続・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ

オデッサ/ウクライナ/ロシア

オデッサに関する露語・ウ語メディア報道をキュレーション、3月まで2年半住んでた感覚とか知見とかも加味してお届けする。基本的に毎日更新。※この記事の更新は9月22日付けで止まっています。9月23日以降のことは続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめでお届けしています

必ず見てるのは①オデッサ市公式テレグラム(略号「T」)②地元紙オデッサライフ(Одесская Жизнь、略号「ОЖ」)③ウクラインスカヤ・プラヴダ(Украинская Правда、略号「УП」)④メドゥーザ(Медуза)⑤タス(Тасс)⑥NHK、あとは適宜。

  1. 9月22日(反抗、闘争、流亡)
  2. 9月21日(動員)
  3. 9月20日(さわがしい一日)
  4. 9月19日(ブジ)
  5. 9月18日(エカテリーナ像が撤去されるべきものであることを認めます)
  6. 9月17日(無事)
  7. 9月16日(無事/像/織る)
  8. 9月15日(無事/像)
  9. 9月14日(無事(とは))
  10. 9月13日(エカちゃんのはなし)
  11. 9月12日(受難のエカテリーナ像)
  12. 9月11日(200日/カディロフ/戦時下の芸術)
  13. 9月10日(横浜/ニコラエフ/チャールズ/カール/カルル/シャルル)
  14. 9月9日(オデッサ無事)
  15. 9月8日(無事)
  16. 9月7日(無事)
  17. 9月6日(エカ像/湖/酔漢車上射撃)
  18. 9月5日(地図/ヘルソン/ヴェネツィア)
  19. 9月4日(サッカー/世界遺産)
  20. 9月3日(市歌のウクライナ語化/たたかう猫)
  21. 9月2日(誕生日おめでとう、オデッサ)
  22. 9月1日(秋の最初の日)
  23. 8月31日(夏の最後の日)
  24. 8月30日(ヘルソン/クリミア/文化遺産)
  25. 8月29日(南部奪還へ)
  26. 8月28日(掃海/映画祭/猫)
  27. 8月27日(子供/シェルター/船乗り)
  28. 8月26日(ねこ/脱共産化/世界遺産)
  29. 8月25日(結婚/投票/案外無能)
  30. 8月24日(独立記念日/半年)
  31. 8月23日(国旗の日/クリミアプラットフォーム)
  32. 8月22日(鉄道)
  33. 8月21日(5発/独立記念日の前祝い)
  34. 8月20日(クリミア/ゼレンスキー/子供たち)
  35. 8月19日(国連事務総長オデッサ訪問)
  36. 8月18日(国連トルコ宇/エカテリーナ女帝像/SNS)
  37. 8月17日(8月はじめての被弾)
  38. 8月16日(クリミアどうなってる/ゼレンスキーなぜ侵攻予告しなかった)
  39. 8月15日(あと何人死ねば/一体なにがこの畜生どもをして)
  40. 8月14日(静穏/散華)
  41. 8月13日(無事)
  42. 8月12日(いつもの話題)
  43. 8月11日(マクドナルド)
  44. 8月10日(クリミア)
  45. 8月9日(無事/クリミア)
  46. 8月8日(ニコラエフ/橋/DX相談)
  47. 8月7日(無事/浜)
  48. 8月6日(無事)
  49. 8月5日(穀物船/アムネスティ/ニコラエフ閉鎖)
  50. 8月4日(検察官/ゴーゴリとブルガーコフ)
  51. 8月3日(スパイ/赤紙/横浜)
  52. 8月2日(対敵協力者/世論調査/請願)
  53. 8月1日(鎌月/出航)
  54. 7月31日(弾/ニコラエフ/海)
  55. 7月30日(無事)
  56. 7月29日(ゼレンスキー来オ)
  57. 7月28日(5人目)
  58. 7月27日(ヘルソン)
  59. 7月26日(ザトーカ)
  60. 7月25日(無事)
  61. 7月24日(鉄面皮)
  62. 7月23日(港)
  63. 7月22日(穀物輸出)
  64. 7月21日(無事)
  65. 7月20日(決別/蛇猫/害虫駆除)
  66. 7月19日(ダーチノエ)
  67. 7月18日(橋/密告奨励/オフシャニコワ)
  68. 7月17日(矛盾と分断とミスコンとヴェネツィア)
  69. 7月16日(1発)
  70. 7月15日(浜の散華pt.3/道路名称の脱ロシア化/ロシア世界の伝道者)
  71. 7月14日(ヴィニツァ/ヘルソン/I ♡)
  72. 7月13日(焼豚/女帝/横浜/トルコ)
  73. 7月12日(何丘@疲労)
  74. 7月11日(ミサイル/ミサイルを招く人)
  75. 7月10日(小休止?/解放/女王/読書)
  76. 7月9日(穀物輸送/柔道/ロシア語教育/浜)
  77. 7月8日(以後はこちらの動画でお楽しみください)
  78. 7月7日(ミサイル/善意/本気出してない)
  79. 7月6日(無事/逝ってよし記念硬貨)
  80. 7月5日(浜/露プロと文セクと何マニ)
  81. 7月4日(無事/児戯)
  82. 7月3日(浜/蛇島/世界遺産)
  83. 7月2日(喪/また爆死)
  84. 7月1日(喪)
  85. 6月30日(悪魔的攻撃/蛇島解放/ビーチ事情)

9月22日(反抗、闘争、流亡)

ロシアの公式的な発表では動員は部分的なものであり対象は軍務経験者を中心に30万人止まりということになっているが(プーチン、ショイグ)、内実はもっとずっとひどい、ほとんど総動員に近いものである可能性がある。プーチンの動員令は秘密条項(第7条)を持っており、発表されたものでは第6条から第8条へ飛んでいるが、ペスコフによれば秘密条項にはまさに動員の規模が記されており、ノーヴァヤ・ガゼータが大統領府内の情報として伝えたところでは、そこには「動員の規模は最大100万人」と記されているとかだ(Meduza

モスクワで軍務経験皆無の若いITエンジニアに召集令状が出され本人がSNSで告発したところ「SNS上の反響に鑑み」召集が取り消される、というグダグダな一幕もあった(Meduza

(素人の言うことですよ:)私はロシア軍が30万人でなく100万人増強することで戦場のウクライナ軍にとっての脅威がそれだけ大きくなる、というふうには考えない。動員反対の抗議行動で拘束された市民に召集令状が出されているという(Meduza)、そんなふうにして駆り出されたにわか兵士に何ができる?いわゆるпушечное мясо(肉弾)(弾肉?)になるだけだ。それより、これが部分動員という名の総動員であることが、ロシアの反体制メディアでSNSで、どんどん強調され、拡散されていってほしい。Meduzaも今その方向で最大火力を発揮してる観があるが、ここが独立系メディアのがんばりどころだ。騒げ。乱れろ。

ゼレンスキー、ロシア語で語りかけ

Війна проти України зайшла в кожен російський дім. Звернення Володимира Зеленського 22.09.2022

ゼレンスキーが定例のビデオメッセージでロシア国民に対しロシア語で語りかけた。ロシア語部分(ほぼ)全訳す。

「いま何が起こりつつあるのかを、ロシアの皆さんに、ロシア語で説明する。ロシアの諸都市で動員に反対する抗議活動が行われている。モスクワやペテルブルグだけでない。ダゲスタンでもブリヤートでも、ロシア各地の共和国・州で。人々は理解したのだ、自分たちは捨てられるのだと。死地へと捨てられるのだと。だがどうして、たとえばダゲスタンの人が、ハリコフだのドネツクだので死ななければならないのか? 理由は簡単だ、ひとりの男がそう決めたからだ。他に理由はない。彼がそう望んだ、それだけだ。

だが、ウクライナ人に対して行われたあらゆる犯罪、殺人、拷問に関しては、皆さん自身も共犯者なのだ。皆さんは沈黙したのだから。沈黙しているのだから。

そうして今、皆さんは、選択のときを迎えている。男たちにとってはこういう選択だ:死ぬか、生きるか。障害者となるか、健康を保つか。女たちにとってはこういう選択になる:夫を、息子たちを、孫たちを、永遠に失うか、それとも、死から、戦争から、ひとりの男から、彼らを守るべく努めるか。考えてもみてほしい、今いったいどれだけの人間が駆り出されようとしているか。30万人分の召集令状などは動員に関する今次の決定が明らかになる前にあらかじめ印刷され、署名されている。当方の諜報機関が証明済みだ。ロシア指導部がいま軍隊に駆り集めようとしているのは、最大100万人の男たちである。予備役だけでない、男たち全員を、連中は見境なく駆り出すつもりだ。

すでにこの半年、戦争で、ロシア兵5万5000人が死亡した。さらに万単位の人が負傷し、障害を負った。その数をもっと増やしたいか?

それがいやなら、抗議せよ。闘争せよ。あるいは逃げろ、投稿して捕虜となれ。これが皆さん方が生き延びるみちだ。

ロシアの母親たちよ。信じてほしい、皆さんの国の上層部は、自分の子供たちを戦場には送らない。皆さんの国で決定権をもっている連中は、自分の子供たちだけは大切にする。だが皆さんの子供たちのためには葬式も行わない」

フィンランドとドイツの対応

昨日の続き。フィンランドは当面、徴兵忌避のロシア人の入国を認めることを決めた(УП)。ドイツはやはりロシア人の徴兵難民を保護する旨、内務大臣声明(Meduza)。

この半年あまり強権的警察国家の内部でじっと耐え続けてきた静かなる反戦市民と、ZのTシャツをインナーに着てくる奴は、区別できない。等しく避難民として保護を受ける。後者(Z)はこの半年あまり、特殊軍事作戦は正義の作戦であり、ウクライナはナチズムから解放されるべきであると信じて、自身を中心とする小半径の人間関係に国営テレビのこだまを返し、もってプーチンの戦争を支えていたかも知れない。それが自分自身が徴兵され戦地に送られるのだけはご勘弁と、本格的に国境封鎖される前にとんずらこいた。だがそうであるか否かを問わず、ドイツは保護を与える。隣のラーゲリにはウクライナからの避難民がいる。同じ言語を話している。

寛容と憎悪のすさまじい角逐が世界各地で演じられるのだろう。ニュースにもならない、人間ひとりの内心で完結するものも含めて。とりあえず今は、(矛盾して聞こえるかもしれないが)、いちはやく国としての態度を鮮明にし寛容にアクセルを踏み切ったドイツに賛辞を送りたい。この国にはつくづく畏敬の念を覚える。私の夢想する新世界では、ドイツがロシアにかわって国連安保理常任理事会の円卓を囲んでいる。

なお、チェコとラトヴィア、エストニアは徴兵忌避のロシア人に人道ビザは発給しない方針である(УП)。これを軽々に非難することもまたできない。リトアニア大統領はロシア国民に対し「この不正、不法、絶望的な戦争への強制参加に対し反抗するよう」、つまり政権への抗議を呼びかけている(УП)。なるほど政権打倒の内圧が高まるためには徴兵を嫌悪し恐怖し、国外に出たいが出られない市民が多い方がいい。あえて今ロシア人を国外に逃がさないことでウクライナにおける人道災害が早期に終結する可能性が少しでも高まるならば……どうするのがより「人道的」であろうか。

ブルガーコフ文学は守るべきウクライナ文化か

オデッサでエカテリーナ二世像撤去の是非が議論されているそのころ、キエフでは20世紀ロシア語文学を代表する作家であるミハイル・ブルガーコフ(キエフ生まれ)のミュージアムを閉館すべきか否か議論になっている。ブルガーコフはなるほどキエフ生まれであり反ソビエトであるが、それは帝政ロシアを懐かしむ立場からの反ソビエトであり、むしろソビエト化にともなうウクライナ的なものの伸長には否定的で、作品の中にも反ウクライナ的な言説が散見されるという。УПに詳しい論考、興味ある方どぞ。

ボルシチはロシア料理かウクライナ料理かとか、ゴーゴリはウクライナの作家かロシアの作家かとか、ブルガーコフはとか、私の夢想する新世界ではそんな論争はもう起こらない。国境線は確定して恒久無変更であるべきだ(そしてウクライナの国境線にはクリミアもドンバスも入ってる!)が、国境線の内側に文化を囲い込む・あるいはその外側へと文化だの言語だのを放逐するという理念は、もうロシアにもウクライナにも放棄されている。ロシアとウクライナはともに「私たちの郷土料理」としてボルシチをおいしくすする、「私たちの文学」としてゴーゴリを読みブルガーコフを読む。

この記事もう更新85日でだいぶ長くなり重たくなり作業効率悪くなってきたので(読者の方でも読み込み遅くなってるかもしれません)、いったんここで終わりにして、第3の記事を立てます。
第3の記事がそう長いものにならないことを願っています。「オデッサに平和の鐘が鳴るその日まで今自分の肉体はそこにないオデッサに情報と情動を同期しつづけるための」記事です。本来自分は戦争の話なんかしたくない、平和を愛する文学徒です。

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9月21日(動員)

ロシアの自壊が始まったのだと思いたい。こうなることを願っていた。

プーチンが「部分的」「予備役のみを対象とする」動員をかけたが、社会的なインパクトは十分であった。

①国外脱出
朝方のプーチン声明のあとロシア人の国外脱出のための航空券確保の動きが爆発し、トルコ、アルメニア、アゼルバイジャン、ウズベキスタンといった近い外国への直行便が売り切れ続出となった(Meduza)。お隣のフィンランドにも徴兵適齢のロシア人男性の大規模な人流が発生して、フィンランド側がロシア人の渡航を制限する動きに出た(УПУП)。フィンランド側は制限の根拠として「ウクライナに対してロシアが戦争を行っているときにそのロシアの国民が旅行でフィンランドその他欧州諸国を訪れていつも通りの休暇を楽しむなど道義が許さない」とEUによるロシ人向けビザ制限のときによく聞いたレトリックを繰り返したようだが(上掲記事)、動員を理由とした一種の亡命であることを考えるとこれは微妙だ。ドイツでは逆にロシアからの避難民を保護してはという話が出ている由(УП

②抗議運動
ロシア全土で抗議運動が起こり、早や1400人が逮捕された(Meduza←写真、動画多数)。

③社会と政権の亀裂
「部分的」動員というが、対象がどの範囲なのか必ずしも明らかでない。もしかしたら限りなく総動員に近い動員なのかもしれない(Meduza)というなかで、すでに召集令状の発効が大規模に始まっている(Meduza)。
そんな中で、どうして国会議員は徴兵の対象となっていないのか、について、ある与党議員が議場で「前線に行く、というのは一番簡単な決断だ(уйти на фронт — самое легкое решение)」と発言した(Meduza)。文脈を見ると実はわりともっともなことを言っているのだが、この部分だけ切り取られてSNS等で拡散されたときに、国民がどう思うか。
また、某反体制メディアが生放送でプーチンの最側近であるペスコフ大統領報道官の息子に電話をかけ、徴兵当局者を装って「明日の十時に軍事委員会に出頭せよ」と命じたところ、息子氏は「行かない。私はペスコフの息子だ。私の問題は別の次元で決定される」とのたまった(Meduza動画8:10~)。これなども「安全な場所にいる特権階級と、戦争に参加させられる市民」という観念を補強する。

↑ペスコフとペスコフJr(УП

正直、①と②のニュースに接して、改めてロシアの一般市民に対する怒りを感じた。いま気づいたのだろうか。とっくに戦争なんですが。あなたたちの戦争ですぐ隣の国の何千万人の生活がめちゃめちゃに破壊されたんですが。累が自分に及ぶと知ってはじめてばたばた動き始めるわけか。逃げてく人へ:皆さんは美食家プーチンの人肉食を容認してきたじゃないですか。でも自分が食べられるのは嫌なんですか(ご都合のよろしいこと!)抗議してる人へ:Нет мобилизации(動員に否を)じゃねえよ。Нет войне(戦争に否を)だろうがよ!

とはいうものの、何でもいい、どんな力がそれをするのでもいいから、ロシア軍によるこれ以上の破壊と殺人を不可能にしてほしい。騒げ、乱れろ。私は今次の動員を歓迎する。

カリカチュア

ユーモアの街オデッサのローカルメディアОЖがさっそく動員ネタのミーム画像集を出した。

↑「ロシアが世界を征服する」というプラカードを掲げたZ戦士が軍事委員会から召集令状を渡されるや「ロシアはもう沢山」「平和ばんざい」をさけぶ平和主義者に。

↑「見たい?じゃじゃーん! ハダカだと思った?ざんねん、召集令状でしたー!」

エカ像の撤去めぐるオンライン投票スタート

エカテリーナ女帝像の撤去の是非を問うオンライン投票がスタートした。18歳以上のオデッサ市民(オデッサに住民登録してる人)誰でも投票できる。次の7つから選ぶ。

・帝国主義的記号を記念碑から撤去する
・エカテリーナ2世の像だけ記念碑から撤去する
・記念碑を完全に撤去する
・終戦まで記念碑の去就の問題の解決を延期する
・記念碑は現在の場所にそのまま残す
・記念碑は現在の場所に残すが、エカテリーナ2世の事跡についての案内板を併設する
・記念碑を残し、かつ、特別な記念公園ないし博物館に移設する

先のオンライン協議を受け「撤去する(демонтировать)」と「残す(сохранить)」という動詞を含む選択肢が同数になるよう配慮したものと見えるが最後の項目は「撤去」と何が違うのだろうか。そもそも撤去派は「像は今の場所から撤去するが何も破壊するわけではなくミュージアムの所蔵品にする」ということを言っていたと思うのだが。

何しろ来月20日まで投票を受け付けて、その結果をもとに最終的な判断は市議会が下す。だがさすがに、投票で明らかに多くの票が一つの選択肢に集まったなら、市議会としてもその通りにせざるを得ないだろう。22日12時(日本時間)時点では「完全な撤去」が2236票、「案内板を併設したうえで存置」が1551で2トップ。撤去派と存置派(最後の選択肢は撤去派に数える)で二分すると、撤去2487:存置1943となっている。ОЖ投票ページ

【9/23補記】
エカテリーナ二世像、正式には「創建者たちに捧げられた」記念碑↓

この記念碑(全体)から、トップに立ってるエカテリーナだけ撤去するのか、それとも台座の部分から丸ごと撤去するのか、みたいなことで選択肢が分かれています。

9月20日(さわがしい一日)

なんとも騒がしい一日だった。だがオデッサは無事。

住民投票

ロシアが占領しているウクライナの東南部4州(ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザパロージエ)で「ロシア連邦への編入の是非を問う住民投票」が23~27日の日程で行われる。УП

「ロシアが占領している」とはいうが、その占領は第一に領域的に完全なものではなく、第二にウクライナ側の反攻でガリガリ削り取られている、だもんでかねて言われていた住民投票は当分できないだろうと見られていた中での強行である。

ウクライナ側は「住民投票とやらが行われようと関係ない、解放作戦を続行する」(ウ大統領府長官УП、外相УП、ゼレンスキーУП)。米国防総省は「そもそもウクライナの反攻にあって戦況不利であることから衆目を逸らさせるための情報工作に過ぎないのでは」УП

天下御免でこれほどの悪逆非道を行いながら今さら「住民の自由意志の発露による編入の求めに応じて編入します」という小さな正義にこだわる奇怪さ。隣国に一朝軍事侵攻しその領土を占領し挙句私物化するという明々白々たる野蛮と、みみっちき形式的正当性演出の、あわれなキメラ、ロシア。もちろん我々は認めない。無意味でしかない。猿芝居。「事がこれほど悲劇的でなければ、滑稽なことであった」とマクロンも言うてる(Meduza

動員

ロシアがいよいよ動員をかけるのではないか、という話もいよいよかまびすしい。経緯:ロシアはこれまで今ウクライナで行われていることは特殊軍事作戦であって戦争ではない、とし、ウクライナのような総動員態勢は敷いてこなかった。ゆえに兵員数だけ見ればウクライナがロシアを圧倒的に上回っているという状況が長く続いており、ロシアが戦況の膠着ないし悪化を克服するためには動員をかけて兵員数を増大させることが不可欠と見られていた。ではなんで動員をかけなかったかといえば、それをするとロシア国民にとって「ウクライナ問題」ががぜん我が事になってしまう、「外国で職業軍人が行っている作戦」などという遠い話ではなくて、リアルに家庭の夫が、兄が、父が、自分が、戦争とふだん何の関係もない仕事をしている、戦争と一切無縁の人生を送ってきたのに、ある日軍隊にとられて、ウクライナに送られて、死体となって帰ってくる、ということがあり得る。あるいは移動・越境の自由という憲法上の権利が抑制されて、今まさにウクライナで行われているように、徴兵適齢の男性に対する国境封鎖ということが行われ、ビジネスまたは観光または親類詣でで外国に行けなくなるかもしれない。そうなったときに、今の83%というプーチン支持率、76%という軍事作戦支持率(Levada8月)が、大きく傾くかもしれない。市民はけっきょく自らの生活が第一なのだから。……ということで戦争宣言および動員は長く政権の抜かずの宝刀となっていた。

それがこのほどロシア議会下院で刑法典が改正され「戦時(военное время)」「動員(мобилизация)」に関する規定が盛り込まれた。УП

また、これに関してプーチンの演説が20日中に行われるという報道がロシア側のプロパガンダメディアでなされ注目が集まったが、結局行われなかった(УП)。しかしこれを受けてすわ戦争宣言か動員かと、Googleで「Как уехать из России(ロシアから逃げだす方法)」というキーワードでの検索が爆増したという(УП)。誰も戦争になど行きたくない、殺したり壊したり、殺されたり壊されたりしたくないのだ。誰かがそれをしているということなら黙過もできた。だが自分がそれをするというなら話は全然ちがってくる。

ロシアの世論が大きく動く。戦争の帰趨を決するのはウクライナに西側兵器がどの質・量で供給されるかだ、というような語り方があるが、私は戦争を終わらせるのはロシア人自身でしかありえないと思っている。

世論調査(ウクライナのEU、NATO加盟をめぐる)

キエフ国際社会学研究所および国立民主主義研究所が8月初旬に行った調査によれば、2030年までにウクライナがEUに加盟することを望むと答えた人は92%(5月時点では90%、昨年12月時点では58%)。実際に2030年までにウクライナのEU加盟が成ると考える人は85%(5月87%)。

2030年までにウクライナがNATOに加盟することを望むと答えた人は79%(5月時点では73%、昨年12月時点では48%)。実際に2030年までにウクライナのNATO加盟が成ると考える人は69%(5月65%)。УП

エカ像をめぐるオンライン協議

市民1110人が参加といわれていたが実際に参加したのは470人だった。そんだけ参加したなら、そして参加者はみな一家言あったろうから仕方もないか、協議は12:00~18:00の長丁場となった。

【撤去反対派の論拠】
・歴史は不変であり書き換えは許されない、大切に守らなければならない
・戦争で多くのオデッサ市民が市外に流亡しこうした議論の存在をそもそも知らない、今ここに残っている者だけで決めていいことではない
・記念碑はウクライナの文化遺産の一部であり、毀損してはならない。そんなことをすればそれこそロシア人と同類になってしまう
・エカテリーナ女帝像を撤去するなら論理一貫性のためには女帝が創ったこのオデッサの街全体を破壊しなければならなくなる
・エカテリーナは今のロシアの戦争とは関係ない
・落書きとかする奴らから像を守るための柵を設けた上で像は存置すべきだ

【撤去賛成派の論拠】
・像は文化財としての価値よりも帝国という現象への拝跪の象徴、帝国による植民地支配のイコンという意味合いが勝っている
・市の中心部にロシア皇帝の像が立ち観光名所化している状況は不適切である
・エカテリーナはザポロージエ・セーチ(コサック共同体)を滅ぼし人々を農奴化した張本人
・像を撤去し美術館に収蔵したとてそれが歴史の書き換えることになどならない
・ロシアとウクライナが「共通した歴史と文化をもつ」ことは現にロシアが攻撃を行う口実として利用されている

これを受けて9/20~10/20の日程で世論調査という名の住民投票が行われるはずであったが開始が遅れている。何しろ撤去はすなわち破壊を意味するのでなく、基本的にはミュージアムへの移設となる。調査(投票)で問われるのは単純に撤去に賛成か反対かでなく、撤去するのがエカテリーナ像のみなのか、それとも台座の部分にいる4人の寵臣(デリバス、デヴォラン、ポチョムキン、ズーボフ)まで撤去するのか、エカテリーナのかわりに誰か別の人を立てるのか、など、いくつかの項目から選択できるようになる見込み。ОЖ

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9月19日(ブジ)

無事。

エカ像をめぐるオンライン協議

エカ像をめぐるオンライン協議(zoom)が開かれた。市民1110人が参加。男女はほぼ半々。現時点で詳報がないのであり次第更新す。ОЖ

追って9/20~10/20の日程で住民投票てか世論調査が行われる。その結果を受けて最終的に市議会が撤去の是非を決める。

昨日書いた通り私はエカテリーナ像の撤去に賛成である。エカテリーナへの歴史的評価とは何の関係もない。ただこの間に、文明的に撤去しなければ暴力的に破壊する勢の存在が明らかに証明されたので、撤去はやむなしと思うにいたったまでである。

歴史的な評価だけで話をしていいなら、私は撤去に反対である。ウクライナ国粋的な観点からはコサック共同体の破壊とか農奴制の導入とか「ウクライナの地においてウクライナのよきものを滅ぼしロシアの悪しきものをもたらした」悪王ということになるのであろうが、ことこのオデッサの建市については、エカテリーナ女帝の存在は決定的であった。地域の特性・特異性を認めない浄化された国というのはとても住み心地がよく、またとても住み心地が悪い。エカテリーナが拓きロシア語を話す人々の暮らすウクライナの街オデッサ、そして、そのようなオデッサを擁するウクライナという国。それで全然いいと思う。なんて私とかが言っても仕方がないが。

疎開の人々

19日時点でオデッサには4万2862人の国内難民が住民登録してるらしい。登録してない人も大勢いるだろう、先に10万人といわれてたのはそれを含めて10万ということだろうか。T

マーシャ・セボワ

ひところよく見ていた旅行系YouTuberのマーシャ・セボワの存在をふいに思い出して、チャンネル覗いてみたら、3月4日付けで「お話したいことがあります」と題する短い動画が上がっており、ロシアおよびベラルーシの視聴者に対し、黙過は即ち容認であると、自分はオデッサのロシア語話者であるが「ナチスからの解放」など全く必要としていないと、これは特殊作戦などではなく戦争であって、街が爆撃され、平和な市民が殺害されているのだと、切々と訴えていた。画面を直視できず声だけ聞いてたがそれでも嗚咽を禁じ得なかった。

НАМ НАДО ПОГОВОРИТЬ

動画でマーシャは「人生ではじめてロシア人と何か共通したものを持つことに吐き気を覚える」といって、以後のコンテンツではロシア語使用をやめ、ウクライナ語で話している。

前にも言ったがロシアのプロパガンダマシーンは国営テレビに始まり無数のマイクロインフルエンサーの共鳴・反射によって完結する。よくプーチン支持率はテレビ視聴層である中高年層を中心に高いと言われるがテレビを全く見ない若年層もバカにならない割合で支持している、それは何故か。彼ら(若者)に対し影響力を有するミュージシャン、スポーツ選手、ブロガーらが政権放送の反射板として機能している、いわば「こだまを返している」からだ。それを中和する意味で、このマーシャのようなロシア国内にオーディエンスをもつ表現者・発信者によるカウンターインフルエンスは重要だ。日本人もできないか何か。ロシア人に影響力をもつ、あるいは単にロシア社会で好感を持って受け入れられている、誰か人、何か文化とかモノ、これが一斉にロシアを非難する。Never too late, 今からでも遅くない。巨象に矢を射るようなものだが、何千発となく放てば倒れることもあるのではないか。

9月18日(エカテリーナ像が撤去されるべきものであることを認めます)

無事。

今日も今日とてエカの話①落書き

エカテリーナ女帝像。赤ペンキで新たな落書き。台座のところに「Знести(撤去せよ)」と書かれた。ОЖ

②抗議集会

若者たちがエカテリーナ女帝像のところに集まり像の撤去を求めるプラカードを掲げて「ウクライナに栄光あれ」とかスローガンを叫んだ。ОЖ

③市長声明

像の撤去の是非については、19日に市議会および市民有志によるオンライン討論が行われ、その後、市民による一種の住民投票が行われる、という流れ。こうした予定を踏まえ、オデッサ市長が声明を出した。前半部では暴力的な意思表示(落書きとか)を戒めた。いわく、撤去賛成派の人も、民主的な手続きを踏むようにと。侵略者に対しては飽くまで文明的な抵抗を行おうと。これは自由と隷属、進歩と蒙昧、勇猛と怯懦、真実と虚偽、民主主義と独裁制および野蛮の間の戦いであるから……と。

後半部では像の撤去の是非について「自らの考え」を示した。「自分は歴史に対する選択的なアプローチに反対だ。自らの過去を改竄し忘却すれば将来において破滅的な過ちがもたらされる。その最良の例が現代ロシアだ。自らの歴史をさんざ書き換えた挙句、21世紀において『ファシズムに勝利した』国民が、今やその正式な継承者になってしまった」「歴史は書き換えるものではない、思考しなおすものだ」「オデッサに『帝政時代とソ連時代』公園が開かれ、そこにオデッサの歴史建造物の一部が移設されるべきと考える」T


こんなことになるとは夢にも思わなかった。2年半その街に暮らし土地の言葉もできないではない人間の「肌感覚」の当てにならなさ。私の人間関係の親露バイアスがいかに高かったか、あるいは、2月24日以降の潮目の変わり方がいかに烈しかったか。私自身は「偉大なるエカテリーナ」(ロシア語でよくそう呼ばれます)を偉大ともなんとも思わない。だが女帝が創建の母と目されていること、その像が市中心部に立っていること、その像が立つ場所がエカテリーナ広場と呼ばれ、そこから鉄道駅までプラタナス並木の美しいエカテリーナ通りが伸びていること、これらは否定しようのない不可分一体の、なんつうか、オデッサの「景観的事実」であると思っていた。ある街を愛することは大部分、その景観を愛することだ。私は赤ペンキで凌辱されたエカ像を見てた悲しむ。景観の損ないとして悲しむ。ロシアのミサイルによってそのように景観が損なわれないようにと願ってこそ、オデッサは市内各地の記念碑をぐるぐる巻きに覆っていたのではないか。「市創建の父」リシュリュー伯の像が土嚢で覆われてる様子↓

ロシアのミサイルによる破壊をせっかく免れた景観を、ヴァンダリズムによって自ら破壊している。これが世界文化遺産登録をめざす街の人のやることだろうか。いまや自分の願いは穏便な撤去、それだけだ。住民投票で撤去反対が多数になり、それを受けて市議会が「存置」の最終決定を下そうものなら、像にさらなるテロル、凌辱と破壊が加わることは必至。もはやエカテリーナ広場があるじ不在となることを疑わない。むしろそれを望む。

9月17日(無事)

オデッサ無事。9/17~10/1「ジャズの秋」、一連のコンサート。ОЖ

誕生日おおめでとう、ヘルソン

隣の隣のヘルソンが17日、244歳の誕生日を迎えた。オデッサに疎開してきてる40人がオペラ劇場前でお祝いの行事を催した。ОЖ

9月16日(無事/像/織る)

無事の話と像の話しかしない何丘ブログの戦争記事。16日未明オデッサに対し黒海からミサイル発射されるも海上で撃墜。無事。ОЖ

像の話(市長)

オデッサ市長がメディアの取材に応えるなかでエカテリーナ像撤去の是非について考えを問われ、次のように答えた。「戦争が行われている、ウクライナの市民が殺されている、それをやっているのがロシアの兵士たちである、という状況では、関係を見直さなければならない。ロシアはわが国への、またウクライナ人に対する、自らの態度を示した。我々は記念碑のことも見直す必要がある。とはいえ野蛮な方法による撤去には反対である。文明的に対処すべきだ」。名言は避けてるが、まぁ、穏便な形での撤去に賛成であるちゅうことになるよな。ОЖ

ちなみにオデッサっ子の心の歌であるウチョーソフ「黒海のほとりに」がウクライナ語訳されたことに関して同じインタビューで市長、わりと冷淡だった。「オデッサで歌い継がれてきた歌を原語からウクライナ語へ翻訳することには賛同できない。歌いたい人はウクライナ語でも歌ったらいい(だがそれを公式のものとすることには反対)。多くの人はシェイクスピアを原語で読むことを望んでいるのだ」「オデッサに生れ、この歌を聞き、また歌った人にとって、それを翻訳することなど困難だ。歌に何の罪がある?この種の事柄が自分には理解できない」ОЖ。ということでウチョーソフ「黒海のほとりに」どぞ。

Леонид Утесов "У Черного моря" (1955)


後衛のつとめ(掩蔽ネット)

オデッサの女性たちが軍の注文を受けてボランティアで掩蔽網を織ってるのだそうだ。これも後衛のつとめか。オデッサは8月9月とほぼノーダメージで市民も弛みまくっていて、以前は大量に集まっていた募金も今は全然集まらない、そんな中で、戦争はなお続いており被災地や軍への募金は依然として必要であるということを市民に思い出させるために、市の目抜き通りであるデリバーソフスカヤ通り(ホコテン、石畳)をその掩蔽網で覆い尽くすパフォーマンスを行った。ОЖ

掩蔽網、どう訳すのか知らない(маскировочная сетка、マスキングネット)、何しろこれでたとえば兵舎を覆うと敵の熱探知に引っ掛からず安全性が高まるのだそうだ。ハリコフ方面で使用するネット16単位を軍から注文されていて、いま14単位まで織り上げたそう。女性たち、その手はヴィシヴァンカを織るためにある。平和の空を一日も早く。

9月15日(無事/像)

無事。

エカテリーナ像とグレネードランチャー

エカテリーナ像前でまた別の活動家がロシア軍のグレネードランチャーと称するものを手にエカテリーナ像撤去を求めるビデオメッセージ(ウクライナ語)。ОЖ

この男性によればエカテリーナ像はロシアの資金でオデッサに作られた「ロシア世界」のマーカーである。そいつをロシアの兵器(俺がこの手に持っているグレネードランチャー)で破壊してやれたら象徴的だが、そうはいっても我々は文明社会の一員なので、合法的な撤去と、博物館への移送を求める。だそうだ。これから社会を巻き込んで議論をしますというときに、こんな火砲を誇示したパフォーマンスを行って、文明社会の一員もないもんだろう。なぜ奴らの「ロシア世界」とかいう妄想によってこちらが変わらねばならないのか。なぜ奴らの「ロシア世界」なる妄想世界に我々も生きなければならないのか。というのが何丘マニフェストの主張である。

9月14日(無事(とは))

オデッサ無事。オデッサに対してミサイルが発射されたが上空で撃ち落とした。対空防衛ちゃんと機能している。空襲警報は日に3度鳴り、ミサイル撃墜にともなう爆発音は家々の窓をふるわせた。各地の被害を見るに、ロシアは民生インフラの意図的破壊を加速している観がある。オデッサへのミサイルも、もし撃墜できていなければ、どのような恐ろしい被害をもたらしたかも知れない。……そういう「無事」だ。ОЖ

アンモニアパイプライン

ロシアのトリヤッチからオデッサ州某所へ肥料用のアンモニアを輸送するパイプラインが敷かれていて、2月24日までは稼働していたのだそうだ。しらなかった。えげつない距離、くさいものを送ってくれていたものだ。

このパイプラインを通じて送られた肥料用アンモニアをいま穀物輸出に使っているのと同じ港・同じルートで積み出して農業国に送り届けることで農産品価格の低減、世界食糧危機の緩和につながるのだそうで、国連がいまロシア・ウクライナ双方にパイプライン再稼働を求めている。УП

希望の話(はしない)

正直、タイムラインを眺めていると、疼きを禁じ得ない。反攻、奪還。ケツまくって逃げてく侵略者ども。ロシア国内世論の動揺(地方議会の局所的造反、SNSもざわついてるらし(УП)、今月末のLevada調査が楽しみだ)。アメリカの軍高官の「世界はロシア崩壊に備えるべきだ」とかいう発言も報じられてる(УП)。近づいてきているのではないか。こんな話をするのがそら恐ろしい感じがするのは何。


なにおかのWish☆List:①クリミア・ドンバスを含むウクライナ全土からのロシア兵の完全撤退②ウクライナにもたらされた損失のロシアによる完全賠償③プーチン政権の崩壊④露プロパガンダマシーンの崩壊⑤ロシアの国連安保理からの追放

9月13日(エカちゃんのはなし)

オデッサ無事。

なんでエカテリーナ女帝の像のことをメディアがこんなに詳しく取り上げ(オデッサローカルだけでなく全国メディアもロシア側のメディアもこの問題に無関心ではない)また私もこんな詳しく取り上げているのかといえば、その撤去の成否が、ウクライナ人……特に伝統的にロシア語話者が多くロシアとの関係が深く親ロシア的な世界観の人が多いとされるオデッサの人たち自身が、どのような歴史を正史とみなし、どのような世界観に生き、どのような関係をロシアと結ぶことを望むのか、を象徴的に示すことになるからだ。自明のことなのであまり言われないがクリミアの後ロシアがウクライナ南部で最もほしいのがオデッサである。ロシア語話者の迫害、その保護の必要性、派兵、侵略、核の恫喝、「住民投票」、圧倒的多数による支持、併合。クリミアで鮮やかに決まったこのシナリオが最もうまく再現できそうで(少なくとも自国民向けの語りとして)、かつ、再現したいと敵が願うのが、他ならぬオデッサである。オデッサに「第二のクリミア」となる資格があるか。それを占うのがエカ像の去就であると言える。(……というような考えを私は持つに至った)

つうわけで今日もエカ像の話する。(正式な名称は「オデッサ創建者(複数)に捧げられた」記念碑)

Zoomで市民有志の意見をきく

エカ像撤去の是非について最終的な決定権はオデッサ市議会にあるのだがそれに先立って2つのことを行う。①今月19日、Zoomで市民有志と協議を行い意見をきく。②9月20日~10月20日の1か月かけてオンラインで住民投票的なやつを行う。んで今とりあえず①の方の参加者を募集している。一家言もつ人多いだろうから多数が応募するのじゃないかなぁ紛糾しそうだなぁと思っている。ОЖ

この記事末尾にあるが、エカテリーナが何した人かについて撤去賛成派の人の意見は、オデッサ市創建の美名のもとにこの地にもともとあったウクライナ的なよきもの(Запорожскую Сечь=ウクライナコサックの共同体、ウクライナ語、ウクライナ文化)を破壊し、ロシア帝国の悪しき伝統(農奴制)をもたらした、というものである。

この意見に対する私の意見は、それはもう克服された過去なんじゃないのか、今さら言っても仕方のないことなんじゃないのか、ということだ。この街の200年の歩みはその始点において悪であり不正であったか。ならオデッサのこのヨーロッパ的な街並みは悉皆破壊されるべきですか。

にも関わらず、同じ私が、像の撤去は肯定されうると思っている。その宣言的な効果によって。像の撤去はロシア側に「オデッサはロシアと世界観・歴史観を共有することを望まない」というシグナルを送ることになる。またウクライナ国内の「オデッサは親露の巣窟」と目している勢力に対し、「オデッサはウクライナ諸都市と連帯する」というメッセージを送ることになる。

しかし前者(ロシアへのシグナル)の観点から重要なのは、撤去という意思決定がオデッサ当局内の「ナチス・キエフ」シンパによる専断的決定でなく、市民の総意による(総意でなくても、多数による)決定なのだということを、透明に、示し続けることだ。プロセスが大事だ。そうでないと、撤去の決定はむしろ「オデッサの親露市民への抑圧」という「ロシア世界」的言いがかりにエサを与えることになってしまう。

プロセスを透明に示し続けた結果、市民の多数意見により撤去が否定されるなら、それでいい。その方がいい。

大統領あて請願「オデッサ市長どないやねん」

今次のエカ像撤去の話のそもそもの発端は、ゼレンスキー大統領あての市民請願であった。大統領あて目安箱というのがあって、市民が誰でも請願を起草でき、それに2万5000筆の賛同が集まると、請願は大統領まで必ず届き、その検討にかけられる。こんど「オデッサ市長ゲンナージイ・トゥルハーノフは侵略国ロシアのシンパサイザーなので大統領閣下、気を付けたほうがいいんじゃないですか」いうのが出て、両日ですでに1万筆の賛同を集めている。ほぼ確で大統領の耳にも触れる。

市長がエカテリーナ像撤去に消極的であること、先日のイタリア紙でのインタビューでクリミアをめぐってロシアと交渉したほうがいいとかロシアはオデッサを攻撃しないだろうとか述べたこと(本記事8/29付け記述参照)が問題化されている。更迭まで求めているものではなく(大統領にその権限はない?)、飽くまで「注意を喚起」し「不信任を表明する」もの。起草者はオデッサ市民の何某(実名)。

請願文の掉尾では市長がロシア国籍保持者であることも指摘してるがこれは事実に反するのではと思う。二重国籍はひところまでわりとふつうのことだったが14年以降とりわけ公人でロシア国籍持ってるのはまずいだろうということで確か市長も放棄してるはずだ。とにかく、このような形で一私人が公人のパブリックイメージを手痛く傷つけることができる。またこの名目上の唱道者が市長の政敵の走狗でないとどうして言い切れる。ちょっとどうかと思う制度だ。ОЖ請願ページ

9月12日(受難のエカテリーナ像)

オデッサ無事。各地で解放作戦すすむ。

受難のエカテリーナ像

昨日お伝えした落書き犯は女性だそうだ。

監視カメラに映ってた。捜索中。

この記念碑は文化財なので本来であれば警備員が24時間常駐して監視してなければならないのだが「なんでいなかったんだろうねえ」。油売りのにおいがする。職務怠慢の。

簡単に洗い落とせるようなやつだったらしく、すぐ洗い落としたということだ。よかった。ОЖ

受難のエカテリーナⅡ

……と思ったら第二次攻撃が加わった。赤いペンキがぶっかけられた。ОЖ

犯人は逃げも隠れもしなかった。なんや活動家の男性らしい。ぶっかけたあと自ら写真とってSNSにあげて「警察の方、待ってます」と記した。実際すぐ警察が駆けつけて交番に連れてった。したら男性は「前日『エカテリーナ=プーチン』と書いた女性への支持を示したかった」と動機を明かした。男性はほとんどおとがめなしで解放された。「エカテリーナ像は撤去されなければならない。撤去されると信じている。市当局が撤去しないなら、社会が代わってそれを行う」と男性。

分からなくなった。どこまでこれが一般意思だろうか。男のふるまいはなかなかに立派ともいえる。陋劣というよりは正々堂々とか漢気とか呼びたいような気がする。昨日あんだけ悪罵しといて何丘とかいう奴の頼りにならんこと。私はオデッサでどちらかというと親ロシア的な家庭および交友関係の中にいた。まして戦争はじまってからの世論(общ.мнение、社会の意見)の変化を肌感で知るわけでもない。憶断は慎もう。

いま逆に市議会が撤去を否決したら、それは露プロパガンダに利用される。オデッサはやはりロシアの街なのだ、住民は親ロシアなのだ、住民はナチスキエフによる支配からの解放を望んでいる、と喧伝する材料を「第1チャンネル」に与える(折しも一件フェイクニュース、T)。そんな中ではこのような文化財に対するテロルも戦術的に肯定されるのかもしれない。皆さんはどう考えられます。

後刻追記す。取り上げたい話題:黒海に水柱(смерч)(https://odessa-life.od.ua/news/nad-chernym-morem-zamechen-smerch-no-neobychnyj-fotofakt)新作オペラ「カテリーナ」「恋せよウクライナ娘、ただしモスクワ野郎とではなく」(https://odessa-life.od.ua/article/ljubite-chernobrovye-da-ne-s-moskaljami-premera-vo-vremja-vojny)またしても対敵協力者(https://odessa-life.od.ua/news/v-odesse-zaderzhali-shpiona-gotovil-dlja-rossii-spiski-potencialnyh-celej)

9月11日(200日/カディロフ/戦時下の芸術)

開戦200日。オデッサ無事。だが騒がしい夜であった。11日未明、空襲警報鳴りやまず。オデッサ市公式テレグラムのタイムライン↓

表示時刻は日本時間。-6すれば現地時間になる。深夜1:56空襲警報発令→2:14解除、2:30発令→2:48解除、3:52発令→4:27解除、5:27発令→5:30解除、5:35発令→6:25解除。おはよう。

何しろクリミアとかどっかでミサイルが発射されたとか発射されそうだとかいう情報をつかむと、その予想される飛翔ルート上の自治体に警報を鳴らしていくしくみ。鳴ったらすみやかにシェルターに避難を、ということだが、まぁ無視するでしょうね。オデッサ市民は耳に栓して安眠したろうと思う。果たしてこの朝ミサイルは飛んでこなかった。皆さんも今日まさか首都直下地震が起きるとは思っていないでしょう。

ドン・カディロフ

ロシアのチェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフが11日ビデオメッセージを公開、気炎を上げた(もにゃもにゃと)。「ハリコフ方面におけるロシア軍の諸都市からの撤退は単に人的犠牲を避けるためのものでそれ以上の意味は何もないドン。私ことラムザン・ドン・カディロフは公式に声明いたす:これら諸都市は必ずや(ロシア側に)奪還される。かの地にはすでに同朋たちドン、特別にドン訓練された仲間たちが送り込まれているドンし、さらに1万人からの兵隊を送り込む用意があるドン。近い将来オデッサまで到達するドン。具体的な成ドン、果を、お…ドン」TASS

新作オペラ「カテリーナ」

オデッサのオペラ劇場が今週末、ウクライナの国民詩人タラス・シェフチェンコ原作の新作オペラ「カテリーナ」を初演するそうだ。観たい。ОЖ

エカテリーナ女帝像に落書き

ロシア皇帝エカテリーナ2世といえば白説によれば「オデッサ市創建の母」黒説によれば「ロシア帝国主義の象徴」ということで市中心部に立つその記念像について撤去の是非が議論されているが、このほど有難い市民からその台座の部分に落書きを賜った。「エカテリーナ=プーチン」と書いてある。ОЖ

私のシンプルな感想:あーあ馬鹿。溜飲さがったか愚物。ふつうに犯罪だよ。こういうのをテロという。撤去の是非に関係なく非難されるべきこと。

横浜の浄水装置のこと

昨日書いた横浜の浄水装置のこと、ОЖでも取り上げられてて、それによると、ニコラエフは現在も水の供給が止まっている。あと、横浜の方からははじめから「ニコラエフと分けてください」と言われていたように書いてある(попросили поделиться с Николаевом)。であれば正直、オデッサは仕事が遅すぎた。

新王の名の行方

これも昨日の話題だが、英国のチャールズ王のことをウクライナ語でなんと呼ぶべきか。チャールズはチャールズでええやんけで決着と思われたがここへきてウクライナの「言語オンブズマン」タラス・クレメニ氏が「外国の君主の呼称については伝統的な記法・呼法というものがあって、現に故・エリザベス女王のことはエリザヴェータと呼んでいたではないか、それでいくと皇太子時代チャールズだった人も王となったいまはカールと呼ぶべきだ」との考えを示した。これに対してなんとかいうテレビ司会者の人が「その伝統的な記法とやらはそれこそ露助どもの開発したやつじゃないですか、我々独立ウクライナは英国王チャールズはチャールズと呼びフランス王シャルルはシャルルと呼びスペイン王カルロスはカルロスと呼びチェコ王カレルはカレルと呼び、それでいいじゃないですか。なんでこれらを十把一絡げにカールと呼ばねばならんのですか」と自説を述べたということで、さてどうなるか。ОЖ

秋冬は漂流機雷にご用心

秋冬、黒海は波が高くなる。そんで沖合の機雷が繋留を外れて浜辺に打ち寄せられる危険も高くなるので、夏のバカンスシーズンは去りつつあるけれども、依然として水浴および海岸散歩は危険であるよと警告。ОЖ

このニュースへの注釈1:この夏、漂着機雷に触れてオデッサの浜辺で都合8人が散華した。

2:黒海は海(море、sea)であって洋(океан、ocean)でないので潮汐が穏やかで波も穏やか、という説明を何度か耳にした。実見したところもそう。

3:イエローストーン(「オデッサ  Yellow stone」と検索)のところに寒中水泳クラブがあってその一種の健康法を信じる市民はマイナス10℃の日でも海水浴する。鉄の意志もつ人らと思うので、沖合に敵船がいてそこから機雷だのミサイルだの放たれる中でも水浴を敢行するのではないかと思われる。「長年寒中水泳で鍛えたこの肉体はロシアの機雷ごときで吹き飛ばされない」

4:この手のニュースは通例「ロシア軍の」機雷として報じられるが、機雷が「ウクライナ軍の」設置したものである可能性はないのだろうか、いつも若干ひっかかる。とはいえ、何度も繰り返してる論法だが、たとえそうだったとしても、その責めを負うのがロシアであるべきことは変わらない。ロシアの侵略がなければウクライナ軍が機雷を設置することも(設置しているとして)なかったわけだから。

9月10日(横浜/ニコラエフ/チャールズ/カール/カルル/シャルル)

オデッサ無事。宇メディアにはウクライナの反攻による「解放」の字が躍る。さらに2つの集落を解放、ここまで都合2000平方キロメートルを解放、東で南でまだまだ続くぞ解放……。

横浜の浄水装置、ニコラエフへ

オデッサのお隣のニコラエフが9月10日お誕生日(創建記念日)を迎えた。おめでとうを言いにオデッサのトゥルハーノフ市長もニコラエフを訪ねた。そんで、先にオデッサが姉妹都市・横浜から贈られていた携帯式の浄水装置(複数)をニコラエフに渡した。T

ニコラエフは、今どうであろう、少なくともちょっと前までは水不足に苦しんでいた。戦争のわりと初期にロシア軍の攻撃によって水質浄化センターを破壊され、いわゆるтехническая вода(技術用水)つまりシャワー浴びたり食器洗ったりできる程度の水は蛇口から出てくるがпитьевая вода(飲用水)は出てこない、という状況が長く続いていた。

そもそもなんで横浜がオデッサに浄水装置を贈ったかって、これは私の全くの邪推なのだが、たぶん姉妹都市の横浜から(これも戦争のだいぶ初期に)何か送りたいが何を送りましょうか、いま何が足りてませんかと照会があった。で、オデッサはなにぶん被害僅少であったため、とくだん何が足りていないということもなかった。水とか食料とか医薬品とか当たり前のものを送ってもらうにはまたヤポーニヤは遠すぎた。しばし回答に窮して、「そういえば隣のニコラエフは水道インフラ破壊されて浄水不足に苦しんでます」と出たのを拾って、「じゃ何か浄水不足を解消するもの探してみましょうか」「そうですね、うちもいつ同じことになるか分からないですものね」こうしてモノが決まった。オデッサはその後も水不足に苦しむことはなかった。こんど、本来送られるべき場所(ニコラエフ)に、それがやっと届けられた、のではないかと想像している。

「チャールズ」か「カール」か

妻が「英国の新王の名しってますか」と問う、しってるも何も、チャールズでしょ、と答えると、「違うよ。カールだよ」といってしたり顔。なんでもロシアのメディアは皇太子時代チャールズと呼んでいた人のことをその人が王になるや「カール」と呼び出したらしい。見るとたしかにそうであった。

↓TASS「カール3世、カナダ国王に」

↓Meduza「英国の新君主、カール3世。王座に就いて最初の数日」

だが今んとこウクライナメディアはチャールズ呼びを貫いているようだ。駐ウクライナの英国大使も「チャールズでいいよ。だってあの人、チャールズやん。チャールズ貫くがよろし」と言ってくれてる。УП

↑УП。

9月9日(オデッサ無事)

オデッサ無事。ウクライナ各地で反攻、東で南で集落が解放されてってる由。

後衛のつとめ

オデッサはこの戦争で例外的といっていいほど損なわれること少なく済んでる街。であれば市民のなすべきは、浜で遊んで機雷に触れてあたら命を散らすことでなく、後衛なりのつとめを全うすることだ。そのひとつが国内各地からの避難民の受け入れである。ウクライナ軍の反攻でヘルソンやハリコフでは戦闘激化、ドネツクでは市域の中央暖房が行われず越冬非常に厳しい見込みということで、国内難民が増加している。すでにオデッサは10万人の疎開者を受け入れている由だが、まだ5万人は受け入れねばならぬことが予想されるところ、空き部屋は1万3000人分しかない。残りは既存の物件をリノベして住める状態にすることで確保するのだそうだ。ОЖ

オデッサが無事であるのは一義的には隣のニコラエフが敵の砲弾を一身に引き受けてくれているからである。そのニコラエフを支援するのはこれまた後衛の当然のつとめだ。オデッサからニコラエフには絶えず食料品ほか支援物資が送られているが、今度の便にはオデッサ市長も同乗した。というのも9月10日がニコラエフ市の創建記念日であったから(兄弟都市オデッサは9月2日)。「来年の誕生日はお互い平和の空の下で祝いましょうねぇ」と市長。T

市民憲章改定

オデッサ市の憲章が10年越しに改定される。ロシアの侵略やその後のウクライナの法制の変化によって現行のものはアクチュアリティを失ってるから要改定、ということらしい。市議会の専門委員会で1か月揉んで、そのあと市民を巻き込んでの議論に入るそうだ。ОЖ

市の憲章というと、たとえば京都市の市民憲章はこんな感じだ。

まぁポエムである。こんなもんにアクチュアリティもくそもない。1956年制定、向こう50年は改定されないだろう。

一方オデッサ市の憲章(устав)いうのは7章44条、1万4000語からなる長大なもので、オデッサ市の歴史、特性、文化財などWikipediaかなと思うくらい詳細に記され、市歌はこれこれ市旗・市章はこれこれ市の記念日はいついつ、市議会の構成とか活動、公聴会・市民請願・住民投票のやり方など、テクニカルなこともいろいろ定められている。

新たな現実を反映しての憲章改定ということだから、基本的にはロシア臭(ソ連臭)の脱臭漂白が行われるのだろう。序文にある「他民族都市オデッサにおける諸民族間の共通言語はロシア語である」みたいな記述が削除されるのだろうし、名誉市民の一覧からスヴォーロフ大元帥の名が削られるのだろうし、もしかしたら以前から議論のあったオデッサ市歌(ロシア語オペレッタ『白アカシア』の劇中歌「オデッサの歌」)も変更されるかもしれない。

Песня об Одессе | Белая акация | 1957

私はこの歌が好きだった。毎正時に時報としてこの歌のメロディーがオルゴール調で奏されるので正時付近に市庁舎とか州庁舎の近くにいるとそろそろ鳴るなと思ってわざわざ立ち寄って聞いてった。こどもを抱っこして聞いた。「ぽりろうちゃん、これがオデッサの歌だよ。パパはこの歌が大好きなんだよ」。キエフの言語当局が「ロシア語の歌を市歌とするとは何事か、別の歌にしろ」と文句を言ってきてもバカいうなと思っていた。私にとっての「オデッサの音百景」の筆頭、市庁舎の時報。いつかまた聞けることがあるだろうか。

9月8日(無事)

オデ無事。ニュース全体的に、被害より戦果が多く報じられている反転攻勢のフェーズ。

オデッサ万博?

オデッサが2030年の万博の開催候補地に立候補してるらしい。2025年大阪万博の次、ということになるのかな。博覧会国際事務局に正式に申請が行われたということだ。テーマは「再生、テクノロジー、未来」とか。ОЖ

オデッサ・ヴェネツィア芸術交流

本記事8/24付けで紹介した戦没児童たちを記念するインスタレーションが新姉妹都市・ヴェネツィアの次回ビエンナーレに出品されるそうだ。T

9月7日(無事)

オデ無事。

ロシアが支配しているウクライナ東部および南部における「ロシア連邦への編入の是非を問う住民投票」の実施日について、ウクライナ軍の反攻によって当初予定の9月11日(ロシア全土で統一地方選挙が行われる日)が無理ぽなので、新たな日付として11月4日ということが言われている。その日は「国民統合の日」(一般的な訳語としては「民族統一の日」)と呼ばれるロシアの祝日。УП

クリミアのロシア軍拠点(サキ軍用飛行場ほか)で8月生じた一連の爆発につき、ウクライナ軍が関与を認めた。ミサイルでブッ叩いたものだそうだ。これまでロシア側もウクライナ側も知らぬ存ぜぬで通していた。当然ウクライナ軍の関与は疑われたが、いかなる手段による攻撃なのかは謎のままだった。それを今頃になってウクライナ軍の最高司令部が自ら明かした。なぜ。余波は。УПUKRINFORM

オデッサのあるがままの今を伝えてくれる例のチャンネル、久しぶりに紹介しとく。7日の海。9月入って急に肌寒くなったオデッサ、この日の日中の気温は20度、ビーチクラブもやってたりやってなかったり、相も変わらず海に入ることは禁じられており、相も変わらずそれでも海に入る人はいて。

Одесса 7 сентября 2022. Шок. Арбуз за 500 гривен?! Пустые пляжные клубы. Бархатный сезон в Одессе.

9月6日(エカ像/湖/酔漢車上射撃)

6日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

エカ像どうなる

オデッサ市中心部のエカテリーナ女帝像撤去の是非だが。ちな経緯:ロシア皇帝エカテリーナ2世はオデッサ市創建の母かロシアの帝国主義的領土拡張の象徴かということで議論がある。国および州は後者の立場で撤去に賛成、決定権を有する唯一の機関である市議会は回答を日和ってたが、州から催促されて重い腰を上げた。

重い腰をあげて、次のように決まった:今月19日、市民の公聴会が行われる。でそれを踏まえて、同20日~来月20日まで、市議会ウェブサイト上のフォーラムを通じて世論調査が行われる。ОЖ

これが22年2月以前であれば市民の多数決で撤去派が多数ということはまずなかったであろう。いま世論はどんな感じだろうか。

天然記念物の湖、干上がる

オデッサ州内の自然保護区指定の潟湖群の一角を占める珍しき桃色の湖が日照りで干上がった。ОЖ

2018年の姿↓

現在↓

貴重な野鳥のサンクチュアリが失われた由。当局の不作為が招いた人災の側面があるそうで、堰を開いて黒海から水を呼び込めば手もなく防げた事態だそうだ。文化遺産も結構だが、自然遺産にも目を配ってほしい。観光開発が下手なので事実上死蔵している景勝地がいっぱいある。日本にまったく紹介されていない、地元の知ってる人しか来ない。実にもったいない。

治安

日本人がオデッサについてよくする質問に「治安とかどうなんですか」というのがある。治安ねえ。良くも悪くもないよ。日本よりそりゃ悪いけどまぁ欧州スタンダードじゃん?みたいに答えていた。だがどうなんだろう、銃社会になって治安は悪化する(した)のだろうか。開戦初期に警察が市民有志に銃火器を配布した。自主返納も行われている由だが今も相当数の火器が市民宅に秘蔵されている状態。

6日白昼、酔った63歳男が車を運転して、たまたま横並びになった別の車の運転手に向けて銃を発射した。幸い負傷者なし。……怖すぎ。ОЖ

9月5日(地図/ヘルソン/ヴェネツィア)

5日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

戦況

その後ヘルソン奪還戦どうなってるか。名のある街/広大な領域を奪還したとか敵の大規模撤退とかそういう大きな話はないが地味に進んでいる模様、橋を落としたり(УП)だとか外堀から攻めていて、ISW(米戦争研究所)によれば反攻のペースは今後大幅に加速する見込みとか(УП)、ヘルソンの偽首長(露の傀儡)も情勢を受け住民投票への準備は「いったん停止」と言っている(УП

社会

弛んでる。全土に攻撃みたいなことはしばらくない。苛烈/高頻度の攻撃にさらされているところとそうでないところの落差が大きい。①ユダヤ人の多い中部のウマニでローシュ・ハッシャーナというユダヤ教の祭典が行われるとかで域外・国外からも多くの人が集まっていて(現在1000人、1万人に上る見込み、例年だと3~4万人)、当局も「いま安全だから来るなとも言えない」と容認している(УП)。②オデッサも海辺のホテルに併設のナイトクラブが戒厳令下ご法度の深夜営業して「隣のニコラエフがぼこぼこ攻撃されて前線で兵士たちが倒れているときに何をやっているんだ」ということで、悔悟した客およびスタッフが陳謝のうえウクライナ軍に寄付をするという椿事があった(ОЖ)。

深夜早朝の営業禁止および外出禁止(今のオデッサだと23時~翌5時)は、しかし、どうやって正当化されるのだろう。クラブ、別にやってもいいではないか。同じことを昼やっても問題にならない。なら夜やって悪いわけは。近所迷惑の心配? それはまた別の話だ。前思ったのは、外出禁止令の本質は、市民の安全を守るためというよりは、軍が秘密の作戦行動をとって市民の目に見られない時間帯というのを持つためなのではないか。たとえば市民の外出が禁止されているこの深夜早朝の時間に軍用車両が列をなしてA地点からB地点へ移動し、拠点が移される、というような。それをいわゆる対敵協力者(コラボラント)とか意識低い系市民に撮影されたり口外されたりしないようにする。

でも今度の場合はわりと外界から隔絶された海辺のホテルに併設のクラブということで客もまず全員宿泊客だったのだろうから、この人たちが見ちゃいけないものを見てしまう危険もなかったと思うがな。一々例外作るわけにもいかないか。場所↓

↑「M1クラブホテル」とあるとこ。港(=市中心部)からすぐの一等地、権力のお膝元みたいなとこで堂々たる違反、よくやるよ。いくらか握らせてもいたろう。

↑ちなみにその隣のNemoホテル(イルカ水族館と一体)の屋外プールがイルカの形をしていることを初めて知った。ちょっといいもの見た気分。

↑ちなみにオデッサ市がタツノオトシゴの形をしていることも日本帰ってきてこういう縮尺で地図をよく眺めるようになって初めて気づいた。

↑日本の山形県がめっちゃヒトの横顔なのにも最近気づいた。

ヴェネツィアのレガッタ大会で

新しくオデッサの姉妹都市となったヴェネツィアでレガッタ大会が行われそこを駐イタリアウクライナ大使が訪れてヴェネツィア市長にオデッサ市旗をプレゼントしたということだ。なんて×××な話題なんだ。T

戦争始まってから結ばれた姉妹都市協定ということで①ウクライナの世界との団結を象徴するものとして②なんといってもヴェネツィアなので③世界遺産王国イタリアはとりわけ早期にオデッサの世界遺産入りへの支持を表明してくれたので、ヴェネツィアの話題は市テレグラムでもたびたび取り上げられ、ヴェネツィアは我らとともにありということが市民に印象付けられてる気がする。たぶん市民の認識ではオデッサの姉妹都市といえばマルセイユとヴェネツィアということになっていて、あのー一応横浜もいるんすけどと寂しい気持ちがある。

ちなみに、ほんと余談だが、日本語でいう姉妹都市、ロシア語ではгорода побратимыすなわち「兄弟」都市という。これはロシア語で都市をあらわすгородという語が男性名詞であることからの必然である(多分)。でいうと、逆になんで日本語では「姉妹」都市というのだろう。上掲ポスト、イタリア語で都市をcittaという(女性名詞)らし、それ見て思った。

9月4日(サッカー/世界遺産)

4日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。こう静穏じゃ仕方ないか、深夜早朝(23~翌5時)営業および外出禁止令を破って終夜営業するバーなど現れ始めていて摘発に暇なしだそうだ。「軍が頑張ってるからこその平穏だ。市民は戦時下にあって恥ずかしくないふるまいをしているかどうか自問してほしい」とオデッサ州長官(それ言っても無駄なやつ)。ОЖ

戦時下のサッカー

オデッサのサッカーチーム「チェルノモーレツ(黒海人)」ホームスタジアムで9か月ぶりに公式試合が行われた。完全無観客。ウクライナ中部キロヴォグラードの「イングレーツ」と戦って1-1で分けた。この試合はウクライナ・プレミアリーグの第3戦だそうだ。戦時下でもサッカーは行われねばならない、ショウマスゴーオォン、か。ОЖ

ウクライナの人はヨーロッパ人のご多聞にもれずサッカーが好き。なんだかんだ一番ファン人口が多いスポーツだと思う。地元チーム「チェルノモーレツ」のリーグでの成績を気にしてる人は結構多い印象(わが義父を含め)。街でも団地でも村でも学校の校庭ではひっきりなしにサッカー教室が行われ、クラブチームの練習場などかなりしっかりした設備のものが街中にいくつかある。

世界遺産なるとどんないいことある?

オデッサの世界遺産は早晩なる。何丘ブラフと思わないでほしい、マジでなる。そしたら何丘と何丘ブログの読者でお祝いのフラッシュモブしましょう。

以下、現状・展望まとめ(ОЖ

◆現状
UNESCO自身はオデッサの世界遺産登録を支持しており、あとは世界遺産委員会委員諸国の批准?を待つばかり、みたいなことだった。んですでにUNESCOからはロシアの攻撃により(直接被弾したわけではないが)損傷したオデッサ市内の2つの美術館の補修のためにお金を出してくれること、また、オデッサにある1000件弱の芸術品の電子化のための設備を供与してくれる、との約束がある。

◆どのエリアが世界遺産なるのか
(知らん人には意味ない文字列だが自分のためにメモ)歴史地区、即ち、プリモールスキイ・ブリヴァールの建築アンサンブル、オペラ劇場前広場、デリバーソフスカヤ、ゴーゴリ通り。

◆市および国の側に保護義務が発生する
オデッサおよびウクライナに保護義務が生じる。何の義務かというに:市中心部への不調和なオブジェクトの設置の禁止/市または国の予算で指定範囲を良好な状態に保つ/街路の外観を可能な限り1917年革命時点の状態(つまり、帝政末期の時点)に近づける

◆世界遺産なるとどんないいことある?
①観光客が増える。観光収入増。②ロシア軍の攻撃で世界遺産構成施設に被害があった場合、原状復帰にかかる費用を算出のうえ、国際裁判所を通じて、ロシアから必要費用を徴収できる。それはすごい。イメージ、ロシアのUNESCOへの拠出金から(ロシアの意志に依らず)強制的に賠償金を徴収できる、みたいなことか。ロシアがこれに反発する→UNESCO偏向とかいってUNESCOへの拠出金を停止→UNESCO、ロシアを除名(ロシア国内の全世界遺産の世界遺産認定を停止、ロシアは無世界遺産国に)というコースが見えた。実際他国の世界遺産を破壊する奴が自国に世界遺産を有つ資格などあるか。国際秩序に弓引く者は国際社会の一員であることから受けるあらゆる便益から見放されるべきだ。

8月のミュージックシーン

УПの「8月ウクライナで発表された楽曲集」。私聞いとらんのやが……ウクライナ語ロック/ラップってこんな感じなんだ、戦時下のウクライナでこんな音楽作られてるんだ、と発見があるかと思います、音楽好きの方ぜひ。14曲。私もあとで聞いたら報告します。



この記事も更新60日あまり、読み込み重たくなってきたので、近日新たに記事を立てます。「続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ」。

9月3日(市歌のウクライナ語化/たたかう猫)

黒海のほとりの街オデッサに3日ミサイルは飛んでこず人は戦争を忘れて過ごした。空襲警報は鳴らぬでもなかった。ОЖ

歌「黒海のほとりに」

オデッサは語れない、ただ歌うのみ、という話があったが(9/2付け)、実際オデッサはソ連市民の人口に膾炙した夥しい歌謡曲の歌枕である。数多あるオデッサソングの代表格でオデッサ市の非公認市歌とも目されるのがレオニード・ウチョーソフの「黒海のほとりに」だ。

Леонид Утесов "У Черного моря" (1955)

しかしナショナリズムの潮流のなかで「なんでオデッサソング、ロシア語の歌ばっかなんだよ」という謎の異議申し立てがあり、このほど上掲ソングがウクライナ語作家(詩人)の何某によって翻訳され、ウクライナ語版が誕生した(ОЖ)。残念ながらまだ詞ができたのみで歌い手がいないという。誰か歌ったらまた紹介する。

オデッサ市歌の方もウクライナ語化しようという話があるそう。もうなんでもやっちゃって。ちなみに義母の十八番はビートルズGirlそしてYellow Submarineのウクライナ語verです。(義父母はソ連時代末期に学生時代を送った、キエフ工科大の学生寮で仲間と英ロックを熱聴していた)

「たたかう猫ちゃん」切手発行記念イベント

オデッサ各所の街角にいまや120個も存在するという猫ちゃんグラフィティがこのほどウクライナの記念切手になった(see 8/26)ことを記念して、オデッサ中央郵便局でプチ展覧会。こう見るとほんと脱力系いうか、言っちゃえば大した画じゃない。でもそれがいい、か。ОЖ

↓この御仁(左)こそが作者のイーゴリ・マトロスキン。描きそうな顔してる。マトロスキンという名にして猫を描くというのがまたなんとも。

なにしろオデッサの人は猫が好きでオデッサには猫がうじゃうじゃいる。オデッサのあとどこ行っても、たとえば小旅行でリヴォフへキエフへウィーンへ行くだろう、すっと「なんか猫いねぇなこの街」と思う(思った)。敵を撃滅し自軍を鼓舞しウクライナ文化を称揚する猫たちの姿は現在のオデッサの一般意思の化身と言えるろう。

9月2日(誕生日おめでとう、オデッサ)

9月2日はオデッサの「市の日」である。1794年のこの日、オデッサという街は創建された、ということになっている。戦時下の今年も寿がれた。

そもそもロシアとかウクライナの人は市の日(день города)を祝うのが好きだ。モスクワの市の日、サンクトペテルブルクの市の日。日本にはこういう概念はないと思う。ぬるっと住み始めて連綿と住み続けてるので、いつが「創建の日」とは名指しがたいのだ。「市制〇〇年」という言い方はありますが。

そんな9/2、オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

ゲンナージイ・トゥルハーノフ市長のお祝いメッセージ。苦手なウクライナ語でがんばった。私には言えないがだいぶロシア語なまりのウクライナ語なのではないか。一度などオデーサでなくアヂェッサと言っちゃってるし。

З Днем народження, вільне, українське місто!

オデッサはウクライナの街だ、と強調しながら(最近スキャンダルもあったしね)、全編ウクライナ語でしゃべる市長氏。もう私の知ってるオデッサではないのかな、と思った。私の知ってるオデッサは外皮がぱりぱり中身はふわふわのシューアイスだった。つまり、(翻訳するね)、ウクライナ語とロシア語の関係を言っています。この戦争を機にウクライナ語話者に切り替わった人もいると聞くし、「オデッサはロシア語を話すウクライナの街」という私のテーゼは、もう失効しているのかもしれないな。

と思ったら、市民のお祝いメッセージの方は出演者全員ばっちりロシア語だった。

День міста: мешканці привітали Одесу зі святом

「オデッサは語るものではありません、歌うものです。私は歌えません、だから言葉で言います。愛しています、オデッサ(Об Одессе не говорят, об Одессе поют. Я не могу петь, поэтому я скажу словами: люблю Одессу.)」こんないいこと言える? 言霊のさきわう国にっぽんで公園でたまたまつかまえたおばちゃんがこんないいこと言うなんてことがあるだろうか。

ともかく、この光あふれる動画に感動を禁じ得なかった。涙ぬぐいながら、自分、愛してるなーオデッサ、と思った。このオデッサにミサイルを飛ばしてくる戦争。私たちはナチスからの解放など必要としていません。あなたたちがファシストです。あなたたちがナチスです。

9月1日(秋の最初の日)

9月1日、クリミア沿岸よりオデッサへ2発のミサイルが発射され、1発は撃墜、1発はどっか野っ原に落ちた。被害なし。ОЖ

いま敵黒海艦隊の主力船を指揮しニコラエフやオデッサへのミサイル攻撃を命じているのは14年までウクライナ海軍に勤務していた人物だそうだ。14年時点でクリミア在勤のウクライナ海軍人であったがロシアによるクリミア併合を機にウクライナ人民への忠誠の誓いを破棄し新たにロシア人民への忠誠の誓いをなし22年、ウクライナにミサイルを放つ。度し難い。ОЖ

知ることの日

ロシアとかウクライナでは9月1日は「知ることの日」(День знания、一般的な訳語としては「知識の日」)と呼ばれ、新学年の始まり、これから1年間お勉強がんばりましょうねのセレモニーが行われる。特に1年生の入学が寿がれる。女子も男子も着飾って、先生に花を贈ったり鐘(первый звонок)を鳴らしたりしてとても華やか。ウクライナ側ではしかし、今年は式典は控えるとのことだった。花を買うお金があったらウクライナ軍に寄付をと呼びかけられていた。ОЖ

ロシアでは普通に始業式が行われたようだ。新たな現実を反映してロシアの教育もかわる。週あたま、即ち毎週月曜日に、①ロシア国旗の掲揚&ロシア国家の斉唱が行われ、②「だいじな話」(Разговор о важном)と呼ばれる課外授業が行われるようになる。「だいじな話」ではロシア軍の戦果についてお話がなされる。1日はその記念すべき第一回が行われ、特別にかの裏地見る人による「だいじな話」が行われた。裏地見る人はこう言った。「ウクライナでいかにウソが教えられてることか。ウクライナ人がいかに何も知らされていないか。ソ連邦成立以前にウクライナという国は存在しなかったということをウクライナでは大人でも知らない、今日あたかもロシアが侵略を行っているかのように見なされているが、実相は、2014年のクーデターを不服としたドンバスおよびクリミアに対してウクライナ自身が戦争を仕掛けたのであり、ロシアの使命はこれら地域に住む人たちを、さらにはロシア自身を、保護することであった。あと勤勉大事。勤勉は才能。あと健康大事」MeduzaMeduza

ルガンスクの被支配地域の学校では始業式が華やかに行われたそうだ。ロシア国歌が歌われ、ウクライナ語の図書が図書館から押収される。住民投票だの「編入」だのを待たずとも、もうこの子供たち(およびこの子供たちをこのような学校に入れることを是認した親たち)の脳内では、ルガンスクはロシアである。この状況を許した時点でこちらの敗け。УП

沿ドニエストル

ウクライナのオデッサ州と隣国モルドヴァの境界部に存在するロシアの事実上の飛び地、沿ドニエストルと呼ばれる領域がある。これをめぐる舌戦?をロシアとウクライナ、さらにモルドヴァが繰り広げている。まず8/31にロシアの自称外務大臣ラヴロフが「沿ドニエストルはロシアの飛び地ではなくモルドヴァの一部であると考える(※公式的な立場)が、そのモルドヴァに住むロシア系住民の利益が損なわれることがないよう我々はできる全てのことをする」と述べ、翌9/1に「沿ドニエストル内の平和維持軍(※ロシア軍のこと)に対して脅威となるいかなる行動もロシアはロシア連邦に対する攻撃とみなす」とか述べた(УПУП)。これにウクライナ外務省は「ロシア系住民の保護というのはおなじみの論法である。まさにこの口実のもとに、ウクライナへの侵攻が行われた。ウクライナはモルドヴァの主権と領土一体性を全面的に支持する」(УП)。当のモルドヴァ外務省は在モルドヴァのロシア外交代表を召喚し、モルドヴァではロシア語を話す人々を含め少数民族への人権侵害など行われていない、と説明した(УП)。

↑沿ドニ。何度も言ってるが敵はいまヘルソンまでを押さえているところ、今後ニコラエフ(「ムィコラーイウ」)を落としてさらにオデッサを落として支配地域を沿ドニエストルとつなげる(そうしてウクライナから海を奪う)ことが狙いだ。オデッサにすぐ隣接してロシアの飛び地があることは潜在的に脅威ではあり、一応常に目を配っている必要はある。だが沿ドニのロシア軍は弱い。ロシア本国から兵員だの装備を送って沿ドニの戦力を増強することも不可能。5月くらいにもぞもぞと偽旗作戦が行われて不穏な感じに一度なったが、以後は全く静かなもので、何かしてきても戦えば必ずウクライナ軍が勝つという状況になってるので、ほとんど取沙汰もされなくなった。

【ご挨拶】
東京はだいぶ涼しくなってきました。皆さんいかがお過ごしですか。
何丘めのブログに長くお付き合いくださっている方、ありがとうございます。
今日はじめて覗きに来て下さった方、毎日書いてますので、また来てください。

8月はまるまるひと月一家3人のうち誰かしら病んでいまして、こんな妙な風邪コロナ以外にあるかと思って検査を受けるのですが子供も僕も陰性だったりして、なんだろうなぁこれはと思いながらごほごほ咳をしていました。今は元気です。

この戦争日記と並行して密かに「(虚構?)子育て日記」という記事を立てまして、ほぼ日な感じで綴っています。なんで虚構と銘打ってるのかというと、何丘で日記といえば虚構だろうというのがひとつ(セルフパロディ)と、あとまぁちょっとした目論見があるのですが、その目論見は結局果たさないかもしれず、その場合は「虚構」の文字は外します。とりあえず今のところ書いてあることは単純な事実で、うちのぼっちゃんのリアルな日常の記です。ふつうに子育て日記としてお楽しみいただければと思います。

8月は募金箱を3度設置しまして(1日、4日、15日)、有難くも4万7668円が集まりました。ありがとうございます。Tさん、Hさん、Sさん、Eさんに別してお礼を申し上げます。

月の後半はもろもろ自信を喪失しまして募金箱の設置を日和りました。この戦争は本当にまだまだ当分続くんだなァということが今さらながらに納得されて、無力感を覚え、自分の文章の下手さにも嫌気がさしてきて、何よりひどいのは、感覚が鈍磨していることに自分で気づきました。8月オデッサが平和すぎたのもあるかと思いますが、切迫感を失いました。怒り、憎しみ、悲しみ、痛み、祈りを。そのことによって、ブログ更新を続ける大儀も失った気がしました。

それでも続けてはいます。それでも続けていくためのカンフル剤として、例の子育て日記とか、あと「ウクライナ戦争でもう何も感じなくなってしまった人のために」という記事を書いていて、近日公開します。

いないと思いますが以上をお読みになって逆に応援したいと思われた方のために一応募金箱を設置しておきます。このあつかましさがわたくしです。

何丘に「投げ銭」してみる

8月31日(夏の最後の日)

「夏の最後の日」8月31日、オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。州内某所で不発弾を含む物体を拾い上げた17歳少年が爆死した。わけわからん物体に触らないように、とりわけ子供たちに触らせないように。ОЖ

桃色の霧がオデッサを包んだ

31日払暁オデッサが海霧に包まれそこへ朝日がさして桃色の霧になったとかや。

高層階住んでる市民が撮影した由。ОЖ

霧はオデッサの秋冬の風物詩である。港のヴォロンツォフ灯台がぼーぼー霧笛を発して石畳の街路にこだまする。秋か。

新学年「ロシア語の授業はありません」

9月1日から新学年が始まるが、オデッサ市・オデッサ州ではロシア語の授業は行われない。授業は全部ウクライナ語で行われるし、時間割の中に「ロシア語」という科目はない。オデッサ州教育科学局長の弁。

ロシア語という科目は、必修科目としては存在しないが、ただし、教員および保護者の希望に応じて、選択科目として設置することはできる。ただし教育科学局としては「選択科目としてもロシア語を教えないよう推奨する」という。なんだそれ。本当なんなんだそれ。

ロシア語を選択科目として教えることは可能である。ただし我々は、すべての学校が必修科目としても選択科目としてもロシア語を教えないよう推奨する。

実際に学校はこの勧告を受け入れ、ロシア語学級というものは存在しないしロシア語の科目も存在しないという。その理由は、児童生徒の保護者たちが、自分の子供たちが侵略国の言語を学ぶことを望んでいないからだ、とオデッサ州教育科学局長。ОЖ

エカテリーナ女帝像やっぱ撤去?

オデッサ州からオデッサ市へ「例のエカテリーナ女帝像、撤去しなさい」と勧告が来た。「ついでにスヴォーロフ元帥像も撤去しなさい。エカテリーナとスヴォーロフこそがウクライナの地にロシア帝国主義を持ち込んだ張本人であり、オデッサが<ロシア世界>に属しているとの主張の根拠に利用されているから」。ОЖ

もともとこの話はゼレンスキー大統領宛ての市民請願という形で始まって、けれどもゼレンスキーおよびウクライナ文化省は「本件は地元議会で決めなさい」ということにして、んで当のオデッサ市議会は「本当に本件を我々で決めていいのかどうか分かりません」とよく分からないことを言って、うやむやにした(本記事8/23参照)。したら今度はオデッサ州の方から「とっとと決めよ」どころか「撤去おすすめです」とか言ってきた。なんなん。

世界遺産登録へ

かくしてウクライナ語を話す人々の住むヨーロッパの街オデッサは世界遺産の街となる、か。以下、本記事8/30付けで紹介した内容の補足:なにしろ30日、パリのUNESCO本部でウクライナ文化相とUNESCO事務局長が対談、UNESCOとしてはオデッサを世界遺産に登録する用意があるとのことらしい。んで世界遺産になったら、同時に「危機にさらされている世界遺産」にも登録される由。オデッサは戦線からわずか数十キロのところに位置しており、過去にはオデッサ造形芸術博物館(1899年会館)のガラス屋根および窓が損傷(※これは確か敵ミサイルを迎撃した際の爆風でということであったと思う、何丘)した。当該美術館の補修費がUNESCOから拠出されるそう。ОЖ

8月30日(ヘルソン/クリミア/文化遺産)

30日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。またこの日、オデッサ州庁舎にて、諸国の駐オデッサ領事が集まり、人道支援の在り方などについて話し合われたそうだ。ОЖ

ヘルソン

ヘルソン州を南北に分かつドニエプル川にかかる橋(敵の補給路として最重要)に対して追加の攻撃が加われた。「念のためもう一発」、石橋を叩いて壊す。УП

敵火誘導員(корректировщик)と呼ばれる人たちがいて、自軍の位置情報を密かに敵方に供与して攻撃を誘発する人のこと、これまでウクライナ側にいる親ロシアスパイのことを指す語としてメディアでよく目にした。今はヘルソンでロシアの占領軍が支配地域における親ウクライナスパイの摘発に躍起になっているそうだ。УП

クリミア

ゼレンスキー、定例のビデオメッセージで「クリミアの住民はロシアの軍事施設から離れよ。ロシア軍の基地および軍用飛行場の近くにいるな。それから、ウクライナの特務機関に占領軍に関する情報を提供してほしい、クリミアの解放がより早く進むように」УП。これはもう事実上、クリミアは政治(外交)で取り戻すというこれまでの公式的な立場を撤回し、クリミアは武力で取り戻します、クリミアにおける一連の爆発は私たちがやってます、と闡明しているようなものではないか。

またウクライナ大統領補佐官によると、ウクライナはすでにクリミアの積極的脱占領(активная деоккупация)の際のクリミアからの市民の避難ルートの策定に着手しているらしい。УП

オデッサ(世界遺産へ)

オデッサの世界遺産登録は実際近そうな感じだ。ユネスコ自体はオデッサの世界遺産登録をすでに支持しており、あと足りてないのは世界遺産委員会の各委員国の同意らしいのだが、「ユネスコは支持してる/だが世界遺産委員会の同意は未調達」という状態がどういう状態なのかはよく分からない。が、近そうな感じはする。詳しい人教えてください。УП

市長によるとオデッサには196件の文化遺産があってうち30が国指定。世界遺産に登録されるとユネスコが「文化遺産を保護」し「戦闘行為から街を守る」ことができるようになるそうなのだが具体的に何をしてくれる? ロシアのミサイルが世界遺産構成施設を破壊したとてロシアは「陋劣ナチスウクライナが世界遺産構成施設を軍事拠点化していたのでやむなく破壊した」と叫ぶだけだ。そもそも開戦以来オデッサの旧市街には一発もミサイルが着弾していない(ウクライナのPVOが撃ち落としたのかもしれないが)

オデッサ(冴えない話)

このブログは別にウクライナとかオデッサを賛美するものではない。応援するが賛美はしない。オデッサのダメな部分(についてオデッサでどのように話されてるか)わりによく知ってる。①歴史建造物のバルコニーが落ちた。

こういうものの保守点検が全然なされていない。壁とか屋根の一部(ひどいときには全部)がまま剥落・崩落する。だからベビーカーの散歩者など歩道の壁際は歩かない。今度のケース、建物は市一等地(エカテリーナ通り)に建つ1851年建造の市指定文化財で、事故の瞬間バルコニーにはまさに住人の女性がいた。すぐ下のカフェの庇が頑丈であったからよかった、負傷者なし。ОЖ

②海辺の「隠れホテル」営業に終止符。救護センターの名目で建設が許可されたが密かに営利目的で宿泊施設として機能していた施設。違法性の発生から10年ごしに撤去が成った。ОЖ

みんな海になるべく近いところに宿泊施設とか建てたい。だがビーチは公共財ということで市当局は海岸一帯への宿泊施設の建設を禁じている。それで開発屋さんはどう出るかというと、とりま福祉施設とか社会インフラの名目で登記しておいて、実際は密かに宿泊施設として運用する、ということをする。こういうことが可能であるのは当然不動産会社と市当局が裏で結んでいるからであろう、と皆さん話しておられます。私たちがよくいくエリアにもあまりにラグジュアリーな外観の「老人ホーム」がありました。

8月29日(南部奪還へ)

状況が動いている。南部が過熱している。

オデッサ州軍政長官(≒知事)マルチェンコが夕方の定例のビデオメッセージで「ウクライナ軍がヘルソン奪還に向けた反転攻勢を開始した」と明言。まずはヘルソン州の周縁部の奪還、本尊のヘルソン市についてはもうしばし待て、とのこと(ОЖ)。奪還作戦についてはつとに予告されていて周知の事実としてヘルソン州周縁部の奪還については既に着手がなされていた、だがこのほど軍部・高官が一斉に「開始」を明言しはじめた。

・軍発表:29日未明ウクライナ軍がヘルソンにおいてドニエプル川にかかる主要な橋(アントノフ鉄道橋・アントノフ自動車橋・ノヴォカホフカ橋)を全て破壊し、補給路を断ったところで、ドニエプル右岸の攻略を開始した。第一防衛線が突破され、ロシア軍の一部部隊が撤退(=一部村落を解放)。ОЖУП

・ゼレンスキー、定例ビデオメッセージで(抑制的なトーンで):どんな計画があるのか知りたいところだろうが、要職にある人間から計画など聞けるものではない。戦争だから。戦争とはそういうものだから。だが占領者どもは知るべきだ:我々は彼らを国境まで追い出す。我らの国境だ、国境線に変更はない。占領者どもはよく分かっているはずだ。もし生きていたいなら、ロシアの軍人たちは退散すべきときだ。家へ帰れ。もし自分の家に、つまりロシアに帰ることが怖いなら、投降して捕虜になれ。(捕虜の処遇に関する)ジュネーヴ条約の規定が全て遵守されることを保証する。УП

・米大統領府:ウクライナが南部で反攻を開始したとの情報は受けているが具体的な軍事作戦についてはコメントを控えたい。ただ、作戦の規模とは関係なく、ウクライナが南部での攻撃を拡大する見込みだとの情報そのものがすでに戦局に影響を与えていて、ロシアが東部の一部部隊を南部に回すことを余儀なくされている。ロシアは依然として人員難を抱えている。УП

・ウクライナ軍は被占領地の市民に対し早急に避難するよう呼び掛けている。「事態は急変しており状況は非常に流動的である」、そのため可能な限り早く避難し、またはシェルターを見つけて戦闘をやり過ごすように、と。またヘルソン州当局は市民に対し安全な場所(どこ?)に退避し食料・水・医薬品を備蓄するよう呼び掛けている。УП

・露メディアはウクライナ軍によるヘルソン攻撃で学校や住宅が破壊されたと報じるのみでロシア軍一部撤退のテの字もない。TASS

・ヘルソン占領当局高官:ウクライナ軍の反攻に関する報道はフェイクである。幻想である。誰もどこにも攻め込んでいない、誰も後退していない。ファンタジーだ。皆さん平穏な生活を続けましょう。ウクライナ軍の侵攻に関するキエフのフェイク声明はむしろ住民投票を行いたいという市民の欲求を高める。アントノフ橋だの学校だのに対する攻撃を受けてナチスウクライナへの復帰を求める住民の数は減る一方だ。反比例して、住民投票やりたい人、ロシアの一部に入りたい人、ロシア連邦の構成主体になりたい人はどんどん増えている。(反攻に関する)フェイク声明は「この悪夢を終わらせたい、住民投票したい」という願いを強化するばかりだ。TASS

伊紙のインタビューでオデッサ市長舌禍?

オデッサ市長がイタリアの新聞の取材に応えて語った。①エカテリーナ女帝像の撤去の是非②クリミア返還どうやって③オデッサは今後どうなるか?

①市中心部に立つ「市創建の母」ロシア大帝エカテリーナ2世像の撤去について市長は「反対」だそうだ。「撤去しても歴史は変わらない。同じ理屈でプーシキン像やガガーリン像も撤去しないといけないか?それに何の意味がある」

②クリミア返還について、市長は「露ウ両国は交渉の途に就くべき」だと述べた。「誤解しないでほしい、1991年の国境を回復することを切望している。だが一歩一歩合意していき段階的に妥協を模索すべきだ。対立を避けつつ」

③今後ロシア軍がオデッサ攻略にかかる危険については「然り、プーチンはまた挑んでくるであろう。だが、オデッサがハリコフみたいに爆撃されることはない、プーチンはオデッサを無傷な状態でほしいはずだ。私はペシミストではない、自分たちの勝利を信じてはいるが、戦争は長く過酷なものになっている、ヘルソンにおける反攻は遅々として進まない。プーチンは依然として北方よりオデッサを包囲し沿ドニエストルと支配地域を繋げることを夢見ている」。

イタリア紙にこのインタビューが載ると上記②に露プロパガンダメディアが飛びつき「オデッサ市長は(露と交渉しないというゼレンスキーの立場に反して)ロシアと交渉すること望んでいる!」と報道(TASS)、市長は釈明に追われた。「ロシアの言説をウクライナのメディアまでが拡散している。ロシアのニュースサイトからの引用→『オデッサ市長ゲンナージイ・トゥルハーノフはロシアとの交渉を呼びかけている』←これは徹頭徹尾ウソである。私は2月24日から繰り返し言っている:占領者どもはわが国全土から追い出されるべきだ、我々は完全に勝利するまで戦い抜く、あらゆる交渉はロシア人が我らの土地を立ち去ったのちに行われる、と。大統領は国民のリーダー!クリミアはウクライナ!ウクライナ軍を信じよう!我らのゆくてに勝利あり!」と市長。根も葉もないことではないだけに、火消しのためには相当パセティックな語用を強いられたと見える。

なお、先に行われた別のインタビューで、オデッサ市の副市長は反対のことを述べていた(本記事8/15付)。①エカテリーナ像はロシア連邦保安庁の肝いりで設置されたものであり撤去やむなし、③敵にとってオデッサは特別な町でも何でもなく襲撃の際には容赦ない攻撃が加わるであろうと。ОЖУП

被占領地の学校教育どうなる

ウクライナでは長い夏休みがあけて9月1日から新年度が始まる。ロシアに占領されている地域の子供たちも学校に通い始めるわけだが、ウクライナ側は「親ロシアの学校に通わないように」「ウクライナの学校がやっているオンライン授業に参加する、あるいは被占領地から避難するように」呼びかけている。親ロシアの学校に通うとどんなわるいことがあるかというに、

・反ウクライナの思想、ロシア式ナチズム、プーチニズムを植え付けられる
・親露カリキュラムで授業を行ったウクライナ人教師はウクライナ法に違反しコラボラント(対敵協力者)認定されて刑事罰の対象となる
・ロシアの占領軍は学校を軍事拠点化し児童生徒を「肉の盾」に用いるかもしれない

一方ロシアによって占拠されているマリウポリでは親露的な学校に通わせることを保護者に強要し、これに同意しない親からは親権を剥奪するとしている。УП

ロシア語で読み書き話し思考し夢を見る両親が、自分の子供にロシア語で国語算数理科社会を学ばせたい、さりとて図画工作の時間にゲオルギーリボンでZの字など折らせたくない、と思っても、ウクライナには選択肢がない。

8月28日(掃海/映画祭/猫)

28日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。一発ミサイルが発射されオデッサ州に空襲警報が鳴ったがすぐクリミアに落ち、もって警報は解除されたとの話もあり。ОЖ

無人掃海機

英国から6機の水中式自律型掃海機を取得して黒海沿岸の機雷の捜索を行うのだそう。無人機が発見してウクライナ軍が除去する。目的は港の方で穀物輸送の安全を高めることだそうで、ビーチを安全にするものではないっぽい。だがこういうものがあったのなら、言っても聞かぬ国民であることを当局はきちんと正面から認めて(コロナで学んだではないか?)、早期に調達して市民を守ってあげればよかった。だがもう言っても遅い。夏が終わる(ロシアとかウクライナでは季節を月割りで観念するので「夏」は8月31日で終わる)、7人死んだ。ОЖ

オデッサの映画がロシアの映画祭に

ロシア文化キャンセル問題の変奏、逆にロシアによる文化の包摂・抱擁にどう抗うか(抗うべきか?)という問題。ドストエフスキー生誕200周年(2021年)にあわせてオデッサの映画人たちによってオデッサで制作された映画「やさしい女」(ドストエフスキー晩年の同名短編より)がモスクワ国際映画祭で上映される。この映画祭の開催委員長を務めているのはニキータ・ミハルコフ。ОЖ

参加申し込みがなされた日付は2022年2月18日(侵攻以前)だというからそれ自体は責められないが「その後申し込みを取り下げなかったのは何故なのか、ということが問われる」。制作陣は沈黙しているそう。当該作品に楽曲提供した作曲家は「モスコヴィヤ(※モスクワの卑称)の映画祭で自分の名前がエンドロールに流れるなど我慢がならない」と憤慨。映画祭の選考委員会は「今年の参加作品の半数は『非友好的』な国々のものだがロシアはブラックリストなど作成しない。外国の参加をむしろ奨励している」。

すばらしい映画をたくさん作ったニキータ・ミハルコフは老境右傾化し国営テレビの冠番組「エクソシスト(Бесогон)」等で西側・ウクライナ・国内リベラルを悪罵し正教とロシア語とプーチンの国ロシアを賛美し続けている。明らかな戦犯。私はこの者の映画など生涯絶対に見ないと決めている。という私は何丘マニフェストの精神に完全に反しているだろう。ウクライナ/オデッサの人間がドストエフスキーで映画を撮ったという事実は露プロパガンダがロシアの文化的卓越性(そしてオデッサはロシアの街であるということ!)を鼓吹するのに必ず利用される。この一事だけからも、当該作品はやはりこの映画祭から引き上げるべきであったと思う。

ロシア軍の装甲車で用を足す猫

オデッサ某所で展示されてた敵軍の装甲車が地元ネコの便所になっている様子が動画で激写されてて笑ってしまった。末路。観たい方元記事へ→ОЖ

8月27日(子供/シェルター/船乗り)

27日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

子供たち

ロシアによる侵攻が始まってオデッサ州から転出した生徒(小中高)の数は5万5000人、うち約4万人が国外に出たそうだ。未就学児は2万3000人が国外に流亡。うち約1名が太郎。敵のミサイル攻撃によって損傷した教育施設は17件に上るそう。被害僅少のオデッサにしてこうである。ОЖ

残った子供たちにせめて夏の絵日記に記されることがあるようにとオデッサ州とトルコ領事館の共同事業として州内の子供47人にトルコ旅行させる。もう皆さんイスタンブールに着いてるそうで(船?)旅程は10日、移動費食費等タダ、たのしいエクスカーションが用意されているそうな。ОЖ

街中にシェルターを設置する

9月末を目処に小型のコンクリート製シェルターの設置が始まる計画らしい。敵ミサイルの破片などから市民を守るためのもの。イスラエルの経験を参考にウクライナのアーティスト・建築家・デザイナーらが共同で開発したもの。イスラエルのガザ地区ではこうしたシェルターが100mおきに設置されていて砲撃が始まると市民が5-7秒で身を隠すことができるようになっている由。ОЖ

まずは人口が密集する公園や停留所などに設置していく。設置例(イメージ)↓

ウクライナ各地に1000基設置する計画だそう。こんなものを設置するのにかかった費用も含めすべてを戦後ロシアが弁済すべきであることは当然だ。プラス、平和になったウクライナで1000基のシェルターはユニークな宿泊施設としてダークツーリズムに組み込まれウクライナの復興予算を潤す。こんな夢ばかり見ている。

船乗りの出国が許される

総動員態勢で男児の出国に厳しい制限がかかるなかウクライナ政府は船乗りたちの業務上の出国を許可する決定を下した。海および河を航行する船舶の乗員で船上での業務を継続する人、また船上実習を行う学生が対象という。ОЖ

ウクライナは船乗りの一大輸出国でたとえばオデッサ国立海洋大学出身者は貿易・観光の分野で世界の海で活躍していると聞く。私もいちど「飛鳥」の乗員で日本の港を訪れたことがあるという人に出会った。せっかくの高技能労働力が出国規制で無意味に国内でくすぶっていることはつとに問題視されていたがこのほどこういう形で解決したわけか。だが外国の港でそのままドロンしない保証はあるのだろうか。

8月26日(ねこ/脱共産化/世界遺産)

26日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

オデッサのたたかう猫ちゃんが切手に

LBWS CATなるグループがオデッサのあちこちの街角に描いてる猫ちゃんグラフィティが切手の図案に採用された(ОЖ)。「ポーランドありがとう」てやつと↓

↓あと聖ゲオルギイの龍退治。三叉鉾で双頭の鷲を突く(対艦ミサイル「ネプトゥーン」による巡洋艦「モスクワ」撃沈の寓意画)

↓ロシア船FUCK OFF/「地雷あり危険」の浜で悠々/敵船ふみしだく/バンドゥーラ奏でる/デューク(リシュリュー伯爵)像と水兵/戦時下の夫婦和合/月(?)/ジャヴェリン隊/蛇島の精を手なずける

オデッサ駅の脱共産化(続)

オデッサ駅の脱共産化は思ったより大がかりになりそうだ。先日横断幕で見えない可されたレーニン肖像だがこれはお友達のスターリン肖像とともにやはり撤去される。その他の「ソビエト時代のシンボル」も撤去されるという(ОЖ)。オデッサ駅には鎌と槌のレリーフとかある。「英雄都市」との文言も刻まれている(先の大戦で祖国防衛に戦功あった諸都市が英雄都市の称号をソビエト政府から贈られている、オデッサもその一つ)がこれもまさか撤去するか。

戦前、キエフの脱共産・脱ロシア化推進勢力はオデッサに注文をし続けるも当のオデッサはこれら「脱(де)」に消極的、との印象だった。鉄道駅に関しても「これは歴史建造物の不可分一体の一部ですから撤去は無理です」と言っていた。だが潮目は明らかに変わった。エカテリーナ女帝像は当面撤去を免れたようだがどうなるか。オデッサ市歌がロシア語の歌であることも問題視されて別の歌に変えろと注文を受けたこともあって、これもたしか拒絶していたのだが、蒸し返されたら今度はどうなるかわからない。ちなみにこの曲↓

Песня об Одессе | Белая акация | 1957

オデッサ旧市街を世界遺産に(続)

オデッサ市長がイタリア外相とオンライン会談しオデッサ旧市街の世界遺産登録について話し合った。T

イタリアといえば世界遺産の登録件数で世界第一の国。ヴェネツィアが今年オデッサの姉妹都市になっている。オデッサの世界遺産登録についてすでにイタリアの支持は取り付けている由。早晩登録は成るものと思っている。これに向けてはトゥルハーノフ市長以下、市当局の多大な尽力があった。戦時下ウクライナのオンライン外交はゼレンスキーの各国議会・諸国際機関における演説だけではない、自治体レベルの外交も目を瞠るものがある。といってオデッサのことしか知らんが、ことオデッサに関しては、このように世界遺産登録とか穀物輸送のことで一市長ふぜいがイタリアレベルの国の大臣と話すということもたびたび行われてきたし、各国メディアのインタビューに応じて(NHKも2~3度あった)盛んにロシア非難・ウクライナへの支援の呼びかけを行い、ウクライナの国際的イメージの向上に努めてきた。このようなことが各自治体の首長に推奨されているものと想像する。

ウクライナの地名が世界各国へ

ウクライナへの連帯を示すためにこれまで世界14カ国にある20の通り・広場がウクライナにちなんだ名に改称された。チェコ、ポーランド、リトアニア、ラトビア、アルバニア、スロヴァキア、ノルウェー、カナダ、ハンガリー、エストニア、スイス、フランス、アイスランド、ルクセンブルク、米国。世界といっても欧米か。УП

ちなみに、日本には広場という概念がないし道に基本的に名前はついていませんといって驚かれたことが何度かある。「は? じゃ、どうやって住所を特定するんだ?」

8月25日(結婚/投票/案外無能)

25日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

(改めて)独立記念日はどんな一日だったか

24日の独立記念日は期待されたよりは静穏であったがロシア軍による暗然たる恫喝はばっちり行われていたらしく、ロシア各地の基地で爆撃機が発進してあたかもミサイルを発射したかのような動きを見せてそのまま着陸する、という動きを実に200回ほど繰り返し、その都度ウクライナでは空襲警報が鳴った。空襲警報は全土で189回、地域により3時間~14時間にわたって鳴りつづけたという(УПУП)。なるほどこういう嫌がらせのやり方があったか。

多くは疑似発射であったが実際にミサイルが発射された事例もあって、8発が着弾、うちの1発が例の鉄道駅であった。死者数は25人に上っている。うち2人が子供。負傷は31人。УП

24日の独立記念日、新たに392組の夫婦が誕生した。「愛と平和と家族の調和、彼らの上に空青かれ」と法務省。独立記念日に結婚登記所が稼働するのは史上初だそうで、つまり例年なら祝日ゆえ役所もお休みであったところを今年は特別な計らいでオープンしたのか。行政サービス電子化の一環でДияと呼ばれる国民アプリで婚姻登録ができるようになったとかできるようになるとかいう話があったがどうなってるろう。何しろこのことを伝えるУП記事の若い男女の幸せそうな写真を見て涙ぐむ。彼らの上に空青かれ。私たちも6年前の今ごろ結婚した。こんな感じの写真をとった。

「住民投票」の実施形態

ロシアが占領地でロシア連邦への編入の是非を問う住民投票を実施(し、のち当該領域を併合)するとしたら、ある日を投票日と決めてその日に一斉に投票が行われるのでなく、住戸ごとに調査を行うという形をとる、とメリトポリ市長。同市長は占領当局からは排除されているはずだが当局内部には旧メリトポリ市役所から人員が大勢横滑りしているので情報は筒抜けであるという。その情報によれば、現当局には有権者を大量に投票所に駆り出すような力はなく、住民投票の統一的な実施日というのはあり得ない、「疑似住民投票」は調査票をもとに5日かけて各戸調査する形で行われる、とのことだ。現在行われている予備調査によれば住民投票実施に賛成の人は1割くらいで、少なくとも向こう2週間は住民投票は行われない見込み、という。УП

住民投票と併合というのはクリミアの悪夢の再来である。クリミアのような圧倒的支持はあり得ないとしても、過半数の賛成程度なら依然としてあり得るのではないか。上記のような国勢調査式の「住民投票」では国際的な選挙監視団による透明性担保はいよいよ困難と思われる。ロシアはここぞと選挙結果の大幅改竄に走る。完全なお手盛りで「編入」を実現する。編入さえしてしまえばこっちのものだ。――悪夢。

ロシアによる南部の実効支配をウクライナ軍が実力で揺るがすことに期待するほかない。(ヘルソンのアントノフ橋に再度の攻撃、橋の開通がまた遠のいたようだ。УП

追記
鶴岡さんの論考おすすめ。戦争をエスカレートするのはどちらか――ロシア・ウクライナ戦争における「語られ方」をめぐる攻防
住民投票、併合のち一方的な停戦宣言(そして実際に攻撃が停止する)、なるほど恐ろしいシナリオ。なるほど国際世論逆流のきっかけになり得る。

私はロシアによる一方的な停戦宣言を(それが行われたとして)まやかしであるとして斥ける自信はある。そこに関してロシアのナラティヴに屈することはない。ロシア側からの砲火の停止にもかかわらずウクライナが奪還のために火力を用いることを肯定し、それが正当であることをこのブログで力説するであろう。そのとき根拠にするのは①ロシアは黒海北岸完全制圧を絶対に諦めない、②敵にクリミアあればこそドニエプル左岸の攻略が成った、以後は同じプロセスが一つずつ西進していくだけだ(ヘルソンおよびザポロージェからニコラエフへ、ニコラエフからオデッサへ)、ということだろう。
だがついにオデッサまでが攻略され、その上でロシアが一方的な停戦宣言をなしたときに、同じ事が言い続けられる自信はない。読者に泣いて詫びながら私は今からロシア側に就くと宣言するかもしれない。ブロガー何丘はその日死ぬ。そんな日が来ませんように。

クリミアの爆発の心理的影響

ウクライナ国防省情報総局長官いわく、クリミアの一連の爆発はターニングポイントになったと。すなわち、世界第二の軍隊ことロシアが実際には全然大したことなく対空防衛網もザルッザルで、一時的に占領したウクライナの領土を防衛する能力がまるでないことが露呈した。いま住民自身が「戦争はまさに外でもないここで起こっている」ということを目にし、感じ始めている。УПГУР МО

なるほどクリミア市民はこれまで最強ロシアが一方的に攻めてる・仮にウクライナの気迷い弾がクリミアを襲っても最強ロシアの対空兵器が首尾よく撃ち落とす、となんとなく思って安心していたろう。それが実はそうでもない、「ロシアは占領地の防衛に関して案外無能」あるいは「ウクライナは後背地攻撃に関して存外有能」という認識が広まれば、クリミアのみかヘルソンやザパロージエの世論にも影が(光が)射すであろう。そう考えるとクリミアの一連の攻撃は軍事だけでなく心理面でもGood jobであった。

グッバイ・レーニン

オデッサ駅ファサードのレーニン肖像がバナーで隠された。脱共産化。キエフ当局からオデッサしっかりしろ街中のソビエト残滓を払拭しろと口を酸くして言われてもこの鉄道駅のレーニンに関しては「歴史建造物である駅舎の意匠であるから撤去しない」と突っ撥ねていたのだが。ОЖ

↑このレリーフをこのバナーで隠した↓

ペテルブルクお前もか(だよな)

サンクトペテルブルク市当局が市予算を投じてマリウポリのもとウクライナ防衛兵士記念碑が立っていたところへアレクサンドル・ネフスキー像を立てるのだそうだ。こんなことでペテルブルクの名前を聞きたくなかった。だが当たり前だ。ペテルブルクもロシアなのだ。УП

モスクワというのは(永田町、霞が関、兜町の伝で)プーチン政権の代名詞なので何丘が4年半暮らしたモスクワはもう負の連想で黒ずみきっているがその意味でその4年半に4度訪れご多聞に漏れず恋をしたサンクトペテルブルクはほぼ無疵であった。これ一発であの美しき聖ペテルブルクを嫌いになることはできないが。

8月24日(独立記念日/半年)

独立ウクライナの31周年を祝う24日、オデッサにミサイルは飛んでこなかった。オデッサは平穏無事であった。ОЖ

開戦半年、オデッサ州庁舎前広場で「2022年の子供たち」と題するインスタレーション。121基の対戦車ハリネズミに吊り下げられた363個のヘルメット。ヘルメットは子供たちによって彩色され、お花の鉢植えになっている。この戦争で死亡した363人の子供たちを象徴するものだそうだ。ОЖ

戦中フレイジオロジー

戦争始まって高官声明・報道・SNSで盛んに使われるようになったフレーズ、「ウクライナに栄光あれ」とか「ご機嫌ようこちらウクライナ」とか「なべてなれかしウクライナ」とかいう各種表現の元ネタがまとめられたОЖ記事。戦争がかの地にどのような「新しい言葉」を生んでいるかご興味の文化研究者さんに。

15分でわかるウクライナの歴史

ウクライナ国家記憶院による動画「15分わかるウクライナの歴史」。ウクライナ側の正史、ご興味の方。※ウクライナ語

Історія України за 15 хвилин (УКР субтитри)

独立記念日だからとて

独立記念日だからといってロシアは何も特別なことをしてこなかった。ウクライナの「独立」になど唾も引っ掛けない、完全な等閑視、下手に攻撃の烈度を上げると敵(ウクライナ)の団結および戦意をむしろ高めることになる、今は支配地域で住民投票を行う準備を粛々進める実利をとろう(ロシアは今週中にも住民投票実施を発表する可能性ありと米、УП)……といったところか。だが「それでも一発くらいは挨拶しとこうか」とばかり蛮ミサイル撃ってドニプロペトロフスク州の某鉄道駅(下図)を破壊した。

この攻撃で少なくとも22人が死亡、うち1人は11歳の少年、さらに50人が負傷したそうだ(УП)。何を思えばいいのか。これがそれなのか?24日恐ろしい攻撃が予測されると言われていた、その恐ろしい攻撃というのがこれか。「平常運転」「閾値内の蛮行」「ウクライナの独立を記念するものとしては弱い」こんな感想をつい持ってしまう。恐ろしいことだ。私には22人とか11歳とか50人とかいうのがただの数に見えたということだ。

国連安保理会合が開かれゼレンスキーもオンライン参加し舌鋒鋭くロシアを非難(УП)。また国民向けビデオメッセージでウクライナは永遠の独立国であると宣言(УП)。

昨日見た2つの動画(日本語)

①「テレ東BIZ」チャンネルの「戦局の行方~ウクライナ開戦から半年」と題する動画、小泉さん。

ウクライナ”勝利”の条件とは?開戦から半年【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(2022年8月24日)

じっさい西側がしかるべく武器を供与すればウクライナは勝ててしまう、だがそうするとロシアに黒トリガーを作られるので、失礼、核使用に踏み切られる危険があるので、敢えてその挙に出ない。これ聞いてやる瀬ない思い。この両日もオデッサまたウクライナ指導部のいさましき声明をいろいろ読んだ。勝利、勝利と言っている。空言か。結局は勝つも負けるも西また東のスーパーパワーの匙加減か。ウクライナの主体性って一体。

ドゥーギン(ナ)の話はおもしろかった。左右両極を排除、なるほど、(であれば)おぞましいことが起こっていますな。思考スルナ、か。ロシアはただ信じるのみ、か。

②「TBS NEWS DIG Powered by JNN」とかいうチャンネルの「戦時下のウクライナメディア」と題するルポ。

戦時下のウクライナメディア【報道特集】

戦時下のウクライナのTV報道(の自由)について、かなり突っ込んだ内容。たいへん興味深かった。この御仁ぐいぐい入っていく、また迎える方もこんなに見せてくれるかというくらい見せてくれる。国防省の定例記者会見で「(戦果にかんする大本営発表は承りましたので寧ろ)損失について教えてください、何人死にましたか」とぎょっとするような質問、あとで若い記者に「なんでもかんでも聞いていいというものでもないんですよ」とたしなめられているが、そうかと思うとあとで出てくる公共放送トップが「何より問題なのは現場の記者の自己検閲だ」と言っていて、報道の自由といっても一筋縄ではないということが浮かび上がる。チェルニーゴフの特派員が語った「私たちが伝えなければここで起こったことはなかったことになってしまう」という言葉が忘れがたい。

漫然と更新などしない。
お金もうけのためにやっているのではない。
祈りと共苦を絶対に手放さない。
(何丘)

8月23日(国旗の日/クリミアプラットフォーム)

快い驚き。独立ウクライナのシンボルであるウクライナ国旗の日=8月23日、オデッサにミサイルは飛んでこなかった。ひまわり畑も青空も震わせられなかった。願わくば24日の独立記念日当日も(そしてもう二度と)。

オデッサ港のヴォロンツォフ灯台に巨大な国旗が掲揚された。ОЖ

自分の感じ方も随分変わった。ロシアとウクライナについて思うことの記事を書いたときとは全然異なる境地、今はこの二色の旗をひたすらに美しいと思う。

ついでに国歌も

ウクライナ国旗の日ならびに独立記念日にあわせてオデッサの街角で歌手たちがウクライナ国歌をアカペラで歌い継いだ。動画。

Одеські музиканти заспівали гімн України

映し出される街並みは、最初の川の対岸の黄金屋根のならぶ景色はキエフ、45秒~オペラ劇場を中心とするそれ(空撮)はオデッサ。

エカテリーナ女帝像の去就、結論

オデッサ中心部のエカテリーナ女帝像は「市創建の母」の像でなく「ロシアの帝国主義的領土拡張」の象徴なのではないか、ということで撤去の是非が検討されていたが、とりま撤去せず存置ということに決まったようだ。ОЖ

そもそもは市民発の大統領あて請願だったが大統領は「地元のことゆえ地元議会で決めてください」ということで地元マターに降ろした。その地元(オデッサ議会の専門委員会)はそれでどういう結論を下したかというと、「撤去する権限が本当に我々にあるのかどうかわからない」だから決定は将来に延期する、と。なんだそれってな話だが、この茶番じみたたらい回しで問題がアウフヘーベンされ市民社会および行政のエネルギーが無意味な(と私の目には。少なくとも戦時の優先課題とは思われない)ことに費やされないで済むならよかった。

第2回「クリミア・プラットフォーム」サミット

クリミアのウクライナ復帰をめざす国際的な枠組みであるクリミア・プラットフォームの第2回サミットが23日開かれた(УП)。そこでゼレンスキーが語ったことには:

解放のあかつき、クリミアはウクライナの一部としてEUの一部となる。ウクライナのパスポートはEUのパスポートとなる。クリミアに住むすべての人にとって世界が飛躍的に広がる。クリミアの道路は欧州全土とつながる。クリミアの港は全欧州の港となる。シンフェローポリとベルリンを、またヤルタとナポリを繋ぐことができるのは、ウクライナだけだ。

またいわく:

ひとりウクライナのみが、クリミアの本当の安全を気にかけている。すなわち、浄水、ゴミ再利用、実効的な廃棄物処理規則、下水道といった問題を。そして、ひとりウクライナのみが、現代的かつアクセス可能な医療および教育、電子化された国家サービスをクリミアに与えることができる。

以下、何丘蛇足。前段はわりと心を打つのではないか。拒絶反応を起こす人もいると思うが、くすぐられる人はくすぐられる。すなわち、ロシア人の半ヨーロッパ人意識(優越/劣等感が表裏一体となった)をくすぐる。「全きヨーロッパ人」となることはロシア人の宿願である。自分たちこそはそれになることに道が開かれているのではないか、そうした地理的僥倖に浴する例外的存在なのではないか(なら再び「ウクライナ人」に戻るのも良いか)、という意識を覚醒させる気がする。(※ここで私はクリミアに住む人のことをロシア人と平然と呼び放っているが、じっさい、14年の住民投票で97%がロシア編入を是としその後8年をロシア人として暮らし今の戦争をロシア側から見ている人たちは「ロシア人」と呼ぶほかないのではないか)(※ロシアによるクリミア併合は犯罪であり異常であると1000%確信している、その上で言っている)

後段については、ウクライナが14年までそれをしてきたと思わないし、ロシアが今それをしていないとも思わない。私は親ロシア的な家庭・人間関係に長く暮らしたのでこの点に関してウクライナのナラティヴに対し強い免疫がある(あるいは親露言説に強く毒されている)。だから「ロシアにとってクリミアは軍事的に必要なだけで、そこに住む住民の福利厚生など一切眼中にない」みたいな説には違和感を覚えるが、とはいえロシアがクリミアを軍事基地化しているのは事実である。同じサミットでゼレンスキーはこうも言った(УП):

2月24日以来ロシアはクリミアから750発の巡航ミサイルを発射しウクライナの民生施設(学校、大学、住宅……)を破壊してきた。

オデッサのことも随分攻撃してくれた。私はいまクリミアでウクライナが行っている(のであろう)破壊工作は正当だと思う。関与してないテイで敵陣深くにおいて民間人に犠牲を出さずに軍事力だけ削いでいく手際に驚嘆している。エスカレーションは望まない、だから「クリミアは外交によって取り戻す」という公式的な立場はかえてほしくないが、このまま隠密裡にクリミアの非軍事化を進めてほしい、とは強く思う。それによってオデッサが少しずつ安全になっていくのだから。

同サミット参加の外国首脳の言も引くと、トルコのエルドアン大統領は「クリミア併合は反憲法かつ違法であるというのがトルコの当初からの原則的な法的・倫理的立場である。クリミアはウクライナと一体不可分であり、クリミアがウクライナに復帰すべきであることは事実上国際法の規定するところである」と述べたということだ(УП)。こんなに旗幟鮮明であったか。皆さん気を付けてください何丘は知ったふうにいろいろ語っていますがただの半可通、ド素人です。どの国がどの問題に関してどういう立場・温度感なのかきちんと把握できていない。トルコはもっと玉虫色(エルドアンはぬらりひょん)だと思っていた。トルコはクリミアの先住民であるクリミアタタールの民に対して一種の道義的責任を負うという立場から半当事国をもって任じているらしい。いずれにしろ黒海対岸の地域大国のこの鮮明な立場は有難い。

これから何が起きるか

ウクライナにとって最悪のシナリオは既に回避された(過去のものとなった)とウ国防相。УП。真意不明だがキエフが今から占拠されるようなことはおよそ考えにくい、みたいなことか。

24日の独立記念日はウクライナにとって大事な日、ゆえにこそ、敵にとっても大事な日である。挑発・扇動・大規模攻撃に備えよ、とゼレンスキー。УП


【余力があれば紹介したかった記事】
・ウクライナ避難民の子供が外国で教育を受けるに当たってどのような問題に直面してるかまとめ(УП
・ウクライナの不撓不屈ぶりを象徴する7つのできごとあるいはモノ(УП

8月22日(鉄道)

朝方オデッサ州にミサイル攻撃がありインフラが損傷した、という漠然たる公表。人的被害はないそうだ。ОЖОЖ

オデッサ←→モルドヴァ鉄道便

良いニュースとして、オデッサ州西部のベレジノとモルドヴァのベサラビャスカが鉄道便で結ばれたそうだ。99年に廃線となっていたものを再興したらしい。沿ドニエストルおよびドニエストルリマンにかかる橋を通過せずにウクライナ産品をモルドヴァ経由欧州に運び出せるルートの開通ということで喜ばれている。ОЖОЖ

独立記念日のオデッサは

きたる24日の独立記念日、オデッサは特に外出禁止時間の延長はしないそうだ。この日にあわせてロシア軍がウクライナに大規模攻撃をしかけてくるかもしれないといの観測から一部都市では終日の外出禁止令が敷かれるが、オデッサではそうした措置はとられない。いつも通り深夜早朝(23時~翌5時)のみ外出禁止。ОЖ

※オデッサでは過去3回、終日外出禁止令が出された。オデッサのナチスドイツからの解放を祝う4月10日、14年オデッサ商工会館焼き討ち事件の日である5月2日、ロシアの対独戦勝記念日である5月9日。

ウクライナ人にとって勝利とは

興味深い世論調査。「民主的イニシアチブ」基金が今月初頭に行った調査(УП基金)によると、ウクライナ人の9割超が戦争に勝利することを信じており、で彼らにとって「勝利とは何か」というに、

「ウクライナ全土からのロシア占領軍の完全追放、2014年1月時点の国境線の回復」55%
「同前、ただしクリミア除く」9%
「22年2月23日時点におけるステータス・クオの回復」7.5%
「今度の大規模侵攻でロシアが占拠した領土にロシア軍がとどまった上での停戦」3%

意外に妥協的な意見が多いと思った。一方で、強硬な意見として
「ロシア軍の完全な殲滅およびロシア内部における反乱/瓦解」20.5%

8月21日(5発/独立記念日の前祝い)

21日未明オデッサ州に5発ミサイルが発射され2発は撃ち落としたが、3発が農業施設に着弾した。小麦の保管庫などが損壊したという。人的被害はなし。ОЖОЖ

敵艦隊の増強

24日のウクライナ独立記念日に向けて敵(@ウクライナの独立など我慢がならない)が大規模な攻勢をかけてくるかもしれない。黒海では敵のミサイル搭載艦が増員していて、21日未明の攻撃も一種の「予行」である可能性がある、とウクライナ軍部。ОЖУП

記念コンサート

24日の独立記念日の前祝いということで21日(日)、目抜き通りのデリバーソフスカヤでコンサート。見てこの楽しそうな感じ。ОЖ

На Дерибасівській відбувається концерт до Дня Незалежності «Підтримай своїх».

事前のアナウンスは特になかった。大規模集会は攻撃の対象になりかねないとの危惧からだろう。24日当日は恐らく特段のイベントも行われまい。すでにハリコフほかいくつかの都市では終日外出禁止令が敷かれることが決まっている。なお、24日は開戦半年の日でもある(2/24-8/24)。記念日好きなロシア人はいかにも何か「記念的」なことをしでかしたがりそうだ。

8月20日(クリミア/ゼレンスキー/子供たち)

20日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

クリミア

クリミア穏やかでない。セヴァストーポリのロシア軍黒海艦隊司令部にドローンが接近し「司令部のすぐ屋根の上で」撃ち落とされた(Meduza)。また、クリミアにおけるテレビ放送がウクライナのハッカー攻撃でジャックされた由。ロシア国営「第1チャンネル」(露プロパガンダの本流)に突如ゼレンスキーが現れ、「クリミアを占拠しているロシアの役人どもに告ぐ:クリミアは君らの安住の地ではない」とか言ったとか(УП)。ロシア側(露の傀儡たるクリミア当局)は、一連の攻撃は軍事的に意味のあるものでなく住民への心理攻撃に過ぎぬので落ち着け、怪しき人・物体および事象については情報提供を、と呼び掛けている(TASS)。

ゼレンスキー

ゼレンスキーが定例の国民向けビデオメッセージで来たる一週間の見通しを示した。なんでも22(月)からの週は「ウクライナ国旗の日」23(火)「独立記念日」24(水)さらに「クリミアプラットフォーム」サミット23(火)とイベントが目白押しで、ロシアはここぞと「特別に厳しい、特別におぞましい」ことを仕掛けてくる可能性がある。あわせてゼ、「今こそクリミアの民も占領が一時的なものであり、クリミアはウクライナに還るのだと感じていることだろう」と。УП

そのゼレンスキーがロシアの侵攻についてアメリカから事前に情報を得ていたのに国民に知らせなかったとするワシントンポストの報道を受けてウクライナ国民の批判にさらされている、ということをロシアメディアが伝えているのだが(TASS)、侵攻しませんしませんといって侵攻した当のロシアがそれを言う捩じれ。「俺たちが侵略を開始することをせっかくアメリカが探知しウクライナに知らせてくれていたのにそれをウクライナ国民に黙っているなんて、なんと卑劣なんだキエフのナチス政権わ!」

子供たちの語る戦争

独立記念日を前にОЖ記者が公園で子供たちにウクライナとは何か独立とは何かと聞いて回った。動画。ОЖ

Маленькие одесситы рассказали про войну и независимость Украины

子供たちがこんなことしゃべってるのを聞くのは本当につらい。私の子供は3歳になる前にウクライナを出た。戦争のせの字も知らない。知らないままでいい。この子供たちはじょうずに大人たちの言葉を再生している。「ぼくらはウクライナをまもっている。ウクライナに栄光あれ!」「私たちは何にも依存しない。私たちは独立した国家だ」「ぼくの生まれたヘルソンは占領された。ウクライナに望むことはこの戦争に勝利すること、クリミア、ヘルソン、ドンバスを取り戻すことだ」「ぼくの大好きなウクライナ!」

このヒマワリ畑を抜ければ

兵役を逃れて隣国モルドヴァに逃げようとしていた若い男2人がヒマワリ畑で逮捕された。ОЖ

詳細:オデッサ州西部のノーヴィイ・トロヤーヌィ集落ちかくのヒマワリ畑を通ってモルドヴァへの不法越境を試みたところ国境警備に現行犯逮捕された。

ドイツにオデッサ広場

ベルリン・リヒテンブルク区のとある広場にオデッサ広場(Odessa-Platz)の名がつけられた。ウクライナへの支持と連帯を示すためという。T

8月19日(国連事務総長オデッサ訪問)

オデッサ静穏、攻撃なし。国連のグテーレス事務総長がオデッサを訪れ港にて今年収穫された小麦が輸送船に積み込まれる様子を視察、穀物輸送に関するウクライナ・国連間の協力拡大の可能性を討議したということだ。ОЖ

ウクライナ語 in オデッサ

まず「言語オンブズマン」という役職があって大統領の特命を受けウクライナにおけるウクライナ語の使用状況(裏を返せばロシア語の不使用状況)を監督する。で、その分身としてオデッサおよびウクライナ南部におけるウクライナ語の使用状況を監督する言語オンブズマン南部代表という役職が先般設置された(本記事8/4参照)。こちらはヤロスラヴァ・ヴィトコ=プリスャジニュクという女性。その人が市民と懇談の場をもち、オデッサの現状と今後を語った。ОЖ

問題となるのは第一にサービス(役所や銀行の窓口、商店や美容院やその他あらゆる接客業における接客)においてきちんと(ロシア語でなく)ウクライナ語が使われているかどうか。そして第二に、刊行物・掲示物がきちんとウクライナ語で書かれているかどうか。これを市民社会が監視し、違反事例については通報を行う。通報を受けたら一発目は警告、二発目は罰金。とはいえ当局は「決してハードでなく努めてソフトに、しかし根気強く」ウクライナ語使用を根付かせていくという。

特に苦情が多いのは「高ランクの行政官による公的場面でのロシア語使用」。その筆頭はロシア語ばっか使うオデッサ市長ゲンナージイ・トゥルハーノフその人であろう。先日「言語オンブズマン」クレメニが自身の南部における分身を任命するためにキエフからわざわざやってきたときも、市長および副市長との会談は実現しなかった。確執あるんだろう。

あと、大学教育にも問題があるそうで、義務教育からはロシア語が排除されて久しいが、大学の授業はロシア語で行われることもままあるそうで。また、義務教育以前(つまり幼稚園・保育園だろう)および以外(塾とかか)にも依然ロシア語による教授の慣行が残っている。だが、これらを網羅的に監督するのは困難とのことだ。

ロシア語常話者だがウクライナ語をちゃんと使えるようになりたい、という人のために、現在オデッサには無料のウクライナ語講座が多数存在するだ由。するだ由。

8月18日(国連トルコ宇/エカテリーナ女帝像/SNS)

オデッサ静穏。ОЖ

国連トルコ宇三者協議

国連のグテーレス事務総長とトルコのエルドアン大統領がウクライナ西部の街リヴィウを訪れ、それぞれゼレンスキー大統領と会談し穀物輸送の問題や原発の安全性の問題を話し合い、のち40分にわたり3者で会談したということだ。УПУПУП

文化相「オデッサのエカテリーナ女帝像、撤去やむなし」

撤去するのしないのという騒ぎになってるオデッサ中心部の「市創建の母」エカテリーナ女帝像についてウクライナ文化情報政策相がコメント、「私に言わせると明らかに撤去すべきだが決めるのは市当局だ。とはいえ市が撤去の意向を示したなら、同意するのに全くやぶさかでない」ОЖ。決めるのはオデッサだというなら黙っとけよ、なんで大臣がそんなはっきり「自分の意見」とか言うんだよ。

撤去のイニシアチブは脱ロシア化(дерусификация、ロシア的なものの社会・生活・景観からの排除)という全体的傾向を背景に①女帝はロシアの帝国主義(的領土拡張、その21世紀版が現に繰り広げられているところの)の象徴である②女帝は創建者どころか寧ろもともと当地にあったウクライナ的なものの破壊者である、というような主張を根拠としている。私のオデッサにおける家族や交友関係はこのようなナラティヴから遠かった。だから、このような主張が本当のところオデッサでどのくらい勢力を持っているのか知らない。

むしろ、私のよく知る人々にとって、オデッサとロシアの歴史的かかわりについておよそ否定すべからざるもの2つがエカテリーナとプーシキンだ。いざ撤去となったら、あの人々は、これをウクライナの不寛容・潔癖症・純化傾向が一線を超えたものと解す。今の(そしてこれからの)ウクライナを大変に居心地悪く感じる。そして私は、そうした人たちは、オデッサに少ないとは思わない。

要するに、像の去就はオデッサに新たな分断を生む。オデッサの半分を「ロシア世界」に半歩近づけることになりかねぬ。こんな面倒なことはなから言い出さないでくれたらよかった。私の個人的な願いは、立ってるものはあるがままにあらしめよ、ただしそのことについて、当局は上手な説明を、ということだ。

ウクライナ市民はどこでニュース見てるか

УПからの孫引きだがキエフ国際社会学研究所の調査によるとウクライナ市民の59%がSNSを情報源としている。2月末の開戦以来テレビの比率が下がっていて、タイムリーな情報を得るためにテレビからネットへの大移動が見られるという。で人気のSNS(ニュースの取得源として)トップ3はTelegram、YouTube、Facebookだそうだ。

8月17日(8月はじめての被弾)

未明オデッサ州に2発のミサイル、海辺の保養施設や民家が損壊、4人が中程度の怪我。公式発表では明示が避けられてるがどうもザトーカ(黒海北岸を代表するビーチリゾート)らしい。

国家非常事態庁オデッサ州支部声明「オデッサ市民には耳馴染みのフレーズ:『お宅らいいとこ住んでるねえ』『毎年こちらへ来てますよ』『フルーツがおいしくていいですねえ、オデッサのワイン最高です』。私たちは覚えている、彼らがどんなにオデッサのビーチを愛していたか。やってくる彼らを、私たちは快く迎え、兄弟民族の口から発せられる、これら虚言を信じていた。同じ彼らがリゾートを破壊し、我らの土地・我らの国をふみにじっている」ОЖ

逃がし屋 in 軍事委員会

おしょくのはなし。徴兵適齢の男子の健康状態をチェックし応召可能な人間の目録を作成する軍事委員会(военкомат)というものが各地にあるのだが、オデッサのとある軍事委員会の内部に「ビジネスマン」がいて、1人7000ドル(仮想通貨払い)で偽の健康診断書を発行、潜在的な兵力を合法的に国外に流出させていた。これまでに50人がこの仕組みで国外に出たやらいう。しめて35万ドルの儲け。ひとまず医師1人を含む2人が逮捕されたが他にも協力者がいるもよう。ОЖ

私の理解では、召集は2段階で行われる。①第一の令状で軍事委員会への出頭が命じられる。そこで健康診断を受け、徴兵適格と認定され、目録に登録され、②第二の令状が来たなら、それはもう入隊を強制するものである。ウクライナはいま総動員態勢であるが、①は済ませたが②が来ていない、あるいはそもそも①の令状も受け取っていない、という男子は普通にいる。少なくともオデッサにはいる。

で、どういう人を動員してるか(どういう人は動員してないか)について、ウ国防相。「動員については参謀本部で決めている。戦況の推移に応じてどの種類の人員をどの程度投入するか、どこを補充しどこを休ませ代わりにどんな戦力を集めるか決めている。基本的にはすでに十分量の動員がなされており、いまは特定分野のスペシャリスト(ドローン操縦、IT、通信など)を探している」。特定分野のスペシャリストの中には「いまウクライナ軍が供与されているNATOスタンダードのハイエンド兵器の取扱いにいち早く習熟できる人材」も含まれるそうで、さしずめ英語に堪能で英文の取扱説明書を読みこなしここをこうすればこうなるということの飲み込みが早い(機械物理にカンの働く)ITエンジニアの青年とかか(知人たち思い浮かべつつ)。УП

ウクライナ当局の釈明変遷

УП「ウクライナは戦争にどの程度準備ができていたか――当局声明の変遷」と題する記事。ゼレンスキーたちはロシアによる侵攻の可能性をどの程度に評価していたのか。昨年末から今年はじめにかけて、国民たちに何を語っていたか。また開戦以来、自分たちの「沈黙」をどのように正当化してきたか。各時点の要人発言まとめ。時間と気力があるとき改めて紹介す。検閲削除されるかもなと思ったのでとりあえず全文コピーしておいた。

クリミア

CNNもクリミアにおける一連の爆発にウクライナ軍の陰ありとか報じたということだ(УП)。ほんでウクライナ情報総局によると一連の爆発にビビってクリミア半島のロシア機がロシア本土の方へ大移動しているらしい(УП)。ロシアの主観ではクリミアはすでにしてロシア本土なのでクリミアへの攻撃は越えちゃいけない一線である。そうと知ればこそウクライナ側は絶対に私がやりましたとはいわない。だが条理で言ってウクライナ無関係ということはまさかないだろう。ということは、うまくやったのだ。すこし有能すぎないか。敵陣深く、こんなことができてしまうのか。実にうまくやったものだ。

8月16日(クリミアどうなってる/ゼレンスキーなぜ侵攻予告しなかった)

オデッサ無事。ОЖ

クリミアで何が起こっている?

16日朝および昼、クリミアで相次いで爆発。

朝方、左の地図の場所で弾薬庫が爆発、現地には軍の駐屯地があったとの説あり、変電所や鉄道線路が損傷、近隣住民に避難勧告。昼すぎ右図の軍用飛行場で爆発、被害の規模未詳。УП

ロシアおよびクリミアにおけるその傀儡は爆発は「破壊工作」によるものと(УП)。ウクライナ側は基本的にノーコメント。だがNYTによると一連の爆発は「敵後方で暗躍するウクライナ軍のエリート部隊によるもの」との説あり。「ウクライナは開戦当初から規模において自軍を圧倒する敵に対し非伝統的な戦術で反撃を行っている」УП

ウクライナ側の基本スタンスは「クリミアは飽くまで(軍事でなく)外交交渉によって取り戻す」というものだった筈だ。どうなってる?

ゼレンスキー「なぜロシアの侵攻についてウクライナ国民に事前に予告しなかったか」

アメリカから情報を得ていたのにどうして国民に注意喚起とか避難勧告とか備蓄奨励とかを行わなかったのか。ワシントンポストによるインタビュー。要するに「情報が詳細でなかった、情報は情報としてでは必要な武器をパートナー諸国が供給してくれるのか定かでなかった、そもそもこれほどの蛮行は誰にも想像できなかった」「予告していれば無用の混乱を引き起こし、手に武器をとり戦うべき人たちが開戦前に大勢国外流出し、結果キエフは3日で陥落したであろう」УПУП

大統領発言を私の言葉で要約させてもらうと結局「①個々の生活者の生活の破壊を最小限にとどめることと②国が『戦って勝つ』ことを天秤にかけて、②のほうを選んだ」のだ。これが倫理的に正当なことなのかどうかは議論があって然る。また、だとしても、もっとできることがあったのではないか。隠密裏に地対空警戒態勢をMAXまで引き上げて24日早朝のミサイル攻撃をすわきたかと迎撃しまくるとか、予想されるキエフへの侵攻ルート上にそれこそ対戦車地雷を埋設しまくるとか……市民社会に知られずにこっそりできる範囲で、最大限の備えを本当に取れていたのか。

これらのことは、むろん、WP一紙のインタビューなどでなく、戦後、特別に第三者調査機関が設置され、入念な調査が行われるべきだ。

請願:男性の出国を許可してください(続)

本記事8/2付けで紹介した大統領への請願(徴兵適齢の男性の出国の容認を求める)だが、これにゼレンスキー答えまして、これこれの法律によると戦時下・戒厳令下のウクライナでは兵役は全国民の義務であるとか、戒厳令下において国境管理(出入国禁止)を行うことにつき国家は有権であるとかと、オールお役所言葉でけんもほろろに突っぱねた。起草者の落胆が見える。УП

ウクライナ人のアイデンティティ

「あなたは何人?」との質問に対し、84.6%が「ウクライナ人」と答えた。キエフ国際社会学研究所がウクライナ全土の市民2000人に対し7月末行った調査。「(住んでる街の)市民」と答えた人が4.8%、「(住んでるエリアの)エリア人」と答えた人が1.3%、「〇〇民族」が3.3%、「ソビエト市民」が0.9%、「欧州市民」が1.6%。УПКМИС

傾向を見ると、独立まもない92年は「ウクライナ国民」と自己規定する人の割合は45%にすぎなかった。それが2004年オレンジ革命、2014年マイダン革命を経て徐々に高まっていき、それでも22年2月には64.6%に過ぎなかったが、この5か月で84.6%まで爆増した。愛国心の爆発のあとは地金が露出していく期間がある。だが全体としての右肩上がり傾向は14年以降決定的になり、今度のことでさらに決定的になったと思う。ウクライナはウクライナ人の国家になる。それはもう間違いのないことだと思う。

選択肢の中に「ロシア市民」は含まれていない。義父母や義兄、その他友人知人たち、あいつだったらどれに票を投じたろうかと考える。あの人だったら(「ロシア市民」がないのであれば)「オデッサ市民」もしくは「ソビエト市民」に入れたであろう。あなたはどうですか。帰属を問われたとき、他の誰であるよりもまず、あなたは何人ですか。横瀬町民ですか。秩父人ですか。日本国民ですか。アジア人ですか。

オデッサで雨が降ってる。都市設計がスマートでないのでちょっとの雨でも道路は川になる。ゴミ箱がR2-D2みたいに行儀よく流されてて笑った。

同じく、街路樹。夏のオデッサは緑がいっぱいなのはすばらしいが、ちゃんと維持管理してないので、ちょっと風が吹くと街路樹がばたばた倒れる。

特にアカシアが弱い。これも多分アカシアだと思う、オデッサを象徴する木/花。T

8月15日(あと何人死ねば/一体なにがこの畜生どもをして)

マルチェンコ兄(オデッサ州トップ)の定例ビデオメッセージ要旨。ОЖ

まず、オデッサ静穏。ミサイル飛んでこず。

んで、昨日のザトーカの散華者は2人でなく3人だそうだ。同じ爆発でさらに2人が負傷。「あと何人死ねばビーチ訪問禁止を人たちが遵守するようになるのだろうか!?」とマルチェンコ。修辞的疑問というやつだろう。ならないよ。遵守するようにはなりません。コロナも結局そうだったじゃん。

あと、治安当局による敵スパイの摘発が引き続き行われている。今度拘束されたやつは例によってウクライナ軍の配置や移動についての情報、飛行場・橋梁その他重要インフラについての情報を敵方に渡していて、また武器だの、敵機(無人機?)を誘導するための発光発煙装置だのを所持していたということだ。「一体なにがこの畜生どもをして自らの国・同胞たちを裏切らしめるのか!?」とマルチェンコ。

散華(詳細

上記ザトーカの一件、警察発表によると、土建屋5人が禁を破って海に入って「未確認物体の爆発により」チェルニーゴフ男(25)ザパロージエ男(32)ジトーミル男(53)が爆死、チェルニーゴフ男(43)キエフ女(44)が負傷(ОЖ)。各地からいらっしゃっていた。休養で来ていたか。ザトーカは黒海沿岸を代表するリゾート地。あるいは避難民か。比較的安全なオデッサにはウクライナ各地から10万人が疎開してきている由。

スパイ(詳細

上記スパイの一件、容疑者はオデッサ州内のとある国立医療機関の職員だそうで、ロシアの特務機関が差配する非公開テレグラム(というSNSがあります)チャンネル複数で親ロシア的言説を振りまいていた。自ら志願して敵諜報機関と協力関係に入り、下記情報を敵方に供与していた。①防衛拠点の正確な座標②施設の状態、施設の建材、軍による当該施設の利用目的および様態③諸施設における人員・装備品およびその移動④防塁の数。敵はこれら情報を破壊工作活動計画立案ならびにミサイル攻撃の標的策定に利用していたということだ。ОЖ

ロシアの特殊軍事作戦によってウクライナは非ナチ化されるべきだ、オデッサはナチスキエフから解放されてロシアに編入されるべきだ、そのために必要とあらばわが街にミサイルを撃ちこんでくれ、ただし子供たちは殺さないでくれ、軍人とその装備だけを精密に無害化してくれ、そのために情報を与える……。このように考える者の存在が、ウクライナの14年以降のロシア語抑圧政策と無関係であるとは思われない。ウクライナがクリミア併合にもかかわらずロシア語やロシア文化への寛容を貫いていたら、対敵協力者の思想的根拠はごっそり奪われたのではないか。それ(寛容)が困難だったことは重々認めるが。

いずれにしろ、対敵協力者を最後の一人まで炙り出すことは不可能だろう。ウクライナ市民と侵略軍参謀との「コラボレーション」は続く。軍や行政当局の中枢に協力者がいないとも限らない。大分あとになってみないと分からないだろう。永遠に露見しない話もあるだろう。

オデッサ副市長が露メディア「雨」に語った

オデッサ副市長がロシアの独立メディア「ドーシチ(雨)」のインタビューに答えた(ОЖ)。要旨抜粋、何丘蛇足。

オデッサ金甌無欠幻想の解体

「戦争初期には『オデッサは特別なのだ、オデッサにはロシアは手を出さない』という幻想を抱いた市民も多かったが、市中心部の集合住宅がミサイル攻撃を受けた一件(※4/23、8人死亡)でそうした幻想も吹き飛んだ。殺人者に聖なるものなど何一つないのだということを思い知った」

実際こんな言説をよく聞いた。義父母も友人たちも皆そう言っていた。誰もがニワカ軍事評論家になって(私もそうでした)、敵の狙いはドンバスとキエフだ、これこれの理由でオデッサは大丈夫なのだ、と話していた。実際オデッサはウクライナ有数の大都市であり地政学上の要衝であることが明らかなのに戦争最初の一か月、無事すぎた。しかし4月22日にロシア軍高官が「特殊軍事作戦は第2フェーズに入った、そこでの目標はウクライナ東部および南部の完全掌握である」と述べて、その翌23日にオデッサ中心部の高層アパートがどかんとやられて一挙に8人が死亡、未聞のことであった。それから5月9日まではまことに苛烈な(といっても今のニコラエフほどでない)攻撃が加えられた。

オデッサ引き剥がし工作はあったか?

――市行政当局中枢に対しロシア側から『ロシア側に寝返るように』とのアプローチはあったか?
「幸いそうした接触はなかった。が、最初の一週間~10日くらいは、この機に市行政を転覆しようという野党からの試みがあった。やれ我々がロシアのパスポートを所持しているだとか、我々はロシア世界の尖兵だとか事実無根のことをいって揺さぶりをかけてきたが、そのうち『今は戦時だ、こんなことをしている場合ではない』という理解が行きわたったようだ」

いまオデッサ市行政を取り仕切っているのは20年の統一地方選で勝利した「実務への信頼」党の人たちで、これはキエフの政権に対しては野党、一言で言って親露政党であった。たとえば同選挙でゲンナージイ・トゥルハーノフ市長改選に向けた重大公約の一つは市内のジューコフ通りが14年以降「天上の百人」通りに改称されていたのを再度ジューコフ通りに改称しなおすというものであった。ジューコフというのはソ連軍人(元帥)で天上の百人(ニベースナヤ・ソートニャ)というのはマイダン革命で倒れた闘士たちの諡号である。この公約は結局果たされないまま、戦争が始まると市長は180度転向、反露親ウの急先鋒となった。ゼレンスキーも驚いた(と当人が語っている)。私の感想は「政治家だなぁ」の一言である。あっぱれなまでに政治家。「最初の一週間~10日くらい」にどちらに就くのが得策か一生懸命考えたことだろう。

オデッサにおけるロシア領事館の暗躍

「2014年までのオデッサでは在オデッサロシア領事館を通じてのロシアの影響が甚大であった。領事館はスパイ活動および『ロシア世界』普及の震源であった。その資金で大規模イベントが行われたり記念碑が建てられたりした。エカテリーナ女帝像もロシアの大規模な資金援助で再建されたと聞く」

いま撤去が取り沙汰されている「市創建の母」エカテリーナ女帝像だが、これは1920年にもともと立ってたやつが撤去された跡地へ、2007年になって再建されたものだという。そこに「オデッサはロシアの街だ」と印象付けようとするロシア当局の暗躍があったということなら、がぜん撤去やむなしかという気がしてくる。(私はどちらかというと撤去に反対でした。オデッサ市がエカテリーナ治世のロシア帝国においてエカテリーナの肝いりで創建されたことは否定しようもない事実じゃん、と)

なお、ロシア領事館はオデッサ随一のビーチリゾートである「アルカディア」の入口脇少し入ったところにでーんと居を構えている。いた。2月24日の大規模侵攻開始直前にこの領事館の煙突から秘密書類を焼却する煙がもくもく上がって、館員たちは避難していった。今もぬけの殻。

ウクライナ語・ウクライナ文化の発展に尽くす

「国語の発展に尽くす。とりわけ戦後はウクライナ文化・ウクライナ語の全面的発展に尽くす。とはいえ、正常な・民主的な・文明的な・自由なウクライナで、ロシア語でしゃべりたい、ドストエフスキーやチェーホフを読みたい、という人がいたとしたら、そうすることは完全にその人の自由だ」

いずれにしろここまでこちら側に振り切った人たちがロシアによってオデッサが占拠されたあかつきに公職追放されるのは目に見えているので、この人たちはオデッサが占領されることがないように最大限がんばってくれる。それはいいことだ。

何丘@ごほごほ療養中です。
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8月14日(静穏/散華)

静穏。穀物輸送も順調。ОЖ

8月入って2週間、オデッサには一発もミサイルが来ていない。「オデッサではもう戦争終わってる説」。とはいえ隣のニコラエフには小止みなく攻撃が加えられてるしザポロージェでは核の危機、ヘルソンでは秋冬にかけて滅ぼし合いが行われるらしくて露軍は増強・ウ市民には退避が呼びかけられているそうだ。何丘がまだオデッサにいれば「二つの現実」とか言ってることだろう。

浜の散華(case5)

オデッサ州ベルゴロド・ドニエストロフスキー地区ザトーカのビーチで(禁止を破って)渚に遊んでた男たちが謎の爆発物に接触し、2人が死亡、1人が負傷。浜の散華者これで7人。ОЖ

アントノフ橋にまた攻撃

ヘルソンにおける占領軍弱体化にとって重要なアントノフ橋(詳しくはこの語で本記事検索を)にウクライナ軍がまた攻撃を加え、再々度橋を通行不能な状態にしたという。敵は「今月半ば」の復旧を目指していた。敵が懸命に直す、直ったところをまた壊す、これを繰り返すのか(ハイマースで?)УП

16日追記:ウクライナ軍によると、とりあえず戦車とか重機は通行できないレベルに損傷はしているそうだ。なんだか頼りないような。УП

動画(オデッサ中心部)

いい散歩。いま世界遺産登録を目指しているオデッサ旧市街とはまさにこの部分。エカテリーナ広場~ゴーゴリ通り~海岸通り。ゴーゴリ通り沿いの中庭(дворик)いい感じ、「サイレン」という名の猫。

Одесса 14 августа 2022. Прогулка по центру. Атмосфера. Екатерина. Гоголя. Сабанеев. Много людей.

8月13日(無事)

静穏。ОЖ

(動画)オデッサの海。私たちのよく行ってた浜。無人。

Одесса 10 августа 2022. Пляж «Два Шара». Много ли людей купается в море?

このあたりの市中心からすぐのところはわりとよく警備監視がなされていて人らもルール順守、よくいうルール無用の無敵の水浴者たちが出没するのはもう少し街はずれの。

8月12日(いつもの話題)

静穏。ОЖ

ウクライナで「ロシア世界」に生きる人(続々)

いつもの話題。テレグラムでロシアの侵略を正当化・肯定し、キエフの独立広場(マイダン)でロシア軍が行進する日を待望する等と述べていたオデッサ男が治安機関に拘束された。ОЖ

どうやって摘発してるのだろうか。ネット検閲なのだろうが、ウクライナ当局はどのくらい強いそれをかけている? 今回は比較的罪のないケースだと思うが、リアルに自軍の動向を敵に教えて敵の攻撃を誘致している人もいる、彼らはどのくらい数が多いのか。根絶することは可能なのか?

逃がし屋(続々)

これもいつもの話題、徴兵適齢の男性の国外逃亡幇助。国境通過歩ポイントを迂回してモルドヴァに逃がすルートで若者を運んでいた36歳および39歳のヘルソン男が現金授受の瞬間を押さえられた。「運賃」は300ドルと驚きの低価格。通例は1500~9000ドルという。ОЖ

ウクライナの津々浦々でこういうことは行われている。キエフには弁護士・医師らから成る(成ってどうする?)逃がし屋組織、ハリコフにはロシア経由でEUに逃がす逃がし屋、ザパロージエにはクリミアに逃がす逃がし屋、チェルニーゴフにはベラルーシに逃がす逃がし屋。УП

こうしてニュースになるのは「氷山の一角」なのだろうか。明るみに出るケースと出ないケースの割合はどんなもんだろう。

と思えば「国際青年デー」だった12日、ウクライナ軍総司令官という人がウクライナ国防省に対し、学生くらいは国外に出してもいいのではないかという照会をかけたということだ。実現したらすごい。УП

小中学校でロシア語を教えるか否か

9月からの新学期、キエフ、リヴィウ、ジトミル、ニコラエフではロシア語は必修・選択問わず教えないそうだ。オデッサはまだ旗幟鮮明にしていない。УП

コールセンター

NHKのこのニュース

すばらしい取り組み。こうしたことが戦争の終結を少しでも早める(終結の可能性を少しでも高める)と信じたい。

8月11日(マクドナルド)

静穏。ОЖ

劇場前広場がリニューアル

こんなのは知ってる人にしか興味ない話題だがオデッサのオペラ劇場の真向かいにソビエト英雄および勤労英雄の名が刻まれたバカでかいモニュメントがあって、今度それが撤去されて劇場前広場が全体的に新たな外観を帯びることになった。再開発案のコンペが行われる。へーえ脱ソビエトと言いながらこんなものがまだ存在できてるのかぁと意外の念に打たれた種々の公然たる「例外」がこうして排除されていくのだろう。ОЖ

マクドナルドが再稼働?

戦争はじまって休止していたウクライナのマクドナルド店舗が西部やキエフで再オープンするらしい。オデッサに関しては「戦闘行為が継続中」ということで当分オープンしないそうだ。ОЖ

まず閉まっていたことを知らなかった。オデッサのマクドナルドというと芋洗いの混雑がすぐ連想される。何丘のごときもともとあんまりこういうものを食べない人間からすると一体何が人たちをここへと駆るのか訝しい(もっと安くて美味い店はいっぱいある)が、それが好きな人の身になってみると、奇しくもマクドナルドがその市場を放棄したところのロシアでは居抜きでパクり店がオープンして市民はいちはやくMの口福を回復した。被害国のウクライナがより長くそれを奪われ続けるというのはいかにも不公平なことだ。

しかしオデッサでは「戦闘行為が継続中」か。8月入って一度もミサイル飛んできてない、それまでだって散発的に飛来するに過ぎなかったが。敵が特殊作戦第2フェーズの目標はウクライナ東部および南部の完全掌握と宣言してから4か月。この目標はその後下方修正されてはいない。そうか、オデッサはキエフより危険……なのか。戦争初期にぼかぼかやられたキエフと違ってオデッサには破壊のイメージがついていない。あるいは私の目がそうした未来視を拒んでいる。

世論調査

米NPOの発注でウクライナの調査機関が6月末に行った調査によると、ウクライナ国民の98%が戦争に勝利することを信じており、またゼレンスキー支持率は91%にのぼる。後者の内訳は「明確に支持」59%「どちらかというと支持」32%で、4月に行った同様の調査では「明確」74%「どちらかというと」20%。無視できない変化だと思うがどう説明されるのだろう。УП

8月10日(クリミア)

静穏。ОЖ

この静穏は隣のニコラエフが敵弾を一身に受けていることに依っている。ニコラエフにはその隣のヘルソンから攻撃が行われている。ヘルソンが敵に取られなければニコラエフにここまで苛烈な攻撃が加わることはなかった。敵にクリミアがなければ開戦初期にヘルソンが取られることもなかった。

クリミアの敵軍飛行場の不時の爆発について。ゼレンスキー「この爆発で敵戦闘機9機がオシャカになった」УП。英国防省「原因不明だが、西側兵器による攻撃の線は薄い。煙草の燃えさしによる失火でないことだけは確か」УП。米ISW(戦争研究所)「露が『宇による攻撃』と言わないのはそれを言ってしまうと自軍の対空防衛網の無能を認めることになるからだ(cf. 巡洋艦モスクワ)。同時に二か所で爆発が起きた以上、露側の失火説は否定される」УП。クリミアでは非常事態令が敷かれているそうだ(УП)。

クリミアの人たちのことを考える。14年までウクライナ人であった人たち。97%が望んで(ということになっている)ロシア人になった人たち。この5か月半、ウクライナがボロボロに破壊されていくのをただ見ていたのだろうか。クリミアからオデッサへニコラエフへまた全土へ、ミサイルが飛んでいくのをただ見ていたのだろうか。この人たちは「ウクライナ人」だろうか。「解放」されるべきなのだろうか。

ウクライナ軍マルチェンコ少将「ウクライナは軍事的手段によってクリミアの解放を行う。その際に必要となるのはクリミア大橋(クリミア半島とロシア本土を結ぶ。ロシアがクリミア併合後に建設)の破壊だ」「クリミアはウクライナだ。我らの土地、我らが人民、それが未だに占領下に留め置かれている。勝手に来て人の土地をもぎ取って『俺のだ』などと言う権利を誰もロシアに与えてなどいない」УП

8月9日(無事/クリミア)

静穏。ОЖ

クリミアで爆発

クリミア半島西岸のロシア軍の飛行場で大きな爆発が相次いだ事象がウクライナメディアでも大きく取り上げられている。

ウクライナからミサイルを飛ばしたり爆撃機を飛ばすにはあまりに敵陣深く、そもそもウクライナはクリミアの軍事的手段による奪還を非現実とみて目標には掲げていない。ウクライナ国防省「原因わからない」УП、ウクライナ大統領補佐官「キエフは本件に無関係、もしかしたら現地パルチザンの独断専行かも」УП、ロシア国防省「火器取扱い基準違反により弾薬が爆発したものとみられる」TASS

ゼレンスキー「欧州随一の名所であった・であるべきクリミアをロシアは軍事基地に変えてしまった。クリミア占領から始まったロシアの戦争はクリミア解放をもって終わるべきだ」УП

何丘はクリミアに行ったことがない。風光明媚というが伊豆半島を知ってる私を感動させるかな?と疑っている。義父母は私をクリミアに連れていけないことを大変残念がっていた。あのすばらしいクリミアをお前は知らないのだなぁと哀れまれていた。14年までは義父母は毎年クリミアで夏の二週間ほどを過ごしていた。写真を見してもらった。「なぁんだ、ただの伊豆半島じゃないか」と思った。実は15または16年に当時住んでたモスクワから旅行でクリミア行こうという話になったがロシアのクリミアなど絶対に訪れたくなかったので拒んだ。だがクリミア行きたく思わない一番の理由はたぶん自分が乗り物酔いするからだ(西伊豆とかソレント半島みたいにつづら折り&上り下りの海岸線を延々車で走るイメージ)

8月8日(ニコラエフ/橋/DX相談)

オデッサ州に一発ミサイルが飛ばされたが上空で撃墜した。穀物船も順次出航してってる。ОЖ

都市封鎖のニコラエフで

対敵協力者摘発のため50時間超のロックダウンが敷かれたニコラエフだが、この間指名手配犯5人の身柄が確保され、20件の刑事事件が立件された。「ご迷惑をおかけしたが、その甲斐はあった」とキム知事。УП。これによってニコラエフがどれだけ安全になったのか。

アントノフ橋

ヘルソンのアントノフ橋(本記事この語で検索を)に追撃が行われた。ロシア側の発表によると攻撃に使用されたのはHIMARS、だが被害は僅少で、8月半ばにも通行可能な状態を回復する由。УПTASS

YouTubeでウクライナ語字幕の自動生成機能実装

YouTubeで機械翻訳によるウクライナ語字幕が付された動画の視聴が可能になるそうだ。「これで世界中のおもしろコンテンツをウクライナ語字幕で見られるようになる」宇デジタルトランスフォーメーション相談(しょう・だん)。ウクライナ当局は世界の各種リソースをウクライナ語で享受できるよう多くの世界的企業と交渉を続けており今回はその一つが実った形だという。すばらしい。УП

何丘は、ウクライナ語の国際的地位の向上(ロシア語のそれの相対的低下)を望んでいる、わけではない。が……是認する。そうなるのは良いことだと思っている。世界でロシア語人に対して図られていた便宜と同等のものがウクライナ語人に対して図られる。それが小国(政治経済軍事上の)を大国政治の客体と見る見方を戒めるひとつの象徴になると思う。(私の立場は「ロシアとウクライナについて思うこと」を書いたときからかなり変化している。私がそのうちキエフをキーウと表記しだすこともあり得る(それとオデッサをオデーサと記すことには百里の径庭))

8月7日(無事/浜)

オデッサ静穏、攻撃なし。ОЖ

こう平和だと仕方ないか。オデッサのとあるビーチで撮影された写真ですと。ОЖ

記事全訳:何ごともなかったかのようにビーチに出てくる一部オデッサ人たち。機雷で爆死する、またはミサイル攻撃にあうリスクなど考えたがらない。▽戦闘行為が続いていることに鑑みオデッサではビーチに降りることが禁止されている。これは当局の恣意ではない。波打ち際には潮流によって機雷が打ち寄せられることがあり、またロシアのミサイルによる攻撃も続いている。▽ビーチがそうした攻撃の標的になることもあり得る。あるいはミサイルがビーチの上空で地対空兵器によって撃墜され、残骸が降り注ぐこともあり得る。▽すでに数件の死亡事故があった(オデッサのビーチで機雷に触れて死亡した人は5人を数える――何丘)。しかし多くのオデッサ市民およびゲストたちはこれを不幸なネズミがネズミ捕りにかかった寓話か何かのように受け取り、性懲りもなくビーチに出てくる。▽今回、記者のカメラがオデッサの某ビーチの模様を撮影した。多くの人がのんきに浜に遊んでいる。いつ機雷が爆発しミサイルが飛んでくるかわからないというのに。

空言、とこれをいう。

侵攻始まって以来オデッサには10万人が避難

オデッサはウクライナの大都市として例外的と言ってもいいほど被害僅少の街である。この5か月半で「わずか30人ほどしか」死んでいない。隣のニコラエフが一身に攻撃を受けている。というわけでウクライナ各地からオデッサ州に多くの市民が疎開してきている。その数、8/3時点で9万3575人ですと。ОЖ

「7月の活動報告」という記事を書きました。7月食べておいしかったもののことなど書いています。あわせてお読みください。

8月6日(無事)

5日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。8月入ってから一発も飛んできてない。ОЖ

橋のかわりに船で(続)

ドニエストルリマンの東岸にあるオヴィヂオポリと西岸のベルゴロド・ドニエストロフスキーを結ぶ旅客フェリーが就航するのだそうだ。ロシア軍のミサイル攻撃で損傷し通行不能となっている例の橋の代替手段。(本記事8/1付けで触れた件の続報と思って可)ОЖ

8/9追記:就航しました。ОЖ

逃がし屋(case6)

case6は適当だが、徴兵適齢健康優良男児国外不法逃亡幇助の話はずっとある。今度の話が面白いのは、組織者はどうやら欧州域内の船舶修理・乗組員管理会社の指導部で、オデッサらへんの船舶修理スペシャリストらをリクルートして沿ドニエストル・モルドヴァ経由で欧州に逃がして高度技術者として採用するという一気通貫スキームであった。これまで20人ほどが同サービスを利用、新たに3人を移送中のところを摘発された。ОЖ

沿ドニエストル越境までの一人当たりの「運賃」は3000米ドルというから安くない。沿ドニ入ったら2月25日付け(まだ禁足令が敷かれてなかった)の出国スタンプを押してもらい、書類上も合法的な出国者ということにしてしまう手はずという。手がこんでる。

船乗りとか港湾労働者は実入りと人聞きのいいオデッサらしい職業である。オデッサ国立海洋大学を出て欧州の商船とかクルーズ船とかに勤務するのが伝統的にエリートコースとされる。欧州からするとそこそこ技能の高い英語もできる労働力の安価な調達先として重宝していたろう。くすぶってる人材プールに手を突っ込んできた形か。

今日のアネクドート

ОЖのお家芸「本日のアネクドート」気が向いたのでまた紹介す。

Абрам прогуливается с Сарой по Одессе. Проходят мимо ресторана. Сара говорит:
– Ой, как вкусно пахнет!..
– Тебе понравилось? Хочешь, еще раз пройдем?
アブラムとサラがオデッサを散策中。レストランの前を通りしなサラがいう:
―まあ、いいにおい!
―気に入ったか? もう一回通るか?

なお、オデッサのアネクドートに出てくる熊さん八つぁんたちは大体ユダヤ人である。(名前からわかる)

7月ウクライナで発表された楽曲の集成byУП。いろんなジャンルから13曲集められてます、興味ある方一聴を。

8月5日(穀物船/アムネスティ/ニコラエフ閉鎖)

5日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

新たに3隻

さらに3隻の穀物船がオデッサの港から出発した。トルコ、英国、アイルランドにウクライナ産トウモロコシ5万7000トンを運ぶ。ОЖ

AIウクライナ辞任

アムネスティ・インターナショナルの4日付け報告書(日本語メディアで十分報道されてると思うので詳細省く)の内容を不服として同団体ウクライナ支部の代表が辞任した。その人にいわく「ことばの壁にぶち当たってすべてが砕けてしまった。というのは何も英語力の問題ではなくて、こういうことだ:自分の住む国に占領者が闖入してきて国を八つ裂きにしつつある、というときに、それに立ち向かう防衛者たちを非難するということが一体どういうことなのか、この事態を内側から経験しなかった人には到底理解できない。この痛みを感じなかった人にそれを伝える言葉などどこにもない」УП

何丘は、ウクライナ軍が学校だの病院だのを軍事拠点として利用することがあることを、別に疑わない。直接の証言に接した例もある。だがそのことの責めがウクライナに向かうというのは私には不可解である。そこに民間人がいるならロシアは撃たなければいいではないか。そもそもロシアが攻めてこなければこの全てはなかったではないか。ウクライナの戦術がそれとして非難されるべきことは認めるが、その非難をなすものは、その十倍の非難をロシアに向けねば均衡を失する。

ニコラエフ、2日間のロックダウン

お隣のニコラエフで5日23時から8日5時まで丸二日間の外出禁止令が敷かれる。市境は閉鎖され街路に人も車も通らないという静寂の二日間。狙いはというと、本記事7/20および7/26付けで記した通り、対敵協力者(коллаборанты)の炙り出しだそうだ。УП(だがどうやって?)

なお、ニコラエフ当局は敵火誘導員(корректировщики)に懸賞金をかけている。有用な情報には100ドルの報酬が支払われるそうだ。

下図、敵の猛攻から子供たちを守る聖ニコライ(ニコラエフの守護聖人)。ウクライナ郵便が最近新たに発行した切手の絵柄。ОЖ

ヘルソンはロシアへの編入を(そんなに)望んでいない?

ロシア大統領府に近い情報筋の言葉をMeduzaが伝えたところによると、ロシアは9月11日の統一地方選に合わせてウクライナ東部二州(ドネツク・ルガンスク)と南部二州(ヘルソン・ザパロージエ)で住民投票を行い同地域をロシア連邦に編入(私たちの言葉でいえば併合)する企てであるが、まぁ実施は難しいであろうと。難しい理由①ドネツク全域はいまだ掌握できず、ヘルソンでは今後ウクライナ軍が反転攻勢をかける見込み。②7月半ばにヘルソンとザポロージェで秘密裡に世論調査を行ったところ、ロシアへの編入に賛成と答えた人は30%、反対と答えた人も30%で、クリミアのとき(賛成97%)のような結果は到底見込めない。支配地域における露プロパガンダは今のところそう奏功してるとも言えないと。だがここに関しては「親ウ住民は投票忌避し親露市民は熱票を投じるであろうから結果はかなり編入賛成に傾くであろう」との声も。

改めて、現状でも3割がロシアへの編入に「是」、これをどう見るか。


自分用メモ:
ウクライナ国民の74%が正教徒、54%がウクライナ正教の信徒(УП

8月4日(検察官/ゴーゴリとブルガーコフ)

4日オデッサは平穏。クリミアから一発オデッサ州の方へ「オニクス」ミサイルが発射されたが海上で爆発した由。ОЖ

穀物輸送も今年の収穫も順調で、ロシアでは謎の写真を持ち出して「オデッサではパンを求める長蛇の列(キエフは政治的ええかっこしいのために穀物輸出に踏み切ったが当のオデッサでは飢饉が発生している!)」などとうそぶいているが真っ赤なフェイクであると。ОЖОЖ

国語監視委員

言語オンブズマン(языковой омбудсмен)という役職があってたぶん大臣の格だと思うのだが、何をする人かというと、ウクライナにおける言語状況の監視・ウクライナ語使用の促進を担う。要するにロシア語撲滅担当大臣である。タラス・クレメニという人がその役を務め、これまで遠いキエフからオデッサに対してウクライナ語化を進めろ進めろと口やかましく言ってきてたが、このほどその分身がオデッサに置かれることになった。オデッサおよびウクライナ南部全域のウクライナ語使用状況を監視するのはヤロスラヴァ・ヴィトコ=プリシャジニュクという女性。「検察官が来たぞぉ!」である。どーなることやら。ОЖ

右がその女性、隣の黒Tがオデッサ州トップ(マルチェンコ)、その隣の白シャツが言語オンブズマン(クレメニ)

公教育からのロシア文学の排除、の例外(ゴーゴリ、ブルガーコフ…)

ウクライナ教育科学省によりますと、9月より学校教育から全面排除されることになったロシア文学ですが、ウクライナで生まれた/ウクライナに長く住んだ/ウクライナに関する著作をものした作家については、ロシア語作家であってもカリキュラムに存置することにしたそうじゃ。具体的には、ニコライ・ゴーゴリの諸著作、ミハイル・ブルガーコフ「犬の心臓」、イリフ&ペトロフの「12の椅子」などは読む。「外国文学」の科目で。もちろんウクライナ語訳で読むのだろう。УП

あれをしろ、これをするな

ロシアの街ペルミに一朝出現し翌日には消し去られたストリートアート。今のロシアでしていいこと・してはいけないこと37ヶ条が動詞の命令形でただ列挙されている。それにいわく、

そこへ行くな、ここに立つな、
それは歌うな、
そこに座るな、その中に座るな、
それを食うな、それを聴くな、
それを点けるな、買うな、
それを言うな、そいつと寝るな、
それを見るな、それを着るな、
貶めるな、崇めろ、
それを描くな、そいつに投票するな、
これを支持しろ、
それは書くな、それをフォローするな、
異を唱えるな、そいつを敬え、
騒ぐな、祈れ、こうべを垂れろ、
もっと低く腰を折れ、
拡散するな、擁護するな、
あげつらうな、やりすぎるな、
思考するな、その気になるな、
産め、邪魔するな、
支払え、ひっくり返せ、
でもこいつは揺さぶるな。

Ffchwというアーティストの作品だそうだ。Meduza

今日のアネクドート

ОЖが戦時下でもお家芸の「今日のアネクドート」をせっせと綴っているのでたまには紹介する。

– Сёма, завтра приезжает моя тёща. У меня совершенно нет времени. Можешь поехать на вокзал и встретить её? С меня сотня.
– А если я её не узнаю и не встречу?
– Тогда с меня две сотни…
明日嫁のお袋が来るんだけど俺時間がなくてさ、お前悪いけど駅に迎えに行ってくれないか?100やるから
俺お前の嫁さんのお袋さん知らないんだけど会えなかったらどうする?
そしたら200やる

洋の東西問わず、姑に会うのは気が重い。なるべくなら会えない方がいい。

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8月3日(スパイ/赤紙/横浜)

3日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

スパイ捕獲

ロシア連邦保安庁がウクライナ国内に構えていたスパイネットワークが摘発され、その組織者を務めていたオデッサ市民が拘束された。ОЖ

男は露側から「教授」のコードネームで呼ばれていた。ウクライナ各地から情報提供者を募りスパイネットワークを形成、軍・作戦本部・対空/対艦兵器の所在、地域の社会・政治情勢、重要インフラについての情報をロシア側に提供し、火力の誘導を行った。この働きに対して露側からは男に報酬が支払われ、男は協力者にそれを分け与えていた。

金銭給付のみのためにこれほどのことができるだろうか。良いことをしているつもりであったかもしれない。ナチス政権の支配からウクライナを解放するために、母なるロシアと合体してより自然な状態をウクライナが回復するために。一種の加速主義、より良い未来の到来を早めるために、社会の破壊に手を貸す。いずれにしろ、破壊の客体の側からは、八つ裂きにしても足りない。

赤紙

赤紙(повестки)について。ウクライナでは総動員態勢が敷かれているが、それは何も男が全員軍隊に駆り出されているということではなく、徴兵適齢の健康優良な男子は誰でも軍隊に駆り出される「可能性がある」という状態のことだ。だから①徴兵適齢(18~59歳)の男性は国内に留まっていなければならない(国外に出ることが許されない)し、②赤紙(召集令状)の発行が盛んに行われている。赤紙というのは一義的には徴兵適齢の健康優良な男児の目録の完全化を目指すもので、それを受け取った者に軍事委員会への出頭と健康診断の受診の義務を負わせるものである。ただちに前線に送られるという話では全くない。

というわけで、①と②が行われる社会のなかで、若い男がふつうにそこらをほっつき歩いていることはできている。わが義兄もその一人である。それ自体別段咎められるべきことではない。だが日本だったらどうだろうか。日本が今のウクライナの状況になったら、少なくとも義兄など相当白い目で見られるのではないか。内部からの圧力/下からの突き上げによって結局国民皆兵みたいな状態が成立するのではないか。また、オデッサのごとき、ミサイルがときどき飛んでくる「に過ぎない」街と、苛烈な陸上戦が行われている街とでは、また空気も異なるであろう。

ОЖに赤紙についての記事あったので。よく質問を受ける事項。

アリガトヨコガマ

昨日付けでも書いたが、オデッサが横浜市(※姉妹都市)からもらった水の浄化装置を使って、あちこちの汚い水を浄化してみる実験を行っている。T

オデッサは別に水に困っていない。だが水道インフラを破壊されると非常に困ることになる。ロシアのミサイルは非常に高性能で環境に優しいのでオデッサ市民100万人から浄水を奪うようなことはまさかしないであろう。隣のニコラエフではたまたま当たっちゃったのだろう。そう、しかし、たまたまということはどこまでもついて回る話なので、備えておくに越したことはない。

今回は街外れの戦勝記念公園(парк Победы)のお池の水を横浜の浄水機にかけてみたら飲用に適する水準までキレイになりましたということで、我々はその水の汚さを知ってるので装置の高性能に驚くとともに、本番前に酷使しすぎじゃないかと心配にもなる。

ともあれ、これまで姉妹都市でありながら存在感皆無であったヨコガマが連日タイムラインを賑わせていてこれはこれ自体慶賀すべきことだ。横浜市がいまやるべきことは、目下進行中のオデッサ市内の道路名称改変、これに一枚噛んで、市内の一等地に「ヨコハマ通り」を成立させることだ。

道路名称の改変とは……
なんとなくソ連時代から存在している意味もなくソ連的・ロシア的な名称を、まぁロシアは敵国だしソ連は恥ずべき過去であるからということで廃止して、新たに自分たちに意味のある、なんなら今の戦争で協力してくれてるパートナー諸国の地名・人名を冠しよう、ウクライナにはモスクワ広場よりロンドン広場が、レーニン通りよりジョンソン通りのほうがふさわしい、というムーヴメントだ。

長年ロシア的世界観に親しんだ市民にはアングロサクソンへのアンチが強いが、ヨコハマはいい具合に無臭である。同様に姉妹都市関係であるマルセイユ(フランス)に関してはいいとこにマルセイユ通りがありプレゼンスを誇っているが、ヨコハマ通りは知る限り市内に存在しない。この千載一遇の機会に、ヨコハマ通りを作るのだ。ぼさぼさしてるとつい最近姉妹都市になったヴェネツィアに先を越されるぞ。

ただしガガーリン広小路からガガーリンを奪ってしまうのはおすすめしない、ガガーリンはおじさん世代には今も人気が高いので、アンチを食らう。毒にも薬にもならぬ、かついいとこにある道路名称をハックすることを奨める。

跫音

ロシア軍はヘルソン州全域を掌握すべく戦力をウクライナ南部に集めているそうだ(УП)。「テロリストどもは交渉の用意ありとうそぶくが本当に戦争を終わらせたいならなんでウクライナ南部に予備役を結集させるんだ」とゼレンスキー(УП)。先にウクライナ軍が損傷させることに成功したヘルソンのアントノフ橋は来週にも復旧し通行可能になる由(УП)。敵はさらにこの付近に新たに渡河ポイントを設け船舶による兵員輸送を可能にしようとしているという(УП)。悲観の材料で浴槽を満たせる。

8月2日(対敵協力者/世論調査/請願)

ちょうど3年前のこの日何丘オデッサ入り。

8月2日オデッサは静穏、ミサイル飛んでこず。1日出航の穀物船は無事黒海を横断したそうだ。ОЖ

対敵協力者A

SNS「テレグラム」上で親露チャンネルを運営しロシアによる侵略を擁護、現行のウクライナの憲法体制の転覆・権力掌握を呼びかけたオデッサ女性に、禁固3年の判決。ОЖ

同人は今年5月半ばから約1か月にわたり反ウ親露チャンネルの管理人としてたとえば次のような檄文を拡散した:
「ロシアオデッサ共和国(Русская Одесская Республика)。オデッサよ、ノヴォロシア諸都市の住民よ、武器を手に取り自らの自由のために戦え、それが無理なら街頭に出よ、血と虚偽に塗れたキエフの傀儡政権からの離脱を求めて行進せよ!力を合わせてロシア連邦への編入を成し遂げよう!我らの参加なくしてこの虐殺は止まらない。手を拱いているときではない!ファシストどもに知らしめるのだ、ロシア人をナメるなよと。ウクルファシストどもを我らの土地から焼き払え!」

何丘の感想:ОЖのこの記事、こんな過激な文章をガッツリ報道で取り上げてしまっていいのだろうか。これ自体が檄文の拡散に当たらないか。あまりにどぎついのでむしろ滑稽にして無害という判断だろうか。

女性は容疑を全面的に認め、真率な改悛ならびに、ボランティアセンターで働く意向を示しているそうだ。5月半ばまでウクライナにいながらにしてロシア世界的世界観を保ちえた強靭な精神力の持ち主が、何があって改悛に至っただろうか。ひとえにwonder。

対敵協力者B

さっきのはただの扇動だがこちらはリアルに利敵行為。ニコラエフの男性が市内のウクライナ軍拠点および重要インフラに関する情報をロシアのインターネットコミュニティに拡散した疑いで治安機関に拘束された。男性のもたらした情報は実際に敵諜報機関の攻撃目標策定に利用され、複数の軍事/民生施設の攻撃に結実した由。有罪と認められれば禁固8~12年が科せられる。ニコラエフの「ナチスからの解放」を願ったロシア世界信者。こんな話はごろごろある。УП

ロシアの社会調査A(ロシア人の3分の1が天動説を信じている)

全ロシア世論調査センター(ВЦИОМ)が科学リテラシーに関する調査を公表、それによると、ロシア人の35%が「太陽が地球を周っている」と信じており、しかもこの数字は増加傾向にある。この15年前で「天動説」信者は7%増加した由だ(УПВЦИОМ)。今の状況とあわせて、情報鎖国の中で妄想的世界観の濃縮が起きている、という印象を禁じ得ない。実際にはそんな鎖国でもないわけだが。

時節を合して伝えられた世論基金(ФОМ)の調査ではロシア人の約7割が一度もロシア国外に出たことがないらしい(УПФОМ)。日本と比べるとまだ低いのかもしれないが、欧州の国としては異様な高さと思う。外の世界を知らない、外の世界が怖い、内向き志向、夜郎自大、等の感想が走るがこういう憶断は危険だろう。だが示唆的ではある。

ВЦИОМとかФОМとかいうのはクレムリンの息がかかった調査機関で、西側がプーチン支持率とかを分析する際にはあまり参考にされない。

ロシアの社会調査B(プーチン支持率)

いっぽうレヴァダセンターというのは独立性の高い調査機関ということで西側から信頼されている。その7月末の調査が公表された。サプライズは何もない。驚くほどの恒常性。

■ウクライナをめぐる状況をウォッチしているか?

非常に注意深くウォッチしている25%、それなりに注意深く31%、特に注視していない32%、全く追っていない11%(最下段を見ればよい)。前月、さらに前々月と比べて変化なし。

■ウクライナにおけるロシア軍の行為を支持しているか否か?

明確に支持48%、どちらかというと支持28%、どちらかというと不支持10%、明確に不支持8%。つまりは76%が支持。これも前月さらに前々月から驚くほど変化がない。以上こちら

一方、同じレヴァダセンターのこちらの調査では、7月末時点のプーチン支持率は83%。不支持は15%。

表の一番右が2022年7月。左隣(6月)やそのまた左(5月)と見ていっても何ら変化がないのが見て取れるだろう。侵攻始まった2月時点では動揺が見られたが、その後は完全に硬直した。この間ブチャがありクラマトルスクがありマリウポリがあり、その他もろもろあったわけだが。始まったからには完遂されるべし、その過程で起こる大抵のことは看過する、というわけか。

これ見る限り、ロシア世論は少しずつ解体していっているなどという幻想はちょっと抱けそうにない。主戦論といよりは容認論なのだと思う。概して後者の方が解体は困難であろう。

請願:男性の出国を許可してください

総動員態勢のウクライナでは徴兵適齢(18~59歳)の男性の出国を原則禁止しているが、この禁止を解除してほしいとの請願が2万5000人の賛同者を集め、ゼレンスキー大統領の検討にかけられる。同様の請願は過去に2度行われたらしいのだがゼレンスキーは「国家防衛は市民の義務である。同じことを戦没者の遺族たちに言えますか。前線ではウクライナ軍人が毎日50~100人も死亡しているのだ」とけんもほろろであった。

3度目の正直となる今度の請願は女性が起草したもので、レトリックに工夫がみられる。第一に、戦力もう十分なんじゃないか説。2月24日以降逆に外国からウクライナに帰還した男性は11万人を数え、領土防衛隊には10万人を超える志願者が登録しており、外国人部隊には2万人の戦士がいる。ウクライナ軍の人員は23万人を数え、内務省には16.5万人がいる。総計して62.5万人もいて、うちの絶対多数が教練を終えており、武器の取扱いに通じ、肉体的・精神的に一定仕上がっている。この上新たに素人をリクルートするには及ばないんじゃないかと。

第二に、ウクライナにはIT系・技術屋・クリエイティブ畑の人材が多くいて、彼らは変に軍隊に徴用するより外国で避難民など助けつつまた外貨を稼いで軍隊に仕送りしつつ情報戦線で戦わせた方が適材適所でないですか。

第三に、特定のカテゴリーの人間の出国を禁ずるなんて、それを克服しよう卒業しようとウクライナが努力してきたところのソビエト時代の慣行そのままじゃないですか。УП

唱道者および賛同者の本音は、平和な市民であるわが夫・恋人・弟・パパ(あるいは自分自身)を軍隊にとられたくない、家族一緒で国外に逃げたい、というところだと思う。でもそれを言うにも言い方というものがある。うまく工夫したものだと思う。

ウクライナから「プーシキン通り」「ガガーリン通り」を一掃せよ

ウクライナ文化情報政策省が国内の道路名称に採用されているロシア人名の一種のブラックリストを作成した。ウクライナにはガガーリン通りとかプーシキン広場が多すぎると。別にその地にゆかりもないのに(仇敵たる)ロシア人の名がつけられているのは不当であり、改称すべきであると。УП

ウクライナの道路名称にムダに採用されまくっているロシア人名トップ10は下記。
・ユーリイ・ガガーリン(宇宙飛行士)
・アレクサンドル・プーシキン(詩人)
・イワン・ミチューリン(生物学者)
・ワレーリイ・チカロフ(パイロット)
・マクシム・ゴーリキイ(作家)
・ミハイル・レールモントフ(詩人)
・アレクサンドル・スヴォーロフ(軍人)
・ウラジーミル・マヤコフスキー(詩人)
・アレクサンドル・マトロソフ(軍人)
・ウラジーミル・コマロフ(パイロット)

「その生涯と活動がウクライナおよびその歴史・科学・文化と何ら関係がないロシア人にちなんだ通り・広場・街道の名前」が問題である由なので、たとえばオデッサだと、目抜き通りであるプーシキン通りは存続(プーシキンはオデッサにゆかりがあるので)。だがガガーリン広小路は改称されるであろう。

横浜からもらったアレで水を浄化する

オデッサは今のところ(隣のニコラエフと異なり)浄水・飲用水に困ってはいない。だが今後の戦況の推移によっては困るかもしれないので、浄水の取得方法の多角化を進めている。その一環で、先に姉妹都市である横浜市から供与された33機の携帯式水浄化装置を使って、あちこちの貯水池から採取した水をきれいにしてみて、飲用その他の用途に適するかを調べる。という話題。横浜の名が出てきたので一応。T

8月1日(鎌月/出航)

8月はウクライナ語でСерпень(鎌月)、刈り入れの月である。今年の穀物の収穫ももう始まっている。そんななか、長く港に留め置かれていた昨年分の収穫が、ようやく海に出た。

1日朝、戦争始まって以来の穀物船の出航、汽笛はオデッサ市旧市街に鳴り響いたということだ。シエラレオネ船籍の船で、ウクライナ産トウモロコシ2万6000トンをレバノンに運ぶ。「これで世界的な飢饉が回避され、ウクライナ経済は10億ドルを下らない収入を得る」とウクライナインフラ相(ОЖ)。「ロシアが穀物輸出を台無しにする試みを自重してくれるなどという幻想を我々は持っていない。先の合意の諸安全規定が遵守されるかどうかに全てがかかっており、その責任は一義的には国連とトルコが負う」とゼレンスキー(УП)。

オデッサ港にはまだ16隻の船がいて出航の順番を待っているということだ。

エカテリーナ二世像の去就「自分たちで決めてくれ」

本記事7/13付で紹介したオデッサ市創建の母エカテリーナ二世女帝像を市中心部から撤去してはという請願、2万筆の署名を集めると自動的に大統領マターに上げられるということで、このほど多忙なゼレンスキー大統領の検討にかけられ、当たり前すぎる結論:オデッサ市議会が決めるべき事項であるによって、どうぞオデッサ市議会でよく話し合って決めてください。ОЖ

ちなみに跡地にはゲイポルノ男優像を立てようという話であった。

詳しくは7/13の項を。忙しい大統領を下らない話で煩わせて罪なことを? いや、クスリと笑ったはずだ。こういうのは好きなはずだ。ユーモアの街オデッサから大統領閣下への暑中見舞い。

橋のかわりに船で

ドニエストルリマンにかかる橋がロシア軍の度重なるミサイル攻撃によってつとに通行不能になっていることにつき、かわりに船を出して旅客輸送を行おうという話になっている。ОЖ

上図に見える砂州の切れ目、ディーゼル船で10~15分で渡れるそうだ。船は現地に届いてるのだが就航の日は未定、各階層の役人たちが計画実現のため汗をかいているところ、とのこと。

してみると、なんや、本当に橋は落ちてたんかい。とすると、船渡すくらいのことは、とっくに行われていないとだめだろ。そんな難しいことか?

アルカディア

オデッサの今を伝える例のチャンネル、7月末日日曜日、アルカディアビーチのクラブ・イビサの様子。

Одесса 1 августа 2022. Клуб Ибица. Воздушная тревога в клубе и реакция.

たいへん興味分かかった。何丘ブログが千万言費やさなくてももうこのチャンネルだけ見とけばいいよと自嘲する。これがオデッサのリアルだ。さすがにアルカディアは市中心に近くオデッサを代表するビーチということで、柵をこえて渚に出る人はいないようだ。夏草や兵どもが夢のあと。しかし動画後半、「いま爆発音が聞こえた。空襲警報が発令されている。しかしクラブ・イビサは音楽を止めない。音量が半分ほどになっただけ。人たちも逃げ隠れようとする素振りを全く見せない」。

ほか名言集:(柵ごしに眺めて)海がこれほど魅惑的に見えたことはない/夏はもうその3分の2を消化したが(※ロシアとかウクライナでは季節は月割りで観念され夏=6・7・8月)夏らしい感じが全然しない/オデッサがオデッサに恋している。海に出たくて出たくて仕方がないのだね。

【お願い】
本記事は、オデッサについに平和の鐘が鳴り響くまで情報と情動をオデッサに同期し続けるという自己満足&自己破壊的プロジェクトです。とはいえ、いささかの社会的意義もなくはないものと思っています。世界の無顧慮と無関心のなかでウクライナがただ破壊されていくということがないように、人たちの記憶と関心を喚起するものとして。マスメディアの描く大きな・分かりやすい物語を是正あるいは補足するものとして。のちの人がウクライナ戦争のオデッサ局面についてタイムラインを再構成する際の参照資料として。

有料にして10人に読まれるよりは無料で1000人に読まれたいという思いから全編無料としていますが、正直もろもろ無理をしています。少しでも持続可能なものとなるように、皆さまのご支援を仰ぎたく思います。下記ボタンより「投げ銭」をくださいませ。100円~1万円まで自由に金額を設定できます。金額÷2の文字数、何丘宛てメッセージもお書きいただけます。

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【ご報告】
7月10日に同様のお願いをした際、月間目標金額12万円だと申しました。結果、7月の収益は、4万2984円でした。皆さまありがとうございました。
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以下私信です。
・太陽燦々の方。メッセージありがとうございます。あなたのような読者がいるから続けられています。いつもお返事できず心苦しく思っています。ログインなしで投げ銭いただいた場合、こちらから返信できない仕様なのです。(別口でお返事いたします)
・「猫」を意味する3文字の方。もしかしたらあの方ではないかと思っております(こういう妄想をよくします)。多額の投げ銭恐れ入ります。よきことのみがありますように。
・Y@Eさま。返信には200字の字数制限がありますため意を尽くせませんでした。おっしゃる通り、戦争は明らかに長期化傾向を示しているのに、何丘は短距離走みたいな走り方をしていて、これでは息も上がるであろうと見えるかと思います。ただ自分としてはこれ以外の走り方はできないという感じがするのです。こんな(汚い言葉を用いますが)クソみたいな侵略行為が長く続くなどということは自分にはうけがい難く、明日にもこの全てが夢のように終わってしまうことを願わずにはいられません。

メモ:時間があれば紹介したい
オデッサオペラ劇場とアーティストたちの戦争(Meduza)

7月31日(弾/ニコラエフ/海)

夕刻オデッサ州にミサイル2発、特段の被害なし。今度のは「イスカンデル」とかいうタイプの弾道ミサイルだそうで、同ミサイルがオデッサ方面に使用されるのは初。イスカンデルはいろんな種類の弾頭を搭載できるそうなのだが、今回使用されたものは、なんでも空中で破裂してサーマルトラップ(тепловые ловушки)なるものを飛散させるのだそうで

↑サーマルトラップ。標的付近でこういうものをばら撒くことによってウクライナ側の対空兵器を攪乱することが狙いらしい。非常に高温のため触ると危険、いくつかは乾燥した草原に火災を引き起こしたが、速やかに消し止められたということだ。ОЖ

追記:翌日、特段の人的・物的被害がなかったことが発表された。ОЖ

ニコラエフ

隣のニコラエフにこの5か月で最も苛烈なミサイル攻撃が行われたそうで、31日朝にかけての一晩で浴びたミサイルは40発とも(УП)。病院、運動場、学校など一連のインフラが損傷し、民家1軒が倒壊&複数に損傷、複数個所で火災(УП)。人的被害については、この攻撃で国内長者番付24位の農業王の自宅が被弾し本人および細君が死亡した(ОЖ)。穀物輸出・物流・船舶造営を一手に担うアグロホールディングス「ニブロン」の創業者で、フォーブスによると資産は4億3000万ドルだそうだ。

ほか、数人が負傷という。いつもながら攻撃の規模と人的被害の不均衡に不思議の念。ロシアのミサイルは高性能だなぁと棒読みしておけばよいか。なお、こういう場合の人的被害というのは民間人のことであって、軍人の死傷についてはウクライナ側は発表しない。ロシア側も自軍についてそうであるが。

ゼレンスキーの定例ビデオメッセージもニコラエフはじめ南部戦線が主題となった。

Обращение Президента Украины Владимира Зеленского по итогам 158-го дня войны (2022) Новости Украины

「今日はニコラエフ市民の不屈の精神に特に謝意を表したい。同様に、ニーコポリ、ハリコフ、クリヴォイ・ローグ、ドネプロペトロフスク州、ザパロージエ、ヘルソンの人たち一人一人に。あなたたちがオデッサを守ってくれている。皆さんの勇気に謝意を」

ほか、敵はいま東部から南部に戦力を向け換えている、敵の戦略的敗北は明らかだが、戦術的にも勝利を収めていかねばならない、東でも南でもしぶとく戦わねば、とゼ。

セヴァストーポリ

クリミアのセヴァストポーリで椿事。31日はロシア海軍創設記念日で、セヴァストポーリでも記念イベントが予定されていたのだが、そのセヴァストーポリで「ウクライナ軍無人機による黒海艦隊参謀本部への攻撃」があり6人が負傷、記念行事はキャンセルされた。УП

これについてウクライナ海軍「わが海軍を恐れるあまり狂言を演じてイベント中止の口実としたもの」(УП)、オデッサ州軍政報道官ブラチュク「明らかな自作自演。クリミアの占領者どもからの解放はこんなやり方では行われない。やるときはもっと遥かに効果的にやる。だがまだその機は熟していない」(ОЖ)、同軍政長官マルチェンコ「侵略艦隊記念日を祝うはずが火花ひとつでびっくりして何も行われなかった。プーチンも怖気づいてクリミアを訪れなかった。塹壕じいさん(Бункерный дед、安全な塹壕の奥深くに自己隔離してる老人、プーチン)はクロンシュタットに行った」(ОЖ

これに先立ち、31日の海軍記念日に向けて黒海のロシア船団が急激増員との報もあったが、ウクライナの対艦ミサイルの射程外にちょっと集まってみただけであった(УП)。撃ってはこなかった。ゼレンスキーのオデッサ電撃訪問の後も撃ってはこなかった。6月半ばの第1回訪問のときはすぐ翌日にどばばっと撃ってきたし、7月初旬にゼレンスキーが故郷のクリヴォイ・ローグを訪れたときもそのすぐ翌日に同地を攻撃したものだが。象徴的とか示威的な攻撃にまでは手が回らない状況になっている、と見てよいか。

海水浴

31日日曜、オデッサの海は芋洗いの大盛況だったそうだ。至るところに地雷/機雷の危険ありと看板が立ってるし進入禁止のネットも張られているのだが、大勢の客が子供を連れて海水浴を楽しんだ。この夏すでに機雷に触れて5人が死んでいる。この日はやや波高く、すなわち沖の機雷が打ち寄せられる危険も高かった。ОЖ

ネットは子供でも用意にくぐれる(跨げる)もので、それより向こうへ行くも行かないも市民の良心しだい。見回りの警官だの警備員だの領土防衛隊員だの誰一人いなかったそうだ。思うにこの夏はこの感じで終わる。もう2人3人は死ぬであろうが、市民の行動は変わらないだろう。当局も特に手は打たないであろう。

動画

動画で見るオデッサの観光名所。例のチャンネルでキルハが取り上げられた。オデッサの教会は8割方正教寺院だが、こちらはルター派(プロテスタント)の。ドイツ語で教会を意味するKirche(キルヒェ)にちなんでキルハと呼ばれる。美麗でしょ。

Одесса 30 июля 2022. Кирха, Лаура и ортодонт. Немного про историю Кирхи.

オデッサ旧市街が世界遺産登録されたらキルハもその構成要素になってると思う。とはいえ、今見える建築自体はわりと近年のもの。ソビエト時代は(よくある話だが)宗教施設の脱宗教家・世俗利用の一環でこの建物が体育館として利用されてたというのだから驚き。

7月30日(無事)

30日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

テロ国家

ゼレンスキーがロシアをテロ国家認定するよう世界に求めていて(УП)アメリカ議会では現にそれに向けた動きがあって、ロシアの攻撃をテロと呼びロシア軍をテロリストと呼びロシアをテロ国家と呼ぶ語法はウクライナ側報道に最近とみに多い。

ゼ「エレノフカでウクライナ人捕虜を大量殺害した一件のあとでは世界は露連の犯罪をただ非難するのでなく、テロリズムのスポンサー国家としてロシアを認定しなければならない。ロシアをテロ国家として形式的・法的に認定することでロシアとの政治・ビジネス関係は自動的に破断し、ロシアは存続が困難になる。ロシアのテロ国家認定は遅かれ早かれ必ず行われる。それが早ければ早いほど、ロシアの悪事を未然に防ぐことができる」

私(何丘)の感覚でもロシアのやっていることをテロと呼ぶのは全く自然なことだ。プーチンのロシアは国家の名に(ロシアの名にも)値しないと3月時点で言っていて、その確信はその後強まるばかり。国際社会の追認に何の実効的意味があるのか知らないが、それによって欧州が痛み(凍え)を伴うロシア産エネルギー依存からの脱却をついに成し遂げ、国連安保理常任理事の一角をテロ国家(で一度でもあったもの)が占めることの異常さに人々が目を覚ますなら、願ったりだ。

和平か正義か

NHKのこの記事、和田春樹と防衛研究所の山添氏、異なる2つの考え方。国際社会は今のままウクライナに兵器を供給し続けるのか、それとも戦争を調停すべきなのか。皆さんはどうお考えですか。

戦争とは何よりもまず生活の破壊であるというのが何丘の第一テーゼである。市民の生命と生活より優先されるべきものは何もない。にも関わらず私の立場は山添さんの方に近いというのだから無茶苦茶な話だ。

・ウクライナの意志は尊重されねばならない
基礎的な感覚の相違があると思う。たぶん山添氏は(私と同様)、主権国家を自然人の類比でとらえ、その領土(人間でいえば身体)に対する主権を絶対視し、その主権的意思決定を崇高なものと見る。対する和田春樹は国境線を暫定的なものと見、米露の綱引きの舞台または客体としかウクライナを見ない。和田によればウクライナはアメリカによって戦わされているのだが、山添氏によればウクライナは「戦う」ことを自ら主体的に選んでいる。その決断は尊重されるべきであり、そのための武器をとウクライナが求めるならば、国際社会はこれに応えるべきだ。

・正義が行われねばならない
ロシアは国境に自ら緊張を創り出し、緊張緩和に向けた国際社会のあらゆる努力・進行中のあらゆる外交交渉に唾を吐きかけて侵略に及んだ。かりそめの講和が結ばれたとて、新たに何度でも侵攻を始め直す。このロシアは滅ぼされねばならない。加えて、すでに今日までに行われたこと、ウクライナの人たちの生命・生活・財産・幸福の破壊について、罰が下らないなどということはあってはならない。

以上が私の確信だが、これが果たして人々の生活が破壊され続けることの理由になり得るか。自分は矛盾してると思う。けっきょく私の主戦論は目の当たり行われている不正と非道に対する怒りと憎悪、それから、そうは言っても生活の破壊とやら(の脅威)が自分たちの家まで焼かれるというところまで及んでいないことを根拠としている。ニコラエフが落ちたとき自分が全く違うことを言い出すこともあり得る。

7月29日(ゼレンスキー来オ)

29日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

ゼレンスキー&G7各国大使、オデッサに結集

G7(米英独仏伊カナダ日本)さらにトルコの在ウ大使たちがオデッサ州チェルノモルスク港に集結、そこへさらにゼレンスキー御大まで来て、貨物船への穀物の積み込みを視察、ウクライナへの国際的な支援について話し合ったということだ。ОЖОЖ

ゼ「ウクライナ産穀物の輸出の準備はできている。パートナーたち(仲介者である国連およびトルコ)からのゴーサインを待っている」УП

ご覧の通り日本の大使は不在あるいはオンラインオデッサ詣で。G7とはいうものの実際に来Oしたのは米英独伊カナダ大使、EUおよび国連の代表者であった由。ちなみに今日本の「在ウ」大使館はポーランドにあります。

もいっこちなみに、このチェルノモルスク(黒海)という街はつい近年までイリイチョフスク(レーニンの街)と呼ばれていた。地名の「脱共産化」の一例。でも巷間では今もふつうにイリイチョフスクと呼ばれたりする。

Wikipedia英語版がオデッサ表記をオデーサに改め

Wikipedia英語版のオデッサの頁で、市名表記が従来のOdessaからOdesaに改められたということだ。日本語でオデッサがオデーサに改められたことに当たる。英語の言論空間ではつとにOdesaが一般的になっておりこれに合わせた形とか。ОЖ

オデッサは今や親ウ愛国一色であります

オデッサ副市長がアルジャジーラのインタビューに応えて語ったということだ:オデッサはいつだって様々な政治信条を抱く人びとの集まりであり、あるひとつの立場によるモノポリーなど絶えてなかった。だが戦争によって社会は糾合された。「かつてオデッサではロシアのプロパガンダが相当強力であったが、今日ではそれは明らかに機能していない。今では大多数のオデッサ市民が親ウ愛国という立場をとっている。民生インフラが攻撃され、市民が殺害されている現実を目にしているからだ。この数十年間それに向かって歩み続けていたところのことが起こった。オデッサ市民が一つになったのだ」T

7月28日(5人目)

28日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

浜の爆死case4(4人目、5人目)

浜に遊んで機雷に触れて男が二人爆死した。所はコーブレヴォ、黒海北岸を代表するビーチリゾート、オデッサ州とニコラエフ州の州境に位置する。一節によるとこの二人は警官で、ヘルソン勤務の犯罪対策課長40歳とその部下35歳だそうだ。ОЖ

たしか犯罪ではなかったはずだ。浜に遊んでも罰金とかの規定はない。①なんで法令で禁止しないのか②なんで遮蔽物を設けて物理的に侵入できないようにしないのか、かねて疑問。オデッサ戦時七不思議。ともかく、これで浜の散華者は5人となった。

ウクライナにいながら「ロシア世界」に生きる人(続)

「オデッサはロシアの街、プーチンは我らが大統領――オデッサ男に刑罰か」と題するОЖ記事。まぁそういうことだ。ウクライナへの軍事侵攻支持を触れ回っていたオデッサ市民57歳が取り調べを受けている。彼によるとオデッサはロシアの街であり、プーチンは我らの大統領であり、それに異を唱える者は皆、「ロシア世界」到来のあかつきには苦い思いをするであろうと。

なんでもウクライナ刑法典111-1条(対敵協力活動、法原文)という恐らくは大規模侵攻始まって以降の修正条項があって、それによると、「ウクライナに対する軍事侵略遂行の公然たる否定、並びに侵略国の決定及び行動への支持の公然たる呼び掛け」をなしたウクライナ市民に対しては「一定期間、特定の職業に就く権利が剥奪される」という。特定の職業というのはまぁ軍人とか警察とかだろう。要するに問題となる発言をなした時点で警官でも軍人でもない(これからなる気もない)者にとっては実質的な罰則はないということ。一種の合法的徴兵忌避になるのではないかと愚考した次第。

ちなみにこのタイトル文に違和感を覚えた人、

こういう記法はウクライナメディアでは今はふつうである。つまりロシアとかプーチンとかいう語を固有名詞として扱わない(頭文字を大文字にしない)。もちろん侮蔑の表現。

ヘルソンの橋

昨日お伝えしたヘルソンのアントノフ橋について、露占領軍は路面の補修を試みたり(УП)民間のディーゼル船を徴発してそれでもって渡河を試みたり(УП)しているらしい。

ロシア語「優生思想」

ちょっとしたエピソードではある。よくある話といえばそう。

トルコのホテルでロシア人とウクライナ人が呉越同舟、前者が後者にダル絡みし「お前らロシア語わかるんだろう本当は喋れるんだろうなんでロシア語喋らねえんだよロシア語喋れよほらこのいなかっぺがよ」と罵言の限りを尽くした挙句ホテルから強制退去、警察に連行されたという。УП

詳細:
ハルキウ(ハリコフ)から休暇に訪れていた女性2人がホテルのエレベーターに乗り込んだところ乗り合わせた知らん男がロシア語で「上ですか下ですか?」と問い、女性2人がウクライナ語で下ですと答えると、男は「ロシア語で喋れ」と要求、女性2人がウクライナ出身者と知ると、辮髪女どもべぇべぇ弁喋るんじゃねえと罵りだしたということだ。男はその後も女性2人の行く先々に付きまとい「なんでロシア語喋らねえんだ?」と問うこと百万遍、女性の方は「ロシアの軍船が赴いた場所にあなたも赴くがよい*1」「ここは互いにとって外国なんだから何なら英語で会話しましょうか?え、何?英語しゃべれない?(ダサ!)」などと応酬したが馬鹿には勝てんということで警察を呼び、男は連行されていった。

ホテル側は女性らに陳謝、攻撃的なロシア人と二度と出くわすことがないよう努力する、と約束したそうだが、被害女性自身の弁によると、ホテルにはまだ多くのロシア人観光客がいて、ウクライナ語を耳にすると攻撃的な態度をとる人も多い、「それでも私たちは旅行中ウクライナ語で会話することを続けます」とのこと。

ロシア人の「ロシア語はスラヴ諸語の盟主である」という意識は根強い。本件のような「亜種」蔑視の発露を私(何丘)自身もリヴィウでキシナウでプラハで(ついでに言うと家庭内で)繰り返し目にした。私とかが「戦争と文化は別」とかいって擁護しようとしているロシア語は……私たちはすると事のついでに何を擁護してしまうことになるのだろう。もちろん色々な人がいる。それはもちろんだが。

*1=海底

戦時のウクライナは結婚ブーム

キエフは結婚ブームだそうだ。戦争始まってから婚姻登録の件数が爆増しているらしい。たぶんウクライナ全土の傾向じゃないかと想像する。2月24日から7月23日までの5か月間でキエフにおける新規婚姻登録は9120件、前年同期は1110件だそう。①不安やストレスをふたりで乗り切りたい②明日をも知れぬ身、先延ばしにしてなんとする、みたいな心理的動因のほかに、手続きの大幅簡素化とか、軍人・警察・医療従事者はオンラインでも婚姻届けを出せるようになったとか、そういう外形的要因もあるそうだ。УП

戦時のウクライナにおける新生児の命名傾向

ウクライナ法務省が2022年上半期のウクライナにおける新生児の最もポピュラーな名前のリストを公開した。それによると(以前何丘が「ロシア人の名前の読み方」という記事に書いた通り)ほとんどは伝統的・保守的な名前で、女子の上位はこんな感じ↓

アンナ、ソフィヤ、マリヤ、ヴィクトリヤ、アナスタシヤ、ソロミヤ、オレクサンドラ(アレクサンドラ)、ポリーナ

男子↓

アルテム(アルチョーム)、オレクサンドル(アレクサンドル)、マクシム、ボフダン(ボグダン)、マルク、ドミトロ(ドミートリイ)、ミハイロ(ミハイル)

だが戦争の現実を反映した新手の命名も散見されるとのことで、たとえば米対戦車ミサイル「ジャヴェリン」より、女性名ジャヴェリナ、男性名ジャヴェリンというのがわりとポピュラーらしい。男児の間ではトルコの無人戦闘機バイラクタルをそのまま名前にするのも流行っているとかだ。どちらも外国からウクライナ軍に供与されて占領者撃滅に戦果をあげている兵器。УП

その親たちにとってこの全体は最終的にウクライナが勝利を収める好ましい物語なのだろう。あるいはそうなることを願っているのだろう。私にとっては戦争はただひたすらにおぞましくけがらわしいものなので、子供の生涯にそれにちなむものは塵一つ近づけたくない。だから私らなら無論こういう名前はつけなかった。

(国民のアイドル=ゼ大統領のファーストネームからヴォロジミル(ウラジーミル)が増えたりなぞしないものかなと思うが、国民の大敵と同名でもあることから忌避されたか。地域英雄の名がフィーチャーされることもあると思う、たとえばニコラエフでは名物知事ヴィターリイ・キムからとってヴィターリイが増えたりなぞしてそう)

7月27日(ヘルソン)

27日オデッサは静穏であった。ミサイルは飛んでこなかった。ОЖ

ヘルソン

南部戦線の戦果として今大きく取り上げられてるのはヘルソンのアントノフ橋の破壊だ。26日晩のウクライナ軍の攻撃で同橋が通行不能になり、占領軍はドニエプルのあっちとこっちで分断され、補給路を断たれると。ОЖ

ロシア軍に占領されているヘルソンをウクライナが奪還できれば、ニコラエフ(「ムィコラーイウ」)が安全になる。ヘルソンが敵の手に落ちればヘルソンからニコラエフにミサイルが飛び(←今ここ)、ニコラエフが落ちればニコラエフからオデッサにミサイルが飛ぶことは必定なので、ヘルソンの帰趨はオデッサにとっても極めて重要だ。

アントノフ橋(Антоновский мост)で地図検索して辺りを見てもらえると分かるがドニエプル河口部を渡れるポイントは非常に少なく、これより下流はドニエプル・デルタというぶしゃぶしゃの水域で、だいぶ上流に代替通行路となるカホフダム(дамба Каховского водохранилища)があるが、こちらはウクライナ軍の火力の統制下にあるということだ。つうわけでドニエプル右岸に取り残された占領軍は①死滅するか②投降するしかなくなると。

Meduza動画で橋が要衝であること、また攻撃後の損傷の様子など見てとれる↓

ВСУ обстреляли мост в Херсонской области

ご覧の通り橋はまだ直せば渡れそうな感じではある。橋をすっかり崩落させるということの難しさ。たぶんウクライナ軍は、今ロシア軍がオデッサ州のドニエストルリマン橋に行っているのと同じことを、このアントノフ橋に対して行うことになる。攻撃し続け、道路に穴をあけ続け、補修を不可能にすること。

この話のなんとなく喜べない点は、ウクライナの橋をウクライナ軍が落とすということの苦みである。南方作戦司令部報道官「我々は、わが国に存在するものは、たとえ被占領地域のものであっても、大切にする。インフラは破壊しない、破壊するのは敵の計画である」。とはいうものの。ОЖ

また本件についてゼレンスキー:橋その他の渡河点は無論復興して再び渡れるようにするが、その復興を担うのは(敵でなく)我々である。占領者どもが我らの土地でいかなるロジスティクスも行えなくなるよう全力を尽くす。どんなプランを練ってこようとも、必ずそれを破壊する。УП

オデッサのビーチに異変

浜は地雷原・渚は機雷原ということでビーチへの立ち入りが禁止されているなかで、浜に雑草が生い茂っているらしい。なるほど雑踏ないものね。見たことない姿。ОЖ

ОЖ15周年

ОЖことオデッサライフが7月27日、創刊15周年を迎えたそうだ。おめでとう。基本的には今は戦時なので軍事・政治当局の公式発表を伝える仕事がメインだが、市中の様子を活写するフォトルポルタージュをはじめ地元密着・市井の人の生活に寄りそうあり方が素敵。貴重な露字ローカル紙としてこれからもがんばってほしい。

黙過は即ち奨励である

オデッサ市長がイスラエルメディアの取材に応えて語ったということだ。「ロシアの侵略に反対の立場をとらない人は、すなわち悪を選好し、侵略戦争を奨励しているのだ」T。ほんとうにその通りだと思う。ロシアのミサイルは世界の無関心を燃料に飛ぶ。なんの意味があってと自分のブログ更新についてよく思うが、でも続けようと思うのはこういう言葉に接した時だ。

7月26日(ザトーカ)

26日早朝、オデッサ州を代表するビーチリゾートであるザトーカに大量のミサイル。民家や保養施設が損壊した。人死になし。ОЖ

ザトーカ。片手に湖もう片手に黒海を望む細長い陸地がずーっとビーチになっている奇勝の地、ホテルや企業・自治体の保養施設が立ち並び、夏場は大勢の海水浴客で賑わう。例のドニエストルリマンの橋もここに架かっている。また橋が狙われただろうか。何しろ敵機が色んな方角から、都合13発くらい浴びせてきたそうだ。以下、ウクライナ空軍司令部発表(УП

「まずSu-35ないしSu-30機(露連邦アハトゥビンスク基地所属)が黒海水域より複数発、次いで午前4時半ごろ同種の敵機からKh-59ミサイル5発が主としてオデッサ州方面(ザトーカ地方を含む)へ撃たれる。次いで5時ごろ10機ものTu-22M3機(長距離爆撃機、露シャイコフカ基地所属)が黒海地域に飛来し主としてオデッサ州ザトーカ地区(周知の橋が存する)に対しKh-22ミサイル8発を撃ち込んだ」
「敵はウクライナの対空防衛を脅かすべく絶えず発射戦術を変化させている」

ザトーカの着弾地だそう↓

Последствия ракетного удара по Затоке. Первые кадры

ゼレンスキー「朝。いつものザトーカの村。人たちが休養していた、暮らしていた。ただ暮らしていた。基地もなければ兵士もいない。ただ露連のテロリストどもは撃ってみたくなったのだ。このすべてに報いが下る。「解放者」を僭称し、我々の生活を破壊する一人一人に」ゼInsta

人的被害は、男性一人が軽傷を負ったのみだそうだ(ОЖ)。それも分からん。戦時とはいえ、また比較的ミサイルのよく飛来するエリアであるとはいえ、オデッサ市内のビーチの仄聞瞥見から推すに、いま時期のザトーカにバカンス客が来ていないとも思えないのであるが。

同じ朝、隣のニコラエフは18発のミサイルを浴びた。空から6発、また隣のヘルソン(ロシアに占領されている)から12発。工場、インフラ、鉄道橋に被害。爆発音はすさまじかったが人的犠牲はなしとのこと。黒海北岸において「軍事行動が緊密化している。両陣営とも多くの航空機が稼働している」とキム知事。なお、先に伝えた工作員・誘導員摘発目的でのロックダウン(20日の項参照)については「収穫期が終わったころに実施する」とのこと(УП)。ミサイル攻撃の脅威の低減か、飢餓の回避か。なんという過酷な二者択一。

英「ロシアのオデッサ攻撃の狙いは……」

英国防省のインテリジェンスレポート。ОЖより

①24日のオデッサ港の攻撃についてロシア側は「ウクライナの軍船および対艦ミサイルを攻撃した」と説明しているが、着弾地に当時そうしたものが存在したことを示すものは何もない

②ロシアがウクライナの対艦ミサイルを自国黒海艦隊にとっての最大の脅威とみなしていることは「ほぼ確」。それがあるためにロシアのオデッサ上陸・占領は現実性を失い、侵攻計画全体が大幅に遅れている

③ロシアは引き続きウクライナの対艦攻撃力を殺ぐことを試みるであろうが、⑴(敵兵器の位置)情報が適示に入手できていないこと⑵作戦立案が拙劣であること⑶トップダウン体質、これらが災いして、標的策定プロセスは著しく劣弱化している

国語法改定

ウクライナ語の国語としての機能の保全に関する法律(国語法)というのがあって本質的にはロシア語排除法、ウクライナの民に極力ロシア語を使わなくさせ・極力ウクライナ語を使わせることを目指した法律なのだが、その改正版が今月16日に発効していたらしい(УП)。新たに付け加えられた6章27条各項は国内で作成されるウェブサイトやSNSアカウントについてはユーザーがまず目にするページはウクライナ語であるように、と定めている。同法原文→ウクライナ最高会議法文集

たとえば全国メディアであるУП(Украинская Правда)は、トップページがウクライナ語版で、右上の「УКР/РУС/ENG」のところで言語を切り替えられるようになっている。ウクライナ語が主、露語・英語が副、というタテツケである。

一方、オデッサローカルメディアであるОЖ(Одесская Жизнь)は、トップページはロシア語版で、右上の「UA」を押すとウクライナ語版に切り替えられるようになっている。ロシア語が主・ウクライナ語が副というわけ。

つまりОЖは現状、改正法に違反している。そのうち改められるのであろう。※ロシア語版の存在を禁止するものではない

ウクライナ語図書の焚書

ハリコフの被占領地域でウクライナ語図書の焚書が行われているらしい。各学校の図書館(図書室)にある91年以降に発刊されたウクライナ語図書の目録を作成し処分するように、との命令が占領当局から出ているとか(УП)。出所の怪しい話ではあるが、さもありそうなこと。

ウクライナでロシア語図書の輸入や発刊が禁止される、ウクライナの公立学校の文学の授業でロシアの古典は扱わない、という話(→前の記事で「ロシア語」「ロシア語図書」と検索)を聞くと、私のような露文科の出身者は、トルストイやドストエフスキーやチェーホフを念頭に、「ロシア文学あんなに豊穣なのに(勿体ない/狭量だ/言っちゃ何だけど暗愚だネ)……」とつい言いたくなるのだが、では同じことが向こう側では行われてよいのか。そういうアンタはウクライナ文学が豊穣であるかないかを自ら調べたのかね。単にアンタがそれと長く接面してたから、それでなんとなく親しみを感じるからというだけで、ロシア文学を擁護していないかね。「戦争と文化は別」、言うは簡単だが、ロシア文学を読んできた自分への自己愛を抜きに、ゼロベースでその問と向き合う努力を、一度でも払ったかね。……という問いを、誰よりもまず自分に問うている。

7月25日(無事)

25日オデッサは平穏。ОЖ

ラヴロフ「オデッサの一件について言うと、ロシアが自ら負った諸々の義務(22日にイスタンブールで調印されたものを含む)の中には、我々の特殊軍事作戦の継続を禁じ、軍事インフラその他軍事目標の撃滅を禁ずるようなものは何もない」Meduza。これまでもこれからもいろいろな合意が結ばれるであろうが侵略と破壊と殺戮は続けますよと。これって外務大臣としての自己の存在意義を完全に否定する発言だと思うんですがどうですか。戦争始まって当初から、どうしてこの巨漢が恥辱のあまり1原子のサイズまで収縮して消え入ってしまわないのか、何丘には不思議でたまらない。徹底して無意味な存在。(ロシア外務大臣勤続18年)

動画2つ

①ウクライナの農村の破壊された家屋をDJのトゥンツトゥンツにノりながら若い者らでばーっと片づけてしまおうというRepair Togetherなる活動、各地を巡回しているらしい。

Рейв-уборка после обстрелов украинского села

②例の「オデッサの日常」チャンネル。オデッサ旧市街モルダヴァンカ地区のスタラコンカ(Староконка)と呼ばれる蚤の市。ソ連時代の骨董品とかわけのわからんものがごたごた並べられてる。こんなゆる~い感じの蚤の市をぶらぶら歩いてみたい方、平和になったらオデッサへ。

Одесса 23 июля 2022. Староконный рынок. Молдаванка. Чемодан со шприцами, ус кита, Кобзон и пробка.

7月24日(鉄面皮)

侵攻始まって5か月となる24日、オデッサは無事であった。ミサイルは飛んでこなかった。

オデッサ州軍政長官マルチェンコ「オデッサ港に対する昨日のミサイル攻撃は我々(ウクライナ軍)が自分で自分に撃ったものなのだそうだ。ロシアのプロパガンディストどもはそれよりマシな説明を何も思いつけなかったらしい。だがウクライナ軍に存在しないミサイルが上空を飛ぶのを街の半分が目撃したとあっては、そんな説明もそうは功を奏さなかった。国際社会からも非難の声が上がるにつけ、占領者どもが言い出したのは、「合意に反することはしていない、穀物とか輸出に必要なインフラとかは攻撃していない」ということだ。ですがね、港というものは穀物輸出に必要なインフラそのものなんですよ。これほど暗愚で無意味な声明などどうやったら出し得るのか」ОЖ

ロシア国防省報道官コナシェンコフ「海上発射式高精度長距離ミサイルでオデッサ港の船舶修理工場のドックに入っていたウクライナの軍船および米国からキエフ政権に供与された対艦ミサイル”ハープーン”の格納庫が撃滅された」TASS

私に何が言えるだろう。いつもの伝でウクライナ側の発表を信じる。仮にロシア側の発表が真実だったとしてもなおロシアの攻撃は100%非難に値する。そもそもロシアの軍船が沖合から間歇的に飛び道具を飛ばして市民の平和な生存と生活を脅かしてくるからこそオデッサに軍船と対艦ミサイルが必要なのだ。「自分たちがオデッサを攻撃するのに邪魔となる装備があったから破壊しました」という説明を聞いて「そうかそれならば仕方ない」とチラとでも思った人、あなたは要するにロシアの侵略を全体として肯定するのですか。

いずれにしろ、打ちのめされる。やっと明るい話と思ったあとにこれ。神も仏もない。破廉恥と鉄面皮。いな戦争という怪物はその顔面がすっかり闇である、一筋の条理の閃きもない。正視する者の気を狂わす闇。

余談だが、まぁ笑い話みたいなもんだが、昨日のトルコ国防相の「(オデッサ港へのミサイル攻撃の報を受けて)宇・露双方のカウンターパートと話したところ、露側からは『露は攻撃に関与していない』との説明を受けた」という内容を、TASSはこんな見出しで

んでこんな本文で伝えた。

タイトル「トルコ国防相、ロシアはオデッサ攻撃と無関係であると声明」リード文「トルコ国防相は、ロシアはオデッサ港攻撃に関与していないと述べた」。なんと低劣なジャーナリズムであろう。実際は「トルコ国防相は『ロシアは<ロシアはオデッサ港攻撃と無関係である>と述べている』と述べた」のだ。露プロパガンダメディアで印象操作・事実の歪曲はこのようになされます。

7月23日(港)

あまりのことに……なんと書き出していいか分からない。国連とトルコの努力によってウクライナ産穀物の海上輸送の安全に関する国際合意がやっと結ばれた翌日、オデッサ港に対しミサイル攻撃。

どこまで冷笑的になれるものだろうか。戦争は人間の顔をしていない(У войны нечеловеческое лицо)

ОЖ記事1:ウクライナ軍南方作戦司令部によると23日白昼、「カリブル」型巡航ミサイル複数でオデッサ港が攻撃され、2発は撃墜に成功、2発が港湾インフラに命中。海辺でまた市中心部で晴れの週末を楽しんでいた多くの市民は文字通りの空中戦を目撃することとなった。敵ミサイルが飛来する、それを地対空ミサイルが迎撃する、空中でまた市中で度重なる爆発。

ОЖ記事2(オデッサ州軍政長官マルチェンコ):穀物輸出合意に調印がなされたすぐ翌日、ロシアが「カリブル」ミサイルでオデッサ港を攻撃した。負傷者も出ている。港湾インフラが損傷した。この攻撃を機に全世界が目を開くべきだ。ロシアはテロリスト国家であり、ロシアとはいかなる合意も不可能である、と。ロシアとの合意は彼らが調印をほどこす紙切れ一枚の値打ちもない。オデッサへのミサイル攻撃は単なる攻撃ではなく、国連および全世界に対するメッセージだ。「ロシアは合意をする気も停戦する気もない」というメッセージ。我々は、現実感というものをとうに失ってしまったこの人非人どもを制止するために、あらゆる手段を尽くして圧力をかけなければならない。

УП記事1(ゼレンスキー):オデッサ港への攻撃は冷笑的であり、同時にロシア自身の政治的立場に対する攻撃でもある。これまでは世界各地で「ロシアとの対話や合意が必要だ」とする声も聞かれたが、今日のロシアの「カリブル」で、そんな発言を行う可能性そのものが粉砕された。この攻撃に対しては全世界が完全に一致したリアクションを見せている。占領者どもはもはや誰を欺くこともできない。
攻撃の結果損傷した建物のひとつに、オデッサ美術館がある(何丘注:オデッサ港のほぼ真裏にある)。攻撃はウクライナ文化、いやヨーロッパ文化の清華たる歴史建造物群にすぐ隣接するエリアに対して行われた。

ほか、米および国連はロシアを非難、トルコ国防相は「合意調印のすぐ翌日にかかる事象が出来したことを憂慮する。両当事者には平静と忍耐を求める」と自身はロシア非難せず(УП)。なお、国連内の消息筋によると「ロシアのオデッサ港攻撃は技術的には前日の国際合意に違反してはいない可能性がある。合意は穀物輸出に直接参加しないウクライナの港湾部への攻撃を自制する義務を課すものではなく、付近に軍事標的があればロシアは文書上のこの抜け道を利用することもできる」УП(NYT伝)。ただこの点に関しては、ウクライナ農業政策省によると、攻撃当時オデッサ港には直近2日で輸出される予定の穀物があった。ОЖ

ロシア側現時点で発表なし。

蛇島の猫

ウクライナ軍が蛇島で見つけた子猫(20日の項参照)は「蛇(Змей)」と名付けられ、キエフの家庭で飼われることになった。ОЖ

蛇島に4か月いたロシア兵からは別の名で呼ばれ可愛がられていたことだろう。猫の安否を案じてウクライナ側報道をチェックしていた人もいたかもしれない。その人は猫が無事保護され飼い主を見つけたと聞いて安堵していることだろう。

7月22日(穀物輸出)

22日は無事の1日、オデッサにミサイルは飛んでこず。ОЖ

日本語メディアでも報道されてるが、オデッサ港からのウクライナ産穀物の輸出について大きな前進があった。国連とトルコの仲介により国際合意が結ばれ、オデッサ港に留め置かれていた2000万トンにものぼる昨年分の収穫が、黒海を伝って諸国へ輸送できるようになる。すでに収穫が始まっている今年分の穀物についても無事に輸出できる見込みだ。ウクライナにとっては経済的利益であるし、諸国にとっては飢饉およびそれに伴う政治的な混乱が回避されることになる、とゼレンスキー。УП

なお商船の無障害通航について本来であればウクライナとロシアが合意すべきところだが、両者間で直接の合意はなく、ウクライナはウクライナでトルコおよび国連と、ロシアはロシアでトルコおよび国連と、別個に合意を結ぶ。ほか、ウクライナ側によれば、ロシア船が商船の護送を行うことはなく、またロシア船はウクライナの港には立ち寄らない。挑発行為があれば即刻「軍事的返報」を行う。必要があれば海上で輸送船の合同点検を行う。ОЖ

ウクライナ側は海上輸送が再開すると商船に紛れて露軍の軍船が近づきオデッサに攻撃をしかけてくるのではないかとつとに警戒している。まさかそんなことまではしまい、というある種のロシア性善説がこの期に及んでなお自分の中に残っているのがいっそ不思議である。

国際信義の一切に悖る無法・非人道の極北たる侵略・破壊・殺戮が始まって間もなく5か月。明日にも、いや今日にも終わるべき最悪最低の犯罪行為が、少なくも今後数か月は続くことを、これをお読みのあなたももう容認されているのだろう。

爆発

22日オデッサには攻撃が行われなかった、とはいうものの、市民は夕刻大音の爆発を聞かぬでもないのである。露軍の無人偵察機がオデッサ上空で撃墜された由。幸運な街の無事の1日はこうして暮れる。ОЖ

文化の破壊

NHK「もうひとつの戦争犯罪? ~破壊されるウクライナの文化財~」ご一読あれ。

オデッサ中心部の公園で詩の朗読会

オデッサ中心部の都市庭園(горсад)で今週末、「インスピレーションの方舟」と題するイベントが開かれるとかで(ОЖ

それを紹介するОЖ記事タイトル「オデッサの都市庭園に様々な言語で詩が響く」、本文に「オデッサの都市庭園のロトンダのところで多様な文化が混交する『詩とヴォーカルの夕べ』が開かれる。ウクライナ語、ポーランド語、英語、スペイン語、フランス語、その他言語で詩と歌が披露される」。

ロシア語は「その他言語」にも含まれないのだろう。

7月21日(無事)

無事の一日。21日オデッサ(市/州)に対する攻撃はなかった。
デニス・シュムィガリ首相というのがオデッサに来てドナウ河口部の街イズマイルおよびレニの港を視察した。黒海航路が事実上封鎖されている現状、ドナウを遡行していくルートでの産穀輸送(ウクライナ→欧州)が非常に大事であると。ОЖ

動画(夜の散歩)

無事の一日の夜の散歩。オデッサの一番いいものが全部つまってる。猫(かわいすぎ)、アカシア、石畳の道、テラス席、噴水、バンドゥーラ、都市庭園。これが恐らく世界遺産に登録されるオデッサ中心部の街並みです。

Одесса 21 июля 2022. Прогулка по ночной Одессе. Персиковый кот – на месте.

時刻は8時~9時くらいか。この季節として人あまりに少なく、寂しい。

7月20日(決別/蛇猫/害虫駆除)

20日未明オデッサ州に1発ミサイルが飛んだが特段の被害なしとのこと。ОЖОЖ

ダーチノエ

ロシア国防省によると19日未明のダーチノエ攻撃の戦果は「軍人・予備役200人を殲滅、外国製兵器10ユニット以上を撃滅」という赫々たるものだそうだ。乾いた笑い。TASS

ロシア文学による仲違い

全世界オデッサ人クラブ(Всемирный клуб одесситов)という団体があって、要するに全世界に散らばったオデッサ出身者を束ねる同郷人会、これがロシア文化をめぐる立場の相違がもとでオデッサ市と絶縁した。ОЖ

同団体が主催するイサアク・バーベリ記念オデッサ国際文学賞なるイベントに①ロシア人が審査員に名を連ねていたこと②ロシア人が受賞者に名を連ねていたこと、が絶縁の原因だそう。とりわけ、それらロシア人の中に⑴ウクライナに対する(好ましくない)発言をたびたび行った者⑵ロシアのプロパガンダメディアへの協力者、がいたことが問題視された。

この文学賞はウクライナ/ロシア/その他の国々でロシア語で書かれた文学作品の中から特別に秀でたものを選んで顕彰するものだそう。たしかに今のウクライナにとっては時宜を得ないイベントだ。

とはいえそもそも反ウ親露の団体かというとそんなことはなく、全世界オデッサ人クラブは2月24日以降たびたびウクライナ支持を表明しており、慈善コンサートを開いて集めたお金をウクライナ軍に送るなどしていた。不幸なすれ違い。

なお、同会の会長は故ミハイル・ジュヴァネツキーである。

蛇島上陸作戦(続)

ウクライナ軍が蛇島に上陸して情報収集(敵が残していった装備や書類などの発見・回収)や地雷除去などを行い、ロシア国旗を降ろして改めてウクライナ国旗を掲げるなどした。で、ミッション中に猫が見つかって、これを保護した。「ウクライナ軍、救える命は猫でも救う」。ОЖ

また切手にでもなりそうな美談だ。みんな猫好きだからなあ。

お願いです、オデッサを攻撃してください

オデッサにミサイルを撃ちこんでください(ヴィニツァのように)と度々ロシアのチャットに書き込んでいた疑いでオデッサ在住男性が自宅で拘束され、証拠品としてパソコン・スマホを押収された。「<ロシア世界>の信奉者」。ОЖ

ニコラエフで対敵協力者炙り出し作戦?

隣のニコエラフ(オデッサ州に10倍する攻撃を久しく受け続けている)で大規模な「対敵協力者炙り出し作戦」が行われるかもしれない。ヴィターリイ・キム知事のイニシアティヴで、なにしろ数日にわたり街への/街からの人の出入りを禁止し、市内では終日外出禁止令を敷いて、その間に工作員(диверсанты)および協力者(коллаборанты)を一斉検挙する、と。ОЖ

キム知事は対敵協力者を4群に分けている:①思想的(идейные)②破滅型(отчаявшиеся)③無責任型(те, кто не думает о последствиях)④小遣い稼ぎ(решившие заработать)。さっきのオデッサの「わが街にミサイルを撃ちこんでください」の人はさしずめ②のタイプ? 色々うまくいっていなく、人生に絶望し、すべてをリセットしたい、とりあえずこの呪わしい街並みを烏有に帰さしめてほしい。むろんそれで自分が死ぬことなど慮外。・・勝手な想像です。

#プーチンを待たせよう

エルドアンがプーチンを待たせる動画が好き。「ふつうは皆がプーチンを待つ、だがテヘランではプーチンがエルドアンを待った。僅か50秒のことであるが、動画を見るに、露大統領には何時間にも感じられたようだ」Meduza

Эрдоган заставил ждать Путина

したたかなエルドアンは当然わざと待たせたものと思う。国際的に孤立した被仲介国のリーダーを。あらゆるリーダーが国際場裏でプーチンを待たせてほしい。ハッシュタグ「プーチンを待たせよう」。

7月19日(ダーチノエ)

19日未明オデッサ州のダーチノエ村に6発のミサイルが降り注いだ。勘弁してくれ。ひとつの村に6発とは。またその村というのが私たちのダーチャの存する村のすぐ隣なのだ。義父母はたまたま街の本宅の方にいた。

この農村には公知の事実として軍の施設が存する(いわゆるказарма、兵営)。それで侵攻初期に叩かれ、その後も何度か攻撃が加えられた。今回の攻撃により、負傷者6人、幸いにして死者なし、学校や公民館、複数の家屋が全半壊。ОЖОЖ

ПОСЛЕДСТВИЯ ОБСТРЕЛА СЕЛА ДАЧНОЕ ОДЕССКАЯ ОБЛАСТЬ

これがフェイクでも何でもないことは直接の証言によって知っている。私たちは今月この村に住む少年を一人日本に避難させる。破壊された学校というのはこの少年の母校である。

戦争は生活の破壊である。それを始めたのは誰か。ロシアである。誰が止めればこの全ては止むか。ロシアである。だからロシアを非難すべきだ。ロシアがこれを止めるよう世界は全力を尽くすべきだ。難しい論証は要らない。

7月18日(橋/密告奨励/オフシャニコワ)

18日昼、黒海海上の敵機3機から4発のミサイルが発射され、1発は撃ち落とすことに成功したが、2発は軍事施設に命中、1発がドニエストルリマンにかかる橋に当たった。犠牲者なし。ОЖОЖ

この橋には私のカウントで通算9度の攻撃が加えられている。

詳細は省くが、この橋が落ちるとオデッサ州の一部領域がウクライナ本土から切り離され孤立する。孤立させておいて攻め上がるというのが敵の目論見ではないかと愚考している(詳しくは前の記事で「ドニエストルリマン」と記事内検索)。ウクライナ側の発表では橋はとうに機能を停止している。それでもロシア軍が貴重なミサイルを飛ばしてくるのは何故なのか。①偏執狂。②ウクライナ側の発表はブラフで、実は橋は通行可能な状態をとどめている。③ウクライナ側の発表はブラフで、実はロシア軍は特に橋を標的としていない。

対敵協力者に懸賞金

激しい攻撃に久しくさらされているお隣のニコラエフのヴィターリイ・キム州知事が対敵協力者摘発につながる情報に100ドルの報奨金を支払う考えを示した。УП

ウクライナ社会の内部には敵シンパ、いわば「ロシア世界」市民がいて、ロシアが自分たちを解放してくれる日を早めるために自ら志願してロシア軍に情報提供を行い、ミサイル攻撃の誘導を行っている。協力者(коллаборанты)とか誘導員(корректировщики)とか呼ばれる。ロシアは彼ら協力者に対して日本円にして数千円のお駄賃を払っているらしく、ならばこちらもということらしい。

のちの発表では、誘導員摘発は大統領案件に上げられており、近々軍最高司令部会議で討議されるということだ。УП

徴兵適格者の国外逃亡幇助

徴兵適齢の男性(18歳以上60歳未満)のウクライナ国外への違法輸送がまた摘発された。オデッサ市民3人からなるグループが国境通過ポイントを迂回してルーマニアに入るルートでの輸送を運賃3000米ドルで請け負っていたそうだ。ОЖ

オフシャニコワ

↑これで有名なオフシャニコワ氏はドイツに逃れていたと思ったのだが知らぬまにロシアに帰っていて、そこで向こう見ずとも言える反戦活動を続けており、このほど自宅付近で拘束されたということだ(のちすぐ解放)。Meduza

同氏はオデッサ出身ということで、6月の帰省で同郷人たちにあまり快く受け入れられなかった顛末を前の記事(6/4)で伝えたが、地元メディアの尻馬に乗って私も冷淡な書き方をしてしまったかと悔いている。

7月17日(矛盾と分断とミスコンとヴェネツィア)

17日オデッサに対しては攻撃が行われなかった。オデッサ州軍政報道官ブラチュクの兄貴「敵はオデッサについてプランを有しており明日にも攻撃が行われる、などとどこかで聞いたり読んだりしてもびっくりしないように。連中がオデッサを欲しがってる/オデッサに入りたがってることは周知の事実だ」ОЖ

16日のミサイルは……

昨日の「1発」は、ロシア国防省によると、高精度ミサイルによりNATO諸国供与の対艦ミサイル「ハープーン」の保管庫を撃滅したものだそうだ(TASS)。だがウクライナ側によれば、これはロシア殺人省のお定まりの嘘であって、全オデッサ・全ウクライナ・全世界が明らかに目にした通り、被弾し・火の手に包まれたのは家具の組み立て工場であって、それ以外の何でもない。論拠として①仮にハープーンが爆発したなら周囲1㎞は焼け野原になった筈&その轟音は遠くオデッサ内外に響き渡った筈である。②第一、黒海上のロシア船団が依然としてオデッサ沖から慎重に距離をとっていることが、ハープーンが無事であることの何よりの証拠である。ОЖ

このブログの筆者(何丘)がどういう予断を持っているか言ってしまうと、こういう場合に普通、ウクライナ側の発表を信じる。露側はもちろんウ側にも報道の自由はなく、私が見ているОЖとかУПも大本営発表のメガフォンであることは承知している。だが原則的に、真実を伝えることへの動機づけは、露側よりも宇側に強いと思っている。露は外国での戦闘行為について自国向けに好き勝手言っておけばよい。市民社会に言論の自由はなく、何か言えばすぐ拘束される強度の警察国家と化していて、検証には全くさらされない。一方の宇は、正義の防衛戦の継続のために自国民はもちろん諸外国から支持・支援を取り付け続ける必要があり、市民のSNSでの発信にもそう強度の統制はかけられていないように見える中で、他ならぬ自国の被害について、あからさま過ぎる嘘をつけるとも思えない。

分断

オデッサ市内の某公園で、62歳のストリートミュージシャンがウクライナ語で自作の歌を歌っていたところ、36歳男性がやってきて歌うのやめろと要求、「てめえみたいな奴がいるせいで今戦争になってんだ」と叫びながらマイクスタンドを倒して立ち去った。青年は逮捕された。ОЖ

ОЖの書きぶりだとウクライナ語で歌ってたことが青年の気に食わなかったみたいだが実際は歌の内容が癇に障ったのかもしれないし、詳細不明なのでなんとも。だが市民社会がウクライナ愛国一色でないのは事実と思う。

ミスコン

ポーランドでMiss Supranational-2022なるミスコンが行われウクライナ代表としてオデッサ娘ディアナ・ミロネンコが出場。途中、参加69女性が青黄二色の衣装をまとって登壇しウクライナへの連帯を示す一幕があったということだ。んでディアナさんが巨大なウクライナ国旗を掲げた。ОЖ

本イベントにはロシア代表は参加しなかった。ウクライナ侵攻への抗議の意味でロシアの参加は拒否されたそうだ。何丘マニフェスト的に言えば、ただロシア人であることを理由に参加を拒否するというのはよくなかった。だが仮にロシア代表が参加していたとして、その一人に配慮して、参加全女性によるウクライナ支持のパフォーマンスは差し控えねばならなかったか。どうであろう。むしろ、まさに①ロシアを排除せず②しかもウクライナへの連帯を示すパフォーマンスはきっちり行う、というのが何丘マニフェストの精神ということになるか。ロシア代表の女性にはいささか居心地の悪い思いをさせてしまうが、「せめて少しのdiscomfortは感じてほしい」ということで、正当化されるか。どうであろう・・

ヴェネツィア

ヴェネツィアで年に1度のFesta del Redentoreなる祭があって、16世紀のペスト克服を祝うものだそうなのだが、あわせて行われた花火大会の中で、夜空にODESSAの文字が描かれた。ОЖ

オデッサのあとにヴェネツィアと出て、そのあとに「平和」と文字が出たのだそうだ。なんでオデッサ?と思ったら、なんとオデッサとヴェネツィアはこの5月に姉妹都市協定を結んでいたのだそうだ。そのニュース見落としていた。頼りになりませんね何丘とかいう奴。

7月16日(1発)

16日午前オデッサ市内某所にミサイル1発、工場が被弾して火災、負傷者1名。TУП

今回は敵戦略爆撃機がスタヴローポリあたりから撃ってきたものだそうだ。オデッサへの攻撃は①沖の船団から②クリミア沿岸から③カスピ海あたりの航空機から行われてきたが、ウクライナ軍が蛇島を奪い返してからは①が減って③が増えた。

同日夕方にもカスピ海から広い範囲にミサイルが飛ばされほぼウクライナ全土で空襲警報、4発撃ち落としたが残り複数発がウクライナ中央部に着弾。УП

コラム(何丘ぼやき)
晴れの日曜の朝のニュース巡回はしんどい。このマラソンのいつ終わるとも知れなさに改めて深い疲労を覚える。わが住まう三多摩は飛行機がよく飛ぶ。戦略爆撃機の話をしながらその上空で轟音。平和の翼。ね、これ平和の翼ですよね。Українська Мрія.
ベランダで月を見ていたら西の空が燃えていて何かと思うと遠くで花火が行われていた。その日は雲が多く、また周囲の建物に遮られて低い花火は見えぬので、花火をというよりはその雲への反映を見ていた。いやーな感じがした。キエフ爆撃の映像が重なった。

この誰にも求められていない営み(戦争ブログ更新)によって自分は明らかに心の傷を深めていると思う。こんな無意味なこともない。忘れたくない、のだそうだ。感じなくなることは簡単だ、ウクライナの人たちの苦しみをその百分の一でも感じていたい、のだそうだ。

7月15日(浜の散華pt.3/道路名称の脱ロシア化/ロシア世界の伝道者)

オデッサ州にミサイル3発、うち1発のみ撃ち落とした。負傷者なし。
だが別件で人が死んだ。またぞろ禁止を破って渚に遊んで機雷にふれて、青年の首から上が吹っ飛んだ。浜の散華は3件め。ОЖ

ОЖ「今日のアネクドート」↓

— Слышали, вчера парень на пляже мину нашел?
— Да, слышно было хорошо
聞いたか、昨日男がビーチで機雷を見つけたって?
ああ、よく聞こえたよ

道路名称改定(は時間がかかる見込み)

オデッサ市内の道路のうちロシアにちなんだ(かつオデッサと特段関係のない)名前を冠せられたものを100個ほど改称しましょうという話、このたび歴史学者・郷土史家・言語学者・法律家からなるワーキンググループが結成された。だが色んな方面から色んな要望が届いており、たとえばガガーリン大通り(かつて私もそこに住んだ)を「冬季行軍騎士名称第28個別機械化旅団通り」に変えましょうとかいうのが届いており、かと思えばロシアのミサイルで死亡した子供たちの名前をつけましょうというのもあり、これら種類の異なる要望を逐一検討するに先立ってまず統一した改名規則を設けるべきであり、そう考えると改名は一朝一夕にはいかない、「時間がかかります」とのことだ。ОЖ

オデッサで「ロシア世界」に生きる人

酔っぱらって行きずりの人に絡んで「オデッサはロシアの街だ」などと喚き散らしていた男が逮捕された。電話を調べると例によってロシア国内との通信履歴が見つかった。ОЖ

記事内の動画で音声きくと男はオデッサがロシア語の街(русскоязычный город)であることを強調している。相手の市民(若い男女)は「私たちは何語で喋ったっていいのよ!」と反発している。その通りだ。オデッサはロシア語を話す人々が住むウクライナの街だ。

なぜロシア人は依然としてプーチンを支持しているのか

仏リベラシオン紙にロシア人作家ドミトリー・グルホフスキーのインタビュー。ОЖより孫引きする。ロシア世論分析。

(のちほど更新します)

7月14日(ヴィニツァ/ヘルソン/I ♡)

14日オデッサにはミサイルが飛ばなかった。ヴィニツァには飛んだ。二桁の死者。

ウクライナでロシアのテレビ放送を見る人

オデッサ州のサイバー警察がロシアのテレビ放送の視聴を可能にする機材を違法に販売していた犯罪組織を摘発した由。千人を超える顧客がいたそうだ。「人非人どもは我らが同胞・子供たちを殺しウクライナの街々を破壊し、オデッサ州にミサイルを飛ばし海上封鎖を行いながら、自分たちは『脱ナチ化』を行っているなどとほざく。しかし残念ながら、多くの同胞たちは、露プロパガンダの棘を引き抜くことができない、あるいは、それを望まない」とオデッサ州軍事行政長官。ОЖ

ヴィニツァ

14日朝ヴィニツァ中心部にミサイル(黒海の潜水艦より発射された「カリブル」)、14日夕の中間報告では、市民23人が死亡、64人が病院で治療を受けており、うち34人が重体で、5人は危篤状態という。捜索・救助活動は続いており、なお39人が消息不明ということだ。УП

普段あんまり攻撃されないようなところだ。この攻撃を受けて米大使館は在ウ米国市民に対し改めて即時退避勧告(УП)。追随して日本も今日あたり勧告出すだろう。露側によると標的は「ウクライナ軍が結集していた将校会館(※露はウの軍事施設しか攻撃していません!)」TASS。私が行ったことある場所、友人知人の故郷がまたひとつ黒い連想と結び付けられた。そこから来たと名乗られると言葉に詰まるような場所がまたひとつ。

ヘルソン

ヘルソン州軍事行政長官代行の言うことにゃ、すでに州内44集落がウクライナ軍によって解放されたとのことだ。これが本当だとすれば、反撃とか反転攻勢とかという次元でない、先日ゼレンスキーから軍へその準備をせよと命令が下ったところの南部奪還作戦が、リアルに(長足で)進んでいるということだ。周縁部の敵防備の薄いところではあるのだろうが、にしても44集落。УП

オデッサ周辺情勢

蛇島:善意で明け渡してくれた筈の(そのお陰で穀物危機が緩和されたところの)蛇島にまたぞろロシア軍が攻撃をしかけたらしい。スキゾフレニア? 戦闘機2機で爆撃を試みたが爆弾うまく島に落ちず海にドボンしたということだ。ОЖ

沿ドニ:沿ドニエストル(モルドヴァの東部一帯、事実上のロシアの飛び地)でまたぞろ不穏な動き、との風説が行われているが無根である、「新次の扇動に向けた特段の動きは見られない。オデッサ州の西部に第二の戦線が開かれるなんてことはない」と軍報道官。ОЖ

機雷と思ったらブイだった

オデッサのとあるビーチで波打ち際に怪しき物体がふよふよしているとの通報があり、すわ機雷かと駆けつけたスペシャリストらが調べてみると、漁業用のブイでしたという話。「何しろ時化でいろいろな物体が岸辺に打ち寄せられるもんで」と軍司令部広報。ОЖ

I ♡ ODESSA

オデッサ市内では錨(いかり)を♡に見立てた上図のような意匠がよく見られる。初めて知ったが、これを考案したのは有名なロシア人デザイナーのアルテーミイ・レーベジェフだったらしい。で、レーベジェフは(ウクライナ政権の見るところ)親プーチンの侵略戦争支持者なので、そんな奴が作った観光用ロゴチップなど一切撤廃しては、と某オデッサ市議が発議している。ОЖ

レーベジェフのデザインスタジオはヤンデックスのロゴとかモスクワ地下鉄の路線図とか誰もが知ってるデザインを担った名門で、よく知らんが、日本でいうと佐藤可士和とかそういう感じか。

あとオデッサのオペラ劇場のシンボルマーク(↓)もレーベジェフのとこのらしく、これも廃止してはと同市議。

レーベジェフは人気YouTuber/TVタレントでもある。動画は通例ロシアおよび世界のおもしろニュース紹介&コメントで、1ニュースあたり数秒~数十秒でばさばさ斬ってく。10秒に1回放送禁止用語を放ち、タブーや忖度一切なしって感じの歯切れ良さが痛快。最新の動画はドネツク48時間探訪記、マリウポリの惨状など伝える。

何かの動画で言ってたが世界のたしか全部の国に行ったことがある旅行家・冒険家で、デザイナーの観点から世界で最も素晴らしい国は日本であると言っていた。日本のデザインについてがっつり語った動画もある。そういう人ではあるが、政治的には反欧米の国粋主義者で、私の言葉でいえば露プロパガンダマシーン分散モデルの重要な一翼を担うインフルエンサーだ。ブチャ虐殺は自作自演でありウクライナ諸都市の占領は「解放」であると平然と言い切る。だが一方で、奇特なことに、戦争をはっきり戦争(特殊作戦でなく)と呼ぶ。あらゆる戦争は愚劣であり自分は絶対的に戦争に反対であると言う。ただし、この世には政治と一切関係をもたない「平和な生活者мирный житель」という人々がいて、自分もその一人であると。自分は一切戦争と関係がないし戦争に責任がないし、自分のスタジオもこれまで通り稼働するし、当然自分がロシア語で喋ることもやめないと。そうして自分を局外に置き、一切の責任から超越させておいて、戦争の過酷の中で人々が演じるあれこれをあげつらい嗤いつつ、クレムリンの言葉を拡散している。私はこの人物に悪の魅力を感じるが、平和な生活者などという責任逃れは全く認めない。

7月13日(焼豚/女帝/横浜/トルコ)

未明ミサイル攻撃があり養豚場が破壊されたそうだ。人的犠牲なし(человеческих жертв нет)豚には犠牲があっただろう。着弾後火災が発生、速やかに消し止められる。ОЖОЖ

エカテリーナ二世像撤去?

オデッサ市は1794年にロシア皇帝エカテリーナ二世によって創建されたということになっている。それで「創市の母」を讃える像が市中心部に立っているのだが、そいつを撤去してはどうか、という話が持ち上がっている。2件の請願が各2万5000筆の署名を集め定足数を満たしたため、本件は自動的にゼレンスキー大統領に送られ、その検討にかけられる。ОЖ

請願の一件めは、エカテリーナ大帝はクリミアタタールの民を虐殺しウクライナの地に農奴制を導入して自由なウクライナ人を奴隷状態に貶めた独裁者・殺人者であって、そんなやつの像が独立ウクライナに立っていること&その維持のために百万単位のお金を使うのは非合理だとする。

請願二件めはそのパロディで、女帝像を撤去してそのあとにゲイポルノ俳優ビリー・ヘリントンの像をブッ立てましょうというもの。ポーズはバーカウンターでビール瓶を手にしたビリーという「古典的な表象」を用いたい(とのことだが画像検索するのが怖い)。新しい銅像はウクライナがLGBTフレンドリーであることを示すシグナルになる。観光名所にもなるし、ポップカルチャーの発展が促進されるし、いいことづくめ。……とのことだ。本件も2万5000人分の署名を集めた。

後者は露プロパガンダにはウクライナを嘲笑するための好個の材料である。歴代皇帝の中でも人気の高いE女帝を引き倒して、こともあろうにゲイ男優の像を立てるとは。それほどまでにキエフの麻薬中毒者・変態性欲者どもの政権下で人心は腐敗してるのだ(守ってやらなくちゃならない、洗脳を解いてやらなくちゃならない、正しい価値観を再度植え付けてあげなくちゃならない)……

ロシア人が所有するホテルを差し押さえ

最終受益者がロシア人であるオデッサ中心部のホテルが複数差し押さえられた。ОЖ。いつもその傍を通ってたホテルのこと、そうかロシア人のホテルだったのか(そらそういうこともあるだろう)と今さらながらに知る。

アホな私にはグローバル企業がロシア市場から撤退することの正義はよくわからない(マクドナルド、コカ・コーラ、IKEA・・最近はLEGOが撤退を発表した)が、ロシア資本がウクライナから引き揚げるべき理由は納得できる。単純に、ウクライナ人から巻き上げた金でウクライナにミサイルを飛ばすというのはおかしい。むしろウクライナにもたらされた何十兆円に上るともしれない損失は、最後の1円に至るまでロシアが賠償するべきで、そのためにロシアが最貧国にまで落ちぶれてもやむなし……なぞというとき、私は自らのマニフェストに反しているだろうか。

夏の行楽シーズンのクリミアは

クリミア共和国の首長が発表したところによると、6月クリミアを訪れた人は前年同月比4割減(コロナ前の19年6月と比べると僅か12%)の81万5000人だそうだ。「来年はヘルソンやザパロージエも(ロシアの海浜リゾートとして)オープンするはずのでクリミアにおける観光客の流れも変わるであろう」と露帝傀儡。УП

横浜から浄水装置が届いた

姉妹都市である横浜から浄水装置33ユニットが届いた。駐ウクライナ日本大使はじめ横浜市やJICA(国際協力機構)の代表者から成る使節がオデッサを訪れ副市長らと懇談。オデッサからは感謝の言葉、日本側は今後も支援を継続することを強調したとのことだ。T

この話題で前から疑問なのは、なんで他ならぬ横浜市が、他ならぬ浄水装置を送るのか。一般に、誰が何の支援をするかというのはどうやって決まるのだろう?(邪推は可能だが、せっかくの支援に水をさすことになるのでよしとく)

穀物輸送の問題に進展か

オデッサ港に貯えられた大量の穀物が輸出できずに世界食糧危機が引き起こされかねない問題について、トルコで四者協議(ウクライナ・ロシア・トルコ・国連)が開かれ、そこで「重大な前進」があったということだ。合意締結には至らなかったもののそれに向けた作業を行うことについて合意を見たとのこと(УП)。別伝では、国連の監督のもと黒海航路の安全のための合同監視・調整センターをイスタンブールに開くことについて当事者間で合意が得られたとのことだ(УП)。

この種の話題でいつも疑問に思うのは、こういう仲介役となる第三国というのはどうやって決まるのだろう。今回で言えば、たしかにトルコは適任に見えるし有難いことなのだが、言ってしまえば、あえて引き受けなくてもよい苦労だったではないか。そこをあえて買って出るのは、外部からの圧力なのか、内部からの突き上げなのか、何がしか相応の利益を見越してのことなのか。また翻って、このような形で日本が国際紛争の調停役を買って出ることってある/あった?

今日の動画(とある中庭)

Одесса 13 июля 2022. Двор, где прошло мое детство. Тётя Элла, дядя Игорь и Капитанша с попугаем.

例のチャンネル。長尺だが、飛ばし飛ばし画だけ見ていってほしい。観光ガイドには載らないがオデッサは中庭(дворик/courtyard)めぐりが楽しい。今回の動画で映されてるのは珍しい3連中庭で、私らも入ったことある。それこそエカテリーナ女帝像の立つエカテリーナ広場にほど近いところだ。中庭には必ず猫がいる、暇そうな婆さんとか爺さんがいることもある、騒がなければ本当に普通に入ってよい。半公共空間、パリのパサージュかオデッサの中庭かというところ。(オデッサにはパサージュもあるので総合点でオデッサの勝ち)

ロシア語わかる人は喋ってる内容のほうも聞いてみてほしい、生え抜きのオデッサ人が語る昔語り非常に興味深い。ソ連末期のコムナルカ(一住戸を簡易的に分割して複数世帯で住む)、若いめちゃくちゃ可愛い女の子と二人で暮らしてたユダヤのおっさんの話、友達の家までの道のりをショートカットするために中庭の一番奥から高い塀を乗り越え屋根伝いに歩いて行った話。

7月12日(何丘@疲労)

12日オデッサに対してミサイルは飛んでこなかった。ギリシャの外務大臣がオデッサを訪れてオデッサ旧市街世界遺産登録への支持を示した。ОЖ

隣のニコラエフに対してはそのさらに隣のヘルソン(ロシアが占領)からミサイルが、弾痕の数から察するに24発撃ち込まれ、複数の集合住宅が全壊もしくは損傷、学校や病院も損壊とのこと。12人が重軽傷。УП

14年に無血で明け渡したクリミアから今オデッサへミサイルが飛んでいる。またクリミアなしにロシアはドニエプル左岸を攻略することができたか。いまヘルソンががロシアの手に落ちてみれば、そのヘルソンからニコラエフへミサイルが飛ぶ。ニコラエフが陥ちればニコラエフからオデッサにミサイルが飛ぶであろう。(なおオデッサが陥ちればウクライナは海への出口を完全に失い、ロシアの支配地域は沿ドニとつながる)

11日の攻撃の詳細

11日の攻撃も(1日の凶弾で22人の命を奪ったのと同じ)オデッサ州ベルゴロド・ドニエストロフスキー地区に対するものだったそうだ。家屋や港湾施設に被害、ただ死傷者はなし。ОЖ

ロシア世論調査

全ロシア世論調査センター(ВЦИОМ)が露大統領府の注文で行った非公開調査の結果をMeduzaが入手、それによると、全回答者の3割が「ウクライナにおける戦闘行為」は可能な限り早く停止するべきだと考えている。そうした立場の人は若い世代ほど多く、またTVよりネットを見ている層に多い。Meduza

18–24歳グループ:戦闘行為停止派56%、続行派19%
25–34歳グループ:停止43%、続行41%
60歳以上グループ:続行72%

インターネットのアクティブユーザー層:停止派47%、続行派35%
TV視聴層:停止22%、続行68%

公開されている中で最新の同センターによる調査(6月分)では「特殊作戦」支持率は、「どちらかというと支持する」72%、「どちらかというと支持しない」17%となっている由。

ВЦИОМとかФОМとかいうのはLevada centerと違って権力からの独立性の低い御用調査機関。その改竄前の生データをMeduzaが入手した、ということかな。

7月11日(ミサイル/ミサイルを招く人)

11日は昼と夕の二次にわたり計9発のミサイルがオデッサ州に飛ばされ、インフラに被害、死傷者なし。苛烈だったのは昼の方の攻撃で、7発のミサイルが撃ち込まれ、大きな爆発と衝撃波で州内某所の家屋や民生インフラ(港湾施設を含む)が損傷。夕方の攻撃では特段の被害なし。ОЖОЖ

いつもそうだが、被害の実相は全然わからない。州内のどこの村の何の施設が食らったのかも明かされない。民間人が死傷または重要な民生施設に被害があればそれは言うはずなので、恐らくは軽微な被害であった、としてよいか。なおロシア側の発表(11日のコナシェンコフ)でもオデッサ州への攻撃に言及なし。

外患援助

オデッサに住む26歳男性がロシアの特務機関との協力関係を暴かれ逮捕された(ОЖ)。ウクライナ軍が沿岸部に展開する対空防衛装備や対艦砲発射装置の位置情報をSNS(テレグラム)を通じて敵に送り、敵のミサイル攻撃を誘致していた疑い。検察庁が一部公開した青年と敵特務機関のテレグラムのやり取りを見て生々しさに引く(ロシア語わかる方、上掲記事内の一連の画像ご覧あれ)。「オデッサはいつロシアの一部になるんです?また、どうやって?」「何か協力できることはありませんか?情報送りましょうか?」「地図に印つけて送ります!」と自ら志願しての対敵協力。

なお、青年のまたひとつの任務はウクライナ南部でこうした対敵協力者のネットワークを組織することであったという。

いろいろ思うところがある。まず、ウクライナ警察はどうやってこの青年を見つけた? よく「ミサイル着弾地の写真を撮ってた奴のスマホ調べてみたらロシア国内との通話記録がありZ系テレグラムチャンネルを多くフォローしていたので御用」とかの話は聞くが、そういうチョンボを犯しただろうか。だがこの自称「ウクライナ警察にとっつかまるほど馬鹿じゃない」青年が、たとえばスクーターで街を乗り回し、目視のみにて「それらしき」施設の目星をつけ、自宅に帰って地図にピンを立て敵に共有するに徹していたなら、摘発はほぼ無理だったのではないか。そうした場合でもネット検閲で捉えるのか?

あと、敵の諜報機関とやら、青年の協力志願を、簡単に信用しすぎじゃないか? こんな簡単に信じてもらえるなら、逆にウクライナの特務機関が一般市民を装って偽情報を提供し敵ミサイルをムダ撃ちさせられるじゃないか。実際、そうしたことは、どの程度行われている?

青年の相手方が実はロシア特務機関を装ったウクライナ特務機関の釣りアカウントで、こうした方法で対敵協力志願者を釣り上げている可能性もあるか。

7月10日(小休止?/解放/女王/読書)

10日も攻撃なし。ОЖ

オデッサに関しては(事後的に)小休止と認めてよい状態だがゼレンスキーは敵が「作戦上の小休止」をとっているという風説を排撃、「一昼夜に34度も敵機が飛来している。小休止などと口にする全ての人へ:これが答えだ」「ロシアが甚大な損失を被り、本当に小休止が――それも次なる攻撃のためでなく、我らウクライナの母なる大地から逃走するための小休止が――必要となるように、まだまだ多くのことが行わねばならない」УП

南部奪還作戦

ウクライナ国防相が英紙The Timesに語ったところによると、ヘルソンやザパロージエといったウクライナ南部の被占領地の奪還命令が、ゼレンスキー大統領から軍へ下されているそうだ。「西側兵器で武装した百万軍勢を集結させている」「大統領が軍最高指導部に計画策定を命じた。これを受け参謀本部が目標達成のために我々にはこれこれの装備が必要だと申告し、私がパートナー諸国に向け将官どもがこれこれの兵器がこういう理由で必要だと述べておりますと書き送る。しかるのち政治的決定が下される」УП

結局どういう段階なのだろうか。近いかその日は。ウクライナ副首相やヘルソン州第一副長官といった人たちもウクライナ軍がまもなく占領解除を開始し猛烈な戦闘になるので住民たちは避難せよ/シェルターに水や食料を確保せよと警告している。

疑いもなく、解放という言葉を使う権利はロシアでなくウクライナの側にある。だがこれも疑いなく、当該地域の多くの住人は、ロシア軍の支配によって、(当のロシア軍がもたらしたところの)死と破壊の恐怖から、解放されている。今度はウクライナ軍がその束の間の平安の破壊者として立ち現れる。

ウィンブルドン新女王

難しい問題。モスクワ出身のカザフスタン人エレーナ・ルィバーキナ(23)がテニスのウィンブルドン王者になって、勝利後の会見で「ウクライナ戦争をどう思うか」との記者の質問に対し、回答を忌避した。УП

ウィンブルドン今大会はロシアおよびベラルーシの選手の出場を禁止していた。「スポーツにおける勝利がプロパガンダに悪用されないようにするため」。これにつき、ロシアはあなたの勝利を自国の偉大さの喧伝の材料に使うのではないですか、と水を向けられルィバーキナ選手「自分は長くカザフスタン代表としてプレイしている。この後何が起こるかなど自分には分からない、自分にはどうしようもない」。戦争をどう思うか、プーチンを支持するかとの問いには「英語が下手なので何を聞かれてるかわかりませんでした」「私が言えるのはこれだけです:私はカザフスタン代表です。自分の生まれる場所を自分で選んだわけではありません」

同人は自分がカザフスタン代表であることを強調しているが、УПの伝え方は、実質的にはお前ロシア人だろうが、という調子。モスクワ生まれモスクワ育ちであり、2018年までロシア代表としてプレーしていたという事実が指摘され、記事タイトルも「モスクワ出身のウィンブルドン新女王、ウクライナにおける戦争について質問されるも理解できないふり」。実際他の英語の質問には的確に英語で答えていて、この質問だけ回答を忌避したのは明らかではある。

皆さんはどう思われますか。何丘マニフェスト的には、ウィンブルドンはロシア人・ベラルーシ人であることを理由に出場拒否などするべきではなかった。ただし一方で、大会としてロシアの侵略行為を断固非難する旨声明を出し、朱筆大書のスローガンとする。優勝賞金の1割をウクライナへの人道支援に向けるなど設定してもよい。

あわせて、記者会見の場で、選手の政治的立場を問うような質問をすることを、記者に禁ずる。引き換えに選手に対し、プーチン政権やロシア軍の行動を支持するようなシンボルの表示ならびに発言を禁ずる。もしそのようなことをしたら出場資格剥奪。こういう紳士協定を結ばせる。

敵シンパに読書刑

オデッサの裁判所はときどき面白い判決を下す。読書刑というやつで、懲役のかわりに人格矯正に資すると裁判官が判断した図書の読破を受刑者に強いる。極めてソフトで文化的な刑罰で、戦時下でもそれやるんだと驚いた。ええと、3月某日、動物園職員が勤務時間中にSNS(ウクライナでそもそもBANされてるОдноклассники)で次のように呟いた。

奮起せよオデッサ!麻薬中毒者どもの巣窟たるナチス・キエフ政権という名のヒドラを廃滅せよ!オデッサはノヴォロシアだ!我らの解放のために自らの命を挺する我らが兵士たちにともに感謝を捧げようではないか!ロシアの兵士よ、オデッサは君を待つ、君のために祈る!

これで同人がくらったのは、5年の自由剥奪刑・執行猶予3年つき。猶予中の義務として課されたのがウクライナ人作家の指定図書を3冊読破すること。何の本かは全然知らんが I. バグリャノイ『虎猟』V. バルカ『黄公』U.サムチュク『マリヤ』、受刑者を感化し更生させ再犯を防止するに力ある3冊だそうだ。ОЖ

同じことがお隣の国で行われていたらどうなっていたか。ご参考(NHK)↓

何丘ブログがウクライナ戦争について本邦一般報道の伝えない側面を照射し得ている、知見を授かった・思考を触発された、これの著者の労力は多少評価に値する・多少報われてもよい……と思われる方、投げ銭くださると嬉しいです。

思い切ってお金の話をしてみます。7月の目標金額は12万円です。現在(7/11昼)時点で2070円。

何丘が本記事を更新する一日分(平均3時間ほどかかります)の労力に対し100円投げてくれる人が50人いれば1日5000円、30日で15万、システムに1割吸収されて13.5万円。これを心の弱さでさらに下方修正して12万円。このあたりが、この内容に対しては(またこれだけの人が読んでいるのであれば)そのくらいは貰ってもいい、という自己評価額とも合致します。

経過は折々報告します。浅ましいですが、ひとつの試みとして。

何丘に「投げ銭」してみる

7月9日(穀物輸送/柔道/ロシア語教育/浜)

9日、オデッサ州に対しては、珍しくミサイル攻撃が行われなかった。ОЖ

穀物輸送迅速化

蛇島の解放によりオデッサ港の穀物の輸送が高速化する由。ルーマニアのスリナからドナウ河を遡上していくルート。下図でBileとあるのが蛇島。ロシア軍が善意でどいてくれてよかった。その後も島にウクライナが旗を立てたりすると不思議に爆撃をしかけるのだけども。ОЖ

ウクライナ柔道選手ら日本へ(合宿

オデッサで柔道やってる青少年とコーチ陣が日本に渡りひと夏を過ごすのだそうだ。合宿。姉妹都市である横浜市の招きによるもの。「大変な状態のこの国から一時抜け出して日本の柔道家たちと経験を交換し英気を養う絶好の機会」とオデッサ市長。T

ウクライナでロシア語教育やっぱり行われる?

9月からの新年度、公立学校でロシア語・ロシア文学という科目は一掃される由だが、例外もあるようだ。教育担当オンブズマン(大臣格と思しい)セルゲイ・ゴルバチョフ氏談。以下УП記事要旨

・両親が「民族的ロシア人」を自任する場合は子供が学校でロシア語を学べるよう学校側に求めることができる。民族的少数派に属する人々に対しては法的に公立学校で国語(ウクライナ語)と並んで当該少数民族語の教育を受ける権利が保障されている。

・ロシア文学については「戦争が続いているうちはロシア文学にはお休みいただくのがいいだろう。勝利の暁にはこの問題に回帰し、ロシアの作家のどの作品ならばカリキュラムに復帰させてもよいか、検討するのもよいだろう」とゴルバチョフ氏。

・同氏は先に「学級の保護者全員が賛成した場合にはカリキュラムに選択科目としてロシア語を含める必要がある」と述べていた。

・開戦以来ジトーミルやニコラエフなど複数の地域でロシア語の授業が取り止められた。

・世論調査では学校の休み時間にウクライナ語で会話すると答えた人は38%に過ぎない。

ニコラエフは隣のオデッサと同じロシア語が圧倒的優勢の地域だが、よくいわれる「今次の大規模侵攻を受けて使用言語をウクライナ語に切り替えた人」の割合は、ニコラエフの方がオデッサよりずっと多いのではと想像する。撃ち込まれたミサイルや砲弾の数に自然に比例するだろう。

УПのこの記事に6月発表されたウクライナのアーティストたちの楽曲が16曲ほど紹介されていて、どーせダサいんでしょと侮ってかかって本当に申し訳なかった。豊穣だった。いくつかとても気にいった。各1分ずつくらいでもひとわたり聴いてみられるとよい。余力あれば別記事でも立ててゆっくり紹介したい(が……)。

動画(海)

お待たせしました、ここから本編です。動画、オデッサのとあるビーチの様子。9日撮影。この季節として人はめちゃめちゃ少ないが、とりま柵から向こうへ人は行かない、水へ入る人は一人もいない、にわかに信じがたいがオデッサ民もついに心を入れ替えたか、と言っている。

Одесса 9 июля 2022. 14 станция Фонтана. Пляж. Обстановка в городе.

7月8日(以後はこちらの動画でお楽しみください)

なんでも白昼2発のミサイルが沿岸部を攻撃しようとしたとかで、幸い海上で爆破して事なきを得たらしいが、「敵が戦術を変更し沿岸部の人口密集地帯にて大量殺傷を行おうとしている可能性も十分にある」ОЖОЖ

渚にはまた河豚が漂着した。離れた場所に一発ずつ計2発。T

敵は雑魚ミサイル下手撃ちの結果意図せず沿岸部やアパートなど攻撃してしまうのか、それとも、諸所で言われてるように、狙って人口密集地を攻撃しているのだろうか。後者はつまり、市民の意図的虐殺。東京大空襲や原爆と同じ、これ以上の犠牲は堪えられないと厭戦気分を瀰漫させ屈辱的講和に追い込む。だが、本気で(всерьез)市民を虐殺するなら、もっと狙える場所がある。オデッサ中心部を無慈悲に叩いてケタ2つ違う死者を出すこともできる。では過誤・錯誤なのか。しかし、もし誤って集合住宅を破壊してしまったのなら(死者は1人増えて22人、ОЖ)、反省のための攻撃中止の期間があってもよかったではないか。実際はその後もオデッサ州へのミサイル攻撃は小止みない。一日として撃たれない日がない。多くはウクライナ軍の方で撃墜できているが、もし撃ち落とせていなかったら、一発あたり数十人が死んでいた……のだろうか。

動画

少し前からちょいちょい紹介してるがこの人のチャンネルでその日その日のオデッサの様子が見られる。何丘ブログなど読まずこれだけ見ていればよい。

↓6日公開、空襲警報発令でショッピングセンターの各テナントが即座に閉まる様子。もちろんクレメチュクの一件で対応が強化されたのだ。

Одесса 6 июля 2022. Торговый центр во время тревоги и прилётов возле Черноморска.

↓8日公開、「お船」という名の海浜レストラン。光と海、青と白、これぞ夏のオデッサって感じ。

Одесса 7 июля 2022. Ресторан Кораблик. Дешевле грибов. Меню и эмоции.

7月7日(ミサイル/善意/本気出してない)

未明および朝にミサイル攻撃。前者では穀物35トンが保管されていた倉庫が破壊された。肥沃な黒土の賜物を「占領地のそれは着服し非占領地のそれは灰にする」のが敵の狙いであると(ОЖ)。後者では侵攻初期にロシア軍の攻撃を受けて無人化し大量のディーゼル燃料を積んだまま近海を彷徨っていたモルドヴァ船籍の商船ミレニアル・スピリット号が被弾し海の一画を赤々と燃やしたそうだ(ОЖ)。

蛇島

ロシア軍を追い出したものの上陸できないでいた蛇島に、7日未明、ウクライナ軍の特殊部隊が電撃上陸、機雷・地雷を避けつつ敵の残した装備に関する情報を収集するなど島の状況を点検し、複数地点にウクライナ国旗を立てて退散、全員無事で帰投した。追ってロシア軍が来て爆撃を行った。TОЖ

ロシア国防省も「今朝ウクライナ軍がモーターボートで蛇島に上陸し旗を立て写真を撮った。即座にロシア航空宇宙軍の航空機が高精度ミサイルで蛇島を攻撃、ウクライナ軍人の一部が殲滅された。生き残った者はオデッサ州プリモルスコエ村方面へ逃走した」とか言っている(TASS)。乾いた笑い:あっはっは。ロシア軍はウクライナ産穀物の海上輸送を妨害する意志がないことを示すために「善意で」島を明け渡した、ということだった。

プ「まだ全然本気出してない」

7日プーチンがロシア議会下院幹部・各会派代表と会談して席上述べたということだ:我々は本式にはまだ何一つ始めてなどいない(Мы, по большому счету, всерьез пока еще ничего не начинали)。TASSУП

「まだ何一つ始まっていない」のだそうだ! いかにこの人間が戦争の「生活の破壊」の側面に盲目であることか。ウクライナ人4400万人の恐怖、不安、涕泣、叫喚、死、住居破壊、家族離散、国内外流亡。これでまだ「何一つ始まっていない」のだそうだ。

セルゲーエフカ

1日未明のミサイル攻撃で被害にあったオデッサ州ベルゴロド・ドニエストロフスキー地区セルゲーエフカ町の9階建てアパートの捜索救助活動が終結したそうだ。21人死亡、39人が負傷、100人超が住居を失った(ОЖ)。我々はまだ何一つ本式には始めていない。「だってまだ我々はキエフに核ミサイルを撃ちこんでいないじゃありませんか!」

本件はオデッサ州としては一度の攻撃による被害として最悪の規模である。民間人の死者数(開戦から通算)はこれで一気に倍加した。

けんか

そのベルゴロド・ドニエストロフスキーで椿事。同地方議会の議場で市長と議長が殴り合いを演じ、その模様を収めた映像が流出、オデッサ州トップより「血が余ってるなら戦場いけ」と強くたしなめられた。ОЖ動画

このどうでもいい話題のうち唯一の何丘的ポイントは市長の名がヴィターリイ・グラジダン(Виталий Граждан)であったことだ。つまり苗字が「市民」。「市民ヴィターリイ」。ちなみに議長の方は「粉引のグリゴーリイ」(Григорий Мельниченко)で、粉引(мельник)系は珍しくない。

⇒過去記事「ロシア人の名前の読み方」「ロシアvsウクライナ珍名五輪

ジョンソン乙

英ジョンソン首相辞任。直前に同人を名誉市民に祭り上げていたオデッサとしてはちょっとバツが悪い。(7/1の項)

7月6日(無事/逝ってよし記念硬貨)

6日オデッサは、未明と白昼ミサイル攻撃を受けるも無事撃滅して被害なし。ОЖОЖ

徴兵適格者の州境またぎ移動「OK」

昨日の続き。軍指導部とゼレンスキーが話して、移動やはりOKということになった。つまり、「徴兵適格の男性が住民登録地から出る場合には軍事委員会の許可を得る必要がある」との説は、否定された。30年前の法律は人の往来が活発になった今の時代に適合していないため無効であると。ゼレンスキー「自分と軍の間にあったことは誤解の名にも当たらない。ロシアの脅威を前に私たちが示している大いなる団結と比べれば、ほんの些細な過ちというに過ぎない。些事である、何ほどのことでもない」ОЖУП

オデッサの蛇島がアメリカで記念硬貨に

ホワイトハウスのおみやげショップもしくはオンラインで買えるらし。9月末発売、予約可。価格は1万円。売上の2割はウクライナの女性・子供の支援に。NATO諸国とウクライナからの注文については送料無料(!?)ОЖ

Russian warship go fuck yourselfというのは2月24日の侵攻開始直後にウクライナの島である蛇島にロシア軍が来て無線で「こちらロシアの軍船、ウクライナの国境警備隊よ投降せよ、さもないと」と警告したところ、国境警備隊は「ロシアの軍船行って自分をファックしてこい(Русский военный корабль, иди нахуй)」と端的に回答し、その会話の音声記録が流出して、強大な敵を前にしてのウクライナ人の気骨と豪胆を示すものとして大流行した。蛇島は結局ロシア軍に占拠され、長らくロシア軍の黒海北岸攻撃の拠点となっていたが、このほど解放された。その間同島沖でロシアの巡洋艦「モスクワ」が轟沈するという一幕もあり(予言の成就)、左の硬貨に描かれてるのはそれ。

アメリカが記念硬貨を出すだいぶ前に本国ウクライナでは異工同曲の記念切手が作られている。前の記事で「記念切手」とか「逝ってよし」と検索すると関連情報いろいろ見つかる。

7月5日(浜/露プロと文セクと何マニ)

5日オデッサ州に3発ミサイルが発射されたが全弾撃ち落とした(ОЖ)。敵はオデッサ上陸作戦など行える状態になく(ОЖ)さしあたり恐れるべきは陸海空からのミサイル攻撃のみ。

浜①ビーチ開放「しません」

浜は地雷原・渚は機雷原だから水浴するなと厳重に勧告されながらそれでも人民の浜降りが止まらぬので「いっそ一部ビーチを重点掃海のうえ開放しては」という話が当局の方で持ち上がったが、やはり安全の観点から、今夏ビーチの開放は無しということでファイナルアンサーだそうだ。ОЖ

浜②浜降りる人民

Once again, 人民の浜降りが止まらない。はなはだしきは子供を伴ってくる。柵もネットも効果なし。ОЖ

動画↓

(言いたくないが)この夏もう何人か死ぬであろう。

浜③浜セのふたり

約1月前にビーチクラブで衆人環視下情事に耽り御用となった男女(ベラルーシ男とキエフ女)に判決。ともに1年の執行猶予付きで、男は1年半、女は1年の自由剥奪刑だそうだ。ОЖ

詳しく知りたい方→前の記事の6/12・13・15付け記述

移動の自由の制限?

ウクライナ軍参謀本部が「徴兵適格の男性が現住自治体の外へ出る際は軍事委員会から許可を得る必要がある」との声明を出して波紋を呼んでいる。現状でも軍事委員会の窓口は長蛇の列で、実質的にかなり強度の移動の自由の制限となる(憲法違反の疑い)。たとえば戦場から妻子を連れだすためにパパ氏が車を出すという場合にも許可を求めて数日待たねばならぬのか。緊急性が高ければ・また懐に余裕があれば例によって袖の下で割り込みをする人も続出しようし「汚職の温床になるだけだ」という声も。軍当局は実はこのことは92年発効の法に明記されており何も新しい決まりごとではない、という。しかしゼレンスキー御大は「こんなことを私ぬきで決めないでほしい。参謀本部には説明を求める」とお冠。なんかいろいろグダグダな話であるが、とりあえず今ホットな話題、今日(6日)にも追報あるであろう。УПBOTTAK

露プロパガンダにおける文化セクションの役割

「露プロパガンダの広大なネットワーク」と題するУП論説が何丘マニフェストには冷や水であった。

男子フィギュアのレジェンド、エヴゲーニイ・プリュシェンコの「ロシア人よ胸を張れ」に代表される、文化人・アーティスト・スポーツ選手による翼賛的言説が、いかに国営メディアのプロパガンダを補完しているか。「テレビを見ている中高年層が最も強くプロパガンダの影響下にありネット世代の若者は反戦リベラルが多い」みたいな単純な図式的理解にまた冷や水。ネット、SNS、サブカル、スポーツ、あらゆる界隈にシンパサイザーがいて、国営プロパガンダを自らのファン層向けに勝手に局所最適化して喧伝してくれる。中央集権的というイメージを覆す、分散的なプロパガンダマシーン像である。

ではさて、このプロパガンダの衛星たち=文化従事者たち、この人たちは、例の「国家を憎んで文化を愛せ」の、どちらの側に属するだろうか。ほれ何丘とかいう奴が「ロシアからプーチンを除いた残余(を愛せ)」とか言っている、その「プーチン」の中には、たとえばプリュシェンコも含まれるだろうか。プリュシェンコもやはりプーチンとともに「ロシア」から引き去られねばならないか。なんだその妙な算数は。

もっと実践的な問い。エルミタージュの館長が「諸外国で我々の展覧会が開催されている。これはまさに、強力な文化的『侵攻』である。お望みなら、一種の『特殊作戦』であると言ってもいい。大向こうには嫌われる。それでも我々は侵攻するのだ。誰にも我々の侵攻の邪魔はさせない」などと発言するとき(Meduza)、たとえば日本でエルミタージュ展が予定されていたとして、その展覧会の開催を支持すべきだろうか。入場口には後援となった在日本ロシア大使館の一読鼻白む祝辞が掲示されている。私たちのチケット代のいくばくかは実質的にウクライナにミサイルを飛ばす費用に使われる。

といって私たちが「館長発言に抗議する」とかいってエルミタージュを拒んだら(さっきから仮定の話をしていますが)、それがかえって敵に塩を送ることとなる。なんて暗愚な(тупые)奴ら、ロシアが嫌いだからって、文化に罪はないのに、展覧会の開催をドタキャンするなんて(トゥポすぎる)……と、本当は私たちが使いたかった「文化に罪はない」を先に向こうに使われてしまう。

何丘マニフェストのアイデアは、「戦争否定とロシア文化肯定をセットで表明する」というものだった。この二つはセットではあるが同時ではない。侵略戦争およびそれを行う主体に対する絶対的な憎悪「にもかかわらず」ロシア語・ロシア文化を愛する、この「にもかかわらず」の前後は入れ替え可能ではない。戦争のエサになるような文化事業は支持するべきではない。だが、何がどこまでそうであるか、見極めることは困難だ。坊主から袈裟を剥ぐほど容易なことではない。

(尻切れとんぼだが、ここでいったん終わる。この問題にはまた何度でも還ってくる)

7月4日(無事/児戯)

オデッサ州軍政長官:4日オデッサは無事だった。ただし、陸海空(クリミア/海上の敵船団/戦略ミサイル爆撃機)のどこからミサイルが飛んでくるか分からない。とはいえ一つ現状で排除されているシナリオは、敵の陸上部隊のオデッサ侵攻である。ニコラエフがしっかり守ってくれている。ヘルソンに対しては奪還攻勢がかけられている。今年……とはいかなくても、来夏こそは、またヘルソンのうまいスイカが食えるであろう。ОЖ

あと、オデッサ州ベルゴロド・ドニエストロフスキー地区(大量死をもたらした1日未明のミサイル攻撃の標的)で敵方に情報を供与してミサイルの誘導を行っていたオデッサ州住人こと敵エージェントが逮捕された由。この戦争のひとつの特徴ではないか。同じ顔をし同じ言葉を話すZの間諜が人中に紛れ込んでいる。

嫌がらせ合戦

下らない話だと思うが。モスクワの英国大使館前の広場が「ルガンスク人民共和国広場」に改称されるそうだ。先にすでに在モスクワ米国大使館前は「ドネツク人民共和国広場」に改称されている。実は先に仕掛けたのは西側だそうで、在プラハおよび在ヴィリニュス(※リトアニア)のロシア大使館の住所が「ウクライナの英雄たち」通りになり、在リガ(ラトヴィア)ロシア大使館の住所が「ウクライナの独立」通りになった。子供のケンカ。現実に行われている破壊と殺人とは何の関係もない。Meduza

нет войне

昨日は繰り返しこれ見てただただ泣いていた。

7月3日(浜/蛇島/世界遺産)

3日また州内某所にミサイルが撃ち込まれたが今度は特段の被害なし。要は、(結果として)平和な日であった。ОЖ

浜(続)

昨日の浜の爆死について、浜で遊んでいたのは「領土防衛隊の戦士たちであった」という報道が一部メディアでなされているらしい。軍部はこれを否定、かかる情報は軍の信頼性を損ねるもので、メディア各社には是正を求める、とした(ОЖ)。なるほどな、あり得る話と思う。事実そうであったとしても軍としてはもちろん火消しに走るだろうし、戦時下のウクライナに無論報道の自由はないので揉み消される。

で、まだ公式アナウンスはないのだが、一部ビーチにはこういう(↑)ネットとか柵が設置され始めているらしい(ОЖ)。初めからやっとけよという感じがするが。「2022年・戦時下の夏、当局による禁止も、機雷の爆発による水浴者の死の先例も、バカンス客の海水浴を止められない(Военным летом 2022 года ни запрет, ни примеры гибели купающихся от подрыва на минах не останавливают отдыхающих от того, чтобы искупаться в море)」←ウクライナ戦争の裏面史に刻まれるべき事項。どんだけ海水浴したいんだ、どういうメンタルしてるんだと訝しいが、これは私が埼玉県民で、基本的にこういう文化と無縁で生きてきたからかもしれない。先日家族で江の島を望む片瀬の浜に遊んだのだが、埼玉東京で見るのと全然違う人種がいるなと思った。サーファー。やたらムキムキの男たち。やたら声のでかい女たち。この人たちになら共感できるのかもしれない。

蛇島

「善意」によってウクライナに明け渡した筈の蛇島に対しロシア軍が攻撃を続けているという。にしても「善意」はよく言った。厚顔無恥という語の説明には以後もう困らない。

島はいまグレーゾーンとなっていて、ロシアとウクライナの双方の攻撃を浴びているそうだ。ロシアはこの間この島を本格的な「海上の無線電子機器倉庫」と化すべく大量の設備を運び込んでいた。中には高価かつ機密性の高い装備もある。これを鹵獲されないよう破壊したい。でまたウクライナはウクライナで、破壊に躍起になっているそうだ(何故?)ОЖ

世界遺産

オデッサは年内に世界遺産に登録される、との見通しをウクライナのユネスコ常任代表兼駐フランス大使が示した。何しろイタリアをはじめとする諸国の後押しを受け、登録待ちの諸都市の中で最優先で審議を受けているとのこと。ОЖ

ロシア軍による破壊に対する抑止力のひとつとして登録を急ぐということのようだが、抑止力になぞなるだろうか。彼らに聖なるもの・不可触のものなど何もないではないか。世界遺産なぞより人の住んでいる9階建てのアパートの方がよっぽど攻撃してはならないものではないか。なるほど世界遺産に登録されている文化歴史的価値のある建造物を破壊してしまいましたというのは人聞きが、つまり、国民の覚えが悪い。だがそれもいつもの伝で、ウクライナのナショナリストどもが陋劣に事欠いて世界遺産指定の建物に西側供与の武器弾薬を密蔵していたのでやむなく破壊したとウソつけば済む話だ。

それでも、もちろん、喜ばしいことだ。薄皮一枚の抑止の被膜になればよし、また、戦後のことを考えると、世界遺産ブランドで、たくさんの観光客が外国から訪れる。オデッサを世界遺産に。オデッサに優先審議を。さきたま古墳群、悪いけどちょっと順番を譲って。


(自分用メモ:ノーヴァヤガゼータのドキュメンタリー、2018

7月2日(喪/また爆死)

1日未明のミサイル攻撃による20名をこえる死者のため2日オデッサは喪に服した。街中に半旗が掲げられた。

その2日はミサイル攻撃を受けなかった。ОЖ

浜の爆死case2

オデッサ州某所のビーチで水浴中の男性が爆死。いまオデッサで最も同情されない死に方。浜は地雷原・波打ち際は機雷原ゆえ水浴言語道断とずーっとずーっと言われているのに大丈夫っしょと水に入る人。男性数人で水浴してたらうちの1人が爆死、またの1人は挫傷&裂傷を負ったが「病院への搬送を拒否した」。廉恥ゆえか。ОЖ

先行ケースであるドネツクからの避難家族の家長が爆死した際(前の記事6/11の項)にはオデッサ州行政当局から同情の声は一言もなく、むしろ「前線で兵士たちは命を削って一体誰のことを守っているのか」と市民の軽率を批判した。ごもっとも、と言う外ない。

7月1日(喪)

7/1未明の攻撃による被害の全容が明らかになった。死者21人。うち1人が12歳の子供。38人が病院に搬送され、うち5人が子供、そのうち2人が重体。ОЖ

攻撃されたのは下図の地点。オデッサ州ベルゴロド・ドニエストロフスキー地区のセルゲーエフカ町。

9階建てのアパートと海辺の保養施設が被弾した。前者にはその晩150-160人がいた。瓦礫の中からペットの遺体も多く見つかり、その大半がネコだそうだ。ОЖ

ロシア国防省はオデッサのレーダー基地を破壊したとだけ(TASS)。ペスコフとかいう機械人形はオデッサ州でアパートが攻撃されたとの報道について「ロシア軍は民生施設は攻撃しません攻撃するのは軍事施設だけです」と繰り返すのみ(TASS)。それでは足りぬと思ったか露国防省、キエフ政権はオデッサにて今後も自作自演の「悲劇」を演じようとしており間もなく世界はオデッサを舞台にしたさらなる「ロシアの蛮行」を目にするであろうがそれはフェイクですので要注意!と注意勧告どうも(TASS)。

実際には、オデッサへのミサイル攻撃はいったん止むのではないかと思う。てめぇのミサイルが本当は何に命中してしまったのか、司令部は分かっていると思うので。

ボルシチ

ボルシチがユネスコの無形世界遺産に緊急登録されたらしい。「ウクライナ料理」として。ОЖ

個人的にはボルシチがロシア料理かウクライナ料理かみたいな論争に興味はない。何丘マニフェスト的にいえば「ボルシチはロシアより/ウクライナより偉きい」。ただ、世界遺産といえば、今オデッサが旧市街の文化遺産登録を目指しているではないか。今次のボルシチは「ロシアによる軍事侵攻で存続が脅かされて」おり「緊急に保護する必要がある」ということで、審議を大幅に前倒ししての登録だそう(NHK)。ならオデッサも近々いくか? 正直ボルシチより、オデッサ市街の歴史建造物群の方が、リアルに存続を脅かされていると思うが。

ところでОЖは「あなたの家庭のボルシチレシピ教えてください」キャンペーンをやっていた。私たちがОЖをまだ紙で読んでいた頃から。こちらのページで人気レシピ見られます。露語またはウクライナ語だがGoogle翻訳とかで分かると思う(多分)。

※буряк=свёкла、ビーツ

英首相がオデッサ市の名誉市民に

欧州でも突出してロシア批判・ウクライナ支援に積極的な英国のジョンソン首相がオデッサの名誉市民になった(ОЖ)。オデッサ名誉市民一覧(Wikipedia)見ると帝政時代・ソ連時代・現代ウクライナを通じ56人の中で「父称のないやつ」は際立っている。

6月30日(悪魔的攻撃/蛇島解放/ビーチ事情)

オデッサに対するミサイル攻撃が非人道性を増している。7/1未明の一発で9階建てアパートが被弾し少なくとも14人が死亡という。オデッサとしては開戦以来最悪の被害となる。ほぼ同時に攻撃されたオデッサ州内の臨海休養施設では3人が死亡、うち1人が子供。詳報を待つ。УПУП

蛇島解放

オデッサへの攻撃がより悪魔的になっているのは、これの報復なのだろうか。蛇島を陥落させた。蛇島位置↓

侵攻初日にロシア軍に占拠され、以後拠点として利用されていた蛇島(「ズミイヌィ島」)に対しては、先日来ウクライナ軍の猛攻が仕掛けられており、いろいろ戦果を誇っていたが、まぁ自軍の戦果は誇るよねということで、眉に唾をつけて聞いていた。だがこの6/30、ロシア軍を島から撤退させることに成功したらしい。ロシア側も撤退を事実と認めている(TASS)。かくして「オデッサ州で唯一ロシアに占拠されていた領域が占領者どもから解放された」ОЖ。ゼレンスキーも定例ビデオメッセージで「きょうの言葉は『蛇島』一択。黒海の状況は大きく変わる、敵の行動は大きく制約されることになる」と戦果を寿ぐ(動画)。

ロシア側は撤退をどう説明しているかというと、ロシア軍の海上封鎖のせいでオデッサ港から穀物が輸出できず世界食糧危機が引き起こされかねないと先から言われていたことに結び付けて、「もともと海上封鎖などしていなかったが、していないしする気もないですよとことさら示すために、所期の課題をとりま完結させて、善意で(в качестве шага доброй воли)島を明け渡します」などとうそぶいている。ウクライナ側は「残りの兵器を(鹵獲されないよう)自ら爆発させて高速艇で逃げ出した」と描く。島の様子↓

こんな島中からもうもうと煙が上がっている画をロシアのメディアはもちろん使わないのだろうな。善意(добрая воля)という言葉の寒々しさ。案の定この句はウクライナ側声明・報道でも皮肉をこめて引用・再生産されており、戦中珍言録に残りそうな感じだ。

ここからは素人談義だが、蛇島からロシア軍がいなくなったことで、オデッサはだいぶ安全になるのだと思う。蛇島の役割は基本的に攻撃というより防御であったと理解している。オデッサ州に飛んでくるミサイルは大体クリミアもしくは海上の船団(まれにカスピ海上の戦闘機)から発射されるのであって、蛇島からミサイルが撃ち込まれたみたいな話は聞いたことがない。蛇島が行っていたのは船団への補給とか、島に設置されたレーダーとか地対空ミサイルシステムによって、ウクライナ軍によるロシア船への攻撃を阻止または迎撃することだった。ということは、だ。蛇島を失ったことで、ロシアの船団は脆弱になる。これに乗じてウクライナ軍が海上のロシア船団を叩けば、ロシアのオデッサ攻略は確実に遠のく。と思って喜んでいいでしょうか。

ビーチ

オデッサは黒海北岸を代表するビーチリゾートで本来ならウクライナ全土また外国からもバカンス客がたくさん訪れて浜辺に憩うのだが、戦争が始まってすぐにウクライナ軍が浜辺に地雷を設置、のち海上に蟠踞したロシア軍が機雷を設置、その機雷が時化で繋留を解かれ岸辺に漂着するようにもなって、今年はバカンスのシーズンというものはありません、ビーチは立入禁止ですということになった。戦争百景が一「浜は地雷原」↓

で問題は、けれども夏が来て暑くなり、海が恋しくなって、人たちが禁止を破って浜へ降り、水浴を楽しみだしてしまったということだ。警察がパトロールして「注意」を行うのだが、罰金を徴収できるスキームがなく、注意は注意にとどまる、聞かない人は聞かない。で、次の展開としては、警察のパトロールに軍のリクルーターが同行して、いい若い者を見つけたら即時に召集令状を発行するようになった。

これについて市民や軍部の意見を集めたОЖ記事。前線では人が死に街が破壊され戦士たちが戦っているというのにオデッサたまさか平和であるからといってビーチ行楽にうつつを抜かすとは何事、徴兵適齢で健康なら当然前線に駆り出されるべきという声もあれば、批判的な声も。「むしろ士気の低いやつに軍に入ってほしくない」「そもそも国家防衛の任に就くことがペナルティみたいに理解されること自体おかしい」「半裸の海水浴客に迷彩服の軍人が赤紙を手渡してる画ヅラは敵プロパガンダに格好のエサを与えてしまう(すわ兵員払底!強制徴用!と騒ぎ立てる)」

また、当局の禁止ならびに己が命を軽んじて浜へ降りようとする人があまりに多いので、仕方ないビーチの一部区画を解放する、というオデッサ市のイニシアチヴがあったが、国レベルではこれをこころよく思っていないようで、実現するか不透明。非常事態庁「たとえば漂流機雷をキャッチする防護ネットを設置する案も出てはいるが、決定には至っていない」ОЖ

浜の爆死、浜のエロスについては、前の記事(6/11・12付けあたり)を参照。

大雨

30日、オデッサは大雨だった。某Youtuberが撮った街の様子。

Одесса 30 июня 2022. В городе ливень. Потоп.

冠水がひどいが、別に災害級の雨ということでもないと思う。アスファルトの質が低くて穴ぼこ・ひび割れだらけなのと、道路排水が全然なってないので、ちょっとの雨でも水浸しになる。戦後復興に姉妹都市の横浜市とかにガッツリ入ってもらって、ついでにこのあたりの問題どうにかしてもらいたいと思ってたりする。

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