続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ

オデッサ/ウクライナ/ロシア

私は2022年3月まで2年半オデッサに住んだ。今もそこに義父母と義兄を残している。平和を心から願っている。専門家でもない私がわずかにウクライナ戦争について語る資格を覚える理由はそれ。現地ロシア語メディア報道まとめ。

※この記事の更新は2022年12月31日をもってストップしました。2023年1月1日からはこちらにまとめていきます→続々々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ

*1 主としてОЖことオデッサローカルメディア「オデッサライフ」、УПことウクライナ全国メディア「ウクラインスカヤ・プラヴダ」、ロシア反体制メディアMeduzaを見ています
*2 この記事はオデッサ(ウクライナ)情勢、現地報道まとめ(3/15~6/28)および続・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(6/30~9/22)の続きです

12月31日

2022年最後の日もロシア軍は静穏でなく爆音と破壊を選んだ。ウクライナ全土に20発以上の巡航ミサイルを発射、ウクライナ側が撃墜に成功したのはうちの12発。首都では死傷者、うち1人は邦人ジャーナリスト。УПУПУП

そして大晦日から元日にかけての夜は自爆ドローン群が大挙して首都を襲った。45機を撃墜した由。「あけましておめでとう」と書かれていた。心胆が凍る。УП

しかし今次の攻撃では送電網にはさほどの影響が出ずに済んだらしい。対空防衛チームと電気技術者らの素晴らしい働きのおかげだ、とエネルギー相。英雄とはこの人たちのことだ。УП

オデッサの義父母@団地は夕方ずっと電気がなかったが21時くらいに電気がついてそのあとはずっと電気がきていたという。12月31日17時(日本時間の元日0時)に義父母と義兄が私たちのために乾杯してくれて、その模様を収めた動画があとで送られてきた。暗い部屋に蝋燭の光だけ燃えていた。義兄のさらっと口にした「今ちょっと暗闇だけど」の一言が耳に残った。暗闇。神様いますか。このよき人たちのために光を。この人たちから光を奪うものどもに死を。

12月30日

ウクライナ側は「ロシアが1月5日に新たな動員をかける」という情報を持っているようだ。レズニコフ国防相がロシア語でロシア人に徴兵忌避を呼びかけるビデオメッセージを出した。「新年を前にロシアの特に大都市に住む徴兵適格の市民に対して呼びかける。私は確実に知っている:皆さんには何らかの選択が可能である期間はあと1週間しかない。1月初旬にロシア政府は国境を閉鎖して男性の出国を禁じる。そのうえで戦時態勢を宣言して新たな動員をかける。同様にベラルーシでも国境が閉鎖される」УПУП

電力

電力会社によれば、キエフの電力供給は安定化に成功した。首都は計画停電へと復帰しつつある(УП)。たとえ同じ時間停電するのであっても何時から何時まで停電しますとわかっているのといないのとでは全然ちがう。

そのキエフ、クリチコ市長によれば、現在人口360万人で、これは戦前とほぼ同水準だそうだ。使用されている携帯電話の台数で数えるらしいのだが、それでいうと、戦前が380万人、これが3月には100万人未満になって、7月には200~250万人にまで回復し、現在は360万人。うち30万人は他の地域からの避難者だそうだ。УП

オデッサは、とりあえず義父母のところ(オデッサ市内の団地)にはそれなりに電気がきている。(と義父母はいう)

戦いのなかで「国民」が生まれる

ウクライナ軍総司令官ザルージヌィが新年祭を祝うビデオレターを発表しました。それにいわく。「私たちが戦争を選んだわけではない。だが私たちは戦闘を受け入れた。神は私たちの側にある。私たちの、また私たちの家族は、重苦しい試練を、痛みを、苦しみを背負った。今年の降誕祭は涙の味がする。血の色をしている。けれども私たちには、敵に打ち勝つだけの力がある。闘争のなかで国民が生まれる。親愛なる皆さまに神のご加護のあらんことを。新年おめでとう、主の降誕おめでとう」УП

我々は戦争の経験を通じてかの地で国民国家(ウクライナ人のウクライナ)が形成されていくさまを目睹しつつある、という指摘はよくなされる。

国民アプリДияでアンケートをとったところ、降誕祭(クリスマス)を12月25日に祝うという人は60%、1月7日に祝うという人は25%、両日とも祝うという人は13%、祝わないという人は3%だった。闘争が「国民」を育んでいる。一週間で150万票が集まった。Дияは電子化されたマイナンバーカードそのものなので多重投票は絶対にできない、実勢を正確に表したものと認めないわけにはいかない。「積極参加に感謝。今後もともに電子的民主主義を発展させていこう。来年はもっとたくさんДияを使った投票をやっていく」とフョードロフDX相。УП

プーシキンドミノ(Пушкинопад)クラマトルスクに及ぶ。ドネツク州クラマトルスクでプーシキン像が撤去された。国民が生まれつつある。УП

これで今年の更新を終わります。見守ってくださりありがとうございました。

12月29日

第10次大規模インフラ破壊攻撃。ミサイル69発が発射され、うち54発を撃墜、15発に着弾を許した。またイラン製自爆ドローンを11機撃墜した由。一連の攻撃により10州10施設に被害、キエフ州、オデッサ州、西部が深刻な電力不足に陥り、キエフでは電力需要者の4割、リヴォフでは9割に停電被害が及んでいる。УПУПУПУП

ゼレンスキー「敵は我々をして暗闇の中で新年を迎えしめるため、年内にもう一度大規模攻撃をしかけてくるかもしれない。だが敵が何を企らもうとも、我々は一つのことを確実に知っている。我々は耐え抜く、と」УП

オデッサは今年は市としてツリーは立てないという話だったがやはり立てるようだ。暗闇の中デリバーソフスカヤ通り(石畳の目抜き通り、ホコテン)で飾り付けが行われた。ОЖ

今さらツリーですか?と思われるかもしれないが、あちらのクリスマスは基本的に1月7日であって、んでツリーはクリスマスというよりは新年祭(クリスマスと正月を含むより大きな概念、日本の学校カレンダーでいう「冬休み」の期間にほぼ重なる)のアトリビュートであるため、間に合っているといえば間に合っている。とはいえ遅い。時勢にかんがみ設置しないと決めていたところ市民の突き上げを受け「やっぱやろう」と急ぎ設置してるものと思しい。

エカ乙

オデッサ中心部のエカテリーナ広場はその名の主を失った。「市創健者たちに捧げる記念碑」通称エカテリーナ2世像は撤去された。あとにはウクライナ国旗が翻っている。ОЖУП

12月28日

ゼレンスキーの晩方の定例ビデオメッセージ抄訳:たとえ心にわだかまりがあっても、互いを助けること。あなたの隣人に暖かい言葉をかけてやってください。その人がしてくれたことへの感謝を伝え、努力を評価してやる心のゆとりを持ってください。この困難な状況で、この困難な時代に、孤独に陥ってしまった人、何らかの理由で親類を失ってしまった人に、「何かできることはありませんか」と声をかけてやってください。あるいは、黙って手を差し伸べてやってください。声をかけ、耳を傾け、手を差し伸べること。いつもより少し多く、家族と抱擁を交わし、いつもより少し多く、子供と遊んでやる。遠方の親類には電話をかける。ときどきでいい、友人や知り合いにもメールを送ってください、つながりを失わないために。あまりに寒々しい出来事がうち続くとき、あなたの言葉は人を温める力をもちます。人間性を失わないようにしましょう。おそろしい月々をくぐりぬけてきました。来る年も困難なものとはなります。それでも、人間性を失わないようにしましょう。УП

春夏あたり私(何丘)は自分に何かできることがあるだろうかと問う人に何でもできますよ。できることは無限にありますよ。傭兵になってください。ウクライナに渡って戦ってください、露助どもを殺してください。と答えていた。というのは嘘で(それが人間の可能事に含まれるのは真実だろうが)本当はこう答えていた。ただ善き人であってください。この世界は暴力と恐怖と憎悪にあまりにひどく汚染されてしまった。友愛と寛容がこの世界に占める割合を少しでも多くしてやってください。人に優しく。麦稈真田を編む手は敬虔に。

もういちど思い出そうと思う。私にはさしあたり義父母と数人の友人がいる、今日は必ず彼ら全員にひと声かける。それから今ならもうひとつ、できること・すべきことが確実に見えている。ウクライナに電気と毛布を届ける手助けをすることだ。読者の皆さま、私に免じて、何卒そういうことをしている信頼ある団体への募金にご協力ください。

・日本赤十字社 医療サービス・機器、医薬品など
https://www.jrc.or.jp/lp/kaigai/donation/
・ユニセフ 子供たちの安全・健康支援
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/ukraine/
・UNHCR 発電機、毛布、温かい衣服など防寒支援
https://www.japanforunhcr.org/appeal/winter-support

(すでに私より多額を募金している方もおられると思う、今さら何をという感じでしょうが、言葉で表現するもの・発信するもののはしくれとして、訴えかけることを続けさせてください)

エカテリーナ女帝像ついに

オデッサ中心部のロシア皇帝エカテリーナ2世像の撤去についに着手がなされた。まだ完了の報知はないが朝からがんばってたみたいだ。A.スヴォーロフ元帥像の方は撤去が完了した。ウクライナの正史からのロシア人の功績の抹消。УПT

ロシアを国連安保理から締め出す

ロシアを国連安保理から締め出すためにウクライナが「ソビエト連邦の安保理常任理事国の任をソ連崩壊後にロシアが継承した手続きは不正であり不法であった」という論理を持ち出したのだが反露の急先鋒であるエストニアの外務次官いわく「本気でロシアを締め出すには圧倒的多数国の賛成が不可欠であるところ、当該イニシアチブにはほぼ賛同者がいない、このやり方には展望がない」УП。手続きの方面から攻めるのは得策でなかったか。でも道義でいえば明らかにおかしいのだ。国際秩序の最大最悪の破壊者が国連安保理常任理事国などやっておるのは。

電気

キエフは間もなく計画停電へと移行できるということだ。「キエフの状況は安定化しつつあり、停電はより予見可能なものになりつつある。技術者らの信じがたいような努力のおかげだ。間もなく計画停電へと復帰することが期待される。あなたの家にも電気が届く」電力会社Yasnoのコワレンコ総裁。УП

隣国モルドヴァでは29日18時から政府庁舎で一斉消灯を行うそうだ。「ウクライナとの団結の証として」。УП。荻窪よ、そして日本中の荻窪たちよ、これが正しい連帯の示し方だろう。あなたがたのやっているようなことをやるならばいっそ何もやらない方がよい。

ウクライナにおけるロシア語書籍の出版と流通

ウクライナでは2022年(12月15日現在)、7103タイトル617万2000冊の図書が刊行され、うちウクライナ語図書は5802タイトル552万3000冊。624タイトル39万9000冊がロシア語図書であった。ロシア語図書は前年比で点数で6割減、冊数ベースで7割減という。大規模戦争勃発後はロシアからの図書の輸入が全面禁止されているがそれ以前に合法的に流入したものについては流通は禁じられていない。書店でロシア語図書は手に入る状況という。УП

12月27日

19日を最後にウクライナ全土暗転をめざした大規模攻撃は行われていない。キエフの電力供給状況は蝸牛の歩みでしかし確実に回復していっている。いま供給は「限定的ではあるが安定している。安定してはいるが、限定的である」とのこと。УП

以下、この数日の細かい話題。

調査:ウクライナ市民はソビエト連邦の復活を願わず

ラズムコフ・センターがウクライナ市民にソビエト連邦についての考えを聞いたところ、「ソビエト連邦の復興を目指さない」と答えた人が87%だった。そらそうだろ、と思われるかもしらんが、2021年には69%に過ぎなかった。2000年には53%であった。

逆に「ソビエト連邦の再興を望む」と答えた人は3%であった(2021年には10%、2000年は19%)。「望む、しかし現在の状況では現実的でないことは理解する」は11%(2021年には21%、2000年は28.5%)УП

ウクライナの人口動態

人口動態の面からみるとウクライナの先行きは暗いそうだ。ウクライナの人口は94年以降一貫して減少しており2022年の100万単位の人口流出もあって現在は3400ー3500万人ほど。これが今後さらに先細ること必定であるらしい。

問題①移民。国外流出した人口は戦争が早期終結すれば帰還することが期待されるが、戦争が長引けば長引くほど国外移民は移民先に根を張り、また帰還すべき国土の荒廃はより進む、したがって、帰還は望み薄となる。
問題②死亡率。今次の大規模戦争による直接の死者のほか、ストレス、医薬品・医療サービスの不足、食料問題などによる間接死もあり、死亡率が急上昇している。
問題③出生率。2023年は出生率が壊滅的に下落する見込み。合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む子供の数の平均)というやつ、これが2.13~2.15人で人口が維持されるところ、2021年時点ですでに1.1人だった。2022年にはこれがさらに減少しているはずで、2023年にはもう0.8人あればいいほうだそうだ。少子化が叫ばれて久しい日本でさえ1.3人。УП

ものは正しくそのものの名で呼ぼう

ウクライナ安全保障会議書記ダニーロフが市民へ呼びかけ、メディアまた巷間で久しくロシア人のことを餓鬼(орк)だとか露助(русня)だとかブタ犬(свинособака)だとか呼ぶことが流行ってるが、それに淫してはいないか、これが敵のイメージをある種「洗浄」することになっていないか。寓意や幻想を用いず、ものを正しくそのものの名で呼んではどうだろう。それはロシア人なのだ、ロシア人なのだ、ロシアなのだ、殺し、襲い、盗み、強姦し、破壊し、嘘をついたのは。この血塗られた戦争について全面的な集団責任を負うのがどの民族なのかということがウクライナの歴史的記憶に永遠に刻み込まれるように繰り返しその名を唱え続けるべきではないか。УП

「正しい」名前

キエフ音楽院(Киевская консерватория)ことチャイコフスキー名称ウクライナ国家音楽アカデミー(Национальная музыкальная академия Украины имени П. И. Чайковского)は侵略国にちなむ名称をウクライナから一掃しようキャンペーンの一環で「チャイコフスキー名称」の部分を削除する流れになっていたが音楽院側の決定は「名称変更しない」ということになったそうで、これにトカチェンコ文化相が立腹(УП)。国立の教育機関であるからは最終的な決定権は国にあるのだろう、だから最終的には改名されるのだろうが。

12月26日

電力は依然として全然足りていない。キエフ市と5州(ドネプロペトロフスク、ザポロージエ、リヴォフ、キエフ)で緊急停電状態が続いている(УП)。26日晩の時点で900万人に停電被害(УП)。エネルギーインフラ狙いの大規模攻撃は19日が最後、次なる攻撃が来ないうちになんとか復旧をがんばって2023年をウクライナ国民が光とともに迎えられるようにしたい、とエネルギー相(УП

ふつう新年祭は各都市が中心部の広場(教会前の広場だったり市庁舎前の広場だったり公園だったり)に大きなツリーを立てて電飾で飾る。今年はどこも相当簡素にしており、中には全然ツリーを立てない街もある。さる調査機関の調べでは新年祭にかける費用は昨年が17都市合計5000万グリヴニャ(4倍で円)だったところ、今年は16都市で19万グリヴニャ、つまり200分の1以下に激減している(УП

また、年越しの瞬間はめいめい花火を挙げてハッピーニューイヤーを祝う習わしだが、今年は花火は禁止。分かりきった話だ、むしろ正月くらいはこの一年いやというほど聞かされた爆発音を聞かないで済ませたいもの(УП

このような状況の中で市民にせめての楽しみをと、スイスの芸術家ゲリー・ホフシュテッターという人が発電機持参でキエフに来て、12月23~25の3夜にわたりキエフ中心部の教会など歴史建造物をキャンバスにプロジェクションマッピングを行った(УП

翻ってこちら、荻窪駅前のイルミネーション(昨日撮影)。日本的лицемериеの典型に映った。「ウクライナとの連帯を示す」ツートンカラーできらきら明るい夜。

12月24日

ゼレンスキーのクリスマスメッセージ抄訳:西方典礼の降誕祭おめでとう。祝いの日を困難な状況で迎えることになった今年。激戦地で今宵を迎えている人、避難先の外国で迎えている人。どこにいるのであれ、我々は皆ともにいる。ともにひとつの夜空を見ている。ともに思い出そう、2月24日の朝を。これまでどれだけのことがあったかを……アゾフスターリ、ブチャ、クラマトルスク、蛇島、チェルノバエフカ、イジューム、ヘルソン。たくさんの悲しいニュースに接してきた。これからは多くの喜びの報せがあるように(我々にはそれを受け取る権利がある)。祝いの歌を歌おう、元気よく、発電機の音をかき消すほどに。心をもって家族の祝いの言葉を聞きとげよう、たとえ通信がダウンしたとしても。暗闇のなか、暖房がないなら、抱きしめ合おう、互いの熱で温め合うために。УП

12月23日

ウクライナのエネルギー相ガルシェンコが米Forbes誌のインタビューで述べたところによれば、もしこれ以上ロシアからの攻撃がなければ、エネルギーシステムは夏までに安定化する見込みだそうだ。何もなくてさえ夏まで。何もないことなどあり得ないときに。「ロシアの最終目標はウクライナ全土のブラックアウトだ。電力インフラに対する大規模攻撃はすでに9回行われていて毎回70-100発のミサイルが撃ち込まれているが細かいミサイル/ドローン攻撃なら実は毎日行われている。先日ダニーロフ安全保障会議書記がロシアはリソース枯渇でこのような大規模攻撃はあと3-4回しかできないだろうと述べたが、ひとつの武器が尽きれば次の武器を見つけてくる。結局は我々が勝利するまで攻撃は終わらないであろう」УПУП

シュムィガリ首相がインテルファクス・ウクライナ通信のインタビューで述べたところによれば、ウクライナ政府は現在大都市の全面ブラックアウトを含めあらゆるシナリオに対し準備を行っている。送電網が完全に破壊され全面ブラックアウトが生じた場合、その状態を脱するには7-10日がかかる見込みだそうだ。ただ、そのような事態を世界は経験したことがなく、この数字は試算にすぎない、とも。УП

同じインタビューでシュムィガリ首相、ブラックアウトの際に行政主導で住民の避難を行うことはない、と断言。国全体が壊滅的な人道状況に陥ったときにどこに人を避難させるというのか。それが可能な人は近隣の農村へ、籠城の構えを然るべく整えている人は街に残り、それが可能な一部の人は国外に避難するであろう。中央主導で何かすることはない。「とにかく生き残ること。それが最大の課題だ」УП

キエフ中心部の歴代ヨールカ(新年祭ツリー)写真集、УП。2001年↓

2010年↓

2019年↓

2022年↓

許されない。許していいわけがない。
何か思うべきだ。何も感じないべきではない。

賢い人・力のある人にはいろいろ手段があるのだろうが、我々のような貧者にも、ウクライナの人々を支えるために物資やサービスを提供している信頼ある国際慈善団体に募金するという手だてがひとつあると思うのです。

・日本赤十字社 医療サービス・機器、医薬品など
https://www.jrc.or.jp/lp/kaigai/donation/
・ユニセフ 子供たちの安全・健康支援
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/ukraine/
・UNHCR 発電機、毛布、温かい衣服など防寒支援
https://www.japanforunhcr.org/appeal/winter-support

ご協力ください。ウクライナの人たちにささやかなクリスマスプレゼントを。赤十字とユニセフは2000円から、UNHCRは1000円から寄付できます。


「何かやる」の方の記事、久しぶりに更新しています

12月21日

22日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー、ホワイトハウスでバイデンと会談」。2月24日以来初めての外国訪問である。これにあわせて米からウクライナへの新たな大型軍事支援が発表された。

会談後の共同記者会見でゼレンスキーは「正義ある世界(справедливый мир)」という印象的なフレーズを用いた。正義の定義は人による、だが彼(ゼレンスキー)の見るところ、正義ある世界には少なくとも2つのものがあらねばならない。一に、主権国家の領域的完全性が損なわれないこと……つまり、ある国がある国の領土を侵略するようなことがないこと。一に、ロシアによってもたらされた物質的損害が賠償されること(УП)。完全に同意する。この世界が正義あるものとして私たちの子供たちに残されていくために、①ロシアはただちに侵略を止め、②この間ウクライナにもたらした損害を最後の1カペイカに至るまで完全に賠償しなければならない。

電気

いま一番ひどいのはキエフで、たびかさなる攻撃により変電所の6割が破壊され、1日のうち電気が使える時間はよくて5時間、悪くて2-3時間、中には19日の攻撃以降ずっと電気が使えないままの地域もある。発電というよりは送電の問題、変電所がズタボロなので作っても送れないという状況らしい。УП

そんな中、19か国62件の人気観光施設が自主停電し、ウクライナへの連帯を示した。#LightUpUkraineと題するキャンペーン(УП)。ローマのコロッセオ、シドニーのオペラハウス、ブリュッセルの欧州議会はじめEU諸機関庁舎、エジンバラのスコットランド議事堂、パリおよびポルト市庁舎、ニューヨーク中心部のクリスマスツリーなどなど。東京タワーだのスカイツリーの名が連ならなかったのは残念であった。

あわせてUNITED24というプラットフォームでクラウドファンディングも行われている。集まった募金はウクライナの病院で稼働する発電機の購入資金になる。こちら

12月20日

自分が何をやっているのだろう分からない。何の意味もない更新。心が死んでいる。

ゼレンスキーがドネツク州の激戦地バフムートを訪問した(УП)。よくやる。むろん事後発表。かと今度は米ワシントンDCを訪問するらしい(УП)。安全地帯で「生を愛している」もう一人のウラジーミルとはえらい違いだ(12/12の項参照)

首都キエフを中心に電力は依然危機的状況、必要な出力の半分しか発電できておらず、緊急停電から計画停電への移行は見通しすら立たないという(УПУП)。

シュムィガリ首相「ウクライナに暗闇の中で新年を迎えさすべくロシアは近日中にも次なる大規模インフラ攻撃を行う可能性がある」。これに抗するために例の「不屈の拠点(пункт несокрушимости)」すなわち停電下でも市民が給電し暖をとることのできる自律的な施設の数を1万5000棟(現状の3倍)にまで増やす計画という。УП

ウクライナのクリスマスは12月25日?

ウクライナ人にとってクリスマスとはいつなのか、世論調査(「レイティング」による11月末の調査、УП)。以下「降誕祭」でいかしてもらいます。

降誕祭を「1月7日」に祝うという人・・55%。昨2021年は71%だった。
降誕祭を「12月25日」に祝うという人・・11%。昨年は4%。
両日とも祝うという人・・25%(昨年は18%)
全然祝わないという人・・8%

また別の質問で、

今まで1月7日に祝っていたが「12月25日に変更してもよい」と考える人・・44%(昨年は26%)
変更に反対の人・・31%(昨年は58%)
どっちでもよいという人・・23%

なお、正教信徒に限ると、回答者の46%が降誕祭の日付の変更に賛成、3分の1ほどが反対であった。東部と南部の住人の過半は変更に反対であった。

12月19日

首都ドローン攻撃

19日未明キエフに対するドローン攻撃があり、インフラや家屋が損傷した。少なくとも35機のイラン製自爆ドローンが用いられ、うち30機を撃墜したという(УПУП)。ウクライナ側の報道では(またそれを伝える日本の報道も)「うち何機を撃墜」のほうを誇るが残余が着弾している事実を私たちは見過ごすまい。

これにより送電システムがさらなる障害をきたし各地で緊急停電、復旧には相当な長期間がかかるという。УП

そして悲報。この攻撃で用いられた「シャヘド」はロシアがイランから新たに供給されたものだそうだ。ロシアはイランから新たに250機の自爆ドローンを取得した由。終わらない。УП

12月18日

19日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー、特別サミットの今冬開催を世界に呼びかけ」。平和のためのグローバルサミットなるものを今冬開催しウクライナをモデルケースに世界の安全保障を考えませんかという。この呼びかけはサッカーW杯カタール大会の決勝戦前の演説で行いたい考えだったがFIFAは演説を許可しなかったということだ。УП

新年祭ツリー

新年祭(正月+クリスマス)は例年諸都市の街路や広場にツリーが立てられるが戦時下とりわけ電力危機ということで予算削減・節電のためツリーは設置しないorイルミネーションは行わないという自治体もある。一方ウクライナの国・街・人はアンブレイカブルであるということを誇示するために、また暗い時代の人の心にせめても明るさと温もりを灯すために、やはりツリーくらいは飾りましょうというところもある。オデッサ州西南端のイズマイル市は今年は市としてツリーは設置ないことを決めた(ОЖ)。首都キエフは鉄道の中央駅にツリーを立てたが、電飾は自転車漕いだら点灯する方式だそうだ(УП)。УП

12月17日

18日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「1日でウクライナ人600万人に電気を取り戻した、水については大問題――ゼレンスキー」。16日のミサイル攻撃から1日で電力復旧について成果があったが水の供給についてなお問題を抱えていると。ゼレンスキーが晩のビデオメッセージで。УП

被害が深刻な場所としてオデッサ市・州の名も挙げられている。昨日義父母@ダーチャと話した。電気はついたり消えたりという。街中の義兄のとこにも電気はそれなりに来ている由だ。生存には問題ないだろうが、快適でないことは著しいであろう。そしてそれを私たちには言わない。心配させまいと。

キエフの観光橋が再オープン

ドニエプル河を望むキエフ中心部の観光歩道橋、10月10日の第1次インフラ攻撃で損傷したそれが整備の上、再オープンした。「市民の皆さん、あの橋を再び通れるようになりましたよ」とのことだが写真みるに寒そすぎだ。УП

2月再侵攻説

来年2月にロシアは再び大規模攻勢をかけてくるのではないかとの説について、ウクライナ国防省情報総局報道官:それが起こるかどうかを知る最もシンプルな徴憑は攻撃力が国境付近に集中しているかどうかであるが、現在時点でそうした事象は見られない。また、人員にしろ装備にしろ、プーチンが投入しうる最もよきもの、戦闘に適するものは、すでにウクライナで廃物化してしまった。いずれにしろ、状況の変化があれば、必ず情報は入る。ウクライナ軍はどんな状況に対しても備えがある。УП

12月16日

10月10日以降第9次めとなるエネルギーインフラ破壊を目的とした大規模ミサイル攻撃。朝方、黒海およびカスピ海周辺から74発のミサイルが発射され、うち60発を撃墜したものの、残余にキエフ州含む5州のエネルギーインフラおよび住居への着弾を許した(УПУП)。これにより送電が半減し全土で緊急停電。国営電力「ウクルエネルゴ」社は非常事態宣言を出したが、夕方には非常事態の終息を宣言した(УПУП

ゼレンスキー、晩のビデオメッセージで:モスクワのミサイル狂どもが何を期待しているのか知らないが、戦争の帰趨には何の影響もない。奴らはなお何度かこうした大規模攻撃をしかけうる。だが我々にはすべての攻撃が終わったあとにすべてを取り戻すに足るだけの強い目的意識そして自己確信がある。УП

2月大規模侵攻再現説のレゾナンス

米退役将官ベン・ホッジスはウクライナ軍総司令官ザルージヌィのいう「2月にロシアは再び大規模侵攻をかけてくる」説に反対。「ロシアがこの短い期間に然るべき戦力を整えられるとは思えない。戦力の質については言うにや及ぶ」。いわく、ロシアのポテンシャルを誇大にいうことはむしろウクライナ支援に反対する勢力を利することになる。УП

また、米大統領府戦略広報担当調整官ジョン・カービーいわく、「米国は現時点でロシアが近い将来キエフ侵攻を実行できるとは考えていないが、逆にロシアがウクライナ占領の意思を放棄したとも考えていない」。УП

一方でNATO事務総長ストルテンベルク、「ロシアを過小評価すべきでない」と警鐘。ロシアは長期戦を計画している。そのためにより多くの動員を行い、より多くの損失を覚悟し、より多くの武器弾薬を手に入れるべく努めている。「プーチンは長期にわたる戦争ならびに新たな侵攻作戦を準備していると考えるべきだ」。「大方この戦争は、多くの戦争がそうであったように、交渉によって終結する。だが、それによってウクライナの主権や独立が損なわれるような終わり方はあってはならない。それを最も早く達成する手段こそ、軍事支援を行い、『戦場では勝ち目がない、交渉のテーブルにつくほかない』とプーチンに分からせることだ」УП

戦時下の新年祭

Postmenとかいう調査機関が先月末から今月上旬にかけて行った調査によると、ことし新年祭および降誕祭を「祝う」という人66%、「祝わない」人34%という。前者の94%が「自宅で」祝う、残りは職場とか飲食店とか友達んちとか屋外でとか祝うという。で、新年祭のプレゼントへの出費は平均60米ドル。96%が「前年より簡素なプレゼントにする」と答えている。具体的には「お菓子とちょっとしたお土産」を贈る人が多い由だ。УП

■戦場のクリスマスツリー
ニコラエフにユニークな「クリスマスツリー」が立った。同市の守護聖人である聖ニコライ像を敵の砲撃から守るべく土嚢を積み上げて掩蔽していたのに迷彩服の端切れなど「葉っぱ」で飾り立ててツリーに仕立てた。УП

12月15日

16日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー側近の一部はザルージヌィをスィルスキイにすげかえようとしている――報道」。英エコノミストが消息筋の情報として伝えたところによると、ゼレンスキーの取り巻きの一部はウクライナ軍総司令官ザルージヌィを更迭し、新たにウクライナ軍陸軍司令官スィルスキイを総司令官に据えようと考えている。というのも前者はあまりに人気が高くてもし彼が政党を結成すれば(現状は存在しないが)国民は彼の党に投票するのではないかと危ぶんでのことらしい。ゼ大の取り巻きの一部はザルージヌィの人気を高めないために同人の前線視察を禁じさえしているとか。このスキャンダルはよくて陽動(情報戦)、悪くてウクライナ指導部に対する西側の信頼を損ねる可能性があると。УП

第二次大規模侵攻(説)

そのザルージヌィ、同じエコノミスト紙のインタビューで。ロシアは新兵20万人を準備しており、彼らが再びキエフを目指してくることは疑いがない、と。「ロシアの動員は成功した。彼らの問題はあまりに深刻であり、動員兵は戦うことなどできない、というのは正しくない。彼らは戦える。ツァーリが行って戦ってこいと命じた、彼らは行って戦う」。「2度のチェチェン戦争の歴史を研究したが、当時も全く同じであった。なるほど彼らはそれほどよい装備を与えられていないかもしれない、それでも彼らは我々にとって問題となる」「早ければ1月、だが大方は春に、ロシアは東部のドンバス・南部・さらにはベラルーシから、大規模侵攻を開始する可能性がある。ロシア軍はウクライナ軍を押し戻し、再びキエフ占領を試みる可能性さえある」УП

またレズニコフ国防相、英ガーディアン紙のインタビューで「ロシアは来年2月に新たな大規模侵攻をかけることを計画している」。クレムリンが新たな大規模侵攻を準備しているという証拠が上がり始めているとか。そこで用いられるのは3か月をかけてよく準備された15万人の動員兵だ、と国防相。ガーディアンはこの発言はエコノミスト紙のインタビューにおけるゼレンスキー大統領、ザルージヌィ総司令官、スィルスキイ陸軍司令官の発言とも符合するとしながらも、こうした発信は西側パートナーに対しロシアの脅威を強調し覚醒を促す協調行動の一環であろうとも指摘している。УП

次なるインフラ攻撃はいつ

ウクライナのエネルギーインフラに大量にミサイルだのドローンだのを飛ばしてくるキャンペーンはいつ行われるのか。について、特定の日付と結びつけて怖がったり安心したりすることは慎むように、とウクライナ国防省情報総局。要するに、ロシアは露宇双方の国民にとって年間最大の祝祭である新年祭(12月末~1月初旬)はさすがに攻撃を避けるかもしれないし、逆にそこを狙って攻撃してくるかもしれない。実際に何らかの政治イベントに明確に合わせてきたこともあるし、謎の内部論理によって日付を選んでるらしい感じもある。敵には敵の論理がある、テロリストのあたまのなかなど揣摩憶測するべきでない。「ゆめ準備を怠らぬこと、安心していい状況ではない」УП

社会調査①ウクライナ人の7%が冬季移住を準備中

国際移住機関(IOM)によると、電力危機を背景にウクライナ国民の7%が冬季移住を準備しているという。УПは「わずか7%」という書き方だが、相当な数字ではないか。ほか、「長期間にわたり公共サービスが停止し、しかも復旧日程に関する情報がない場合には、住居から避難する」と答えた人は全体の3分の2に及んでいる。また、ウクライナ国民の40%が早急な人道支援を必要としており、43%が家庭の備蓄が底を尽きたと述べており、63%がガス、電気、固形燃料の消費を制限している、と述べている。УП

社会調査②ウクライナ人の97%が勝利を信じている

社会調査機関「レイティング」が11月20-21日に行った調査では、ウクライナ人の97%が「ウクライナはロシアの侵攻を撃退できる」と信じている。「確信している」75%「どちらかというと信じている」21%。これを合して97%。ことし1月時点ではわずか56%だったそうだ。УП

社会調査③戦時ウクライナのエロ需要

エロ動画サイトPornhubが2022年ウクライナで最も人気があったエロ動画のランキングを発表した。УП

興味深いことにここでも愛国心が発露していて、同サイト内で最も検索されたワードのトップ5に初めて「国産ポルノ(Ukrainian porn)」が入った。で、2021年に第1位(最も検索されたワード)であった「ロシアの自家製(Russian homemade)がトップ5外に締め出された。キーボードにロシアと打つさえけがわらしい、あるいは、それがロシア人であると思うと見てても催さなくなった、ということか。エロに倫理は無用ということでもないようだ。

社会調査④ウクライナ人の大多数が明るい未来を信じている

大規模戦争10か月にもかかわらず、大多数のウクライナ人が未来に希望をもっている。「2023年は行く年よりもよいものになる」と考える市民は65%だそうだ。社会調査機関「レイティング」が11月20-21日に行った調査。昨年末に同じ質問をしたときには「来る年は行く年よりよくなる」と答えた人はわずか31%。楽観主義者が倍増したことになる。УП

オデッサ動物園の新年行事

オデッサ市立動物園が毎年恒例の干支動画を製作中であるとかで、ティーザー画像が公開された。来年の干支がウサギであることにちなみ、なんかウサギとか出てくる「不思議の国のアリス」がモチーフっぽい動画を作ってるっぽい。ОЖ

名物園長イーゴリ・ベリャコフの仕掛け。チープさがたまらない。ちなみに今年(寅年)の動画はこちらです。言葉一切分からなくても黙劇として見て面白いと思うのでぜひ。

作・演出・主演が園長。つまり、このトラの人が園長。

なお、干支というと日本とか中国の専売特許と思う人もいるかもしれないが、ロシアとかウクライナでも普通に認識されていて、カレンダーとかも売り出される。

日本から発電機

オデッサ州が15日、3基の大型発電機を取得した。日本政府からUNHCRを通じての援助だという。ОЖ

こんな大型発電機など送れない。支援など政府とか企業に任せておけばいいのではないかと思われるのも分かる。だが貧者の一灯という言葉もある。あなたはそのとき何をしましたかということは歴史がいつまでも問うてくる。この非道な戦争を目撃した同時代人の責任または宿命というものがある。私のブログを読んでいるということはこの問題に関心がある、この問題にいささかなりと心を痛めている(痛めたいと思っている)ということだろう。一人一人は無力である。私も無力だ。だが私にはちょっとした元気玉が使えるのではないかと心づいた。どうか募金をお願いいたします。

>>UNHCR防寒支援特設ページ<<

12月14日

15日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「西側、ロシアに対する『決定的優位性』取得のためウクライナに新型戦闘機を供与する可能性も排除せず――報道」。英イヴニング・スタンダード紙が消息筋の情報として、西側諸国は侵略軍に対する「決定的優位性」をウクライナに授けて大規模戦争に終止符を打つ方法を議論しており、この議論の結果としてウクライナに現代的な戦闘機が供与される可能性もある、と伝えている由。УП

ドローン攻撃

朝方キエフ市・州を露カミカゼドローン13機が襲ったが、すべて撃ち落とすことに成功した。УПУП

電気

電力は復旧しつつあり、数日中に全土で緊急停電から計画停電へと移行できる見込みという。УП

人口

ロシアによる侵攻が始まってから人口の2割にあたる790万人が国外に流出した。さらに490万人が国内避難民に。激しい戦闘が行われている地域になお1300万人が残っている。ウクライナの人口は昨年12月1日時点で4121万人であった。УП

クリスマス消費を節約してウクライナに寄付を

ローマ教皇が呼びかけ。今年はクリスマスを簡素に祝いましょう。浮いたお金を困窮にあえぐウクライナの人たちを支援するための寄付に当てましょう。クリスマスのシーズンこそ慈悲の心を「具体的な行動で」表すように、と。「クリスマスを祝い、パーティを催すのは楽しいことです。ですが、クリスマスの出費を少し抑えてみませんか。いつもより少しだけ簡素なクリスマス、謙虚なプレゼント。それで節約した分をウクライナの人たちに送りませんか。それを必要としている人たちに」УП

募金先一例
ユニセフ(国連児童基金)
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
赤十字

12月13日

14日2時(日本時間9時)時点のУПトップ↓

トップニュースは「クレバ外相:ロシアは1-2月に大規模侵攻の試みを再現する可能性あり」。13日の会見で外相は次のように述べた。「ロシアの大規模侵攻を実行する能力は1月末~2月に回復する可能性がある。それが確実に起こるというわけではないが、動員・招集・新兵の訓練・重兵器の国内移動を見るに、彼らが防衛を突破してウクライナ深部に入り込む望みを捨てていないことは確実だ」「ウクライナは戦争の最早期終結に努めているが、それがいつになるかは分からない。来年夏に終戦を迎えられるとしたらそれは奇跡だ」УП

電気

ウクライナはパートナー諸国より発光ダイオードランプ2000~2500万個を年内に取得する。節電の一環で、家庭ないし各種施設で用いられている白熱電球をLEDに取り換える計画だという。УП

義父と話した。オデッサ中心部の職場にいるとき義父とは通話できる。発電機があるので。水と暖房は来ているそうだ。電気は切れたりついたり、1日トータルで8時間くらいかなということだった。停電がいつどのタイミングで来るかは全く予想できない。公表されていない。心配するなと言われるのだが。心配しないことなどどうしたらできる。お母さんに電話してやってくれ心細いだろうからと言われる。電話してみるがつながらない。時間をおいてもう一度電話したがつながらなかった。村(ダーチャのある)には電気が来ていないらしい。

12月12日

国営電力ウクルエネルゴ社によれば、12日朝の時点でエネルギーシステムは深刻な出力不足を抱えていて、とりわけオデッサ州では困難な状況が続いているという(УП)。一方でオデッサ州知事は、電力供給の復旧について進捗状況は公表しないとしている。そうした情報が敵の次なる攻撃の判断材料に利用される懸念から。「(公表しなくても)状況が改善すれば市民は実感としてそれを感じることができるだろう」УП

ゼレンスキー語録

Netflixでゼレンスキーのインタビュー番組が放送されたらしい。デヴィッド・レターマンの「今宵のゲストは紹介するまでもなし」とかいう番組。そこでゼが語ったことというのがУПで一連の記事になってた。

■プーチンが死ねば戦争は終わる
(プーチンが風邪ひいて死ぬ、あるいは窓から落っこちて死んだとして、それでも戦争は続くか?との問いに)プーチン? ああ頓風珍のことですか。終わると思いますね、戦争は終わります。権威主義体制とは恐ろしいもので、一人の人間にすべてが依存するというのは大きなリスク。その一人がいなくなれば、もろもろの機関は停止します。ソ連時代にもそういうことはあった。すべてが停止した。УП

■プーチンは核を使わない、なぜなら彼は<生を愛している>から
(プーチンによる核使用のリスクはあるか?との問いに)彼は生きることを望んでいる。コロナが怖くてあんなに長いテーブルに座っていたじゃありませんか。死ぬのが怖いんですよ。裏を返せば生を愛しているんです。ですから核兵器を使う覚悟はないと思うんですよ。だって使ったら次なる一歩は彼を、彼個人を脅かしますからね。УП

■勝つまでは大統領、そのあとは……
(将来どうする?との問いに)戦争に勝利するまでは間違いなく大統領をやる。そのあとについては……別段の考えもない。海に行きたいなぁとは強く思う。私ね、デヴィッド、もう海行きたくてたまらんのですよ。ただもう海辺に座って、ビール飲みたい。УП

ゼレンスキーがオデッサの浜辺で最高のビールを飲めることを赤心もて願う。

ゼレンスキー語録Ⅱ/皆さまへお願い

ゼレンスキーは12日発したG7各国首脳向け声明で一種のクリスマス休戦を呼び掛けた。「ロシアは外交的解決の意思が本当にあるのであれば来る新年祭を機に具体的な一歩を踏み出すべし。グリゴリウス歴の降誕祭(12/25)、正月、ユリウス歴の降誕祭(1/7)。ふつうの人たちが侵略でなく平和について思いをはせるこの期間に、自分たちは侵略をやめることもできるのだということを証明する姿勢のひとつも見せてはどうかと、ロシアに提案したい。この提案をG7諸国も支持してくれることを期待する」УП

(追記:これに対し翌日ペスコフ「撤退は言語道断、ウクライナは現実を受け入れろ」УП

またゼレンスキー、晩方の定例ビデオメッセージで。「ロシアの攻撃があるたびに、可能な限りの復旧を行う。また、発電所の被害を補填するための設備を可能な限り多く国内に運び込んでいる。だが心得ておかねばならないのは、ロシアは自らのテロ戦術を放棄していないということだ。次の大規模ミサイル攻撃がいつ行われるかわからない。ロシアはウクライナのブラックアウトを期待している。それこそがテロリストどもの最後の望みなのだ。この冬を乗り越えるために、できるすべてのことをしよう…」УП

何度でも強調する。ロシアは高緯度帯の冬の寒さとか暖房と水道が電力に依存する都市設計の在り方を自らの体験として熟知しながら、血を分かった兄弟たちの住む隣国へミサイルだの瀉反吐ドローンだの飛ばして、発電所を破壊する営みを繰り返している。これは異常なことであり、テロであり、犯罪である。こんなことを行うものはもう人とは呼べない。こんなことが行われる世界はもう平和(мир)の名で呼ばれるべきではない。

この状況に対して、しかし、我々には明白に「できること」があるのではないかと思う。お金を送ることである。私はUNHCRを推すが、どこでもいい、赤十字でもユニセフでも、何しろいずれか国際的な人権団体に送る。彼らがそのお金で発電機とか毛布とか医薬品とか、必要な財・サービスをウクライナに送る。

これまで募金というものにはジレンマがあった。たとえばウクライナの政府や軍や自治体に直接送ると、殺傷兵器の購入に使われるかもしれないといってためらわれた人もいたと思う。私などは旧来の汚職体質が戦争で一掃されたとも思えぬのでその意味でもオフィシャルへの献金はためらわれた。といって一方、たとえばウクライナ(避)難民支援の募金というのも、その社会的意義はもちろん認めながら、本質的ではないと思っていた。テーブルでコップが倒れて牛乳が倒れたときに、床を拭くよりまずはコップを立てる、あるいはテーブルのほうを先に拭くべきで、本質的な取り組みとは難民の発生する原因の除去、すなわち戦争の停止/終結にどういう形でか資することだろうと思われた。だがそのためにウクライナ軍に寄付するというのも先に挙げたような理由でためらわれるし……と二の足を踏んでいた。

だが今こそ、募金の意義は明白ではないかと思う。ロシアはいま戦術としてウクライナの電力システムの破壊、すなわちウクライナの市井の人の生活の破壊を行っている。「ウクライナのブラックアウトはロシアに残された最後の希望」ゼレンスキー。その希望をくじくことは戦争の終結への直接の貢献ではないかと思われる。

だから、このブログの読者諸賢、何丘から頼みます。ウクライナ越冬支援のための募金に協力してください。

>>UNHCR防寒支援特設ページ<<

このブログを毎日、あるいは「手記」のころから継続して見に来てくれている人たちがいるのを知っている。その節はOFUSEを通じて投げ銭までくださってありがとうございました。その皆さんにお願いする。ウクライナ越冬支援のために募金をしてください。

私は10月10日以降一度も(先日「何かやる」のほうにあれしたが)OFUSEボックスというものを設置していない。いま余っているお金がどこかにあるとしたらそのお金は募金に回るべきだと思った。

だからそれ以降2か月、このブログをタダ読みしてきた読者よ、というと言葉が悪いが、どだいタダの価値しかないかもしれぬが、それでも少しは暇つぶしになった/少しくらいは勉強にもなったのでしょう。その対価をいささかなりと支払う義務が一応あるのではないですか。というのはぼったくりの論法か。

強要はしない、できるはずもない、ただ、これまで読んだ分の対価を払ってもいいというかた、それを私に払うかわりに、募金をしてください。

なにとぞよろしくお願いします。

12月11日

11日夕方の時点でオデッサ州内の停電人口は30万まで減った。とはいえ30万。ゼレンスキーの晩方のビデオメッセージでも被害な最も深刻な地域のひとつとしてオデッサの名が頻出した。УПУП

オデッサ州知事から訂正。①復旧に2-3か月かかるというのは各戸の停電が2-3か月続くという意味ではない。数日中に全戸に電気がいきわたるよう全力を尽くす②当局者はいかなる避難勧告も行ってはいない。それらしき発表が当局FBに掲載されたがそれはその意味ではない。УП

義父母を日本へ呼ぶためにがんばってみる。いろいろ障害はあるのだが。

12月10日

ゴミどもめ・・

10日未明オデッサにイラン製自爆ドローン群飛来、その数15、うち5が撃墜を逃れ「エネルギー施設に深刻な破壊」をもたらし、オデッサ市・州全域で送電が止まった。10日晩の時点でオデッサ150万人に停電被害。破壊の規模は過去数次のインフラ攻撃を上回るもので復旧には2-3か月を要するとも。市外への避難すら呼びかけられている。УПУПУПУП

義父母はダーチャに逃れていて、驚いたことに村には10日終日電気が来ていたそうだ。

市長によれば重要インフラたとえば病院・産院には電気が通っている。逆にいえばそれ以外のすべてで電気が止まっている。水と暖房は供給できているそうだ。ОЖ

※お誘い
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の防寒支援にお金を投げてみませんか。1000円~募金できます。こちら→UNHCR

募金の際に「ウクライナ越冬支援」と記していただければ使途をウクライナに限定できると思います。(それ的なことを当該団体から聞きました)

支援が必要なのはシリアやアフガニスタンも変わらないと思うので、同団体を信頼して使途を指定せず募金するのでももちろん良いと思います。

拙記事「何かやる」のほうも昨晩更新しました→何かやる

12月9日

10日1時(8時JST)現在УПトップ画面↓

トップニュースは「ストルテンベルク(NATO事務総長)、ウクライナの戦争がNATOーロシア間の戦争に発展する可能性を危惧」。某北欧メディアの取材に答える中で「私が危惧するのはウクライナの戦争が制御不能に陥りNATOとロシアの間の大きな戦争に発展することだ。だが私は確信している――我々はそれを回避できると」と述べたということだ。УП

※昨日のバハムート云々は削除した。過酷な戦争の現実を幻想化する恥ずべき言辞であった。

電力

国営電力会社ウクルエネルゴによれば、今日の状況にかんがみるに、電力不足は冬季期間中ずっと続く見込みだそうだ。輸入などの代替手段でも全量カバーは不可能とのこと。復旧作業で出力は日を追うごとに強まっているので今後数日で計画停電遵守というところまでは持っていけるだろう、とのこと。裏を返すと、9日時点で一部地域では緊急停電がなお行われている。УПУП

ツリー

ツリー(の違法伐採)の季節だ。ウクライナの人たちは新年祭にモミや松の生木を飾って楽しむ。クリスマスツリー。その生木を森に入って違法伐採して街角で違法販売するやつがいる。ウクライナにはこの種の闇ビジネスが多い。

さて、キエフ市当局によると、森・自然公園・鉄道ないし自動車道脇の若木を違法伐採したやつは①伐採した場所②木の大きさに応じた罰金を支払う。たとえば伐採した場所が森なら599~2709グリヴニャ(4倍で円)、市町村域内であれば1152~1852グリヴニャ、自然公園内なら908~4132グリヴニャの罰金、となっている。УП

今年はもうひとつの懲罰が待っている。北部のロブネ州でツリー伐採して売りさばいたろーと思って森に入ったトラクターが地雷を踏んだ。文字通りの地雷だ。敵の侵入を阻むためにウクライナ軍が埋設したものだろう。連結していた後部車両が爆砕しただけで幸いに人的被害はなし。УП

あちらの人のクリスマスと正月の過ごし方についてはこちらの記事を→ロシア・ウクライナのクリスマスと正月~新年祭の過ごし方~
記事中の「ロシア」の語は適宜「ウクライナ」に置き換えて読んでください。

12月8日

時刻は現在12月9日AM9:15(日本時間)、ウクライナ現地は同日AM2:15。現時点のУПトップこんな感じ↓

トップニュースは「ロシアがハリコフ州を攻撃、4人に被害」。このブログではいわゆる戦況というものは全然伝えていない。なら社会とか文化のことを伝えているかというとその情報にも最近とぼしい。何をやっているのかわからない。私の極大の関心は今も昔もオデッサに向けられている。東部戦線の微妙な変幻にさまで興味をもっていない。露字ニュースでうっすらとってる情報をこういう(↓)日本語動画コンテンツで確認しているというのが正直なところだ。

このTBS NEWS DIGというやつのウクライナ特集会は必ず見ている。勉強になる、すごくおすすめ。逆にいうと、こういうところで詳解されているような事柄は、本記事で取り上げても仕方ないかなと思っている。

なお、この動画でドニエプル河口部の地形について揣摩が行われてるが19年夏に義父とこのあたりで釣りしたときの動画がどっかにあるはずなので、もし見つかれば追って紹介したいと思う。モーターボートで葦の小島を縫うように走った。レジャーにはいいが、近代的な軍隊・装備が渡河するのがいかに困難な地形か、動画みれば一目瞭然と思う。

電気(オデッサ)

5日の攻撃で一番被害が大きかったオデッサだが、エンジニアたちの努力でようやく計画停電に移れそうとのことだ。停電も何時から何時までとわかっているだけでだいぶ違う。水の供給もほぼ州全域をカバーするに至っているという。УП

ウクライナのアノミー

社会調査機関「レイティング」の調査で、ウクライナ人の約半数が、自分の周りにはある種の社会的な規範が存在していると考えていることがわかった。なんの話や。

自分たちの社会がアノミー(nomos(法)の欠如、無規範状態)であるかそうでないかというに、前者と考える人が46%、後者が48%で拮抗している。ウクライナが独立してからこのかた、前者、すなわち、自分たちの社会はアノミーである、すなわち、この社会に一般に認められ共有された社会的な規範というものは存在していないと考えている人たちが圧倒的に多かった(92年で82%、21年でさえ72%)。それが大規模戦争はじまって、自分たちの社会には規範というものが存在すると考える市民が激増した。

アノミックな気分の存在を示す鍵となる指標は「未来への不安」とか「両親が信じていたものの瓦解の感覚」だという。だが回答者の絶対多数が「いま起きていることを正確に理解している」「何が真実で何がそうでないかの評価に自信をもっている」と答えていて、これが規範の感覚を支えている。УПРЕЙТИНГ

いろいろ考えさせられる。この社会を支配しているのは法とかルールでなく力(権力そして金力)だという理解、感覚は、たしかに広く浸透しているように感じられた。大規模戦争まえのウクライナ生活の話ね。管見だが、若い人らは皆「この街を出る」あるいは「この街でうまくやる」ことを夢見ているようだった。オデッサ国立海洋大学を出て船乗りになって世界の海へというのがかつてのオデッサのエリートコースで、現代ではIT屋になって英語とプログラミングでオデッサにいながらにして世界を相手に金を稼ぐというのが流行る。この街を出る、あるいはこの街でうまくやる。この社会をよくしていこうとか地域を盛り上げようとか街の美化とか、そんな発想はあまりない。公序良俗という観念がない。民主主義の最小単位は地方自治体という鋳型であって、自治会とかそういうミクロな草の根の市民組織は結ばれない。祭りがない。ゴミが散乱している。

その下地にさらに、大規模戦争はじまって、将来への大いなる不安と、誰かにとっては信ずべきまた親愛すべき心のふるさとでさえあったロシアが無言で血染めの熊掌打を繰り返してくるということになって、この世界は無法である、世界を支配しているのは法の光でなく暴力の闇である、と考える人が増大してもおかしくなさそうなところ、実際には、いやこの世界を支配しているのは法であり光である、と考える勢力が増大したのである。というのは失礼、私の言葉であった、言い直す、この社会には一定の規範というものが存在する、と考える勢力が。

日本で同様の調査は成り立つだろうか。この社会に規範?もちろん存在している。社会というのはほとんど規範の同義語である。何を聞かれているのかも分からないだろう。

12月7日

12月8日2時(日本時間9時)УПトップ↓

トップニュースは「露軍ジャギレヴォ飛行場から10機の爆撃機が退避したことが衛星写真で明らかに」。5日の謎の「爆発」で損傷した爆撃機のほか少なくとも9機が露リャザン州のジャギレヴォ飛行場から退避した由。УП

ほか、

ゼレンスキーによると、ロシアが侵略・支配した自治体のうち今日までに解放に成功したのは1888、ほぼ同数がなお解放の日を待っている。УП

キエフ市長クリチコ「光熱水道が奪われ極寒のなか屋内での生存が不可能になる、ハリウッド映画さながらの黙示録(アポカリプス)的シナリオはあり得る」「自律的なヒーティングポイントを500か所近く用意しているが、首都300万人口には500か所など無いも同然だ」УП

オデッサは7日まで停電断水に苦しんだが徐々に復旧し8日はオデッサ市については停電は行われない見込みとか(ОЖОЖ)。団地の義父母も市中の義兄も暖房電気水道いずれも復旧している。

2022年最もググられた単語の第3位に「ウクライナ」が入ったそうだ。ニュース部門だと1位。「ウクライナ」という言葉で最も多く検索がかけられたのは2月20-26日および3月初旬。関連語彙として「ウクライナ 損失」「ウクライナ 人的犠牲」「ウクライナ 募金」「ウクライナ 難民」「ウクライナ 戦争」といった言葉で多く検索がかけられた由。УП

ちなみに日本のランキングだと、1位が「安倍晋三」2位が「上島竜兵」3位が「au 通信障害」4位が「スプラトゥーン3」5位が「ウクライナ」。んで69位が「何丘」だそうだ。

12月5日

ロシアがウクライナ各地(オデッサ含む)のインフラに対し新たな大規模ミサイル攻撃を仕掛けた。

カスピ海上の戦略爆撃機や黒海上の艦艇などからミサイル70発あまりが発射され、うち10発ほどに着弾を許した。死者4人。全土で停電、オデッサでは断水。УПУПУПУП

だが「ウクライナのエネルギー網は昨日しており完全性を保っている」と夕方時点でシュムィガリ首相(УП)、また晩の時点でダニーロフ安全保障会議書記「今次の攻撃による被害は早期に克服される。我々にはすでにノウハウがある。近々攻撃があるとわかっているので、それなりの備えがある」「オデッサ州が少々困難な状況だがその他の地域には特段の問題がない」УП

団地の義父母とは連絡がつかない。街の義兄とは連絡がついた。電気はないが通信はある。

12月4日

12月5日1時(日本時間8時)УПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー:この冬を乗り切ることはすべてのものを守り抜くこと」。ロシアにはまだミサイルも砲弾も残っている。ただロシアになく、今後もありえないものを我々は持っている。モチベーションである。我々は自分の家を守っている。これほど強いモチベーションはない。УП

「困難なものになる」と予想された一週間だったが、新たな大規模インフラ攻撃は行われなかった。電力復旧に時間がかかっているので敵はわざと攻撃を遅らせているのか(回復したところを叩いて人を絶望さす)。あるいはそれを見越してウクライナ側はあえて復旧に手間取ってるふうを装っているのか、はたまたロシア側の攻撃力そのものに問題が生じているのか。素人

12月3日

12月4日2時半(日本時間9時半)УПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー、ロシア産原油の上限価格を批判:弱い立場」。EUとG7がロシア産原油の上限価格をバレルあたり60ドルに設定したことに失望感をあらわにした。「テロ国家の予算を潤す弱気な決定だ。ポーランドやバルト諸国は30ドル案も出していたが、結局は60ドル。これでロシアは年間1000億ドルの利潤を手にする。このお金は戦争に使われ、ロシアによる各種テロ組織およびテロ国家への資金援助に使われ、世界のさらなる不安定化に使われる」УП

今日はこれだけ。

12月1日

12月2日1時(日本時間8時)УПトップ↓

トップは「国家安全保障国防会議はモスクワ総主教庁系ウクライナ正教会のウクライナにおける活動を法的に禁止するよう要請する――ゼレンスキー」УП。何丘不得手の話題、雑駁な説明になるが、ウクライナには2つの正教会がある。ПЦУ(ウクライナ正教会)と、УПЦ МП(モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会)。ロシア正教会との関係でいうと前者は独立的、後者は従属的だが、その後者も今次の侵略戦争を受けつとにロシア正教会との絶縁を宣言していた。「しかしそうは言ってもまだロシア正教会とずぶずぶなんじゃないか」ということで、政府・議会をあげて調査、ひいては潰していく方向で動くことを安全保障会議で決めた。「解散命令」というやつですか。解散後は聖職者たちは一部がПЦУに吸収され、一部はロシアに亡命するということになるか。

インフラ破壊の効果は限定的

英国防省の見立てでは、ウクライナの重要インフラを破壊する露の戦略は露が期待したほどの効果を上げていない。露は10月から長距離射程のミサイルをウクライナ軍に対してでなく民間インフラに対して集中的に使用しウクライナの送電網を破壊し、もって市民の士気をくじき、政権に降伏を強要しようとしている。然り、これによりウクライナで電力は不足し、無差別かつ広範な人道災害が引き起こされてはいるが、ウクライナはこの9か月で(精神的な)動員を完了している。戦争初期に同じことをやっていればまた違ったであろうが、いまやこうした攻撃による効果は乏しい。それよりも露がこれで戦略目標爆撃用のミサイルの大部分を費消してしまったことのほうが大きい。УП

電力不足のウクライナで犯罪の発生件数は減少している

警察発表ではロシアの最後の大規模ミサイル攻撃のあった11月23日から30日までの一週間、パトロール強化の甲斐あって、犯罪の発生件数は前週比で16%減少している。窃盗は7%減、強盗は3%減、ついでに交通事故は13%減、人身事故は22%減。УП

プーシキン像を隔壁で覆う

オデッサ市中心部の「プーシキンの家博物館」前に立つプーシキン像が隔壁で覆れた。

文学博物館(プーシキンの家がその分館であるところの)館長「ここ最近この像はたびたび不逞の輩の攻撃・落書きにあっている。それを洗い落とすのは私たちだ。だから一時的に保護することにした。街そして博物館の景観を損ねたくない、それだけだ。ふるさとの街の景観を守りたいのだ」ОЖ


※12月3日は更新を休みます。

11月30日

12月1日3時(日本時間10時)УПトップ↓

トップニュースは「ロシアはウクライナに対するミサイル攻撃を止めない、冬が来ても戦闘は止まらない――ホワイトハウス」。ロシアがウクライナの民生インフラに対する攻撃を停止または抑制する兆候など何一つなく、冬季は戦闘の烈度は低下するであろうが、戦闘が継続すること自体は疑いがない、と米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官。УП

電気

電力をめぐる状況は深刻で、11/30晩の時点でなお600万世帯に電気が通っていない。とりわけ深刻な地域として首都キエフと並んでオデッサ州の名も挙げられている。予見可能性そして公平性。「停電がいつ・どのくらい長く行われるのか市民がちゃんと分かるようにすることが非常に大事だ。それは電力会社と地方政府の責任だ。市民には知る権利がある。生活が可能な限り予見可能であるようにすべきだ。また、(自分のところは停電しているのに)お隣さんには電気がある、このようなことも市民はちゃんと見ている。公平性があるべきだ」とゼレンスキー。УП

ロシアの次なる大規模攻撃は

ウクライナ情報総局によれば、ロシアの大量ミサイル発射が一時停止している理由はこうだ:露は次なる大規模攻撃に備えてミサイルを集め、整備し、あわせて前回攻撃の評価を行い、また新たな攻撃目標の策定を行っている。露はミサイルが涸渇してきてソ連製の旧式ミサイルを引っ張り出してきているので、実用の前にメンテナンスが必要なのだ、とも。УП

前回、つまり11/23の攻撃からのインフラ復旧が非常に難航している。復旧は大規模攻撃が回を重ねるごとに困難さを増す。一方、敵は敵で、回を追うごとに攻撃手段が不足し、次回攻撃までのインターバルが長くなる。消耗戦、というものを目の当たりにしている。

戦争はあと数か月で終わる、と信じたい

ゼレンスキー、米メディアのインタビューで。「戦争は終わる、我々が勝利したときか、ロシアがそれを望んだときに。ロシアがそれを望むことがあるとすれば、それは自分の弱さを、自分が孤立していることを、この問題についてパートナーは存在しないということを、感じとったときだろう。こののち数か月で戦争が終わることを信じようではないか」УП

エカ乙

オデッサ市議会がエカテリーナ女帝像の撤去を承認した。賛成43票(98%)。あわせてスヴォーロフ像も撤去される。УПОЖ

オデッサ州のなんとかいう村ではまたプーシキン像が撤去された。УП

トルコ船が海上からオデッサへ送電?

発電所を積んだ船、パワーバージというそうな、トルコのそれが海上からオデッサへ送電を行うという話が持ち上がっている。「総出力300メガワットの3隻の船をオデッサ沖に停泊させることにつきオデッサ州ならびに『ウクライナ電力』社と話し合いを行っている」とトルコのKarpowership社。エスポワール。УП

11月29日

11月30日0時(日本時間7時)УПトップ↓

トップニュースは「ゼレンスキー:ロシア側の戦死者は年内に10万人を超えるだろう」。兵士だけで10万人、傭兵については神のみぞ知る。УП

ゼレンスキー肖像の上部に見える一連の数字は敵軍の損失を示している。左端が殺害された敵兵の数(むろんウクライナ側のカウント)、8万8380人(前日比480人増)。

電気

シュムィガリ首相によると、電力需要のカバー率は現在7割に達していて、残り3割が不足している。これを全世帯に均分すれば各人が1日少なくとも5-6時間は電力供給に与れるということになる。УП

1日5-6時間しか電気がない!しかも次にいつロシアのミサイルが飛んできて発電所に新たな破壊をもたらすか分からない。

↓こちらの拙記事あわせて読んでください。

11月28日

11月29日1時(8時JST)УПトップ↓

トップニュースは「ウクライナ軍の攻撃でザポロージエ州スタロボグダノフカ近郊の橋が損傷、ロシアの武器供給に打撃」УП

電気

電力供給の再開した世帯の割合は増大しているが相変わらず供給は不安定で28日も全土で緊急停電が起こった。

そんななか隣国ルーマニアからの電力輸入が試験運用されはじめた(УП)。ウクライナ国内の発電所をいくら攻撃しても欧州から尽きず電力が流入してくるとなれば話が全然ちがってくる、が可能なことなのだろうか。

電飾きらきら街を彩る新年祭をキエフは今年つつましやかに祝う、ただしヨールカ(新年祭のモミの木)は市内各所に設置するそうだ。一年で一番のお祭りをロシアのせいで完全に中止させられるのも業腹だとて。費用は民間企業の寄付で賄う、イルミネーションなし、コンサートなし、露店なし、ふだんなら30m級が立つところ今年は10mだそうだ。УП

その一方、オデッサで、全国的な電力逼迫にも関わらず市中心部のシェフチェンコ公園の青空スケートリンクがオープンしたとかで顰蹙を買っている。スケートリンクの維持には莫大な電力が必要だそうだ。あと、隣接の遊園地「ルナパーク」でも観覧車だのメリーゴーランドだのアトラクションはフル回転である由。近隣の人家は停電で真っ暗ななかそこだけ煌々と灯りが灯っている。УП

11月27日

11月28日1時前(日本時間8時前)の時点でУПトップ画面こんな感じ↓

トップニュースは「ゼレンスキー:テロリストどもが新たな攻撃を準備している、来たる一週間も困難なものとなる可能性がある」УП

今日はこれだけ。

11月26日

11月27日1時(日本時間8時)時点のУПトップはこんな感じ↓

トップニュースは「ロシア軍は3方面で部隊の配置換えを行い強化を図っている――ウクライナ軍参謀本部」。露軍は東部のリマン、アヴデーエフカ、ノヴォパヴロフカといった地域で攻勢を強め欠員・装備を補充するために配置換えを行っていると。やはり焦点は東部。

貯水と充電を

電力供給は日に日に回復していっている。送電網のカバー率を示す数字は日に日に増大。だが回復した頃に敵の準備も整って次なる大規模ミサイル攻撃をしかけてくる。パターンでいくと、数日後。月曜とか。

ニコラエフ州知事キム「市民に呼びかける:水を貯え、充電して、通信途絶の際の行動指針を家族で話し合っておいてほしい、次なる攻撃に備えて」УП

一般に、ウクライナの人たちは日本人と比べて停電断水に耐性があるとは思う。オデッサ生活で数時間~半日の停電とか断水はわりと日常茶飯のことだった。予告されたものもあれば原因の全く分からない(従って回復のタイミングも全く不明の)ものもあった。こうした事態に日本人が思うよりはそもそも耐性があると思っていい。それから、この人たちがこの9か月のあいだ(地域によって程度の差はあれ)経験した、窓から飛翔体が見える、早朝白昼夜間を選ばず爆発音が聞こえる、というストレスは尋常のものではない。この点はどれだけ強調してもし過ぎることはない。しかし人は全てのことに慣れる、爆発音にも空襲警報にも「それでも生きていける」と悟った、その果ての彼らに、今さら寒さとか暗闇がなにか、というところもあるかと思う。以上はただの想像、乏しい経験に基づく、希望をこめた想像である。負けないでほしい。

ポーランド・リトアニア・ウクライナ

ポーランド首相がキエフを訪れウクライナおよびリトアニア首相と会談、3者でウクライナの被占領地の完全解放を共通の目標とするよう国際社会に呼びかける共同宣言を発表した(УП)。ミサイルの一件にも関わらずポーランドとウクライナの結束が損なわれなかったことに安堵している。

ゼ、食料安全保障に関する新たな国際機関の創設を提案

ゴロドモール(ホロドモール)犠牲者追悼の日であった26日、キエフで食料安全保障サミットが開かれ、そこでゼレンスキー、食料・人道・安全保障上の脅威の予防および早期対応のための新たな国際機関を創設し、その本部をキエフまたはオデッサに置くことを提案した。УП

ゴロドモールについて一言:オデッサにはポグロム(ユダヤ人迫害)に関するミュージアムがない。市中心部のシナゴーグにちょっとした展示室が併設されてるとは聞くがきちんと公知されてはいない。被害のことをいうなら加害の歴史にもきちんと向き合わねばならないだろう、と住んでるとき思っていた。

エカ女

私は早まった。訂正す。エカテリーナ女帝像の撤去はまだ最終決定ではない。市議会の執行委員会は撤去を是としたが、最終決定は市議会の総会がとることになっていて、その次回開催は30日だそうだ。まぁ、同じことだと思うが。ОЖ

11月25日

26日0時(日本時間7時)現在のУПトップページ↓

トップニュースは「侵略軍が万が一キエフ掌握を企てても大丈夫――キエフ市軍政当局」。現時点で敵戦力はキエフ攻略を目指して北方から攻め入るに十分ではないがもしもの場合に備えて怠りなく防塁や掩蔽壕の構築など市の防衛力強化を行っているので大丈夫、と。

下段四つ並びのうち右端のニュースは「戦死についてプーチン:ロシアでは交通事故とアルコールによって3万人ずつ人が死んでいる」これはこのほど映像が公開された「プーチンと銃後の母たちの会談」における頓風珍発言、息子さんを失った哀しみは分かるけども人は須らく死すべきものであって、それでなくてもわが国では交通事故だのなんだので人が死んでいるんですよと。人の死が算術でしかない悪魔。この会談には役人・愛国活動家・右翼表現者ら入念に選別された「プロ母親」ばかり招かれていたことが分かっている。ロシアのリアリズム演劇も地に落ちたもの。この話題は現在Meduzaのトップ画面を占拠している↓

電気

ゼレンスキー、晩方のビデオメッセージで:最後の大規模攻撃があった23日から復旧3日目、停電被害人口は半減した。とはいえ総計600万人に電気が行き届いていない。特に被害が深刻な地域の中にキエフと並んでオデッサ州も数えられている。УП

報道だけ見てるとこの国民は暗闇に耐える、ロシアの陋劣な攻撃はこの国民の継戦意欲を絶対に屈折させることはない、という印象しか受けないが、実際のところは分からない。義父母のような晴耕雨読の人たちばかりでない。ようやくぼちぼち電気が通うようになったと一息ついたころにまたミサイル群来・インフラ破壊でブラックアウト、これを何度繰り返すのだろうか寒さはいよいよ募る……、そこへ「その寒さの原因は、お前たちの政府が交渉に応じないからだ」という悪魔の囁き。人の心は健全な理性を保てるだろうか。

モルドヴァ

興味深い世論調査。モルドヴァ市民の大多数がNATO加盟に反対だという。もしも近い将来モルドヴァでNATO加入の是非を問う住民投票が行われたら?との問いに、全体の54.5%、有権者に限れば実に70.9%が「反対票を投じる」と答えた。「賛成票を投じる」と答えたのは全体の22.4%、有権者の29.1%。動態で見ると、NATO加盟希望者が最も多かったのは2004年で、35%。最も少なかったのは2016年で、11%だった。

なお、もしもモルドヴァのルーマニアへの編入の是非を問う住民投票が行われたら?との問いに対しては、全体の47.4%、有権者の57.5%が「反対」。「賛成」と答えたのは全体の35%、有権者の42.5%だった。こちらは「賛成」わずか3%だった2010年以来、一貫して「賛成」の割合が増大し続けているという。УП

11月24日

25日0時(日本時間7時)現在、УПトップ画面こんな感じ↓

トップニュースは「ゼレンスキー、通信維持のための決定をアナウンス:ロシアは我々を相互に孤立させようとしている」。いわくロシアはウクライナ人から光と熱と水を奪うだけでなく、通信環境を破壊してウクライナ市民間の交信が不可能となることを目指している、これを阻止するべく特別な措置をとる、と。

光・熱・水

不休の復旧作業により夕方時点で電力需要の5割をまかなうに至ったが晩の時点で首都キエフおよび15州(オデッサ含む)でなお「困難な状況」。キエフでは2-3時間ずつ送電が行われては止みしているようだ。УПУПУП

ロシア、世界遺産委員会議長を降りる

UNESCO世界遺産委員会がこの夏ロシアを議長国としロシアのカザンで開かれる予定であったがウクライナをはじめとする諸国の外交努力が実を結びロシアは結局議長の座を降りることになった(УП)。当然のことと思う。隣国の歴史と文化を否定し国軍をもって隣国の教育施設や歴史遺物の破壊を繰り返すロシアはUNESCOの庇護を受けるに値しない、ましてや世界遺産委員会を率いる資格などあるわけもない。議長国どころか加盟国の資格すら剥奪すべきと思う。

エカテリーナ女帝像、撤去が決まる

そのUNESCOの世界文化遺産に早晩登録される見込みのオデッサ旧市街に立つ「創建者たちに捧げる記念碑」通称エカテリーナ女帝像の撤去がオデッサ市議会の執行委員会で決まった(УП)。このブログで長らくエカ女の命運を見守ってこられた皆さん、おつかれした、オワリです。

存置しても攻撃的市民のさらなる凌辱を呼ぶだけだから保護の意味でも撤去やむなしという意味の賛成票も一定あったと思うが見る人には「不寛容」の一例と映る。私のように実質的に侵略戦争以前のオデッサしか知らず否定・排撃・嫌悪の視法でこの像を見ることを免れた者には懐かしき景観の構成要素の抹消でしかないので残念だが、今そこに生きる人たちの決定を黙って受け入れるほかない。

ジョンソン元英首相、キエフ名誉市民に

ボリス・ジョンソンがキエフの名誉市民になった(УП)。先にオデッサの名誉市民にもなっていた。

【コラム】
義父とテレビ電話で話したが快活そのものだった。義父は出勤していて、職場からつないでいた。職場の電気は発電機で起こしているらしかった。サッカーW杯緒戦で強豪ドイツを下した日本を激賞していた。「今大会これからは日本を応援する」。私が見ていないといったら驚いていた。義父自身はもちろん試合を見ていない、あとでニュースを読んで喋っただけだ(義父は頭がいいので/байка=法螺話の達人なので、聞いた話をさも見たかのように話す)。私は電気のない「暗闇のなかで寒さに凍えてる」ウクライナの人たちへの連帯のためにW杯は見ないと決めていたが一笑に付された。ぬくみずを浴びせられた。スペイン戦を見るか見ないかで何丘の何かが試される。

11月23日

24日2時(日本時間9時)時点のУПトップ画面↓

トップは「キエフ州では送電網に接続できているのは電力需要者の20%のみ、キエフ市は非常に困難な状況――ゼレンスキー」。23日またしても電力インフラに対する大規模攻撃があり、全土で電力が逼迫している。後述。

続く重大ニュースは左から「ポーランド国防相、地対空システム『パトリオット』をウクライナに供与するようドイツに提案」「露政権はウクライナとの戦争が『上首尾』であることを疑わず」「キエフ市長:市民の80%が電力と水の供給を絶たれている」「キエフ州知事:キエフ州民35人が死傷、31人がヴィシゴロド市民」

23日の大規模攻撃

ウクライナ軍によると、今次の大規模攻撃には約70発のミサイルが使用され、うち51発は撃墜に成功したが、首都はじめ各地で重要インフラが被弾、全土で電気と水の供給が止まった。タイムラインはどこそこで断水・どこそこで停電との報であふれた。各地で死傷者も出ている。晩の時点で少なくとも10人が死亡。УПУПУПУП

今回の攻撃におなじみカミカゼ・ドローンこと「シャヘド136」が使用されたとの報は見られない。英諜報機関によると露はイラン製ドローンをほぼ使い尽くし、追加の調達を試みていると見られる。УП

オデッサも被弾しないではなかったが家畜小屋が一件やられただけだそうだ。だが市・州全土で長時間停電・断水が起きた。けれども今ごろは復旧しているとのことだ。オデッサは軽傷で済んだ。ОЖОЖ

現在も多くの地域で電気・水の供給が止まっている。УП

こんな淡々と語るのはおかしい(よくない)のではないかと自分で思うが、呪詛とか悪態とか、無理に出せば出てくるが……不思議にそこに努力が要る。情報空間も全体的に熱度が低いように思う。行われていることのあまりの卑劣さに私も世の人たちも理解が追いついていないのではないか。ウクライナの数千万人がこの日暗闇の中で寒さに凍えた。ロシアの一億人は暖かい部屋でテレビでワールドカップを見て盛り上がった。呪いあれ、災いあれ、と私がここに書いても何にもならない。正義はない。それはなく、無く、ただ無い。

11月22日

23日1時(日本時間の23日8時)時点のУПのトップページ↓

トップは「長時間停電に備えて千単位の『アンブレイカブル・ポイント』を準備中――ゼレンスキー」。これについては後段お伝えする。

んで続く四大ニュースとして「ドローン艦隊創設に93カ国の代表者が参加――ゼレンスキー」「ダニーロフ:ロシアは11月15日のごとき大規模攻撃をなお3-4度行う能力を有している」(←後述)「クリミアで複数の爆発、占領当局によれば『無人機による攻撃』」「ワグネル軍とカディロフツィがデリバツェヴォ入り――参謀本部」

解放の道程

大統領府によるとウクライナ軍はこれまでに1886の町・村落をロシアの占領から解放した(УП)。だがなお2000ほどの町・村落を解放しなければならない、とゼレンスキー。途方もない道程だ(УП)。

アンブレイカブル・ポイント

ロシアがインフラに対し新たな攻撃をしかけてきて長時間の停電が発生した場合に稼働する「アンブレイカブル・ポイント」がウクライナ全土にすでに4000か所設置さえているという。ゼ(УП

このПункт несокрушимости(破壊不能拠点)というやつ、いい訳語が思い浮かばないので「アンブレイカブル・ポイント」とカタカナ語に逃げたが、要は「24時間稼働し、誰でも利用できる、電気、携帯電波、インターネット、暖房、水、医薬品を備えた」避難所。11/2に「暖房室」の名で紹介したものと同一のものを指していると思う。

特設サイトのマップを見ると文字通りウクライナ全土に点在している。オデッサだけでも150か所とか(ОЖ

すばらしい施策。すばらしい対応力。今後さらに数を増やしていくという。

ロシアの大規模攻撃能力は……

ウクライナ国家安全保障・国防会議書記アレクセイ・ダニーロフによれば、ロシアは11月15日見られたようなミサイル100発近くを用いた大規模攻撃をなお3-4回行うに足るだけのミサイルを有している。「つまり何かというと、電力を節約しなければならない、ということだ」УП

日本から発電機など送る

日本政府がウクライナに257万ドル相当の発電機・太陽電池ランプを供与する。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通じての供与となるそうだ。УПNHK

国内不和(工作)

SNSで「オデッサに電力は足りている。なのに停電が起きているのは、オデッサの電力がリヴォフはじめ西部、モルドヴァはじめ西側に送られているからだ」という言説が行われていて、「オデッサ市民よ街頭へ出よ」とのアジテーションに一定数の呼応者が出ている。当局はこれをロシアによる世論分断工作と見ている。ОЖ

ロシア語を話し市中にエカテリーナ2世像の立つオデッサとウクライナ語を話しステファン・バンデラ像の立つリヴォフの相互不信は根深い。支配層の汚職とか「私たちの富は権力によって収奪・搾取されている」という観念も古なじみ。諸々のSNS投稿の中には市民自発のものも相当数あるものと思う。とはいえロシアの関与もまた疑いがない。少し考えれば、そもそも何でこういう状況になってるのか、ロシアが市民を凍えさせ暗黒のうちに閉じ込めることを明確に意図したミサイル攻撃を繰り返すからだ、いまは巨悪を前に団結すべきときだ、と分かるはずだが、沁み込んだ世界観というのは容易に抜けない、なんかの拍子に地金が露出する。

11月21日

この日も一部地域(キエフ、オデッサ含む)で緊急停電があった。計画停電は少なくとも3月末まで続くと見られている。ピーク時の節電が市民に呼びかけられている。УПУПОЖ

残像に口紅を

ロシアの報道で「ヘルソン」との地名が言及されることがめっきり減ったということだ。「ロシアのプロパガンティストらに対し『ヘルソン』の語を忘却するようお達しが出たらしい。昨日赤の広場で併合を祝った街が今日、露メディアにおいて存在を停止した。同様に、明日は『ドネツク』の語を、明後日は『クリミア』を、間もなく『ウクライナ』がタブーとなることだろう」ポドリャク大統領補佐官。УП

こうして使える言葉がどんどん少なくなっていって、最終的に「プーチン ロシア ウラー」の3語のみからなる「ニュース」が間歇的に発表される、露プロパガンダマシーン(RIAだのTASSだの)の末期を想像した。

11月20日

ゼレンスキーによるウクライナ情勢サマリー(T)。3つの戦場がある。

1.前線
 ∟東部では激しい戦闘、とりわけドネツク州。ルガンスク州では少しずつ前進中
 ∟南部は守りを固めながら敵戦力を着実に削減中

2.電力
 ∟送電網の復旧に24時間態勢で取り組んでいる

3.外交
 ∟ウクライナの「平和の公式」(11/15紹介した10ヶ条)は世界に非常に好意的に受け止められている。ロシア側の空虚で虚偽にみちた言辞と異なり「公式」は極めて建設的かつ現実的である。世界がこれを認めるよう尽力す

電気

この土日はウクライナ全土で「緊急停電」は起こらなかった。月曜も「計画停電」のみ計画されている。とはいえ実際のところは次なる攻撃(ロシアによるインフラ破壊)のありやなしや、またその規模に依る。УП

オデッサに初雪

この週末、オデッサ州北部で初雪ですと(ОЖ)。11月も後半、全くおかしくない。オデッサは日本でいうと北陸みたいには降らないが……どこ言うたらええやろ、10~15㎝の積雪はふつうにある。

ウクライナに今ある土地は一番南で温暖なオデッサでさえ日本の最北の一番寒いあたりくらい寒い。北へ行くほどもっと寒く、日は短くなる。この冬に光と熱を奪うということの意味を、同じように寒くて北方に位置して中央暖房を使っているモスクワの人たちは骨身にしみてわかるはずだ。それでも「ウクライナにおける軍事行動」は支持される。「交渉の呼びかけに応じないキエフ政権が悪い」のだもの。

11月19日

静穏との印象の日

ヘルソン州某所で自動車が地雷を踏み市民が死傷(УП)このようなニュースが各地から間歇的に。そこにあると分かってるオデッサの浜の地雷ないし水際の機雷ではひと夏に8人死ぬだけで済んだがウクライナの国中にロシア軍がまたウクライナ軍自身が仕掛けた爆発物で今後何年にわたり何人が死傷するか分からない(その全ての死につきロシアは有責である、と私は言う)。ウクライナ非常事態庁長官「ロシア軍の侵略の結果ウクライナ領土の30%に爆発物が仕掛けられている」これはオーストリア2つ分の土地がまるまる地雷原になっていることと等しいそうだ。УП

オデッサのプーシキン像

オデッサ中心部プーシキン通りの「プーシキンの家博物館」前のプーシキン立像(11/10参照)の現在の姿がこちら

頭部を黄色いテープでぐるぐる巻きにしてるのはウクライナ軍のロシア人捕虜に対する取扱いを模したものだそうだ。胴体にはでかでか”Z”一文字、基部には「占領者」。一度いじめられっ子認定が下るともうおしまい。あとは仮借なき際限なき凌辱で撤去に追い込むのみ。こんなプーシキンは見ていられないという一念からだけでももう撤去して~と市当局に懇願したくなる。「テロに屈した」ことになるだろうか。ОЖ

オデッサのショッピングセンター

超ローカルニュースで恐縮だが5月9日の蛮ミサイルで大破したオデッサ最大のショッピングセンター「リヴィエラ」が営業再開したとの報に喜んでいる。この電気がないときに大変だと思うが。自分たちがときどき買い物に訪れていたショッピングセンターにミサイルが撃ち込まれたのは5月当時の私には衝撃だった。あれで「オデッサはロシア人にとって特別な街なので攻撃されない説」みたいなものにとどめが刺されたのだし、「ロシアの陋劣・残虐」認識が一段深まった。ОЖ

電気についていうと、義父母の村には3日ぶりに電気が通ったそうです。だがこの間も発電機で通電さしてみたらネットは使えたと言っていた。ただ、色々ややこしく感じられると思うが、村では停電してると水が来ない。うちのダーチャの環境で停電で一番苦しいのは水道が止まることである。とはいえ1000リットルの天水槽ほか何種類かの水が備えてあるので3日程度なら問題はない。

今日のアネクドート

ОЖのお家芸「今日のアネクドート」、たまには紹介する。

— Простите, я в этом автобусе доеду до больницы?
— Откуда я знаю, у вас очень бледный вид!
すいません、このバスで病院まで辿り着けますか?
知るもんですか、あなたひどい顔色してますよ!

解説・・必要だろうか。一応すると、あちらのバスは行き先とか経由地の案内が不親切なので乗り込んでくる客が「このバスで〇〇まで行ける?」と他の乗客あるいは乗員に聞くのが普通の光景である。で「病院まで行けるかな」と問うたところ「あなたあまりに蒼白なので、然りバスは病院まで行くけれども、あなた自身がそこへ辿り着けることまでは保証できかねますよ」と、……この解説いる?

11月18日

比較的に静かな日だった。戦場のことは知らず、その後背では。

ウクライナ首相「ロシアのこれまでのミサイル攻撃でウクライナのエネルギーシステムの半分近くがダウン機能停止した」「ロシアは市民から冬場の光と熱と水と通信を奪うべく重要インフラへの攻撃を続けている」УП

ゼレンスキー「昼夜を分かたぬ電力復旧作業のお陰で緊急停電は著しく減った。本日夕方時点で多くの州で、停電はあるとしても1時間単位の計画停電になっている。緊急停電の方が主に行われているのはオデッサ州とキエフだ」УП

計画停電においては重要施設周辺は停電を免れる。リヴォフ市長「なぜある人は一日に一度も停電しなくて別の人は日に三度も停電するのか。もしあなたの家が病院その他重要インフラと同一線上にあるなら計画停電の対象からは外れる可能性が高い。ここに公平性はない。戦時の現実だ」УП

義兄はオデッサの街中だが電気はバリバリ来ている。病院が近くにある。義父母の村は全然電気がない(村だと電気がないとき電波もないので連絡もつかない)

大手ホームセンターによると10月10日(ロシアが発電所の破壊を開始した)~11月10日の発電機販売台数は前年同期比10倍だそうだ。УП

11月17日

サッカー好きだがさすがにW杯見る気せん。平然と開催されその間世界の関心がそっちに向くのだろうと思うと怒りを覚える。

17日、少なくとも18発のミサイルがウクライナ各地に飛んだ。今度はオデッサも被害を免れなかった。敵の攻撃目標が拡大したのだろうか、エネルギーインフラ以外の被害の報が目立った。「ドネプロペトフスク州のガス採掘部門および国防企業が被弾」УП、シュミガリ首相「ロシアはガス採掘施設およびドニエプルの機械工場(宇宙ロケットおよび民生・学術・国防製品の製造を行う)に対し攻撃を行っている」УП。オデッサでは「州中心部の物流施設」がやられた由だ(ОЖ

とはいえ本丸は依然として電力だ。ゼレンスキーによれば17日晩の時点で1000万人超に停電被害。特にひどい地域にオデッサ州も数えられた(УП)。電力会社によるとオデッサ州内の顧客の70%に停電被害が及んでおり、復旧には1週間程度かかる(ОЖ)。オデッサ市長「送電網の損傷に伴い温熱および水の供給、さらには排水にも障害が出ている」ОЖ、オデッサ州軍政長官「州内の変電所に攻撃が行われているわけではないが、ウクライナのエネルギー網は一体化しているため、ひとつの施設の動作が他の施設にも影響を及ぼす。いまは国中で出力が足りていない状態だ」ОЖ

義父母のとこも停電してる。団地にも村にも電気が来ていない。村の方がインフラからの独立性が高いので昨日ダーチャに移った。

露ペスコフ「ウクライナの”直接または間接にウクライナの軍事ポテンシャルに関係のある”インフラにミサイル攻撃を行っている」「ウクライナの多くの地域に電気と暖房が欠如しているのはキエフ政権の行為(交渉の拒否など)の結果だ」УП

この異常。この犯罪。この明白な悪が、悪事が、9か月続いて、なおいつまで続くか知れぬということ。それを止めることができないということ。

タヌキとエカ女

タヌキ顔のエカテリーナ女帝像を本物のタヌキと交換してはという話が出ている。例の大統領宛て市民請願サイトに珍請願、占領軍がヘルソン撤退の際にヘルソンのミニ動物園から連れ去ったタヌキ(動画)を「オデッサのエカテリーナ女帝像と引き換えに取り返してほしい」という。

珍請願を発掘することがメディアの、でメディアに紹介された珍請願に署名することが市民の憂さ晴らしになってる説。早晩2万5000筆を充足して大統領に届くだろう。УП

ツイート

たまには更新しました報告もしなければと思って久しぶりにTwitter開いたら目に留まった。こういうのが目に留まってしまうからTwitterは毒だ。

最初に言っとくがこれについて私がTwitter上でもの言わず自ブログでこそこそ喋るのは完全に私が陰弁慶だからだ。あと、これも先制的に言っとくと、このツイート主自身(および一連のツイートそれ自体)に悪感情はない。

そもそも何の話か、というのはツイートの方を読んでもらうとして、感想が4つくらいある。第一に、これに返信してる奴ほぼ全員嫌い。知ったかぶるやつ、リンク貼ってくるやつ、ですよねロシア人て最悪ですよねーみたいに同調(追従)するやつ。第二に、二投目「新しく入った子がいじめにあってしまわないか、ものすごく心配でした。」の優しさに泣いた。第三に、三投目らへんの、当該転校生の特殊性をことさらに吹聴するやり方が正しかったのか疑義がある。それでも結果的に子供同士が仲良さげなのは重畳だった。

んで一番言っておきたいことは、私はこっち来てからうちの太郎と同じくらいの子を持つロシア人のママさん2人と知り合ったが妻も私もこの人たちととても仲良くしている。戦争の話などしたことがない。定期的に集まって子供同士を遊ばせている。また別にロシア人青年と知り合ったが私が3月までオデッサにいたと知ると大層同情してくれた、この青年とも親しく小一時間を談じて良き印象とともに別れた。

私が頓風珍だの侵略戦争(の命令者実行者宣伝者肯定者黙過者)をどんなに憎んでいるかはこのブログの読者がご存知だ。だがそのことと、良き隣人として立ち現れた「ロシア人」と交誼を結ぶことは矛盾しない……矛盾するのかも知れないが、その矛盾を行うことにべつだん困難を感じない。それが人の自然だろうと思う。

(私はここで、何も「ロシア人の中にも善良な人はいる」などという主張をしているのではない)
(善良な人などいない、あるいは、すべての人は善良である)

11月16日

16日の報道は15日の大規模攻撃とポーランド着弾のことで持ち切り。

15日の大規模攻撃

確定情報(ウクライナ軍発表)として、15日の攻撃では空中ないし海上発射の誘導ミサイルを中心に各種ミサイル・ドローンが都合96発飛んできて、うち実に89発(93%)を撃墜したということだ。すげえ。だが重要インフラを狙っての攻撃であれば、1発でも撃ち漏らしたら引き続く被害は恐ろしい。ゼレンスキー「撃墜率を90-95%まで持っていければ国外退避の皆さんに帰還を呼びかけられもしようが、現時点で(トータルの)撃墜率は70%ほどであり、これでは『帰ってきてくれ』とも呼びかけられない」УПУП

ISW(米戦争研究所)の見立てでは、15日の大規模攻撃でロシア軍は残存高精度兵器の大部分を費消した。西側供与の対空兵器によりウクライナ側の対空防衛能力も向上している。ウクライナの重要インフラに対する攻撃は減速を余儀なくされるだろう、とのこと。УП

ポーランドに落ちたミサイルは誰のか

15日の大規模攻撃でポーランドにミサイルが落ちて2人が死亡した一件、大勢を見るとどうもロシアのミサイルがポーランドを襲ったということではなさそうだ。少なくとも5条発動(NATOとしての反撃)はない。

「ウクライナのミサイルだとかウクライナの攻撃だとかでないことは疑いがない(とはいえ公正でありたい、それがウクライナの対空兵器だったというならその証拠をくれ)」とのゼレンスキー発言も上がってるが(УП)、ウクライナ側も米および同盟諸国に「ポーランド国境付近でロシアのミサイルの迎撃を試みた」ことは通知しているようだ(УП

米バイデンはG7およびNATOのパートナー諸国に「ポーランド東部の爆発はウクライナの対空防衛システム発のミサイルによって引き起こされたもの」と明言(УП)。これにクレムリンのチンアナゴどもが賛辞「米当局および米大統領の抑制的でプロフェッショナルなリアクションは注目に値する」ペスコフ(УП

だが米大統領府および諸国「ポーランドに落ちたミサイルが誰のものであれ、その責めはロシアが完全に負う」←これに尽きる(УПУПУПУП)。「この悲劇的な事象について全面的に有責なのは民生インフラ破壊を特に意図したミサイル攻撃をウクライナに対し行うロシアである。ウクライナは自衛の権利を完全に有する」米大統領府、「ひとつ明白なこと:ロシアの対ウクライナ侵略戦争がなければこの全てはなかった」独ショルツ首相、「ロシアのウクライナ侵攻がなければこんなことは何も起こり得なかった」英スナク首相、「ロシアのウクライナに対するおぞましきミサイル攻撃がなければこのようなことは起きなかった」オランダのルッテ首相。

ゼレンスキー語録

■この冬を越えれば
ゼレンスキー「この冬を耐え抜けば――我々は耐え抜くのであるが――この戦争に確実に勝つ。信じてほしい、これ(エネルギーインフラへの攻撃)こそが、ロシアに残された、ロシアが使用した/使用しようとしている武器の中で最強のものなのだ」УП

(本当にそうなのではないか?ヘルソン撤退に際しても、結局ダムの破壊も「汚い爆弾」も使わなかったじゃないか。いろいろ言われてはきたが、戦況不利を覆すためといってロシアが訴え得た陋劣行動は、エネルギーインフラの破壊、それ以外に何一つなかった)

■キエフを空っぽにしていれば
ゼレンスキー「キエフに対する最初の攻撃が行われたとき(※10月10日、エネルギーインフラを標的とした破壊活動の初日)、首都の全インフラ・全商店を閉鎖し、全住民を総避難させるという提案があった。だがこう自問した:もしミサイル攻撃が国全体に及ぶなら、人たちをどこへ避難させればよい? ポーランド、スロヴァキア、ルーマニア? しかし、全人口が避難したとき、ロシアが再び入ってきて、この国の領土を完全に掌握してしまわないことを、誰が保障できるというのか」「誰もいなくなったら、誰が国を守る? 戦士たちは何のために戦っているのか。ウクライナのためだ。ウクライナとは何か。土地、そして家族だ。もし家族が皆逃げていったら? 彼らは何を守ったらいい?」「もしウクライナに人たちがいなかったら、国を失っていただろう。これは私の主観的な意見であって……正しいのかどうかわからない。ともかく私は残り、人たちは残った」УП

11月15日

お前はやり過ぎた、といってひと思いに滅ぼしてしまえたら(どんなに楽か)。ゼ「ずっと警告してきたことが今日起きた。テロルはウクライナ国境にとどまるものではない。ロシアのミサイルがポーランドに落ちた」(УП

15日、ロシアはウクライナ全土に大規模なミサイル攻撃を行った。90発以上というから先月10日の衝撃的な(いわゆる「クリミア大橋の報復」)インフラ一斉攻撃を凌ぐ規模。今度も主たる標的はインフラ。ウクライナの対空防衛網が70発撃ち落としたが(!)15施設が被弾しキエフ含む広範な地域で停電、晩の時点で被害人口は1000万人という。オデッサも一部で一時停電したが20時には回復、オデッサ州内に被弾なし、オデッサ州の地対空部隊は海から飛んでくる「カリブル」ミサイル一発と「シャヘド」ドローン20機を撃墜して被害の軽減に貢献した。УПУПУПОЖ

で、いっぱい飛んできたミサイルの一発がポーランド国境を越えて着弾、ポーランド市民2人が死亡したという。現時点で米およびポーランド政府は公式には確認していない。ロシア側はもちろん否定。УПУП

ミサイルは大半が遠いカスピ海ないし露ロストフ州の戦略爆撃機から発射されたものという(УП)。ヘルソンが取られようが関係ない、こんな攻撃ならいつだって行える。だがヘルソンで味噌つけたことと今次の攻撃は無関係ではあるまい。この先ウクライナはまだ多くの土地を取り返していかなければならないが、ウクライナ軍が何か象徴的な戦果を上げるたびにこのような蛮虐が演じられねばならないか。仮に今度がそうでなくても(先にモルドヴァには現に着弾したように)早晩ミサイル本体ないしその撃墜片がポーランドに落ちる。もう終わらせるべきだ。滅ぼすべきだ。未曾有の軍事支援を今こそ。……と言うは簡単だが。

平和とは

G19(一般にG20と呼ばれるものからロシアを除いたもの)にてゼレンスキー、平和への10ヶ条を提示(УП)。ウクライナにとって平和とは……

・放射線および核安全保障
・食料安全保障
・エネルギー安全保障
・捕虜および追放者の完全解放
・国連憲章の履行並びに領土一体性及び世界秩序の回復
・ロシア軍の撤退及び戦闘行為の終息
・正義の回復
・環境破壊への対策
・エスカレーションの不許容
・終戦の確定

国際の安定と発展に責任ある諸国がウクライナ紛争の解決を討議している最中にウクライナの国家経済・国民生活の破壊をめざした大規模攻撃をしかけてくる。ラヴロフとかいう奴、恥辱のあまり原子レベルに収縮して消失しろ。してG20は名実ともにG19へ。

11月14日

ゼレンスキーがヘルソン・ニコラエフを歴訪した。解放を印象付ける適切至極の行動。УПУП

露ペスコフ、ゼレンスキーのヘルソン訪問にコメント求められて「コメントしない。ヘルソンはロシア領土だ」はは、言ってろ。УП

昨夕オデッサは空がよかった。ОЖがわざわざ記事にしてた。秋の光優しくあれ。

11月13日

解放後も後処理が大変だ。ゼレンスキー「他の占領地で見られたような獣畜に等しき所業をロシア人どもはヘルソン州でもなした」(УП)。13日、ヘルソン市内で国営ウクライナ鉄道の自動車が地雷を踏んで爆発、幸い乗員全員無事(УП)。ヘルソン州内の別の村では軽自動車が地雷を踏んで一家4人が負傷(УП)。ウクライナ非常事態庁「民家や自家用車、死体にまで爆発物が仕掛けられていた例が無数にある。故郷の街が解放されたからといって帰還を急ぐには及ばない」УП

ところでウクライナ鉄道の「勝利への切符」というプロジェクト↓

ヘルソン解放を記念して、シンフェローポリへの夢を乗せて、解放成ったウクライナ諸都市への最初の鉄道便のチケットを予約販売する。キエフ発「ヘルソン行」「マリウポリ行」「ドネツク行」「ルガンスク行」「シンフェローポリ行」の5種、今日もう買える。ご案内の通り、ヘルソン以外は解放の日付が定かでない。未定のその日までチケットはウクライナ軍の勝利とウクライナ全土解放を願う一種のシンボルとして購入者に大事に保管され、鉄道便復旧の暁には鉄道会社より日付と座席番号の通知が来るらしい。T

月の土地を買うより実のあることと思う、まだなき電車の座席を買うことは。売上は「解放された領土における諸都市・村落を最寄りの鉄道結節点と結びつける自動車」の購入に充てられるそうだ。購入画面途中まで進んでみたが、日本でも普通に買えそうだ。2等車8000円。シンフェローポリ(クリミア共和国首都)便が走り出す頃には相当に確度の高い平和が訪れていると思われるので、どうであろう、読者の方。<勝利への切符>

市庁舎前のプーシキンもやっぱり倒そう

銅像ドミノ最終節「オデッサ市庁舎前のプーシキン像倒し」。やっぱり俎上に上がっていた。発議は市民団体、で国指定文化財たるこの像の撤去の是非は誰が決めるに有権なんだということでウクライナ文化省・オデッサ州文化局・オデッサ市議会の3者でボール回しをして、結局「やはり本件はオデッサ州文化局に一任」ということになって、同局は回答を遅らせているらしい。ОЖ

戦時下のウクライナのミュージックシーン

УПのプレイリスト。この秋の新曲たち、全10曲くらい。戦時下のウクライナでどんな楽曲が制作されてるか、興味ある人はどぞ→УП

11月12日

ヘルソン解放!

喜びのニュースが踊った。南方作戦司令部司令官がヘルソン入り、住民たち旗ふり歓呼(УП)。合法的なヘルソン州行政庁およびヘルソン市行政庁が稼働開始(УП)。警察も帰ってきた、大量の爆発物の撤去に大わらわ(УП

ゼレンスキー「クリミア解放の日に同じ光景が見られるだろう。地元住民が二色旗をふり回し歓呼してウクライナ軍を迎えるのだ」УП

元米陸軍欧州司令官ベン・ホッジスtweet「間もなくヘルソンからハイマースが火を噴く。クリミアへのアプローチは射程圏内だ。これでロシアの防護は脆弱になる。一方では反攻左翼が1月までにマリウポリとメリトポリを奪る。然るのち作戦の最終局面、クリミア解放が始まる」УП

ヘルソン解放でオデッサは

オデッサ州軍政報道官ブラチュク兄、朝の定例会見で「ヘルソン解放でロシア軍によるオデッサおよびニコラエフ攻撃のリスクは著しく下がった」。とはいえ「黒海にはいま21隻の船艇がおり、うち2隻がミサイル艦。戦場での劣敗の代償として重要インフラに対するミサイル乃至ドローン攻撃を仕掛けてくることもあり得る」ОЖ

ニコラエフに水道水が帰ってくる

ニコラエフ州のキム知事「ニコラエフに水を供給していた5施設のうちロシア軍により爆破された可能性のある2施設の点検を行ったが思ったほど損傷していなかった。とはいえ大量の爆発物が仕掛けられているため供給再開には15日前後時間がかかる。ともあれ、ニコラエフにきれいな水がが帰ってくる」УП

ニコラエフは戦争初期に水がめを破壊され長らく浄水不足に苦しんだ。人海戦術でオデッサから浄水を運び込んだり、横浜市から姉妹都市オデッサへ贈与された浄水装置もニコラエフに送られていた。

11月11日

ぬか喜びすんなと釘刺されたけどそろそろ喜んでいいだろうか。ISW(米戦争研究所)「ウクライナ軍はヘルソン州における大勝利を確実なものとしつつある」「ロシア軍は建て直しのため侵攻の一時中断を余儀なくされる」しかも「ウクライナの大勝利はこれが最後でない」УП

すでにウクライナ軍の一部はヘルソン市内に入境しているとの報も(УП)。ヘルソン市民は街路へ出てウクライナ国旗を振りかざし解放軍の到来を歓迎しているということだ(УП)。

↑ヘルソンとドニエプル川。ヘルソン市を取ったらドニエプルを挟んで西岸に解放軍・東岸に占領軍ということで対峙することになる。川を日本の感覚で考えると見誤る、滔々たる大河である、川幅は狭いところでも500mくらいある、すでに橋は全部落ちている、どうやって解放軍は進軍を続ければよいのか。対岸で防衛線しっかり築いている(だからこその退却)という話だから、ここから難しくなるのではと素人には思えてならぬ。

私はさる夏に義父とヘルソンを通ってドニエプルが黒海に注ぐ河口部にあたるドニエプル・デルタに遊んだ。それこそアントノフ橋を渡ったのだと思う。篠突く葦で覆われた無数の小島が浮かぶ迷路のように複雑な水系という印象が強く、橋でもなきゃ渡河は相当困難であろうと、よく言われてることだけど実感としてそう思います。

ニコラエフ解放

ヘルソンとオデッサの間に位置するニコラエフも「キンブルン砂嘴を除いて完全に占領軍から解放した」とキム知事。今後の課題は地雷の撤去と飲用水の復旧(УП)。ウクライナ南部から砲火が遠のく。ことぶき。

プーシキン落とし

キエフ西郊ジトーミルで19世紀末に建てられたプーシキン像が撤去された。そうか、そんな古いものでも撤去されるか。わが街は「ロシア世界」には属しませんぞとの誇示。УП

ここで用いられてるПушкинопад(落プーシキン)の語はウクライナ全土で次々とロシア関連記念碑が打倒されていく現象をドミノ倒しに例えていた最近の何丘ブログにはうってつけ。

(名詞+падで「~が落ちてくる現象」を名付けられる。снегопад落雪、водопад落水=滝、листопад落葉、звездопад落星=流星。新語として敵ドローンが続々撃墜される現象をдронопад落ドローン。だが落ドローンとか落プーシキンとか据わりが悪いので誰か妙訳思いついたらご教示を)

11月10日

今日はひとつの話題だけ。オデッサのプーシキン像が凌辱された。

体のあちこちにГетьと書かれた。Гетьはウクライナ語で消えろ、とか失せろ、の意味だそうだ。ОЖ

詩聖プーシキンを貶めることはいわばロシア世界最大のタブーである。ロシア世界の住人にとってプーシキン像にウクライナ語でГеть(この語の音感もよくない)など書くのはヴァンダリズムここに極まるという感じがするだろう。私も不快に感じる。

ところでオデッサにプーシキン像は2つある。今回被害にあったのはプーシキンの家博物館(プーシキンはベッサラヴィア遊歴の流れでオデッサに1年住んだ、その旧居)前の「立像」。こちらは実は1999年に詩人生誕200年を記念して建てられたもので歴史的価値には乏しい。像の出来栄えもあまり良くない。

より重要なのは市庁舎前のプーシキン「胸像」で、こちらは19世紀末に建立された文化財、審美的にも大変優れたものと思う。オデッサのプーシキン像といえば基本的にはこれを指す。見にくいが昨冬私が撮ったやつ↓

こちらの像にまで落書きとか撤去の議論が及べば記念碑ドミノも最終段階という感じがする。だがさすがにそこまでは行くまいと思ふ。

プーシキンとオデッサの関わりについて興味ある人は拙記事を→「オデッサ」に関する知識でWikipediaを超える②歴史編(前)

11月9日

ヘルソンからの撤退?

ロシア軍がヘルソンから撤退する。侵略軍司令官スロヴィキンが侵略軍のドニエプル左岸への移転を宣言した。移転は「最早期に実行される」とのこと。УП

これについてゼレンスキー「情報空間は今日喜びの声で溢れたが、ぬか喜びは慎もう。敵が何ごともなくただ立ち去るなんてことはあり得ない。敵からのプレゼントだとか『善意の発露』などは期待すべきでない。戦って勝ちとるのだ」「解放への道のりは一歩ごとに敵の抵抗にあう。敵の抵抗あるところウクライナ戦士の散華あり。ゆえにウクライナ軍は極めて慎重に、冷静に、極力損失が少なくなるように、領土の解放を進めていっている」УП

停戦交渉?

ロシアの提案する停戦(和平)交渉なるものは煙幕に過ぎぬ、とウクライナ外務省スポークスマン。いわく:ロシア側の声明に「ウクライナ領土からの撤退」などの文言が含まれることは絶無、ただ「モスクワは交渉に前向きだ」との空言が行われるのみ。ロシアはウクライナの平和などに何の関心もない。「対話に前向き」な姿勢を擬態することで時間を稼ぎ、その間に部隊の配置換えを行い、新たに動員したロシア人を訓練し、兵器不足とか物流の問題を解消する。そうして態勢を整えて、新次の侵略を始めるのだ。2014年にすでに経験済みだ。УП

オデッサは最近どうなんですか?

オデッサにも時折ミサイルが飛んで来ないでもない。だが被弾は先月10日の猛攻以来ないはずだ。8日夜インフラ狙いのミサイルが飛んできたが黒海海上で撃ち落とした由。ОЖ

記念碑のドミノ倒し

オデッサのエカテリーナ女帝像は撤去確定と見てよいが、市内に立つロシア帝国軍人アレクサンドル・スヴォーロフ像に「次はお前だ」との落書きがなされた。ОЖ

スヴォーロフはロシア軍の指揮官の一人として露土戦争(1787—1791)に参加、トルコから奪ったハジベイ要塞の拡大を監督してのちのオデッサ創建の基礎を築いた(もとトルコのハジベイ要塞およびハジベイ集落があった場所にオデッサ港が開かれそこを中心にオデッサ市が開かれていく)。オデッサには十分ゆかりのある人物といえる。ちなみに私の妻の実家はオデッサ市のスヴォーロフ地区にある。

遠いハリコフではプーシキン像すら撤去された(УП)。撤去に至るまでは何度も塗料をぶっかけられたりして受難であったそうだ。オデッサにも立派なプーシキン像がある。こちらはさすがに涜聖または撤去の話は聞かない。いつかここにもドミノは及ぶか?

ことばの話①いくさのことば

軍人たちの戦場ジャーゴン集とかいうマニアックな記事がОЖに。ウクライナの軍人たちはどんな隠語を使ってきたか、使っているか。第一部「1930年代までのことば」第二部「ソビエト時代のことば」第三部「ロシア・ウクライナ戦争のことば」。第三部から一個だけ紹介すると、軍事行動(боевые действия)のことをディスコ(Дискотека)というらしい。銃を構えて「よっしゃ、ディスコ言ってくらぁ!」

(あと、知ってる人は知っている、死体の隠語である「貨物200(Груз 200)」であるが、軍事ジャーゴンの脱ロシア化ということで、ウクライナ軍はこの隠語を特に廃止しているらしい)

ことばの話②ののしりことば

ウクライナ語・ロシア語の「放送禁止用語」対決というマニアックな記事がОЖに。ロシアの侵略を受け罵り言葉も今やウクライナ語でやるのがクール、ということでウクライナの皆さん「つづらの中からおばあちゃんのヴィシヴァンカと一緒におばあちゃんの悪態語彙も出してきている」。

で、文化国粋主義の例に漏れず、ここでも「ロシア語の罵り言葉(мат)よりウクライナ語のそれ(лайка)の方が洗練されて文化的である」という言説が流行っている。いわく、ロシア語の罵言はちんことかまんことか性行為および生殖器に関わるものが主流であるのに対し、ウクライナ語の罵言はうんことかしょんべんとか排泄に関わるものが多い、即ち、欧州の一般傾向に沿っている≒文化的。

でもちゃんと見るとロシア語罵言にもガヴノーとかデリモーとか直腸系のものが普通にあるし、西欧語にもfuckおよびその派生形を筆頭にセックスに関する汚言がいっぱいあるでしょ、第一皆さんご存知のあの語の語源はね……と記者は延々論証していくのだが割愛する。

11月9日はウクライナ語の日ということで、言葉の話題(一風変わった)が並んだ。

11月8日

この記事の読者も減っている。

いつかこの全ては終わる。その日は近づいているのだと信じたい。

戦闘は続いている

ゼレンスキー「初秋の頃と比べて戦況に関する報道が減っているように感じられるであろうが戦闘が沈静化したわけではない」「ヘルソン州については、敵の計画は巨細にわたり把握できていて、対応した行動をとっている。慎重に、入念に、領土解放をめざして。自陣を強化し敵のロジスティクスを破壊し、わが国南部の占領が不可能になるよう、敵のポテンシャルを破壊し続けている」T

民間人8000人が殺された

ロシアの侵略戦争によりこの8か月半でウクライナの民間人7938人が死んだ。うち430人が子供。

児童430人が死亡し、
児童827人が負傷し、
児童260人が行方不明

7938人が死亡し、
10897人が負傷し、
140万人が住む家を失い、
620万人が国内避難民となり、
117万人が国外避難民となっている。УП

電力危機の中で冬の到来に備える

発電機・蓄電器の購入の際の輸入関税・付加価値税を免除する閣議決定(УП)。

オデッサでは8日、中央暖房が始まった。まずは学校とか病院から。これから1週間~10日かけてオデッサ全域に温水を供給していく(※都市部は伝統的に中央暖房ということが行われていてどっか一か所で熱水を大量に作ってそれをパイプラインで各集合住宅へ供給して壁暖房とする。これが始まらないと寒い、始まると冬中あったかい)ОЖ

11月9日はウクライナ語の日

11月9日はウクライナ語の日なのだそうだ。ОЖがオデッサの街中で人たちにウクライナ語への想いを聞いて回った。

TPOでロシア語とウクライナ語を使い分けるという人。戦争を機にウクライナ語に切り替えたという若い人。ロシア語しか話せないおばあさん。皆さん口々にウクライナ語を称揚する。ウクライナ語が優勢になってほしい、子供たちにはきれいなウクライナ語を使ってほしい……。一面の真実だろう。だがこの線の記事しか出せない時局であることも確かだ。

クリスマス記念切手

国営郵便が新年祭の記念切手の図案のコンテストを行い、その優勝者が決まった。「戦争で引き裂かれた人たち」と題するやつ。УП

ウクライナ人にとって年間最大の祝祭である新年祭(クリスマスと正月が合わさったようなもの)。今年は多くの人が家族や愛する人とひとつヨールカ(クリスマスツリー的なやつ)の下で新年祭を祝うことができない。図案の製作者はニコラエフの11年生(高校3年生)のワレリヤちゃんだそうだ。

こちらで他の候補作も見られます。全5案いずれにも戦争の陰あり。

こちらに何丘がオデッサの家族と過ごした2022年の新年祭についてまとめています。記事中の「ロシア」の語は随意に「ウクライナ」に置き換えてください。

11月7日

ウクライナの人たちの生活が蛮ミサイルや自爆ドローンからよりよく守られることになる。米ほかパートナー諸国より新式対空兵器NASAMSおよびAspideが到着。ゼ「これで防空能力が飛躍的に高まる。ウクライナの空の防護は100%とはいかないが、それに近づきつつある」УП

世論調査:ウクライナの10年後の未来は

キエフ国際社会学研究所(КМИС)が10月21-23日行った調査。10年後のウクライナはどうなっていると思いますか。УПКМИС

【問い】次の2つの説のうち、どちらに同意するか。A「10年後のウクライナはEU加盟の豊かな国になっている」B「10年後のウクライナは人口が流出して荒廃した国になっている」

Aに完全に同意 63%
Aにまずまず同意 26%
Bにまずまず同意 4%
Bに完全に同意 1%

Aと答えた人すなわち楽観勢に追加の質問をした。「ウクライナが結果的にEU加盟の豊かな国となれるのであれば、今後3-5年の間、物質的な困難を甘受できるか?」

絶対できる 58%
多分できる 39%
多分できない 3%
絶対できない 1%

調査結果についてКМИС副所長氏のコメント。「西側記者または専門家からよく聞かれる質問に、これほど仮借ないテロルにあいながら政権に対しロシアとの停戦交渉を求めないウクライナ人どうなってるんだ、何がいったい彼らをして頑強に軍事的な抵抗を推し進めさせるのか、というものがある。今度の調査はその問いに部分的にも答えるものになっていると思う。ウクライナ人の頭の中にはウクライナの未来について良きイメージがあるのだ。そして、『欧州の中の豊かなウクライナ』という夢は、叶えられる夢であるし、悲劇的な対価を支払うのに値する夢だと、大多数のウクライナ人が考えている。いま戦闘の前線で、また市民生活の中で頑張れば、自分自身および子々孫々にご褒美が待っている。そう思えばこそ、その夢の実現に根気強く取り組んでいけるのだ」

日本語の未来という語に響き親しきウクライナ語のмрія(ムリーヤ、夢)という語が好きだ。

オデッサの街からロシア語を一掃せよ(と何度も言ってるのに!怒)

「言語オンブズマン」タラス・クレメニがまた怒ってる。なんでもオデッサの街中で見られる張り紙、看板、広告の2つに1つがロシア語で出ていてけしからん、オデッサ市長なんとか対策を講じろ、というのである。「今年2月にも違法状況の是正を求めたが未だ何らの回答・対応も見られない。2020年1月16日より国語法32条にて『広告類にはウクライナ語を使用すること』と定められている。オデッサでの違法状況については苦情が継続的に寄せられており、先般行った実地調査でも、商店150軒の半数で法律違反が見られた」「ロシア政府はロシア語を地政学的拡張の道具として利用している。言語の問題はロシアの対ウクライナ戦争遂行の最重要要素の一つである。違法な屋外広告はウクライナ諸都市から一掃されるべきだ。それがウクライナの勝利への道だ」と言語オンブズマン。УПОЖ

その頃オデッサ市長はヴェネツィアにいた。姉妹都市協定に調印していた。T


私は、個人的には、ロシア語への抑圧こそ露プロパガンダを利する、ロシア語への寛容は露プロパガンダを弱体化させる、と思っている。→何丘マニフェスト

11月6日

5日一番のニュースはイランがロシアへの自爆ドローンの供与を事実と認めたことだった。だが供与は①侵攻前であり②少量である、と(УП)。笑止千万、イラン人インストラクターがロシアに入っていることさえ知ってるし、こちとら一日10機も撃ち落としているのだぞ(何が「小量」なものか)とウクライナ側(УП

もし侵略者にイランの武器が供給されていなかったら、平和はもっと近かったであろう、食糧危機の完全解決、エネルギー市場の安定化、放射線シャンタージュ(恐喝)からの確実な保護、これらをもうすぐ手にしていただろう――ゼレンスキー(УП

キエフと停電

ゼレンスキーによれば、6日夕の時点で計画停電により450万人が暗闇の中で過ごしており、その大半はキエフ市およびキエフ州民である。また、いま敵はインフラへの次なる大規模攻撃のために力と手段を集中させている(УП)。

キエフのクリチコ市長によれば、キエフ在住者は現在300万人で、うち35万は国内避難者(戦災を逃れキエフに移住してきた人)УП。今後の攻撃で電力網が完全破壊されたらこの300万人を総員避難させることも含めて様々なシナリオを検討中(УП)だが、パニックには及ばない、キエフは今も生きているし稼働しているし、今よりひどいことにはならないと考える、と市長(УП

エカテリーナ女帝像、最終形態

もう女帝像も長くない。先月終結したオンライン投票でも撤去が多数であったしかつて親露で鳴らしたトゥルハーノフ市長も来る議会での投票で賛成票を投じる意向を明らかにした。「個人的には像を撤去し、『帝政時代およびソビエト時代の過去』記念公園(を創設してはどうかと数か月前に述べた)に移設することに<賛成>票を投じたい」と市長(ОЖ

像の撤去を最終的に決めるオデッサ市議会の次回開催は今月30日だそうだ。それまで女帝像は未決囚として人目から隠される。またはさらなる凌辱から守られる。二重の隔壁で囲まれ、黒布で覆われた。あわれ「市創建の母」の末期の姿。ОЖ

11月4日

ウクライナ市民が発電機の購入に走っている。販売店では品薄・品切れ・価格高騰が見られるという(УП)。最高議会は産業支援策として発電機に対する付加価値税の免除を検討中(УП)。リヴォフでは住宅用発電機の購入費を半額まで支援する計画(УП)。

戦車は送れなくても発電機を、あるいはその購入費を送れない理由はないはずだ。日本のことを言っている。

ニコラエフ

ロシアのウクライナへの大規模侵攻始まって255日でニコラエフが砲撃を受けなかった日は44日しかないそうだ。残りの211日はずーっと攻撃を受けている。オデッサはちょうどこの逆くらいの数字だろう。戦前46.6万人いた人口は今は22~23万人に半減しているそう。УП

ニコラエフ(ムィコライウ)はオデッサの隣町で義父の郷里である。義父の姉一家と親友一家が今も住む。私は二度訪れた。なぜオデッサが無事でニコラエフがかく烈しく攻め立てられるか。ニコラエフの逆隣りがヘルソンだからだ。それ以外に理由はない。クリミアを明け渡したからヘルソンが取られた。ヘルソンが取られたからニコラエフが攻められる。ニコラエフが取られればオデッサが攻められるのは必定である。2、4、6ときたら次は何ですか(答えは8)という単純な数列問題を思い出す。ロシアの持ち出す「和平交渉」など到底信じられぬシンプルな理由がそれ。

ヘルソン

プーチン総統がヘルソン市からの住民の退去の必要性を説いた(УП)。期待と不安。ヘルソン奪還はもちろん望ましいが陋劣ロシアが偽旗作戦で放射線カタストロフィあるいはドニエプル下流域水没、何をしでかすか分からないという恐怖はある。ところで総統は住民の退去の必要性を説くに際して次のように述べたということだ。

砲撃、侵攻、反攻その他事象によって市民が苦しむことはあってはならない

呆気にとられますネ!この人間が一回しか死ねないことが残念だ!(少なくとも4人いるそうですが)

11月3日

ロシアの穀物合意復帰は「ウクライナが穀物回廊を軍事利用しないことを確約したため」とのことだったがウクライナ外務省「確約などしていない」。というのも「ウクライナはそもそも穀物回廊を軍事利用してこなかったし、するつもりもな」く、既存の穀物合意の枠外の新たな責務を負う必要など何もなかったから。ロシアが合意に復帰したのは結局、仲介者たる国連およびトルコの活発な外交があったからだ。「実効性のある公式:強固な立場+決然たる行為=結果」УП

もしあなたの身近にPTSDの人がいたら

私のことではないが、ウクライナ戦争で多くの人(市民または帰還兵)がPTSD=心的外傷後ストレス障害を抱えると予想される。「身近な人がPTSDを抱えた場合にあなたのやってはいけないこと――保健省解説」なるУП記事に禁忌事項と推奨事項と色々書いてあって、その中に

禁忌・・トラウマ体験について話すよう求める(PTSDの人は話すのが困難だったり、話すことで再度傷害を負う可能性がある)
推奨・・話す決心がついたとき、その人はトラウマとなった出来事について何度も何度も話したがるかもしれない。その場合は彼が話したいだけ話させてやること

とあった。銘記する。(他にも色々書いてあった)

11月2日

ロシアが穀物合意に復帰した。「ウクライナがロシアに対する軍事行為を遂行する目的で穀物回廊を利用しないことについて書面で確約が得られたため」(УП)。だがロシアの絶え間ないミサイル攻撃から商船を保護することこそ合意の本質であって、ウクライナの軍事行動の脅威なるものが合意からの離脱または復帰の理由になるなど笑止というのがウクライナ側の立場(УП)。「教訓:ロシア流の恫喝は、より強い者・ぶれない立場を明確に主張できる者の前には常に屈する。侵略の”調停”も同様に、合理的な力の誇示を通じてのみ行われるべきだ」ポドリャク(ОЖ

オデッサに暖房設置

オデッサでは冬の停電に備えて避難所・教育機関など141施設に暖房室(стационарные пункты обогрева)を併設する計画という。すでに400立方メートルの薪が用意されている。同様の施設はハリコフ、キエフ市およびキエフ州で計画されている由。УП

エカテリーナ女帝また変貌

オデッサ市中心部に立つエカテリーナ女帝像がまた変貌させられた。今度は中世の死刑執行人の姿に。

絞首縄は侵略者および市議会内の敵シンパ(像の撤去に反対してる勢力?)に懲罰を与えるためのものか、とウクライナ国家記憶院の何某。УП

11月1日

11月はウクライナ語でлистопад「落葉月」。

比較的無事の日だった。ロシア軍の巡航ミサイルや自爆ドローンによるウクライナ民生施設への攻撃は朝方行われることが多いので日本時間の昼過ぎニュースサイト開くとき一番緊張する。夕方まで何もないと一旦安心する。(※日本時間マイナス7でウクライナ時間)

ゼレンスキーによればウクライナの全エネルギー施設の実に4割が深刻な被害を受けている(УП)。「テロリストどもが冬に期している(=ロシアの今の戦略の主軸はウクライナおよび欧州を凍えさせロシアに”歯向かう”コストの大きさを痛感させることにある)ことは明々白々である」とゼ(УП

10月31日

10月31日の朝、ロシアが蛮ミサイルを半百あまり飛ばしてインフラを攻撃、一部で被害があり停電断水。ウクライナ側は44発を撃ち落としたと誇る。こういうときいつも何発が落ちたかという話より何発を撃ち落としたという話をする。オデッサは無事であった。

※半百=50

大統領補佐官ポドリャク「またしてもウクライナ各地に大規模攻撃。大量破壊とか、ひとつの国がまるごと冷凍されていくさまを眺めるのが、世界の皆さんは面白いのだろう。それでウクライナへの対空防衛兵器の供与を何かと理由をつけて遅れさせているのだろう」УП

対空兵器の供与以外にも諸国にできることはある。クレバ外相「エネルギーインフラの復興支援に関してパートナー諸国と対話を行っており、すでに12か国の政府および企業と設備の供給(各種発電機、自動スイッチ、ジェットヒーター他)に関する合意が結ばれている」、その12か国とは「イスラエル、スペイン、イタリア、リトアニア、ドイツ、北マケドニア、ポーランド、韓国、スロヴァキア、スロヴァニア、フィンランド、フランス」だそうだ。ここに早晩日本の名も加わると信じている。УП

ウクライナ人の7割がストレスを抱えている

調査会社Gradus Researchが9月22-26日に行った調査によると、ウクライナ市民の7割強が「最近ストレスや強い不安を感じたことがある」。ストレスの原因は戦争(72%)金欠(44%)社会および政治情勢不安(30%)など。で、そのストレスの解消法はというと、

・インターネット 39%
・家族や友人と話す 31%
・テレビ/映画/ドラマを見る 29%
・親しい人とひとときを過ごす 24%
・音楽きく 24%
・仕事に没頭する 20%
・趣味にかまける 19%
・酒を飲む 16%
・鎮静剤を飲む 16%
・本を読む 15%
・甘いもの/おいしいもの食べる 14%
・自然に親しむ 13%
・スポーツする 10%

ここにもう網羅されてる気がする。私らも3月の5日間にほとんどこの全部をしていた。ウクライナの人たちに自らがcauseしたストレスの慰謝料を完済するだけでロシアという国は財政的に消滅するだろう。それを望んでいる。УПGradus

秋の好日

晴れの週末オデッサっ子はやはり海辺に出た。ランジェロン浜。ОЖのフォトルポルタージュ

ベビーカーが私らの使っていたのと同じ型。去年の今日はこうして私たちもここにいた。そのベビーカーはブハレストに乗り捨てていった。

現時点の予想では、この秋はけっこう暖かい過ごしやすい秋になるそうです。よってオデッサで集中暖房が始まるのは11月半ばになるとのこと(ОЖ)。集中暖房は一日の平均気温が3日連続で8度を下回らないと入らない。だがオデッサらへんは11月15日まで10度の境を行ったり来たりする予報。今のところは冬もそんなに寒くない予報だ(ОЖ)。そうあってほしいもの。

ゼレンスキー「オデッサ市長の適格性は大統領の判断するところではない」

大統領あて請願というものがある。市民が自由に起草し、2万5000筆の賛同が集まると、当該請願は必ず大統領の目にふれその検討にかけられる。それで先日、「オデッサ市長ゲンナージイ・トゥルハーノフはロシアの手先と思しいのでどうにかした方がいいと思います」という案件が上がって(当ブログも9/13付けで紹介した)、それが結局2万5000筆を充足して大統領マターとなった。でゼレンスキーの回答はこうだ:

「請願に記されている諸問題の処断(ゲンナージイ・トゥルハーノフの活動に対する法的評価、刑事責任の追及、ウクライナ国籍の剥奪、現職からの追放)はウクライナ大統領の憲法上の権限に該当しない。記載内容に鑑み、請願はウクライナ保安庁および内務省に回送し、記載内容の検討を要請した」――どうなるだろう。ОЖ

プーチンのお陰でやっと私たちもエカテリーナ女帝像を撤去できます

その大統領請願が発端となったオデッサ市中心部からのエカテリーナ女帝像の撤去だが、先日のヴァルダイ会議で頓風珍がこの像について言及していたらしく、どういう言及かというと、要するになんだかんだでオデッサにエカテリーナ女帝像は立ったままじゃないか、ウクライナ愛国主義者の勢力も結局はこれを撤去できないんだよ、歴史は否定しようもないんだよ、オデッサはやはりロシア皇帝が開いたロシアの街なんだよ……ということを言った。それに対しオデッサ州のスポークスマンが「ありがとう頓風珍。煮え切らないオデッサ市議会もこれでようやく踏み切れると思います、撤去に」と返した。ОЖ

プーチンは少なくとも4人いる

ウクライナの諜報機関によれば裏地見る人には少なくとも3人の影武者がいるそうだ(ウクライナ国防省情報総局長官キリル・ブダーノフ談)。全員がより本人に似せるために整形手術を受けており、それでも身長とかジェスチャーとかボディランゲージとか耳たぶが若干違ってよくよく写真動画を分析すると他人と知れるのだそうだ。気色悪すぎる話。УП

10月29日

再び海上封鎖が始まるのか。ロシアが「29日朝セヴァストーポリにドローン攻撃があった(でも全部撃ち落とした)→これは民間船舶およびそれを護送する軍船に対する攻撃である」と主張、ウクライナ産穀物の輸出を行う船舶の黒海の航行の安全に関する合意からの一方的離脱を宣言した。ウクライナ側は厳しくこれを非難、国連ほか国際機関に厳格な対応を求めている(УПУПУП)。

クソ野郎、の一言である。セヴァストーポリへの攻撃とやらも自作自演に違いない。消耗戦の一環でウクライナ産エネルギーの欧州への輸出を止めたのに続き、穀物の輸出も再び止める。一方では沖合の船団からのウクライナ南部へのプレッシャーを再び強化する。あまりにロシアに利がある。敵本丸のセヴァストーポリへの攻撃は唐突であり、かつ、ロシア側に実損が全くなかったのであれば、「攻撃」とやらも口実づくりのための自作自演と疑われて仕方ない。そこから「穀物合意からの離脱」にいくのも飛躍がある。そもそも商船の航行の安全はな、第一に、てめぇらの軍事行動によって脅かされていたんだよ。割を食うのはウクライナ産穀物を頼みにしていた開発途上国の皆さんである。

プーチンという概念

ゼレンスキーがうまいこと言った。「もう私にはよく分からない。『プーチン』とは誰なのか、何なのか。今日、プーチンとは、ある人々のサークルのことだ。アグレッシヴな歩調で民族の絶滅へと進んでいる『プーチン』ブランド下の軍事・政治指導部のことだ」УП

10月28日

比較的無事な一日。安定化停電(стабилизационные отключения электроэнергии)という新たな術語、要するに計画停電、常態的に全国数百万人が電力使用を制限されている。УП

敵の陋劣極まる発電所破壊と迫りくる冬を前に比較的無事かつ温暖なオデッサへの国内避難民の流入が増大している。その数(登録上は)現在50799人。ここ数週間は1日1000人ほどが入ってきているが、今後これが爆増する可能性もある。主たる問題は寝泊まりする場所で、避難民を収容する宿泊施設には国から補助が出ることが決まった(T

続・市民参加型対空防衛

先日お話した対空防衛アプリ「ePVO」がまたしても成果を上げた。このアプリを通じて市民から寄せられた情報をもとに22日にニコラエフでカリブル型ミサイルを撃墜したのに続き26日、オデッサでカミカゼ・ドローン「シャヘド136」を2機撃墜した(ОЖ)。

これまでこうした事象への市民参加は厳しく戒められていた。飛行物体や着弾地を写真・動画に撮ってSNSに上げるな、そうした情報を敵は分析して次の攻撃に反映してくる、市民は空襲警報が鳴ったら/飛行物体を目撃したら速やかにシェルターに入って座して待っておけ俺たちがやるから、ということになっていた。だがSNS時代の市民は口さがないもので動画に撮らずにはいられない、それを拡散せずにはいられない。であればそのサガをしかるべき目的へと方向づけてやることだ:すなわち、撃墜目的での、ウクライナ軍への情報提供。

つうわけで今や情報は多ければ多いほど良いということで、軍が市民にアプリのダウンロードを呼びかけるに至っている。とはいえ「自分自身の安全にも重々留意のこと。空襲警報が鳴ったらシェルターに避難という原則は何も変わらない。当該アプリはあなたがたまたま敵発飛翔体の目撃者となった場合にのみ使用するよう求める」。

オデッサの紅葉

オデッサ中心部のシチェプノイ小径に立つ古い家がキヅタに覆われて、そのキヅタが紅く色づいて見事だそうだ(ОЖ)。見て

オデッサは秋の色づきという点では物足りない。私はモスクワが長かったので同じようないわゆる「黄金の秋」золотая осеньを期待したがステップ気候で森がないので(ほっとくと自然は森を志向せず草原になる)さびしい景色であった。キエフまで北上400キロ、そのちょうど中間点のウマニくらいまでくると植生がはっきり変わって森になる、そこ以北は黄葉もきれいだ。

そんな中にあってキヅタとかある種の灌木とかは風景に紅を添える貴重な要素だ。そのキヅタがこんな密生してるおうちが中心部にあるのは知らなかった。

ちなみにキヅタ(木蔦)はロシア語でплющ(プリュシチ)といって元フィギュア男子エヴゲーニイ・プリュシチェンコの姓はここからきている。「蔦屋のエヴゲーニイ」ということだ。ご多聞に漏れず私もこの選手のファンだったが今は骨髄に徹して憎い。露プロパガンダの走狗、ウクライナ戦争における明らかな戦犯。ウクライナへの侵略が続くのはロシア国民が支持(ないし黙過)するからで、ロシア国民が政権ないし戦争を支持するのはこいつみたいなインフルエンサーが国営テレビの共鳴板として機能しているからだ。

次回ユーロヴィジョンはリヴァプールで

ロシアとかウクライナとかヨーロッパでやたら人気なユーロヴィジョンなる国対抗のど自慢大会、23年大会は英リヴァプールで開かれるらしい。リヴァプールといえはむろんビートルズ、そしてオデッサの姉妹都市である。オデッサは横浜とかマルセイユとか各地の港湾都市と姉妹都市提携を結んでいる。実は今年22年大会はウクライナ代表が優勝していて、本当なら次回大会は優勝国のウクライナに開催権があった。でも狂せる大熊に襲われそれどころでないので、2位の英国が代わって開催しますということになった。「戦勝のあかつきにはきっとウクライナが開催権を行使できるものと確信している。まずは姉妹都市リヴァプールよ、おめでとう」とオデッサ市長。ОЖ

10月27日

27日未明もキエフ州他でエネルギー施設に対する攻撃があり首都ほか各地で電力逼迫に拍車がかかる(УП)。考えられない。読む人は慣れっこになった話題であろうか。ふつうのことであろうか。異常だよ。よくもこんなことができる。ウクライナは最南端のオデッサ辺りでも北海道の一番北より北の高緯度国だ。冬は長く寒く暗い。この日曜からは冬時間だ。国営電力会社によれば現状すでに計画停電は春まで続くという見立て(ОЖ)。この先露軍の陋劣な発電所破壊がどれだけ続くか分からない。

USAID(米国際開発庁)はウクライナの22自治体に100基の発電機を供与した。ロシア軍の攻撃でインフラが損傷した中でも病院・学校・行政機関が稼働できるようにということだ(УП)。日本も速やかに同様の支援を行うべきだと思うが。躊躇する理由があるだろうか。

ヘルソン

ウクライナ軍参謀本部作戦総局副長官「ヘルソン住民の集団退去に続いて何が起きるか。敵が最もやりそうなことは、集合住宅を爆破する一連のテロを行い、インフラに致命的な損傷を与えて、せっかく奪還したヘルソンは既に焦土であったという状態にすることだ」УП。このロシアにはもうさすがにそこまではやらないだろうということは言えない。ダムの爆破も「汚い爆弾」の使用も、西側商用衛星の撃墜も。

ザポロージエ

ロシアが占領しているザポロージエ州のベルジャンスクで市民の携帯電話の抜き打ちチェックが行われている。ウクライナのプロパガンダメディアのSNSをフォローしている人(潜在的な対敵協力者)を見つけるのが狙い。Meduza

ウクライナ側に露諜報機関に協力する露シンパがいるように、いまロシアが占領している地域にもウクライナ軍に情報提供を行う有志市民がいることは想像に難くない。ウクライナ側では携帯電話の無差別チェックが行われているという話は聞いたことがない。

10月26日

比較的無事の1日であった。

電気がない

大都キエフも義父母の村も電気が止まってる。ロシア軍は発電所を狙いすましてミサイルを飛ばし自爆ドローンを送り込んでくる。明白に市民生活の壊乱を意図した攻撃。考えられない卑劣。

УП作成の表、「ウクライナの電力施設への攻撃件数」。行が州で列が月(2~10月)。いかに10月に攻撃が集中しているか分かるだろう。

関連してオデッサの街角から小さなニュース:とある街区で信号機が近代化された(T)。無停電電源装置(бесперебойный блок питания)が内設されたもので、電力供給が寸断しても一定時間動作を続けるという。ウクライナのドライバーは気が荒い。埼玉県北の山猿こと私は東北大震災当日の闇夜に要あって車を運転したが、信号灯の一切ともらない道路で人らは譲り合いの精神を発揮していた。同じことがウクライナの人たちにできるとは思えない。日本はこの無停電電源装置とやらをウクライナに大量に供給してはどうか。#日本にできること

アプリでできる!市民参加型対空防衛

ちょっとすごい話。オデッサのエンジニアが開発したePVO(PVO=ПВО=ПротивоВоздушная Оборона=対空防衛)なるアプリで飛来ミサイルの位置情報を軍部に伝え、実際にミサイル撃墜に成功した先例が一件できた。

詳細:22日朝ウクライナ南部にカリブル型ミサイルが飛んできた。低高度で飛来したためレーダーでは捕捉できていなかった。そこへ市民が目視をもとに当該アプリで通知を行いこれに軍が反応、地対空ミサイルで撃墜することに成功した。

非常にシンプルなインターフェイスだそうで、何しろ怪しき飛行物体を見つけたら①その飛行物体がミサイルなのか航空機なのかヘリコプターなのか無人機なのかを選ぶ。

選んだら、②スマホをその飛行物体の飛行方向に向けて、赤いボタンを押す。それだけ。数秒後には対空防衛スペシャリストらの地図に情報が反映されレーダー情報との照合をもとに飛行物体は撃墜される。

国民アプリДия(マイナンバーカードがスマホに搭載されているものと思ってほしい)で認証を行うため情報発信者は完全に特定可能でありイタズラは抑止されてるが、誤認・誤報・悪意に基づく虚偽通報(対敵協力者による)もあるだろから、なるべく多くの人がこのアプリをインストールして、なるべく多くの通報がくるのが望ましい。つうわけで協力が呼びかけられている。

世界初のインターネット対空防衛システムだそうだ。ハイテク。すごいことをする。ОЖОЖ

10月25日

オデッサ無事。計画停電中。

・冬の間はウクライナに帰ってくるな
ウクライナ被占領地再統合相はロシアの陋劣な「生活の破壊」によって熱と光と水を奪われ厳しい越冬となることが予想されるから国外の避難民は冬のあいだはウクライナに還ってこない方がよい、と勧告している(УП)。ウクライナの冬は寒い。温暖なオデッサでさえ緯度でいえば稚内より北だ、冬場はマイナス10度前後もざらで黒海の波打ち際も凍る。日本にできること①ウクライナに発電機ヒーター冬服ホッカイロ他何でもいい送る②支援疲れが指摘される欧州(例:「ベルリンの難民収容力はもう限界」УП)からの二次避難者を受け入れる。

・復興は近代化とともに
独ショルツ首相、ベルリンで25日開かれたウクライナ復興および近代化に関する国際的な専門家会議で「復興ということをかつてあったもの・今あるものに限定せずに、より先端的・自律的・安定的なウクライナとはどのようなものかを考えるべきだ。それはたとえばグリーンエネルギーの一大産出国、高付加価値な工・農産品の供給国、世界最高のIT技術者を擁するIT先進国、然るべきインフラおよび法制を備えたEU加盟国としてのウクライナだ」УП

・マクドナルドが帰ってくる
戦争でウクライナ国内のマクドナルドは悉皆休業していたがキエフを中心に店が再オープンしつつある(УП)。オデッサは未だ。侵略国のロシアの方では実質的にマクドナルドを食べる権利(←基本的人権)が損われることがなくて済んだのだから皮肉な話だ。

・ボッチェッリが犬を保護した
私の好きなイタリアのテノール歌手アンドレア・ボッチェッリが先般ウクライナ軍がクピャンスクで保護した犬の新たな飼い主となることが決まった。犬はクピャンスク解放作戦で度重なる爆発音に耳を破られてほとんど音が聞こえないそうだ。УП

10月24日

この戦争で想像できる限りの”汚い”ものの淵源が誰であるか皆よく分かっている。ゼレンスキー(10/23)

8か月

侵攻はじまって8か月の間にロシアはウクライナの電力施設に85回攻撃を行った。うち51回が10月中(УП)。戦場での劣勢を受け、また冬の到来を前に、攻撃の矛先をウクライナ軍でなくウクライナ国民に向けてきたのは明らか。

ウクライナ国防省情報総局長官「かつてロシアは主として軍事施設を叩いており民間施設への攻撃は比較的少なかったが、今は軍事施設への攻撃を全然中止し民間施設ばかり叩いている。テロ国家の真骨頂だ。奴らの願いは社会にパニックと恐怖を広め、闇と寒さをウクライナにもたらすこと。だがそんな願いは実現しない。困難な状況ではあるが、危機は未だ訪れてはいない」УП

カミカゼ・ドローン

英国防情報局の24日付けレポートによればロシアが払底しかかっている高精度ミサイルの代用品として使用していると見られるシャヘド136(イラン製自爆ドローン)は「遅く、うるさく、低く飛ぶ」ため通常の対空防衛システムにも与しやすい標的であり、事実ウクライナ軍による撃墜率は85%にまで上っている。УП

一方ウクライナ国防省情報総局長官によれば撃墜率は全体で7割ほどである。22日時点でロシアが使用した「シャヘド」は約330機、うち222機は撃墜に成功しているが、撃ち漏らした3割は目的を達してしまっている。ロシアがイランに注文したドローンは1700機ほどで、約300機ずつ納品されるうち、今は第2期。要するに、「シャヘドを用いたテロルは今後まだ長く続く可能性がある」УП

こうしたなか、イラン側は改めて潔白を主張。いわく、戦争始まってからロシアに武器の供与は行っていない▽この戦争で民間人に対しイラン製ドローンが使用されたことが立証されたなら然るべき対応をとる▽この問題をウクライナ側と討議する用意もある。УП

なお、上空にシャヘドが現れたからとて民間人が手持ちの火器で撃墜しようとするのは「マジでやめてほしい」と軍。「ドローン投入初期のころオデッサで民間人とドローンの戦争が行われたが、空に撃ち上げた銃弾は必ず地上に落ちてくる。それで怪我した人もいるかもしれない」「標的の高度を目視で捕捉するのはそう容易なわざではない。高度とはすなわち距離である。地球の引力とか風力とかも考慮しなければならない。そして標的は高速で移動する(時速120-180キロ)。よく訓練され経験を積んだ者が大口径の銃で何度も試してやっと撃ち落とせるしろものだ。カラシニコフはものの役に立たぬ。市街地での発砲はもってのほかだ」УП。戦争初期に防衛のため警察が市民に銃火器を配るということをやった。その後は自主的な返納も行われたが、まだ相当数が市民社会に残っている。それを用いたものと思う。

世論調査①闘争か和平か

キエフ国際社会学研究所(КМИС)が10月21-23日に行った調査。УПКМИС

【問い】
ここ最近ロシアはウクライナ諸都市へのミサイル、カミカゼ・ドローンその他による攻撃を活発化させている。これに関してあなたの考えをよりよく描写しているのはどちらか。
A.攻撃が続いたとしても軍事的な闘争を続けるべきだ。 
B.ロシアに譲歩してでも戦火の早期停止のため交渉へと移行すべきだ。

【答え】
明確にA:71%
どちらかというとA:16%
どちらかというとB:6%
明確にB:4%

闘争か和平かで2分すると、「闘争」9割、「和平」1割ということになる。地域別にみると、西部(リヴォフとか)中央部(キエフとか)南部(オデッサとか)ではいずれも「闘争」派が9割近く。東部は「闘争」が7割で、「和平」が3割。言語別で見ると、今回の調査にウクライナ語で応じた人は「闘争」支持が9割。ロシア語で応じた人は、「闘争」が7割弱で、「和平」が3割となっている。

「テロは続いている。人々が死に、傷つき、(停電で)家々に夜の灯りも灯らない。だが全国民の痛み・損失・破壊は<敵に対する怒りと憎悪>に糾合されている。ウクライナ国民は強固な団結を保ち、勝利のために戦い抜く覚悟であるらしい」と評家。

世論調査②ロシアは核を使うと思うか?

調査機関「レイティング」が10月8-9日に行った調査。УП

【問い】
ロシアは核兵器を使うと思うか?

【答え】
・絶対使わない 18%
・おそらく使わない 47%
・おそらく使う 24%
・絶対使う 2%

合計65%が核のシナリオを否定。4月に行われた前回調査よりだいぶ楽観的になっている。投票だの併合宣言だのいう茶番で「ロシア領」となった土地をウクライナ軍ががんがん取り戻している、それをロシアはどうにもできないでいる……という状況の反映だろう。

(ウクライナ側の世論調査について報道が出たら必ず拾っていこうと思う。これまでは結構スルーもしてた)

オデッサ

オデッサは無事を保っている。電気は足りないが。

公式記録によると現在オデッサには5万とんで16人の国内避難民が移住してきてるそうだ(T)。この戦争で比較的ブジなオデッサの、後衛としての務めの一つが、疎開者の受け入れである。

あと、先日ニッポンの首都トーキョーでオデッサをテーマとしたイベントが行われたらしい。Stand With Ukraine Japanという団体がウクライナの様々な地域を知ろうということでキエフ、リヴォフ、ハリコフと紹介していったお鉢がこんどオデッサに回ってきた形、日本人や在日ウクライナ人ほか200人が参加、オデッサ出身のアーティストやミュージシャンが自身の作品を発表したり、酒とか料理が振る舞われた。集まった金は慈善に使われるということだ。ОЖ

10月22日

朝また各地のインフラにミサイル他による攻撃、オデッサも被弾した(ОЖУП)。1日を通じて9つの州に40発のミサイル(うち20を撃墜)、16機の自爆ドローン(うち11を撃墜)が飛んできた(УП)。連日にわたり、広範囲に対し、生活に直結する被害をもたらす攻撃を細く長く。主たる攻撃は決まって朝方。その後も一日、空襲警報が鳴っている。うとましいやり口。

ウクライナ側は何発のミサイルを/何機のドローンを撃墜したと誇るが敵の攻撃手段は無尽蔵である。果てしもない営為だ。弾数そろそろ尽きるかと思う頃にはイランみたいな奴が現れて新たに供給する。そしてインフラを狙ってくると分かっていても、結局飛んでくるミサイルの半数を浴びてしまう。敵が本気でウクライナ大統領府を狙って30発撃ってきたとき全部を撃ち落とせるか。

ブログ更新の無意味と無力に呆れ果てている。

10月21日

中間報告。オデッサ州検察局長によると、2月24日の侵攻開始よりオデッサ州には47次にわたるミサイル攻撃および5次にわたるドローン攻撃が行われ、97発のミサイルが着弾、61の民間およびエネルギーインフラが被害を受けた。民間人の死者は32名、うち2人が子供。負傷は90人、うち13人が子供。ОЖ

穀物輸出に暗雲

ゼレンスキーによるとロシアはウクライナ産穀物を積んだ船舶の航行を妨害しており150隻の渋滞が人工的に創り出されている。今年前半のような食物危機を意図的に誘発する企てであると(УП

一方でロシアは占領したウクライナの領域から180万トンの穀物を輸出し6億ドルの利益を上げる算段であるとのことだ(УП

なんか幸せじゃない気がする

Levada Center調べ、ロシア人に聞きました、最近の自分の気分を一言で言うと?(調査期間は9月22-28日、動員令は9月21日)

・最高7%(前月15%)
・ふつう45%(前月65%)
・ストレスや苛立ちを感じる32%(前月17%)
・恐怖や憂鬱を感じる15%(前月4%)

動員への最初の反応。結構な変化だ。10月分の調査が今頃行われてるはずだが数字は若干持ち直してるのではないかと想像する。本当はどんどんひどくなってほしいのだが。

10月20日

オデッサ節電中。街灯が一部消されて夜の闇が深まった。商店等のネオンライトも消すよう呼びかけられている。トラムやトロリーバスなど電気を使う公共交通機関も減便。ОЖОЖ

あと、エカテリーナ女帝像の撤去の是非を問うオンライン投票が終結した。7つある選択肢のうち得票の多い順に「完全撤去」3914、「エカテリーナ2世の事跡について記した案内板を併置する形で存置」2816、「現状維持」650、「公園または博物館に移設」329、あとは泡沫。この市民の声を正直に反映するなら少なくとも今立つ場所にそのまま立ち続けることはなさそうだ。だが決めるのは市議会。投票ページ

新語↓

снегопад落雪、водопад瀑布、листопад落葉、звездопад流星、дронопад…落ドローン。

10月19日

いま一番ホットな話題は電力逼迫。きょう(これ書いてる今日)20日はウクライナ全土でいわゆる扇状停電が行われる。20日の朝7時から夜11時にかけて、最大4時間にわたり、対象地区における電力使用量に制限がかけられる。対象地区はリレー式に順次切り替わっていく。自分の住む地区にいつ・何時間にわたり制限がかかるかは事前にサイトで発表される。УП

オデッサも例外ではない。市長から市民へのメッセージ「侵略者どもがエネルギーセクターへの攻撃を続けている。私たちの士気をくじこうとしているのだ。連中は分かっていないらしい。そうした企てはただ我々の結束を強めることにしかならないと」「本日またしてもロシアがエネルギー施設の破壊を行った。明日(20日)より全国的に電力供給に制限がかけられる。7時から23時の間、電力使用を最小化するようオデッサ市民に求める」T

戦争宣言

もうひとつ19日ウクライナメディアを騒がせないでもなかった話題、珍老人がウクライナ4州は戦争状態であると宣言した。そらそうよ。お前が始めた戦争。だが依然としてキエフやスームィ、はたまたベルゴロドとかクリミアには戦争は存在しないのだ(あるのは「特殊軍事作戦」それのみ)。滑稽を通り越して陰惨。こんな妄言は無視して粛々と奪還を。

エカ像

オデッサ市中心部に立つ「市創建の母」エカテリーナ女帝像の撤去の是非をめぐるオンライン投票が20日終わる。20日朝の時点で撤去5に対し存置4てとこ。そもそも拘束力のない投票、決定機関は飽くまで市議会。まぁ撤去されるのだろう。投票ページ

10月18日

ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃が続いている。強調したいのだが、これは異常なことであり、犯罪であり、テロである。国家が正規軍を用い明白な意図をもって隣国の市民生活を破壊している。理解とか共感の完全に埒外の事象である。

18日朝、首都キエフ含む各地のエネルギー施設がミサイル攻撃を受けた(УП)。死者も出ている。

ゼレンスキーによると10日以降のエネルギーインフラへの攻撃により国内の発電所の30%が破壊されており、大規模な停電が引き起こされている。ウクライナ・エネルギー資源相によると、ロシアの目論見の一つは、ウクライナから欧州への電力輸出を不可能にし、欧州のロシア産ガスおよび石炭への依存を深めることにある(УП

個人的には、ウクライナ軍の強力な反攻で早晩ヘルソンが奪還されそう(УПУП)な情勢を踏まえ、可及的早期に(4州のなるべく大きな領土を実効支配した状態で)停戦合意を結ぶべく、市民社会に厭戦気分を醸成する目的でエネルギーインフラを破壊して回ってるのではないかと思う(※素人)。一連の攻撃は10日のウクライナ全土への大規模攻撃に始まる。このときプーチンはクリミア大橋爆破の「報復」としてこれを位置づけた。その「報復」とやらが今日いまだに続いているというのか。結局これも詭弁だったのだろう。冬の到来を前にウクライナのエネルギーインフラを破壊する計画ははなから存在したのだ。

【唐突にロシア語講座】
веерные отключения (света)=扇状停電。扇の骨をぱたぱた一本一本開いていくように地区ごと順繰りに計画停電していく。頃日報道で頻出

空を守れ

空の防備を固めることが急務。ドイツから供与され既にウクライナ南部の対空防衛に当たっている「IRIS-T」はその効力を遺憾なく発揮しているとゼレンスキー(УП)。「NATOの対ドローンシステムを数日中にウクライナに供与する」とNATO事務総長(УП

ウクライナ外相はイスラエルに対し地対空兵器の早急な供与を求めている(УП)。また外相は一方でゼレンスキーに対しイランとの外交関係を破断するよう呼び掛けている(УП

なお、ウクライナ国防省情報総局長官によると、①ロシアからイランに最初に発注されたドローンの数は1750機②ウクライナ軍のイラン製ドローン撃墜率は7割ほど③ロシアはミサイルが涸渇しかかっており「イスカンデル」型などは当初保有の13%と残弾僅少である(УП

オデッサ(JICA、横浜)

オデッサは無事だ。電気も水も普通にある。だが節電が呼びかけられてはいる。

オデッサ副市長とJICA(国際協力機構)および横浜市の代表者がオンライン会談、今後の協力および現状を踏まえたオデッサへの人道支援の可能性を討議した。副市長から日本側へ、ウクライナへの団結そして過去に行われた支援に対する謝意が述べられた由。中身のないニュース。T

ウクライナのクリスマスは12月25日?

ウクライナ正教会(Православная церковь Украины)は、戦時下であることおよび社会的な論争に鑑み、また信徒たちの要望を受け、2022年12月25日に降誕祭を祝うことを例外的に許可することを決めた(УП

伝統的に東方正教会では1月7日にクリスマスを祝う。ウクライナにはカトリックの信者も相当数いるので、ウクライナは12月25日と1月7日が両方国民の祝日である珍しい国である(ロシアは1月7日のみ)。特に今度の大規模戦争を機にロシア正教会とウクライナ正教会の離間は深まっている。今度のことも「ロシアと同じ日を祝いたくない」という願いの表れ。

ロシアとウクライナ、映画の未来

この両日あいついで映画の話題があった。ロシアは世界的な映画スタジオがロシア市場から一斉に撤退したことでコンテンツ不足になり、国内に5700あった映画館の4割が稼働停止している。以前はいつどんな映画を上映するか半年先の予定まで立ったが今は2週間後のことは誰にも分からないそうだ(УП)。一方ウクライナ国家映画庁はことし国産映画15本に対し2億グリヴニャ(8億円)の資金を投下する(УП)。戦時下でも文化振興にお金が使われている。

全然ちがう話なので比較にはならないが、衰退と発展の兆しに見える。

10月17日

自爆ドローンが首都キエフを襲いまた各地を襲った。エネルギーインフラが破壊される。電気が足りない。小学生の疑問:なんでロシアはこんなひどいことするの? なんでウクライナはこんなひどいめにあわなければいけないの?

キエフ

17日朝キエフ中心部でカミカゼ・ドローン4機が爆発、アパートが倒壊して4人死亡、うち1人は妊婦(УПУП)。悪魔の所業としか言いようがない。この攻撃を含め16日晩から17日午前にかけてウクライナ各地に43機のカミカゼ・ドローンが飛来、うち37機(86%)を撃墜(УП)。

ゼレンスキー「ロシアは戦場で勝ち目がなしと見て劣勢を覆い隠すためテロに走っている」(УП)。要するにそういうことなんだろう。

オデッサ

オデッサは飛んでくるドローンは片っ端から撃ち落としてるが海上発射のミサイルを一発インフラに食らった(ОЖОЖОЖУП

イラン

イランはウクライナ戦争に使う目的でのロシアへのドローンの供与を改めて否定(УП)。だがウクライナ側はイランの責任を追及(大統領顧問УП、外務省УП)、キエフのイラン大使館前では抗議行動(УП)。EUと米国は対イラン制裁を検討(УПУП

日本

ウクライナのエネルギー大臣と日本の駐ウクライナ大使が会談。日本側は損傷した重要インフラの復旧のために必要な設備を供与する用意があるとのこと。(УП

ちなみにだが、17日のキエフ攻撃を受けて、日本大使館は在留邦人向け下記メールを配信した。

登録解除してないので私のとこにも来る。ちなみに10日の大規模攻撃のあとも同じようなのが来た。

これと併せて館員から在住者へ各個電話がかけられ安否確認・退避の説得などが行われているものと思う。

正直あまり意味はないと思う。いままだ残っている人(数十人)は相当な理由があって残っているので、さすがに情報感度も高いであろうし、説得するにももう少しやり方があろう。説得案走り書き:一つには、ウクライナから日本に避難してくるウクライナ人に対する各種の支援(住居、物資、金銭)と同等のものを日本人に対しても約束する(現状、ウクライナから避難してくるウクライナ人は「ウクライナ避難民」としてわりと手厚い支援のプログラムが用意されてるが、ウクライナから避難してくる日本人は「ウクライナ避難民」でなくただの「帰国者」であって自助が原則である)。また一つには、日本人を配偶者に持つ徴兵適格のウクライナ人男性が特例的に出国できるように在ウクライナ日本大使館が死ぬ気でロビー活動する。①日本に帰っても基盤がないから②一家離散したくないからとて戦災国に踏みとどまっている人を各1人知っている。

モナコ

(見逃してたが)УПは8月に「モナコ連隊:コートダジュールで優雅に避難生活を送る金持ちウクライナ人たち」と題する特集記事・動画を出してセンセーションを呼んでいたそうで、このほどその続編が出た。余ってるカネあるならウクライナ軍に寄付しろよ、ということ。УП

今日のアネクドート

ОЖのお家芸、今日のアネクドート。

―オデッサの様子はどう?
―まーロシアが軽くNATOとモメてるよ
―どっちが勝ってる?
―ロシアは駆逐艦がポシャって兵隊が6万5000人死んで飛行機が250機落ちたよ
―でNATOは?
―それがよ、NATOはまだ来てもいねえんだ

同じ記事より、「ロシア系住民の保護」の戯画。

10月16日

夕刻の節電が呼びかけられてるウクライナ。オデッサ無事。

「原チャ」撃滅隊

イラン製カミカゼ・ドローン撃墜を任務とする「原チャハンター」なる機動部隊が組織されている由、その演習の模様が動画で紹介されてる→ОЖ

このドローンはその特徴的なモーター音から「原チャ」と俗称されている。「特徴的なあの音が聞こえたら、市民はシェルターへ。あとは我々に任せておけ」だそうだ。

その「原チャ」、イランからロシアへ追加供給があるとの報がある(Meduza)。イランとロシアはともに否定している。

督戦隊

заградотряды(заградительные отряды)=督戦隊(とくせんたい)。「自軍部隊を後方より監視し、自軍兵士が命令無しに勝手に戦闘から退却或いは降伏する様な行動を採れば攻撃を加え、強制的に戦闘を続行させる任務を持った部隊のこと」(Wiki

ウクライナ軍が傍受したとするロシア兵とその恋人?の通話。話者は意思そして契約に反して戦場に駆り出され「2列目」に立たされている。「1列目」が逃亡の兆しを見せれば撃ち殺すのがその任務。自分たちの後ろには「3列目」がいるようである。食うものにも事欠く劣悪な環境であるが「逃亡は現実的でない」УП

傭兵部隊

クレムリン御用達の飲食ビジネスを手掛け「プーチンのシェフ」の異名をとる実業家エヴゲーニイ・プリゴジンは自身が創設した民間軍事会社「ワグネル」のウクライナ戦争における活躍およびプーチンへの忠誠によって「ワグネル」軍の地位をロシア正規軍に優越させることを企てている、とのISW(米戦争研究所)分析(УП)。正副反転の試み。下剋上。ことによるとそんなことも起きかねない。

10月15日

良い……とあえて言う、ニュースが多い。たとえば:ベルゴロド(ロシア西部、ウクライナのハリコフは目と鼻の先)の演習場で銃乱射事件、ウクライナ戦争に投入予定の「志願兵」11人死亡(УП)。敵は本当にボロボロなのであろう。ゆっくり少しずつ終わっていっているのだと思いたい。ここを過ぎればあとは一気呵成に全部崩れるというポイントオブノーリターンが一歩一歩近づいていると。

Eマスク

マスクはなんだかんだウクライナへのスターリンクサービスの無償提供を続けてくれるようだ(УП)。Twitterでは「ロシアはスターリンク破壊に躍起になっており早晩破壊は達成されかねない」とも発言(Twitter)。これに対してはウクライナDX相「スターリンクのターミナルは過去現在未来にわたって機能し続け(てい)る」。何がどうなってるのか正直全然わからない。何しろ一連のアレで今ウクライナ軍の前線で機能している重要な通信インフラの存続が一人の私人(営利企業の経営者)に握られていることの危うさは露呈した。が、とりま「こっち側」でいてくれるようだ。

対カミカゼ・ドローン兵器

「シャヒード(※イラン製自爆ドローン)ハンター」と呼ばれる対ドローン装備の開発のための募金をウクライナDX省が呼び掛けたところ2昼夜にして予定の1.5倍の資金が集まった。一種の電波妨害装置らしく、ある高度以下のドローンを「盲目」にするのだそうで、その妨害圏から逃れようと高度を上げたところを地対空ミサイルで撃墜する手筈らしい。こうした装置をひとつ作るのに5000万グリヴニャ(2億円)かかるところ、今回は1億グリヴニャを目標に募金を行ったが、2昼夜で1億5000万も集まった。УП

敵はますます弱くなり、防備はますます硬くなっている、という印象です。素人の。

10月14日

12~14日の間、オデッサには単発ミサイルや数基のカミカゼ・ドローンが飛んで来ないでもなかったが、全部撃ち落としている。だが例えばお隣のニコラエフには13日未明に一挙8発のミサイルが撃ち込まれてアパートが被弾し8人が死亡(УП)、うち1人は11歳の少年、瓦礫に埋もれた状態から6時間かけて救出したが夕刻病院で死亡した。野蛮と無道が続いている。

さよならイーロン

オデッサのビルボード(街中とか車道に掲げられる広告)からイーロン・マスクの肖像がBANされた。戦争初期スターリンクという衛星インターネットサービスを提供してウクライナの通信環境を支えてくれたイーロンはディカプリオ(その祖母の一人がオデッサの人)他とともに「ウクライナへの支援をありがとう」広告で顕彰されていた。このほどTwitter上で例のトンデモ和平案を提唱するなど一連の不穏な動きを見せキャンセルの憂き目にあった。ОЖ

わるい話(頓風珍)

プーチンのアスタナ演説(Meduza)。①ロシアの部分動員は予定していた30万人中22万人が集まっており今月一杯で完了する、総動員は予定なし。②我々の目標はウクライナを滅ぼすことではない、クリミアの安全を保障することだ。③(10/10のような)大規模攻撃の必要性は今のところない、破壊を計画していた29施設のうち7つが未達、これを段階的に破壊していく。

オデッサにも言及。クリミア大橋を破壊した爆発物はオデッサ港から海路で運ばれた疑いがあり、これが事実なら、現在行われているオデッサ港からの穀物輸出の安全に対する相互保障は破綻するであろうと(УП)。

正当性とかもっともらしい数字についてロシアがどんな錬金術を用いるかは先のムーミン投票で天下に知らしめられたところ。問題は空虚な論拠および数字から現実のミサイルが飛び物理的な破壊が行われるということだ。オデッサに変な言いがかりがつけられていてそら恐ろしい。再び海上封鎖しウクライナ産穀物の輸出を不可能にしオデッサ諸港を攻撃する魂胆かと疑われてならぬ。

いい話

ドイツから供給された対空防衛システムIRIS-Tがすでに南部某所で稼働しているそうだ。УП

ゼ:10日の大規模攻撃で破壊された各地のエネルギーインフラのうち15施設は完全に復旧した。とはいえ夕刻ピーク時の節電は必要だ。УП

クリミア大橋の復旧は来年7月までかかる。УП

ウクライナ国防相:ロシアの非軍事化が進んでいる。ロシアは保有していた高精度ミサイルの3分の2をすでに消費した。具体的には、「イスカンデル」900発のうち776発を、「カリブル」500発のうち228発を、空中発射式の「Х-101」および「Х-555」については444発中231発、総計して1844発中1235発を用い、残りは609発しか残っていない。УП

ウクライナの英雄

ウクライナの全歴史を通じて最も傑出したウクライナ人は誰か、という世論調査(УП)、自由回答。1位は国民詩人タラス・シェフチェンコ(63.9%)、2位はウラジーミル・ゼレンスキー(29.8%)だった。なお、3位はレーシャ・ウクラインカ(19,6%)、4位はボグダン・フメリニツキー(17.3%)、5位はステパン・バンデラ(12.8%)。論争的な人物が並ぶ。

10月11日

11日もミサイルとドローンを組み合わせたインフラへの攻撃が全土に加えられたが規模は10日ほどでなく、従って被害も。ゼレンスキーの夕刻のビデオメッセージによれば「飛来したミサイル28日中20発を撃ち落とし、無人機15機(ほとんどがイラン製)の大部分を撃ち落とした」「エネルギーインフラの再稼働は迅速かつ高効率で進んでいる。10日の攻撃により寸断した電力ならびに水の供給、通信はほとんど復旧しかかっていたが、11日の攻撃によりそれがわずかに遅れることになった。それだけだ」(動画)。なおウクライナエネルギー相によれば、両日の攻撃でウクライナのエネルギーインフラの3割が損害を受けた。」ロシアの狙いの一つはウクライナのエネルギーの欧州への輸出を止め、欧州のロシア産ガス・石炭への依存をより高めること」(УП

オデッサは無事であった。上空で5発のミサイルを撃ち落とした由。ОЖ

なお、オデッサでは二日続きで一回の空襲警報の最長時間が更新された。10日が5時間5分で、11日は5時間12分(7:40~12:52)。なお、2月25日以降オデッサ州では478回、総計387時間にわたり空襲警報が鳴り続けたそうだ。ОЖ

お隣のニコラエフのキム知事がロシアのミサイル戦術について興味深い仮説を立てている。敵の攻撃が散発的でウクライナ側の迎撃率も上がっていることについて「仮説1:空襲警報を長引かせ市民をなるべく長時間地下壕やシェルターに閉じ込めることで精神的に消耗させようとしている。仮説2:敵はわが軍の対空防備を瀬踏みしている。防備手薄なポイントを見つけてそこに集中砲火を浴びせる狙いだ。仮説3:単に敵軍は没論理な愚物どもの集まりである。これも大いにあり得ることだ」УП

世界遺産

オデッサの世界文化遺産への自薦書類一式がパリのUNESCO本部に届けられた。ОЖ

オデッサ市長(右から2人目)がわざわざパリに行った。

オデッサの世界遺産登録はいよよ目前だ。ユネスコ執行部会議にゼレンスキーからもメッセージ(動画)。ロシアの攻撃によりウクライナの教育施設や文化遺産がどれだけ傷つけられてきたか、今後もどれだけ傷つけられなければならないか。このような状況でオデッサの世界遺産登録は待ったなしである、と。ゼレンスキーは併せてロシアがユネスコから除名されていない現状を非難した。どうしてウクライナの学校を破壊し子供たちから教育の機会を奪い人類全体にとって価値あるウクライナ国内の文化遺産を破壊するテロ支援国家にユネスコ(国連教育科学文化機関)の庇護を受ける権利があるのか、と。УПУП

10月10日

悪い一日だった。

首都キエフを含むウクライナ全土に大量のミサイルが降り注いだ。爆発音。市街地が燃え、発電所が破壊されて各地で電力・水の供給が止まった。市民生活を標的とした余りに理不尽な猛襲と破壊。これをテロと断じるのに何のためらいもない。

数字

10日22時(現地)時点で14人死亡、97人負傷(УП)。敵が使用したのは84発の巡航ミサイルと24機のドローン(うち13がイラン製自爆ドローン)。うち、ミサイル43発と無人機13機(うち10機がイラン製自爆ドローン)を迎撃した(УП)。電力供給は同日中にだいぶ回復したがそれでも21時時点で1300あまりの自治体で停電中(УП

オデッサは

オデッサは無事であった。オデッサに飛んできた3発のミサイルと4機のイラン製ドローンは全部撃ち落とした(ОЖ)。オデッサの地対空部隊が優秀すぎる件。とはいえ他の地域での電力逼迫を緩和するためにオデッサ市民にも夕刻の節電が呼びかけられた(ОЖ)。あわせて、今後の断水に備えて水道水・飲用水の備蓄が推奨されている(ОЖ

フェイク砲

物理的攻撃にあわせてフェイク砲も発射された(ОЖ)。やれゼレンスキーは逃げたの、ベラルーシから侵攻が始まっただの、全前線からロシア軍の侵攻が始まっただの、ウクライナのインフラは完全に破壊されただの。市民社会に混乱を引き起こそうとする試み。事実は、ゼレンスキーは首都に留まったし、敵は陋劣な飛び道具攻撃で一部インフラを破壊しただけだった。これが敵さんの「ハイブリッド戦争」だ。憫笑あるのみ。

被害リスト

敵の高精度弾とやらが破壊した住宅、オフィスビル、歩道橋、インフラ等のリスト→Meduza。キエフ行ったことある人なら写真を見れば「あ、ここ!」と分かるような場所もある。

モスクワ市民の声

プーチンは今次の大規模攻撃はクリミア大橋の一件の報復であると事実上認めている。両事象の関連性について、NHK記事の「モスクワ市民の声」に絶望した。「さまざまな声」があったとして下記4件が紹介されてる。

余波

バイデンとゼレンスキーが電話会談して、前者はウクライナに先端的地対空兵器を供与することを約したという(УП

何丘ぼやき:
私などはクリミア大橋爆破に喝采を送ったクチだが正直、冷や水を浴びせられた。これほど均衡を失した圧倒的「報復」が行われるとなると、二の矢三の矢を橋に放てとはちょっと言えなくなる。地味に東部南部奪還を進めて戦果を上げてほしいとは願う、そうなることは信じているが、クリミアはしばらく放っておいたほうがいいのではと思ってしまう。抑止とはこういうことか。「となりのせきのますだくんの大切にしてるえんぴつを一本おってやりました。その晩、ますだくんがうちへやってきて、わたしのへや、ママのへや、リビングのきぶつをめちゃめちゃに破壊しました。明日、二本めをおってやろうとおもいます」こんなメンタルを持てるのだとしたら怪物はむしろますだくんでなくみほちゃんの方だろう。

10月9日

プーチンによればクリミア大橋の破壊はウクライナの特務機関が計画・実行したものであり「テロ」だ(УП)。キエフのTV塔、クラマトルスクの駅舎、クレメンチュクのショッピングセンター、ニコラエフの州庁舎、オデッサの集合住宅、何千枚の写真を示してじゃあこれはテロではないんですか、じゃあこれは…と問い続けうる。そもそも存在すべきでない橋。クリミアの併合後にプーチンが勝手に架けた。この戦争ではウクライナ南部攻撃の重要な補給路となっていた。

オデッサには変わらずカミカゼ・ドローンが飛んできてるが撃ち落としている(УП)。何の意味があるのか誰か教えてください。ただ毎日飛ばしてきて撃ち落とされ続けている。千度め思い出す、戦争は人間の顔をしていない。

10月8日

クリミア大橋で爆発。すげえことをやるものだ。ウクライナ側は公式に関与を明言していないが関与してないわけもない。敵陣奥深くでプーチンの誕生日の翌日を狙ってよくもこんな大それたことができたものだ。その手腕に驚嘆する。

上の地図でヘルソンからザポリージャにかけての青い水域から右下は全部ロシアの支配地である。飛び道具(ミサイルだのドローンだの)をそんな遠くから・かつ広大な敵支配地を横断して飛ばせるとは考えられない(※素人)。破壊工作……通行する電車ないし自動車に爆発物を積んで起爆? 当然検問はあるのだろうが、それをかいくぐって。起爆は遠隔で、それとも自爆、それこそカミカゼ?

クリミア半島とロシア本土を結ぶこの橋は重要な輸送路(鉄道+自動車道)であると同時に、2014年以降のクリミアのロシア支配(クリミアとロシアの「一体性」)を象徴するものであり、これを破壊した意味は大きい。

↑MAXARの衛星写真。自動車道の方の片側車線が一部崩落した。鉄道の方も燃えてるが同日中に鉄道便は再開したとのこと(УП

本件をプーチンへの誕生日プレゼントと受け取る向きもある。7日、独裁者は古希(70)を迎えた。круглая дата=カドのとれた日付といって、ロシア人は5で割り切れる年を祝うのを好む。7日当日にはロシアの反体制メディアへのノーベル平和賞授与というのもあったがこちらは「やっぱノーベル委員会反露だな」で済ませられたかもしれない。だが「クリミアとロシアの絆」の物理的破断はさすがにこたえたろう。

ウクライナ国営郵便は本事象を祝して新たに記念切手を発行することを発表した。УП

こうした戦果の陰には失敗に終わった数々の試みがあり死んでいった数多のウクライナ兵士がいたことだろうと思う。2月24日にロシアが侵略を始めなければ死ななくてよかったウクライナの若者たち。ウクライナ戦争について何か感情が動くたび必ずその感情は怒りへと回帰していく。

10月7日

7日の晩方オデッサおよびニコラエフに3機のカミカゼ・ドローンが接近したが全部撃ち落とした。ОЖ

「教授」に実刑

2か月前に逮捕された対敵協力者(コードネーム「教授」、オデッサ市民)に実刑判決、資産没収をともなう15年の禁固。ОЖ

本件については前の記事で触れた(8月3日の項)。男はウクライナ軍の兵員・装備や駐屯地、司令部の所在、ミサイルの着弾地について情報を集め、それをテキストや写真、動画の形でほぼ毎日ロシア側の諜報機関に譲渡し、金銭的な報酬を受けていた。さらに男は自分のような「ロシア世界」シンパを糾合したスパイネットワークをウクライナ南部に組織していた。ロシアの特務機関からは「教授」というカッコいいコードネームを与えられていた。

男は容疑を全面的に認め(拷問がなかったことを祈りたい)、共犯者について有益な自白を行ったとかで量刑を軽くした。男の組織したネットワークは完全に摘発されメンバーは8月初頭に逮捕された。

なお、本件はウクライナの元国会議員でプーチンのお友達である(最近こいつをロシア側に明け渡す見返りにアゾフ大隊の戦士を大量に取り戻した)ヴィクトル・メドヴェッチュクの国家反逆罪捜査で明らかになった対敵協力者ネットワークの一つだという。IMODZURUとはこのこと。

笑顔の日

10月7日は国際「笑顔の日」だったとかで、ОЖが街の人に「戦時下で笑えてますか、あなたに笑顔をもたらすものは何ですか」と聞いて回った。

小さなことに喜びを見いだす日々。ただ生きてあることがひときわ貴く感じられる。同じ国同じ街に暮らしている他人たちへの親しみが増した。子供たちこそは日々の心のかて。この戦争が終わるかもしれないと期待を抱かせるあらゆるニュースが笑顔の種。

(OFUSEで2000円集まったら全訳します)

何丘に「投げ銭」してみる

アネクドート

ОЖのお家芸「今日のアネクドート」。けちなユダヤ人と並んでオデッサジョークにはよく「馬鹿なブロンド女」が登場する。

Разговаривают две блондинки:
– Я нашла хорошую работу – делать ничего не надо, только болтаю, и платят неплохо.
– Кем же ты работаешь?
– Натурщицей.
– С тебя пишут картины?
– Нет, с меня пишут анекдоты.
ブロンド女が2人しゃべってる。
「いい仕事見つけたわ。なんもしなくていいの。ただくっちゃべってればいいの。それでいいお給料もらえるの」
「なんの仕事?」
「モデル」
「絵か何かの?」
「いいえ、私をモデルにアネクドート作るの」

10月6日

朝な夕な空飛ぶバラライカあるいは「殺人原チャ」ことイラン製カミカゼ・ドローンが飛んでくるが、高確率で撃ち落としていて、少なくともオデッサには全く被害がない。とはいえその撃墜行為や、または不発弾処理にともなう爆発音が市中に間歇的に鳴り響くいやな日常だ。ОЖОЖ

ロシア軍がウクライナ各地に送り込んできたカミカゼ・ドローンは6日夕方時点で累計86機に上り、ウクライナ軍はこの6割を撃ち落としているということだ。体感、その確率はだいぶ上がってきている。УП


ウォールストリートジャーナルによれば、ロシアはいまやウクライナへの最大の武器供給国だそうだ。先のキエフ方面からの撤退と今次のハリコフからの遁走によってロシア製の重火器がごっそりウクライナ軍の手に落ちた。それら兵器は西側のものに比べ旧式で低精度だが、単純に量でいってロシアからの兵器の「供給」は欧米によるそれを今や著しく上回っている由。УП

10月5日

5日未明オデッサにイラン製カミカゼ・ドローン2機飛来するも撃ち落とす(ОЖ

ゼレンスキー、定例のビデオメッセージでロシア人に対しロシア語で「今お宅が攻撃に使ってるイラン製ドローンに類する武器を世界のどこから調達してこようとも甲斐がない、あんたらはもう敗けている。なんで敗けたか。戦争始まって224日も経つのに未だに何でこんな戦争が必要なのかを説明できないでいるからだ。虚偽にまみれた動員、国民の発展の可能性を自ら台無しにするこの行いが一体何のために必要なのかを」УП動画

同じビデオメッセージで、ヘルソンで新たに3つの集落が解放された由。

世界遺産へ

「オデッサ 世界遺産への道」と題するYouTube動画が出た。英語字幕付き。

オデッサ中心部のいいとこが収められてる。オデッサの多文化性。歴史を通じて(帝国主義・共産主義の時代にあってさえ)自由の気風を保ち、多くの民族が共存し多くの言語が話された土地、今も。こんな街はウクライナのどこにも、いや世界のどこにもない。この街が野蛮な力によって破壊されないよう、オデッサはUNESCOの庇護下に入らなければならない……。

という中にロシア語・ロシア人・ロシア文化への言及なし。紹介される「オデッサが排出した世界的文化人」ウチョーソフはロシア語で歌いジュヴァネツキーはロシア語でしゃべっているが。トゥルハーノフ市長が前半(3月時点)ロシア語でしゃべっているが最近の映像ではウクライナ語をしゃべっていることに注目。これがウクライナの正史となる。なるほどこの正史にとってエカテリーナ女帝像は邪魔だろう。プーシキンも撤去なさい。

10月4日

オデッサにイラン製の自爆ドローンとか偵察ドローンとか飛んでくるのだが撃ち落としている。ОЖОЖ

オデッサの全体的な状況についてオデッサ州軍政報道官ブラチュク兄の朝の定例報告を引く(ОЖ
・さて昨晩も空襲警報がオデッサ市・州全域に鳴り渡ったわけですが
・ミサイルおよびカミカゼ・ドローンによる攻撃の脅威は依然として非常に高いです
現在黒海には5隻の敵ミサイル艦がいて、これらに総計32発の巡航ミサイルが搭載されているものとみられます
・敵は(無人偵察機による、攻撃目標策定のための)空中からの偵察を活発化させております
沿ドニエストルでは現在動員が試みられています。沿ドニエストルからのオデッサ攻撃あるのではないかと噂されています
・ですが沿ドニエストル方面に第二の戦線が開かれることはないでしょう。ウクライナ軍の実力をよくわかっているのでロシア人どもが秘密裡に動員をかけようとも誰も応召しないでしょう。気にすることはないです
・対敵協力者、アジテーター、エージェントどもの摘発と逮捕が進んでいます

オデッサを世界遺産に

オデッサ旧市街の世界遺産登録へのプロセスが着実に進んでいる。自薦のための書類一式が完成し、市長よりウクライナ文化相に手渡された。これがパリのUNESCO本部に提出される。ノミネートの基準は「ユニークな多文化性」「ユニークな都市景観設計」の2点だそうだ。ОЖ

エカテリーナ女帝像撤去に関する市民投票

市中心部に立つ「オデッサ創建の母」ロシア皇帝エカテリーナ2世像の撤去の是非をめぐる電子投票が行われている。こちら

今月20日まで続くのだが、途中経過を見てみると(泡沫選択肢は無視)

・完全撤去 3281票
・完全存置 586票
・存置。ただし、エカテリーナ2世の事跡についての案内板を併設する 2430票
・存置。かつ、特別な記念公園ないし博物館に移設 300票

最後の選択肢は「残す。ただし撤去する」という意味わかんない選択肢で、到底練られた投票とは思えないし、投票途中というのに市議会では撤去の是非をめぐる発議がなされたりして(無効に終わったが)、そもそも何の意味があるのかわからない。あっちもこっちも、投票ヘタか。

それが今日ある場所に明日もエカテリーナ女帝を見ていたいか否かということで割ると、「見ていたくない」は第一と第四の選択肢を足して3581票、「見ていたい」は第二と第三を合して3016票。前者リードだが組織票入ればどんだけでも動くという感じがする。結局決めるのは市議会なんだけど。

南部奪還

ウクライナ軍の発表ではヘルソン州で新たに8つの集落が解放された(УП)。ゼレンスキー「ウクライナ軍は南部において迅速かつ強力な進軍を続けている」(УП)。南部での反攻が急速に戦果を上げることを切望している。ムーミン投票が行われた領域に(にもかかわらず)攻撃が行われ奪還されていきけれども核は使われなかったという既成事実が急速に築き上げられていってほしい。それが今何より大事なことと思う。

にしてもロシアによる核の恫喝に対し「唯一の被爆国」日本の非難の声が国際社会にガンガン響き渡っていなければいけないと思うのだが最大火力を出しているだろうか。政府、広島、長崎。あえて言うが。

10月3日

オデッサ無事。

対敵協力者の逮捕の報は絶えない。A:男がオデッサ域内におけるウクライナ軍の配置・移動について敵諜報機関に通知してた(ОЖ)B:医者の父娘が開戦以来SNSでロシアの侵攻を支持しウクライナをおとしめロシア軍を美化するポストを繰り返してた(ОЖ

この時間(10/4午前8時、現地時深夜2時)УПのトップニュースはイーロン・マスク。開戦初期にスターリンク(衛星インターネット)供与でウクライナの恩人になっていたマスクがTwitterでロシアのクリミア占拠を擁護する(他、驚くべき「和平案」を示す)ポストを行いウクライナ側に反発あるいは困惑を呼んでいる。

マスク「宇露和平:①国連の監視のもと被占領地域で正当な選挙を行いそれが人民の意志であればロシアは去る②クリミアは1783年以降(フルシチョフのミステイクに至るまで)そうであったように形式上ロシアの一部にとどまる③クリミアへの水の供給は保障される④ウクライナは中立を維持する」(Twitter)。これ以降の一連のポストでもウクライナには勝ち目はないから和平の道を模索すべきだ、で落としどころはおおよそ上記のところになるだろうと自説。

これに宇大統領顧問ポドリャク「よりよい和平案:①ウクライナは併合されたクリミアを含む自らの領土を解放する②ロシアは非軍事化および強制的非核化を経て他国に脅威をもたらす存在でなくなる③戦争犯罪人の国際法廷出頭」(УП)外相クレバ「(前略)『和平』という言葉によってロシア人がこの上なお数千人の罪なきウクライナ人をレイプしさらに多くの領土を掠奪することを糊塗するな」(УП)ゼレンスキー「ウクライナを支持するイーロン・マスクとロシアを支持するイーロン・マスク、あなたはどっちが好き?」(Twitter

10月2日

オデッサ無事。存在しない架空の生き物たちによる無意味な「ムーミン投票」を無視してウクライナ軍は東部の要衝リマンを奪還、逆にロシア軍あっさりリマン手放しすぎじゃないかということでISW「プーチンは東部より南部の支配を固めることにプライオリティを置いている」とのリポート(УП)、それは困るなと思ったが、ゼレンスキー「わが軍の戦果はリマンにとどまらない」とし(УП)、後刻ヘルソンで複数の村落が解放されたことを発表(УП)。トルコではウクライナ海軍のコルベット艦とやらの進水式が行われたとかで(УП)、ウクライナ南部が少しずつ安全になっていくことを期待したい。

10月1日

10月はウクライナ語でЖовтень(黄葉月)。オデッサを象徴する木である白アカシアの葉が黄金に色づくころ。

1日未明オデッサ州にミサイル攻撃、イスカンデル型2発、工場が被弾し、変電所と近隣の建物が損傷した(ОЖ)。ミサイル着弾は久しぶり。8月半ば以来ではないか。まだこんなん飛んでくんねや……

9月30日

JR只見線が全線で運転再開

JR只見線がきょう全線で運転再開した。めでたい。NHK

テアトル梅田 32年の歴史に幕

大阪・北区のテアトル梅田が32年の歴史に幕、ファンが別れ惜しんだ。ざんねんだ。NHK

こうした重大ニュースの裏側で、誰も読まない国際欄の片隅に、ロシアの頓風珍とかいう老人が「あれとあれとあれははわしのもんじゃあ」と叫んだとかいうどうでもいいニュースが伝えられた。(日本のマスコミ、「併合した」はやめてくれませんかね。本当にそのような客観的事実が発生したかの印象を与えるでしょ。併合を(無意味に)「宣言」←この宣言という語はせめて必ず付してください)

ウクライナ、NATOに加盟申請

ウクライナがNATO早期加盟に向けた申請を行った。「両者の間にはすでに十分な信頼関係と協力実績がある。この事実上の関係を法律上のそれへと格上げするための申請だ。これは決定的な一歩だ」УП

ウクライナは事前にNATO側と協議を行った上で申請に及んだということだ(ポドリャク大統領補佐官、УП)。だが米大統領府やNATO事務総長は加盟するしないより今は具体的にどういう支援を行うかという問題が先だという立場を示す(УПУП)。

何しろ明らかにロシア側の某発表にタイミングを合わせてきた。重大発表返し。あえて意訳すると核の恫喝の応酬が行われたのだ。併合するから今後は核あり得るよ!と一方が言ったのに対し私たち、核の傘に入りま~す!と他方が宣言した。だがすでに持ってる奴と今持ってない奴の恫喝力はやはり大分水をあけられていると言わざるを得ないのでは。ゼレンスキーが30日重大発表を行うという話は前日から出ていて、もしかして「私たち実はもう、核、持ってま~す!」とか言うのではないかと妄想していた(そんなことがあり得るだろうか。あり得ただろうか)(一発の核で千発を抑止できるのだろうか(であれば……))

なお、本件に関し、その名を出すのも穢らわしいロシア元大統領メドヴェージェフ(現安全保障会議次長)、「ゼレンスキーがNATO加盟の加速を望んでいる。すばらしい考えだ。NATOに対し第三次世界大戦の開始を懇望しているということだ」とゾッとするような冷笑。これがかつて若い開明派のリーダーと言われた人の今の姿だ。またNATO事務総長の「戦うことをやめればウクライナという国は消滅してしまう」という言葉を受けてメドヴェージェフ、「なんと皮肉な坊やだこと。むしろ戦うことをやめなければウクライナ人の大半が消滅するというのに」(УП)。ここで消滅という語をつかうおぞましさ。消滅「する」のではない。お前が「殺す」のだろう。同じ数だけ自国民を殺しながら。

オデッサにまたバラライカ飛来

29日の遅い時間にウクライナ南部に7機のカミカゼ・ドローンが飛来した。5機がニコラエフへ、2機がオデッサへ。ニコラエフは3機を撃墜、しかし2機に市中の爆発と破壊を許した(行政機関の建物とインフラ設備にそれぞれ命中)。オデッサにきた2機は両方とも撃ち落とした。

このイラン製自爆ドローン、その形状から、ちまたで「バラライカ」と通称されているらしい。空飛ぶバラライカ。

あと「原チャ」と呼ぶ人もいるらしい。ОЖ

これにて9月の報告を終わります。この記事に価値を見いだしてくださる方、「投げ銭」というものをいただけると、実は大変たすかります。下記ボタンより100円~。金額の半分の文字数、コメントもお書きいただけます。

何丘に「投げ銭」してみる

ログインなしのコメントにはお返事ができない仕様で、またお返事には200字の制限があり、しばしば意を尽くせません。返事が遅れがちなことも含め、この場でお詫び申し上げます。ねここと「紫の薔薇の人」、多額の投げ銭を恐れ入ります。「子育て日記」で太郎の成長を気にかけてくださっている皆さま、ありがとうございます。太郎は今日も元気です。
ゴルバチョフの逝去について取り上げなかったのはなぜかというご質問がありました。端的にいって、日本語メディアで十分大きく報道されており、当ブログとして付け加えるべき観点は特にない、と思ったからです。基本的に、本記事をロシアらへん情勢とかウクライナ戦争の唯一の情報源とすることはおすすめしません。実はそういう読者も想定しないこともないのですが(つまり、網羅性ということを全く諦めているわけではない)、ほぼ常に力が及びません。飽くまで一般報道を補足するものと捉えていただくのが健全かと思います。

あと(話長くてすみません)、コメントの中でオデーサとの表記をとられることは全く気にしません。オデーサと呼び慣れている人はオデーサと書いてください。むしろオデーサについて聞かれているのにオデッサについて答える偏屈さをお許しください。かつては「正しくはオデッサだ」と考えていましたがいろいろあってよくわからなくなった。今はただ私個人として「ロシア語を話すウクライナ人」を代表しているというつもりです。まさにそういう人であるたとえば私の義父というものがあって、彼の立場を日本でせめて私一人くらいは守らなければならないというふうに考えるに至った。そういうわけで今後も一抹の抵抗感をおしてリヴィウをリヴォフと呼びジョージアをグルジアと呼びますが、別に誰にも推奨したりしません。

9月29日

ロシアは動員による新戦力を用いてオデッサ制圧を試みる、とのBloomberg報道にオデッサ州軍政報道官コメント、敵上陸の危険は常にあるわけだが防備は十分、さしあたりイラン製カミカゼ・ドローンと洋上からのミサイル攻撃を警戒しとけばいい、ドローンへの対処法も策定中である、要するに状況に本質的な変化はないと。ОЖ

対敵協力者の話。今度のはひどい。もろもろもの親ロシア的アクションに手を染めていたエージェント3人が逮捕された。例によってウクライナ軍の拠点に関する情報を敵に伝えて砲火の誘導を行っていたほか、治安機関の内部にスパイネットワークを築こうとしたり、建物に「ウクライナはロシアの街」と書かれた三色旗を掲示してみせたり、

また10月某日のプーチン誕生日にお祝いのイベントを催す計画もあったそう。ひどいのは、のちロシアがオデッサを占拠したあかつき占領当局に渡す目的で、親ウクライナ市民の個人情報を集めていたらしい。さらに、ロシアによる軍事侵攻を支持しない市民を拉致し、地下室に監禁して、麻薬物質と物理的暴力を用いて「不動産の名義変更その他貴重品の譲渡」を強制する計画もあったとか。ОЖ

ロシアの世論調査

Levada Centerの9月末の調査が発表された。調査期間は9月22~28日。なおロシアで動員令が出たのが21日。

●プーチン支持率

「支持」83%で高止まりしてたのが、9月は77%まで落ち込んだ。「不支持」は15~16%で来てたが、これも21%まで上がった。多いと見るか少ないと見るか。Levada

●戦争支持率

「ウクライナにおけるロシア軍の行動を支持するか」との問いに、「明確に支持」「どちらかというと支持」が合わせて72%、「明確に不支持」「どちらかというと不支持」が合わせて21%。先月は76:17、先々月は76:18だった。Levada

●動員について

「動員令にどのような感情を喚起されたか」との問いに対しては、「危惧、恐怖、嫌悪」が47%、「ショック」が23%、「ロシアへの誇り」が23%、「怒り、憤慨」が13%、「特に何も」が9%。


何丘個人の所感としては、全体として今回の調査結果に……少し落胆。

9月28日

28日オデッサは静穏であった。オデッサに対して攻撃は行われなかった。

エカテリーナ女帝像の撤去について市議会で投票(?)

ちょっと意味わかんないような話なのだが。28日オデッサ市議会の本会議が開会し、そこで「『創建者たちに捧げられた記念碑(エカテリーナ女帝像含む)』の撤去、およびその歴史博物館への移設」の是非を問う投票が行われた。出席40人(総数63人)中、賛成17票、反対0票、残りは棄権。賛成が総議員の過半数を占めなかったためとりあえず存置ということに。ОЖОЖ

像の撤去の是非については10月20日まで市民による電子投票が行われ、その結果を受けて市議会が最終決定するということだったはずだ。電子投票はげんに今も行われている(こちら)。撤去賛成がリードしてるが、反対の声もほぼ拮抗している。議会はなぜひとまずこの終結を待てなかったか。

オデッサと水

オデッサ州トップとユニセフの代表者が水の供給について話し合った。オデッサできれいな水が安定して得られるよう、地下水の取得、給水管の整備についてユニセフの協力をあおぐという(ОЖ)。姉妹都市横浜からもらった浄水装置について言及なし。隣のニコラエフにあげちゃったから。一応この浄水装置のその後をフォローするのを責務と感じていたがもうオデッサ側のメディアで言及されることは今後ないのかもしれないな。ニコラエフのローカルメディアを追わないといけないか。

「ザポロージエの投票率は0.5%」

ロシアに占領されているメリトポリ市(ザポロージエ州)の市長によれば、先の「住民投票」においてザポロージエの支配地域で実際に投票を行ったのは市民の0.5%に過ぎないそうだ。市長によると、ウクライナ政府は今も被支配地域のウクライナ人に向け年金も社会保障も公務員の給料も払い続けている。また、市民有志からの電子的な通報によって、対敵協力者の氏名は完全に把握していると(УП)。頼もしきこと。

正義が行われてほしい

キエフ国際社会学研究所の調査(УП)。「戦争終結後どういうことがあったら(なかったら)あなたは大いに落胆するでしょうか」

ロシアがその行った犯罪について処罰されない……65.8%
汚職の蔓延……36.3%
生活水準が低い、貧困……34.6%
出ていったウクライナ人がウクライナに還ってこない……24.7%
ロシア人やベラルーシ人が移住してくる……19%

9月27日

対空防衛チームに拍手。27日朝イラン製カミカゼ・ドローン3機飛来するも3機とも撃ち落とす(ОЖ)、夕刻2発のミサイルが黒海洋上からオデッサへ発射されるも2発とも撃ち落とす(ОЖ

こうした攻撃の誘導に当たっていたオデッサ州域内の対敵協力者が一人逮捕された。男はウクライナ軍拠点や重要インフラ等の攻撃目標の位置情報をメッセンジャーアプリを用いてロシア側に秘密裡に伝達していた(УП)。

ウクライナにいながらにしてロシアのプロパガンダに屈しオデッサはロシア軍によって解放されロシア連邦に編入されるべきである(そのために必要な破壊は甘受する)と考える驚くべき人々と、かねてロシアの諜報機関は金銭授受をともなう協力関係を結び、得られた情報を作戦立案に役立てている。情報提供者がウクライナ側特務機関に属する覆面工作員である可能性もあるわけだから、むろん複数の報告をすり合わせて情報の真偽を確かめるのであろう。つまり、今回の一人を捕まえても、まだいくらでもいるのである。ごきぶり。1匹見たなら30匹はいるという。

オデッサ港からの穀物輸出

頓風珍とかいう狒狒爺が、もといロシアのプーチン大統領が、①ロシアの穀物は今年せっかく豊作なのに西側の制裁で輸出できない、②オデッサ港から輸出されるウクライナ産穀物はけっきょく最貧国を素通りして欧州に入っている、③そもそも何か月にもわたってオデッサ諸港を封鎖して穀物を輸出できなくしていたのはロシアでなく西側であった、結論:世界食糧危機を引き起こしているのは西側である。と述べたとかで(УП)、さらに悪いことに国連とともに8月穀物輸出再開の仲介者となったトルコのエルドアン大統領もこの見解を支持しているらしい。ウクライナ側はもちろんこれを真っ向から否定。ゼレンスキー「ロシアはあえて虚偽の発表を行うことでウクライナからの穀物輸出を再度停止するための土壌を作ろうとしている。輸出に関するデータは完全に透明で、誰でもアクセスして確かめられる状態にある。それによれば、これまでウクライナの3つの港から232隻の船が500万トンを輸出し、アフリカ諸国のうちアルジェリア、エチオピア、エジプト、リビア、ケニア、ソマリア、スーダン、チュニジアにウクライナ産穀物が輸出された」(УП

もちろん侵攻開始以来オデッサ港を海上封鎖して穀物輸出を不可能にしていたのはロシアである。ロシアが蛇島を奪還されてオデッサ上陸を諦めざるを得なくなった直後に穀物輸出合意がなされ、合意がなされるやすみやかに輸出が始まった経緯を忘れるべきでない。難癖をつけて穀物輸出を停止させ再び海上封鎖を行い、海上からのオデッサへのプレッシャーを再び強めることがロシアの狙いか(だったら最悪だ)

住民投票とかいう

3幕ものの喜劇。第1幕、投票。第2幕、開票(←今ここ)。第3幕、併合。ゼレンスキー「占領地を舞台としたこの笑劇は住民投票のイミテーションと呼ぶことすらおこがましい。『結果』と称してどんな画が描かれるか我々は前もって知っている。諜報機関も特段の努力を必要としなかった。この笑劇のためにあらかじめ調整された数字がマスコミ報道に出ていたから」Meduza

あやしき「国際選挙監視団」について詳報、興味あれば→УП

国外脱出

ロシアからこれまで何人が徴兵忌避で隣国に逃れたか。Meduza

各国警察ないし国境警備の発表で、カザフスタン10万、グルジア5万、フィンランド4万、モンゴル4万。

ロシア連邦からグルジアに入る唯一の国境通過ポイントには長蛇の車列、怒号が飛び交い掴み合いが演じられるちょっとした地獄だそうだ。んで国境のところにロシア側の徴兵事務所が構えられ徴兵適格者には召集令状が発行されている由。Meduza

富裕層はプライベートジェットで国外脱出を図る。アルメニア、トルコ、アゼルバイジャンといったビザなしで行ける国が人気で、平常なら1日あたり50件程度の利用申請が現在は5000件だそうだ。料金は130万ルーブル(320万円)~。Meduza

んで貧乏人はSUPで越境? ロシア・エストニア国境のナルヴァ川をSUPで渡って不法越境した38歳男性が逮捕された。

深夜1時に渡河し、誰が何をどうやって気が付いたのか知らんが、即座に捜索が始まり、人間とか犬とかを大規模に動員して探したところ早朝4時半、とあるバス停に男を発見。「徴兵逃れのための国外脱出だった」とのことだが、過料をとった上でその日のうちに本国へ送還。がんばったがいいことは何もなかった。УП

「住民投票」の終了後28日にも全国境が閉じられ徴兵逃れの国外脱出は不可能になるとの報もある。すでに逃げた20万人はうまいことやったものだ。なお、一方のウクライナで総動員態勢のため18~59歳の男性が出国できない状態が長く続いていることはわりと知られた事実と思うが、こちらも実は2月24日から一両日は国境がまだ開いていて、私の知ってる若いカップルは侵攻にいち早く反応して24日中に国外に逃れた。はやい奴は得をする。

リヴォフの猫市長よりサバイバル越冬術指南

西部の古都リヴォフ(リヴィウ)の猫市長がこの冬を寒さに負けずに快適に過ごす方法を動画で指南してくれてる。УП

ロシアのミサイルが降ってきてセントラルヒーティングが止まるかもしれないから各戸電気ストーヴを備えておくにゃ。室内の熱は窓から逃げていくから隙間風防止テープを貼っとくことをお勧めするにゃ。あったかい服も買い込んでおいてにゃ。草々。

9月26日

オデッサになお神風ふいてる、アゲインストで。26日未明カミカゼ・ドローン群飛来、1機撃墜したが2機がウクライナ軍の「軍事インフラ」を破壊、爆薬が燃焼して大規模火災(ОЖ)。同日夜にも再度同様の攻撃があったが、3機すべて撃墜することに成功した(ОЖ

安全な場所でゲーム感覚で操縦してる奴に呪いあれ。開戦以来、オデッサにこれまでどんな攻撃が行われてきたか:オデッサには敵戦車が踏み込んだことがない。敵戦闘機が上空を飛行したこともない。ただひたすらにクリミア、あるいは沖合の船団、または遠くカスピ海の戦闘機からミサイルが発射されて、それをこちらの地対空兵器が撃ち落とせればよし、撃ち落とせなければ大小の被害、主として物質的、まれに人的(通算の死者は40人ほど)。攻撃目標策定のために無人偵察機というものはひっきりなしに飛来していた、これも撃ち落とせたり、撃ち落とせなかったりしていた。ずっとこの調子できたのだが、9月後半になって突如イラン製自爆ドローンというものがしきりに飛んでくるようになった。以上略史。

ドローン攻撃についてウクライナ軍司令部広報:我々は新たな脅威に直面している。ここ数日敵は高価な巡航ミサイルの使用を控え、オデッサ、ニコラエフ、ハリコフにしきりにイラン製カミカゼ・ドローンを飛ばしてきている。イランからロシアへは数百機の攻撃用ドローンが供給されたとみられる。ウクライナ軍はこれに効果的に対処する方法を策定中である。脅威は存在するが、撃ち落とせない目標ではない(УП

「住民投票」の「国際監視団」

住民投票を監視しその公正性を保証している世界各国から訪れた記者・監視員の皆さんのプロフィールを紹介するУП記事。皆さん年季の入ったプーチンファン。言ったでしょう、どんな問題、またどんな状況であれ、逆張りを好む「同志」数人や数十人を見つけることは容易い。

A friend in need is…

独裁の先輩、ベラルーシの自称大統領ルカシェンコ(※ウクライナの報道ではルカシェンコの肩書には「自称」самопровозглашенныйの語がつきます)がプーチンを電撃訪問、大変な時だけどがんばりましょうねと激励。恩を売っている。先輩風吹かしている。失笑。УПУП

先にルカシェンコはベラルーシで動員を行わない旨明言している。だからベラルーシの方は国情安定、自身も安泰というわけだ。筆者個人的にウクライナ戦争の容認についてベラルーシ国民への失望は深い。

徴兵忌避者の受け入れ

米国もロシアからの徴兵忌避者を個別に審査のうえ難民として受け入れる意向、大統領府報道官。現状は、欧州の方では立場が分かれていて、バルト諸国とポーランドはロシア人に門戸を開けば工作員のEU侵入を許すことになるかもしれないとして受け入れに反対。一方ドイツ、アイルランド、オランダ、またEU大統領は難民受け入れに賛成の立場。УП


紹介したいが時間が足りない(自分用メモ)
・なぜロシアの反動員デモが局地的・小規模なものにとどまり広がりを見せないのか論考(Meduza
・オデッサの世界遺産登録推進キーパーソンインタビュー、オデッサの魅力、世界遺産になるとどんないいことがあるか、エカテリーナ女帝像について(ОЖ
・2月24日以降ウクライナのジャーナリストたちはどのようにして「情報戦争」を戦ってきたか(Meduza
・オデッサ創建の父リシュリュー伯(通称「デューク」)の功績(ОЖ

9月25日

25日早朝オデッサにまたしてもイラン製カミカゼ・ドローン群が飛来、市中心部の何か行政機関に属する建物が爆破された(ОЖ)。ウクライナ軍は目下ドローンを用いた敵の戦術を分析中、間もなく対策が講じられるであろうとのこと(ОЖ

ドンバスのロシア系住民を保護するための、ロシア語への抑圧からヘルソンを解放するための、特殊軍事作戦であり住民投票であり動員であるとのことだ。ではこのオデッサへのおぞましき攻撃は何。多くのロシア人が持っているはずのオデッサに対する郷愁、オデッサでのよき思い出、ひと夏のアヴァンチュール(「犬を連れた奥さん」)、家族連れでの行楽、ファルシマック、宵べのテラスでビール、コンサート、「皆さんいいとこ住んでるねえ」「毎年来てるよ」「将来はオデッサに移住しようかなぁ、なんて思ってる」……

二度と来んな、ロシア人。……みたいなことを言うのはしかしぐっと我慢だ。類でなく、一人一人を見よ。

キリル

ロシア正教会の首魁キリルが日曜の礼拝で「戦場で死ぬことで全ての罪は清められる」と発言(УП)。相変わらずすべてのロシア正教徒およびロシア正教という宗教そのものに聖水と乳香のかわりに小便と臓物臭をふりかけ続けるこのキリルという老人。ロシア正教に帰依することは自動的に(形式的・構造的に)キリルに帰依することになるのかもしれないが、ここで「ロシア正教徒であることはもはや恥ずべきことである」みたいなことを言うのはぐっと我慢。

投票と動員

投票の方には興味がない。もう知ってるから。行われているか行われていないか、どのように行われているか(行われていないか)に関わらず、それは行われたことになり、27日か28日に結果が発表され、4州すべて(ドネツク・ルガンスク・ザポロージエ・ヘルソン)でロシア連邦への編入「賛成」が大多数でしたということになって、で30日だかにロシア連邦がその編入を宣言する。世界の新聞は誰も読まない国際欄の隅っこでそれをごく小さく報じる。誰も話題にしない。プチンは「あれっ」と思う。そのようでありたい。

動員をめぐるロシア国内の状況には多大な関心を寄せている。が、期待し過ぎないように注意。革命と瓦解は西側世界の市民誰しもにとって好ましい展開であるからこそ、民衆の欲望を映す鏡であるマスメディア、たとえば日本のテレビも、ロシア国民の不満・デモ・国外逃亡についてはことさら大きく取り上げるであろう。だからこそ抑制的に見るのが大事だと思います。とりまこれまでのところロシア全土で、21日のデモ第一波で1300人、24日のデモ第二波で800人の逮捕者が出た。ヤクーチヤやダゲスタンなど周縁部で抗議運動が盛ん(MeduzaMeduza)。各地で徴兵当局施設への放火あいつぐ(Meduza)。Meduzaのような反体制派メディアがこうした動きを大きく取り上げそれがなるべくたくさんのロシア人の目にふれるのはとても良いこと、意味あることだと思います。

あと、ISWのレポートが気に入った。いわく:プーチンはこれは戦争ではない「特殊軍事作戦です!」というタテツケにこだわるあまり国民が動員やむなしと甘受するための情報環境の創設を怠った。今の状況は、外国軍の自国への侵入という事実が存在しないことは誰の目にも明らかであり、祖国防衛戦争(1812年、対ナポレオン)や大祖国戦争(1941年、対ヒットラー)のときのような国威発揚はあり得べくもない。プーチンがなんといおうと、これは傍目に明らかに侵略戦争なのだ。動員はぶざまな様相を呈するであろう。予備兵は質が低く戦意も低く、動員の成果でロシアにとって戦況が改善する見込みは2022年中にはあり得ず、2023年にもおそらく大きな変化はもたらされないであろう……と。УП

9月24日

イラン

ウクライナとイランの二国間関係にヒビ。ロシア軍がイラン製ドローンによるウクライナ攻撃を始める→ウクライナがイラン大使の信任を解きイラン大使館の人員を削減→イランもウクライナに対して同様の措置をとると宣言。УП

三文芝居

ウクライナ各地で行われている住民投票とか称する茶番の「公正性・透明性」を監視している国際監視団の参加国はロシア、ベラルーシ、シリア、エジプト、ブラジル、ヴェネズエラ、ウルグアイ、トーゴ、南アだそうだ(ウクライナ再統合省、УП

ロシア側報道によると、27日までの住民投票の「結果」を受けて30日にプーチンがロシア連邦議会で演説してウクライナ4州の「編入」を宣言する手筈になっている。それは2014年クリミア(およびセヴァストーポリ)を髣髴とさせるものとなるであろう(Meduza)。クレムリンのゲオルギーの間で上下両院議員そろい踏みの前でプーチンが演説をぶち「編入」を高らかに宣言、全議員総立ち。私の人生最悪の瞬間。モスクワにいた。生中継でそれを見ていた。ロシアへのナイーヴな愛と信頼は粉々に打ち砕かれた。それをまた見ることになる。だが今度はこちらの心も強い。徹頭徹尾空虚・無意味。日本含む文明世界はこの田舎芝居を報道で大きく取り上げないでほしい。

カザフ人「カザフ逃げてくるならカザフ語しゃべれ」

カザフおよびキルギスのTikTokerたちがフラッシュモブ、ロシア人への怨恨を語る。俺たちが旅行で/留学で/出稼ぎでモスクワに行ったときはアジア人だからといって差別してくれたよな。アジア人には貸せないといって賃貸契約を断った。また、俺たちが掃除する便所をずいぶんキレイに使ってくれたものだ。いま動員が始まって徴兵を逃れるために外国に流亡したいがヨーロッパは受け入れてくれないので仕方なく中央アジアに逃げてくるロシア人よ、ここででかい顔ができると思うな。悪いがスラヴ人には部屋は貸せないんだ。キルギスに来たんだからキルギス語をしゃべってくれるか。「クリミアは誰のものだ?」と問うて、お前が「ロシアのだ」と答えようものなら、どうなるかわかっているな。УП

滅び、を目にしている、との感がある。

だが動員パニックがどの程度持続的で本質的なものとなるかは予断を許さない。今は俺も/息子も/旦那も戦争に行かされるかもしれないという不安と恐怖が勝っているが実際男児ことごとくが兵隊に取られるわけでもないのだなと見定めがついてくれば状況甘受のムードに落ち着く。げんに総動員態勢がつとに敷かれているウクライナの、たとえばオデッサで、市民はほぼ戦争を忘れて暮らしていけている。

9月23日

オデッサに新手のおぞましき攻撃。イラン製の自爆ドローンが相次いで飛来、一部は撃墜に成功したが、一部は標的に命中し、市民に犠牲者が出ている。

攻撃は2度にわたり、昼過ぎの第一陣は、海上から少なくとも3機のドローンが発射され、1機は撃墜したものの、2機が港湾部の管理棟を破壊し、1人が死亡、1人が負傷した(ОЖ)。夕刻第二の攻撃が試みられたが海上で4機撃墜して事なきを得た(ОЖ)。

↑イラン製自爆ドローン「シャヒード136」、飛行距離2000㎞、速度185㎞/h、翼幅2.5m、重量200㎏、最大50㎏の爆薬を搭載可能。ちなみに報道ではふつうに「カミカゼ・ドローン(дрон-камикадзе)」と呼ばれてます。

ウクライナ各地でイラン製ドローンによる攻撃が認められたことを受け、ウクライナは駐ウクライナイラン大使の信任を停止した。イラン大使館の人員も削減される。「イラン最高指導部は中立およびウクライナの主権・領土一体性尊重を公言していたが、ロシアへの武器の供給はこれと矛盾する非友好的行為であり、ウクライナとイランの関係を著しく損ねるものだ」とウクライナ外務省声明。УП

不条理劇「住民投票」

ウクライナ各地でロシア人およびそのシンパサイザーによる「住民投票」とか題する猿芝居が始まっている。ルガンスクのガイダイ知事によれば「投票」は次のように行われている。まず、街が封鎖された。住民は投票を忌避したくても街の外へ出られない。で、武装したロシア人がウクライナ人の住宅を訪ねて回って、中庭だのキッチンだので用紙に記入させる。ルガンスク州のロシア連邦への編入に「賛成」か「反対」か。その際、本人確認のためのパスポートの提示などは行われない。なお、「反対」にレ点を打った人の名は「ノートに記入される」。この茶番の全ては単にпушечное мясо(大砲用の人肉)となるウクライナ人男性を駆り集めるだけのために行われている。УП

ロシア側の報道では全然様相が異なる。ドネツクの投票には26カ国から129人の監視員が集まっている(TASS)、ザポロージエの投票についてドイツから参加の監視員は「よく組織された投票である」と賛辞(TASS)。国際選挙監視団のお墨付きを得た欧州スタンダードの公正・透明・民主的な投票であるという印象付け。だが①26か国の内訳は。お仲間のならず者国家からばかり集めているのではないのか②どんな問題についても、またどんな状況であれ、逆張りを好む「同志」を数人や数十人駆り集めることなど容易い③数字じたいが水増しされている可能性④安全のためと称して監視員の行動を厳しく制限し、見せたい(見せてよい)ところだけ見せている。

投票は27日まで続く。ドネツクでもルガンスクでもザポロージエでもヘルソンでも、ロシア連邦への編入「賛成」が圧倒的多数となることを疑わない。ロシアの憲法がまた改正される。ロシア連邦の構成主体が4つ増える。これを徹頭徹尾、空虚で無意味なものと見たい。ロシアは「新たにロシア連邦の構成主体となった4つの州に対するウクライナ軍の攻撃に対しては核兵器による報復が行われる、これは脅しではない」と必ず言うのだが(ペスコフ、УП)、そんな専横がまかり通ってたまるか。

動員

ロシアの動員について、ペスコフ露大統領報道官、「動員が発表されて第一日目にヒステリックな、極めて感情的なリアクションが見られたのは理解可能なことだ。実際情報が不足していた部分もあった。だが昨日からは閣議決定に従い市民の問い合わせ回線も全開通したし、メディアも国防省回答を報道している」УП

熱しやすく冷めやすい人たちだ。2月の侵攻当初も市民社会の一斉蜂起と政権打倒という希望的観測はあった。幻想であった。市民は新たな状況の中でさして変わらぬ(ことが分かった)日常へと逐次回帰していった。今度も空振りか。「あいつは軍隊へとられた、だが俺はまだだ」と言える限り、戦争容認はつづくのか。

Meduzaが消息筋の情報として動員の規模は120万人と報じているが、同じ記事の中で、都市部での動員は最小限にとどめ、マスメディアや反体制派の目のとどかない(かつ戦争支持が高い)農村部で集中的な人狩りを行う計画も伝えられている。狩る方も巧妙を尽くす。

モスクワのマネージ広場(赤の広場に隣接)ではウクライナ東部南部における住民投票支持集会が開かれ主催者発表では5万人が参加、写真見ると(こんな写真掲載したくないが)、なるほど少なくないようには見える。Meduza

前の記事で動員にはじまる国外脱出・抗議集会のうねりで政権倒れる(戦争終わる)のではないかと興奮しすぎてしまった、戒めの意味で今日は私にとって苦々しい話題を多く取り上げた。

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