【週刊YouTubeレビュー】10/10:ハライチ岩井と映画・思想・文学・音楽

その他

今週もいろいろ動画見た。うち印象に残ったもの9本。

【移住】TBS NEWS|移住者が急増中 奥多摩の魅力とは

都心から奥多摩に移住する人が増えている、というニュース番組?の一コーナー。地方移住の話は私らも他人事ではない。1年か2年後、私らは日本に帰る。そのときに、都心に住むという選択肢はほぼない。ウクライナで3歳までのびのび育った子供を東京都心の狭小な住居・街区に押し込むのはなんかもう虐待といっていい。私や妻としても少々キツイものがある。住むなら地方だ。

少子高齢化の自治体が定住者獲得のために頑張ってる話はちらほら聞こえるが、これ見る限り、奥多摩は本気だ。ちょいちょい出てくる公営住宅というのが鬼。一軒家に住んで家賃わずか3万数千円という。また家賃5万を20年間納め続ければ(20年の居住実績があれば)その物件は賃借人の所有になるという墾田永年私財法みたいな制度も。すごすぎないか。奥多摩は実際自然ゆたかな素敵なエリアだ。川が流れてるイメージだ。多摩川上流ということか。

その川のほとりで、しかし、国際結婚夫婦(旦那さんが外国の方)の家族がマスク着用で水遊びをしていてゲーッとなった。こんな人跡稀な自然の中でもマスクしてなきゃならないのか日本。このナンセンスが続く限りちょっと日本には帰りたくない……。

【思想】NewsPicks|松岡正剛×波頭亮

NewPicksけっこう見てしまう。私は意識高い系だろうか。ちがう、ただの落語好きだ。ここへは話芸を聞きに来る。弁の立つ人が多いので。

この「日本人をRethinkせよ。」のシリーズは前に宮台真司の回を見てすごそさに衝撃を受けた(過去のYouTubeレビュー)。その松岡正剛の回だというからそりゃ見るよね。考えるとそら日本人をRethinkせよで松岡正剛出なけりゃウソだ。

松岡正剛どんなやつかはこの動画見てもらうのが早い↓

要するにすごい本を読む人なのだ。それで「本の読み方」みたいな本も書くものだから、私のような文学部の学生は「そうかこんなふうに古今の名著を読んで読んで読みまくるものなのだな!」と感動したり影響受けたり真似してみたりする。

だが松岡正剛も歳を取った。聞いた一の単語から十の単語を瞬時に連想して、そのうち良さそうな四つくらいを(意外な取り合わせで)ズラズラ~と並べておッと言わせるというのがこの人の芸風だが、その鍛えた芸もいい加減ハナにつく。使いどころを選べてないのだ。あまりに使い放題にワザを使ってしまっているのは、やはり……緩んでしまったのだろう。悪い意味の老境だ。聞いていられず、途中で視聴を止した。

突っ込み不在ぶりといい、佐々木さん大変だなーと思わず同情してしまう点といい、ブロガー堀本見の「【サバの話だったの?】WEEKLY OCHIAIというコント、あるいは地獄について。」を想起せずにはいられない。

【岩井】新R25チャンネル|ハライチ岩井の「つきぬけた瞬間」

新R25よく見てしまう。意識高い系だろうか私は。ハライチ岩井という人をはじめて知った。こういう形で芸人を知ることが多い(もともと全然知らんので)。

なかなか面白そうな人だと思った。「尖ってる」て感じだ。殴り合いでは瞬殺されるが、俺を瞬殺した時点でお前は負けだよ、と爆肉とは違う次元で勝負してる感じが、私らモヤシ系文学青年くずれのホープっていうか。もっとも、普通こういうスタイルは20代前半くらいで(いわゆる「社会に出る」とともに)卒業するものだが。

何しろいつもの新R25のゲストとは異質な感じだった。不承不承参加してるかのアティチュード。この斜めの構えからの方が鋭角なツッコミ・批判・毒舌が繰り出しやすいのだと思う。座談でふつう相槌うつところをあえて溜めて、かわりに次に出す言葉の切っ先を研いでる感じ。(私の好きな)中田敦彦なんかは相槌を打ちながら同時に内幕では次の言葉を研いでいるようなところがあって、その差の分、中田は人当たりよい感じ・岩井はコワイ感じだ。「感じだ」が多いな私。明言する勇気がないのだ。

危ういといえば危うい芸風ではある。たとえばコンビの片割れ(ハライチ澤部という人)のことを「家買えるくらい稼いでることはなんとなく皆に知ってもらいたいけど実際家買ったとか言うと何様だと叩かれそうだから皆黙っててほしい、だなんて気持ち悪い」とか言って批判する。岩井のこういう言葉に喝采を送りたくなる反応もわかる。そういうことをあえて指摘する人はたしかに多くないから、ちょっと見「真実を衝く人」に見えるのだ。でもよく考えるとその澤部氏のアンビバレントな情動も全然人間的に理解可能だし、何一つ実は気持ち悪くなんかないし、それもまた人間の一面の真実である。その観点からは岩井の方が虚仮だ。「多くの人があえて口にしない」ことには何かしら理由があるのだ。鋭いだけで包括性のない芸が長く続くだろうか。

【岩井】テレビ朝日公式|ハライチ岩井が1番泣いたマンガ

先の動画でハライチ岩井という人に興味を持って、「ハライチ岩井」で調べてでてきたやつを少し見た。マンガ語り。相方のこの声のやさしい女性は声優だそうだ。こういう声の人ってロシア人(ウクライナ人)にはあんまりいない気がする。街で聞こえたらおっと思うだろうな。

こういう番組に出るということは、岩井という人は漫画に詳しい・漫画が大好きなことで知られた人なのだろうか。それはともかく、岩井が人生で一番「泣いた」漫画は「最終兵器彼女」なんだそうだ。最終兵器彼女、好きな人は好きだよねー!

かくいう私もだ。高校1年、人生最初に読んだ「大人のマンガ」がこの最終兵器彼女だった。露骨な性描写もさることながら、心理描写。心理的な葛藤。この水準の描きはやっぱジャンプにはない。その意味で「大人の」。

でも私は「最終兵器彼女」で別に号泣はしなかった。岩井は何をそんな泣いたか? 興味深い。この語りでは正直分かりきらなかった(岩井自身語り得ていない)(それこそ人間一人の涙の理由について「真実を衝く」ことは容易なわざでない)(その真実を衝くためにはやはり鋭さだけでなく包括的な人間理解が必要なのだ――澤部の「見せながら隠す」も人間のひとつの自然として許容するような)

好き嫌いあるラストだと思うが、岩井はごく肯定的に評価してる。この終わり方で泣くというのは結構特殊な精神構造だと思う。人間ひとり、何でこれに号泣するのか。興味がある。

【文学】水道橋博士の異常な対談|猪瀬直樹

水道橋博士と猪瀬直樹の対談。どちらもすごく興味があるわけではないが水道橋博士に若干の興味猪瀬直樹に僅かな興味村上春樹にそこそこの興味カズオイシグロに微弱な興味、の4種合わせ技で「見る」→見た。

何しろこの傲岸なノンフィクション作家によると時代状況への位置づけなしに私的ドラマばかり描く村上春樹を筆頭とした現代日本文学は貧困で、「公(おおやけ)」との対比や相対化や複層化のある世界文学たとえばカズオイシグロは優れているのだそうだ。全然まったく同意しない。カズオイシグロ結構だが、そういう猪瀬直樹のビブリオグラフィーには1ミリも食指が動かない。城山三郎のいわゆる経済小説など昔(読むものに困って)読んだがこんなの文学でも何でもないと思った。

要するに文学観もそれぞれだ。むしろ最も私的なことのみを専一に鮮烈に描いた作品の系譜こそ文学の黄金の水脈だと思っている←こういう読者もいる。ある人の言った「天下国家のこと等の些事」という言い方が私の気に入る。

【映画】米粒写経×松崎健夫 映画談話室

たぶんぼくのYouTubeレビュー最多登場の「米粒写経の談話室」、最初こいつ誰やねん居島を聞きたいんじゃ居島の尺とるな居島に喋らせろ、と思っていた映画評論家の松崎健夫氏、回を重ねるごと好きになり、今や語り口、言葉選び、声ぜんぶ好き。やさしくて温もりあって知的。あと何だろう、映画観が好き。映画には情念が映りこむという。今回取り上げの「アナザーラウンド」ラストでもまさにそれが起こっていると。

この「アナザーラウンド」絶対おもしろい。すごく見たくなった。だが中途半端な前知識を得てしまったせいで没入が妨げられそう。もちろんここで語られてるような鋭い読み取り・深い分析に観劇しながら私が到達するなど絶対起こりそうにない。正直、居島やタツオのレベルでもこれだけ語れるというのは驚嘆ものなのだが、やはり松崎健夫氏、プロの評家の手さばきのなんと鮮やかなことよ。

タケオが先陣切って7割語って居島・タツオが好き勝手喋って最後にまたタケオが〆る、なんかもう3人組なんじゃないかってくらいしっくりくる。談話室はむしろ後半が楽しみになってきた。

【音楽】Kazero|Thaï na na

みのミュージックでみのさんが紹介していた「ヘンな曲」。ヘンなものと思って聞くとそれほどヘンでなく思ったより曲だった。だがヘンではなるほどありそうだ。もっとヘンなんじゃないか一度自分が思ったよりも、と思ってもう一回聞いてみた。やはりそれほどヘンでなく感じた。だがまたしばらくして、実はもっとヘンなんじゃなかろうか本当はと思って、この数日で俺も成長したし変化したし、もう少しあの曲の本当のヘンさがそろそろ分かる頃合なのじゃないかと思って三度目に聞いた。「ヘンな曲」だった。という次第で今週この曲三回聞いた。

【音楽】トーマスの曲の転調が多すぎて明らかに子供向けではない件

先週のYouTubeレビューで取り上げたが、最近トーマスをよく聞いている。子供の日本語強化の目的で、子供が気に入ったらしい「トーマスがゴードンをからかってゴードンに仕返しされた話」つまり長寿シリーズの記念すべき第1回を、求められるとちょいちょい再生して、聞かせてやっている。今日も聞かせた。

そんでそのトーマスのテーマ曲が、音楽に詳しい人に言わせると、すごい「転調」が多くて、「明らかに子供向けではない」のだそうだ。転調と言われてもよくわからん(いや、その何たるかはなんとなくわかるが、どの瞬間にそれが起きているかは)。指摘されて改めて聞いてもそれほどごっつり転調ばかりしてる曲にも聞こえない。ふつうに愛らしい曲て感じだが。

んで音楽的に高度だから「子供向けではない」という論法もどうだろうな。先からの観察だが「子供向けには単純で分かりやすいものを」と日本人は努めすぎるきらいがある。知能についても感性についても。もう少し水で薄めず芸術を鑑賞させていいと思うのだが。

なお「子供向けアニメのヘンなオープニングテーマ」というと私的にはソビエト版くまのプーさん。

このチェンバロか何かの不穏でタイミングのとれない音がプーの偏頗な感性世界を象徴してる。

【旅】the Luxury Travel Expert|CALILO, GREECE

いいチャンネル見つけた。このLuxury Travel Expertというのは「ラグジュアリー」に特化した宿泊施設/旅行オプションの紹介チャンネルらしい。ちょいちょい同じ娘ちゃんらが映りこむのでたぶん家族で旅してるんだろな。家族の休暇がパパ氏の仕事というわけだ。

上掲動画はギリシャ・サントリーニ島の「CALILO」というリゾートホテルの紹介。サムネはスイートルームの一部なのだが、なんという空間づくりだろう! この水わたりの回廊で3つの寝室が結ばれていて、そのそれぞれにジャグジーがあるのだ。

内装も凝りに凝っている。「ガウディのような何のような」と動画でも言われてるが、エントランス~食道・プール~居室に至るまでデコレーションがコテコテ。それは悪い意味じゃなくて、南欧の陽光・白い壁・青い海の中ではこれも全然アリだ。

↑42分~天使がいます。

にしてもギリシャの、エーゲ海の、なんと青く透明なこと。(オデッサの海と浜のなんと汚ねえこと…。)サントリーニは私もかつて訪れた。わたしはあのうみがなつかしい。

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