシア軍の行動」を支持する人は77%(「明確に」47%「どちらかといえば」30%)と、依然として高い水準にある。

こういうの見ると「なんでロシア人はこんな明らかな悪逆非道を支持してるの?(やはり)性根が腐ってるの?」と問いたくなる。「え、頓風珍ひとりが狂ってるのじゃないの?世論の8割が支持、え……?」と現実感が動揺する。日本の小学生たちも「ロシアの人はなんとも思わないの?」と首をかしげている→NHK「なんでせんそうしてるの?ウクライナ侵攻 小学生1000のギモン」

Meduza記事でこの疑問に答えてくれたのは社会学者のアレクセイ・チトコフ先生だ。

まず先生がいうのは、この8割弱というのは額面通りには受け取り難いものであって、戦時の言論統制で反体制メディアが片っ端から閉鎖され反戦の声を上げる人が片っ端から検挙される状況で「ちょっと聞きたいことあるんですけどぉすいません1分だけいいすか?」とか言って話しかけてくる人はふつうに警戒の対象でありあまり聞き取りに応じてもらえない、しかも応じない人は戦争支持者よりも反対派の方に多い……ということがひとつ。んで応じてくれても正直に答えてくれるかということがまたひとつ。つまり、あまり正直にあけすけに答えてしまうと不利益を被るのではないか、調査とは名ばかり、これは権力側が仕掛けた反体制派炙り出しオペレーションなのではないかと危ぶんで、口を濁す。誠実に回答しない。

みたいな話は別に耳新しくない。

もう1点考慮すべきは、戦争支持と一口に言っても積極的支持と消極的支持とあって、たとえば別の調査で「ウクライナにおけるできごとにどんな感情を抱いているか」と問うたところ、「誇りに思う」と答えた人は5割程度であって、戦争支持者8割弱からこの5割を引き去った残余は、「始まった以上は貫徹してほしいが、いま大統領が即時作戦終了を宣したならばそれを歓迎する」という、いわば潜在的平和愛好者であると。

そんで、チトコフ先生によると、この潜在的平和愛好者に顕著に見られるテーマが、価値観の選択(ценностный выбор)というやつである。つまり、戦争における個々の事象を評価するに先立って、「そもそも誰が正しいのか」「正義がどちらの側にあるか」という根源的選択がある。そのときに、自分の国が正しい、自分たちの側に正義がある、という選択をするのはむしろ普通のことであって、そこには特殊ロシア的なものは何ひとつない。この選択の必然の帰結として、「正しい自分たちの側が勝利することをもってこの戦争は終わるべきだ」という立場が生じ、その過程で演じられるちょっとしたチョンボは軒並み帳消しになっていく。

То есть говорить о том, что большинство настроено воинственно, парадоксальным образом нельзя. Большинство — это люди, которые хотят мира, но оказались пассажирами поезда в такой ситуации.
大多数が好戦的と考えるのは間違いで、むしろ平和を望みながら気が付けば”電車の乗客”となってしまった人たちこそが大多数なのだ

「チョンボ帳消し」のところを正確にいうと、たとえばブチャについて、ブチャの虐殺「にもかかわらず」「それでもなお」ロシア軍の行動を支持する、というより、ブチャで虐殺があったとの説に対して「ブチャの虐殺などはじめからなかった(ウクライナのでっち上げであった)」という説が対置され、後者が選好される。後者のような説は、自分たちの側が正しいという<価値観の選択>があらかじめなされているところ、常に注文され、また宅配される。それが本当だとしたらあまりにもひどい、という事象は、それがひどければひどいほど、自動的に否定し去られる。いわば人々の良心が人質にとられているために、国家はやり放題・言いくるめ放題というわけだ。

翻って日本のことを思う。日本だって、自分の国を信じるか海の向こうの国際社会を信じるか(もしも後者を信じるならば、自分たちは悪鬼であるということになる)という選択を迫られたとき、社会は容易に「支持」一色に染め上がってしまいそうに思う。何を価値とし美とし正義とするか、そのすべてを私たちは日本語で教わった。その日本語がこぞってあるひとつのものを指し賛美しているとき、あえてそれと反対のものを指して価値とし、美とし、正義とすることができるか。

そう考えると、今のロシアで「明確に」「どちらかといえば」あわせて17%が戦争に反対の立場を示していることは、むしろすごいことのように思える。


ほか、へぇと思ったこと、はぁんと思ったことを、以下に走り書きする。

戦争への関心は落ちてる

基本的にロシア人の間でウクライナ戦争への関心は落ちてるそうだ。戦線も固定化し目立った戦果もない。だもので過去に既に行った「価値観の選択」が単純に踏襲され、各種支持率も横ばい、ということになる。

なんのための戦争か

この戦争、もとい「特殊作戦」が何を目指したものなのか、人によって理解は異なる。従って、「勝利」のイメージも、人によって異なる。
なんでこういうことになるかというと、(そもそも大義がないので)頓風珍以下要人たちは開戦以来説明を二転三転させていて、マスメディアも完全に政府のメガフォンなものだから、それに付き従って論調が二転三転している。そんな中から、一体どれが戦争の真の目的なのか、市民自身が選ばなければならなくなっている。それで、自分で納得しやすい説をそれぞれ選んで、それに就く、ということになる。

この点ウクライナは全く対照的である。ウクライナには侵略者からの祖国防衛という分かりやすい・それしかない物語があり、終始一貫している。支持率も上がるし、士気も高まるわけである。

遠い肉親より近くの政府?

ロシア人の多くがウクライナに直接の友人・知人・親族をもつ。だからこそ、善いことやってますと言いながら悪いことをするのは無理であろう、現地から生の報告が絶えず入ってプロパガンダの馬脚は暴かれるであろう、という観測があったわけだが、ふたをあけてみると、ナマの声とメディアの声が相克した場合に、ロシア人たちは前者を否定し、後者を信じたのであった……

みたいな言説が耳目を引くのであるが、それがどのくらい典型的なケースなのかについては留保が必要で、冷徹に世論調査を分析すると、やはりウクライナにいる友人知己とコンタクトをとっている人はウクライナに対して穏健な立場の人が多いということだ。それはそうだろう。私などはまったく逆の立場だが、妻や妻の両親という人がいるからこそ、ロシアのことも理解したいと思う、擁護できる部分は擁護したいと思う。もし私に妻や義父母がいなかったら、単純に反ロシアに振り切っていただろう。

どうすれば世論を屈曲させられる?

この先何らかの事象が生じても、先行して行われた「価値観の選択」に沿って情報が自動的に処理されていくだけなので、人の立場はなかなか変わらない、世論もなかなか動かない。では希望はないの?

Общественное мнение может измениться, если твердые противники военных действий научатся говорить с колеблющимися гражданами. Если они предложат приемлемую позицию для тех, кто считает себя патриотом, не хочет поражения России и не желает «говорить плохо о своих» и при этом недоволен происходящим и хотел бы мира. Найдут политики такую формулу или нет — как раз одна из интриг ближайших месяцев.
世論が変化するとしたら、それは、確信をもって戦争に反対している人たちが、どっちつかずの市民との対話の仕方を見つけたときだ。愛国者をもって自任し、ロシアの敗北を願わず、「身内を悪く言う」ことを望まない、それでいて現状に不満をもち、なるべくなら平和をと思っている人たちに、彼らにも受け入れ可能な立場というものを提案してやることができれば。政治家たちがそうした定式を見つけることができるか否か、この点こそが、今後数か月の最大の見どころのひとつとなる。

戦争に反対する人たちの反戦の意思表示は現在のところゲリラ的かつあまりに独創的なので、①わかりやすいシンボルをもつこと②その安全な表示方法を確立すること、この二つが重要だという。一方の主戦派には「V」「Z」という印象的なシンボルがあるが、なんだかんだ市民のあいだにそんな広まってるようにも見えない、とチトコフ先生。

Meduza

6/7(無事。ドイツ文化相/治安/花火/緑)

オデッサ無事。ゼレンスキーも何丘ブログ読んでるらしいから更新続ける。

「ウクライナへの注目・自由を求める私たちの闘いへの関心が縮減しないように、今何が起きているのかを語り続けてほしい。情報を拡散してほしい。ウクライナについて多く語られれば語られるほど、より早く戦争を終わらせることができ、国土を解放することができる」。……了解デス。(

逆にオデッサはミサイル以外は恐れなくていい

ある軍事専門家「オデッサの3種の脅威、すなわち、①敵の陸上戦力(いまヘルソンまでを占拠しニコラエフを攻撃しているそれ)が西進してくること②海上戦力が上陸してくること③長距離ミサイル。このうち、前二者はほぼあり得ない情勢なので、現実的な脅威としてはミサイルだけ怖がっておけばよい」ОЖ

ドイツ文化相オデッサ訪問

クラウディア・ロート独文化大臣がオデッサを訪問、主要観光名所を巡りミサイル攻撃による被害のあとを視察し、市・州トップと会談した。「今日ウクライナで行われている戦争はまた文化に対する戦争でもある」と文相。オデッサのUNESCO文化遺産登録への支持を表明した。TОЖ

※オデッサは旧市街の世界遺産登録を目指していて、市長によると「姉妹都市はいずれも支持してくれている」。てことは横浜市もか。

街の治安

警察発表から街の治安をうかがい知る。一昼夜に通報909件、不審者尋問48件、飲酒運転摘発10件。具体例3つ:①露シンパ拘束②地下賭博摘発③通信ケーブル切り裂き魔逮捕(ОЖ

①露シンパ拘束:市中心部の某ビーチで酔漢を取り調べたところロシア国内との通信履歴がありまたある種のインフラを写した写真をテレグラムの親ロシアチャンネルを通じて送信していたので拘束。②地下賭博摘発:とある建物に地下ゲーセンがありPC11台で金を賭けたゲームが行われていたそうで捜査開始。③通信ケーブル切り裂き魔逮捕:家屋の壁を伝う通信ケーブルを切断していた男(複数)が逮捕された。犯行のあと↓

平和だよね。

花火・爆竹禁止法

花火の打ち上げや爆竹の使用を禁止する法案が最高会議(国会)の審議にかけられる。お分かりと思うが、戦時下にあって、人たちに無用の混乱とか恐怖を与えないように・トラウマを刺激しないように、ということだ。戦争が終わってからも一定期間は禁制が維持されるそう。ОЖ

先日(6/4)も書いたが従来この国では私人による好き勝手な花火の打ち上げが容認されていた。近所迷惑とかいう概念は一応あるが、それを超えることへの自己寛恕、また超える度合いが、日本社会に比べると甚だしい。そもそも禁止しといてよかったと思うし、今は当然禁止すべきものと思う。

ところでもうすぐ夏ですね。夏が近づくとここ日本でも「ウクライナ避難民のトラウマを刺激しないように」とかいって今年は花火大会の催行を全国的に見送りましょうみたいな騒ぎにならないか、ふと心配になった。そんなのは共棲の在り方として全く不健全だ。一口にウクライナ避難民といっても(5日時点で1237人だそうです、NHK)ガチの砲撃にさらされミサイル飛行音や爆発音を連日連夜聞いたような人は一握りだと思う(私が連絡をとっている20人ほどの中には一人もいない)し、そういう人がたまたま花火大会の会場にほど近いような場所にいたならば、それを知っている人が個別にケアしてあげればよい。いついつにこういことがあります・何時には終わりますときちんと予告・説明し、もしかしたら不快に感じるかもしれないからその日はよそへ行ってましょうかと一泊旅行をプレゼントしたり、あるいはヘッドフォンだけ渡しとく、その程度で十分すぎると思う。この間日本も一億総忖度社会が一段と悪化したと聞いてるので、ちょっと心配になった。

街ルポ(緑)

ОЖマリヤ・カタワヤ記者の恒例のフォトルポルタージュ。緑が燃えている。日本のように街路樹を剪定したりしない、オデッサの緑は山と盛り上がり滝と落ちかかる。ОЖ

街の言葉。「今年は街で見かける花々が特段に美しいように感じられませんこと?」「あの畜生どものせいで海水浴もできやしない。こうしてアレクサンドル広小路に座してひと夏を徒過するんだね、ライラックから勝利まで。それまで生きていればだけど!」

ライラックから勝利までアレクサンドル広小路で座って暮らす(生きてれば)、は名言感があるなと思った。(本当はサイレンから勝利までот сирены до победыと言ってるのだが牽強付会した、опечаткаかも知れないじゃん)

持続可能性のため火器牡丹(下記ボタン)より募金くださると嬉しいです。今日付けの記述をここまで読んでしまったという人は、ご自分でお気づきでないかもしれませんが、絶対ちょっとは面白かったはずなので、100円ほどください。むしろ「面白かったという自覚がある」という人は、500円ほどください。「ゼレンスキーにも期待されている何丘さんをガチ応援したい」という人は、2000円ほどください。とはいえ、1円ももらえなくても書き続けますけど。

何丘に「投げ銭」してみる

6/6(無事。脱露/海水浴)

オデッサ無事。ブラチュク及びマルチェンコ両兄によると、洋上の敵船の動向を見るに①ミサイルはいつ飛んできてもおかしくないが②上陸作戦が近々に実施される気配はない。また③蛇島の武装が進められているが我が軍も手を拱いて見てはいない。なお④国内の対敵協力者(коллаборанты)は必ず見つけて懲罰を下す。ОЖОЖ

また、ウクライナ海軍によると、敵の船団は対艦攻撃を恐れて沿岸から100㎞ほどに遠ざかっており、今後黒海北西部制圧には艦砲というよりはクリミア・ヘルソン・蛇島に設置された沿岸発射型のミサイルが主として用いられるであろうと。ОЖ

ウクライナ(・西側)抗戦するな論の人、ウクライナは領土的譲歩のうえロシアと講和しただちに戦火を収めよ自国民をこれ以上死なしめないために、というパシフィストさん。無血で明け渡したクリミアからウクライナ全土へミサイルが発射されています。そもロシアにクリミアがなかったら、ドニエプル東岸にばかすか砲火が浴びせられて、果ては占拠されることもなかったであろう。

オデッサの脱ロシア化

まだ具体的な動きではないが、オデッサにも脱ロシア化(дерусификация)すなわちロシアとの歴史的かかわりの否定・文化的コンテクストの漂白脱臭の波はきていて、市中心部に立つ「創建の母」エカテリーナ2世像を撤去しようとか、ロシアの人・物・事にちなんだ道路名や地名を改称しようという話がある(ОЖОЖ)。個人的には、ことオデッサに関して、他の自治体のようにプーシキン像やエカテリーナ大帝像が撤去されたり、またプーシキン通りとかエカテリーナ通りがウクライナくさい(「政治的に正しい」)名前に改められたりといった仕儀には至らないと思う。

「海水浴」のオデッサ的解釈

気骨と諧謔の街オデッサの面目躍如、と言っていいのかな。戦時ということでビーチ立ち入り禁止令発令中のオデッサでおまわりさんに見咎められずに海水浴を楽しむライフハック(動画)

「たらいとバケツの貸し出しで商売できるデ」「特許とれ」とコメ欄が湧いてる。ОЖ

6/5(海)

オデッサ無事。4日・5日と続けて「オデッサ上空で西側兵器を積載したウクライナ軍の輸送機を撃墜した」とか露側は発表してるがいずれもフェイクであって「露側の声明を全部信じるならば連中はすでにウクライナ軍を2回滅ぼすくらいの戦果を上げている」とウクライナ空軍司令部。ОЖ

海なしでは生きていけない

ОЖの海浜ルポ。「ビーチは地雷原」「バカンスのシーズンというものはありません」「日光浴も水浴も戦争に勝ってから」と公式にアナウンスされてるが、6月入れば季節は「夏」、日照りの週末など海辺を恋うて出ずにはいられない。

「ビーチは地雷原」の方はもう先人たちによって「とはいえここら一帯は大丈夫」というエリアが踏み固められてしまったようで甚だしきは子供らを伴ってくるのでもう説得材料として甲斐なしと見たか、ブラチュク兄は露軍の設置した機雷が400発ほど存在し、それらが繋留を離れて漂流してきて岸からすぐの消波帯に触れて爆発すると皆さんも死にますよ、とそちらの方を強調している。現在のところおまわりさんは違反者を見つけても権限上、注意と説得しかできない。でも近々(来週にも?)罰金がとれるようになるそうだ。

↑砂浜に足を踏み入れるのはさすがに、ということで、ウッドデッキとかコンクリの段々とか海岸通りのベンチとかで日光浴してる人たち。一応まぁ、多分、これは許されてるということなんだろうな。

当局の制止と禁止に反して、ことさらに海辺に人をさし招く勢力もある。これからがかきいれ時の、海浜遊興・飲食・休養施設だ。

うちのひとつで椿事。オデッサ随一のビーチとされるアルカディア浜でとあるナイトクラブが深夜営業しており(※深夜早朝営業禁止令違反)、そのそばで壮健男性数人が殴り合いを演じる模様がSNSで拡散され、オデッサ州トップのマルチェンコ兄が「前線で戦士たちが傷つき倒れているときにいい若いもんが何をやっているんだ」と怒りをあらわに(ОЖ)。

戦時とはいえ、夏が来て海がない、ということは、オデッサ市民には飲み込めない・受け入れがたいのだろうな。どうしてそこに海があり、ここに暑気がきていて、このとおり一応は平和なのに、海へはいってはいけないのか、これまでもずっとそうしてきたように? とはいえセヴェロドネツクの人がこれ見たらどう思うか。あるいはニコラエフの人が。どんな犠牲の上にこの「平和」があるのか。連帯を示す、我慢する、自制する、ということ、どうしてもできないか。

オデッサの100日

オデッサ公式テレグラムでシェアされてた、オデッサの100日間を振り返る動画。

石畳のデリバーソフスカヤ通りの対戦車ハリネズミは今はもう撤去されてる。以下、ビーチと土嚢と人海戦術、「ビーチは地雷原」立て札の設置、支援物資配給所、青空コンサート、破壊・破壊・破壊。

6/4(ダーチノエ、花火、オフシャニコワ)

オデッサ州にミサイル攻撃があり一定の被害があったらしい。ロシア側の発表によるとダーチノエ村の「外国人傭兵部隊駐屯所」が破壊されたそうで、ウクライナ側は地名の特定なしに農業会社の倉庫が損傷し2人が負傷という(TASSОЖ)。ダーチノエは義父母の村に至近である。とりあえず義父母は爆発音は聞かなかったそうだ。どっちかを信じろとならむろん後者(ウクライナ側の発表)を信じる。ダーチノエに軍関連施設があるのは知ってるが、こんな僻地に外人部隊の駐屯所が存在すること、あんな小さい施設に「雑魚ミサイル下手撃ち」弾がうまうま命中すること、ありそうもない二つの話の掛け算。

以下、馬鹿の考え休むに似たりの素人考察だが、でも逆に、大した狙いもなくミサイル撃ってくる(としたら)その狙いはなんだろう。敵はいま明らかに東部に傾注している。対応してウクライナも東部に集中している。でも敵はオデッサ攻略も諦めてはいないようで、沖には依然として船団、「蛇島」の武装も進めている。衆目が東部に集まっているうちにこっそり蛇島武装を完了すればいいではないか? こんな散発的にミサイル撃ち込んで「オデッサ諦めてませんよ」とわざわざ教えてくれることはないではないか。とすると本当に何らかの重要な戦略目標があったのか。ウクライナのミサイル迎撃システムが反応できないような超速・高精度のミサイルでピンポイントに叩いてきたのか。それともいわゆる、ウクライナ側の一定戦力を南部戦線に貼り付けておくためのリマインダーに過ぎないのか。誰か教えてくれ。教えないでくれ。黙って消えてくれ、ロシア船。

アホが花火を

オデッサ州に空襲警報が鳴り響いていた4日夕、どっかのアホが打ち上げ花火をゲリラ強行し、不謹慎きわまるということで拘束された。友人の息子の誕生日を祝ってのことらしい。「今は戦時下であり大音量の爆発音は恐慌を引き起こしかねないし、いまオデッサには激戦地で連日連夜の砲撃を経験した避難民も多くいる、彼らにとってはトラウマである」としてかような身勝手は慎むよう警察(ОЖ)。

日本だと打ち上げ花火というのは危険物であり訓練された専門家が定められた日に定められた場所で行うものというのが常識だが、あちらでは市井の人が適当に打ち上げる。ひどいのは年越しの瞬間で、街中で市民が好き勝手花火上げるのでめちゃめちゃうるさい。そもそも結婚とか誕生日とかの記念に街路で大騒ぎしたり公共物に払拭困難な落書きをでかでか書いたりといったことがわりとふつうに行われる。「俺の祭は世界の祭」。

オフシャニコワ、オデッサに来る

↑これで有名なロシア国営第1テレビのマリーナ・オフシャニコワさんはオデッサ出身者だそうで、侵略戦争はじまって100日目の3日、久しぶりの里帰りを果たしたところ、街びとたちの大顰蹙を買ったということだ。下記が故郷の街を久しぶりに訪れた感想(fb)

ざっと訳すと、「戦争100日、故郷のオデッサは、ホテルがら空き、ビーチは地雷原、水泳禁止、ロシアの軍船は絶え間なく砲撃をしかけ、次はどこに弾が飛んでくるか予見は全く不可能で頼みの綱は地対空兵器のみだがそれがいつも守ってくれるとは限らず、海辺のホテルに一発、と思えば高層アパートに一発で8人が死亡、うち1人は赤ちゃん。(中略)100万都市に閑古鳥、住人の半数は退去し、残りは絶えざる恐怖のうちに日々を送る」。これに対し、「絶えざる恐怖のうちに日々を送ってねえよ!」「閑古鳥ないてねえし!」「てかお前、10年間プロパガンダのお先棒担いでたじゃねえか!今さらどのつら提げて『故郷』帰ってきたんだよロシア女!」とあまり好意的とはいえない市民諸賢の反応があって、オフシャニコワ氏はfbのページを削除したということだ。ОЖ。記事には批判コメントのスクショも多数掲載されてるので、露語できる人は覗いてみてほしい。街びとの温度感を蝕知できると思う(もちろんこうした声が全てであるわけはない)

ブラチュク兄もオフシャニコワ女史には冷笑的で、ОЖとしても「派手なパフォーマンスで欧州に自らを売り込んだだけの奴」てな論調、少なくとも女史を気骨の反戦活動家とは見ていない感じだ。先にはキエフで記者会見を開き露プロパガンダ批判を展開する予定であったが否定的世論を受け開催を取り止めた由。この人にはロシアにもウクライナにも居場所がない。

6/3(100日目)

オデッサ無事。オデッサ州軍事行政長官マルチェンコ兄「すべての人にとって人生で最も長い100日だったと思う。この100日で哀しいかな戦争はもう日常になってしまったが、飽くまで戦争は続いている、戦場でも、情報空間でも。そのことを忘れないでほしい」。ОЖ

とはいえ黒海沖の敵潜水艦からミサイルが発射されないでもなかった。だが4発中4発を撃墜した由(珍しい)。なお現在、黒海沖の敵艦隊の編成は、ミサイル搭載艦3隻、潜水艦1隻、揚陸艦5隻であるとのこと。ОЖ

敵上陸の恐れは常に忘れるべきではないが現在のところ上陸作戦の準備を進めている気配はなく敵はそのための手段・戦力も欠いている。あと沿ドニエストルが第2の戦線となることは「ない」と断言、オデッサ州軍政報道官ブラチュク兄。ОЖ

ゼレンスキーの「100日100語」

露軍の侵攻が始まってから100日の間にメディアに巷間に新たに・また新たな意味を帯びて聞かれるようになった100の言葉をまとめたゼレンスキー動画。

第一に挙げられているのは「戦争」次に「大規模戦争」。以下、「この100日の間に私たちが見つけ、受け取り、目にし、また目にしないことを願った様々な言葉たち」として、ヘルソン、マリウポリ、アゾフスターリ、ブチャ、拷問、銃殺、絨毯爆撃、ミサイル攻撃、死んだ人の数、死んだ子供の数、廃墟、サイレン、空襲警報、外出禁止令……と続く。100日前には無縁でいられた、今は目にしない日とてない言葉たち。

ポジティブな言葉として、軍、警察、国境警備、領土防衛隊、ジャヴェリン、ハープーン、レンドリース(武器貸与)法、今や苦笑するしかない滑稽な語として「世界第二の軍隊」、皆さまおなじみ「逝ってよし」「敵に死を」といったクリーシェ。希望の語として、「復興」「(EU)加盟候補」「加盟」「保証」「安全保障」そして「帰還」と「解放」。

結びにゼレンスキー、「8年の戦争を経て、またこの100日を通じて、ずっとそのために闘っている、3つの言葉。それは<平和><勝利><ウクライナ>」。

浜の椿事

警察とバカンス客がチカロフ浜にて遊泳者を捕獲した顛末(Как полиция и отдыхающие пловца на Чкаловском пляже ловили)という題の記事、何やそれ主語と述語おかしくないかと思ったら、まんまの内容だった。①地雷を踏む②機雷が流れてくる③ミサイルが飛んでくるという3重の危険のためにつとに立ち入りが禁止されているオデッサの海に悠然と水浴するオッサンの姿あり、何してんだオイ陸へ上がれとの警察の再三の呼びかけを無視してこれ見よがしに遊泳を続ける、困ってしまったおまわりさんは同じく海に泳ぎに来ていた若者たちに頼んでオッサンを引き上げてもらった。動画↓

なすすべなく岸辺を右往左往する警官たちの姿、悪びれるそぶりもなく一部始終を打ち眺めている半裸横臥者、犬を散歩させてる人、水着の若者たちがゾロッゾロやたら数が多いこと。いろいろorzだった。こら無理だ。オデッサの人たちから海を取り上げるのは。

このあたり(オデッサの中心と言っていい)の浜は上図のように突堤で細かく仕切られていて、一続きの長いビーチというものはない。それぞれ風趣の若干異なる小ビーチが無数に連なっている。チカロフ浜もそんなひとつ。

ここは思い切って、それこそこのチカロフ浜とか、ヌーディストビーチとして一部で有名な犬浜あたりを、もう自己責任で遊泳OKな浜として開放してしまってはどうか。ガス抜きないと無理だよ。んで重点的に掃海する。ロシア側にも言っとく。何某浜は「人道ビーチ」なので攻撃すべからず、と。

6/2(99日目)

オデッサ無事。オデッサ州軍事行政長官マルチェンコ兄の言を引くと(額面通りに受け取るべきものでもないと思うが)「敵軍は使える奴の涸渇と深刻な士気の低下で人員のローテーションを頻繁に行うことを余儀なくされており、かつウクライナから生きて帰った兵員の3~4割が再度の応召を拒否しており、必然的に『まだ撃たれてないやつ』(新米のぺーぺー)を戦場に送り込まざるを得ず、そういうやつはわが軍と遭遇するや速やかに戦闘能力を失うので与しやすい」「このようにして世界第二の軍隊(笑)は急速に萎え靡んでいく」ОЖ

海上封鎖と食糧危機(続)

露軍による海上封鎖でオデッサ諸港に貯えられたウクライナ産穀物2500万トンが出荷できず世界的な食糧危機が引き起こされかねない問題。これについてゼレンスキー「農産品の欠乏、基本的食品の壊滅的な値上がり、数千万の飢餓。アフリカやアジアに政治的混乱が引き起こされ、飢餓難民が欧州に殺到し、欧州諸国で大規模な抗議行動が起こる。どうしてユーラシア大陸全体が、たった一つの国家、モスクワにおわすたった一人の人物(そいつこそが海上封鎖を命じている)の人質にならねばならないのか」УП

またオデッサ市長「封鎖の解除によって防衛能力の低下が引き起こされかねない(注:商船がオデッサ諸港に出入りするようになるとそれに乗じて露軍の軍船もオデッサに接近し攻撃を仕掛けてくるかもしれない、との懸念。5/27の項参照)。西側パートナーによる安全の保障が必要である。環黒海のNATO諸国(トルコ、ルーマニア、ブルガリア)の各艦隊が航行の安全を保障するべきだ」ОЖ

どっちも言ってること矛盾してる気がする。緑の回廊(商船の無障害航行の航路)は確保していると言いながら「西側が制裁を取り下げないと封鎖は解除しない」とうそぶくロシア、海上封鎖してるのはロシアだといいながら「封鎖が解除されると防衛力が低下する」として自分たちも実は(露側のいうように、機雷の設置などで?)商船の航行を妨害しているのではと疑わせるウクライナ。

開戦100日

6/2は露の侵略が始まって99日目だった。круглая дата(丸い=カドのとれた日付)といってロシア人は生誕100周年とか開局50年とかナニが始まって今日でちょうど100日ですとかそういうのを祝うのが好きだ。皆好きか。

でも侵略はじめて100日で~す!もとい「特殊軍事作戦」開始から100日が経過したというこの「100日」という数字を強調しないように露国営メディア各社に対しお触れが出されたらしい(Meduza)。「作戦」ずいぶん長く続いてんな、長引いてんな、いったいいつまで続くのか?というような思念を国民に抱かせないようにということらしい。上としては、100日というきれいな日付に紐づけて、その100日の間にこれこれの戦果が上がりましたと誇りたい。それをもって、100日続いたという事実に、納得感を伴わせたい。だが、特にそういう赫々たる戦果というものがないのだ。「何々村を制圧しました!何々集落を支配下に置きました!と一定の軍事的成果を誇ることはできる、だがそれら地名は露国民に何らの印象も与えない。それって多いの、少ないの?<作戦>の目標達成は近いの、それとも遠いの?」そんな状況だもので、「100日」をあまり強調しないでほしい、と。

対照的にウクライナ側のプロパガンダメディア(すなわち全メディア)は「世界第二の」を前にした100日の耐久防衛の功を誇るであろう。

6/1(赤の月)

オデッサ無事。ОЖ

6月はウクライナ語でчервень=赤の月。由来はいにしえそれを潰して赤い染料を採ったというなんとかいう虫の名、でも一般にはそういう故実は忘れられて、むしろ果樹園で赤い(червоний)実の生る季節というふうに観念される。私たちのダーチャから昨日送られてきた写真たち↓

さくらんぼも苺もまだシーズンの始まりであって、まだまだいくらでも採れる。消費しきらんのでどちらもジャム(варенье)にする。少ししたらラズベリー(малина)も始まる。これが私たちの「赤の月」だ。

ついでに義父粘土アート最新作、せわしないタラプィシュカ(「ニズナイカ」シリーズ)と苺

これも一応言っとくと、ロシア語知ってる人には、червень=6月の真の由来であるчервецとかいう虫と同様、червьとかчервяк(ミミズ)とかいう語も古スラヴ語の「赤」が語源かと想像されて、ウクライナ語たのしいなと思うのはこういうとき。

国際「こどもの日」

6月1日は国際「こどもの日」だったとかで、オデッサでも各種のイベントが行われたほか、露軍による侵略戦争100日弱で243人の子どもが死亡したことが強調された。数字をいうのは簡単だがこの一人一人がその親たちにとっては地球全体より重く貴いものだった筈だ。その意味では世界はすでに243回滅びたのである。イワン・カラマーゾフでなくても問いたくなる――За что? 何のとがあって?(イワンがそのために神を否定した苦悩の万分の一をもって、「モスクワ及び全ルーシ総主教」の僭称者は、並び立つ一人の老人を否定すればよかった筈だ。恥を知れ!!

それでオデッサ市が動画を作って偽総主教に代わってオデッサの子供たちにStop Putinを叫ばせたりする。動画。

だが本当は子供たちにこんなこと言わせないでほしいのだ。そもそもオデッサの子ども10人も集めて全員ウクライナ語ってのはどういう人選なんだ。オデッサでは一体ロシア語を話す人は一人もいないのか。まったく冗談じゃない。どういう世界に生きているんだ俺たちは。

オデッサ市立動物園で「子どもの日」の記念行事が行われた。動画。明るい。すごく楽しそう。

(Труханов позволяет себе публично выступать по-русски, а детям – нет)

5/31(踏みにじられた春)

いわゆる「春の最後の日」だった。(ロシアとかウクライナでは、情緒のないことに、季節をわりとかっきり月で割って観念する――345が春、678が夏、91011が秋、1212が冬)

オデッサは平穏だった。とはいえ沖には巡行ミサイル搭載艦「マカロフ提督」号、蛇島には対ミサイル防御システムだけでなくオデッサ州沿岸部を攻撃可能なロケット発射装置も設置されようとしているらしく、脅威は依然として大きい。ОЖОЖ

街は戦前の姿を(続)

美麗な歴史建造物が多く歩いて気持ちのよいオデッサ中心部からの障害物撤去・街区解放が進んでいる。

まだ劇場脇に土嚢が山積してたり歴史博物館前のラオコーン像がベニヤで覆われてたりはするが、短い夏をそぞろ歩いて楽しめる仕様に街が切り替わりつつある。写真もっと見たい方、元記事へ→ОЖ

バリケードの撤去に関してオデッサ市長、今進んでいるのはオデッサ防衛の「解除」でなく「フォーマット変換」であって、飽くまで戦争は継続中である、その中でも生活が可能であるように・中小企業がきちんと稼働して経済が回っていくようにということだ、と動画で説明。50秒の短い動画、街の様子が映し出されるのでよかったら覗いてみてください。一番いい季節のオデッサの緑と光を。

明るい話題つながりで。オデッサは猫の街。戦争どこふく風、いつもの春を寝て暮らす猫ちゃんたちのフォトルポルタージュ。なんだこの清涼な読後感はと思ったらそうか、「敵」への憎悪や侮蔑・嘲弄が一語も含まれていなかった。今はそんな記事も珍しい。記者の名はマリヤ・カタワヤ(猫のマリヤ)。ОЖ

5/30(第5次橋破壊)

30日未明、ドニエストル・リマンにかかる橋にまたしてもミサイル攻撃、複数発撃ち込まれたうち一発が橋に当たって、深刻な損傷とのこと。この橋に対しては過去に4次にわたって攻撃が加えられており今回は5回目。2回目の攻撃ですでに鉄道・自動車の交通は不可能になっていたのに、その後も執拗に攻撃してくる。オデッサ方面への攻撃は、オデッサいうても広いが、決まってこの地方、特にこの橋である。何? 偏執狂?

ドニエストル川の河口部が砂嘴に遮られてリマン(лиман、潟湖)と呼ばれる内水になっている(Google Mapで見ていただくと分かるが黒海北岸にはこういう水域が夥しくある)。ドニエストルリマンはしかし一か所で砂嘴が破れていて、そこに橋がかかっている。その橋。

この橋はオデッサ州のドニエストル以西いわゆるベッサラビア地方とウクライナメインランドを繋ぐ唯一の陸路である。ドニエストルリマンを北へ回り込むとモルドヴァ域内を通過していくことになるが、第一にオデッサ市との連絡はかなりに遠回りになるし、第二に、このあたりはすでにモルドヴァ政府の統治が及んでいない、事実上のロシアの飛び地である沿ドニエストル地方に至近である。

要するに橋を落とせばオデッサ州のベッサラビア地方は陸の孤島となり脆弱化する。ここを蛇島(地図黄丸)起点の上陸作戦で一気に攻略して支配地域を沿ドニと繋げオデッサを三方から挟撃するのが敵の狙いでは、と(前も書いたが)素人頭には思われてならない。けっきょく橋は、ウクライナ側の発表ほど、実は深く損傷もしてないのではないか? 実は軍の装備など無理すればまだ通行も可能な状態で、それを露軍は無人偵察機の情報かなんかで関知している、だから今なお執拗に橋に撃ち込んでくるのではないか。敵からすると、沿ドニというせっかくのリソースが活かせていない現状が、①橋の完全破壊②蛇島の防備完成によって打破される。そうなれば我々の側にとっては平穏な日々の、いよいよもって終わりである。

ОЖОЖ

街は戦前の姿を取り戻しつつある

上の話と矛盾するようだが、オデッサ市の中心部から敵の進軍を阻むためのコンクリート障壁が撤去され始めているらしい。対艦ミサイル「ハープーン」等、西側からの兵器供与で沿岸防備が強化され、敵の上陸はますます見込み薄になる、との考えのようだ。ОЖ

農業大国奮起

先日から露軍の海上封鎖→ウクライナ産穀物輸出できず→世界食糧危機の恐れ、という話をしてるが、ここに ”農業戦争” の第二の戦線。ヘルソンやザパロージエといったウクライナ南部の穀倉地帯が露軍に占拠され、収穫物が接収されてクリミア経由で露本国に流れ、あるいはシリアに売り捌かれているらしい。これをカバーするために「オデッサ州が今年は記録的な水準の収穫を達成してみせる。農業戦争においても我々は勝つ」とブラチュクの兄貴。ОЖ

5/29(無事。海のはなし)

オデッサ無事。隣のニコラエフ無事でない。東部ひどい。

海上封鎖と食糧危機

本日(これ書いてる今日、30日)EUサミットが開かれて、露軍による海上封鎖でウクライナ産穀物の輸出ができず世界的に食糧危機が引き起こされる恐れがある問題についても話し合われるそうだ。EUは洋上での軍事ミッション、つまり、軍による貨物船の護送も視野に入れているという。露軍との衝突のリスクも懸念されるが、どうなるか。ОЖ

その露軍は自分たちは「緑の回廊」というものを確保して商船の無害通航を保障していると主張するが「信じない。侵攻初日からあらゆる国際法を無視して外国商船を攻撃しまくってきた侵略軍の言辞に信など置けるわけがない。国際法に準拠した文明諸国の庇護下にある航路のみを安全とみなす」とウクライナ海軍。ОЖ

というような状況でルーマニアのスリナというとこからドナウ川を遡上していくルートが一応安全なウクライナ産穀物の輸送路と目されているらしく(スリナの東のBileとあるところは例の蛇島=露軍の拠点だが)

ただ処理能力が全然追い付いていなく、貨物船100隻くらいが立ち往生してるそうだ。ОЖ

↑立ち往生の様子。Marine traffic

「神の指」が蛇島の占領軍を一掃する

西側からウクライナ軍への兵器供与で、対艦ミサイル「ハープーン」に続き、MLRSとかHIMARSとかいうロケット発射装置が新たに装備に加わるそうで、射程距離70㎞というのは蛇島を叩くのに十分であり、せっかく拠点化を進めてるとこ悪いけど一掃しちゃうよ「神の指」で、というところらしい。当該兵器は西側でそう呼ばれている由。ОЖ

海が好きすぎるオデッサ民

死への欲動に加圧されてオデッサ市民の目には海がことさら輝いて見えるらしく、①地雷を踏むかもしれない②機雷が流れてくるかもしれない③ミサイルが飛んでくるかもしれないという三重の危険をおして「家族連れで」浜へ降りる人が引きも切らず、市当局・マスメディアは嘆息しきり。ОЖ

「分かって」しまっているのだろうな。ここを通れば踏まねえぜ、皆ここ通って海入ってるぜ、機雷?見たことねえぜ。ミサイルもとんと飛んでこなくなったじゃねえか。もうたぶん大丈夫なんだよオデッサは。市民の声が聴こえてくるようだ。しかしいつどこへ走り出していくか分からない子供を連れて行くというのはさすがに閾値越えしてる(зашкаливает)。

↑市当局も市当局だ。公式テレグラムで「オデッサは事もなし」とか言いながらこんな写真を投稿するんじゃない。浜がバリバリ楽しそうではないか。

ほか、例の沈没した巡洋艦モスクワからブイだの浮き輪だの付属品がオデッサ沖へ漂着していて軍事博物館の収蔵品が着々増えていっている話(ОЖ)、昨年ウクライナが英国から購入した南極探検用砕氷船が最初のミッションを終えオデッサ港に帰還するところであったがこの状況なので黒海に入れずケープタウンに逗留中であるとの話(ОЖ)。海の話が多かった。

沿ドニエストルの動員計画は破綻した

オデッサ州軍政報道官ブラチュクの兄貴によれば、事実上のロシアの飛び地になってるモルドヴァ東部の沿ドニエストル地方の戦力をオデッサ攻略作戦に引き込もうとする敵の目論見は破綻した。本国の呼びかけに現地が呼応しなかったものらしい。「一定の緊張リスクは残存するものの、第二の戦線が開かれることは無い」ОЖ

移り気なマスメディアとは対照的にウクライナの中でもオデッサという一都市のみに極大の関心を寄せ続けるこの現地報道スクラップ帖に何らかの価値を見いだしてくださる方、今後も続けていけるよう、資金面での応援をくださると嬉しいです。平和の鐘(は何色?)を聞くその日まで、見守り続けたい、更新を続けたいと思っておるのです。応援くださる方、どうか下記ボタンより。

何丘に「投げ銭」してみる

5/28(無事。卒業式/食糧危機)

オデッサ無事。

27日は多くの学校で終業/卒業式だったそうだ。ウクライナの学校では、ヨーロッパでは普通なのかも知れないが、678月は長い夏休みで、んで9月から新学年が始まる。今年は戦時下ということで卒業式もオンラインで行われた。この子供たちにあらん限りの光を世界よ。ОЖ

オデッサの海上封鎖と世界食糧危機について独仏露首脳会談(電話)で頓風珍、「黒海諸港からウクライナの穀物を無障害に輸出できるようにする用意が我々にはあるが、西側の過誤、西側の対露制裁によって供給に問題が生じている。制裁の解除が供給拡大の要件となる」とか言ったという(TASS)。要するに海上封鎖してることは自ら認めてんのか。しかし盗人たけだけしいとはこのこと。てめぇの侵略行為の必然的帰結としての制裁に世界食糧危機の責任を転嫁するとは。こんな厚顔無恥な詭弁に騙されて「西側も悪い!西側は制裁を解除せよ!」とか言い出す人が世界に一人もいないことを願う。

(この問題はウクライナ抗戦するな論と類比的である。西側が譲歩すれば食糧危機が回避されるのであれば、そして現実にはそれしか危機の回避の方途がないのであれば、譲歩もやむなし、いや譲歩すべきだ、条理や道義のために無慮数十万を餓えさすわけにはいかないではないか、という。結局は無辜の飢餓や死傷や不幸を屁とも思わない方が勝つのだ。無理が通れば道理が引っ込むとはこのこと(『戦争でまなぼう!日本のことわざ』何丘書房刊)。だがここは我々一人一人が砦とならねばならない。敵の揺さぶり・掘り崩しに抗して道理の側に立ち、頑として動いてはならない。揺さぶられる奴がいるから敵も言う。揺さぶられる奴が一人もいなければ、一致して悪いのは貴様だ、貴様が動け、と言い続けるのであれば、敵の側が動かざるを得ない。そう信じる)

5/27(無事。ハープーン/食糧危機)

オデッサ無事。日々の塩には欠けれど。

ハープーン取得

西側友好国より対艦ミサイル「ハープーン」を取得し沿岸防備が格段に強化されるということだ。ハープーンはNATOの主力水上船撃滅手段だそうで、ウクライナ国産ミサイル「ネプチューン」(巡洋艦モスクワを水底に沈めたやつ、弾数極少)と同じく射程は280㎞だが弾頭に搭載できる爆薬はネプチューン150㎏に対しハープーンは250㎏で、というとそこまでの差はないように思えるが、とにかくオデッサにミサイルを撃ちこもうとする不逞な企てをこれで阻止できるなら喜ばない理由はない。ОЖ

海上封鎖と食糧危機

露軍による海上封鎖でウクライナ産の穀物2200万トンが海に出られず世界各地で深刻な食糧危機が引き起こされる恐れがあるということで、ウクライナおよび西側は露に封鎖の解除を求め、露は逆に「商船の通航路は確保しているのだがウクライナ側がその通航を妨害し砲火で威嚇し機雷を設置しまくっている」としてウクライナを非難している。ウクライナ側はまた、「商船の通航のための回廊を確保した場合、露が商船を盾に軍船をウクライナ沿岸に近づけるかもしれぬ」と警戒感を示している。露軍にモラルとか禁じ手という概念が一切ないことは実証済みなので、そういうこともやりかねないと警戒するのも分かるが、だとすると、ウクライナ側が商船の航行を妨害しているというのも事実ではと思ってしまう。(重ねて言うが、だからウクライナ側も悪い、との譴責は不当である。そもそも露軍が封鎖しなければこの全ては無かったのだ)ОЖ

5/26(無事。人生の時間/狂プリマ/抗戦是非)

オデッサ無事。

概況:相変わらず揚陸艦6隻とミサイル搭載艦2隻からなる船団が洋上にいてそこからまたクリミアからミサイルが飛んでくる脅威は大きい。また蛇島の拠点化が進んでいて、周辺海域に機雷が設置され、対空防衛設備も運び込まれてしまった。ただ、時化のため敵の上陸はひとまず不可能な状況。あと、沿ドニエストルに緊張の新たな震源を創ろうという試みは破綻しつつある感じで、この方面の緊張はむしろ下がっている。ОЖОЖ

すべての人から7日の人生が奪われた

オデッサでは2/24から3か月間で182回空襲警報が鳴り、鳴ってた時間を累計すると6日と19時間と39分に上るそうだ。この間しかるべく日常生活を停止し安全な場所に身をひそめて警報の解除をただ待っていたものとすれば、全てのオデッサ市民からひとしく7日間ほどが、侵略軍によって人生の時間を奪われたことになる、と。ちょっとおもしろい計算だ。もちろん現実には深夜早朝で寝ていて気付かなかったり鳴ってるけど別段気にせず畑仕事や調理や動画視聴を続けたりした人もいるだろうが(てかぶっちゃけ、……まぁ言わないでおこか)。ちなみにお隣のニコラエフは194回で9日16時間51日。北・東・南東諸都市について、また人生の時間をまるごと奪われた人たちについては沈黙す。ОЖ

諷刺画

仏週刊紙シャルリー・エブドの特集でウクライナの風刺画家の戦争風刺画が多数紹介されたということだ。ОЖ

左、血染めの老狂プリマ頓風珍が鎌と槌を掲げステップを踏むごとにドレスからぴゅんぴゅんミサイルが飛んでいく様子、この狂った感じ素敵。右は狂暴クマ(ロシア)がウクライナのイズブーシカに片足突っ込んだら不意の反撃であえなく白骨化。

ウクライナはもう抗戦すな?

国土の荒廃をこれ以上深め、また自国民の死傷をこれ以上増やさないために、ウクライナは(そして西側は)「直ちに抗戦を止めてロシアの侵入と支配を甘受すべき」との論に個人的に接したので改めて考えてみた。まず感情的な反応としては、不快。よくそんなことが言えるなと思う。国家には自衛の権利が当然にあるという世界観である。自然人の自己身体に対する主権と相同のものが国家にも領土について存すると。で、感覚を離れて理知の次元では、ゼレンスキーのレトリックだが、ウクライナがヨーロッパそして自由で民主的な世界(日本ももちろん含まれる)全体にとっての防波堤であり前線なのだ、つまり、ウクライナはウクライナのためだけにでなく、日本のため、アメリカのため、ヨーロッパのためetc、要するに一部の国を除くほとんど世界全体のために戦っているのだ、という面は、たしかにある。頓風珍ロシアの「ロシア世界」というドクトリンは恐るべき拡張的性格を持っていて、「ロシア系住民が迫害されているので保護する必要がある」とかいって国境線を侵し隣国領土を占拠する、このようなことを許すなら、気づけばバルト三国もフィンランドもロシアということになっている。将来的に、「ロシア系住民の迫害」が発動条件とはまだしも穏健で抑制的なことだった、と懐古されるような、さらに恐るべく拡張的なドクトリンを、どこその野心的超大国が抱懐しないとも限らない。そのようなことは許さない、そのような試みは断固として阻止する、という立場には、強い正当性があると思う。ひとまずこのくらいにしておく。(なお、ウクライナが抗戦せざるを得ない理由として、ロシアの支配下では人民の虐殺が起きる、すなわち抗戦した方がまだしも犠牲が少ない、とか言う人がいるが、それは全くロシアの悪魔化が過ぎる)(抗戦するな論の人は論理一貫性のためにクリミア占領のケースを「あれは理想的であった、占領というものはあのようになされなければならない」と主張する必要があるが、するのだろうか)

5/25(塩がない)

オデッサ無事。最近の報道から話題3つ。

⑴塩がない。ドネツクにあるウクライナ最大の製塩企業が稼働停止し全国的に食塩が不足、オデッサもここ数日ほぼ全く塩が買えない状態だそうだ。ОЖ

⑵ウクライナ侵攻を指揮している露軍司令官166人の出自を調べたところ凡そ8人に1人がウクライナで生まれ又は育つなどウクライナにルーツを持っていた。私的に訪れたことがある・友人がいるレベルだとほとんど全員ではないかと思う。その166人のうち今日までに少なくとも20人が死亡していて、うち4人がウクライナ生まれだそうだ。何をかいわんや。ひたすらに言葉を失う。ПРОЕКТ

⑶例の米タイム誌の「100人」にゼレンスキーと並んで頓風珍も選ばれていて、ナヴァーリヌィによるその選評:最大の問題は軍そして核兵器さらには国連安保理に議席まで持っている狂気の悪人を制止するにはどうしたらいいのかということで、この問題への回答を見つけることが我々皆に課せられている(Однако ответ на главный вопрос: как же остановить злобного сумасшедшего с армией, ядерной бомбой и членством в Совбезе ООН, нам всем предстоит найти самим)ほんそれ。MEDUZA

5/24(安)

24日もオデッサに対する攻撃は行われず。今日も明日も行われないのだろうという気がしている。ヘルソンまで奪われ、蛇島から睨まれた状態で、中長期にわたり固定化するのではないか。不快で不安だが、差し迫った恐怖はぽすとぽ~んされた、低く暗い当面の安定。

の中の光。この秋に開園100周年を迎えるオデッサ市立動物園の先週末の賑わい↓

逃がし屋つかまる

徴兵適齢(18~59歳)の男性は原則的にウクライナを出国できない。でも出国したい人というのがいて、それを助ける闇ビジネスがある。書類の偽造から隣国への輸送までを8500米ドル(100万円くらい)で請け負っていたオデッサ男性が逮捕されたんですて。ОЖ

なお、今の状況は、なにも国民皆兵とか強制徴用みたいなことではなくて、健康優良な青壮年男性も軍隊に入らずに普通にウクライナ国内に存在していることはできる。ただ越境はできない。密かに越境しようとして見つかったら徴兵忌避ということで罰せられる。例外はたとえば障碍を抱えていて兵役不適とか、未成年の子供を3人以上抱えているとか、そういう事由が証明できれば出られる。くだんの逃がし屋の書類偽造というのも多分そういう証明書のことだろう。100万円で一家離散を免れるなら安いものと思えるが、それでうまくいく保証もない(だがうまくいった事例も相当数あると思われる)

(こういうことを試みるやつのことを日本語では売国奴というのだろうな。日本であれば市民社会の内部にこうした試みを阻止する監視・摘発装置が自然発生する気がする。ウクライナではそういうことはまず起こらない。私自身の感覚でも、出たい人が出られるのは喜ばしいことだとしか思えぬ)

5/23(無事。学校/切手/浜)

静か。オデッサ無事。

ネガティヴに見ると、要するに今は敵がウクライナ南部攻略のための準備を整えている期間なのだろう。蛇島の武装・黒海艦隊の再編が進んでいる由。巡洋艦「マカロフ提督」号が船団に加わったそうだが、これについては巡洋艦モスクワが始めたフラッシュモブ<Let’s雁行海底へ>の新たな参加者を歓迎する、とブラチュクの兄貴。ОЖ

↑紹介が遅れたが当記事でときどきその名に言及するオデッサ州軍政報道官セルゲイ・ブラチュクというのはこの人。オデッサ方面の戦況を市民向けに毎日報告してくれてる。

今度は学校破壊宣言?

オデッサ市内の公立学校(※ウクライナの学制は1~11年の小中高一貫)に戦車だのロケット発射台だのが運び込まれて軍事化されている(ので破壊せざるおえません!)と魯死亜国防省がまたしてもブラフ発表をなした由。義父母の実家に近いところなので一瞬ヒヤリとするが、大丈夫、空言に過ぎない。前にも書いたがブラチュクの兄貴によると敵の狙いは①市民にパニックを引き起こすこと②ブラフ発表へのSNS上の反応を分析して真の攻撃目標を策定することにある。加えて私見では③ウクライナ東部で現実に行われている学校等民生施設破壊の正当化④「キエフ軍」の悪魔化、つまり魯国内向けのイメージ操作。じっさい黄色い帽子の1年生や青春謳歌のティーン男女が笑いさざめく学校に戦車を運び込むという想像はかなりおぞましい。だが本当に学校が火点化してるなら魯のこんな発表を受けてむしろ対空防備を固めたり、別の場所に移動したりできるではないか。ОЖ

(ちなみに記事中で魯国防省は「殺人省」минубийствと呼称されている)

逝ってよし記念切手(続)絶賛発売中

巡洋艦モスクワ沈没から40日となる23日、「ロシアの軍船FUCK OFF」切手の第二段が発売され、期待通りのアジオタージュだそうだ。ОЖ

余談だが行列とか整理券とかいう概念が存在しないオデッサでは後から来た人は「最後の人ダレですか」と人群れに呼び掛けて「ああ私です」と答えた人に「じゃあアタシはあんたの後ね」と<マーキング>を行い、次に来た人の最後の人ダレかとの問いに「私です」と答えてバトンを渡す、ということをする。見えない糸での数珠つなぎ、アナログ式の仮想行列。(市民生活を普通に送るために要求されるコミュニケーションスキルの水準が高い)

んで、この「最後の人ダレですか」кто крайнийというのはオデッサに特有の表現みたいに上掲記事に書いてあるのだが本当だろうか。誰かロシア語圏の他の都市の生活実態に詳しい人。

ビーチは地雷原(再)

それでもビーチに降りてきて脱衣し寝そべりバカンスする市民があるらしいので火器で武装した警官が巡回して退去を勧告している、の図。ОЖ

5/22(汚職ばんざい)

22日もオデッサに対する攻撃はなし。ただし海からミサイルが飛んでくる可能性は依然として高い。その海の状況はというと、上陸用舟艇6隻と巡航ミサイル搭載艦2隻から成る船団がいて、こいつがオデッサ市・州・ウクライナ諸都市へのミサイルを飛ばしてくる危険はあるものの、上陸に関しては人員不足と時化で当面は見込み薄だという(ОЖ)。あと例の蛇島がロシア領として一方的に宣言され付近を航行する商船に対し「近づくと●めるぞ」と恫喝していてやっていること完全に海賊(ОЖ)。あと沿ドニエストルからモルドヴァへ又はウクライナへ攻撃が仕掛けられるというウワサがある(らしい)が、ウクライナ軍部はこれをフェイクニュースとして斥ける。いわく、ロシア本国から沿ドニ軍に対し軍用飛行場の整備が下達されたが現地軍指導部の多年にわたる汚職と怠慢でリソースが枯渇し到底履行は不可能(УП)。広すぎる国土、よほど中央から目を光らせ箍を締めていないと周縁部で豪族がのさばり癒着と腐敗が進んでしまうというゴーゴリ的状況。VIVA。

5/21(静穏)

ミサイルが飛んでこない静かな日。オデッサにとって。動物園は盛況(ОЖ)、ガソリン求めて右往左往の市民(ОЖ)、要するにいつもの土曜、オデッサは事もなし。ただし「戦争は終わっていない。もしかしたら後衛諸都市の市民の中にはもう戦争は過去のものと感じ情勢を軽視している人もいるかもしれないが、今日もウクライナの独立のために命を落としているウクライナ人がいるのだ」(ゼレンスキー

昨20日の夕方の方の攻撃で破壊されたのは肥料工場だそうだ。ひるまの便所破壊とあわせて、この日は真剣にウクライナ南部の大気の汚染を目標に撃ち込んできたのだろうか。高精度ミサイルを(ここで堪えかねて噴き出してしまう、ОЖ

ニコラエフでプーシキン像撤去

こんな話は今のウクライナでは珍しくないのだがお隣のニコラエフでプーシキン像が撤去された。これに関するニコラエフ市長のコメントが「撤去しましたよ、これでいいですか、カッカすんのも大概にしましょう、いま大事なのは勝つことです、そのことに集中しましょう、これ(プーシキン像)をどうするかは勝った後に考えましょう」とあって、うん、おっしゃる通りと思う。「気持ちは分かるが、大事なのはそこじゃない」УП

逝ってよし記念切手(続)

人気沸騰「ロシアの軍船去ねよかし」記念切手(4/16参照)の第二ヴァージョンがやはり出たようだので一応ご報告。(УП

巡洋艦モスクワ沈没を受けての改版。敵船のシルエットが消失しDONE印が入る。シートの右下隅には「敵どもに死を!」の文字。殺伐とした世界。このような言葉で満たされた社会に育つ子供たちが可哀想だ。国営郵便の公式刊行物としては、もう少しオブラートに包む、あるいは、ユーモアに昇華してほしかった。

5/20(20年探したテロリストをついに便所に見つけたらしい)

義父母に出国の必要性を説得する(そして叶わない)夢をまた見た。そんで朝起きてニュースを開いてミサイル攻撃との見出しが飛び込んできて急ぎ目を走らせてみると「本日2022年5月20日、露侵略軍航空機よりオデッサ州に対しミサイル攻撃、南方作戦司令部によると、今次の攻撃で被弾したのはとあるビーチの便所である」とあって大笑い。

«Ракетами воздушного базирования враг существенно испортил воздух на юге Одесской области.
Воплощая один из знаковых месседжей своего сумасшедшего диктатора, рашисты, очевидно, пытались «замочить в сортире» очаг нацизма. Разрушен пляжный туалет»
「敵は空中発射式ミサイルによってオデッサ州南部の大気を深刻に汚染した。狂気の独裁者(頓風珍)の名言を実現するべくファシストどもはナチズムの淵源を「便所でぶっ殺す」ことを企てたようである。ビーチの便所がぶっ壊された」

「便所でぶっ殺す」は頓風珍が大統領就任前にチェチェンにおけるテロリスト掃討作戦について言った有名な台詞で(Wikipedia日本語版で見出し語にさえなっている)、タフガイ国父のイメージを内外に鮮明にした、いわば今のキャリアの起点になった言葉だ。それから20年、老醜・狂気の帝王よ、ついに見つけたんだねえ。血走った目をカッ見開いて「みぃ~つけた!」

いいオチがついた。もういいよ。退場してください。

2度目のミサイル攻撃

同日夕、2度目のミサイル攻撃があり、インフラに被害があったという。なんのどういうインフラなのか。それがわからないのと、あととりあえず人的被害はないそうなので、明らかにどうでもいい便所破壊の方が今日のトップニュースになってしまった。ОЖ

オデッサ映画スタジオで武器弾薬探してみた

オデッサ市長がオデッサ映画スタジオ内を歩き回って武器弾薬探してみたよ・なかったよ。武器弾薬なんかどこにもなかったよ。という動画。

ちなみに動画でザハーロワの「オデッサ映画スタジオ(Одесская киностудия)」との発語がリピート再生で強調されてるが、オデッサをこいつのようにАдэссаと発音するのは典型的な「ロシアのロシア人」すなわち余所者の符丁であって、地元民の耳からするとマジ不快であり絶望的にダサい。→「オデッサか「アヂェッサ」か~ロシア語の≪Е≫の発音~」

たたかう猫ちゃん

戦争が始まってからやたら猫がたたかう。オデッサはもともと猫がうじゃうじゃいる街だが。今度は画家(イラストレーター?)の母とその娘による連作。

これとか

これとか好き。もっと見たい方→ОЖ

敵性語の街からの排除

オデッサ市議のなんとかいう人がオデッサ市内の道路の名称のうちロシアと関係のあるものを軒並み改称するように呼び掛けているということで。またその話か(いわゆる脱共産化ということで14年以降道路名称の改称運動が全国的に行われ、その後も改称漏れのものの追加改称の報がたびたび上がっていた)と思いながら記事読んでたら、ドミートリイ・ドンスコイとかアレクサンドル・ネフスキーとかオデッサと何の関係があるんだ、オネガ通りとかノヴゴロド通りがあるならどうしてワシントン通りとかロンドン通りがあってはいけないんだ、とあって、まぁ確かにと思ってしまった。

が、やはりこんなことは馬鹿々々しい。憎悪は有り余っているので敵の「像」を増殖さすことは容易だ、だがあまり敵を増やし過ぎると本当の敵が見えなくなってしまう。どう改称したって結局民衆は慣れ親しんだ元の名で呼ぶのだし。ОЖ

5/19(オデッサ映画スタジオ破壊宣言?)

露外務省ザハーロワ報道官によるとオデッサ映画スタジオにウ軍の武器弾薬や地対空装備が運び込まれ軍事拠点化しているのだそうだ(РИА)。民生インフラを密かに軍事化し人民を肉の盾にするキエフ軍陋劣なり、といういつものプロパガンダ。自軍の雑魚ミサイル下手撃ちによる相手方民間人死傷を言外に正当化するもの。「お定まりの厚顔無恥な嘘。吐き気がする」とオデッサ市長(T)。「たしかに敷地内に兵器はある。第二次大戦時のレトロ軍用車が、撮影用に」とオデッサ軍政報道官(UNIAN)。オデッサ映画スタジオ↓

ソ連映画およびドラマの名作が多数制作された撮影所。みんな大好きヴィソツキーの集合場所変更不可(место встречи изменить нельзя)も児童映画「エレクトロニクのぼうけん」もここで制作された。いわば旧ソ連・ロシア語文化圏全域にとっての貴重な文化財である。ここが軍事化されたということ、それを理由にミサイルを撃ちこんでくるやも知れぬということ、どちらにとってもおぞましさ閾値越え(зашкаливает)な想像だ。

私事ながら、私たちのオデッサにおける最後の住み家はここから徒歩2分のところであって、発せられる印象的な一点鐘ジングルを毎日聞いていた。同じアパートに今わが義兄とその恋人が住んでいる。

ザハーロワがこう言ったからとて、必ずしもミサイルが撃ち込まれるとは限らない。むしろ、撃ち込まれる可能性は低減された、あるいは排除された、と思われる。思いたいのか。過去には義父母の家から至近距離の州立病院について露側による同様の「軍事化」発表があったが(5/6参照)、その後別に何もなかった。こういうブラフ発表の狙いは2つあって「1つは人民に恐慌を巻き起こすこと、1つはこうした発表に対する人民および軍または行政の反応を分析して真の軍事拠点の所在を突き止めること」だとオデッサ軍政報道官ブラチュクの兄貴。ОЖ

(個人的には、ウクライナ軍が本当に民生インフラおよび市民に軍事インフラおよび軍人を紛れ込ませていないのかどうか、確実なことは誰にも分からないと思うので、ウクライナがそういうことをしていないと断定する気もない。それが戦争(このような防衛戦)における禁じ手なのかどうかも知らない。とはいえ、それによってウクライナが「市民を巻き添えにしている」という譴責を受けるいわれもないと思う。撃ってくる方が100%悪い、という事実はどうあっても動かない)

マルシュルートカ減便

マルシュルートカ(ミニバス)。例のガソリン不足および価格高騰で自家用車から公共輸送機関への振り替えが進み需要が高まっているにもかかわらず、同じ理由で採算が合わなくなり、その運行数が減っているという。それを必要としている人には気の毒な話だが、そら見たことかという感じもする。先日言ったがオデッサは公共交通機関の整備が行き届いていなく、電車やトロリーバスやトラムでカバーできていない部分を民間のマルシュルートカが補っているのだが、なにしろ民間なので、このように一番必要な時に経済合理性を理由に撤退してしまったりする。

ガソリン不足とはいうが、事実上の公共輸送機関であるマルシュルートカにきちんと燃料が優先配分されていれば問題ないわけだ。だがそれを実行するためのスマートなスキームがなかったり、例の自家用車とガソリンスタンド店員の闇取引の横行で、必要なところに必要なだけが行きわたらない。けだし腐敗した社会は危機に弱い。日本が理想社会だとは全然思わないが、少なくともここに(および5/17付けで)書いたようなことで市民社会が麻痺するようなことは、有事の際にも起こらないだろうと思う。ОЖ

ゼ「戦後ウクライナはイスラエルレベルの国家安全保障を構築する」

ゼレンスキーがウクライナの学生たちを前に語ったそうだ。戦争終結のあかつき、ウクライナは安全保障の問題に傾注する。「いつどんな恐ろしいことをしかけてくるかも分からない奴が隣に住んでいる、ということを人々が理解している、イスラエル(をはじめとした先進諸国)と同水準の安全保障インフラを構築する」УП

アゾフスターリからの化学物質流出でアゾフ海の水質汚染の危機

マリウポリの例の製鉄所から化学物質が流出してアゾフ海でエコロジカル・カタストロフィの危機だそうだ。で水つづきの黒海であるが、専門家によると「黒海にはさしたる影響はないだろう。黒海はすでに一種の毒の海だから」。

これは私も前に何かの番組で見たんだが、図のように

黒海は水深100mくらいまでは酸素があって生き物も豊富にいるんだが、200m以下は硫化水素の層で、そっから水深2000mくらいまでもともと誰も棲んでいないのだそうだ。「そうか。ホッ。ならよかった」ОЖ

この記事をお読みになって、何か学びがあった、と感じられた方、下のボタンから「投げ銭」をいただけると、励みになります。100円とかで結構です。

何丘に「投げ銭」してみる

5/18(畑/半建築/カタコンベ)

18日未明ミサイル一発、州内のどっかの畑に落ちた。被害なし。着弾地&ミサイルの残骸を写した映像だそう↓

オデッサの市域を出るとこんな茫漠たる畑がいっぱい広がっている。ヨーロッパの穀倉。どこまで走っても山など影もない、緩やかな起伏を帯びた広大な平地。ステップというやつ。あと、見ての通り土が黒い(チョルナズョーム=肥沃な黒土というやつ、義父によるとかつての黒海海底だが本当ですか)ОЖ

ともあれ、敵は今、前世紀50~90年代の「高精度であることをその特徴とはしていない」ミサイルを使用していて、どこに着弾するかは神のみぞ知る、すなわち、確証的に安全な場所など存在しない。ОЖ

花咲く春

オデッサを訪れるのに一番いい季節はいつですか、と聞かれたら、だいたいの人が「5月または6月」と答えると思う。緑と花の彩り、まだ暑くなりすぎない、夏場のバカンス客でごった返さない。そのよき季節がまた巡りきたそうで。ОЖ

ライラックやアカシアの芳香が漂いマロニエの燈心が燃えトーポリの綿毛が舞う五月のオデッサ。

街の変貌

ОЖのもう一方のルポルタージュは市の”闇”を照らした。戦争前、オデッサは(ウクライナでは珍しく)人口が増加傾向にあった街で、とはいってもそんなに大挙して移住してくるものでもないだろう(部屋余り大丈夫か)と心配になるほど、同時並行で高層マンションの新規建設が進行しまくっていた。それが戦争を機にぱたっと途絶し、多くの建設現場が現状のままおっぽり出されて、大型の屋上クレーンなどがなすところなく上空でたたずんでいて剣呑な感じらしい。「もし魯兵の狂った脳髄に『あの作りかけの高層マンションにアメリカの兵器が格納されているのでわないか!』という狂った考えが浮かんでミサイルが撃ち込まれ、重量20トンの60m級クレーンが頭上に落ちてきたらどうする?」と記者。だが建設会社はこれを撤去して安全確保するのも自腹が痛むことだからしない、「不可抗力だから仕方ない」。実はオデッサは以前から中途放棄された半建造物が多かった。採算が合わなくなるとすぐ責任者がドロンしてしまって工事は沙汰止み、土地のその一角は簡易隔壁の中でとわに且つムダに休眠する。今度のことでいっそうひどくなった景観の荒廃、これがクリーンアップされるのに今後一体何年かかるのだろう。

一方でいいニュースもある、とかで。オデッサ名物カタコンベというのがあって、本来の意味のカタコンベ(地下墓地)ではないのだが、オデッサの地下には蟻の巣みたいな坑道が延長相当な距離で広がっていて、一部は観光地化されている。されていた。それがいま地下シェルターとして注目されて、整備が進んでいるのだそうだ。

応援のお願い

長らくこの記事を書き続けてきました。まだ当分終わることができないようです。
(オデッサについて戦争との関連で何も言うことがなくなる日まで更新が続く)

この記事から何ごとか得たと感じておられる方、今後もこの記事に続いてほしいと思ってくださる方、100円から可能な「投げ銭」で何丘を応援ください。

何丘に「投げ銭」してみる

OFUSEというサービスで、100円投げ銭いただけると90円が私めに入ります。あと、投げ銭の金額の2分の1の文字数(たとえば100円なら50文字)、何丘宛てにメッセージを送れます。

当記事はウクライナ戦争のさまざまなアスペクトの中でもオデッサをめぐる状況のみに偏頗な関心を寄せるものであり、記述も自己表出過多で公平を欠きます。ただ、一応元プロの人間が特殊専門的技能を駆使して書いており、あと、そいつ(その書いてる奴、私)がついこないだまでまさに現地に住んでいたという点に、一応の取り柄があると考えています。

頑張れよ、読んでるよ、ちとわろた、ものもうす、蒙啓けた、開眼した……などなど、何かあれば、投げ銭&メッセージくださると、とても嬉しいです。

5/17(執拗に狙われる橋/ガソリン/アカシア/浜)

17日、例のドニエストル・リマンにかかる橋にまたしてもミサイル。巡航ミサイル2発が命中したそうだ。度重なる攻撃で橋はつとに通行不能になっており、補修もままならない。(逆に、そんだけ当たっても崩落はしないものなのだろうか)ОЖ

同じ橋を狙った16日のミサイル攻撃で誤爆された海辺の保養施設の6歳少女は指だの足だのを切断する重傷だそうだ。という一文を書くのに10分くらいかかった。到底こんなことに慣れることも、理解することも、許すこともできると思われない。ОЖ

ガソリン

ウクライナでガソリンが払底している。各所の石油加工/貯蔵施設がミサイル攻撃で破壊され、残った少ないガソリンは軍や重要インフラに優先配分されるため、自家用車向けの普通のガソリンスタンドは品切れのためお休み/営業してても長蛇の列/もしくは法外な高値で取引されているという。義父はつとに電車orマルシュルートカ(ミニバス)通勤に切り替えている。義兄はなんや某ガソリンスタンドでアルコールで希釈した変な燃料を注入されて自慢のダイハツを壊してしまったそうだ(爆発なぞしなくて本当によかった。剣呑すぎる)。ネックなのは何しろ情報がないことで、今どこにどれだけのガソリンがあるのか、目当てのガソリンスタンドがやってるのかやってないのか、現地に実際に足を運んでみないと分からない。どこか開いてるとこはないかと残燃料ギリの車を走らせるだけ走らせて、結局見つけられずに燃料空費した、ということにもなる。

あと、一回の給油量が制限されている。これは私たちがまだオデッサにいた3月上旬時点で既にそうだった。だが「現金で。レシート不要」という魔法の言葉をいうと満タン給油(ただし割増料金で)してくれたりもするそうだ。請えばレシートも出るがそこには規定料金で規定量だけ給油したかのように書かれている。実際との差分は担当したスタッフの懐に入るというわけ。

この話の中にウクライナ社会の腐った部分が端的にいろいろ出ている。①公共交通機関が未発達なので移動が自家用車だのみ。②店舗とか役所の営業情報が公開・更新されず「やってるかやってないかは実際に足を運んでみないと絶対に分からない」。③「袖の下」慣行が社会の隅々まで行きわたっている。ОЖ+実体験

アカシア

オデッサの白アカシアが開花を迎えた(ОЖ)。アカシアはオデッサを象徴する花だ。街から海へと降りていく斜面は広大なアカシアの森になっている。歌にも歌われている。レオニード・ウチョーサフ「黒海のほとりに」

Есть город, который я вижу во сне.
О, если б вы знали, как дорог
У Чёрного моря открывшийся мне
В цветущих акациях город.
У Чёрного моря!
その街のことを夢に見る
とても大切な街
黒海のほとり、私の前にいま開けくる、
アカシアの咲き乱れる街
黒海のほとりの

そのアカシアの森を抜けて海へ降りていくことが許されていない。海はいま3重の意味で危険だという。第一に、浜は地雷原。第二に、ウクライナ軍および露軍の双方が海中に機雷を設置していて、それが時化で繋留を解かれて岸辺に漂流してきている。第三に、敵はオデッサの特に沿岸部にやたらミサイルを撃ちこんでくる嗜癖があるようなので、次狙われるのはそう、今あなたがいるそのビーチかもしれませんよ。ОЖ

5/16(橋、悪いミサイル)

9日以来のミサイル攻撃、つまり1週間ぶりか、またしても例のドニエストル・リマンにかかる橋が狙われたらしい。軍部によると「敵は損傷し不通となっているドニエストル・リマンにかかる橋への攻撃を継続している。だが犠牲となっているのは無辜である」。何しろ橋周辺の保養施設つまり夏場バカンス客を収容しまた饗応する日本語でいうところの「海の家」的なやつが破壊され近隣の住宅も被害にあって大人3人と6歳女児が負傷、女児は重体だそうだ。ОЖОЖ

その後もう一度オデッサ方面へミサイルが飛んできたが、これはウクライナ軍が撃ち落としたとのこと。ОЖ

何しろ敵にとって橋を完全に破壊することが戦略的にめちゃくちゃ重要なんだろう。これでもう5次にわたって攻撃してるわけだから。でも、どうやらそれほど重要な戦略目標にして、その攻略に有効なミサイルを使用できていない、ということになるのではないか。一度は狙いを外して海の家とか民家とかを破壊しちゃってるわけだし、一度は迎撃されちゃってるわけだから。高精度・超音速のミサイルが枯渇してるというのは本当なのではないか。と素人考え。

ラシズム(ロシア・ファシズム)という術語

ロシア語又はウクライナ語でウクライナ側の情報を追っている人にはつとに馴染みの文字並びだが、侵攻以来、рашизм(ラシズム)あるいはрашист(ラシスト)という言葉が報道・論説でよく使われていて、その意味は「ロシア版ファシズム/ファシスト」ということなのだが(頭文字のFをロシアのRに置き換えた新語)、この語にお墨付きを与える決定がウクライナ最高会議人道および情報政策委員会によってなされた。マスメディアに対しこの語の使用が推奨され、またこの語をウクライナ語辞典に載録するよう勧告もなされている。ウクライナ国家記者連盟によると「ラシズムはナチズム・ファシズムの一種で、『ロシア世界』という術語のシノニムである」ОЖ

あれとこれとを同じ名前で呼べない、というのは一種の心の優しさでもあると思うのだが感傷的に過ぎるだろうか。私もこのブログで戦争の文脈でロシアをその名で呼ばずに端的に「敵」と言ったりイニシャルで露とか魯とか書いたりするが、それは、私にとって(個人史的必然として)一種の聖別された名であるロシアの3文字で、今のこの(これまた私にとっては聖別された名である)オデッサに対してミサイルテロを繰り返す集団のことを呼び表したくないからである。からで「も」ある。

というような機微は一切感触も想像もすることなく、日本政府は、次いでメディアは、「ウクライナがそれでお喜びになるなら」とて、この語を公式採用して使い出すこともあるかもしれないな。ウクライナの地名を一斉にウクライナ語呼びに変えたように。

全然関係ないのだが「ネコは同居ネコの名前を分かっている」のだそうだ。NHK

「自分がネコ好きなこともあり実験を行った」の一言にほっこり。

5/15(無)

静穏。

5/14(静穏)

9日を最後にミサイルが飛んでこなくなった。軍部によると、敵のミサイルが枯渇してきていることが原因で、オデッサへ、またウクライナ全体へも、攻撃が間遠になっているらしい。既にオデッサへの7~9日の攻撃の時点で敵弾にソ連時代の旧式のものが混じっているのが認められた。張子の虎!はりぼての「世界第二の(略)」!ОЖ

ヘルソンで露への編入要請(NHK)

NHKのこの報道はある種の典型を示していると思う。選択的な「現地の声」に矢鱈に重きを置く。「ヘルソンに住む50代の住民の男性」一人の声なんぞを大きく取り上げすぎ。現実には露に占領された現状をまんざらでなく思っている人たちも少なくないと思うし、「ロシア軍は食料品を奪い、住民が抵抗すると殴ったり、殺害したりしている」というのもどこまで事実か。「検問所ではスマートフォンを調べていてウクライナ側を支持しているような内容があればスマートフォンを取り上げるか、持ち主を逮捕している」とあるが、同じようなことをウクライナ側もやっているに違いない(追記:たとえばこちらの記事→車載カメラで検問所を撮影していた男を取り調べてみたらテレグラムの親ロシアチャンネルを多数フォローしていたため拘束)。ウクライナ南部(このヘルソンや、オデッサを含め)は伝統的に親ロシアの土壌である。今度の侵略で嫌ロ親ウに傾いた人も相当数いるだろうが、ひとたび露の支配が確立して「もうミサイルが飛んでくる恐怖も、空襲警報や爆発音におびえることもない」ということになると、他ならぬ侵略者たちがもたらしたかりそめの平安の中で、親露の地金が現れてくることも想像に難くない。インフラを復旧し治安を維持し食料や生活支援物資を配給するZ軍はそれこそ「兄弟」の貌をしている。そしていざウクライナ軍が奪還作戦にやってきたときに、かなしいかな、愛すべき祖国の「解放」軍は、平穏な生活の再度の破壊者として立ち現れる。占領されるということはそれほど致命的なことなのだ。

話がそれた。この一人の「ヘルソンに住む50代の住民の男性」の声がどの程度「現地の声」を代表しているものなのか。こういう報道に接するときは眉に唾をつけてかかった方がいい。

5/13(横浜/蛇島/ウォッカ)

13日、オデッサに対する攻撃はなし。だがオデッサ沖の「蛇島」がホットスポットになってるのと、あと沿ドニエストルで相変わらず不安定化工作。「敵軍が沿ドニエストルに空路、オデッサに海路上陸する可能性については、そうした可能性を排除はできないものの、まず前者についてはウクライナ軍の対空砲火を恐れて戦闘機すら飛来しないのが現状であって兵員装備輸送機のオデッサ上空通過については言うも愚か、後者も迎撃の構えは陸海で十分であって、上陸の企ては敵にとって自殺行為である」と軍。ОЖ

蛇島

蛇島(остров Змеиный)でここ数日戦闘が激化している。敵にとってはオデッサおよび沿ドニエストルへの上陸・ウクライナ南部への攻撃・黒海北西部支配のための要衝で、3月24日の侵攻初日に進軍・占領して以来、現在も露軍の拠点となっている。これに対しウクライナ側が攻撃を仕掛けている形。場所↓

素人考えでも分かる気がする。敵はつとに下図の黄色い丸印にあるドニエストル・リマンにかかる橋の破壊を狙っていて(それが成功したのかどうか不明、とにかく4次にわたりミサイルが撃ち込まれている)、これが成功するとオデッサ州の所謂ベッサラビア地方(ドニエストル・リマン以西の地域)と母ウクライナが事実上切り離される。敵としては、蛇島起点で同地方を攻略しつつ北上、モルドヴァ東部の沿ドニエストル地方(事実上のロシアの飛び地)と繋げることができれば、つとに攻略済みのドニエプル左岸と合わせて、東西そして南からオデッサを挟撃できる。

しかし上記マスタープランの実現のためには対空防衛システムで船団とか上陸部隊を掩護することが不可欠で、かつてはその役を例の巡洋艦モスクワが担い得たが、同艦が「逝ってしまった」ために、それに代わるものを蛇島に構築する必要が生じた。それで先日来、蛇島への対空防衛用レーダート等の搬入の試みがあるのだが、ウクライナ側がこれをよく阻んでいる由。(ただし敵側もこの阻止をまた阻止するべく頑張るので、ウクライナ側にも相当の損失が出ているらしい)

蛇島は洋上の孤島なので「占領するのは容易だが、防衛するのは至難」であるとのこと。ウクライナは下手に奪還しようとせず、敵の装備の搬入を待っては撃滅する、というのをひたすら繰り返してはどうか、と素人は愚考す。毒牙を矯めつつ敵を待つ蛇島の図(本章冒頭)。ОЖУПBBC

姉妹都市ヨコハマ

姉妹都市であるオデッサと横浜の両市長がオンラインで会談した。横浜からオデッサへ水の浄化装置(система очистки воды、家庭用の浄水機?もっと大がかりなもの?)が届けられるのだそうだ。一方のオデッサ市長は横浜市長にオデッサの世界遺産登録への支持を求めた由。T

ウォッカ解禁

オデッサ(市・州)では14日から全種類のアルコール飲料の販売が解禁される。経緯をいうと、2/24侵略始まる、3/1に全種類のアルコール飲料が販売および提供禁止、4/1にアルコール度数30度未満の飲料すなわち麦酒ワインの類が解禁、でこの5/14全種類解禁。大丈夫かな。市民社会に銃火器が充満している状況であることが心配だったりする。ОЖ

5/12(オデッサっ子を世界遺産に)

オデッサ方面、やはり9日を境に静かになった気がする。空襲警報も鳴らないではないが報道に攻撃被弾命中爆発死傷損壊の文字なし。

や、あったか。最近のミサイル攻撃(多分9日の)による衝撃波でオデッサ中心部のヴォロンツォフ宮殿が損傷した由。市長「オデッサの世界遺産登録を改めてUNESCOに求める。我々の責務はオデッサそして全世界の将来世代にこの街の建築を残すことだ」ОЖ動画

まったく逞しい。転んでもただでは起きない。災い転じて福となすてやつか。ヴォロンツォフ宮殿はオデッサ港を見下ろす観光一等地に立つ19世紀の多分美麗建築だがもともと整備不行き届きで廃墟化し落書きだらけのベニヤ柵にぐるり覆われていて誰も入れない、私に言わせればダメなオデッサの象徴みたいな物件だった。それをいいカメラで美しく撮って侵略軍の蛮行に帰責し世界遺産登録へのテコに用いるとは。ちなみにこれ

ヴォロンツォフ宮殿ならびにヴォロンツォフ(とプーシキン)については何丘のこちらの記事をどうぞ

思うに、この逞しき「オデッサっ子」одесситыこそ世界無形文化遺産に登録されるべきではないか。ソ連時代から数々の歌に歌われ文学に映画に描かれた、海を愛し諧謔・浪漫精神に富むこの人々。

歌、たとえばこれとか。レオニード・ウチョーサフ「オデッサっ子ミーシャ」

Ты ж одессит, Мишка, а это значит,
Что не страшны тебе ни горе, ни беда!
Ведь ты моряк, Мишка, моряк не плачет,
И не теряет бодрость духа никогда!
きみはミーシャ、オデッサっ子。その意味するところは
きみは不幸も哀しみも恐れちゃいけないってことなんだ
だってきみは海の男。海の男が泣くもんか
心の張りを失うな、決して!

とはいえ地雷原と化したビーチで無双は禁物

オデッサ市公式テレグラムが口を酸っぱくしてビーチに降りないでくださいね今は戦時ですからね浜は地雷原ですからね!!と警告している。このほど隣町のユージヌィの美しきビーチも地雷原化した由(ОЖ)。だがそれでも浜へ降りてきて水浴するやつというのがいる。この動線なら地雷踏まないで海まで行ける、という「けものみち」を見つけたんだろう。誰かがその最初の一人とならなければならなかった。その一人と、あとナマコを最初に食った奴。

5/11(幸運な街)

11日、2発のミサイルが発射されたが、1発は海上で撃ち落とすことに成功し、1発は州内に落ちたものの人にも物にも損害はなし。敵は戦力に乏しく兵員も士気を欠き、オデッサに上陸/進軍してくる見込みは低い、だがミサイル攻撃の脅威は依然として高く、沿ドニエストルとの境界付近も緊張していると。ОЖОЖ

オデッサ旧市街の世界遺産登録に向けた手続きがかなりいいとこまで進んでいるらしい。期待。ОЖ

5/10(敵の3つの武器:新旧ミサイルとフェイクニュース)

概況:10日のオデッサは基本的に静穏であった。とはいえ引き続き海からクリミアからミサイルが飛んでくる脅威は非常に高い。「艦船6隻と潜水艦2隻にオデッサ州はじめウクライナ全土を攻撃可能な巡行ミサイル50発以上が積載されている可能性がある」。とはいえ数日オデッサをムチャクチャに攻撃して敵は一旦退いた、今は水がなくなるだとか(後述)フェイクニュースをばら撒いて精神攻撃に力を入れているもよう。ОЖ

9日夜のショッピングセンター攻撃で1人死亡

9日23時オデッサに7発ミサイルが撃ち込まれ郊外の大型ショッピングセンター「リヴィエラ」が全壊し、とはいえ夜間(外出禁止時間中)のことゆえ当然にお店は閉まっていて、それでも警備員1人が死亡、5人が負傷。ОЖ

敵はどんなミサイルを使用しているか

ウクライナ大統領顧問の何とかいう人によると現在敵がオデッサ攻撃に使っているミサイルは2種類あって、1つは60年代の何とかいうミサイルでものすごく精度が低く取り扱いも難しい、1つは例のキンジャールという最新鋭の超音速ミサイルと、両極端なことになっている。高精度ミサイルの残弾数が心もとない感じになってきて節約の意味でやたら古いものが使われ出しているという。新旧ミックス撃ちの帰結として

・旧式ミサイルの使用によって「ハズれ」が、つまり、住宅など民生施設の被弾が多くなる
・最新ミサイルの使用によって重要拠点のピンポイント破壊が多くなる(超音速ミサイルなので迎撃できない)

この結果市民はウクライナ軍のミサイル防衛はザルとの印象を抱き恐慌をきたす。まさにそれが敵の「ミサイル・テロル」の狙いであろうと。ОЖ
(9日のショッピングセンター攻撃に使われたのはちょうど旧式の精度の低いやつだった由)

例の橋に第4次攻撃

例のドニエストル・リマンにかかる橋(4/26の記述参照)が4度目の攻撃を受けた。犠牲者はいないという。分からない。結局橋は生きてるのか死んでるのか、生きてたのか、死んでたのか、今回死んだのか、今も生きてるのか。私たちに知らされることはないのだろう。(さしずめこういう攻撃に使われてるのが新式の方のミサイルなのだろう。実際5/2の第3次攻撃のときは超音速のが使われたっぽく言われていたし)ОЖ

「オデッサで大規模断水の危機」とのフェイク

水道インフラの破壊でオデッサが(隣のニコラエフのような)大規模断水に見舞われる恐れがあるからこれに備えよ、との報がSNSを飛び交ったらしい、でもこれはフェイクである由。敵がオデッサを攻撃するすべは今のところ(そして当分は)遠距離からミサイルを撃ち込む以外になくそれでピンポイントで水道網の一部が破壊されてもすぐに修復できる、陸上から攻め込まれているニコラエフとは全然状況が違う、パニックに陥るな、公式発表以外信じるな(拡散するな)、と。ОЖОЖ

5/9(朝に夕に夜に)

オデッサへの攻撃が止まない。朝に夕に夜にミサイルが撃ち込まれた。人的犠牲については負傷者数人の報があるばかり。軍事的損害、市民生活への影響については誰も何も言わないし何も分からない。一発何千万もするミサイルがただただ空費されたのであってほしい。

朝、クリミアから4発。そう言われても全然ピンと来ないのだが分かる人のために言っておくと沿岸ミサイル複合体バスチオンの「オニクス」型ミサイル(типа Оникс из берегового ракетного комплекса Бастион)だそうだ。ОЖ

夕、戦略爆撃機Tu-22から発射された「キンジャール」型ミサイル3発(3 ракеты типа «Кинжал» выпущены из самолета стратегической авиации Ту-22)によりオデッサ郊外の観光施設が破壊され、2人が病院に搬送されたそう。キンジャール型がオデッサに使用されるのは初めてで、何しろこいつは最新式の高速ミサイル、弾数もごく限られてる中で観光施設なぞの破壊に用いるのは敵ながら少々勿体ないのではと心配になる、いもしない「外国人傭兵部隊」を撃滅しに手あたりしだいのものを引っ掴んでは投げ引っ掴んでは投げしているのだろうか、哀れなことだ、とОЖ(の書きぶりを何丘で若干誇張)。ОЖ

夜、またミサイル攻撃、詳細不明。何しろ複数の爆発が報告されており、負傷者も出ている模様。どうもショッピングセンターが被害にあったようだ。ОЖУП

EU大統領のオデッサ訪問

上記の攻撃はミシェルEU大統領がオデッサを訪問中であるのにも関わらず行われた。何も驚かない。いま我々が目にしているのは核・軍事超大国の発狂というおぞましき事態であって、聖なるもの不可触のものを何一つ持たなくなることが狂うということだから(例:うんこ食べる)。そこがウクライナであれば岸田がいる場所にもローマ教皇がいる場所にも奴らはミサイルを撃つだろう。

で、何が話し合われたかというに、ひとつは、オデッサ州内の港湾の封鎖を解除する必要性が話し合われたそうだ。先に国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長が延べていた:ロシア軍による海上封鎖で欧州・世界への一大穀物輸出国であるウクライナから穀物が出られなくなり、このままでは世界で4400万人が飢え死にする恐れあり、封鎖の解除は今日にも行われねばならぬ、さもなければ想像を絶する被害がもたらされるであろう。戦争犯罪もここに極まるという感じがする。ОЖОЖ

5月9日が過ぎた

その5月9日が過ぎた。もともと好きでない。私は2012~2017年の間モスクワに住んでたが、最初の2回くらいはわざわざ航空ショーを見に出かけた。雀が丘で当時の恋人(今の妻)と手ぇ繋いでサリュー(打ち上げ花火)見た。若かった。私たちも世界もともに。14年以降はゲオルギーリボンを見ると反吐が出るようになった。

頓風珍の演説に新味なし。よかった。何も言うことがないのだろうな、それは口惜しいであろうな、と想像する。日付を気にする人たちだ。口ではなんといっても、分かりやすい、誇れる戦果をこの日までに挙げたかったに違いない。だが挙げられなかった。動員とか戦争宣言とか、一歩踏み込んだ発言も日和らざるを得なかった。

頓風珍が「英雄都市」キエフとオデッサの献花台にカーネーションを捧げる動画を見て何とも言いようのない感情。クレムリン外壁に沿うアレクサンドル庭園に先の大戦で祖国(ソ連)防衛に功あった諸都市を顕彰する記念碑が並び立つ、それに順繰り一輪の花を手向けていった、ねえ頓風珍、お前何思ってたの?どんな気持ち、ねぇどんな気持ち?

5月9日が過ぎれば戦果を急いでのオデッサへの盲滅法の攻撃もいったん沙汰止みになるのではと見て、この日付をひとつのメルクマールにしてたが、どうもそんなこともない感じか。いいよ。果てしなく祈る。

(義父母義兄みな元気でおります)

5/8(16発)

終日ミサイルが撃ち込まれ続ける。4次にわたり少なくとも16発。負傷者あり、だが死者は出ていないらしい、スラーヴァ・ボーグウ。

⑴深更より空襲警報鳴りやまず。上掲スクショは発令と解除のタイムライン(T)、日本時間表示、マイナス6で現地時間。のちの発表によると、この夜間~早朝の攻撃では8発のミサイルが撃ち込まれ、うち2発が撃墜され、6発が州内各所の家屋とかインフラを破壊した。人的被害ありとのことだが詳報なし。ОЖ

⑵午前中、もう2発。1発は撃墜、1発はどこぞへか命中して爆発が起きた。ОЖ

⑶昼過ぎ、さらに複数発。詳報なし。ОЖ

⑷16時過ぎ、3発。1発は撃墜、2発が着弾、海辺のレストランが破壊された由。ОЖ

要するに全然わからない。どこに弾が落ちて何がどのくらい損なわれたのか、敵の狙いが何で、それがどの程度果たされたのか。だが少なくとも民間人の犠牲については、ウクライナ側が死者について何も言わないのなら、実際に明らかな死者はいないのだ。一人でもいれば必ず取り上げて敵は悪鬼なりと騒ぎ立てるはずだから。

8日22時から9日まるごとを含んで10日朝5時まで、オデッサ市・州で外出禁止令が敷かれる。侵略者たちはドンバスやアゾフスターリへの爆撃を続けつつオデッサにもミサイルを送り込みつつ、強大な軍事力と世界を滅ぼす核戦力を誇示するパレードを行うのだそうだ。赤い広場と赤い空で。おぞましい。これをおぞましいと感じない感性があるというのが信じられない。

5/7(10発)

朝4発、昼6発、インフラ損傷、死傷者なし。

時系列でいうと、
朝からオデッサ上空を戦闘機(ウクライナ軍の)が飛び、また敵の無人爆撃&偵察機が飛ぶ。ОЖ
で午前中に巡航ミサイル4発が撃ち込まれてインフラに被害、人的被害はなし。ОЖ
で午後にミサイル6発が撃ち込まれて、うち4発が民間の家具工場に当たり、2発が(先に既に攻撃されて滑走路が破壊されていた)オデッサ国際空港に当たった。近隣のアパート・マンションの窓が衝撃波でボロボロに破れる。人的被害はなし。ОЖОЖОЖ

そんな一日のオデッサ中心部「新市場」の様子(ОЖ)。まちびとの気息が感じられる良レポート。だから好きだよ、ОЖ。空襲警報鳴っては止み鳴っては止みの日も市は開いてる、人は疎らだが来てはいる、そこへ飛来音・爆発音、第一の反応は皆共通して①凍り付く②空を見上げる、そこからは十人十色だ、友人知人に電話かけまくって安否を尋ねる人、ヒステリーを起こす人、鎮静剤を飲む人。飽くまで買い物を続けようとする人、早く家に帰りたがる人。最強だったのはこれらすべての騒ぎをよそに市場で買ったピロシキもしくはチェブレキもしくはサムサをおいしそうにむしゃむしゃ食べてる初老のオデッサ民氏でその光景はいっそ感動的であった、とのことだ。

フライパンミュージアム

こんな記事タイトル見てさては珍ニュース!と思わず反応してしまった。

露のフライパンミュージアム狙い撃ちにつきゼレンスキー「発想が並のテロリストを超えている」と読める。

だが何のことはない、浅学な私が知らなかっただけで、グリゴーリイ・スカヴァラダー(スカヴァラダーは「フライパン」の意味)という18世紀の文人がいて、ハリコフにあったその人のミュージアムが露軍のミサイルで破壊されたのだそうだ。露軍の攻撃ですでにウクライナの文化遺産200件が破壊されているらしく、これ自体は笑いごとにも何にもならない。(УП

5/6(2発/厳戒)

6日、オデッサにミサイルが二発撃ち込まれた。詳細は全然不明だが何しろ「犠牲者はいない」そう(ОЖ)。なにしろ9日の対独戦勝記念日にかけて敵が大規模攻勢をかけてくるリスクが高く(ОЖ)9日当日はオデッサ市・州全域で終日外出禁止だそうだ(ОЖ

不快な話は、義父母の住まう団地(妻の実家)のガチ至近の学校および病院にウクライナ軍の司令部が置かれ今後ラシア軍の攻撃の標的になるとのフェイク情報が拡散されたとかで、ウクライナ側はこれを明確に否定している。こういうことをする狙いは住民の間にパニックを引き起こすことなのだそうだ。パニックっていうか、多分、やはりウクライナ軍は市民を肉の盾にしている(ゆえにこそ高精度ミサイルで軍事標的だけを攻撃してもどうしても民間人に犠牲が出てしまう)という露側の旧来のレトリックを想起させてウ軍への信頼を損ねる狙いがあるのだと思う。ОЖ

5/5(無事)

5日、オデッサは静穏だった。市中でガソリン不足が続いてるが、これは先立って敵が石油加工場・石油貯蔵施設を攻撃したからで、でも新物流ルートの開発にはもう着手がなされていて、可及的速やかになんとかするとのこと。ОЖ

5/4(静かな日)

4日はオデッサに対して攻撃が行われなかった。ただし油断は禁物、とりあえず9日まではミサイル攻撃の脅威が非常に高く、苛烈な攻撃に備えるべきだという。ОЖ

市民の憩いの場、都市庭園(горсад / city garden)に緑あふれ、マロニエの燈心燃える。でも人影疎ら。写真

軍部よりオデッサの皆さんに改めて。「2022年、海水浴のシーズンというものは、ありません。ビーチは地雷原です。浜に寝そべるのは戦争に勝ってから」ОЖ

オデッサで、またウクライナ全体で、ガソリンが不足していて、ガソリンスタンドに長蛇の列ができている由。うちの義父も仕方なく電車で仕事に通い始めた。ОЖ

(注:そうは言っても無事であるからには仕事せにゃならん金を稼がにゃならんということで、人たちは通勤する。オデッサは公共交通機関が非常に未発達で多くが自家用車で通勤する。義父の会社は市中心部にあって村から一応電車で行けるのだが諸々の事情で車の4割増し不便である)

5/3(やたらめったら撃ってきた)

世界第二の軍隊の軍事関連施設のみを標的にし民間人に一切の犠牲を出さない不思議な高精度ミサイルが3日夕、カスピ海上の戦略爆撃機から20発ほど発射され、ウクライナ全土で空襲警報が鳴った。何発かは撃ち落とされ何発かは被害をもたらした、オデッサ州も下図のあたり被弾した。ОЖОЖУП

人的被害はなし。これだけ撃たれてちらほら負傷者の報告が上がる程度というのは、これは本当に世界第二の軍隊の(中略)ミサイルが高精度なのか、それとも単に、国土面積が日本の1.6倍でかつ人口が日本の3分の1(しかもそのうち1割強が国外に流出)かつ集住癖が強く人口の密疎濃淡の激しいウクライナでは「やたらに撃ってもあんまり当たらない」というだけの話か。これが日本だったら、日本全土に20発ミサイル撃ち込んで負傷者が数人出る程度というのは、よほど選んで山林田畑ばかり攻撃しないと無理という感じがするが。

もちろん当たるときは当たる。だが不思議なことに、当たったときこそこの世界第二の(略)の保有国は自国民向けにウソを言わなければならないようだ。同国国防省によれば、オデッサに対する2日の攻撃でも先月23日の攻撃でも、破壊されたのは飽くまで軍事関連インフラであって、アパートやマンションに被害は出ていないし、14歳少年が死亡したとか妊婦や3か月の赤ちゃんを含む7人が死亡したとかいうウクライナ側の発表は「フェイク」なのだそうだ。ОЖ

3日の「でたらめ矢」に関してゼレンスキー、ウクライナを思うように攻略できないことに苛立ちまた無力感を感じて、とりあえず何でもいい壊せそうなものを壊すという挙に出たもの、と一蹴。動画

ウクライナにおけるロシアのTV放送

ウクライナ国内で今も衛星放送でロシアの国営プロパガンダTVを視聴することが可能なのだが(※確実な情報)、前から不思議に思っていた。まずこれを見れなくするべきなのに、と。どうも、よくわからないが、衛星放送を見られなくするのは結構大変なことらしくて、段階的にしか進んでいかない、でもパートナー諸国と協力して、それに向けて作業は進んでいるとのことだ。ОЖ

5月は<草の月>

言い忘れてたがウクライナ語で5月はтравень、<草の月>です。去年の今日のツイート(ダーチャの裏の草っ原で撮った)。

灰色の冬の長い北国では春は色彩として現れる。ロシア語で「色」цветと「花」цветокが同根である意味も暮らしてみるとしみじみ実感される。ウクライナ語では4月がквітень<花の月>、5月が<草の月>。草の緑の目覚しさもまた格別のものがある。

5/2(ミサイル攻撃で住宅が被弾、死傷者あり)

2日夕方、オデッサにミサイルが撃ち込まれ2階建ての集合住宅が被弾、一人が死亡、一人が負傷とのこと(ОЖ123)。前者は14歳の少年、後者は17歳の少女で、少女は5日に誕生日を迎えその後嫁入りの予定であっただそうだ。ゼレンスキー「これは一体なんなんだ?何故だ?この子供たち、そして集合住宅が、ロシアにとって何の脅威だったというのか?」(動画

また、これより早い時間、例のドニエストル・リマンにかかる橋に対して3度目のミサイル攻撃が行われた。2度目で橋は破壊されたとの報であったが。たとえばそれがウクライナ側の偽情報で、本当は橋は一応通行可能な状態をとどめていたのだがいざというとき軍の装備が通行できるように対外的また市民に対しても壊れました(разрушен)と言っておいた、それをロシア側は例のスパイ無人機か何かで知って、改めて完全破壊を目指してきた、とかそういうことか。いずれにしろ、今度もまた、ウクライナ側は防御ができなかったようだ。空襲警報さえ鳴らなかった。(ゆえに、おそらくは)クリミア発の超音速ミサイルであろう、とのこと。なお上述の集合住宅がやられたときにも空襲警報は事後的にしか出なかったそうで、それも超音速ミサイルの可能性があるとのこと。ОЖ

沿ドニエストル周りは、とりあえず現時点でモルドヴァ国防省はロシアがモルドヴァに侵攻してくるとは考えていないそうだ。NATO高官も、沿ドニエストルで今後も策動は見られるであろうがそれはウクライナを困らせるためのものであってモルドヴァにとっての軍事的脅威は今のところないとの見方を示したという。УП

(昨日市中ではとバスというものを見たのだが車体にでかでかとHATO BUSと書いてあって一瞬エッ!?と思った)

5月2日の意味

オデッサの悲劇から8年、あの日あったこととは何か、と題する(全然題さない)記事がОЖに。14年キエフにおける政変いわゆるユーロマイダンで親露政権が打倒され親欧政権が樹立された、これを歓迎する一派と肯んじない一派がオデッサ中心部クリコヴォ原で衝突、後者が立て籠もった労働組合会館が炎に包まれ、48人が死亡した。マイダン支持者は火災という、反マイダン派は焼殺という。映像を見ると火炎瓶は上からも下からも飛んでいた。今から真実を知ることは困難だ。市民は今も二派に別れる。ここから(最後のとこ)訳出す。

Для майдановцев, для ярых украинских патриотов это стало днём, в который Одесса сказала жесткое «нет» проекту Одесской народной республики и «русскому миру». Для антимайдановцев 2 мая — день, когда Одесса «умерла и никогда уже не будет прежней». И главный аргумент для активной поддержки образований ЛНР и ДНР.
マイダン派にとって、また熱烈なウクライナ愛国者にとって、この日はオデッサが「オデッサ人民共和国」あるいは「ロシア世界」というプロジェクトに対し厳格に「否」を言い渡した日だ。一方の反マイダン派にとっては、5月2日はオデッサが「死に、もう二度ともとには戻らなくなった」日であり、かつ、ルガンスクおよびドネツク人民共和国の設立を積極的に支持する際の主たる根拠となっている。

Но есть и другое разделение, не политическое, более глубокое и важное. Одни одесситы (с обеих сторон того противостояния) сегодня по-прежнему повторяют: мы не забудем, мы не простим, мы отомстим!
Другие — в ужасе оглядываются на события того дня и задаются вопросом: как это могло произойти в Одессе, которая гордилась в те месяцы именно своим миролюбием? И как нам сегодня сделать так, чтобы подобное больше никогда не повторилось? И будущее — за ними.
しかし、政治的な立場によらない二分法もあって、こちらの方がより深く、重要である。すなわち、一方のオデッサ市民(対立でどちらの陣営に属していたかは問わず)は今日も繰り言する――「忘れない、許さない、目には目を!」と。他方は、あの日を思い返しておののきつつも、次のように自己に問う――「あの(国家が大きく揺り動いた激動の)数か月の中でも泰平を保ち、そのことを誇りにしていたオデッサで、どうしてあのようなことが起こり得たのか? このようなことがもう決して繰り返されないように、今私たちは何をすればよいか?」と。未来は後者にこそある。

オデッサ鴉雀無声

終日外出禁止令が敷かれた2日のオデッサ市中心部の様子。動画

5/1(わりと大丈夫だった)

1日、目だった攻撃はなし。隠然たる策動の話は多い。

戦果として、敵の無人偵察機を一つ撃墜した。これだって馬鹿にならない戦果だ。無人機はミサイル攻撃の誘導に使われるらしくて上空への無人機出現はしばしば続くミサイル攻撃の先ぶれとなるそうで、これを撃ち落としたことによってオデッサのどこかが破壊と死傷を免れたかもしれないのだ。ОЖ

復活祭のあとの日曜日はお墓参りに行く伝統、一か所に大人数が集まると敵のミサイルが飛んでくるかもしれないから墓参は控えるように、とのお触れが出ていたが、そうは言っても人たちは墓参した。そうは言っても人たちは墓参するだろうということで、お墓ごとに警察が配されていたが、幸いにして何ごともなしと。ОЖ

くだんの(昨日の項参照)5月2日付け「沿ドニエストル」紙の紙面はこんな感じらしい。グロ失礼。ОЖ

「沿ドニエストル」号外:モルドヴァ沿ドニエストル共和国住民よりロシア連邦大統領裏地見る裏地見ろビッチ風珍への公式書簡、とある。この号には他にも「ゴールデンウィークに流血を伴うテロ発生、子供・老人・女性を含め死者数十人」なる記事もあり、何ごとかやらかしてウクライナと西側にその責めを負わせて沿ドニエストル参戦・ロシアの沿ドニエストル併合への道をつける計略であろうが、事前に企みを摘発できたことで信頼性は損なわれたであろうと。(注:ウクライナ軍情報総局の発表をそのまま伝えているだけ、同紙が有力紙かどうかなど知らない)ОЖ

【追記】
ラヴロフ(笑)が「ロシアは5月9日に向けて戦果を急ぐようなことはしない」と述べた、これは9日までに戦果を出すことが非現実的になってきたため予防線というかハードルを下げにかかったものか、だとすれば嬉しい。TASS

ОЖのお家芸、今日のアネクドート。好きな人もいるかも知れないから一応紹介す。題は「スターウォーズ」

— Папа, а почему в «Звездных войнах» нет россиян?
— Потому что это будущее, сынок, — отвечает тот.
パパ、なんでスターウォーズには(他のクリーチャーどもと並んで)ロシア人が出てこないの?
子よ、それはな、スターウォーズは未来の話だからだ

ロシア人に未来はない、未来にロシア人はいない、という毒すぎる皮肉。ОЖ

4/30(オデッサ国際空港の滑走路がミサイルで破壊される)

クリミア発のミサイルでオデッサ国際空港の滑走路が損傷し今後の使用が不可能になった。軍用飛行場でない、普通の民間の空港である。私たちもようけ利用した。ОЖ

ウ国防省によると露は黒海に「カリブル」ミサイル20発を集中させていて、ミサイル攻撃の脅威が非常に高まっているのだそうだ。ОЖ

【追記】
5月2日に向け敵工作員による扇動・揺さぶりが激化してるらしく、その一つとして、ウクライナ軍の攻撃から私たちを守ってくださいという沿ドニエストル住民からプー珍への公式嘆願書なるものが掲載された5月2日付「沿ドニエストル」紙というものが押収されたそう。ОЖ

ちなみに同記事(軍部の定例の戦況発表)にこんな一行あり

「世界はさらにファシスト42人分だけ浄化された」(敵陣の損失大なるを呼号する箇所、ロシア軍人42名が新たに死亡したことを言う)

4/29(大丈夫/外出禁止)

28日はオデッサは平穏のうちに過ぎた。敵の失敗、自軍の成功、平穏を、この死の一週間のうちに一日稼げることがそれだけで途方もない戦果に聞こえる。とっとと過ぎてしまってほしい、5月9日なんか。気が付いたら世界は5月10日になっていてほしい。

5月2日は終日外出禁止だそうだ。オデッサ市だけ。オデッサ州はいつも通り22時~翌朝5時が外出禁止で、オデッサ市域に関してだけは1日22時から3日早朝5時まで外出禁止になる。ОЖ

パートナー諸国よりS300という地対空ミサイルシステムを取得して南方の対空防衛力が格段に増したそうだ。すでに稼働しているという。感謝しかない。ОЖ

4/28(暗鬱のGWが始まる)

ゴールデンウィークが恐ろしい。5月2日と5月9日という日付に向けて敵は成果を作ろうと急ぐのではないかという観測があって、まず後者は有名な対独戦勝記念日という日でロシアが年間通じて最も盛り上がる日である。20世紀の2度目の世界大戦でファシズムを打倒した、今また21世紀のナチス殲滅作戦でも赫々たる戦果を収めつつあります、我ら最強、我ら正義、プットラー総統万歳。

そして5月2日は14年マイダン革命のウクライナ南部におけるエポックとなったオデッサ労働組合会館焼き討ち事件の日である。事件については「手記」2月22日の項参照。「バンデラ主義者どもへの懲罰」を8年越しに下したらオデッサの親露市民は喜ぶだろう、という妄想のもとに、本当に攻撃を激化するかもしれない。少なくともプーはこの日付を認識しており、侵攻直前の演説でも言及している。

「5月2日にかけてオデッサで挑発・扇動・テロが行われる危険あり」ОЖ。だがこの記事にある「14年の同日オデッサ労働組合会館の火災で<ロシア世界>支持者48人が死亡した」(в одесском Доме профсоюзов во время пожара погибли 48 сторонников «русского мира»)との記述には戦時の言論補正を感じる。私はこの事件は火災でなく焼き討ちだと思ってるし、少なくとも<ロシア世界>支持者であるからといって市民が生きたまま焼かれていいとは思わない。14年のウクライナに民族主義過激派の蛮行が全くなかったと信じるのもまたナイーヴなことだ。むろんそのことによって今次のロシアの侵略・破壊・殺戮は寸毫も正当化されない。

ミサイル攻撃と防衛

28日、オデッサ州に巡行ミサイル3発が発射されたが、いずれもウクライナ側が撃墜したということだ。何であれ敵の目論見が実現しなかったということが喜ばしい。ОЖ

イルカが死んでいる

無辜のイルカが戦争の犠牲になっている。黒海海上の敵船のソナーの影響でイルカが超音波による方位測定能を狂わされパニックになり岸に大挙打ち上げて死んでいるのだそうだ。オデッサの岸辺には時折イルカが現れる。もちろん生きて現れていた。今は死体が打ち上がるのだそうだ。ОЖ

オデッサ旧市街を世界遺産に(再)

オデッサ市長がラザール・エルンドゥ・アソモ世界遺産センター長と会談。オデッサが世界遺産になる(さきたま古墳群より早く)、そんなことが本当にあるのかなぁ。いわゆる危機遺産のカテゴリーなのだろうか。「戦争でいろいろ大変な中でも文化遺産の保全に努めておられることに多大な敬意を覚える。我々も必ずや支援する」とアソモ氏。本当に世界遺産になったりすれば、もちろんいいことしかない。①ほんの1ミリでも破壊者侵略者(の少なくとも銃後)に対する抑止になるであろう②オデッサ市当局の文化財への態度も少しは改まるであろう③戦後の復興とともに多くの観光客がオデッサを訪れてくれるであろう。T

4/27(橋/墓/幽霊/ロシア人はなぜ「特殊作戦」を支持するのか)

橋、結局だめになる

例のドニエストル・リマンにかかる橋に対して二度目の攻撃があり、果たして橋は破壊されてしまった。何であれ敵の目論見が成功してしまったということが怖い。修正してきたということだ。「世界第二の軍隊(冗談はよしこちゃん)」はそこまで無能でもなかったわけだ。逆に、一度狙われた場所がすぐ翌日また攻撃されたのに、ウクライナ軍は防御できなかった。ОЖ

墓参を控えよ

パスハのあとの一週間とりわけ週末は近親者のお墓参りをする伝統であるが「墓参は控えるように」と警察からお触れが出ている。「敵軍はこれまで民生インフラ墓地含む、に対してたびたび攻撃を行ってきた」、一か所に大勢が集まればそれだけで標的となる可能性がある、とのこと。ピークをずらしての「時差墓参」が勧められている。ОЖ

オデッサ沖に幽霊船あらわる

27日、オデッサの岸辺からほど近くに謎の船団があらわれて、すわ敵襲!とビビった人もいたというが、これは実は幽霊船であった。「なーんだ幽霊船か」ホッ。

その正体は3月初頭(戦争初期)に魯軍に攻撃されて無人となったモルドヴァ船籍のタンカーだという。詳しく経緯をいうと、そのミレニアム・スピリット号なる船、魯軍の砲撃を受けて炎上したところオデッサの救助隊が出動して乗員を避難させ無人化、だが戦闘状態の海で危険なので船を港へ曳行することは叶わず、付属の数隻の荷船とともに永遠に沖を彷徨う存在となった。ОЖ

ロシア人はなぜ「特殊作戦」を支持するのか

メドゥーザ記者の渾身のルポ。熟読した。まだ消化できてるとは言えないが、だいぶ腑に落ちた。Meduza

何しろメドゥーザのシューラ・ブルチン記者がモスクワ・カルーガ・コストロマで通行人を無作為に掴まえて戦争を支持するか、ウクライナで何が起きていると理解しているか、それをどう感じているか、等を聞き込み、特にそのうち戦争(特殊作戦)を「支持する」と答えた人たちのその回答を分析し深層心理に分け入った。

(ついでにいうとこの方法は日本では絶対に無理だろう。ロシアの市井の人はこのような時でなくても政治社会に一家言もち話好きで雄弁であることが多い、翻って日本人は。「テレビの言葉で語る」という点はむしろ日本人の方がひどいくらいだが)

Есть мнение, что поддержка войны — результат пропаганды. Это, конечно, так. Но почему люди ей верят? Ее формулы работают потому, что люди могут пользоваться ими для своих нужд. Люди — жертвы пропаганды, но вместе с тем — ее заказчики.
戦争支持はプロパガンダの結果だという意見がある。それは確かにそうだ。でもなぜ人たちはプロパガンダを信じるのか?プロパガンダが用いる定式が有効であるのは、人たちがそれを自分自身の必要のために利用できるからなのだ。人たちはプロパガンダの犠牲者であると同時に、その注文者でもある。

ロシア人はメディアの嘘を信じ込まされているだけでなく、それを積極的に信じようとする内的動因を抱えている、と。それが強力なあまり、今回調査した50人ほどのサンプルの中にはウクライナに親類・友人がいる人も多かったが、彼らの直接のヴォイスと国営メディアのプロパガンダが矛盾した場合でさえも、むしろ後者を信ずることに人は就きがちであるという。(私(何丘)個人としては、開戦前、まさに多くのロシア人がウクライナ側に近親知己を持っていること、そのことによって、プロパガンダは容易に馬脚を露す、もってプーチンの構えた言論の檻は瓦解する(だから侵攻は不可能である)、というお花畑な幻想を持っていた。だけに、失望は大きかった)

Украинцы все время спрашивают: неужели россияне не знают, что происходит? Да, в большинстве своем не знают. Хотя понимают. Минут через пятнадцать все сторонники «спецоперации» мимоходом признавали: ну да, наверное, города бомбят, люди гибнут и все в Украине нас ненавидят. На каком-то уровне это понимают все — но не знают. И отказываются узнавать — даже если у них есть прямые свидетельства близких людей.
ウクライナ人のお決まりの質問:本当にロシア人は知らないのか、何が起こっているのかを? 然り、大多数は知らない。だが、理解はしている。「特殊作戦」の支持者といえども、会話が15分も続けば、決まって口を滑らせるのだ:まぁたしかに、多分、街を爆撃はしてるんだろう、人たちが死んでるんだろう、ウクライナ中がロシアを憎んでいるんだろう(注:攻撃は軍事拠点のみを標的に高精度で行われており民間人に犠牲は出ていない、ウクライナの民衆は我々を歓呼して迎えている、との露プロパガンダに反して)、と。全ての人がなんらかのレベルで理解はしている、――だが知らない。そして知ることを拒んでいる。たとえ近しい人の直接の証言があったとしても。

うすうす感づいてはいる。だが、それを意識にのぼせることを抑圧する。自分がその一員である共同体が弁護不能の悪事を遂行中であるという理解が耐えがたいために。

«Многие понимают, что что-то не то происходит, — говорит учитель истории, — и пытаются найти оправдания, чтобы не быть в таком потерянном состоянии. Повторяют из телевизора: „Если НАТО придет…“ Но видно, что чисто эмоционально им тяжело. Во время Крыма [в 2014 году] было по-другому: он [человек] прямо в глаза тебе смотрит и доказывает [свою правоту]. А тут — вроде то же самое говорит, но глаза так отводит…»
ある歴史教師「多くの人が、何か思わしくない事態が進行している、ということを理解している。そうして、そんな中で呆然自失してしまわないように、正当化の根拠を探している。NATOがやってくるだとかなんとか、テレビの言葉を繰り返す。でも、純粋に心情の面では、明らかに、キツイのだ。クリミアのとき(14年)は違った。自分の正しさを証明するにもちゃんと相手の目を見て語っていた。だが今は、語る内容は同じなのだが、語る際にこうして相手から目を逸らす」

Люди не могли допустить мысли о том, что мы развязали страшную войну, и готовы были выдумать любые объяснения, чтобы защитить образ хороших себя.
人たちは「恐ろしい戦争を始めたのは自分たちなのだ」という考えを受け入れがたく、<善き自己>というイメージを守るために、あらゆる説明を考え出すようになる。

いわく、やらなければやられていた、他に方途とてはなかった、ウクライナとロシアはひとつのものだ、キエフ政権はナチス、そもそもウクライナなぞという国家は存在しない。自分の側に善と正義がないという無意識的理解を抑圧するために考え出されるあらゆる幻想(その考え出すということを代行してくれるテレビ)。

Самый простой способ защиты от тревоги — сужение своей зоны ответственности. Человек просто говорит себе, что тут от него ничего не зависит, и больше не думает о том, что приходится принимать как данность.
不安から自己を守る最も安易な方法は、自分の責任の範囲を狭隘化することである。人は自己に語りかける、自分にはどうしようもないことだ、と。そうしてもう考えるのをやめる。所与のものとして状況を受け入れる。

Кажется, что все население выбрало быть ребенком, который не хочет ничего понимать.
まるで全国民が、何を理解することをも拒む”子供”になることを選択したかのようだ。

記事を読んで、ロシアの民衆はやっぱり被害者なのだ、という心情に傾いた。ロシア国民をあしざまにいう言葉は、今後そう出ないで済みそうに思う。今は、そう思う。

Meduzaは応援されるべきメディアだという思いを新たにした。「西側の手先」ということでロシアでBANされてるロシア語メディアが今後も良質な記事を生産できるようにクレジットカードやPayPalで献金できます→こちらから(英語)

4/26(ドニエストル)

25日、オデッサ州に巡航ミサイルが3発撃ち込まれてうちの一発がドニエストルリマンの橋を損傷させたそう。(リマンлиманというのは河口が砂州に鎖され内水化したもので、多分いわゆる潟湖というやつ、黒海北岸に一杯ある。ドニエストルリマンはドニエストルの河口が湖化したもの)

ウクライナ側の軍部の見立てでは、敵の狙いは橋を破壊してオデッサ州のドニエストル以西の地域(俗にいうベッサラビア)との連絡を断つことで、これは沿ドニエストルでの策動と無関係ではない。知らんが、なるほど広大なドニエストルリマンは南端の橋を渡れなければ北側を大きく周っていくしかなく、陸路の連絡は相当に難しくなる。沿ドニエストルからの攻撃をオデッサが迎え撃つという場合に、ベッサラビア側に取り残された兵員兵器の動員が難しくなる、とかそういう話か。だが幸いに、橋は崩落せずに済んだ。鉄道と車道が通っているのだが、車道二車線のうち一車線は通行可能で、もう一車線と鉄道を復旧作業中とのことだ。(ちなみにいうと景勝地である。片側にリマン片側に黒海を望む細く長い陸地がずーっとビーチになっている。ザトーカЗатокаと呼ばれる黒海北岸を代表するリゾート)ОЖ

沿ドニエストル策動

沿ドニエストルで、ロシアのプロパガンダラジオのウクライナ向け放送に使われていた電波塔が破壊されるという事象。これを受け①沿ドニエストル当局はテロの脅威が非常に高まっているとする赤色警報を発令②モルドヴァは「沿ドニエストル地域内部の勢力争い」によるものとこれを位置づけ、ウクライナによる挑発行為との線を否定③ウクライナ側は「沿ドニエストルを対ウクライナ参戦させるべくロシアの特務機関が仕組んだ挑発行為」と断定④OSCEはドニエストル両岸(※ドニエストル川はモルドヴァと沿ドニの「国」境になってます)に自制を呼びかけ⑤ロシアは「状況を注視している」ОЖ

4/25(あやしい話が多い)

あやしき情報の多かりし日。

超音速ミサイル

25日、クリミアからオデッサへ超音速ミサイル2発が発射されたが、不思議に一発は海に落ち、もう一発はウクライナ軍が撃墜したそうだ。ほんらい超音速ミサイルはウクライナ側の対空防衛網の手に余る代物で、撃ち落とせたのは僥倖であると。ОЖ

沿ドニエストル蠢動

沿ドニエストルで椿事。ティラスポリ(同「国」首都)の国家安全保障省に榴弾砲が撃ち込まれ建物が軽微な損傷とか。ウクライナ側の軍部の見立てではこれはウクライナ侵攻に向けて士気の全く上がらない沿ドニで「ウクライナの特務機関が攻撃を仕掛けてきた!」と騒いで敵意と戦意を煽り立てるための自作自演の劇である。だが使われた榴弾砲がよく見るとウクライナの装備にはなくロシア軍や沿ドニ軍だけ使ってるものだったりあまりにお粗末で、誰が何のためにやったことなのかよく分からないと。ОЖ

戦果と嘘

ウクライナの某テレビで某著名ジャーナリストが「ロシアは5月9日の対独戦勝記念日までに南部ウクライナを攻略しロシア~沿ドニエストルを結ぶ陸路の回廊を開いて国民向けに戦果を誇りたい考え」との見方を示した。ОЖ

この人は公開情報にもとづく戦況分析(いわゆるOSINT)に定評のある人で、気になったのは、彼のところではロシア国内のインターネットユーザーの検索クエリの分析が恒常的に行われてるそうなのだが、ここ数日で「巡洋艦モスクワに本当は何があった?」とか「ショイグはどこ行った?」とか「ウクライナはいつになったらロシアに攻め込んでくるんだ?」とか、ロシアのプロパガンダに対して疑念が生じていることを示す検索語句が増えていて、これは1週間前にはなかった新たな傾向らしい。ひび割れ…か?

間諜?

24日、パスハ(復活祭)を祝う人たちがオデッサ市内の聖堂前に集まっている様子を男がじっとスマホで撮影していて、不信に思った警官が取り押さえたところ、男が動画をリアルタイムでロシア国内に送信していたことが分かった。さらに、男のスマホの連絡帳にはロシアの番号が多く登録され、これら番号には頻繁に電話がかけられており、しかも男は身分証を保持していなかった。こうした工作員の情報を得て市民が集積している場所を知りそこに遠方からミサイルを撃ち込むことを敵軍は常にオプションとして検討しており、しかしさすがにパスハの日に正教信徒を殺戮するのは(イメージが悪い)……ということで手控えた、という想像を禁じ得ない。もちろん単にロシアに友人の多いたまたま身分証を携行していなかっただけの市民である可能性もある。だが少なくとも戒厳令下で拘束されて当然のふるまいではある。ОЖ

23日の攻撃に関する訂正

23日カスピ海上からのミサイル攻撃でオデッサ市内の高層マンションが被弾し8人が死亡という話、正確には7人死亡で1人不明だそうだ。不明とはいうが救助活動は終結したらしい。被弾の瞬間建物内にいた可能性があるが遺体が見つからない……ということは「いなかった」ということで、7人死亡ということで確定じゃないかと思う。負傷10名、命に別状なし。発射されたミサイルは「8発」だそうだ。

4/24(何もない日)

24日日曜は攻撃が行われなかった。幸いにも、と言っていいのか、23日の攻撃による死者は8人より上らず、負傷者10人は命に別状なしという。建物自体も倒壊の危険はなさそうで修理すればまた人が住める見込みだそうだ。ОЖОЖ

このブログもそれなりの数の人が見に来てくれているのだからこんなことは言うべきではないのかもしれないが、パスハをことほぐ定型のあいさつ、キリスト甦ったね、ほんなこつ甦ったね、を言い交わして笑顔であったこの日の魯の国の「罪のない普通の人々」を思うと憎くて仕方がないのだ。あなたたちだけがこれを止められるのに。それが今日行われれば今日、このすべてが終わるのに。

プのコア支持層であるというテレビを見る層=プロパガンダの影響をもろに受けている人たち、大好きなガールキンもウルガンも皆さんを去ったのに、グレベンシコフもDDTもこんなふうに歌っているのに、どうして、どうして信じたままでいられる?

4/23(オデッサにミサイル攻撃)

23日、オデッサにミサイルが撃ち込まれ、高層マンション他が被弾、民間人少なくとも8人が死亡した。

カスピ海(上図右手の水域)上の敵軍航空機から巡行ミサイル少なくとも6発が発射され、その誘導、及びウクライナ軍の防空兵器を攪乱するために数機の無人機も飛んだ。ウクライナ軍はミサイル2発と無人機2機を撃墜したが、撃ち落とし損ねたミサイル2発が軍事施設に、2発がマンション/アパートに命中した(ОЖОЖ)。上の地図では不幸にもいわれなき強襲にあった16階建て高層マンションの位置に赤ピンを打ってある。オデッサのほぼ中心部といっていい、多くの人が住むタイーロワと呼ばれるエリア。オデッサ市公式テレグラムの最新の発表(日本時間24日未明)では死者8人となっている。

にしても、カスピ海上の航空機から?そんな遠いとこからやたらめったらに撃ってきてマンションを破壊する、そんな法があるか?こんなやり方をとってくるなら、もう黒海海上の巡洋艦モスクワが沈んだとか、それでビビって敵艦隊はウクライナの対艦ミサイルの射程外まで沖に退きましたとか、そんなニュースで小躍りしている場合ではない。中央軍管区副司令官という妙な位階の(それを言うのに適切な高さなのか)奴の口から作戦の第二フェーズでは南部ウクライナの完全制圧を目指すと出たその翌日にこれだ。暗鬱なメッセージとしか読めない。問答無用で破壊し蹂躙してウクライナから海を奪い支配地域を沿ドニと繋げる、と。何人死のうと知ったことか、と。

パスハの前日に、正教の国が正教の国に、どうしてこんなことができるか。もうひとつ言わせろ。ロシア侵略以降、ロシア正教徒であることは野蛮である。

4/22(もうすぐパスハですね)

もうすぐパスハですね、ということで盛り上がっている。パスハというのは西洋でいうイースターで(南洋のイースター島もロシア語ではパスハ島といいます)要するにキリストの復活を祝う。キリストは金曜に処刑されて一度死んで、日曜に復活したことになっている。その復活を祝って、ある種のぱさぱさしたパンを食べたりゆで卵に彩色を施したりする。

ゼレンスキー「死が勝利したかに見えた金曜のあとに日曜が来る。生は必ず死を克する。ロシアはウクライナに死をもたらした。ウクライナの生への権利を奪おうとした。だがいかに過酷な戦争によっても、死は絶対に生に勝利しない。全ての人、全てのキリスト教徒が、そのことを知っている」(動画

なおロシア語で日曜日воскресеньеは「復活воскресенеの日」であるが、ウクライナ語ではそうは言わない(日曜はнеділя、安息日)

そんでオデッサ市内某所のツリーが復活祭の卵で飾り立てられた。ОЖ

「特殊作戦」第2フェーズの目標は…

敵軍高官(中央軍管区副司令官ミンネカエフ)によると「特殊作戦」はおとついくらいに第二フェーズに入っていて、その狙いはドンバス及びウクライナ南部を完全制圧することなのだそうだ。ウクライナ南部を支配できれば沿ドニエストルへの出口が作れる、その「沿ドニエストルではロシア語住民の迫害の事実が認められる」のだそうだ。(TASS)(こういうの書いてると本当に怒りで体が震える)

大雑把な地図だが右の領域と左の領域(沿ドニエストル)はいかにもつなげたくなるであろう。ヘルソンまでは事実上もうとられていて、あとはニコラエフとオデッサ、ニコラエフにはつとに攻勢がかけられていて、オデッサだけ金甌無欠といっていい状態だが。

改めて沿ドニエストル地図。オデッサ州と隣接するモルドヴァの一部領域、事実上のロシアの飛び地となっている。

何度も言ってるがロシアはロシア正教を信じロシア語を話す地球上のすべての人の宗主国をもって自任していて、その人々が「迫害されている」ということを口実に外国に乗り込んでいってその領土を強制的に併合したりする(クリミア)。いわゆる「ロシア世界」русский мирというドクトリン、帝国主義的拡張を正当化するためのプーチンロシアの世紀の発明。

これについてオデッサ州軍事行政報道官ブラチュクの兄貴「改めて言うまでもなく沿ドニエストルは一時的に占領されたモルドヴァの領土である。ロシアの占領者が沿ドニエストルの住民をロシア語話者であるからといって迫害している、だから『脱ナチ化』しないといけない、というわけか。ロシア人がロシア語を話す沿ドニエストル市民を迫害している!こういう場合は誰に相談したらいいんでしょうねえ!基地外としか言いようがない。常にこうやってウソをついてるのだ。ロシアを決して信じてはいけないОЖ

России верить нельзяか。「アウシュヴィッツ以後詩を書くことは野蛮」じゃないが、ロシア概論を語り起こすとき定石通りチュッチェフの「ロシアは理知では理解できない、ロシアのことはただ信じるのみ(В Россию можно только верить)」の詩を紹介するのは完全に野蛮で魯鈍ということになったな。

「ウクライナ人はロシア語で話すのをやめるべきか」

ОЖに「ウクライナ人はロシア語で話すのをやめるべきか」と題する記事。オデッサ国立工科大学のなんとかいうセンセイへのインタビュー。①日常使用言語のウクライナ語への集団的移行が認められる②「ウクライナにおけるロシア語迫害」をロシアは侵攻の根拠としているがそれは口実に過ぎず、ウクライナにおける言語状況がどうであれウクライナが独立自尊の主権国家であろうとする限りロシアは侵攻したであろう③(ウクライナの国語は何語であるべきかという点について)民族構成でみるとウクライナ人が70%を占めるのだからウクライナ語が国語であるのが自然④人は自らの言語を誰に対しても恥じることはない。

要するにただ無難な線をいった。こういう記事しか今は出ないであろう。①については気になるところ、街の会話に耳を澄ませてみたい。②は同意。③パーセンテージの話をするなら、たとえば9割がロシア語常話者であるオデッサにおいてロシア語が地域使用言語の地位さえ否定されたことにどうして言及しない(どうしてか。わかりきった話だ)。④ここが最も難しいところだ。それはまったくその通りではあるのだが、変わってしまったのは人たちの口でなく耳であって、この変化は不可逆的だ。心と口、耳と頭脳をつなぐ回路を切断したり繋げ換えたりする自己手術を数千万の人間に強いることをプの魯の国はあえて行った。

4/21(昨日に同じ)

オデッサをめぐる全般的な状況は昨日に同じ。一言で言って静穏。モスクワ沈没で敵艦隊がウクライナの対艦ミサイルやばいかもということで沖に引っ込んでくれたので敵上陸は当分延期された、ただしクリミアからのミサイル攻撃の脅威は高レベルで残存、沿ドニエストルから破壊工作が仕掛けられる恐れもあるが防備は十分である、自分とこが比較的大丈夫なので今は隣のニコエラフを手伝ってる、と。ОЖОЖ

ねこグラフィティ新作

オデッサ市内に続々登場している「たたかうねこちゃん」グラフィティの新作はボルシチいただきますねこちゃん。「ボルシチは(ロシア料理でなく)ウクライナ料理!」的なこと書いてあります。ОЖ

ちょっと絵解きすると、オデッサらへんの人らはベーコンの脂部分をサロсалоと称して薄切りにして食べたりする。あと、細ネギをお尻の玉の部分から生でかじったりする。黒いのは黒パン。個人的にはボルシチにどろっとしたクリーム(スメタナ)が乗っててほしかった。

もひとつ解説すると、4/10付けで記したが、これを描いてるイーゴリ・マトロスキン氏のその名が完璧だというのは、まずマトロス=水兵というのは港町オデッサにおいて古典的に「男が最も就くべき職業」であって、オデッサの人にして苗字がマトロスキンというのは相応しすぎるぜ(東京の空)という感じがする。あと、マトロスキンには「猫」との強い連想がある。「プロスタクヴァシノ村」いう超有名なソ連アニメの主人公?が猫のマトロスキンだから。単にペンネームなのかもしれないがマトロスキンという姓じたいはあり得る(ある)ものであり、名前が彼をこの職業/事業に導いた可能性もある。

良いニュースと悪いニュースがある

ОЖのお家芸、「今日のアネクドート」。巡洋艦モスクワの艦長が乗組員一同を前に語った言葉とは?

Капитан ракетного крейсера строит экипаж и говорит: «У меня для вас две новости. Сначала хорошая: нам посвятят почтовую марку»…

ミサイル巡洋艦の艦長が乗員に語る。「ニュースが2つある。まずは良いニュースから。わが艦の記念切手が発行される
そうだ」……

ОЖ

4/20(ファシストの駆逐艦には”Z”の名がついてるんだよ)

オデッサをめぐる状況は変わらず。特に攻撃は行われず。ただミサイルが飛んでくる可能性は依然として高い、ただし敵上陸や沿ドニエストルからの攻撃は当面ない見込み。ОЖОЖ

売国奴

発表された敵戦犯リストの中にオデッサ出身の将校の名。セルゲイ・コブィラシュ、この者が航空宇宙軍の将軍としてマリウポリの徹底破壊(を含めウクライナ諸都市へのミサイル攻撃)を指揮しているのだそうだ。同郷人の夥しい殺害。出身ても生まれただけとかも知れんが、だとしても、だとしても……。八つ裂きにしても足らんとはこのことだろうよな。ОЖ

予言的アニメ

例の巡洋艦モスクワ沈没が73年のマイナーなソ連アニメで見事「予言」されていたそうだ。ご覧な(1分)

海底探査機「ネプトゥーン」の向かう先に沈没した船。船体には「Z 29」の文字。子供の一人がいう。「ファシストの駆逐艦だ!」「なんでわかるん?」「ファシストの駆逐艦には”Z”の名がついてるんだよ」。

ロシア当局はYouTubeからこの動画を削除することに躍起になってるそうだ。ОЖ

アニメ自体は罪のない、愛らしいものだ。Сокровища затонувших кораблей「沈没船の宝物」。全編こちら(サムネクリックで動画へ)

なんかピオネールっていっつも金属スクラップ集めてるね。

4/18・19(戦時アネクドート)

オデッサ市・州は静穏。攻撃は行われず。てかウクライナ側の対艦ミサイルを恐れて敵船はだいぶ沖に引いてるらしい。とはいえ次なる攻撃目標を探しに無人機は飛来しているらしく(それをウクライナ側が撃ち落としたり撃ち落とせなかったり)油断は禁物、と。敵上陸は当分ない。一時期話題にのぼっていた沿ドニエストルからの進軍はまずない、と。ОЖ

街中の様子を覗いてみたい人はОЖのフォトルポルタージュを。大聖堂前広場、パサージュ、デリバーソフスカヤ、都市庭園。

モスクワ沈没祭続報

ウクライナ国立軍事歴史博物館がUNSECO水中文化遺産保護条約に基づき巡洋艦モスクワの残骸を博物館の「収蔵品」に指定したのだそうだ。ОЖ

例の逝ってよし切手入荷の報を受けオデッサ市中央郵便局に蜿蜒長蛇の列ができたそうだ。ОЖ

ОЖというのは地元週刊紙(週に一冊出る新聞)オデッサライフОдесская Жизньの電子版のことなのだが、私らは住んでたときこの紙の新聞をよく買っていて、そこにほぼ毎号掲載されていた「今週のアネクドート」を最近電子版でもやってくれている。全然おもしろくはないが。まず「モスクワ沈没の真相」ОЖ

Крейсер «Москва» НЕ утонул.
Крейсер «Москва» повышен в звании до Подводной лодки!

巡洋艦モスクワは沈没したのではない。「潜水艦」モスクワへと格上げされたのだ。

ОЖではショイグがプに報告してる様子が一枚絵になってるが、個人的にはコナシェンコフが喋ってるところを想像したい。

あるいはこんなのはどうだろう。「なぜオデッサ市民はロシア語を忌避するようになったか」ОЖ

— Фима, ты знаешь, я стараюсь меньше говорить по-русски …
— А шо такое, ты боишься, шо тебя побьют украинцы?
— Нет, я таки боюся, шо меня придут спасать русские…

A:最近なるべくロシア語で喋らないようにしてるんだ
B:どした、ウクライナ野郎どもにいじめられるのが怖いってか?
A:いや、ロシア野郎どもが俺を「保護」しに来るのが怖いのよ

4/17(ハリネズミと地雷原と祭)

寒の戻り。オデッサ州北部では18日朝の気温は0度とかマイナス2度とかだそうだ。義父母もさみぃさみぃ言っていた。もうやめてやってくれ。どんどん温かくなってほしい。花もどんどん咲け。杏よ花つけ。

デリバーソフスカヤの解放

敵上陸の可能性が低減されたということで、オデッサの目抜き通りから「対戦車ハリネズミ」が撤去された。「デリバーソフスカヤ通りが戦前の姿を取り戻した」の一行に涙ぐむ。ОЖ

「Ж」の字を立体化したような、というのはこの写真が分かりやすいか。

ハリネズミたちはそれを今最も必要としているお隣のニコラエフに移動するのだそうだ。たのんだ、ハリネズミ。

(改めて)ビーチは地雷原

テレグラム(というSNSがあるのだが)で、なんでもオデッサのビーチの地雷が撤去されるとかいう情報が流れたが、それはフェイクである、と公式アナウンス。地雷は撤去されていない、市民のビーチ訪問はガチで危険であるから引き続き厳禁である、と。「SNSで言われているこれこれの情報はフェイクだ」系のアナウンスは定期的に聞かれるが、今回のこれなどは、敵の情報工作というよりも、例のロープウェーの再開(昨4/16付け記述参照)の報が伝言ゲームで歪曲されていって「海行ってもいいらしいぞ!」みたいなことになったのではないかと想像す。誤解を与えかねないシグナル、だから、よしたほうがいいのだ、こういうことは。と私も口中の雌黄の分泌が忙しいこと。ОЖ

「モスクワ沈没」祭

巡洋艦モスクワを海の底に沈めたことがよほど嬉しかったと見えて(そりゃそうだ)、この一事を踏まえた言説・表現が溢れ、さながら「モスクワ沈没祭り」の観。

たとえばオデッサ公式テレグラムのこのポストでも↓(T

ウ:Хай для них залишиться в історії лише один покажчик курсу – ближче до дна, за російським військовим кораблем.
露:Пусть для них останется в истории лишь один указатель курса – ближе ко дну, за российским военным кораблем.
オデッサに進軍などさせない、敵の進路はただひとつ、「例の船」のあとを追うことだけである、と。

「たたかう猫ちゃん」と「逝ったモスクワ」↓(ОЖ

有名なアニソンのこんな替え歌もできました。「巡洋艦モスクワFUCK OFFの顛末」↓

元ネタはこちら。ソ連アニメ「青い海、白い泡」主題歌。もちろん原曲の方が数段優れている。(サムネクリックで曲へ飛べる)

昔何丘Twitterの「ロシア語アニソン百夜百曲」で取り上げたこともあった(第57夜)。そんな昔でもないか。大昔だ。

4/16(あらゆる活動が最前線)

16日、オデッサ市・州にはミサイルが一発も飛んでこなかった。例のモスクワ号沈没で海からの脅威は減じた……か。しかし①クリミアからミサイルが飛んでくる可能性は依然として高い。ただし②先に指摘されていた沿ドニエストルからの進軍の可能性は今や「非常に低い」そう。ОЖ

空襲警報について

とはいえ16日未明は空襲警報が鳴りやまなかった。その発令と解除についてはオデッサ市公式テレグラムでこんなふうに発表されるのだが↓

表示は日本時間。マイナス6で現地時間になる。即ち16日早朝1時32分から48分まで、そのあと4時半から6時9分まで、そのあと6時34分から7時6分まで、耳障りな音響が鳴り響いたわけだ。空襲警報のしくみについては本記事3/18の記述参照。要するにミサイル発射の情報をつかむとそれが飛来する/通過する可能性のある全ての自治体に順次警報を鳴らしていく。飛行の軌道は変化するかもしれないし(プログラミングで曲がったり折れたり自在に軌道をデザインできるものらしい)中途で迎撃されるかもしれない、要するに警報は必ずしも被弾と爆発を伴わない、ていうか通例伴わない。私らは警報が心理的に耐えられないうちに(それが耐えがたいことをひとつの理由に)出国したが、今まだ残っているオデッサの人は、まず慣れっこになって、この朝も基本的にはぐーすか寝ていたのではないかと想像する。

逝ってよし記念切手

オデッサ沖「蛇島」の兵士がラシア船に中指を突っ立ててる「ラシア船逝ってよし」切手が大人気で売り切れ御免だそうだ。モスクワ撃沈前からあったものらしいがこのほど人気爆発した。おそらく第二バージョン(続編)が発行されるであろう。ОЖ

ロープウェーが営業再開

オデッサ名物、街と海をつなぐロープウェーが土日営業再開するらしい。ビーチは今や地雷原だからこれからいい季節で気持ちは分かるけどバカンスになど訪れないでね死ぬよ、と再三警告がなされているなかで、その海へと降りていくロープウェーがねえ。コロナ感染爆発で不要不急の外出が厳に戒められていた20年春に、それでも公園の噴水が続々オープンしたのを思い出す。ОЖ

だが、朝日新聞4月17日朝刊5面、リヴィウのオペラ劇場が稼働を再開したことにつきそのソリスト語らく、「軍は最前線で抵抗している。国家も自治体も機能している。文化人も活動を続ける必要がある。あらゆる活動が抵抗の最前線」。そうだな、生きてあること、笑うこと、海を眺めること春を楽しむこと、そのすべてを否定してかかる海の向こうの敵船に対して、あえてこのちゃちな玩具みたいなロープウェーで接近していくこと、これも立派な戦いであろう。その道義的戦いのために命まで失うことがないようゆめ注意されつつ。

4/15(オデッサが少し安全になった?)

ウクライナのミサイル「ネプトゥーン」が敵艦を轟沈させた、のイメージ↓

このたたかう猫ちゃんシリーズはオデッサのアーティスト、ユリヤ・ポドモギーナ(珍名!)によるもので、インスタでいろいろ見れます。Tシャツも買えるらしい。ОЖ

ちなみにネプトゥーンというのはウクライナ国産のミサイルらしくて、海神ネプチューンの三叉鉾(トライデント)といえばウクライナの国章にもなっている。

「ハリネズミ」の撤去

オデッサへの脅威が著しく下がったということで、市中にばら撒かれていた「対戦車ハリネズミ」が撤去され、より危険度の高いニコラエフ及びヘルソンに移送されるとのこと。ОЖ

↑こういう「Ж」の字を立体化したような障害物が街中いたるところに設置されていた。

それでも飛んでくるミサイル

それでも15日もミサイルは飛んできたし、無人偵察機も飛んできた。前者は空中で爆発したので被害なし、後者は撃墜した、と。だが実際に飛んでるやつの何割を撃ち落とせてるのだろうか。ОЖ

犬の徴兵

軍用犬のほとんどが前線に駆り出されてしまったので市中の爆発物探知などのために民間人の飼い犬を訓練することが奨励されていて、多くの犬と飼い主がワークショップに参加している由。週3回の訓練を1か月続けるのだそうな。ОЖ

4/14(巡洋艦モスクワ撃沈)

巡洋艦「モスクワ」の沈没をロシア側も認めた。明らかな戦果だ。これでオデッサが少しでも安全になるなら私として喜ばない理由はない。ウクライナも嬉しいだろう。敵旗艦その名も「モスクワ」を、かねて逝くべし逝くべしと願っていた場所へと送ったのだ(本記事4/4、3/23の記述参照)。

何しろウクライナのミサイルで大破した同艦がセヴァストーポリの母港に曳行されようとしたところ時化にあい沈んだと。「神風」とはこのこと。ОЖによるとウクライナのミサイル「ネプトゥーン」は元来もっと小型の船に対して用いるもので、敵艦もまさにこのような攻撃に備えてレーダーだの迎撃ミサイルだの満載していたらしく、今回の戦果は望外のものという。

JR東日本、ロシア語による案内板を撤去したり復活させたり

くだらんニュースだと思うが一言しておく。JR東日本が恵比寿駅構内の「(ロシア大使館のある)六本木に行きたい方日比谷線乗り場こちらです」のロシア語による案内表示を張り紙で隠した。利用客から「不快だ」という声が複数寄せられたためだという。でもそのやり方はちょっとどうだろうな、という批判の声がまたそれに対して上がって、それを受けて、やはりJR東日本は案内表示を復活させるのだそうだ(NHK)。JRとしてはカッコ悪いところを見せてしまったが、まぁある種仕方がないというか、こんなもんだろう。要するに自分の考えというものがないのだ。当社としては正直どっちでもいいのでより批判の声の大きい方に屈しておきます、といったところ。

だが「不快だ」とか言ったという人たちっていうのは何なんだろうな。ある種の義憤、正義と高潔の感覚。事の局外にあって、少しの心の努力で憎まないこともできるのに、あえて容すほうでなく憎む方にアクセルを踏む人たち(想像)。この戦争に心を痛め、「何か自分にできること」を探している人たちに、この世界に憎悪と破壊と他者否定でなく、愛と建設と寛容がしめる割合を少しでも多くすること、それもあなたの「できること」だと訴えたい。

4/13(ライオン、銃、消去される街)

オデッサは基本的に平穏。南部三州(オデッサ、ニコラエフ、ヘルソン)の概況「敵は戦況芳しからずと見て情報戦・心理戦を活発化させ、アジテーションやフェイク情報の拡散などを行っている。黒海における敵船の配置は従前と変わらず、依然としてミサイル攻撃の脅威があるが、悪天候が幸いして敵の上陸は差し当たり行われない見込み」(ОЖ

ライオン

ハリコフの動物園からオデッサの動物園へライオン2頭が送られてきた。ハリコフは猛攻を受け動物園の檻さえ破られて、新たに棲み家が見つからなければ猛獣は安楽死もやむなしというところであった。それでオデッサが引き取ったのだそうだ。この種の動物がらみの戦中美談が時折報じられる。明らかに人間の水準が獣畜未満であるときに、本物のケモノを前にしてやっと「人間」になることができる(ОЖ

前に書いたが防衛力強化の一環で警察が市民有志に銃火器の配布を行っており、オデッサにわりと暴力的な人が多いことを知っている何丘は、市民社会に武器が充満することは基本的にいいことではないと思っていた。思っている。何しろ武装市民による「不適切な行動」が散見されるそうで、ケース①オデッサ市中心部で男性が行き会った市民と口論になり、かねて所持していた銃火器を車から取り出して威嚇射撃。ケース②住宅街で酔っぱらって通行人に悪態をついていた男が静かにしてくれろと注意されたことに腹を立てその注意した人めがけて3度発砲。ケース③男が自宅窓からふざけてライフルを放ち女性二人が住む隣家の窓が被弾。幸い人死には出ていないが……住めないな。(ОЖ

抹消

オデッサ市中心部にこういう(↑)世界の街までここから何キロということを記した標識があって、姉妹都市である横浜の名もそこにあるのだが、ここからロシアの諸都市のプレートが撤去されるのだそうだ。具体的にはヴォルゴグラード、モスクワ、ロストフ・ナ・ドヌー、サンクトペテルブルグ、タガンローグ。もはやこれらの都市は姉妹都市でも友好都市でも何でもない、と。その字並びを見るのも不快である、と。「あいた場所にはこの戦争でわが国を支援してくれた友好都市のプレートを置く」と市長。(ОЖ

4/11(静か)

11日はオデッサ市・州に対し砲撃は行われなかった。

4/10(オデッサ解放記念日、ネコ)

終日外出禁止令が敷かれていた4月10日「オデッサ解放記念日」は平穏のうちに過ぎたようだ。ただし「敵による破壊工作、ミサイル攻撃や空襲の危険は依然として続いている」と軍部(ОЖ

オデッサ解放記念日

先の大戦でナチスドイツからオデッサが解放された日を祝う、4月10日「オデッサ解放記念日」。皮肉なことに、敵軍に狙い撃ちされるかもしれないから集会禁止、そう言っても人らが集まるかも知れないからいっそのこと終日完全外出禁止、ということにした今年こそ、かつてなく意義深く印象深く、「解放」の日が祝われたように思う。オデッサ市長らは前日に「名もなき水兵たちに捧げる」記念碑ならびに「4月10日広場」の「勝利の翼」オベリスクに献花を行った(T)。市長は市民向けビデオメッセージで、78年前と同様、今日も兵士たちはオデッサの「ナチスからの解放」のために戦っている、と語った(T

皮肉なことだ。何重にも皮肉なこと。かの国は「特殊作戦」をウクライナの脱ナチ化を目指したものと鼓吹しているが、ウクライナではロシアこそナチスと呼ばれている。「ナチスロシア」という言い方は今のウクライナの報道・公式発表ではごく普通だ。ところで、「先の大戦で多大な犠牲を払いながらナチスドイツを撃退し、世界をファシズムの脅威から解放した英雄国家ソ連」という物語をロシアと共有することを、14年以降のウクライナは快く思っていなかった。脱ロシア・脱ソ連はゲオルギーリボンや「鎌と槌」といったソ連のシンボルの市中からの排除といった方向にも進んだ。そんな中で、しかし、市民感情に配慮してさすがに排除しきれずに、お目こぼしに預かっていたのが、4月10日とか5月9日の、市民自発の記念行事であった。オデッサではいわゆる「不滅の連隊」の小規模なものも、上記「名もなき水兵たちに捧げる」記念碑や「4月10日広場」で毎年行われていた。今年はしかし、4月10日の記念行事が、あたかも公式のお墨付きを得た。「ナチスからの解放」という物語が、新たな意味合いを帯びたのだ。もはやロシアとの連帯でなく、訣別のしるしとして。

なお、これもどの程度知られた事実か分からないから一応言っとくと、ロシアのプロパガンダでは、たとえばマリウポリとかメリトポリとかロシア軍によって占領されたウクライナの都市は、「解放された」都市ということになっている。「解放」освобождение。

たたかうネコ

オデッサの街中に「たたかうネコ」のグラフィティが続々出現しているらしい(ОЖ

「ハローこちらウクライナ」「英雄たちに誉れあれ」等々といった言葉が書かれている。描いてるのはイーゴリ・マトロスキンという人だそうだ(「水兵イーゴリ」。できすぎ)

ゼ演説

日本では報道されるものとそうでないものがあると思うがゼレンスキーの国民向けビデオメッセージ(10分弱)は毎日行われていて、筆者も基本的にいつも聞いてる。あまりに力強いので逆に感化されすぎないように注意してるのだが。

その最新のものにいわく、「人は自らの過ちを認める強さを持てず、現実に適応できなかったとき、モンスターになる。そうして、これを周囲の人たちが見てみぬふりすれば、モンスターは増長し、周囲の人たちこそが自分に適応するべきだと考えるようになる。ウクライナはこのすべてを阻止する」(動画

(長らくお付き合いいただいている方はご存知だが私はこのブログで一貫してロシア語擁護者としてふるまっている、だが正直に自白すると、私はウクライナに暮らしながらウクライナ語を学ぶことあまりに少なかったことを恥じている。ウクライナ語をちゃんと勉強したい)

4/8(外出禁止令)

オデッサ州に対し引き続き、散発的に海からミサイルが撃ち込まれている。詳細は分からないが、インフラを標的としたもので、複数回の攻撃のうちの一回、オデッサ近郊某村(地図赤ピン)に着弾したものでは、人死にも出ているそうだ(ニュース

外出禁止令

ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅への攻撃を受け、オデッサで9日夜から11日朝にかけて外出禁止令が敷かれる。1日半にわたる、これほど長時間の外出禁止令は、オデッサではこれまでなかった。外出禁止時間は私らがまだオデッサにいた先月初頭ころが最長(19時~翌6時)で、その後段階的に緩和されていた。

昨日書いたが、4月10日は先の大戦でオデッサがナチスドイツから解放された日付、いわば小さな「戦勝記念日」で、市内にはその名もずばり4月10日広場というものもあり、そこには天衝くオベリスクが立ち、「久遠の火」が燃えている。ほか、市内にはいくつか、そういう日に献花したり集まって涙したり歌うたったりするような場所があり、今年は「そういう場所に集まらないでくださいね」と当局からお触れが出ていた。というのも、クラマトルスクでの一件に見られるように、敵は目下「なるべく多くの市民を殺害できる場所を特に選んで攻撃し、ウクライナ国民を震え上がらせ、もってウクライナ指導部から譲歩を引き出そうとしている」。だから大勢が集まりそうな場所は狙い撃ちにされるぞ、と。

(にしても、「ファシズムからの解放」とは、まさに今次の「特殊作戦」の錦の御旗であり、「犠牲と戦勝」という物語は、ウクライナの中の親露成分との主要な紐帯である。4月10日に「英雄都市オデッサ」を顕彰するモニュメントの前に集まる市民を皆殺しにする……どこまで深く暗いニヒリズムがあればそんなことが可能になるのだろうか)

ともあれそういう次第で9日21時から11日朝6時まで、オデッサ市・州の市民は一切の外出が禁止される。わんわんのおトイレは近所の散歩で可及的速やかに済ませるように、とのことだ。(ニュースAB

4/7(ミサイルは撃ち込まれるものの)

6日夜、オデッサに再び海からミサイルが撃ち込まれ、インフラに被害と(ニュース)。何しろ被害の様相とかミサイルそのものを写真に撮ったり、あるいは場所特定につながるような情報をSNS等に書き込んだりすることが禁じられているので、分かることは少ない。通例、速報から数時間後に公式のアナウンスがあるのだが、そこで伝えられるのは曖昧模糊とした概要のみ、つまり、大体どこのエリアのどういう種類の施設が狙われたか、人的犠牲のあるなしくらいしか言ってくれない。現地の義父母や義兄らはいわゆるсарафанное радио(伝聞)で色々情報を仕入れるのだが、第一に信憑性に疑問、第二に、私たちとの定例のビデオ通話でも盗聴される前提で話してるのであまり詳しいことは言わない。

軍部によるときたる4月10日の「オデッサ解放記念日」(先の大戦でオデッサがナチスドイツから解放されたことを祝う日)に何ごとかあることを警戒すべきで、例年のように第二次大戦戦没者記念碑前に集まって集会など開くことがないように、とのこと(ニュース

今後(海上から撃ち込まれるだけなら…)

海から散発的に威嚇射撃があるばかり(公式発表を信じるならば幸いにして人死には出ていない。とはいえ燃料庫等に対する攻撃で毎度大きな爆発も伴っており、市民に不安と恐怖を、街に経済的実損を与えるものではある)で、その他一般情勢に鑑みると……滅多なことは言えないが、私としては第一に義父母の身を案じてしまうのは致し方のないところで、この分なら、内陸のダーチャに引っ込んでいるうちの義父母は大丈夫であろうと、その意味では、安堵している。

だが沿ドニエストルから進軍があるとしたら話が違ってくる、「海から遠いこと」をひとつの根拠としていた安心は崩れる。だが考えてみると、このいわば非友好国に囲繞されたロシアの「飛び地」に、新戦力の補充などどうやってやるんだ。もともとこの地域に存在した兵力を集めるほかない。兵器も、人員もだ。それだけなら、さまで脅威にもならんような気がする。

4/6(事もなし)

あの頃は(まだしも)良かったね、などと言う日が永遠に来ないことを祈る。オデッサは無事であった。

オデッサライフのフォトルポルタージュによると大小の商店は軒並み営業しており棚には商品ずらり、アルコール棚にも行列はなし、薬局は一部の品が払底、だが総じて、物のある生活、人のいる街路。

左:春を告げる立金花(リュウキンカ)。中央:たぶん建築基準法的なやつで定められていて、原則すべての家屋にこういう国旗をさす用の旗さしが取り付けられている。祝日のときは上の段にさし、何か悲しむべきことがあったときは下の段にさして弔意を表する(半旗の掲揚)。戦争が始まってからは上の段にさしっぱなしである由、私らも3月4日だかに街に出たときにその様子を見た。右:また街中の至るところにウクライナ国旗がペイントされている由。14年の政変ではたとえば愛国市民のこうしたペイントの上に親露市民が赤いペンキを散らす(「マイダンは血塗られたクーデター」との立場表明)などの落書き合戦がまだ可能であったが、今あえてウクライナ国旗を侮辱しようという人はいないだろう。

4/5(花を植える)

5日、オデッサは平穏だったそうだ。

待たれた春だ。街に花が植えられる。(オデッサはウクライナ南端付近の街ですが緯度でいうと稚内より上で冬は寒く春は遅いです)

「危険、地雷あり」。暖かい晴れの日は何はなくとも海に出てきて憩うオデッサの人たちの素朴さが好きだった。

4/4(無事)

ミサイルは飛んでくるものの幸いにして人死には無し。沿ドニエストルからの侵攻に関しては「可能性は低い」と軍部(ニュース)。

4/3(オデッサへの攻撃が過熱している)

オデッサへの攻撃が過熱している。3日早朝、石油の貯蔵庫・加工工場にミサイルが撃ち込まれ、大きな爆発。軍部の発表によると人的被害はなし。情報統制で私人による写真・動画の撮影は禁止されているし、軍部も具体的にどの場所にどういう被害があったのか発表してくれないので気を揉むが、何しろ①義父母と義兄は無事。義兄とその彼女はこれを受けてダーチャの義父母のもとに避難した。②彼らの集めた口コミ情報によると、やられたのは海沿いのいわゆる工場ゾーンと呼ばれる一帯で、市中心部(オデッサ市100万人口の3分の1が住む)と団地(同じく)をつなぐ線上にある場所(と私が日本語で書いても利敵しないと信じる)←ニュースAB

そうして4日0時頃また大きな爆発があったということだ。これ書いている今(4日10時JST)はウクライナ時間の払暁。情報ふるえて待つ。

沿ドニエストルからの攻撃に備える

軍部によると敵はウクライナ・モルドヴァ国境線上の沿ドニエストル(下図)と呼ばれる領域からオデッサを攻撃する準備をしてるのだそうだ。

沿ドニエストルは事実上のロシアである。いわば背後からの攻撃によってオデッサらへんの軍事力を囲い込んで無力化するのが敵の狙いだという。だが「緊張は続くものの、近日中に侵攻が行われる可能性は低い。ウクライナ軍は状況を掌握できている」(上掲ニュースB)。(ミサイル全然撃ち落とせないでぼんぼん爆発が起こっている状況で言われても)

戦時下のユーモア

4月1日いわゆるエイプリルフールの日にオデッサではユモリーナ(Юморина)と呼ばれるコミカルな街頭パフォーマンスが行われる伝統がある。戦時下における笑いとは。オデッサライフによるルポルタージュにSNSミームとか風刺画像とかまとまってる。「オデッサっ子がもつ最強の”生物兵器”は、恐怖と悲哀と不安の中にあっても冗談をいう能力である」。

↑例の「ロシアの軍船、逝ってよし」(3/23参照)のセルフパロディ、「ロシアの軍船、どうだ、逝ったか?」

また同日、実際にロシアの軍船に「逝っていただく」儀式がオデッサの海で行われた模様だ(ニュース

悪王支持率

かの国における悪王支持率が83%とかで(レヴァダセンター)。1月は69、2月は71、で3月が83%。調査期間は24~30日。残虐性の高まりに伴って支持率はむしろ上がっているのだ。絶望、という言葉は使いたくないが。失望разочарованиеという言葉はゼレンスキーも使ってたが(先月28日の露メディアへのインタビューで)。

奴らは強大だが言うて100人1000人のことだ、対するこっちは1億人だ、と有名なプーチン宮殿動画の最後でナヴァーリヌィがアジっていた。でも見よ、ベラルーシもあれだけ騒いでいまだにルカシェンコは権力の座に座っているのだし、

結局はある種のдворцовый переворот腹心の離反による無力化を期待するしかないのか。ああナロード、ナロード。

表記の問題

日本政府がウクライナの地名表記をウクライナ語読みに近似するよう改める決定を下したこと自体は、これは政治的決定であるので、仮にそれが普遍的価値に奉仕するものでなく、戦術的なジェスチャーに過ぎないとしても、肯定されうると思う。だが雪崩を打ったように新聞・テレビが表記を改めたことは、いかにも定見のないこと、無批判なことだと思って、軽蔑している。

ウクライナにおける唯一絶対に「正当な」言語がウクライナ語なのではない。地名のロシア語呼びは「ソ連時代の遺風」などではない。ロシア語による文化生活はウクライナの一部である。ウクライナはウクライナ語とロシア語(少なくとも)二つの言語を公用語と認めてしかるべき言語環境であった。後者を抑圧し、迫害さえしたのは、14年以降の政権の党派性に過ぎない。むろんそこに同情の余地はある。隣接する核超大国がロシア語を話すすべての人の宗主国をもって自任し、実際にその錦の御旗をふるって外国領土の一部を併合するという挙に出た、その当の被害国としては。だが8年間の言語浄化も、ウクライナ国内の言語地図を決定的に塗り変えることはできなかった。①その言語浄化はまさしく正当なものであったか。②現下のウクライナの言語環境はどうなっているか。この2点の精査なしに、「おかみのつるのひとこえ」で一斉に地名のウクライナ語化に走ったマスメディアの、矜持のなさよ。

ひかえめに言って街の会話の9割がロシア語で行われているオデッサをオデーサと呼ぶことのいったい何が原音主義だろう。(コ●●●ワさん、これが私の答えです)

3/31(またお酒を飲んでもいい)

戦時ということで3月1日より施かれていた禁酒条例が4月1日解除される(ニュース)。商店でワイン、ビール他が販売可能に。ただアルコール度数30度以上の酒(ウォッカとか)はダメ。「犯罪が増加したり風紀紊乱が見られたらまた禁酒しますよ節制してくださいね」

↑3月6日、村の商店で。このブラックシートが一部剥がされることになる。

地名表記改定

日本政府がウクライナの地名の慣例表記を改める決定をなし、NHKも早速追従。思うところあるが、……(あとで書くかも知れないし書かないかも知れない、私は改めない)

3/30(停戦交渉で進展というが)

画像、オデッサ市公式テレグラムから。「世界第二の軍隊?冗談はよしこちゃん」。冗談はよしこちゃん(я вас умоляю、直訳:頼みますよあなた)はオデッサっ子に特有の表現で、こいつを自家薬籠中の物にした人は晴れて裏ハンター試験合格、オデッサ市民の一員として認められる。(逆にいうとこのフレーズを多用するロシア語話者がいたらそいつはオデッサ出身である疑いが濃い)そのオデッサは30日も平穏無事。

ニコラエフ行政庁舎破壊

写真見ましたか。これが国家のやることですか。お隣のニコラエフ州の行政庁舎にミサイルが撃ち込まれた(ニュース)。十数名死亡。名物知事のキム兄は幸いにして無事だった。想像してほしい、あなたの住む県の県庁にぼかんとミサイルがぶち込まれて知事執務室を含む庁舎の3分の1が吹っ飛ぶ、こんなことを行うのはテロ組織でなくてなんだろうか。プーチンのロシアは国家の名に値せず、またロシアの名にも値しない。国家を僭称するテロ組織「イスラム国」をISと呼び表したのと同様の措置をプーチンのロシアに対してとるべきではないだろうか。

3/29(ゆるみ過ぎ禁物)

とはいえゆるみ過ぎると死ぬ。軍部「敵はオデッサ侵攻計画を放棄したわけではない。偵察飛行、軍船の接近、工作員送り込み、様々な試みがなされている」(ニュース

ゆるみ過ぎ市民の悲劇もあった。地雷が埋め込まれていることがつとに周知されているビーチに車で乗りこんで爆発、1人が死亡1人がけが。「戦時下のビーチはバカンスのための場所でなく敵上陸の舞台である」(ニュース

3/27・28(「オデッサは多分もう大丈夫だね」)

攻撃は行われなかった。「オデッサは多分もう大丈夫だね」とニュースばっかり見てて物知り博学秀才文化人のわが実父。義父母と義兄(とその彼女)もビデオ通話で毎夜元気な姿を見せてくれている。

時差

日曜、サマータイムが始まって、日本とウクライナの時差が「7」から「6」へ短縮されました。日本の昼12時がウクライナの朝6時。

オデッサを世界遺産に

オデッサの歴史建築群はUNESCOの暫定リストに載ってるのだそうで、ロシア侵略軍の破壊から守るためにその正式な世界遺産認定を急ぐようオデッサ市長が求めている(ニュース)。記事内の動画で戦時下のオデッサ中心部の様子が見られるので市長がロシア語で喋ってるのは無視して映像だけでもご覧いただきたい。喋ってる市長のバックに見えるのがオペラ劇場、その後ルソフ邸、デューク像(平時)、ポチョムキン階段、沿海並木通り、デューク像(戦時。土嚢に埋もれている)、市庁舎など映る。何しろ一番きれいなところを並べているが、文化財指定なのにもかかわらず管理不行き届きでボロボロの建物も多く、UNESCOはロシア軍の前にウクライナの無作為からも文化財を守らなければならない(≒登録は無理であろう)

ゼレンスキーへのロシア独立系メディア複数によるインタビュー

見た(動画)。アドリブで何口滑らすか=「何を」喋るかでなく、「いかに」喋るかを聞いていた。(日本のメディアは「何を」の方を報じていておやと思った。そういうものかな。事実誤認とか言いすぎとか言いまつがいとかあるかも知れないじゃん、「何を」はやはり公式声明の方を聞いた方がいいのでは)

マリウポリの惨状については聞くだに苦しかった。総じてこの若き・闘う指導者に共感と親近感を覚えた。今はとにかく何も言わずにこの人を応援したいと思った。27分くらい~メドゥーザ編集長の「2月24日を境にあなた自身のロシアとかロシア人に対する感情は変化したか」との問いに対する苦悩に満ちた真率な回答はロシア語・ロシア文化・ロシア文学を学ぶ全ての人に見ていただきたい。人間の心はこのように引き裂かれる。敵を愛すること、神ならぬ身にどうしてそんなことが可能か。

だが……こんなことは言わぬが花か。ロシア語に対してあなたの政権が、本当に抑圧の名に当たることをしていなかったか。疑う。よくも言えるなと思う。

3/26(この状況で固定化するのか)

26日はオデッサ方面への砲撃がなかった。ただ住民を不安にさせるフェイクニュースが流れたりとか住民を扇動するようなフェイクSMSが配信されたりとかはした。(ニュース

オデッサライフの市中フォトルポルタージュ、春の陽気、古書市通り(実際は書肆より雑貨屋とか立ち飲みカフェとか闇両替所が多い)が活況。

沿いでは恒例となったバルコニーコンサート、聞く人多数、オデッサ逞しいなという感じがする。

聴衆の一人「すごくお年を召した」クセニヤお婆ちゃん談:古書市通りに毎日来ている、ここにいれば怖くない、人がたくさんいるし、みんな親切だし、ここに2時間座っていることが何よりの薬、血圧がスーッと下がる。(記事

あと、昨日記したように、オデッサ市立動物園が久しぶりにオープン、これに長蛇の列(ニュース

要するになんだ、暗い話は聞き飽きた、待たれた春だ、生きてるなら楽しまにゃ損。

一般情勢

この戦争は長期化するのか。キエフを落とせなかったロシアは目標を下方修正し東部二州支配を落としどころとするのか。この戦争は飽くまで「ロシアがどこまで勝つか」の勝負だったのか。ウクライナはこの後も長く苦しむのか。さらに東部二州まで失って、NATOにもEUにも入れず。「ポスト14年」体制がさらに悪化したものが固定化するのか。プーチン政権は存続するのか。せめて東部二州を押さえられれば国民向けには一応整合性が立つ? ――ふざけるな。ロシアがすでに行ったことに対する業罰が絶対に下らなければならない。1000万人が住むところを失ったのだぞ。すべての人の生活が破壊された。街が破壊され、人たちが殺された。

帰国後はじめてテレビのニュースを見た(ニュースウォッチ9)。やはり見るものではなかった。耐え難い。やはり何をかしなければならない。ガルシアマルケスなど読んでる場合ではない。しかし何ができるだろう、私はロシア語ができるが知恵が回らなく影響力も皆無である。テーブルで牛乳がこぼれたなら床よりまずテーブルを拭くべきだ。募金とか難民支援とかそれはそれで大事だと思うがより本質的なのは戦争そのものを止めることだとどうしても思ってしまう。私の考えは、ロシア軍を止められるのはロシア世論しかない、いわばロシアは背後からしか止められない、前方から止めようとするとその抗力を上回るおぞましき火力を用いかねない(生物化学兵器、そして核…)、それは絶対に避けねばならない。西側の殺傷兵器供与や「ウクライナ軍が反転攻勢」といったニュースが素直に喜べないのはそれだ。

右を見ても左を見ても(チュバイス逃亡は吉兆か)また後ろを見ても誰も自分を支持する者がなく、自分が全くの孤独であり、この上いかなる抵抗も意味がない、と知らしめねば、まだ撃つものがあるにも関わらず砲火を収めるという最後の英断は、あの狂気の老人には不可能であろうと思う。申し訳ないが、それが「この政権のもとで生活は不可能だ」という目覚めにつながるならば、(指導部の個人資産などではなく)ロシアの国民生活を標的とした制裁もやむを得ないと思う。そもそも誰の選挙、誰の容認もしくは無関心によって存続した政権なのか。あなた方にも責任の一半がなかったとは言わせない。

だがそれはそれとして、俺に何ができるだろう。

3/25(オデッサ市営動物園が営業再開)

動物園が営業再開

一陽来復。休業してたオデッサ市立動物園が市民の求めに応じて26日限定的に営業再開するとのこと(ニュース)。大した動物園ではないがライオンとかゾウとかいる。戦争で動物たちの食べ物とか大丈夫かと心配され、欧州からたびたび「人道支援」を受けていた。

黒ミサで侵略軍に呪いを

ウクライナの魔術師・魔女たちが侵略軍に呪いをかける特別な儀式を催すのだそうだ。儀式は3部構成で、第1部は月齢29歳(「祟りと呪いの日」)となる3月31日にウクライナ国内の某パワースポットで魔女13人が何かする。第2部は4月中に某国某所で他国の同輩たちも集めてより強力なエネルギーにアクセスし、「われら偉大なる民族の勝利と栄光」を祈願する。「万国の魔女・軍神たちよ団結せよ」。第3部はよくわからんが仇敵プーチンが近臣の支持を失い孤立し追い落とされるよう願い、そうして侵略者に死と懲罰が下されるよう呪いをかけるのだそうだ(ニュースインスタ

徴兵適齢の男子はウクライナから出られない

18~59歳の男子はウクライナ国外に出ることができない。だが、例外規定は存在する。その一覧。たとえば18歳未満の子供が3人以上いる父親は応召可能な健康体であっても出国できる。逆に言うと、ていうか再度言うと、こういう例外的な事由がない限り、若い男性は国外に出られない。父が残り妻子だけ出国するということは可能で、実際多くの家庭がそうしているであろうが、いつ再会できるとも分からぬ一家離散よりは、不安でも怖くても国内に留まることを選ぶ人たちというのもまた相当数いる。出るべき人は出て、いまなおウクライナに残っているのは祖国防衛の熱情に燃える闘士ばかりだという理解は全然間違いだ。

3/24(切り取り方次第)

24日も特段のことなし。オデッサライフ電子版にオデッサ中心部のフォトルポルタージュ(こちら)。晴れた暖かい日、人は少なくなったが街を粛々とトロリーバスが走り人はベビーカーを押して散歩しまた買い物する。休業中の商店の窓が緩衝材で守られたりウクライナ国旗のペイントが街中に施されたり敵軍の進行を阻むべく「Ж」の字を立体化したような障害物が道路の要所に置かれたりと、街の様子は旧に変わらずとはいかない。だがそれでも、スーパー以外の店、たとえば美容院やカフェなどもぼちぼち営業再開していて、さしずめ一陽来復のきざしといったところ。

同じ24日づけ、NHK記事「【現地は今】ロシア軍ねらうウクライナの要衝オデッサで何が?」。これはこれでひとつの現実だ。同じ日同じ街でもどこを切り取るかで報道の色は全然かわる。ただ、それは別にして、まぁお粗末な記事だ。ロシア軍はなぜオデッサを狙うかといって、今さら「不凍港がほしくて」もないもんだろう。いつの時代の話をしてるんだ。それから「ウクライナ海軍の戦力を使えなくする」狙いがあるのだというが、ウクライナ海軍の戦力はロシアがオデッサを攻撃しようとするときにはじめて問題になるのであって、因果関係がおかしい。ウクライナが武力によるクリミア奪還を計画していたとかいう話は寡聞にして聞かない。ほか、あらゆる情報に留保をつけるべき状況で米高官の見方とやらに安易に「実際に」などという句を付すのもセンスがないし、そもそもサムネの文字をロシアカラーに塗るのはデリカシーがない(極めて不快)。この程度の記事が出てしまうことは、逆に、NHK編集部はオデッサに大して注目してないし、オデッサを大して危険だと思っていないということを証している。

3/23(どうかこのまま何ごともなく)

オデッサについて言うことなし。毎日ビデオ通話してる義父母(オデッサ郊外に在住)も「変わりなし」と。

«Русский военный корабль, иди на…й»

文学徒としては非常の事態がどのような<非常時のことば>を生むものか興味あるところだ。さしあたりこんな言葉がウクライナ側で流行ってる。「ロシアの軍船fuck off」。もともと戦争初期にオデッサ沖の蛇島(остров Змеиный)の防衛をめぐってウクライナ側が言い出したフレーズで、のち写真のようにオデッサ市・州内のビルボードでも盛んに掲示されるようになった。(写真はこちらからの借り物、オデッサ市内)

ここで用いられている語はいわゆる放送禁止用語で、良識ある大人は用いない、無垢な子供の目にも触れさせるべきではない非常に汚い言葉だ。(この種の言葉を「教科書に載っていない生きたロシア語」として得々と紹介してる日本語サイトがあるのを知ってるが個人的には最も愚かなやり方だと思う。変に覚えていい気になって使って眉を顰められるさまを想像するとまことに寒々しい。知っていて悪いことはないと思うが最低限の品位を失いたくないなら使うべきでない。余談)。で、このほどこのフレーズが「ウクライナに味方する世界中の人々の心をつかみ、結束を呼びかける、ロシア侵略軍との闘争のシンボル」となったと公式に認められ、使用しても「国家ないし地方自治体の品位を損なうものではない」と認定された(ニュース)。

「これは戦時だ、軍の発表・決定・権限に疑義を呈すな」

すごいインタビューもあったものだ。ウクライナ国防省報道官。Q「どうして戦争中は国防省や特務機関の発表・広報のファクトチェックをしてはいけないの?」A「なぜならこれは戦争だから。声明というものは省庁の夥しいフィルターを通過するもので、それがひとたび発表されたということは、即ちそうすることが国家防衛のためには必要だったということなのだ、そう信ずることだ。戦争に勝ってから(お望みなら)検証をなされるとよい」Q「どうして軍の決定や権限について公然と疑義を呈し・また個人的に疑問を抱いてはいけないの?」A「なぜなら軍は前線の状況について誰よりよく関知しているから。ある決定があなたにとって不可解でも、それはあなたが全てを知っているわけではないということをしか意味しない。加えて、そもそも軍事的決定はたとえば外科医のする医学的決定と同じでプロフェッショナルなものであって、世論の影響のもとにとられるものではない」盲信せよ、疑うな、私たちの正しさを。それをこのような言葉であけすけに言ってしまっていいのか。オブラートに包むということを知らん人らやな。原文

ゼレンスキーの国会演説

聞いた(動画)。日本が特別期待されてるなどと自惚れない方がいい。ゼも忙しい中なんでこんなもの引き受けたろう。①日本への感謝と賞賛。②新国際秩序建設を呼びかけ。③原発危機の強調。

①日本がアジアでいの一番に対露制裁に踏み切ったことを賞賛。これは直接日本にというより間接的にアジアの某権威主義大国ならびに他の自由主義諸国にシグナルを送ったものと解した。即ち、今ウクライナに支援を・ロシアに制裁を行えば行うほど「ウクライナから感謝され称揚される」という特典に与かれるよと。今その国際社会における発言力が(マリオの)スター状態であるウクライナに別して賞賛されることは即ち国際社会における地位をジャンプアップさせる捷径である。そういうメッセージをアジア全土に届けるために、日本はとりあえずセンターピンとして選ばれたと思う。
②今次の戦争を未然に防げなかったことは既存の国際安全保障体制がもはや無効化していることを証すものであり、新たな国際秩序の樹立が急務である、そこで日本はリーダーシップを発揮してほしいと。後段、スター状態のウクライナからこの言葉を貰ったのは儲けものだが先ほどの伝でいうとこれは今ウクライナを支援するとこんなふうな推輓が得られますよといわば返礼品サンプルを示したものと解されるが穿ちすぎか。前段についてはある一点において完全に同意、ロシアの国連安保理常任理事の地位を剥奪すべきだ。(まったくツラの皮が何枚あればロシアの国連大使など務まるのか。人間の厚かましさには限界というものがないと感心する)
③日本向けに、ウクライナにおける原発危機がことさら強調されていた。原発に対する/原発周辺でのロシア軍の軍事行動によって破局的事象が引き起こされたらどうなるか、フクシマから11年、日本人なら分かるでしょ。ツナミという言葉も使われた。

前から思っているが、ゼレンスキーにはいいスピーチライターがついている。そしてゼレンスキー自身も役者がいい。

世界に報じられることが分かっているこのイベントで、日本としては、是非ともウクライナの問題とりわけクリミアを北方領土に結び付けてくれるようロビーイングを行うべきではなかったか(と後から思う)。北方領土を名指しし、不当に占拠されたものとして国際的にコンセンサスのとれているクリミアと北方領土を同列に並べてくれていたら、後々効いたのではと思う。前も書いたがロシアの現政権は遠からず倒れると確信している。今はまだギリ惰性でプロパガンダマシーンへの喜怒哀楽の同期&思考停止が続いているロシアの大衆も早晩解呪されではやまぬ。これほど明白な悪事は絶対に覆い得ない。そうしてプーチン無謬神話が壊れ国営メディアの虚偽が暴かれロシアの近年の対ウクライナ政策は完全に間違っていたということになれば、少なくともクリミアまでは還ると思っている。それを見越して日本政府は今クリミアと北方領土を強力に紐づけておくべきだと思うのだ。

(先日のロシアの平和条約交渉破棄通告に対し日本政府は意外なほど毅然とした反応を返した。思い出すのは、今月頭に日本政府が北方領土は日本固有の領土であるとのレトリックに回帰したことについて、キシニョフで知り合った某ウクライナ難民が言っていたПросто Россию перестали бояться(ロシアのことを誰も怖いと思わなくなった)という、戦時下にあってパラドキシカルにも聞こえる言葉だ。案外そうなのかもしれない。プーチンはもう終わりだという私のソレは憎さ余っての妄言ではなくて、日本政府もさすがにこんなものは長く続かないと見ているのかもしれない)

3/22(わりと静かな日)

わりに静かな日だったようだ。オデッサ揚陸を企んでたロシアの海兵部隊が殲滅されたとの「吉報」が伝えられるなど(ニュース)。これは戦時下の報道で自陣の戦果について語ってるものだから耳半分で聞いとくが、しかし、先から言われている「オデッサの防備はかなり充実している」というのは本当なのかもしれない。

軍部の見立てでは、現環境で敵軍がオデッサに上陸するのはまず不可能(そのための戦力のほとんどは隣のニコラエフ掌握に投入され消耗している)で、現在は沖合にちょいちょい戦艦が現れて砲弾を撃ち込み心理的プレッシャーをかけにきているだけの状態だという(まとめ)。

機雷漂流説

先日も取り上げた「オデッサ沖の機雷が時化で繋留を外れ公海へ漂流している」との説、トルコ軍もそういうことを言っているらしい(ニュース)。ウクライナ側は「ロシアが設置した機雷だ」と主張しロシア側は「ウクライナが」と言う。いずれにしろ重要なのは、黒海が民間の船舶の航行にとって危険なものとなってしまったということ、あるいは、「危険なものになってしまったかも知れぬ」という不安によって、たとえば貿易船がオデッサに立ち寄らなくなるという効果が現実に生じ得るということだ。

日露平和条約交渉中断

日本の報道で知ったが、ロシアは日本との平和条約交渉を中断するのだそうだ(NHK)。驚きはない。そして意味もないニュースだと思う。だってプーチンは明らかにもう終わりだ。プーチンのロシアはこのあとなおいくつかの挙に及び得る、その中には某не дай бог兵器の使用も含まれるが、いずれにしろ、その命数は数えられている。プーチンはごく近い将来、少なくとも政治的には、必ず死ぬ。かつてこのコントロヴァーシャルな人物は死んだら一応モスクワに(故地サンクトペテルブルクではなく)記念館の一つも建つかなぁと考えたことがあったが、その線も消えたね。彼の歴史的評価はもう決定した。世紀の戦争犯罪人、これ以外にない。ゆえに、この政権が今の状況で打ち出すあらゆる施策は早晩撤回され無効になる。むしろ日本は、そのあとにくる、つまりプーチン王朝崩壊後にくる相当強い揺れ戻しの中で行われる大懺悔キャンペーンに乗じてうまいこと北方領土を取り戻す算段を整えておくべきだ。(※私の思惟は同人への憎悪でだいぶ濁っていると思います)

3/21報道(海からの攻撃)

21日早朝オデッサ沖からロシア船が砲撃を行い海沿いの複数の住宅が損壊、人的被害なし。のち現場を視察したオデッサ市長「周辺に軍事施設は存在しない。市民が住んでいるただの住宅である。ロシア国民よ目を覚ませ、このようなことが現実に行われているのだ」(オデッサ市テレグラム)。軍部「敵は例によって心理的なプレッシャーをかけてきている」(オデッサライフ

3/19記事(世論調査:オデッサ市民は戦争をどう受け止めている?)

オデッサ市民2000人を対象とした世論調査(記事)。

まず、今行われているのは「戦争」なのか、それともウクライナを救うための「特殊作戦」(ロシア側のレトリック)なのか。

ロシアが遂行しているのは「特殊作戦」である
否:81%
肯:12%

「特殊作戦」はナショナリストからウクライナを解放することを目指したものである
断固、否:73.9%
まぁ、否:12.1%
まぁ、肯:1%
断固、肯:4%

ロシアはウクライナと戦争を行っている
否:6.4%
肯:90.8%

ゼレンスキー支持率。

ゼレンスキーの行動を
支持する:93.4%
支持しない:6.2%

オデッサは「ウクライナの街」か。

オデッサはいずれにしろウクライナの一部である
否:3.4%
然り:90%

3/18記事(ウクライナの防空能力と空襲警報)

私らが新聞を購読していた「オデッサライフ」≪Одесская жизнь≫電子版に18日付でウクライナの防空能力と空襲警報のしくみについて語ったウクライナ空軍報道官のインタビュー記事が掲載された(記事)。ウクライナ軍の対空防衛能力の現状と限界をあけすけに語っていておもしろかった。何しろ敵機もしくは敵ミサイルの飛来をレーダーで探知し、その軌道を予測して、それが上空を通過することが予測される各市町村に順繰り警報を鳴らしていく。だが①24日の侵攻初日でまずやられたのがそのレーダーであり、②敵もレーダーで探知されないよう低く飛ばしたり軌道を大きく曲げたりしてくるので、捕捉できるミサイルは全体の10%程度だという。

3/18・19報道(イーロン・マスクとオデッサ、Timer編集長拘束)

オデッサの主要インフラが衛星インターネットに接続

詳しい人教えてください。何しろイーロン・マスクのスターリンクなる「衛星インターネット」にオデッサ市庁を含むオデッサの枢要インフラが接続されたということだ(ニュース)。ロシアのサイバー攻撃によるインフラダウンを回避する策と理解している。ちなみに私がオデッサにいた8日までの時点では(もう遥か昔ですね)、インターネットの動作感は旧と何ら変わらなかった(戦争が始まってインターネットが使いにくくなったという実感はなかった)

ウクライナ軍の設置した機雷が黒海でデブリ化?

戦争初期、敵上陸に備えてオデッサのビーチに地雷が埋設されたという話があったが、海にも機雷というやつが設置されていたらしく、その一部が先日来の時化(しけ)で錨を外れ、意図しない海域へと漂流し、黒海を航行する通常船にとって脅威となっているらしい(ニュース)。ただしこれはロシア側の発表で、ウクライナ側は特にコメントを出していないとのこと。だが……ありそうな話に思う。

露語ローカルメディア「Timer」編集長拘束

本記事ここまですべてのニュースの出典であった露語ローカルメディア「Timer」の編集長が19日、ウクライナ保安庁に拘束された(ニュース)。理由は示されていない。Timerの編集方針が問題視されたか。このニュース(19日17時)を最後にTimerのウェブサイトの更新は止まっている。公式テレグラムチャンネルの方はその少し前、それまでロシア語で伝えていた空襲警報発令および解除の報をウクライナ語で行って、以後更新が止まっている。

露語メディアが一律に閉鎖されているわけではない。オデッサのローカルニュースを伝える露語メディアは他にも存在するが、見たとこ20日も更新がなされている。Timerの編集方針がまずかったか。たとえばこのДумскаяみたいに、

こんなふうにロシア軍のことは「ナチス・ロシア」ウクライナ軍のことは「ウクライナ防衛者」と表記するのでなければ露語メディアはもうウクライナに存在できないのだろうか。そうして、

こんなふうにすべてのニュースの末尾に「ロシアの侵略者どもに死を!」と記するのでなければ。しかし、そんなニュースもまた読んでいられないのだ。(ロシア軍の破壊と殺戮を憎むことにかけて私は人後に落ちないが)(Timerには少なくともこのような姿勢はなかった)

(以下、筆者のたわごと)

ゼレンスキーのウクライナがただ勝つだけでは、ウクライナ国内の親ロシアの人にとって、ますます住みにくいウクライナになってしまう。この戦争はウクライナが右傾化を強める契機になり得る。この政権にはたしかに超克されるべき側面があった(もちろん外国軍によってではなく)。この政権が「親ロシア」即ち(たとえば)単にロシア語を話しロシア語でものを考えロシアの文化や芸術を愛する人々に対して行っていた政策を飽くまで私は支持しない。ウクライナの中には親ロシアの人だっていていい。ウクライナ語とロシア語、ふたつの言語をもつ国であっていい。私の願いは、ウクライナがこの上1ミリも蹂躙されることなく、かつ、ウクライナが寛容な国へと再び生まれ変わることだ。「ウクライナの勝利」を願うのは、私のすることではない。

(その裏側で、ロシアの無残な敗北は、たしかに願っている。プーチンのロシアよ、死んで詫びろウクライナに、と。実際、ウクライナが寛容性を回復するために、「ロシア語を話しロシア文化を愛する人間」が国内に存在することが即ちウクライナにとっての「国家安全保障上の脅威」であるという事態が解消されねばならないならば、そのためには、ロシアが「ロシア語を話しロシア文化を愛する人がいるのであればどこであれ出向いていって<保護>する」という、いわゆる<ロシア世界>русский мирなるドクトリンを放棄することがたしかに必要である。また、その実践例として併合したクリミアを、ウクライナに返還することが。してみると、偏屈にも「ウクライナの勝利」を望まないとする私は、誰よりも徹底的な「ロシアの敗北」切願者である、ということになる。所期目的を全く達成せずしての侵攻の中絶・ドンバス含むウクライナ全土からの自軍完全撤退、クリミア返還、憲法再改定、ウクライナとの完全講和そして全面賠償、<ロシア世界>ドクトリンの放棄、世界の鼻つまみ者からの再出発。これほど完全な敗北を、ロシアに望んでいる)

3/17報道(国境ガラ空き、社会混乱に乗じた犯罪)

国境ガラ空き

オデッサ州からモルドヴァ・ルーマニアへの各国境通過ポイントが今やガラ空きだそうだ(ニュース)。出る人はもう出た、ということだろう。オデッサ市に対して本格的な攻撃が始まればまた国境への奔流が起こる。が、そのようなことはありませんように。

社会混乱に乗じた犯罪

入居者募集の掲示を見て話を聞きにやってきた家族が、そこに待っていた20・30代の男3人に武器で脅され金品(自動車含む)を巻き上げられた(ニュース)。3/15付け「市民への武器の配布」のひとつの帰結か。

平和の海に・・

オデッサのビーチで地雷が爆発(ニュース)。ウクライナ軍は先に敵上陸に備え黒海の真珠オデッサの最も貴重な財産であるビーチに地雷を埋設していた。そのひとつが作動した。作動の原因は記されておらず。

(※上掲記事内の動画はフェイクであるとジャーナリストの須賀川拓氏。教えてくださった方、ありがとうございました)

この日はまた、オデッサ沖にロシア船が肉眼で確認された。このかんを含め、この日オデッサ市・州では2度空襲警報が鳴った。

3/16報道(海からの攻撃、国境越えの悲喜劇)

海からの攻撃

海上のロシア船がまたミサイルだの大砲だのオデッサ州内各所に撃ち込んできた(ニュース)。ウクライナ軍部によると敵の狙いは将来のオデッサ上陸に向けてウクライナ側の対空兵器の所在を確かめることだという(ニュース)。昨日今日撃ち込まれているエリアは下図赤丸、黒海北岸有数のリゾート地であるZatokaの周辺。同地図赤線で囲われたオデッサ市からはやや離れている。

敵海上戦力が狙う本丸はオデッサであるとして、そのオデッサ市は防備十分であり、「来たら返り討ちにしてやる」とウクライナ軍部は豪語するが、果たして。

(なおこの日、オデッサ市・州では空襲警報鳴ること3回)

国境越えの悲喜劇

18歳から59歳の徴兵適齢の男性は国境を越えることができない。これが家族離散を生んでいるし、家族離れ離れになりたくないから国外へ逃れるに逃れられない人たちを生んでいる。戦争による生活の破壊は実に家屋の損壊とか人身の毀傷とかだけではない。モルドヴァへのとある国境通過ポイントで、後部座席の赤ちゃん用品ボックスの中に身を隠した37歳男性が国境警備にあえなく見つかり、越境失敗(ニュース)。戒厳令下の徴兵忌避は厳罰である。これに類する様々な試みがある。

強大な敵の理不尽な攻撃に敢然と立ち向かう勇ましきウクライナ人、という像が日本の報道では好んで描かれているように見受けるが、戦場で殺しまた死ぬよりは家族とともにただ生活を営むことを願う応召可能な健常男性がいたとして誰が責められるか。I don’t wanna be a soldier mama, I don’t wanna die.

3/15報道(海からの攻撃、市民への武器の配布)

海からの攻撃

オデッサ州内各地に朝また昼間、海上からミサイル攻撃があった(ニュース)。その後ロシア船はいったんオデッサ沖から離れたとのことで、ウクライナ軍部によれば、これは「いまに上陸するぞ」とロシアが心理戦を仕掛けているものだとか(ニュース)。なおこの日、オデッサ市・州では3度空襲警報が鳴った。

市民への武器の配布

市民社会に銃火器が広がっている。ウクライナ防衛のために働いている/自警団に所属している市民へ警察が自動小銃ほか武器の配布を進めており今日すでに1万丁ほどが市民の手に渡ったということだ(ニュース)。

タイトルとURLをコピーしました