この一週間に見たYouTubeを振り返って感想など記しておく。今回は11月8~14日の分。ムリチク(ソ連アニメ)ばかり見ていた。
- 【ムリチク】長靴をはいた犬(Пес в сапогах!)
- 【ムリチク】マローズ爺さんと夏(Дед мороз и лето)
- 【ムリチク】タコちゃんたち(Осьминожки)
- 【ムリチク】トリャム!こんにちは!(Трям! Здравствуйте!)
- 【ムリチク】港にて(В порту)
- 【ムリチク】38羽のオウム(38 попугаев)
- 【ムリチク】わんわんという名のねこちゃん(Котенок по имени Гав)
- 【ドラマ】会合場所変更不可(Место встречи изменить нельзя)
- 【在日ロシア人YouTuber】日本の小学生の通学について
- 【在日アメリカ人YouTuber】はじめての母の日
- 【ゲーム実況】キヨ×フジ「マリオメーカー」
【ムリチク】長靴をはいた犬(Пес в сапогах!)
今週はムリチク(ソ連アニメ)ばかり見ていた。Twitterで「何丘の好きなロシア語のこどものうた(детские песенки)100曲紹介します」という企画を進めていて、何しろ年内に良曲100曲紹介する約束なのだが、実は持ちネタは100曲に全然満たなく、やりながら開拓していく必要がある。
んでムリチクмультик=мультфильмと呼ばれるソ連時代の国産アニメを色々見ることにした。大概なんかしら挿入歌があるので。言っとくけどソ連アニメは質が高い。あなどらないでね。
「ムリチク」と「アニメ」について
ムリチク=ソ連アニメというが、ムリチクとアニメは飽くまで別物だ。日本でアニメというと、一方にはサザエさん的なものがあり、他方にはトトロみたいなのがある。ムリチクはその中間だ。①尺が短く②一回完結で③芸術性が高い。ロシア語でもмультикとанимеは呼び分けるので、日本語の方でもカエサルのものはカエサルに帰さしめたい。つまり、ムリチクのことはムリチクと呼びたい。
さて『長靴をはいた犬(Пес в сапогах!)』である。これおもしろかったー。アレクサンドル・デュマの『三銃士』てあるだろう、アトス・ポルトス・アラミスそしてダルタニャン。「一人は皆の為に、皆は一人の為に」。私はドラえもんの『夢幻三剣士』でこの物語に初めて出会ったよ。
その『三銃士』の全登場人物をイヌもしくはネコに置き換えて、イヌ側(王側)vsネコ側(枢機卿側)の角逐に仕立てたのがこの『長靴をはいた犬』だ。
20分の作品の中にふんだんに歌が盛り込まれている。Twitterの「100選」の方では、うち2曲を紹介した。まず「おお、ついにそのときが(О, наконец настал тот час)」
で「哀れな羊」(Мы бедные овечки)。これは歌じたいは前から知ってた。
【ロシア語学習者に朗報】
上掲2曲を含む、『長靴をはいた犬』劇中歌すべてを、ちょっとずつロシア語字幕付きで紹介してるこちら(↓)の動画は、ロシア語学習にいいと思う。
このvladimir Shadoorskiという人のチャンネルには他にも同趣旨の(ムリチクのこどものうたをロシア語字幕付きで紹介してる)コンテンツが多数あるようなので、ロシア語の教材としておすすめ。
【ムリチク】マローズ爺さんと夏(Дед мороз и лето)
ムリチク『マローズ爺さんと夏』(Дед мороз и лето)。これも尺は20分弱、一回完結で、歌がふんだんに盛り込まれて、愛らしくて優しい世界。
マローズ爺さん(ジェド・マロース)は要するに西洋でいうサンタクロースである。クリスマスに子供たちにプレゼントを配る。マローズ爺さんは常冬の国に住んでるので夏を知らない。子供たちによると夏はとってもいい季節らしい。夏を見たいな、夏ってなんだろう。そんなマローズ爺さんが念願かなって夏を体験する話。歌がうつくしい。子供たちは天使。
【ムリチク】タコちゃんたち(Осьминожки)
ムリチク『タコちゃんたち』(Осьминожки)。10分の短編。やんちゃなタコの子どもたちが体色を自在に変化させてパパタコAとパパタコBに「どれとどれがうちの子だろう…?」と分からなくさせるなどイタズラの限りを尽くす。挿入歌「タコの絵描き歌」がかわいい。(動画5:45~)
棒と棒とキュウリでにんげん
にんげん、にんげん
足を足したらタコさん
タコさん、タコさん
この和訳が歌詞全文。これだけの歌。
ちなみにロシア語で「タコ」を意味するосьминогはосьми=八本、ног=足。つまり妖怪「八本足」こそがタコなのです。
【ムリチク】トリャム!こんにちは!(Трям! Здравствуйте!)
ムリチク『トリャム!こんにちは!』(Трям! Здравствуйте!)。こういうのもある、中にはこういうのもあります、という本当に心から無意味な、ただナンセンスだけが演じられる8分間。ソ連アニメのクマってだいたい頭おかしい(ソビエト版「クマのプーさん」しかり)。
だが劇中歌がいい。「あ~ぶらか~!」(雲よ!)のリフレインが印象的な、その名も「雲よ!」という曲。歌詞少し和訳する。
月の白いりんごをかすめ 入日の赤いりんごをかすめ 未知の国より湧きあがり 急ききては走り去る、 雲よ!たてがみ白き馬の群れ! 雲よ、僕らも乗せていってくださいな。
ちなみに歌ってるんは「チェブラーシカ」の声の人です。
【ムリチク】港にて(В порту)
ムリチク『港にて』(В порту)。これなんかは15分全編これ歌。ミュージカルアニメっていうのかな。
これも筋も何もない、仲良し4人組が港(порт=port)にやって来て、入江を出入りするいろんなタイプの船を見る。船たちのうたう歌をきく。で日も暮れて、港に灯がともり、では帰ろうか。それだけ。(私は港町オデッサ在住なので、オデッサ港・オデッサ湾を描いたものとして見ました)
最初と最後に流れる「ぼくら来ました本日、港に。ぼくら来ました本日、港に」という軽快なソングが耳に残る。とにかく終始優しくってユーモアがあって、上質なアニメーション。再度いう、ムリチク、あなどらないでね。
【ムリチク】38羽のオウム(38 попугаев)
人形アニメ『38羽のオウム』(38 попугаев)。私はある歌(А вдруг получится!)が目当てでこの6分のやつ一本だけ見たが、本当は同シリーズには色んな回があり、全部見たら1時間20分ほどになるらしい。
どうでもいい脚注(ある歌が目当てで…について) 先にも言ったが私がいま立て続けにムリチク見てるのはTwitterで「ロシア語みんなのうた100選」というおすすめ曲100曲紹介チャレンジをしとるからで、そういうチャレンジをそもそもしようと思い立つくらいには自分はロシア語のこどものうたдетские песенкиに予めそれなりに詳しい。でも歌だけ知ってるが出典となってるアニメの方を見たことがない、というパターンが往々にしてある。紹介するからには一応見ておかないと、ということで見る。
話の内容はというと、生まれてから一度も空を飛んだことがないオウムをジャングルの仲間たちが励まして、飛ばせる。「できないかもしれないじゃん!」といって試すことさえしようとしないオウムに、仲間たちは「できるかもしれないじゃん!(А вдруг получится!)」と歌を歌って励ます。その通り、やってみればできましたとさ、めでたしめでたし。
【ムリチク】わんわんという名のねこちゃん(Котенок по имени Гав)
ムリチク『わんわんという名のねこちゃん』(Котенок по имени Гав)。優しいアニメーション。タイトルは直訳すると「ガフという名の子ねこ」、ロシア語では犬はガフガフと鳴くので要するにそういうこと。ガフが歩く姿がそれだけで貴い。可愛すぎる。
街外れの廃屋みたいなところに住んでる子ねこのガフと子犬のシャーリクと、あと大人の猫と大人の犬、総勢4匹の、実に他愛のないエピソード集。全5シリーズ、総計45分。1話がすなわち9分くらいで、その1話も独立した3つくらいのエピソードから成るので、要するにひとつの話は3分くらい。試しに見てみてほしい。ロシア語分からない人もただ眺めて癒されると思う。
使われてるロシア語はごくごくシンプルなので、ロシア語初学者の教材としてもいいと思う。
(↑上掲アイコンをクリックで動画に飛べます。リンク切れしてなければ。だめだったらКотенок по имени Гавで検索)
【ドラマ】会合場所変更不可(Место встречи изменить нельзя)
ヴィソツキー主演の伝説的刑事ドラマМесто встречи изменить нельзя。実は前に見たことあるのだが、最近私らオデッサ映画スタジオ前に引っ越したので、この機に同スタジオ製作の映像作品を見返してみたく思い、「エレクトロニクの冒険」(приключения электроника)等に続いてこれも見始めた。全5話、今週は4話まで見た。
感想1:9年前に見たときからロシア語能力は格段に向上している筈だがそれでも結構難しい、まま何言ってるかよくわかんない。妻によると本作ではいわゆるтюремный(преступный)жаргон=極道用語が多用されてる、それでか?
感想2:演技がすばらしい。ヴィソツキーはもとより、シャラーポフ役の人も、とりわけこの第4話では、例の冤罪で長期拘留されてた人の演技のすばらしさに舌を巻いた。今のNetflix動画で喜んでる人にはこの滋味は分からないんだろうな。舌がバカになってるから。
アンチNetflix何丘
Netflix動画つっても私はただ「クイーンズ・ギャンビット」を2話見ただけだ。でも仄聞と合わせて、要するにNetflixオリジナルコンテンツってこういうことだろう:①莫大な予算をかけた豪華セット&キャスティング②ビッグデータとAIに基づく大衆迎合的(王道的)筋運び③ふんだんなCG等特殊効果。ロシアの古き良きリアリズムドラマにはこのいずれもない。そしてそれがよい。私の目には「みんなが見たいものを見せてくれる」Netflixばかりをみんなが見る世界はディストピア以外の何ものでもない。世界がすっかり平準化してしまわないように対抗的価値を擁立したい。その意味で、ロシアがこうして非Netflix的な映像作品をYouTubeで大量無料公開してくれてるのは嘉すべきことだ。ロシアこの意味では本当にやる。
【在日ロシア人YouTuber】日本の小学生の通学について
Chepolinko(チェパリンコ)というロシア人YouTuberがいて、日本に住んでて日本のあれこれをロシア語でYouTubingしてる。名前は昔から知っていたのだが――というのも義父がチェパリンコをよく見ていて私や妻に「チェパリンコが日本について〇〇と言ってたんだけど本当か」とよく聞いてくるので――このほど初めて見てみた。
とりあえず一番見られてる人気の動画を見てみようということで、人気順で上位だったこのやつを見た。「なぜ日本では子供たちを学校に送っていくことが禁止されてるのか」(Почему детей в Японии нельзя отводить в школу?)。裏を返せばロシアでは(ウクライナでも)小学生くらいの子供は家から学校まで車等で送っていくのが普通なのだ。「わが国では普通に行われてることがかの国では禁止されている、それはなぜか?」という切り口はウケそうだ。引きの強いタイトル選び。
だが内容のほうはごく淡々と、センセーショナリズムなしに、日本では子供たちが安全に通学できるようこれこれこういう工夫がしてあります、と説明してあって、日本人の私が見てもとりたてて突っ込むところがないごくまっとうな内容だ。見たロシア人は「日本すげえな」「ここまでやってればそら送り迎えは要らねえわ」と思うことだろう。
かなりスペシフィックなテーマなのに、随分多くの人に見られている。ふーん。。こういうのがウケるのかねぇ。
【在日アメリカ人YouTuber】はじめての母の日
日本在住のパオロとマイコちゃん、メインチャンネル(Paolo fromTOKYO)の方フォローしてるのだが、ウルヴァリン君(赤ちゃん)今どんな感じかなとサブチャン(Tokyo Zebra)見てみたら、ウソだろ? 子供の日だの母の日だの(5月)のことを今ごろになって公開してるじゃんか。なんかガッカリ。それなりに最新の動向を報告してくれてないと……人気商売なわけだし、Baby showerとかもらったりして現実に応援されてる立場なんだから、ある程度は報告の義務さえあると思うが。さすがにloyalty薄れるぜ。
【ゲーム実況】キヨ×フジ「マリオメーカー」
今週はちょっとわけあってプチ蟄居を余儀なくされてた。ムリチク(ソ連アニメ)をやたらに見てたのもそのためだ。
そんな私が、癒しを求めるあまりこんなものにまで手を出してしまった。キヨ×フジのマリオメーカー(初代)。実は過去にマリメ2までコンプしてしまっているのだが、二周目見始めてしまった。
ゲーム実況というものは他に見たことがないし見る気もないのだが、キヨ×フジは例外。とにかく脳をカラにしてずーっと見てられる、ときどきアハハと笑ったりして。M.ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を一方で読み進めながら、Part3まで見てしまった。
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