ロシア語の歌ロシア語で聞いてみるvol.3「お団子パンの歌」(歌詞和訳)

ロシア語ソング集

ソビエト・ロシアは実はアニメ大国で、素晴らしいアニメ作品がいっぱいある。その主題歌・劇中歌にも良曲が多い。そうした名作アニメ及びアニソンを紹介していき、ほんで歌詞カードをもとにロシア語の勉強もする。そういうシリーズの第3回「お団子パンの歌」

「お団子パンの歌」とりま聞いてみよう

とりあえずまぁ視聴してみてください。2分半。

Колобок – Песенка Колобка. Симбирская сказка – Гора самоцветов

「なんかこのメロディ知ってるな」と思われた方。そうね、「聖者の行進」。

Louis Armstrong – When The Saints Go Marching In

まぁそれはいい。お団子パンの歌、なんかウサギとかクマとかキツネとか、動物が色々出てましたろう。大体こういうこと歌ってる。

ぼくはまぁるいお団子パン。貧しい穀物小屋からかき集められた小麦粉で焼き上げられ、じいさんから逃げばあさんから逃れ、ウサギから逃げクマから逃げ、いまお前からも逃げるところだよ、キツネ。

このようにお団子パンが一人称で自己の来歴を語る歌です。

「お団子パンの歌」ロシア語歌詞と和訳

そいじゃ歌詞全文を見てみよう。ロシア語の原文とその対訳を聯ごとに示す。

とその前に……

前提として、「カラボク=お団子パン」ということを共有しておこう。カラボク(колобок)というのは「丸っこいパン」のことです。

【1番:vsウサギ】
Я колобок, я колобок,
Румяный бок, румяный бок.
По амбару я метён,
По сусекам наскребён.
На сметане я мешён,
И на окошке остужён.
Я от дедушки ушёл,
И я от бабушки ушёл.
И от тебя, ушастый зайчик,

Я обязательно уйду.

ボクはカラボク、カラボク
こんがり焼けたわきばら、わきばら
納屋ぢゅうから掃き集められ
穀置きぢゅうから搔き集められ
サワークリームと捏ねられて
窓辺で冷まされていたところ
じぃさんのもとから逃げだし
ばぁさんのもとから逃げだし
そんで今、きみ、長みみのうさちゃんよ、
きみからもゼッタイ逃げおおせるよ

【2番:vsクマ】
Я колобок, я колобок,
Румяный бок, румяный бок.
По амбару я метён,
По сусекам наскребён.
На сметане я мешён,
И на окошке остужён.
И он от дедушки ушёл,
И он от бабушки ушёл,
И от зайчика ушёл,
И от волка он ушёл,
И от тебя, косматый мишка,

Я и подавно убегу.

ボクはカラボク、カラボク
こんがり焼けたわきばら、わきばら
納屋ぢゅうから掃き集められ
穀置きぢゅうから搔き集められ
サワークリームと捏ねられて
窓辺で冷まされていたところ
じぃさんのもとから逃げだし
ばぁさんのもとから逃げだし
うさちゃんからも逃れ
オオカミからも逃げおおせた
ましてやきみ、毛むくじゃらのクマちゃん
きみからも逃れいでか!

【3番:vsキツネ】
Я колобок, я колобок,
Румяный бок, румяный бок.
По амбару я метён,
По сусекам наскребён.
На сметане я мешён,
И на окошке остужён.
Я от дедушки ушёл,
И я от бабушки ушёл,
И от зайца ты ушёл,
И от волка ты ушёл,
И от медведя ты ушёл,
И от тебя, лиса краса,

Я тоже убегу.

ボクはカラボク、カラボク
こんがり焼けたわきばら、わきばら
納屋ぢゅうから掃き集められ
穀置きぢゅうから搔き集められ
サワークリームと捏ねられて
窓辺で冷まされていたところ
じぃさんのもとから逃げだし
ばぁさんのもとから逃げだし
ウサギからも逃れ
オオカミからも逃れ
クマからも逃れた
こんどはきみ、きつねのべっぴんさん
きみからも逃げちゃうよ!

ロシア語のお勉強:初級編

※ここからしばらくロシア語の話になる。「お団子パン」の物語とか、アニメについてのお話は、この次の次の章でします。ロシア語知らんよという人はそちらへ飛んでください。

まずは初級編。前半部(カラボクが焼き上げられる顛末)は正直覚える必要のない難しい古風な言葉が使われてるので無視、後段だけ見よう。

Я от дедушки ушёл,
И я от бабушки ушёл.
И от тебя, ушастый зайчик,
Я обязательно уйду.

何丘妻
何丘妻

~のもとを立ち去る(от+生格+уйти)

уйти「立ち去る」は超基本動詞です。超々基本動詞であるйдти「行く」に接頭辞у(「離れる」というニュアンスを付加する)が付いたもの。

その男性過去がушёл、一人称単数現在がуйду。

И от тебя, лиса краса,
Я тоже убегу.

何丘妻
何丘妻

このубегуというのも同じ。убежать「走り去る」の一人称単数現在。

бежать「走る」+接頭辞у(「離れる」というニュアンスを付加する)でубежать「走り去る」。

ロシア語のお勉強:中上級編

この歌は文法的には難しいことは何もないので語彙の話が中心になる。「お団子パン」はもともと民話すなわち口承文芸なので使われてる言葉が古い。

Я колобок, я колобок,
Румяный бок, румяный бок.
По амбару я метён,
По сусекам наскребён.
На сметане я мешён,
И на окошке остужён.

колобок 冒頭述べたが「丸っこいパン」をカラボクという。ウクライナ語でколоとは「円」(ロシア語でいうкруг)であって、思えばロシア語にもколとつく「丸いもの」が多いことだ(кольцо環、колодец井戸、около~の周りに)。スラヴ語のより古形をよく保存しているウクライナ語を媒介にロシア語理解が深まる例。
румяный бок румяный「こんがり焼けた」はいいとして、それがなぜбок「わきばら」なのか。これは現代式のオーヴン(上下方向から熱)でなくてペーチカで焼いているので、直接的には側面が焙られる、だから他ならぬбокこそがрумяныйなのでしょうねぇ。
амбар 倉庫・納屋・小屋
сусек 研究社によると「穀物置き場」
метён мести「ほうきで掃く」の被動形動詞過去短語尾男性形。
наскребён наскрести「搔き集める」の被動形動詞過去短語尾男性形。
мешён месить「捏ねる」の被動形動詞過去短語尾男性形。
остужён остудить「冷ます」の被動形動詞過去短語尾男性形。

被動形動詞過去短語尾男性形って言いたいだけみたいなとこあるな。なるべく中上級編では辞書引けばわかるような話はしたくない。教科書で一番最後にやる被動形動詞あたりまでが中級、それ以上の実践ロシア語が上級、なんとなくそういうカテゴリー分けでおります。

И от тебя, ушастый зайчик,
И от тебя, косматый мишка,
И от тебя, лиса краса,

ロシア語には特定の動物に対して決まって用いられる枕詞(ちはやぶる、たらちねの)みたいなものがあって、民話とか童謡に頻出する。
上のушастый зайчик「耳長ウサギ」косматый мишка「毛むくじゃらクマ」的な形容詞+名詞の例だと、たとえばволк「オオカミ」はしばしばсерый волк「灰色オオカミ」、мишка「クマ」はмишка косолапый「内股歩きのクマ」。上のлиса краса「べっぴんキツネ」みたいな名詞+名詞の例ではлисичка-сестричка「キツネの姉さん」とかпетушок-золотой гребешок「金たてがみの雄鶏」とかいう。他にсорока-ворона「カササギ=カラス」とかгусь-лебедь「ガチョウ=ハクチョウ」とか言う連語があって、これなぞは個人的にはなんだそらどっちやねんて感じだ。

アニメ「お団子パン」について

もともと「お団子パン」はロシア民話である。日本でも絵本になっている。『おだんごぱん』福音館書店

その民話がロシアで2013年にアニメ化された。その主題歌というか、流転のカラボクが出会う動物出会う動物に歌う歌こそが、今回紹介した「お団子パンの歌」だ。

ああそう、この記事の冒頭に掲げた(皆さんに視聴してもらった)2分半の動画がすなわち物語の全編であると誤解させてしまったかもしれない。あれはお団子パンの歌部分だけをつなぎ合わせたもので、アニメ本編は11分ある。こちら↓

再生回数2.3億回のひみつは、これは親が子供に見せるんである。アニメを流しとくと子供は画面に釘付けになる、その隙に親は家事ほか自分のことができるというわけ。かくいう私らも100回ほど再生回数に貢献している。(うちは映像は見せない方針なので音だけ)

さてさて、そんな「お団子パン」であるが、改めてサーっとどんな話であるのかあらすじ的なやつを紹介しよう。

貧しい村人が納屋にありったけの小麦を集めてパンを焼いたらアンパンマンよろしくパンに魂が生じた。だが忘恩の丸パンは窓辺で冷まされてるすきに逃げ出して、コロコロこみちを転がっていった。

道中ウサギに出会った。ウサギに食べられそうになったが、例の歌を歌ったら気を逸らすことができてうまいこと逃げられた。

そのあとオオカミに出会ったがまた歌うたったらなんか逃げられた。

熊につかまって絶体絶命かなあと思われたときも歌にはふしぎな力があってなんか逃げられた。

でも狡猾な森の女狐にあったときはおだてられ乗せられて「歌わされて」しまい、果てに

食われて

死んだ。


無になった。
お団子パンもそれを食べたキツネも、
それを食べなかったウサギもオオカミもクマも、
お団子パンを生み出したところのじぃさんもばぁさんも、

やがては必ず無になります。これをお読みのあなたも私も。と、そういうお話でした。

はじめて見たときは本当にびっくりした。(えっ、これで終わりなの?)(マジで?)(めっちゃバッドエンドじゃん!)感情移入させておいてそれはない、だってパンはそもそも言うと食べるもので、そんなことになるならはじめから魂なんて芽生えなければよかった。けっきょく食べられさせるならなんだって魂なんか芽生えさせた? あなた一流のこれが遊戯(デスゲーム)なのか、神よ?……

以上、「ロシア語の歌ロシア語で聞いてみるvol.3『お団子パンの歌』(歌詞和訳)」でごぁした。


【ご案内】
何丘が好きなロシア語ソングを100曲紹介するシリーズをやっております。
1曲目 ⇒ チェブラーシカ「誕生日の歌」
2曲目 ⇒ 「子マンモスの歌」
3曲目 ⇒ 「お団子パンの歌」(今回)
取り上げる歌はソ連時代のアニメソングが多くて、今回みたいな現代の(2013年)は例外的です。

なおこの企画は、何丘Twitter「ロシア語アニソン百夜百曲」の姉妹編です。
何丘Twitter「ロシア語アニソン百夜百曲」第3夜「お団子パンのうた」

では次回、ソビエトアニメ「空飛ぶ船」劇中歌「囚われの姫のフラストレーション爆発の歌」お楽しみに。

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