ウクライナ戦争側面史Ⅱ

オデッサ/ウクライナ/ロシア

戦況については①手に余る②他がやっているので、なるべくそれ以外のことを(とはいえ無視できないので取り上げもするが)。社会の変容とか、人たちの生活のこと。とりわけ、自分がかつて住み、今も義父母らの暮らしている、オデッサのこと。

基本的に毎日更新。主としてウクライナ全国メディア「ウクラインスカヤ・プラヴダ(УП)」、オデッサローカル紙「オデッサ・ライフ(ОЖ)」、ロシア独立系メディア「Meduza」(いずれも露語)の記事を翻訳紹介する。若干の私見や体験談も交えつつ。

※この記事はオデッサ(ウクライナ)情勢、現地報道まとめ(2022年3/15~6/28)続・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(6/30~9/22)続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(9/23~12/31)続々々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(2023年1/1~4/27)ウクライナ戦争側面史(オデッサを中心に)(5/15~8/2)の続きです

11/30

きょうでこの記事の更新おわる。次のやつまた立てる。

■小括
2023年はじまって11か月でロシア軍の攻撃により民間人2000人が死亡した。クリメンコ内相「11か月でウクライナ24地域に計5万9000回の攻撃があり2000人が死亡、1万1000人が負傷した。とりわけ多くの攻撃を受けたのはザポロージエ、ヘルソン、ドネツク、ハリコフ、スームィ、チェルニーゴフの各州」УП

■全国
29→30日の夜、ウクライナ各地にシャヘド20機・ミサイル8発が飛んだ。うちシャヘド14機を撃墜。ドネツク州で集合住宅や民生インフラが損傷するなど。一部の州では0時前から朝6時まで空襲警報が鳴りっぱなしだった。УПУП

■クリミア
29日の21時半ごろ、占領下のクリミアの全インターネットTVチャンネルがジャックされ、ゼレンスキー・ザルージヌィ・ブダーノフのビデオメッセージが放送された。ウクライナの情報当局が関与した情報作戦とみられる。УПУП

■ドンバス
昨日の南方遊歴の際にニコラエフの学生たちと交流をもったゼレンスキー、いわく、無血で占領されたクリミアを解放することはドンバスの奪還よりは相対的に容易である。ドンバスは10年間にわたるロシアの統治を受け、軍事化され、また分離主義がはびこっている。「ことによると、まずは領土を取り返し、後で人たちを取り返すということになる。人たちは異なる空間にもう10年も暮らしている。10年は長い」「いずれにしろ領土は人たちと一緒に帰ってくる。人たちがそれを望まないとしたら――非情に困難なことになる」「クリミアもドンバスも帰還を望んでいるには違いないが、この上なく軍事化され、10年間にわたり戦場となってきたドンバスの住民を取り戻すことの方が、精神的により困難だ。分離主義者も多く、戦争を経験した人もいる」УП

■ハリコフ
ゼレンスキーは30日ハリコフを訪れ、ハリコフ地下鉄「ウニヴェルシチェート(大学)」駅に開設された学校を訪問した。40学級、生徒831人が学ぶ。同様の学校が5つの駅にあるという。УП

地上は大人たちが戦争で使うからきみたちはひのあたらぬ地下で勉強でもしといてね。あ・弾。

■キエフ
世界で最も生活費が高い都市のランキング「EIU Worldwide Cost of Living」23年版が発表された。全173都市中、ウクライナ首都キエフは132番目。物価の面では住みよい街。
なお、首位がシンガポールとツューリヒ(スイス)、3位が米NYとジュネーヴ(スイス)。УП

■リヴォフ
リヴォフ(リヴィウ)州の郊外&都市間バス各線で現金を使わない乗車賃支払いサービスが始動した。ウクライナ初の取り組みという。なにしろ乗降車時に車内の機器にクレジットカード等をかざして運賃を支払う。УП
※なんでこれを都市交通の方で先に導入しないのだろう?IT先進国とかいうがオデッサ生活でマルシュルートカとか乗って毎回7グリヴニャ(20円)とか現金で払わなければならないのを大変煩わしく感じていた。

■ヘルソン
ISW(戦争研究所)によれば、ウクライナ軍はヘルソン州のドニエプル左岸(敵地側)で地上作戦を続けており、前進もしている。УП

УПの当該ニュースのアイキャッチ写真、これがヘルソン左岸の作戦部隊の今を写したものかどうかは不明だが、大方このような環境ではあるのだろう。見るだに寒い、ツラい。


■挙国一致
・議会
11月半ばに議会の全会派が次期選挙は戦争状態の終結のあかつきにはじめて実施される(=戦争している間は議会選挙は行わない)とする覚書に調印していたことが分かった。УП

関係ないけどロシアとかウクライナでは公式な書類への手書きの記入・記名は青ペンでなされることが多い。妙な習慣だなと思うが

・政軍一致
ゼレ最側近のポドリャク大統領府顧問が例のエコノミスト記事(11/29参照)にコメント。いわく、ゼレンスキーとザルージヌィの間に不和は存在しない。両者は恒常的に対話を行っている。たとえば最高司令部会合で作戦の進度について認識を共有し、作戦の修正とか改良を討議している。УП



■「エコノミスト」論説
「プーチンはウクライナ戦争に勝利つつあるように見える(今のところは)」と題する記事が英エコノミスト誌に。まず戦争の現状は、①ウクライナの反転攻勢は停止し②ロシアはアドヴェーエフカをめぐる戦いで日に900人の兵員を失い③どちらも支配圏をこれ以上拡張できない膠着状態である。このような状態が以後何年も続くかもしれない。
なぜこうなったか。欧米(とりわけ欧)の及び腰・戦略的ヴィジョンの欠如のためである。
現実を見れば、ロシアは被制裁国というより、被支援国である。ロシアは孤立していない。現にイランから無人機を・北朝鮮から弾薬を取得している。トルコとカザフスタンがロシアの軍事マシーンを飼い肥らせる物資流入のパイプ役となっている。これら外国からの支援がなければロシアの現下の優勢はあり得なかった。
ロシア国内に目を転じても、万事順調の観がある。市民は戦争に慣れ、エリートによる経済支配が強化され、プーチンは傷痍軍人/戦没者の遺族へ生涯給付金を払い続ける懐の余裕がある。強制動員だのインフレだの戦費不足だのでプーチン政権が倒れるなどとは期待できない。プーチンはあと何年も欧州最大の脅威であり続ける。ロシア軍は再興される。しかも、貴重な戦争経験で強化されて。
対照的に暗雲たれこめるのがウクライナである。絶えざる汚職スキャンダルと将来への不安でゼレンスキーの権威は翳り、果ては大統領と最高司令官が口論まで演じた。米国からウクライナへの支援は先細る見遠しで、万一トランプ政権が再成立でもしたら米国からの武器の供給はすっかり停止してしまうかもしれない。
そんな中で欧州がいまプーチン抑止のためにすべきことは、決意を示すことだ。具体的には:ウクライナに防空システムと長距離弾を提供すること。УП

■冬の守り
米国政府高官によれば、ロシアの冬季エネルギーインフラ攻撃をウクライナの生活者たちが持ちこたえるために、米国は3つの方面で支援を行っている。第一に、ウクライナの防空能力の強化支援。インフラを襲ってくるロケットやドローンを撃ち落とす力を高めるべく、対空迎撃ミサイル「パトリオット」その他を追加供与する。第二に、エネルギーインフラそのものの強靭性を高める。ネット(網)、ヘスコ防壁(土嚢)その他防護装置を供与し、その効果的な使い方を伝授する。第三に、変圧機や発電機などの予防的装置の供与。ロシアの攻撃で電力が失われても人たちが暖房や電気にアクセスできるようにする。こうしたことをG7諸国とも強調しながらやっていくと。УП

11/29

■悪天候・電力
26日以降の全国的な吹雪の影響で交通事故などにより12人が死亡、23人が負傷した。このかんレッカー移動された車両は実に2000台(旅客バス31台、救急車両33台ほか)УП
また、雪害で電力供給が不足し、各地で停電が起きている。最大時11州521集落、29日朝の時点で9州368自治体で停電。特に被害がひどいのは南部(オデッサ州、ヘルソン州、ニコラエフ州ほか)。
停電→停電明けの瞬間に電力負荷が一挙に高まる問題も。国営電力会社クドリツキー総裁「停電していた数百の自治体で電力が復旧するとともに電力需要が急激に高まった。市民が長期の停電明けに相当激しい電力消費を始めたことを物語っている。こうした現象は昨年も見られた」「不足分を補填するためウクライナはポーランドおよびルーマニアから緊急支援を引き込むことになった」。ウクライナ市民に対し節電が呼び掛けられている。УП
悪天候には珍なる余禄も。ロシアがウクライナ南部攻撃のために飛ばしたシャヘドが一機、暴風にあおられクリミアに落ちた。УП
なお、28→29日の夜、ウクライナを襲ったのはシャヘド21機、ミサイル3発。シャヘドは全て撃墜(オデッサ、ドネプロペトロフスク、キエフ、ヘルソン、ザポロージエ、フメリニツキーの各州上空。広い範囲に飛ばしてきた)、ミサイルは2発撃墜(ニコラエフ州上空)。つまり撃ち洩らしたのはミサイル1発のみ、この1発も「所期の目的は達せず」という。УП

いちいち断りませんが、全てウクライナ側の発表です。ウクライナ側の報道のみ見ています。

■ゼレンスキー南方視察
つらいことあると必ず見舞いに来てくれるあいつが今度も来た。積雪の影響で通行止めだった道路が開通するやゼレンスキー、南部3州=オデッサ・ニコラエフ・ヘルソンを一挙歴訪(言うは易し、相当な強行軍)、ウメロフ国防相も同席のもと、一連の会合を持った。主たる議題は戦況・防空・穀物の海上輸送。

↑「プレゼント交換」の一幕も。ゼレンスキーから軍人たちへ勲章の授与、また地元部隊よりゼレンスキーへ、なんか兵器をあしらった時計付きのパネル(上図。クリックで動画ページへ遷移)が贈られた。時計のところに使われてる金属は撃墜したロシアのKh-555ミサイルからとったものだという。УПУП
(動画を見た私の感想:この人たちも人間だ。)

■ブダーノフ一家毒殺未遂
ウクライナ国防省情報総局ブダーノフ長官の妻および同局職員数名が重金属(ヒ素、あるいは水銀)中毒を起こした。暗殺未遂の疑いがあるため、法令に基づき、まずは情報総局自身が捜査に当たり、状況次第で他の治安当局に引き継ぐという。УП

■英「エコノミスト」論説(抄)
⑴内憂
戦線が膠着する一方でキエフの政治的緊張が高まっている。①ゼレの推進した「意思決定プロセスの中央集権化」と「異分子の排除」により政権内に歪みが生じた②反転攻勢が期待通りに進まなかったことにより政治指導部と軍指導部の間にも亀裂が走った(その端的な表れが先日の「エコノミスト」インタビューにおけるザルージヌィの「戦争は袋小路」→ゼレンスキー「そんなこと言うなよ」)。ゼレンスキーは大統領の座を脅かす存在としてザルージヌィを見ている。当のザルージヌィは何ら政治的野心を表明していないのだが、自身コメディアンから大統領へ一夜にして転身したゼレンスキーには、ウクライナ社会の秘める破壊力と創造力のすさまじさが身に染みている。直近の世論調査でも相次ぐ政権内の汚職スキャンダルにより大統領の支持率は下がる一方、ザルージヌィ総司令官(ブダーノフ情報総局長官も)は高い支持率をキープ。万一いま選挙でゼレンスキーとザルージヌィが一騎打ちになれば、現職は敗れる。もっとも、ウクライナ人の10人に8人が「戦時中に選挙は行われるべきでない」との立場。УП
⑵外患
上記のごときウクライナの政治的内訌・選挙の不実施・反転攻勢の不首尾に、もちろんロシアは付け込む。既に各種のフェイク記事/動画で情報空間の汚染を試みている。哀しいかな、ウクライナ側に付け入る隙があることも事実。汚職や非効率といった問題の存在はウクライナ政府自身も認めている。ウクライナは自らの経済を戦争に向けて十分鍛えてこなかった。
ロシアはこれまで自らの影響力を爆増させるためのテコを各種発見し・利用してきたが、ウクライナ側の特務機関もよくこれに対処しおおせた。だがいま、ウクライナ国民そのものが、最大のテコとしてロシアに「活用」されようとしている。
戦場に目を向けると、いまは比較的ロシアに有利な時期である。数がものをいう消耗戦で、ロシアは兵員の大多数を地方および監獄から集めた人間でまかない得ているが、一方のウクライナは社会の広い層から戦場における損失分をぎりぎり補填できるくらいの人間をかき集めている。しかも戦争当初から軍務についている人たちに比べ、新たに徴用された新戦力は概してモチベーションが低く、員数の充足は困難になり勝る。そこへもってきて今の政治的緊張である。
とはいえ戦場の兵士たちの士気に政治のゴタゴタが直接影響しているかというと、現状、大した影響はない。砲弾の雨の中で兵士たちが考えるのはこの敵をいかに倒すか・自分がいかに生還するかということで、ザルージヌィとゼレンスキーが喧嘩したとかしてないとか、キエフまたはワシントンで何が起こっているかなどは二の次である。УП

■ウクライナEU加盟への道
(もし国民投票があれば)ウクライナのEU加盟に賛成票を投じると言う人、78%。NATO加盟に賛成票を投じるという人、77%。「レイティング」が11月後半に行った調査。
相当な高水準だが、目減りしてはいる。7月時点ではEU85%、NATO83%だった。УП

■ウクライナ忘却はウクライナの破滅
ドイツ外相「ウクライナへの関心がいま社会の視野から消滅しかかっている。これは破滅的なことだ」。ロシアはウクライナの民生インフラに対する意図的な攻撃を繰り返している。「ウクライナの冬の守りが強固なものとなるよう、我々も努力しなければならない」УП

11/25

■キエフ大規模ドローン攻撃(74/75)
24→25日の夜、大規模ドローン攻撃。シャヘド75機中74機を撃墜。うち少なくとも66機がキエフ州上空における撃墜、残りもキエフに向かう途中で撃滅されたものと見られる。開戦以来最も集中的な首都ドローン攻撃。撃墜片で少なくとも5人負傷、家屋等損傷。УПУПУП
・きゅうにいっぱい飛ばしてきた。この秋冬は謎にドローンは小出し/ミサイルは全然飛ばしてこなかったが、いよこそインフラ破壊を大々的に始めるのか、と思わせる。これに類する攻撃の前回は9月21日(ミサイル43発)
・そして撃墜率99%の衝撃。
・なお、イグナート空軍報道官によれば、ロシアはイランから取得したシャヘドに一定の加工を施して「改良」している。なんやカーボン素材(無線測位シグナルを吸収する)で機体を多い、また機体に黒い塗料を塗って、発見・撃墜されにくくしているんだとか。УП

■モスクワ大規模ドローン攻撃?
これに対抗しすぐ翌日、26日未明、今度はモスクワがドローン攻撃を受けたという。ロシア側発表、УП

■なんでロシアはミサイル飛ばしてこないのか
今冬ロシアのミサイル攻撃が妙に大人しいことを一部説明するものか。英国の情報当局によれば、ノヴォロシースクでロシア黒海艦隊が兵站に問題をきたしており、それで露の巡航ミサイル攻撃能力が損なわれている。
いわく、これまで黒海艦隊の巡行ミサイル補給基地はクリミアのセヴァストーポリだったが同市がウクライナ軍の攻撃にたびたびさらされるようになった関係で、露本土のノヴォロシースクが代替地として期待されるようになった。だがミサイルの運搬・保管・管理・再装填には特別なノウハウや設備が要る。「ロシアは恐らく冬季のウクライナ攻撃キャンペーンに海上発射式巡航ミサイルも参加させるべくこれら問題の早期解決に努めているところだ」と英当局。УП

■船の取得(穀物回廊のさらなる安全のために)
ゼレンスキーによれば、ウクライナはパートナー諸国から護衛艦の供与を受ける。黒海の穀物回廊を利用する商船の安全の保障のため。
なおゼレ、「ロシアぬきの穀物回廊の設置は2023年最大の成果の一つ」と誇った。УП

11/24

■この千をあと何倍すれば
人命の算数。24日朝のウクライナ大本営発表では先立つ一昼夜のロシア軍の損失、人員1100人、砲31門、装甲車32両。УП

■12月の寒さは
気象台の月間予想では12月は、数次の寒波が到来するものの月平均気温はマイナス3度~プラス2度と、平年より1~1.5度高く、降雪量も平年なみ。気候の面では余りに厳しすぎる冬とはならない。
とはいえ寒い日は寒く、東部および北東部では最低気温がマイナス24度~マイナス32度まで下がる日も。南部でも所により最低マイナス17~23度の冷え込みが予想される。УП

■失われた「戦力」
EU統計局によれば、ロシアの大規模侵攻始まってから欧州諸国へ出国した徴兵適齢の男性の数は、実に65万人に上る。ここには3人以上の子供の親や障碍者など合法的な出国者も含まれているが、相当数が非合法な手段(賄賂による偽診断書・出国許可証の取得など)による出国者と見られる。
なお、国連難民高等弁務官事務所によれば、出国者の総数は630万人、大部分が女性と子供。УП

■ケルチ海峡海底トンネル
クリミアとロシア本土を結ぶ海底トンネルの建設について10月、ロシアと中国の政府系企業が秘密裡に協議を行い、セヴァストーポリを本拠とするコンソーシアムを結成するに至った。ウクライナが傍受した通信をもとにワシントンポストが伝えた。
たとえば中国鉄道建設公司(CRCC)は「クリミア地方でいかなる困難があっても鉄道および自動車道の建設を実施する用意がある」そうだ。同社は国営企業、中国国内の道路網・鉄道網の建設を担うほか、モスクワ地下鉄の延伸への参画などを通じてロシアとも深い関係を築いているとのこと。
むろん遠大な計画ではありロシアの軍事行動を適時に支援するものとはならないが、クリミアの帰属をめぐる領土問題が十年単位の長期にわたることを見越して、ウクライナ領土との安全な連絡路を建設するための長期投資を露政権が検討していることが窺える。УП

11/23

■露「ウクライナ国内の不安定化こそ必勝の道」
ウクライナ対外情報庁のリトヴィネンコ長官によれば、戦争は消耗戦に入っており、ロシアの継戦意欲は変わっていない。現に露軍の2024-2025年間の人員募集計画はSVO(特別軍事作戦)の継続を前提にしている。
露政権は「ロシアのリソースは無尽蔵」で、「ウクライナのそれは枯渇しかかっている」と見ている。また、西側はいずれウクライナ支援を停止し、停戦および交渉へと勧奨するようになると考えている。要するに時は我に味方すると見て、次の3点を要諦とする戦略へとシフトしている。
第1に、戦場。全戦線で圧力をかけ続け、政治的・メディア的に重要な拠点、たとえばアドヴェーエフカ(アウディーイウカ)を掌握する。
第2に、冬季の重要インフラ(発電所、石油加工施設、物流ハブ)破壊によりウクライナ国民の生活の質を低下させる。
第3に、ウクライナ国内世論の壊乱。現政権への不満を煽り、一方では、軍部あるいは対立する政治勢力を挑発し・かつその野心をかきたてる(秩序をもたらせるのは軍だけだ/ウクライナを指導できるのは彼らだけだ、云々)УП

■国民アプリ”Дія”普及率は5割
マイナンバーカードと健康保険証と運転免許証その他もろもろが詰まっており婚姻届けの提出とか各種の役所手続きをオンラインで行えるIT大国ウクライナの超便利なアプリДія(ヂヤ)というものがあって、ローンチは3か年前、現在その利用者は2000万人だそうだ。フョードロフDX相によれば、この間いちども個人情報漏洩は起きていない。今後も機能を拡充していくとのこと。УП

■「ウクライナ人の9割がウクライナ語母語話者」説(再)
同じニュースが今日も出てたからまた取り上げる。国家「教育の質」機関(Державна служба якості освіти)の調査では、教員・保護者・生徒の9割以上がウクライナ語を母語としており、それでいて、保護者の4割が自分の子供のウクライナ語の知識レベルに不満を抱えている。УП

この一つの調査結果を根拠に以後「ウクライナ人の9割がウクライナ語母語話者」と言われるとしたら、それはちょっと危ない拡散の仕方だと思うので、釘を刺しておく。第一に私の実感に合わないし(オデッサ市民の9割がロシア語話者)、第二に、他の調査結果とも乖離している。さしあたり、「側面史」前々号3月10日付記事を参照(こちら)。言語アイデンティティと言語プラクティスはしばしば乖離し、変動の際には後者が常に遅行する。9割の中には単に政府系の調査機関を前に自分の母語はウクライナ語だと言い張りたい人、というのが含まれている可能性がある。むろんそれはそれとして尊重すべき現象ではあるが。

■DVに他者が介入することの是非
親が子にDVを働いている場合に外部の人間は介入すべきか。「介入すべき」と考えるウクライナ人は、全体の75.2%に上る。Gradus Research社の調査。
DVを目撃した際、具体的にどう行動するか。警察に通報する(54.2%)、助力が必要かどうか被害者に聞く(41.7%)、加害者の注意を引く(12%)、物理的に介入する(9.8%)
また、仮に自分がDVの被害者となった場合には、助力を請う(59.8%)、請わない(22%)。助力を請う相手は、警察(64.3%)、ホットライン(49.7%)。助力を請わない理由は、家族の問題を外部に持ち出したくないから(42.6%)、自力で解決できると思うから(36%)УП
※なんでこれを取り上げたかというと、家族と国家にはある類比性があるはずなので、本調査を手掛かりに、国家経営上の問題に対する外部(ロシアあるいは欧米)の干渉をウクライナ人がどう受け止めるかということを推して知ることができるかと思った。賢い人の分析の具に供したい。
ДудьのあるインタビューでZ脳の人が、ロシアのウクライナ侵攻を「だって隣家でDV行わているのを知ってしまったら介入せざるを得ないでしょうが!」とか正当化していた。2300万再生。

■ウクライナ侵略に参加すれば殺人食人の罪も雪がれます
プーチンがロシアの食人鬼2名に恩赦を与えた。ウクライナの戦闘に参加し帰還した元囚人に恩赦を与えるアレ。一人は極東サハリン出身のゴーリンという人で2003~2011年の間に少なくとも4人を殺害、うち2010年のケースでは殺したあと人肉を洗って冷蔵庫で冷やして食った。3度にわたり受刑。最後の殺人につき22年の懲役刑に服していたところを狩りだされ、Z兵としてウクライナで戦い、中程度の負傷を追って本国に帰還した。もう一人はオゴロビャクという人、33歳、悪魔崇拝の儀式として未成年者4人を殺して食し、懲役20年を食らい、2030年まで収監の筈だったが、Z戦士となりウクライナで戦って傷害を負って帰国した。2人とも晴れて自由の人。VIVA、チャイコフスキーとプーシキンの国ロシア! УП

11/22

■寒と沈黙
全国的な冷え込み。夜間の気温は南部含め全域で零度以下、東部諸地域ではマイナス15度にもなっている。各地で降雪、路面凍結で事故多発(УП)。電力供給は早速逼迫しており(不足の要因は①寒さによる消費の増大②発電施設の動作不良の多発③EUからの電力輸入量の不足という)、国民に節電が呼びかけられている。消費電力の多い家電を同時に使わないでください、誰もいない部屋の電気を消してください、洗濯は夕方でなく夜間に行ってください……(УП
ロシアの大規模電力破壊キャンペーンはまだ始まっていない。連中が21→22日夜に飛ばしたシャヘドは僅々14機、悉皆撃滅(УП)。ロシアは明らかにミサイルを温存しており、ウクライナに本格的な寒気が到来するのを待って一挙に仕掛けてくるものと見られていた。むろん天気予報は見ており、上記のような報道も追っている筈であるが……。
昨冬は10月10日に始まっていた。もう11月も後半である。この間にロシアの善性が復興したと考える理由は何一つない。不可解かつ不快な沈黙。

■防空警報
敵キンジャル搭載機の発進に伴う防空警報については、進展なし。今のところ国家指導部で何ら決定はとられておらず、したがって、警報発令は従前どおり行っており、また行う。空軍報道官。УП

■言語
・ウクライナ語
教育の質に関する政府系の調査機関によれば、子どものウクライナ語・ウクライナ文化の知識が十分でないと考える親が全体の43%を占めている。УП
同じ調査でウクライナ語が母語である人は教員の94%、両親の93%、生徒の91%を占めると出ていることと考え合わせると、意味わからん。母語人口が多すぎる。 
・英語
ウクライナにおける英語の地位(の向上)に関する法案が議会で第一読会を通過した。一部公務員(救急隊員など)に一定程度の英語能力の獲得を義務付けるもの。УП

11/21

■寒さの冬
寒波到来、水曜ウクライナほぼ全土で降雪、木曜は東部および北東部で夜間の気温が-14~-19度まで下がる予報。УП

■防空警報長すぎる問題(続)
ロシアのMiG戦闘機離陸(=弾道ミサイル攻撃の恐れあり)に伴う長時間の防空警報をどうするか、その間どうしてもウクライナの経済社会が麻痺してしまうわけだが、どうにか機会また時間を削減できるものなのか。大統領の下命(20日参照)を受け関係省庁・専門家集団が可能性を探っているが、こと人命にかかわることなので、容易なことではない、と空軍のイグナート報道官。УП
※ジレンマ。ゼレンスキーはそもそも2月24日侵攻をほぼ確定事項と認識しながら、経済社会の混乱を天秤にかけ、事前に国民に報知しないことを決めた「前科」がある(WP、22年8月)。なるほどサイレン鳴らなくても死んで数人、そのために国中が数時間にわたり息をひそめなければならぬというのは割に合わぬ。それがリアリズムの教えるところか。それにしてもロシアは、ウクライナを窒息させるには、ただキンジャル搭載機を数時間飛行させるだけで足りる。これこそ到底割に合わぬ。

■The Sunインタビュー
ゼレンスキーが英紙ザ・サンのインタビューで語った。
・プーチン暗殺
ウクライナにはプーチンを暗殺する権利がある、と発言。自分の暗殺は全面侵攻始まってから少なくとも5回試みられた。ロシアはあらゆる手段を用いてウクライナ大統領を排除する望みを捨ててはいない。ならばウクライナも、プーチンを始末できる。もしチャンスがあったなら、ウクライナはプーチンを殺害するか?――これは戦争だ。ウクライナは自らの国土を守る十全な権利を有する。УП
のち露大統領府ペスコフ報道官がコメント:ウクライナがプーチン暗殺に言及するのはいつものことだが口先だけだ、何も実現することはない。УП
・空の守り
まず先決は防空能力の向上。各都市各地域をカヴァーするのに十分な防空システムが手に入れば人たちはウクライナに帰国し始め、経済が回りだし、西側からの財政支援も現状の規模では必要としなくなる。「時に分からなくなる。なぜ自分たちの街々を守るための防空システムの供与を、あるいは貸与を、取り付けることができないのだろう。それさえできれば、人たちは帰ってくる、子供たちは学校に行けるようになる。完全な、とは言わない、国土のほとんどを守れるくらいの防空装備があれば……」УП

11/20

■米国
オースティン国防長官がキエフを訪問、ゼレンスキーらと一連の会談を持った。オースティン「ウクライナは冬季も軍事行動を行う準備がある。先に発表された1億ドルの軍事支援には冬季の装備も含まれている。私もゼレンスキー大統領と同じ考えで、敵と戦い続け、圧力をかけ続けることが正しい判断だと思う」УП

■日本
辻清人外務副大臣と岩田和親経済産業副大臣が経済界の代表らを伴いウクライナを訪問、シュムィガリ首相と会談した。日本からウクライナに新たに1.6億ユーロの財政支援を行う意向が表明された。УП
また、日本からウクライナ非常事態省へ地雷除去装置(特殊車両40両、地雷発見機50個など)が供与された。人道的地雷除去に使われるという。УП

■掃海
NATO加盟国のトルコ・ルーマニア・ブルガリアが漂流機雷の共同除去に関する合意を達成しつつある。水曜(22日)アンカラで3か国協議が開かれ詳細が合意される見込みだとか。非公式情報。
これに先立ちトルコ海軍司令官は、環黒海諸国以外のNATO加盟国(米国含む)が黒海でプレゼンスを持てば地域の緊張が高まるとして、これに反対する立場を表明していた。
上記3か国のイニシアチヴが実現するとしても、それがNATOのオペレーションとみなされることはないそうだ。だがロシアの大規模侵攻が始まって以来、黒海における最大の共同作業とはなる。УП

■寒
ハリコフ州で20㎝の積雪。УП

キエフの10日間予報

読み方:11月21日火曜、曇りときどき晴れ、最高気温0度、最低気温-4度。いよいよ寒くなってきる。
(それでも今年キエフで気温が0度以上の日が232日も続いたのは最長記録だそうだ。УП

同、オデッサ

こちらはまだしも、という感じ。

■文化無責説
露ラヴロフによれば文化はあらゆる政治的プロセス、あらゆる紛争、あらゆる危機の枠外にあるべきだそうだ。ロシアは現在ロシアに対して非友好的な政府が権力を握っている国々とすら文化方面の協力を発展させる用意がある。また、ロシアの大学に学ぶ外国人学生の数を増やし、あるいは逆に、近隣諸国におけるロシア語における教育プログラムを拡大することに前向きだ。
ここまでを伝えてУП、「ちなみに」と一言置いて、「ロシアはウクライナに対する侵略戦争を行いウクライナの文化施設や図書館を破壊し占領地でウクライナ語図書を根絶やしにし、文化人含むウクライナ人を迫害している」УП
※ニュース読みの基本的な技術だが、ラヴロフのごときがこのように語るとき、それは何かこの世の事実を語っているのではない、そのように言うことで自分にとって好適な状況を創りだそうとしているだけ。(この場合では、ロシアの対外的イメージをよくしようとしている)

11/19

■いつもの
夜襲:18→19日の夜、シャヘド20機飛来、うち15を撃墜。УП
敵の損失:一日の敵の損失は人員1190人、戦車13両、装甲車25両だそうだ。УП

■交通事故
2023年1月~10月で1万9743件の交通事故が発生、2492人が死亡、2万4774人が負傷した。警察発表。「敵(ロシア)が我々の戦士あるいは市民を殺害する数の方がよほど多いのは無論だが、交通事故なぞでこれだけの市民が死傷しているというのは、全くやるせない」УП
※なお日本は昨2022年一年間の交通事故発生件数およそ30万1200、死者数は2610人(NHK)。ウクライナの人口は日本の3分の1なので単純に3倍死亡事故が多い。ウクライナの道路はワイルドな環境で、舗装の質が低く、信号等の整備が行き届いておらず、人たちの運転は粗く、また技術が低い。

11/18

■夜襲
17日晩から18日早朝にかけて数次にわたりウクライナ各地を計38機のシャヘドが襲った。撃墜はうち28。なかなかに苛烈。УП
オデッサ州の石油基地および送電網が損傷し、オデッサ州およびザポロージエ州で416集落が停電した。被害人口は2万1000人。УП

■機雷
黒海のウクライナ沿岸でリベリア船籍の商船が軽微な損傷を負った。ユージヌィ港から穀物を積み出しルーマニアのコンスタンツァ港を指して公海を航行中、漂流していた機雷に衝突したものと見られる。УП

11/17

■静かな冬
暖房シーズン最初の1か月が経過したが、電力システムは安定しており、供給不足は起きていない。燃料備蓄は十分であり、各設備の状態も満足いく状態である。防空システムも入荷しつつある。シュムィガリ首相。УП

■防空警報長すぎる問題
ゼレンスキーが最高司令部会合で「敵戦闘機の発進に伴う防空警報が長時間に及びすぎ国家の活動が麻痺してしまっている、どうにかせよ」と国防省・参謀本部・内閣に下命。MiG戦闘機が飛ぶと超音速弾道ミサイル「キンジャル」が発射される恐れありとて防空警報を入れる決まりである。敵は頃日MiGの長時間飛行(空中給油を伴う)を多用しており、その間どうしてもウクライナは経済が止まりサービスが止まり子供の勉強が止まる。とはいえキンジャルが発射される現実の脅威がある以上は警報を鳴らさざるを得ない、のであるが、国家最高指導部の判断でMiG発進に伴う長時間の防空警報の廃止が決定されることはあり得る、と軍。УП
※市民一人一人の目線では多くの場合サイレンが鳴っても(少なくとも自分のところには)ミサイルは飛んでこないので、「虚報」と主観され、防空警報そのものの軽視という態度につながり勝ち。その実例をわが義父に見た。「なぁに大方ベラルーシの方でまたMiGが飛んだのさ」←このセリフ何度も聞いた。して庭のリンゴを捥ぎ続けた。

■ドニエプル左岸
ウクライナ軍がドニエプルを渡河して左岸に入っている。ゼレンスキーが一部写真を公開した。УП

軍によれば、左岸への進出の目的の一つは、敵を右岸から遠ざけて市民の安全を守ることだそうだ。左岸で部隊が従事しているのは破壊工作・襲撃・偵察行動。敵の人員装備集積地や食糧弾薬補給路を突き止め然るべき手段で攻撃・殲滅する。これまでに敵1216人を殺害、2217人を負傷させ、戦車24両ほか各種装備を破壊した由。УП

■「ウクライナでハンガリー語が迫害されている」
欧州における親露親プーチンの枢軸をなすハンガリーのオルバン首相が議会で述べた:ザカルパチエ(※ウクライナ西部カルパチア山脈地方、ハンガリーと国境を接し、ハンガリー人が多い)におけるハンガリー語および教育を巡る状況は、独立ウクライナよりソビエト時代の方がマシだった。ウクライナは戦争にも関わらずカルパチア市民への懲罰を続けている。ちなみに戦争だが、ウクライナは戦争の目的を明確に定めていない。国際的に認められた戦争目的を持たない戦争を行う国を支援するというのは非常に難しいことだ。УП
※自衛権の行使という明証的な理由と目的を持つ戦争についていけしゃあしゃあ言うものよと呆れるが、さて、ザカルパチエで言語抑圧が起きているのかどうかは、現地に生活してみないことには全く何とも。ウクライナが全土でロシア語に対して行っていることは明白に弾圧であるが、これには斟酌すべき事情はある(東し隣のテロ国家による<ロシア世界>とかいう死の香りする抱擁への対抗)。同じようなことを西ではハンガリー語に対してもしているのか?

■また千人越え
17日朝の大本営発表では先立つ一昼夜の敵の損失は人員1140人、砲29門、装甲車11両、戦車27両。УП

11/16

■減ってく敵
16日朝の大本営発表では先立つ一昼夜の敵の損失は人員1130人、砲36門、装甲車17両、戦車11両。УП

西側の複数の高官(匿名)によれば、大規模侵攻はじまって以来のロシア軍の損失は30-40万人と見積もられる(※ウクライナ軍参謀本部によれば31万5000人)。英ガーディアン紙が伝えた。中でも、ドネツク州アドヴェーエフカ(アウディーイウカ)における損失は、1日500~1000人を数えると。
戦況の評価も。彼らの見立てでは、ザポロージエ戦線における反転攻勢は事実上「終結」した。一方のヘルソンでは最大3旅団分の人員がドニェプルを渡河した。だが左岸におけるウクライナ軍の前進は夏季反攻と同様、遅々としたものになるだろうと。УП

■中国
中国外務省によれば、米中首脳会談によって「ウクライナ危機」に対する中国の態度が変わることはない、そうだ。然り会談ではウクライナや中東など国際問題にも言及されたがどちらの問題についても中国は明確かつ一貫して平等と公正の側に立ち、和平そして緊張緩和のための交渉の推進を是とする立場だとのこと。УП

■シャヘド
ジャブは続いている。15→16日の夜はシャヘド18機が飛来、うち16機撃墜。УП
戦略産業相によれば、ウクライナはイラン製カミカゼドローン「シャヘド」のウクライナ版といえるドローンの量産体制を確立しており、生産量は月数十機に達している。УП

■レゴ
世界のレゴクリエイターがウクライナの観光名所をレゴで再現する→一般のレゴファンがこれを競売で入手する→売上がキエフ州の戦災復興に当てられる、というプロジェクト。#LEGOwithUKRAINE。
すでに3作品が先行公開されている。キエフの「母なるウクライナ」像、クリミアの「燕の巣」、マリウポリの給水塔。皆さんもご参加してみては。УП


11/15

■米中首脳会談
サンフランシスコでバイデンと習近平が対面会談。会談で習は米中関係を「世界最重要の二国間関係」と規定、「地球は十分に広く、米中双方の発展を容れる」とした。委細割愛。УПУП

■ファリオン炎上・続々
リヴォフ国立工科大ウクライナ語科教授イリーナ・ファリオンが教授職を解かれた。軍(それも英雄的戦功あった部隊)の侮辱はさすがに許されなかった。УП
本人は裁判所に提訴する構えだそうだ。全てのフィニッシュは本質的にスタートである(кожен фініш – це по суті старт)とか大見得切って。国粋主義者がカッコいいこと言おうとして外来語に訴えるのダサすぎ。УП

■プーシキン像と「ドミノの使徒」
首都キエフでプーシキン像が撤去された。キエフ工科大そばとのことなのでわが義父母も青春時代これを見て過ごしたであろう。文学好きの義母は定めしその前で詩の一説も誦したろう。

既に心ある反露活動家に塗料をぶっかけられて「おさるさん」のお顔はまっかっかだった

ウクライナ文化情報政策省、本件にコメントし「キエフのプーシキンがまた一人減った。脱ロシア化(デ・ルシフィカーツィヤ)進行中」УП

ちなみに本プーシキン像は5月に「銅像ドミノの使徒」セルゲイ・ジャダンが訪れていた。

ジャダンは作家・歌手。ウクライナ各地を巡って土地土地のプーシキン像とツーショットを撮り、何でもない実に何でもない(断じて何かを示唆するものではない)メッセージとともにSNSに投稿、そのプーシキン像はしばしば追って撤去される

同様のことがハリコフで起き、ジトミルで起き、ドニェプルで起きた。要するに彼は「ここに倒すべきロシア帝国主義の記念碑がありますよ」と社会の関心を喚起してプーシキンドミノを加速しているのだ。

そんなジャダンの最新のポストがこちら。

キエフのチャイコフスキー記念ウクライナ国立音楽アカデミーの表札とツーショット。名称からロシア人音楽家「チャイコフスキー」の名を剥奪せよと暗に訴えている。УП

ちなみにオデッサにも有名なプーシキン像があるが、「その文化的価値に鑑み存置」というのが今のところ市の方針である(ОЖ)。実はオデッサのプーシキン像はキエフやハリコフのそれとは異なる事情を抱えていて、オデッサとプーシキンはリアルに関係がある(1年ほどオデッサに滞在)。他の街とちがい、オデッサにはプーシキン像が置かれる必然性があるのである。

左上が有名なオデッサ市庁舎前のプーシキン像だが、市内各所にプーシキンをモチーフにした胸像やレリーフがある。ОЖ

なお、当記事で折々伝えている脱ソ脱露キャンペーン(地名の見直し、銅像ドミノ)の根拠法は、23年4月大統領調印の露プロパガンダ禁止法だる由。同法はソヴィエトおよびロシアの諸象徴の準備・拡散・使用を禁ずる。

11/14

■ファリオン炎上・続
①ファリオン女史がアゾフ連隊および第3独立襲撃旅団を侮辱(隊内でロシア語が使用されていることを批判して「こんな奴らはウクライナ人とは呼べない」等と)②同連隊および旅団の幹部が放送禁止用語を用いて女史を非難③女史、ゼレンスキーおよびザルージヌィに対し、これら批判者の処分を求める(下卑た言動によってウクライナ軍の名誉を棄損した、として)УП
①女史が教鞭をとるリヴォフ工科大の学生たちがファリオンの解雇を求めデモ②同大教授会「状況の倫理的・審美的側面を分析する作業班が創設された。解職ないし労働契約の終了の条件は明確に規定されているが、現時点で条件は満たしていない。作業班は来週にも結論を出す」УП
戦時下ウクライナにアンタッチャブル(神聖不可侵)なもの2つあり、軍、そしてウクライナ語。それぞれの権化が対立している。国情の乱れ。ウクライナ社会は弱っている。

11/13

■祝!100隻
このほど100隻目の船がウクライナの黒海港から出発した。ロシアの穀物合意からの離脱(7月17日)以来100隻目。УП
※反転攻勢というといくつの集落を解放したとかどっちの方角に何km前進したとか陸上の成果に目が行きがち(そして僅少との印象を抱きがち)だが、黒海西部海域からのロシア艦隊の追い落とし。これこそ23年夏季反攻の最大の成果であり、これは本当にすごいことであった。拍手。そしてこの成果に至るまでの長いプロセスで死んでいったウクライナ兵士たちに深く叩頭する。

■ファリオン
あちらの人の炎上は行くところまで行くな。元国会議員で言語学者、ウクライナ国粋主義者のイリーナ・ファリオン女史が①ロシア語を話すウクライナ軍人を侮辱して炎上→②自分の人気を誇示するべく支持者からの応援メッセージのスクリーンショットをSNSに連投→③その中にクリミア在住の親ウクライナ学生のメールがあり、実名・出身地・学校が明記されていて個人が容易に特定可能だった→④他のSNSユーザーから「せめて名前を隠しては」と助言があったが「請われてもないのに助言などするな、ブロックするぞ」と激昂→⑤果たして当該学生のもとにFSB(ロシア連邦保安庁)が駆けつけ、学生はカメラ前で改悛の辞をロシア語で述べ立てることを強要された→⑥ファリオン「私のせいでどこかの学生が拘束されたとかいうのは私に対するいつもの情報工作だ。何百もの人が私を支持してくれていることに感謝したい。だがその人たちが一体どこにいるのかなど、私の知ったことではない」УПУП
※政権の10年来の異常に偏向した言語政策と戦争という異常状態が生み出したモンスター。社会の害虫でしかないので、排除されてほしい。愛国者の皮をかぶった売国奴。

11/12

■この冬を凍えないために
ゼレンスキー、晩方の定例ビデオメッセージで:11月ももう半ば近い。発電所等のインフラに対するドローン/ミサイル攻撃の頻度の増大に備えねばならない。ロシアは冬に向けて準備を進めている。この冬を越えるために何ができるかということに、つまりは①防衛そして②テロリストらへの返報ということに集中すべきときだ」「防空システムについてウクライナを助けてくれた全てのパートナーに感謝を。米国、ドイツ、フランス、英国、ノルウェー、イタリア、ルーマニア、スウェーデン、オランダ、スロヴァキア、チェコ、ブルガリア、ポーランド、バルト諸国、その他(※当然ながら日本の名なし)。今はまだ公にできないこともあるが、ウクライナの空の守りはすでに昨年よりも強化されている。だがそれでもまだ全土を完全にカバーできてはいない」УП

■この冬を凍えさすために
陸軍広報によれば、ウクライナ軍は寒の到来とともにロシア軍の補給路を切断して凍えさせ、退却を強いる構え。「天気は作戦行動に影響する。雨が降れば航空機やドローンの使用頻度は減るし、車両の通行は難しくなる。変わらないのは砲弾の使用量くらい。ゆえに軍は気象観測班の天気予報を作戦立案および遂行に利用している」「いま最大の課題は、ロシア軍の前線と後方の補給・兵站経路を断することだ。これができれば、雨と寒気を利して、(火でなく)寒気によって連中を追い落とすことができる」УП

■敵の損失(また大台越え)
12日朝の大本営発表では、先立つ一昼夜のロシア側の人的損失は1100人。УП
ISWによれば、ロシア軍は装備および高度人材の欠損のため、歩兵の正面突破に活路を見出さざるを得なくなっている。「ザルージヌィ・ウクライナ軍総司令官が『拠点戦』に関するコラムに記した『軍事的均衡』問題をロシア流に解決するに際し、ロシア軍参謀本部が支配的戦術として大きく期待をかけているものこそ、この正面突破であるらしい」УП

11/11

■キエフ攻撃(未遂)
朝方、52日ぶりにキエフにミサイル(弾道弾、「イスカンデル」と思しい)が放たれた。首都到着前に撃墜され、衝撃で郊外の家屋18棟が損傷、インフラは無事。УПУП
今回は爆発音が鳴ってから空襲警報が発令された。弾道ミサイルの場合はそういことがよくあるという。弾道ミサイルはあまりに速く、レーダーで捕捉するのが困難なため。УП

■また千人越え
11日朝の大本営発表では、先立つ一昼夜のロシア側の人的損失は1130人。УП
定めしアドヴェーエフカあたりで肉挽かれている。

■2024年度国家予算
議会で2024年度国家予算案が可決した。歳入は1.768兆グリヴニャ(※以下、G。数字4倍で円に換算)、支出は3.35兆G。後者のうち最大の費目は国防・安全保障で1.69兆G(ドローン生産430億G、武器弾薬生産430億Gなど)、GDPの実に22.1%を占める。
会計の前提となるマクロ指標(見込み):GDPの実質成長率は4.6%水準、インフレ率9.7%、対ドルレート(年平均)は1ドル=40.7G。УП

11/10

■オデッサ州攻撃
10日晩方ミサイル2発がオデッサ州オデッサ地区に。1発はダーチャ集落へ、3人負傷。1発は港湾インフラに着弾した模様。УП

■電力インフラはハイブリッド攻撃にさらされる
米国のサイバーセキュリティ会社Mandiantによれば、ロシアのハッカー集団Sandwormがウクライナの発電所をダウンさせるため新たな方式を試みている。同集団は昨年の暖房期にもミサイルによる物理攻撃と同期してウクライナの電力網に攻撃をしかけた。ロシアはサイバー部門への投資を拡大している。УП


■世論調査:子供の心理への戦争の影響
「レイティング」が戦時下における児童の心理状態についての調査を行った。対象は母親。
・戦争に関わる事象(爆発などを指すと思われる)の目撃者となり、あるいは、その体験者となった児童の割合、62%。
・自分たちの住んでいる場所が「危険だ」と考えている母親、25%。
・自分の子供の身体的健康状態は「非常に良好」ないし「良好」と考えている母親、79%。
・自分の子供の精神的健康状態は「非常に良好」ないし「良好」と考えている母親、73%。
・大きな音を怖がる子供、48%。
・財政的支援の必要性を訴える母親、38%。食糧支援については、14%。非食糧支援(衣服、生理用品、毛布など)については、13%。
・戦争によって子育てに関する諸々の問題の自力解決が困難になったと考える母親、54%。
・学校にオフライン(ないしオンライン併用)で通わせているという母親、94%。
・「通わせていない」6%。うち、「学校が閉鎖したため」4割、「安全上の不安から」6割。УП

■スナク英首相、УПに寄稿
英国のスナク首相が「我々は皆様とともにある、勝利の日まで!」と題する短い文章をУПに寄せた。英国の過去・現在・未来にわたる支援を誇り(兵士3万人の訓練、世界に先駆けての戦車または長距離弾の供与ほか)、政府・軍・国民一丸でウクライナを支持していると勇気づけ(英国の津々浦々でウクライナ国旗が翻っている由)、反転攻勢の成果を称揚し(黒海艦隊を黒海北西海域から追放し、クリミアをプーチンの強みでなく弱みにしてしまったこと)、「ウクライナに栄光あれ」の常套句で締めた。УП
※こういう手があるのだ。こういうことはやっていいのだ。日本の首相もやればいいのに。

■紅葉にっぽん宇宙から見ると
こんなのをウクライナの報道で知るのも妙なものだが。Copernicus Sentinel-3とかいう地球観測衛星が秋の日本列島の写真を収めた。11月1日の様子。

こういう話題が海外メディアに取り上げられることの積み重ねによって日本のよきイメージが形成され、それが遠く、在留邦人一人一人あるいは国全体の安全保障に結びつく。「日本は千の島からなる国、写真に明らかなように山地が多く国土の68%が森林、相対的に低い気温と短い日照時間により木の葉が赤ないし茶色の色調を帯びる(色調は樹種・気候・標高・日射量による)。対照をなすのが地図で灰色の領域=都市部であり、上図で最大のそれが日本の首都、世界最大のメガポリス、東京である」。УП

11/9

■1000人
8日一日でロシア兵は1080人死んだ。大台ごえは珍しい。最近は7~900人くらいで推移していた。こうした数字は毎朝(先立つ一昼夜分の戦果として)参謀本部より発表される。ロシア側の死者総計はすでに30万を超えている。むろんウクライナ側のカウントである。УП
※告白す、私にとっては、ロシアの兵士たちこそより数字である。そこに内実とか立体性を見ない。それが何人死んだという数が大きければ大きいほど、直観的に嬉しい。たぶんこれは、数字が持っている本来的な脱人格化・抽象化作用のせい。どの戦争のどの陣営も自陣の損失について発表することは決してない(ウクライナ側はウクライナ側の、ロシア側はロシア側の戦死者数を決して公表しない)。逆に、敵方のそれについては繁く言う。情報の受け手(たとえば私)は、それに馴致されるうち、果たして敵を数にしてしまう。何か抽象的な、非人間的なものに、殺しやすいものに、死んでも心いたまないもの、増えれば増えるだけ嬉しいものに。戦争の悪魔にとってそれは望ましいことだ。あるいは、必要でさえあるかもしれないことだ。人間は人間として現前するものを愛してしまう危険を常にはらむから。だから大本営発表はさんすうを愛する。

■オデッサ港は死なず
オデッサ諸港より新たに6隻の穀物船がボスポラス海峡へ向けて出発した。近く別の5隻が入港の予定。露ミサイルが外国商船を損傷させその乗員を負傷させた一件(11/8)にも関わらず、ウクライナが設定した黒海回廊の利用、オデッサ諸港からの/への出入港は継続している。
8月8日以降、出港は91隻(農産物・鉱物330万トンを輸出)、入港は116隻。УП
※メモ:大オデッサ諸港(порты Большой Одессы)=オデッサ港、チェルノモルスク港、ユージヌィ港

■世論調査:ウクライナはあと何年でEUに加盟できる?
2年……20.6%
3-4年……19.9%
5-6年……14.3%
7-9年……5.7%(ここまで計、10年以内にEU加盟と考える人、60.5%)
10-15年……3.7%
15年以上……2%
Never……5.7%
(ラズムコフセンター、УП

■少数民族の権利保障
そのEU加盟の条件の一つとなっているのが民族的少数派の権利保障だ。たとえばハンガリーはウクライナ国内のハンガリー人の権利が十分保護されていないことを理由にウクライナのEU加盟プロセスをブロックしようとしている。これについてウクライナ欧州・欧州大西洋統合問題担当副首相ステファンシナ女史、「ハンガリー人コミュニティの環境改善について9月にウクライナ⇒ハンガリーへ詳細なロードマップを提出しており、これにはハンガリー語を母語とする児童への教科書の支給などの具体的な方策が組み込まれている。ハンガリーと政治的な相互理解を見出すことは可能だと確信している」УП
なお女史によれば、少数民族の権利保障に関するEUとの交渉において「ロシア人少数派」の保護については俎上に上ってすらいない。なんとなればウクライナに民族的少数派たるロシア人など存在しないから。ロシア人少数派を自称するロシア人コミュニティは法的にはウクライナに存在しない。なるほどロシア語を話すウクライナ人はいる。自分もオデッサ出身で気分次第でウクライナ語も話せばロシア語も話す。どちらで話すか決める際にモスクワの支持など必要としていない。こうした立場をブリュッセル(EU)も共有してくれている。だそうだ。УП
※少数派の権利保障の具体策の一つがある言語を母語とする子弟がその言語で書かれた教科書で学校で学べるようにすることであるならば、ロシア語を母語とする子弟がロシア語で書かれた教科書で学校で学べないウクライナの現状をどう理解したらいいか。なるほどロシア語母語話者は少数派というにはあまりに多い、民族的少数派としてのロシア人など存在しない、よって少数派の権利保障の議論の対象にはならない? よろしい、ではより広く、人権の保障。問題がないとは到底言えまい。
まずは戦争が終わらないことには、とは思う。だが終わったとき、ウクライナが自らの中のロシア性といかに和解できるか、ということが、本当に大事になる。ウクライナが寛容性を回復(樹立)する日の到来を心から願う。

■УП記者パーヴェル・カザリン論考(抄訳)
この冬に備えてエネルギーシステムは強靭化したかもしれないし防空能力は敵の攻撃力と均衡を達成できているのかもしれない。だが精神的な耐性という面では、昨年より脆弱な状態で冬を迎える。社会全体に明らかに疲労感が蔓延している。

昨年は軍事的な成果の面では上り調子な中で冬を迎えた。2月以来キエフ・チェルニーゴフ・スームィから敵を追い落とし、蛇島奪還・ハリコフ反攻・ヘルソン解放ときて、冬さえ来なければ/あるいは冬が明ければすぐに、同じ勢いで攻め立てて戦争を終わらせられるという気分があった。だがザルージヌィ総司令官がこのほど述べた通り、今夏の反攻作戦は結果、電撃的なものとはならなかった。ロシア軍は立て直した。いま二度目の冬を迎えるウクライナにもはや高揚感はない。「これは短距離走ではない。マラソンなのだ」

軍事的な成果は、いわば社会にとって麻酔である。対立を覆い隠し、不一致を和らげる作用がある。「勝利には多数の父あり(※)」、誰もが勝利の陰に依って立つ場所を見いだすことができた(=自分は勝利に貢献しているという感じを誰もが持ち、我慢することができた)。だが今は前線で現状維持をかけた拠点戦が行われている。こうなると全てが難しくなってくる。社会はなまじ勝利を約束され過ぎ、フラストレーションが高まっている。

ウクライナには潜在的な分断線がいくつかある。前線と銃後の間。軍指導部と政治上層部の間。現大統領とその前任者陣営。また汚職、アレストヴィチ(前大統領府顧問)、動員、ファリオン(元議員、国粋主義者、ロシア語話者軍人への侮辱で目下炎上中)といった、取り上げればLIKE/PV/フォロワー爆増必至のテーマもいくつか存在する。前線の話題が乏しくなれば、銃後の話題が沸騰する。各陣営が敵方に対する自陣の立場を強化する誘惑にかられ出す。SNSに要らんこと書いたりメディアの取材で不用意な発言したり海外メディアにインサイダー情報を流したりする。それらが多く読まれるのに引き比べ、その後行われる火消しや訂正は十分に耳目を引かない。暴露ひとつごとに澱が残る。その澱の堆積が、いつか現実を作り変えてしまう。予言の自己成就(самосбывающееся пророчество)というやつ。銀行倒産の風説で取り付け騒ぎが起きて本当に銀行が倒産する、みたいな話。結果たとえば、軍と政権の間に確執が存在すると考えるウクライナ人の割合は、かつて14%、いま32%。政権支持率は低下し、戦場の兵士は銃後への不信を募らせている。モスクワのどこかでシャンパンを開ける音が聞こえる。

予言の自己成就は発言者(公人)・メディア・拡散者(一般市民)の3者の協力なくして成り立たないのだが、洪水についてそれを構成する水の一滴一滴は自分の責任というものを感じない。げんに国家に楔を打ち込みながら「俺のせいではない」と口々に叫んでいる。「敗北は孤児※」。もともと政治不信が強いウクライナのこと、拠点戦が長引けば長引くほど、政権への信頼は瓦解していく。

世論というものは自然発生的なもので、言い始めるのは誰とも知れない、君が言わなければ別の誰かが言い出す。だから、より大事なのは、誰が風説を収めるかということなのだ。政治家、役人、メディア編集長、オピニオンリーダーよ、分断を引き起こすような風説をまき散らすな、むしろそれを収めて社会を結束させる責任を果たせ。どだい戦争が終わるまでは今の政権のままで行くしかない。作戦が継続しているうちは軍指導部を交代するわけにはいかない。それでなくともこの冬は、困難なものとなることが必至なのだから。УП

※「勝利には多くの父、敗北は孤児」。ジョン・F・ケネディの名言として伝えられる。

11/8

■G7会合@東京
東京でG7外相会合が開かれ、対ロ制裁の拡大とウクライナ支援の継続が合意された。ウクライナについては現状と展望に対する評価を含め率直な議論が行われたという。いわく、中東における緊張の高まりという条件の中でもG7は一致結束して「ウクライナ支援に引き続き関与していく姿勢は揺るぎない」という明確なメッセージを国際社会に送る、と。
日本独自の支援としては、引き続き総額76億米ドルの支援を実施していく、その一環として、キエフ市民の越冬用に2基の変圧器を供与した由。また日本は復興と再建に向けた中長期的支援が極めて重要と見ており、来年初頭に経済復興に関する二国間協議を行う計画であるという。УП
※日本は今こそ揺るぎなきウクライナ支援国として存在感を示……というか、ウクライナを大いに安心させ勇気づける、独特の役割を果たせるのではないか。武器を送れない日本は二列目の支援国である。金額の多寡に関わらず、ウクライナ国民の主観としては(残念ながら)。だが、少なくとも米欧のように、反転攻勢の遅れや中東緊張によって、議会や世論が二分されてはいない。いっそ支援やめようかとかやっぱ停戦じゃないかという話にはなっていない。いってしまえば日本にとってウクライナの問題はしょせん対岸の火事であり、欧州と引き比べて、社会の関心ははじめから低い。それがかえって、社会における嫌悪とか否定的感情の噴出も予防している。なにげに首尾一貫揺るぎなくウクライナを物理的にも精神的にも支援してくれている西側の有力国、しかも今年、G7議長国。そんな日本のプレゼンスが今こそ輝く。

■オデッサ州の港湾攻撃でリベリア船が損傷
8日晩方オデッサ州のとある港にリベリア船籍の商船が入港したところをロシアのミサイルが襲い(黒海上の戦闘機から対レーダーミサイルKh-31P一発)、フィリピン人船員3人が負傷、ウクライナ人操舵手が死亡、港湾労働者1人負傷。この船は鉄鉱石を中国に運ぶ予定であった由。
ロシアが今年7月に穀物合意から一方的に離脱したことを受けウクライナは独自に臨時回廊を設置、ウクライナ諸港を利用して穀物・鉱物等を輸出する商船がロシアからの攻撃で損害を被った際に補償を行うメカニズムを設けた。本事例が初のその適用対象となる。ただ、ロシアが民間の船を直接攻撃する事例が発生したことで、黒海回廊の存続(ウクライナ諸港の利用)自体が危ぶまれることになる。УПУП

■とあるオデッサ出身兵の死
兵士ユーリイ・グロダンが死んだ。オデッサでケーキ屋を営んでいたが22年4月の攻撃(集合住宅「ティラス」破壊弾)で家族全員を失い入営、最前線で戦い続け、散華。十字架のペンダントで身元が確認されたという。
2022年4月23日。その日はパスハ(復活祭)の前夜であった。久しぶりの休日、家族と過ごしていたところ、ちょっと買い物に出て、戻ったら「彼の世界は崩壊していた」。生後3か月の娘キーラ、妻ワレリヤ、母リュドミラがロシアのミサイルで即死。その後ユーリイはウクライナ軍の戦列に加わる。まずアゾフ連隊、次いで第3襲撃旅団。УП

一家が笑って再会している天国というものを想定しないととてもやり切れない。
復讐鬼として過ごしたのだろうかその一年半の軍務で何人ロシア兵を殺すことができたか知らないが、なお勝利は遼遠である。今どうして戦うのをやめることなどできるだろう、ここでやめてしまっては、祖国防衛のために散っていった戦士たちは犬死ということになるではないか……と、私などが言うのは明らかにおかしい。が、そういう感情は、あることだろうと思う。
十字架でやっと身元が知れたということは、顔面ぐしゃぐしゃであったか。全くやり切れない。戦争は人間の顔をしていない(у войны не человеческое лицо)

11/7

■ケルチの船舶攻撃余波
英国防省のインテリジェンスレポートによれば、クリミア東端のケルチの造船所を攻撃してミサイル艦「アスコルド」を損傷させた一件(11/4)はウクライナとしては過去最遠方の攻撃であり、これを受けロシア軍は自身の艦船を前線からさらに遠い所へ引き下げざるを得なくなる可能性がある(УП)。場所↓

ISWも当該艦の損傷は深刻であるとの見方を示している。なおウクライナ軍による一連のクリミア攻撃、特に今年6月以降のロシア黒海艦隊関連施設への攻撃の狙いは、ロシアがクリミアをウクライナ南部における作戦の橋頭保ないし後背地として利用する能力を低下することにあるとISW。УП

■オデッサ美術館の被害(追報)
展示室の半数、天井、壁が損傷したほか、ミサイルが直撃した通り(ソフィーエフスカヤ)に面した窓は全て砕けたそうだ。

これで展示品がほぼ無事(軽微な損傷のみ)というからいっそ不思議だ。軍人は殺し軍関連施設は破壊するが市民および民生施設はいっさい棄損しないので有名なロシアの超高精度ミサイルが今度も曲芸を演じたのか。
不明を恥じるが今度はじめて知った事実がいくつかあるので記しておく。まず、この建物を設計したのはイタリアの建築家フランチェスコ・ボッフォだそうだ。有名なポチョムキンの階段、市庁舎、キルハ(ドイツ教会)、デューク(リシュリュー伯爵)像両脇の湾曲建築など、今日のオデッサの顔となっている美麗な建築は大概この人の作。以下箇条書き
・もともとロシア帝国のとある公爵家の屋敷であったが19世紀末に芸術庇護者グリゴーリイ・マラズリが買い上げ、市当局に譲渡した
・本年初旬、UNESCO世界遺産の構成資産に
・ちょうど一年前(11月9日)撤去されたエカテリーナ2世像は当館に収蔵されている(УП

■オデッサの銅像ドミノ
ウクライナで進行中の脱ソ&脱露キャンペーンにおいて地名・道路名称の変更と両輪をなすのが銅像ドミノ、即ち、ソ連またはロシアにちなむ人物の銅像を引き倒していく運動。私が勝手にそう呼んでいる。
さて明日9日、オデッサ市議会歴史地名委員会が市内の10ほどのの銅像の去就について審議を行う。レフ・トルストイ広場のレフ・トルストイ像ほか6体は撤去の方向。生理学者イワン・パヴロフほか3体については碑銘から「ロシアの」「ロシア人」(русский)の語を取り除く。市庁舎前のプーシキン像と大聖堂前脇のヴォロンツォフについてはその芸術的価値に鑑み存置の方向(ほっ)。УП

11/6

オデッサ受難

5日晩のミサイル攻撃でオデッサ中心部に被害。象徴的なのは世界遺産「オデッサ旧市街」の構成要素であるオデッサ国立美術館の損傷。美術館のすぐ前の道路にミサイルが落ちた。

↓トゥルハーノフ市長が館内を視察した様子。幸いにも収蔵品はほぼ無傷だった。

11月6日は同館の開館記念日(創立124年)であった。ロシア流「おめでとう」の一発というわけ。職員は祝典を取りやめて瓦礫の撤去に当たることになった。

オデッサ国立美術館はオデッサ港からすぐ崖上に立っており、立地が災いしてこれまでにもロシアのミサイル攻撃で損傷を被っている(22年7月、23年7月)УП

この夜の攻撃では他にオデッサ市内の集合住宅20棟が損傷、8人が負傷した(УПУП)。他、ヘルソン州では一晩で87発と記録的な数の爆弾が投下され(УП)、各地にシャヘド22機・ミサイル4発が飛んだ(うち15機・1発撃墜、УП)。中程度の攻撃。千度目の問い:За что?(何の罪があるとてこのような仕打ちを受けねばならないか)

秋、冬、ミサイル

■記録的な暖秋
雪降ってもおかしない秋のウクライナだが今年は異常気象と言えるほど暖かい。キエフは4日の平均気温が12.9°С(最高気温16.1°С)で観測史上最も暖かかった。УП
↓キエフの10日間予報(8水~17金)

最高気温10度前後の日が続く。次、オデッサの10日間予報↓

義父母も毎日あまり暖かいので驚いている。

■史上最も困難な冬
クレバ外相:我々は史上最悪の冬に備えている。タウルス(ドイツの長距離ミサイル)が手に入らないなら仕方ない、だが防空システムの取得は諦めるわけにはいかない。ウクライナは発電所を攻撃から守るべくベストを尽くす。ロシア人は学習する。連中はもう一度、ミサイルを用いて、我々の耐久力を試しにかかるだろう。УП

■ロシアのミサイル備蓄
ウクライナ情報総局によれば、ロシアは10月、新たに115発の高精度ミサイル(射程350km以上)を製造した。「Kh-101」40発、「イスカンデルM」30発、「カリブル」20発、「イスカンデルK」12発、「Kh-32」9発、「キンジャル」4発。これでロシアの高精度ミサイル備蓄は870発になった。情報総局の見立てでは、ロシアは寒の到来でウクライナの電力負荷が高まるのを待って電力網への攻撃を再びしかける構え。УП

他、ウクライナ国内ニュース

■選挙は行いません
選挙やるやらない問題に決着か。ゼレンスキーが晩方の国民向け定例ビデオメッセージで「今は選挙にかまけているときではない」と明言した。「今は戦時中だ。こんなときに選挙の話題で社会を騒がすことこそ無責任で軽率だ」УП

■ザルージヌィ側近爆死
ザルージヌィ総司令官の補佐官が自宅の誕生日パーティに本物の手榴弾を持ち帰って子供の前で披露していたところ誤ってなのか何なのか、起爆させてしまい、当人(39)は死亡、息子(13)は重体。手榴弾は西側モデルの新式のもので、それをいくつか函詰めしたものを同僚が誕生日プレゼントとして同人に贈ったらしい。УПУП

■高級軍人のキャリアアップ
ザルージヌィ総司令官がオデッサ法律アカデミーで博士論文を執筆中らしい。テーマは国家機密ゆえ非公開。かと思えば9月には国防省情報総局のブダーノフ長官もオストロフ・アカデミーの大学院(政治学科)に入学しているし、なんだろう。戦争の片手間に勉強してるのか。УП

■ウクライナ国産ドローン
ウクルオボロンプロム(ウクライナ国防産業)社のスメタニン総裁によれば、新型のカミカゼドローンが量産体制に入った。既に国防省の発注を受けているという。飛距離は1000km。ロシアの「シャヘド」のウクライナ版といえるものだそう。УП

■ロシア語コンテンツボイコット
市民団体「青年民主イニシアチブ」が行った「戦時下のウクライナ人の文化慣行」と題する調査では、ロシアの大規模侵攻が始まってからウクライナ人の62%がロシア語コンテンツを見たり読んだりするのをやめて、ウクライナ語のそれを見・読むようになった。また31%がロシア語コンテンツの消費を著しく減らし、ウクライナ語のそれへ切り替えた。
総じて、戦争を機にコンテンツの言語面が「変化した」という人78%、「変わらない」22%。УП

■街路樹の新要件「倒れにくいこと」
先般キエフを暴風が襲い立木が1300本倒れた(10/28参照)ことを受け、キエフの街路樹の樹種選定に際しては「暴風に対する頑健性」が考慮されることが決まった。(考慮されていなかったのか…orz)УП

ロシアがなんかやってる

■ロシアに「幸福省」新設の動き
ロシア議会上院議長マトヴィエンコ女史が「幸福省」の新設と「包括的幸福」に関する法律の採択を提案した。きも。「今すぐに、包括的幸福に関する法律を!私は夢見ているのです、提案さえしました――ロシアに幸福省を創設しましょうよ。幸福に関するあらゆる決定・あらゆる法律が通過する省ですよ。まだ賛同者は少ないですが、どうぞ皆さんも。ロシアに幸福省を創設する日の到来を信じています」きも。УП

■ロシアに「獲得領土」分配の動き
ロシア議会下院でウクライナ東部・南部の占領地(ドネツク・ルガンスク・ヘルソン・ザポロージエ)の土地の分配に関する法案が準備されている。かつて極東や北極圏について行われたのと同様のプログラムだそうだ。1億ヘクタールの土地を山分け、優先配分に与るのはウクライナ戦争の参加者だそうだ。きも。УП

■珍出馬
テロ国家ロシアの首魁で児童誘拐犯として国際指名手配されている裏地・裏道・珍という人が来年3月の大統領選への出馬を決めたようだ。「国家および国営メディアの全面支援を受けるのだろうし社会からはつとに異分子が完全排除されているのだから出馬すれば当選はほぼ確実だろう」とロイター。大統領任期は6年なので2030年まで玉座に居座ることになる。珍王いま71歳、そんとき77歳。УП

11/5

■オデッサ攻撃
オデッサへの攻撃が激しさを増している。
昼過ぎ爆発音。オデッサ州のどこかの港湾関連施設が攻撃されたらしい(УПУП)。晩方にもミサイル、爆発、詳細不明も、ひとまずオデッサ市中心部の国立美術館に損傷。УП

■ゼレンスキー
ゼレンスキーが米NBCテレビのインタビューに応じた。以下、УПが切り出したいくつかの断面。
・放送禁止用語でプーチンを罵った。「俺は力に富む。だが俺たちがいかに強く、またエネルギーに満ちていようとも、一生ずっと戦い続けるわけにはいかない。その対価はあまりに大きいから。戦争は俺たちの中でも最良の人たち、最高の英雄たち、男の中の男たち、女たち、そして子供たちを奪っていくから。だがそれでも俺たちは、あのfuckingテロリスト=プーチンに自由を奪われるのは御免なんだ。俺たちが戦い続ける理由はそれだ」УП
(fuckingにあたる箇所、ロシア語ではгрёбаный、ウクライナ語ではдовбаний)
・トランプ氏にウクライナ訪問を呼び掛けた。(大統領なったら24時間で露ウ戦争終わらせる、とうそぶくトランプになんと答えるかと問われ)「ここ(ウクライナ)に来ないと分からないことがある。たぶんバイデンはここへ来て、それを分かって帰っていった。プーチンというおぞましき人間に自分たちの領土そして独立を明け渡さない限りこの戦争をどうにかして平和を確立することは不可能だ、ということをトランプに説明するのに、俺には24分あれば足りる」УП
・ロシアはハマスを支援した。「イスラエルとパレスチナの間にすでに火が燃えていたところへ誰かが可燃物を投げ込んだ。ロシア、それからイランがハマスに資金援助を施したと確信している。УП
・ウ軍は戦略を見直し中。「より早く前進し、ロシアに不意の一撃を食らわせるべく、軍はさまざまな計画および作戦を考案中だ。敵は俺らに王手をかけようとしたがそうはいかなかった。俺は今が膠着状態だとは思っていない。戦況の推移が緩慢であることは認める。長期化による”疲れ”の存在も。だが依然としてウクライナ軍は士気が高い。俺たちを殺しにやってきたロシア兵などより余程」УП
・ウクライナを見限ればロシアのNATO侵攻を許す。「俺たちを皆殺しにしたあかつきには、ロシアはNATOの国々に攻め込むだろう。そうして皆さんは自分の息子や娘たちを戦場に送ることになるのだ。同盟諸国がウクライナ支援を継続してくれることが重要だ。俺たちは共通の価値観を守るために戦っているのだから。民主主義、とかね」УП
・防空装備を貸してくれ。「ある種の防空システムを、ただ使わせてほしい、一時的に貸与してほしい、冬の間だけ。冬はとっても大変な季節だから」УП

■ISW、ザルージヌィ記事を分析
英エコノミスト紙に①ザルージヌィの寄稿②ザルージヌィのインタビューが掲載され、後者の「戦争は袋小路に陥った」との発言が波紋を呼んだが、ウクライナに不利な現状の「拠点戦」を脱するためのヴィジョンについてより明確に示されたのは前者(①のほう)である。①で議論されているのは戦争は袋小路に陥ったという規定ではなく、静的な拠点戦でいかに動きを回復するかという具体論である。УП

■NYT、ザルージヌィ記事へのウ大統領府の反応を分析
ニューヨークタイムズによれば、ザルージヌィ(軍トップ)の記事についてウクライナ大統領府(政治部門トップ)が批判を行ったことは、軍指導部と政治指導部の確執の表れである。УП

■第128旅団
ゼレンスキーが夕刻のビデオメッセージで第128山岳強襲旅団の悲劇に触れた。いわく、この悲劇は可避であったと。このようなことが二度と繰り返されないよう事の真相を明らかにしなければならない。УП
同旅団の本拠地であるザカルパチエ(西部の山岳地帯)は3日間の喪に服す。半旗が掲げられ、毎朝9時に1分間の黙祷、各宗教の施設で鎮魂の儀が行われる。УП

■ケルチの造船工場
衛星写真で破壊のあとが克明に描き出された。損傷したと見られるのはカリブル8発を搭載可能なカラクルト級ミサイル艦「アスコルド」とのこと。ウ空軍司令官も撃沈を確認している。УПУП
⇒11/8追記:のち写真が公開された。深刻な損傷が確認できる。修復不能の可能性がある。УП

11/4

■戦果
ウ空軍がクリミア東端部ケルチの造船所に巡航ミサイルを撃ち込み露海軍の最新式戦艦(カリブル搭載)を撃滅した可能性あり。УП
ロシア側も本件を確認(「ケルチの造船工場で露黒海艦隊の船舶が損傷を受けた」)УП

■損失
3日が「砲兵の日」であることを記念して砲兵への勲章授与式が行われていたザポロージエ州の村(前線にほど近い)にミサイル攻撃があり、20人ほどが死亡した。УПУП

■EU委員長ウクライナ訪問
EU委員会のフォンデアライエン委員長がキエフを訪問。訪問目的はウクライナのEU加盟について討議することだという。УП

■ウクライナ大統領府、ザルージヌィ総司令官に釘を刺す
例の英エコノミスト紙のインタビュー記事(11/2参照)につきウクライナ大統領府のジョフクワ副長官がザルージヌィ総司令官に苦言を呈した。「私が軍人であったらまさか戦場の現実を公衆に伝えるようなことはしなかったであろう。現状や展望をありのまま明かしてしまえば侵略者の仕事がラクになるばかりだ。全ての発言がよくよく研究されるに違いない」УП

11/3

■中規模攻撃
未明、相当に集中的な攻撃があった。シャヘド38機、ミサイル1発。ミサイルは撃墜、シャヘドは24機まで撃墜。撃ち洩らしたシャヘドはリヴォフ州まで到達し、同州の死活的インフラに5機命中。死傷者なし、火災もすぐ消し止められた由。停電についての報道は見られない。УПУПУП

■ザルージヌィ記事の余波
英エコノミストの記事(11/1および11/2参照)に各方面からコメント。
ウクライナ国家安全保障会議ダニーロフ書記:ザルージヌィ総司令官は正しい、ウクライナ軍は確かにロシアとの戦争において新しいアプローチを必要としている。大規模侵攻開始からずっと西側諸国に防空支援を呼び掛けているが奏功していない。支援のテンポは緩慢だ。ロシアは力を回復し、イランと北朝鮮というお友達を味方につけた。相当に困難な状況だ。新たなアプローチの必要性については総司令部会合でもたびたび議題に上がっている。УП
ロシア大統領府ペスコフ報道官:戦争は袋小路に陥ったとの指摘には同意できない。ロシアは特別軍事作戦をたゆまず遂行していっている。掲げられた全ての目標は達成されねばならない。УП
米国家安全保障会議カービー調整官:ウクライナ支援継続の必要性の根拠となる記事だ。УП
米メディア「ポリティコ」:本記事によりウクライナ支援をめぐる米議会における政党間の議論が過熱した。ゼレンスキーもザルージヌィもロシアの防衛線突破のため、新式の戦闘機・無人機・長距離ミサイルを喉から手が出るほど欲している。その供与に向けて状況を動かすことこそがザルージヌィの狙いであった可能性がある。米議会ではウクライナ支援は必要だと考える議員が依然として大勢を占めており、ザルージヌィ記事が彼らの意思を弱めたとは考えにくい。УП

■ゼレンスキー特集の余波
米Time誌の特集記事(10/30参照)をものしたシュスター記者が自身の記事の反響についてコメント。いわく、この記事を書くにあたってコミュニケーションをとったのはゼレンスキー大統領の現職の側近たちのみである。情報提供者は匿名であることで責任追及のリスクを回避しつつ問題への関心を喚起することを望んだ。反転攻勢の困難さと技術的ブレイクスルーの必要性はウクライナ軍のザルージヌィ総司令官すら英エコノミスト紙に書いている通りで、自分の記事の反響の大きさに自分で驚いている、と。УП

■ロシア市場から去る
国際企業のロシア市場における動向をモニタリングしているキエフ経済学校(KSE)によれば、23年10月をもってGoogle含む12社がロシア市場から撤退した。
ロシアから完全に撤退した国際企業は通算で296となり、これはKSEのデータベースに登録されている全企業のうち8.3%にあたる。なお操業停止し撤退の意向を示している会社は1215(34.1%)、従前どおり操業しているのが1503社(42.1%)、新規投資を停止しているのが552社(15.5%)УП

■ロシア市場にへばりつく
日本のたばこ会社 JTI(Japan Tobacco International)がロシア市場に残ることを決定したそうだ。消費者から慣れ親しんだ製品を奪うことをしない、という決定だそうだ。
ウクライナ当局は世界の代表的なたばこ会社2社=フィリップモリスおよびJTIを「戦争の国際的なスポンサー」のリストに加えている。両社ともロシアでビジネスを行い莫大な税金をロシア政府に収めている、と。
なおJTIはWinston、Mevius、Camelなど国際的なブランドを擁し、ロシア市場で34.9%のシェアを誇る最大手。同社が2020年にロシア市場で上げた利益は20億ドル(JTグループ全体の連結利益の11%)、ロシア連邦に収めた税金は連邦予算収入の1.4%にあたる。УП
※元喫煙者の自分が言うのもなんだが、滅びてくれ。日本たばこ、JT、プーチンのスポンサーよ、恥を知れ。①毒を売っています②その売り上げでミサイルを作ってウクライナ人を殺しています、じゃ救えないだろ。なるほどたばこはそれを嗜む人に慰安と幸福と時にはインスピレーションを与えますよ。コミュニケーションを円滑にしますよ。「わが社はロシア人の平均寿命を縮めロシア人を絶滅させることに貢献しています!」というねじれた正義が御社にはあるのかもしれませんよ。あるのかもしれませんね。
戦争は憎む、だがロシア人のことは愛する、というのが光の者のさすべき道であるところ、その真逆。戦争を奨励し、かつロシア人を緩慢に絶滅させる。徹底したニヒリズム。先輩、闇だね、あなた。

■プーチン死亡説は……
先月末よりSNSで「プーチンは死亡した」との風説が流れたが、ウクライナ国家安全保障会議ダニーロフ書記ならびにウクライナ情報総局のユソフ報道官によれば、これはロシア大統領選挙に向けた一種の与論調査であり、こうした情報に好意的な反応を示したエリート層、メディア人、一般人は、処罰の対象となる。УП

■ウクライナ大統領選どうなる?
クレバ外相によれば、春に予定されているウクライナ大統領選、戦時中だから控えるべきかそれとも断行するべきか、ゼレンスキーはメリットとデメリットを天秤にかけている最中だそうだ。УП

■冬はウクライナに帰国しない
23年第3四半期の国外移民のウクライナ国内への帰還者数は想定を下回っており、歳末にかけては国外移民者の数は22年末を20万人ほど上回る見通し。冬季の暖房シーズンに合わせて露が電力破壊キャンペーンを再開することを見越して、近隣諸国で越冬する人が多いものと見られる。なお、国外避難民の数は、23年6月時点では630万人、9月時点では620万人であった。УП
※いいことだと思う。それができる人はそうしたらいい。国内人口が20万人減れば電力の負担も相当程度減じる。

■ウクライナ人の語学力
ウクライナ人の68%が1つ以上の外国語をある程度使える。英語については51%。外国語が全くできないという人は31.8%。都市部・若年層・裕福なほど外国語を知ってる人の割合が高い。УП
※「外国語」とはロシア語・ウクライナ語以外の言語ということであろう。サンプルとして:私の妻は4人家族。知識層、中産階級。父母はペレストロイカ期に学生時代を送り、兄妹はその頃の生まれ。まず父、英語かいもく分からず、ドイツ語初級。母、英語初級。兄、英語上級、フランス語中級。妹、英語中級、フランス語中級、日本語上級。

11/2


「エコノミスト」ザルージヌィ記事②インタビュー
英エコノミスト紙のインタビューでザルージヌィ総司令官が「戦争は袋小路に陥った」と述べて、そのあけすけぶりに皆びっくりした。私もびっくりした、ウクライナもびっくりした、アメリカもびっくりした。
「反転攻勢はじまって5か月。わずか17kmしか前進できなかった。思い返せばロシアも、僅々6km四方のバフムートを掌握するために、10か月も戦わねばならなかった。今はどういう状況かというと、互いに相手の行動が全て視えていて、だがいざ相手の防衛陣地に突っ込むと、たちまち大砲の餌食になる。すなわち、我々(ウ露の双方)は旧時代の技術の限界値に達しており、それが我々を袋小路に陥れてしまった。西側からの武器供与の遅れは、失望のタネではあるが、それが戦争の長期化の主たる原因ではない。旧世代兵器と時代遅れの方法論によっては勝利は得られず、戦争は必然的に長期化する。袋小路から脱出するために必要なのは、猛烈な技術的飛躍だ。かつて中国人は火薬を発明し、我々はいまだにそれで殺し合いを行っている。だが今度は一つの新しい発明がなされるのでなく、既存の全ての技術が融合することこそが、戦勝への決定的なファクターとなる。無人機や電子戦といった分野でイノベーションが起きなければならない。そして、先日Googleのエリック・シュミット元CEOと話して感銘を受けたが、技術革命まではあと一歩のところまできている」
またザルージヌィによれば、反転攻勢によって少なくとも「戦争に勝つことはできない」ことをプーチンに知らしめ、交渉のテーブルにつかしめることが可能だと、西側は思ったし、自分自身もそう期待した。だが「私は間違っていた。ふつうの国なら兵士が15万人も死ねば戦争の停止を考えるだろう。だがロシアはそういう国ではなかった。ロシアでは命の値段はあまりに安く、プーチンが基準にするのは第一および第二次大戦の、数千万という人死になのであった」「ロシアはウクライナに比べて人口は倍、経済力は10倍。塹壕戦(長期戦)になればロシアが有利だ。戦う人が枯渇する。ロシアにとって最も安価な資源は人命だが、我々にとっては人こそ最も貴重なものなのだ」УПУП

■社会①ウクライナのフリーランス事情
ウクライナ最大手クラウドソーシングサービスFreelancehuntの利用者は戦争始まってから25万人増えた。Upworkほか世界的サービスに登録している人も相当数いる筈なので、多くのウクライナ人がフリーランス化していることが伺える。総数は50万人に上るだろうとも。
Freelancehuntのカテゴリー別では、一番増えたのは「デザイン&アート」部門(新規登録者の34%)、以下「ライティング」21%、「プログラミング」18%、「翻訳」7%と続く。УП

■社会②男性の大学入学者数が激増
2023年度、ウクライナでは有償教育機関における一年生(新入生)の男女比が、女子3に対し男子7となった。一年生男子の平均年齢は27。もちろん徴兵忌避の手段としての学籍取得である。30歳以上の男性の新規入学希望者数は、21年9月に約3000人だったのが23年には46万人と爆増している。УП

■社会③教師は勤務時間中はウクライナ語厳守のこと
教育科学省より通達。学校教員は勤務時間中は授業中は無論、たとえ休み時間の同僚または生徒との会話であっても、必ずウクライナ語を用いること。「ロシアがウクライナの国・歴史・文化を根絶やしにしようとしている今、ウクライナ語の価値を守ることはとりわけ重要だ」とのこと。
教育機関における言語法違反の件数は21年→22年で25%減ったが今も各地でスキャンダルは散発している。やれ、ドニエプルで女教師が授業中に生徒とロシア語で会話したとか、イルペンの大学で女教員が授業をロシア語で行ったとか(学生の求めを退けて)、こういうのが密告されて処分されたりなんだりしている。УП

■社会④戦時中でも政権は批判してよい
キエフ国際社会学研究所の10月の調査。「もし政権が過ちを犯し、間違ったことをしたときには、たとえ戦争中であっても批判するべきだ」と考える人が、全体の3分の2を占めた。

上図、左が22年5月、右が23年10月。戦争初期は「戦争中は政権批判を行うべきではない」勢が3分の2を占めていたが、1年半できれいに逆転した。УП

11/1

■「エコノミスト」ザルージヌィ記事①寄稿
ザルージヌィ総司令官が英エコノミスト紙に寄稿。ロシアとの戦争は動きが少なくかつ多大な消耗を伴う拠点戦(Позиционная война)へと移行しつつあり、これに勝利するためにはハイテク装備が不可欠になる。УП
・拠点戦はロシアに有利、ロシアは力の回復の機会を得る
・ウクライナ軍に一番必要なのは地上作戦を支援するための航空戦力(航空機およびドローン)
・二番目が電子戦装備(レーダー等)。これが無人機戦争に勝利するための鍵を握る
・三番目が対砲戦装備。榴弾砲・ロケット弾・ミサイルがこの戦争における全軍事的課題の6~8割を解決する。初期は西側供与のもので十分戦果を挙げたがロシアのレーダー改良により効率は低下している
・四番目が地雷および爆発物除去装備。除去してもすぐ次のを埋設してくる、とても追いつかない
・五番目が兵員の訓練。自国内で訓練を行うリソースが足りない。訓練施設が攻撃される恐れもある

■世論調査:ウクライナ社会が抱える問題とは
キエフ国際社会学研究所の9-10月の調査。(戦争を除き)どの問題を憂慮している?3つまで選びなさい。さあ。УП
・汚職……63%
・低い賃金/年金……46%
・高い公共料金……24%
・人口危機(国外避難民が本国に帰還しない)……22%
・失業……20%

■道路名称の改訂
ウクライナで長らく続いている道路(等)名称の脱ソ・脱露運動の一例。オデッサで10月10日~31日までソ連/ロシア臭のする34の道路名につき改称の是非を問うオンライン住民投票が行われ、全てにつき「賛成」が「反対」を上回った。票の入り具合を見てみると…(青が「賛成」黄が「反対」

・Генерала Бочарова улица — Владислава Бувалкина улица («за» — 156, «против» — 107)
・Демьяновая улица — Грушевая улица («за» — 130, «против» — 37)
・Державина переулок — Квантовый переулок («за» — 128, «против» — 43)
・Николая Гефта улица — Ганса Германа улица («за» — 120, «против» — 40)
・Мичурина площадь — Воловая площадь («за» — 123, «против» — 31)

ここで言いたいのは、オデッサ市民100万人、有権者が60~70万人とかか、こんだけいて、各項目につき賛成反対合わせて200票くらいしか入っていない。最終的な決定は飽くまで市議会がとるのであって市民の意見は参考に過ぎないが、にしても、これで参考になるかい。けっきょく、道路の公式の名称を変えることに何ほどか意味があると思うくらいの人は大概が筋金入りのロシア嫌いであって、代案が何であれとにかくソ連/ロシア的なものは一律に排除したい、ということが示されてるに過ぎんのでは。

情勢の変化に伴い史観が更新され、連動して地名が変わるというプロセスは今に始まるものではなく、またこれが初めてでもない。私が住んでいたオデッサのスヴォーロフ地区は今年に入ってペレスィプ地区に改称されたが、現地の人はそもそも自分の町をスヴォーロフ地区とは呼んでおらず、そのひとつ前の呼称「カトフスキー集落」(поселок Котовского, Поскот)で呼んでいた。おかみがどんなふうに公式の名称を改めようと、けっきょく人らは慣れ親しんだ旧来の呼称を用いるのだ。それが分かっているから人たちは無意味なオンライン投票になど参加しない。

なお、上の例のうち、Генерала Бочарова улица(ボチャロフ将軍通り)は、かつてヨコハマ通りに改称するという案も出ていたが、いつのまにか廃案になったということか。姉妹都市横浜の名が冠されるかもしれなかったその通りはВладислава Бувалкина улица(ウラジスラフ・ブヴァルキン通り)に改称されるということだ。ウラジスラフ・ブヴァルキンはウクライナ英雄の称号をもつ軍人、2014年に戦線に加わり22年3月死亡。ОЖ

10/31

■世論調査①ウクライナ:国は政策を誤った、もう信じない?
キエフ国際社会学研究所の9-10月の調査。
・国は正しい方向に進んでいるか?(22年5月→23年10月)УП
明らかに、正しい方向に進んでいる……32%→17%
どちらかといえば、正しい方向に……36%→43%
どちらかといえば、正しくない方向に……9%→18%
明らかに、正しくない方向に……7%→11%

・下記の各組織/機関を信頼しているか?(22年5月→23年10月)УП
ウクライナ軍:信頼…98%→94%、不信…1%→5%
ボランティア:信頼…87%→87%、不信…8%→9%
大統領:信頼…91%→76%、不信…7%→22%
政府:信頼…74%→39%、不信…19%→58%
議会:信頼…58%→21%、不信…34%→76%
地方政府:信頼…50%→50%、不信…46%→46%
テレマラソン:信頼…69%→48%、不信…12%→39%
※テレマラソンというのは民放公共全テレビ局合同の戦時ニュース番組。テレビ放送全体への信頼度とみなせる。軍への信頼のゆるぎなさ(他にすがるもののなさ)と政治指導部への落胆失望(とりわけ政府および議会)にともに驚く。戦時中にもかかわらず国政選挙を行うべきかという議論のときにこの政権不信のことを思い出したい。

■世論調査②ロシア:戦争の終結は望ましい、が……
レヴァダセンターの10月19-25日行った調査。УП
Q:今週中に次のような決定がとられた場合、あなたは支持するか?
・プーチン大統領がウクライナとの軍事紛争の終息(прекращение)を決定した場合
 明確に支持する……37%
 どちらかといえば支持する……33%
 どちらかといえば支持しない……9%
 明確に不支持……12%
・プーチン大統領がウクライナとの軍事紛争の終息そして編入済みのウクライナ領土の返還を決定した場合
 明確に支持する……16%
 どちらかといえば支持する……18%
 どちらかといえば支持しない……19%
 明確に不支持……38%

※停戦そのものは70%もが支持するが、それにせっかく獲得した領土の返還という条件がつくと、支持は34%に激減する。とはいえ34%。

付表:いま、軍事行動を続けるべきかそれとも和平交渉を始めるべきか?
(22年9月から毎月、最下段が最新の23年10月)

 

左から「軍事行動の継続を明確に支持する」24%「軍事行動の継続をどちらかといえば支持」13%「和平交渉の開始をどちらかとえいば支持」32%「和平交渉の開始を明確に支持」24%。

■ダニーロフ、Time報道を否定
米Time誌の特集(昨10/30の項参照)について、ダニーロフ国家安全保障会議書記がコメント。虚偽情報に基づく報道であり、ウクライナの勝利を信じないような人間が大統領側近にいるとすれば、その者こそポストを追われるべきであると。УП

10/30

■オデッサ州にミサイル攻撃
30日朝オデッサ州オデッサ地区(オデッサ市含む)の船舶修理工場がミサイル攻撃にあい管理棟と設備に被害、4人が負傷。УПУП

■マハチカラ空港の一件とイスラエル/ウクライナ/ロシア
ロシア連邦ダゲスタン共和国マハチカラの空港で一夜出来した騒乱事件(昨10/29参照)の波紋が広がっている。国としてウクライナは明確にイスラエル支持、ロシアはハマス寄りだが、そのロシアが「ダゲスタンにおける今次の反イスラエル騒乱はウクライナが裏で糸を引いている」と主張して、変なことになっている。

・ウクライナの公人およびメディアは今度の騒乱をポグロム(ユダヤ人迫害)と表現している
・露独立系メディアGulagu.netによれば、FSB(ロシア連邦保安庁)は29日夜の時点でダゲスタンの騒乱における「ウクライナの痕跡」に関するレポートおよび特別報告書を作成。また当直者に対し、今度の騒乱へのウクライナの金銭的関与について裏取りするよう要請、30日朝にはFSBのボルトニコフ長官さらにはプーチンが「謀議を摘発した」「アンチセミチズム(反ユダヤ主義)およびポグロム(ユダヤ人迫害)の責任はナチス・キエフにある」と宣言できるように体勢を整えていた。
・だが露シロヴィキ(「力の省庁」。国防省や内務省)内には政権の軟弱と不決断に不満の声も出ている。いわく、特務機関は例の「ワグネルの乱」に続いてまたしても事態の鎮静化について無為無力であった。政権内部では更迭すべき将校のリストが作られつつあるとのこと。
・30日朝、ダゲスタン共和国首長「わが共和国の不安定化を画策したのはわが国(※ロシア連邦)の仇敵(ウクライナ)だ」УП
・30日昼には露プロパガンダメディアで「マハチカラ空港の一件についてプーチンがシロヴィキ・首相・議員らの参加する拡大会合を開く」との報道がなされる。УП
・その会合を終えて30日晩、プーチンが声明を出した。いわく、マハチカラの一件はSNSを通じてインスパイアされたものであり、そこにはウクライナ国内の西側特務機関のエージェントらが与って力あった。УП
・ウクライナ外務省「今次のポグロムは露プロパガンダの多年にわたる組織的営為によりロシア社会およびエリート層にアンチセミチズム(反ユダヤ主義)が深く根を張ったことの表れだ」「本件にウクライナが関与したとの主張は病者から健常者への責任転嫁の試みに過ぎない」УП
・ゼレンスキー「プリゴジンの乱とマハチカラのポグロム。ふたつは『プーチン体制は対ウクライナ戦争を遂行する能力がない』ことを示すシグナルだ。ウクライナの占領地を維持することに全力を傾注した結果、自国内が憎悪と不道徳で汚染され、1年のうちに2度までも国内情勢に制御不能をきたした。1度目は反乱軍のモスクワ進行をとどめえず、2度目は国内で全きポグロム(異民族迫害)を起こしてしまった」УП

■ゼレンスキーとイスラエル
ゼレンスキーはハマスのイスラエル攻撃(10/7)直後に他国に先駆けてイスラエル訪問の意向を表明したが「今は時ではない」とてイスラエル側に謝絶された。誰も受け入れないのかなと思ったらショルツが訪れバイデンが訪れスナクが訪れマクロンが訪れた。ゼレンスキーって一体。
……と思っていたら、こんど在ウクライナのイスラエル大使という人のインタビューが出て、いわく、時期尚早を理由にイスラエルがゼレンスキーの来訪を断ったというのは事実ではなく、ウクライナ側から訪問について正式な打診はなかった、むしろイスラエル側がウクライナ側に対しゼレンスキーさんいつでも来てください待ってますよと通知を送っている、そのうちゼレさんお出かけになるでしょう、とのことだ。УП

■米Time誌「ゼレンスキー側近は勝利に懐疑的
米Time誌に「ウラジーミル・ゼレンスキーの孤独な戦い」と題する特集(サイモン・シュスター記者)。思わしからざる戦況、細る支援、汚職との闘争など、戦時の大統領が直面している諸問題を照らした。中で紹介された大統領府側近(匿名)の悲観論が波紋を呼んでいる。表紙↓

米国世論はウクライナへの関心を薄れさせつつあり、先般のゼレンスキーの訪米もこの趨勢を覆すには至らなかった。同盟諸国に「勝つためには支援が必要だ」と繰り返し繰り返し説いて回る必要性にゼレンスキー自身げんなりしている。シュスター記者のインタビューでゼレンスキーはこう吐露したということだ――「誰もウクライナの勝利を信じていない、私のようには。誰も、誰一人」。そして、周囲の人のこの勝利への不信が「己の力のすべて、エネルギーのすべてを吸い取っていく」と。

記者はまた、ゼレンスキーのとある側近(※匿名)に、ゼレンスキーの様子を尋ねた。即答が返った。「激昂している」と。いわく、戦争2年目のゼレンスキーに、かつて氏の大きな魅力であった明るさやユーモアはもう残っていない。以前は軍の会合でも(時にどぎついような)冗談を言って場を和ませたものだが、今は「入室し、報告を受け、命令を与え、退室する」ばかりだと。

別の側近はいう。ゼレンスキーは同盟諸国から見放されたように感じていると。西側は「勝利のための手段を与えず、ただ戦争を生き延びるための手段だけ与えて、放置した」と。「それでも信念は変わっていない。戦況の不振にも関わらず、闘争の停止だの、妥協的和平だのに傾いていはいない。勝利への信念はむしろ強固になるばかりで、それがかえって周囲の不安を呼んでいる。ゼレンスキーの揺るぎなさはもはやメシアニズムに近い」

ゼレンスキーの信念をその側近らが必ずしも共有しているわけではない。ある側近はいう。大統領は自己欺瞞に陥っていると。「選択肢はない。ウクライナは勝てない。でもそれを彼に言ってもご覧な」

軍の士気についても気になる証言(やはり大統領側近、匿名)が。前線の司令官の中には大統領府直々の命令に従わないものも出てきているとか。「彼ら(そうした一部司令官)は塹壕にこもって防衛に徹することを望んでいる。だがそのようにして戦争に勝つことはできない」実例として、10月初旬にキエフの政治指導部よりゴルロフカ(ドネツク北郊、東部の戦略的要衝、14年よりロシアが支配)制圧作戦が下命されたが、現場の指揮官から問いが返った。「どうやって?人員も武器も足りない。武器はどこだ?大砲はどこだ?」と。一部の軍種では武器弾薬にも増して人員の払底が深刻であるという。「仮に米国ほか同盟諸国が約束した武器を全部くれても、それを使う人間がいなくなる」と某大統領側近。

だが再び、ゼレンスキー当人は飽くまで闘争心に燃えている。寒気の到来を理由に戦争を春まで「凍結」することはゼレンスキーの意に染まず、冬季闘争のための軍事戦略の大転換を計画中。その一環で、少なくとも大臣一人と高級将官一人の更迭を伴う大型人事が行われる可能性がある。両名は「遅い反転攻勢」について責任を帯びている人物だという。

※記者サイモン・シュスターはロシア&ウクライナ取材歴15年、本拠はNYだが現在はキエフで多くの時日を過ごす。ゼレンスキーやその側近らとの交流をもとにした図書を本年刊行予定。УПУП

■世論調査:選挙は戦争が終わってから
キエフ国際社会学研究所が9-10月行った調査では、国政選挙は戦争が終わってから(今はそんなことやってる場合ではない)と考える人が81%と多数。戦争とは無関係に選挙は行うべきと考える人は16%。なお本来であれば最高会議議員の任期は今秋まで、大統領の任期は春まで。УП

■ウクライナのチーズ美味しいよ
World Cheese Awards 2023とかいうチーズの国際コンテストがノルウェーで開かれ43か国の4502チーズが参加、ウクライナからも23種が参加して、うち13種が受賞した(金賞2、銀賞4、銅賞4ほか)。キエフやリヴォフで作られた各種のチーズ、モッツァレッラあり、ヤギのチーズ(ブリンザ)あり、カビつきのあり、各種添加物入りのもの。
最優秀チーズ賞は開催国ノルウェーのなんとかいうチーズ、中硬度・青カビつき。審査員「とってもミルキーでバランスのとれた味、フルーティだしワイン感もある」。УП

10/29

■ロシア国内の反ユダヤ主義~ムジナのぞめき~
ロシア連邦ダゲスタン共和国マハチカラの空港(下図赤鋲)で反ユダヤ暴動。同空港にテルアビブからの旅客便が降り立つや100人ほどの人が反ユダヤ主義的なスローガンを叫びながら滑走路に躍り込み、「お前はイスラエル人か」と乗客の国籍を問うて回った。Meduza

これにつきゼレンスキー、本件は氷山の一角に過ぎず、ロシアのアンチセミチズム(反ユダヤ主義)および異民族憎悪は根深いものがある、とコメント。「よその民に対する憎悪は国営テレビ・専門家集団・政権のプロパガンダを通じて人口に膾炙したロシア文化である」「ロシアの外相はここ一年反ユダヤ的言説を繰り返しており、ロシア大統領さえ反ユダヤ的侮辱を用いている。露プロパガンダでは憎悪の修辞が日常茶飯事だ。今次の中東情勢緊迫においてさえ露イデオローグどもはアンチセミチックな発言を繰り返した」「憎悪こそ侵略とテロルの源泉だ。我々はともに憎悪に立ち向かわなければならない」УП(X)

※ゼレンスキーのロシアをめぐる最近の発言に憎悪(ненависть)という語が頻出してる気がする。ロシア=憎悪の帝国という定式が気に入ったか。にしても、イスラエルの「報復」の非対称性に飽くまで目をつぶり続けるこの態度はいただけない。ハマスによる奇襲攻撃の直後、わたくし素人何丘、ウ露双方の言説を分析してウクライナを「連帯志向」ロシアを「分断志向」と規定したが、改める:陣営化への志向という点では同穴狢である。むしろウクライナのほうがひどい。俺はイスラエルの側だとか、俺はハマス/パレスチナ/イスラムの側だとか、そういう思考は捨てねばならない。連帯とか陣営化は、国とか組織単位でなく、理念によって行いたい。即ち、暴力か非暴力か。破壊か建設か。憎悪か愛か。目的は手段を正当化するというラスコーリニコフ主義(要は、無辜の死)を、肯定するか、しないか。白か黒かということは、正しくは、こういうことであるべきだ。イスラエルかパレスチナかということではなく。その立場からは、ハマスのテロと、イスラエルの虐殺は、ともに批判される。そうして矛盾しない。

■冬に備えて(モンスターを育てました。)
露によるウクライナの電力網破壊攻撃が苛烈に行われることが期待される冬季に向け、ウは米国と共同で防空システムを魔改造し「ハイブリッドモンスター」を作り出した。米高官が「フランケンSAM」と呼称する本プロジェクト、ウクライナが現有しているソビエト式の発射装置やレーダーを改造して西側標準口径の新式地対空ミサイルを発射できるようにするというもの。詳細は(それが真に重要なことなら)Kとか専門家先生が語ってくれると思うので、ここではそういう話がありますよということだけ。УП(NYT)

■穀物回廊(黒海)
オデッサ諸港にさらに5隻の商船が到着した。船籍はギリシャ、トルコ、リベリア、パナマ。УП

オデッサ情報(私ひとりに興味ある)

・エカテリーナ広場の再開発は当面行われない
オデッサ中心部エカテリーナ広場からエカテリーナ像が撤去されたことを機に広場そのものの再開発の話が持ち上がりコンペが開かれ6案が競ったが勝者なし、ひとまず今の形で存置ということに。ОЖ

・「ユージヌィ市」と「ピヴデネ市」
オデッサ州ユージヌィ市の改称について住民投票が行われ80%の得票で「Південне(ピヴデネ)」案が勝った。投票率11%(ひっく)ОЖ

「同市はオデッサとニコラエフの間に位置。名称の話は十分にややこしい。GoogleMapに見られるように現行のウクライナ語公式名称はЮжне(ユジネ)でありこれをロシア語呼びしたのが先から言ってるユージヌィなのだが、話は実は逆で、そもそもユージヌィというのはロシア語で「南の」という意味の形容詞であって、これを形だけ無理にウクライナ語化したのが「ユジネ」なのである。ウクライナ語に「ユジネ」なんて言葉はない。ウクライナ語で「南の」を意味する語は「ピヴデネ」。要は今回の改称で、ねじれが解消され、あるべきかたちに収まるのである。
言ったらこういうことだ:日本地図の中に英語人がサザンと呼ぶ場所があり、この呼称は日本人の人口にも膾炙していたが、日本なのにカタカナはあれだなという第一次反省があり、公式にはこの地を紗山と呼ぶことにした。それからしばらく経って、でも紗山なんて言葉は日本語にはないよな、それってそもそも英語から来てるんだよなという第二次反省があって、以後その地を「湘南」と呼び改めることにした(←今ここ)
ただ、ここが重要:その湘南という街に住んでいる支配的多数は英語人であり、公式に湘南と呼び改めようが何しようが、結局現地の市井の人は、自分の街をサザンと呼び続けるのである。私も全き意味での原音(現地音)主義に則り、引き続きその街をユージヌィと呼ぶ。

・プーシキン像どうなる
市内のプーシキン像とヴォロンツォフ像(両名については何丘「オデッサ」に関する知識でWikipediaを超える②歴史編 参照)が撤去されるかもしれない。国指定文化財なので中央政府案件だったがウクライナ文化省はすでに撤去を承認した。だが最終決定は市当局が下すことになり、それは未だな状態。本件についてОЖが地元密着メディアらしく街の声の聞き取りを行った。ある人「今は戦争中であり公費は専ら国防に使うべきであり銅像の撤去とか地名の改称とかにかまけている場合ではない」←至言。ほか「プーシキンもヴォロンツォフも今起きていることに対して罪はない、プーシキンの詩業は人類の財産である。ファシズムの過去にもかかわらず我々はドイツの文学を読むではないか」「プーシキンは危険人物だ、露土戦争時のプーシキンの帝国主義的振る舞いについては『エルズルム紀行』に詳しい。イデオロギーの戦線においてプーシキンは銃を手に持つ戦士であり、その像は時限式の爆弾だ。見えるところにプーシキン像が設置されているべきではない」「撤去に反対」「そんなことしてる場合ではない」「プーシキンはオデッサの歴史の一部。撤去に反対」。概して皆さん自分の街の歴史をよくご存じだ。そして、意見をお持ちだ。日本人も戦争でも起きればさすがに勉強し、意見の一つも持つか。ОЖ

・YouTubeウクライナ語セグメントの勃興?
それがどのくらいの規模で起きているのか知らんけど、慣れ親しんだロシア語コンテンツを嫌厭してウクライナ語のそれを視聴しだすというトレンドがあるらしく。おすすめウクライナ語チャンネルをカテゴリ別(戦争とニュース/ウクライナおよび世界の歴史/ホビーと旅行/料理/スポーツ/キッズ)に50個くらい紹介した記事がОЖに。興味ある人どぞ。ОЖ

10/28

■米中首脳会談11月に
米バイデンと中国の習近平が11月のAPECサミット(@サンフランシスコ)で会談することで原則合意した。УП

■エルドアン
トルコのエルドアン大統領がイスタンブールの親パレスチナデモで演説し、ガザ地区の流血について西側を非難、ガザにおける民間人の死をロシアの対ウクライナ戦争における死者になぞらえた。「ウクライナーロシア戦争における無辜の死にワニの涙(偽りの涙)を流している人たちが、ガザの千もの子供たちの死を座視している」「(イスラエルについて)全ての国が自衛権を有することは当然だが、ガザで行われているのは自衛でなく公然かつ酷薄なる虐殺である」「この虐殺の主犯は西側である」УП

イスラム世界の同情を自身に集めるチャンスだったが当のウクライナからイスラエル非難の声は聴かれないのだ。ゼレンスキーは諸国に先駆けてハマスのイスラエル奇襲攻撃を「テロ」と断じ、イスラエル全面支持を鮮明にした。ゼレンスキーのスタンドプレーだったのだろうか。最優先事項が露の侵略の撃退であるときに、戦略的に正しい判断だったのだろうか。

Он заявил, что “главным виновником резни, которая разворачивается в Газе, является Запад”, не упомянув о том, что обострение конфликта началось с атаки террористов ХАМАС на Израиль, в результате которой погибло около 1400 израильтян.

↑УПの当該記事のこの箇所、「『ガザで行われつつある虐殺の主たる犯人は西側である』とエルドアンは言ったが、その際、紛争激化の発端を作ったのはハマスのテロリストのイスラエル攻撃であり、その結果1400人ものイスラエル人が死亡したということには言及しなかった」とある。字の文でクサしながら発言を紹介するやり方はプーチンとか露言説の紹介時に使われるスタイル。УПの編集方針が知られる。


■アドヴェーエフカ
ドネツク近郊アドヴェーエフカ(アウディーイウカ)大攻勢が10/10頃始まって2週間あまり、ロシア兵の死者数は既に4000人を超えている。ウメロフ国防相談。УП
英情報当局によれば、アドヴェーエフカ近郊における露軍の損失は2023年で最悪のレベルに達している。政治の要求が軍事のリアリズムと乖離してしまっている好例だという。УП

■キエフ暴風
キエフで暴風被害、枝が折れまたは倒木した街路樹、実に600本。道路2本が通行不能に。УП

また2人が死亡したとかや(УП

こういう話はオデッサでよく聞くのだがキエフもか。緑が多いのはいいことだがこんなヒョロヒョロの立木ならそら折れる。オデッサはアカシアの花さく街とうたわれる。ちょうどこのアカシアが弱い木でちょっと風ふくとすぐ折れる。写真みるとこれやはりアカシアだな。キエフのシンボルはカシタン(マロニエ)と聞くがアカシアも多いんだね。

10/27

動員解除デモ

ウクライナ各地で27日、軍人の復員を求めるデモが行われた。キエフでは独立広場において就役中の軍人の家族たちが「ほかの人の出番だ!」「すべての人が勝利に責任を負う!」「軍人にも家族がある!」などとスローガンを叫び、18か月の軍務を終えた軍人の復員を求める署名への参加を呼び掛けた。УП

プーチンはいずれ死ぬ。だが……

ウクライナ国家安全保障国防会議書記ダニーロフ談:ロシアの独裁者はいずれ死ぬ。だがロシアに何らかの変化が起きるためには、ひとりプーチンの死では足りない。それより遥かに多くのものが必要だ。ウクライナ人の99.9%がなるべく早くプーチンに死んでほしいと思っているが、それで全てが終わるとは思っていない。ロシア全土に非人道性が染みついている。世界の全てを憎みなさいと子供のころから教わっている。2008年のグルジア侵攻時、ロシア人の80-85%がグルジア人を嫌っていた。だがグルジア人がロシア人に一体何をしたというのだ。いまロシア人はウクライナをあれほどまでに憎んでいる。繰り返す、プーチン一人の死によって何かが変わるわけではない。多年にわたる変化が必要だ。ロシア人はまず、人を愛することから始めなければならない。УП

スロヴァキア

最近よく出てくるのでスロヴァキアの位置を確認しておく。

ウクライナの西隣。間にカルパチア山脈があるので行きやすい隣国ではないが地図で見ると黄色い幹線道路で結ばれてるので行き来できるんだと思う。私はモスクワ住んでた時代に二度訪れてブラチスラヴァだけでなくコシツェとかプレショフとかわりと深いとこまで旅してる。小粒だが美しい街が多くタトリの山並の魅する好きな国だったが、まぁがっかりはするよね。嫌いにもなりそう。

27日ブリュッセルでEU諸国首脳会談が開かれた中でウクライナへの500億ユーロの追加支援が合意されたが、その際スロヴァキア新首相フィツォはウクライナの汚職に言及し、ウクライナは「世界一の汚職大国」と決めつけ、そんなウクライナに資金を送ることについて「自国での説明に窮する」とか述べた。言ってくれるよ。УПУП

スロヴァキア議会議長:ウクライナへの武器支援の停止という新政権の公約だが、供与でなく売却なら行われてよい(УП

(天高く)売国奴肥ゆる秋

元親露派ウクライナ最高会議議員で今はロシアでご機嫌にやっているヴィクトル・メドヴェチュクこと売国奴がロシアで約1000万ドルのヨットを購入した。イタリア製の高速ヨットで通称は「戦闘機」、全長28m、4つのキャビンと8つの寝室を備え、最大20人を収容できるとか。国は売ると儲かる。УП

世論調査Ⅲ

キエフ国際社会学研究所が前線に接する10地域で8月に行った調査。УП
・ニュースを見る頻度
ほぼ毎日……78%
定期的(週3-4度ほど)……12%
週1-2度以下……10%
・ウクライナで起きていることについてニュースをウォッチすることは
すごく大事だ……67%
大事だ……30%
・ロシアのメディアを見てる人も相当数いる。「毎日見てる」6%、「週2-6ほど見てる」10%

このうち44%が親政権と反体制を両方見てる、22%が親政権のみ見てる、21%が反体制のみ見てる。
見てる理由は、情報の相対化のため(17%)、ロシア国内の情報環境への興味(14%)、親ロシアだから(11%)、ウクライナにとっての重要性のためロシア国内の情勢についても知っておきたい(11%)、ロシア人の情勢観を理解するため(10%)

10/26

世論調査Ⅰ

社会学グループ「レイティング」が共和党国際研究所(IRI、米国のシンクタンク)の注文を受け9月に行った調査。

■選挙は行うべきか(УП
選挙の必要性をめぐる決定が下される際に、戦時下であることに鑑みれば、いつそれ(選挙)実施するのが適当か?
・終戦のあかつきにのみ。どれだけ待つことになろうとも。……62%
・24年3月(※本来大統領選が行われるべきタイミング)。たとえ戦争が続いていたとしても。……22%

■一番の支援国はどこか(УП
ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナを最もよく助けてくれている国または国際機関はどこか?3つまで回答可。
米国……69%
ポーランド……51%
英国……44%
ドイツ……22%
EU……7%

1%未満のものは「その他」に含まれるそう。上の表に日本の名、無し

■勝利を信じるか(УП
ウクライナが戦争に勝つと信じるか。
信じる……94%(内訳:確実に…73%、どちらかといえば…21%)
信じない……3%(内訳:どちらかといえば…2%、確実に…1%)
※下表、緑が「信じる」赤紫が「信じない」、下から「22年4月」「22年6月」「23年2月」「23年9月」。翳りを指摘できる、だが一つきっかけがあれば十分揺れ戻す程度の変化だと思う。


■終戦のかたち(УП
戦争が終わったとき、ウクライナはどうなっているか。
91年独立時点の全領土を維持する……68%
ドンバスは取り戻すがクリミアは取り戻さない……5%
クリミアを取り戻すが所謂ドネツクおよびルガンスク人民共和国は取り戻さない……5%
全面戦争開始(22年2月24日)時点で支配していた領域を奪還する……10%
さらにいくらかの領土を喪失する……6%
ロシアに全面的に占領される……1%未満

世論調査Ⅱ

キエフ国際社会学研究所が駐ウクライナEU諮問使節の注文を受け9月に行った調査。

■リーダーへの信頼度(УП
大統領を信頼している……73%、信頼していない……21%
政府を信頼している……54%、信頼していない……38%
地方当局を信頼している……49%、信頼していない……34%
市当局を信頼している……51%、信頼していない……38%

■改革は進んでいるか(УП
政府の改革(汚職対策など)は十分である……19%(21年時点で15%)
十分でない……71%(21年時点で76%)

■ウクライナの報道を信じているか(УП
ウクライナのマスメディアを信頼じている……49%
信頼していない……43%

主たる情報源はどこか?(最大3つ答えよ)
テレグラムチャンネル……44%
テレビ……43%
YouTubeチャンネル……36%
ニュースサイト……34%

■差別について(УП
ウクライナに各種の差別ありやなしや?
言語差別あり…45%、なし…55%
性差別あり…34%、なし…66%
障碍者差別あり…28%、なし…72%
年齢差別あり…27%、なし…73%
民族差別あり…23%、77%

言語軋轢(氷山の一角)

きもちのわるい密告社会。①配車サービスBoltのタクシー運転手が乗客からウクライナ語での接客を求められたが拒否、むしろ車を停めて客に下車を要請した、捨て台詞「あなたがたは病気だ」②運転手が客の同意なしに車から荷物を降ろし下車を請う様子を客がスマホで撮影、これをSNSに投稿③「言語オンブズマン」こと国語擁護全権タラス・クレメニがこれを見とがめ、「『国語としてのウクライナ語の機能の保障に関するウクライナ法』30条違反。タクシー運転手は懲罰を免れない。警察およびBolt社に通報し、犯人の特定および責任追及を求める」とコメント。④Bolt社、SNSで「運転手は永久的にサービス利用から追放された」と発表。УП(←動画あり)
再掲。ウクライナに各種の差別ありやなしや?
言語差別あり…45%、なし…55%

汚職

地方自治体の長に対する捜査の話が相次いだ。
・チェルニーゴフ市長代行の自宅が捜索された。同人は5月にドイツ出張を申請していたがその足でフランス/ベルギー/オランダ/ポーランドを周った。「休暇」」は5月7日から21日まで2週間にわたった。行って何してたんですか、それは合法なことなんですかというのが調べられている。УПУП
・先に収賄容疑で市長が逮捕されたスームィで今度は市長代行に司直の手が入った。公金横領の疑いで複数の地元企業や公共事業主が調べられている一環。УП

国際

スロヴァキア新首相が公言した:スロヴァキアはウクライナに武器を供給しない(УП)、ウクライナへの軍事支援を支持しない(УП)、基本的に対ロ制裁に賛成しない(УП

ハンガリーのオルバン政権に対する懐疑論がEU内で強まっており、ハンガリーは孤立を深めている。オルバン政権はつとに親露反ウを鮮明にしているが先日北京でプーチンと会談を行ったこと、EUをソビエト連邦になぞらえるなどの一連の発言が、こんな国を同盟国・パートナー国として信頼できるのか、今後戦略的な重要問題について共同の決定をとっていくことが果たしてできるのかという疑義を呼んでいる。とはいえハンガリーは来年後半にEU理事会の議長国を務めることになっており、EU全体の政策形成における影響力が強化される見込み。また、オルバンが孤立を理由に方針を転換することは考えにくく、今度新しくスロヴァキアにロベルト・フィツォという友人もできた。以上英ガーディアン。УП

露プロパガンダメディアによれば、ハマス政治部の代表団がモスクワを訪問中。УП

10/25

■習近平
中国の習近平国家主席が近く米国を訪れる見込み(その露払いとして王毅外相が26日訪米)で、歓迎すべきことでしかない。習「中国は米国と協力する用意がある。グローバルな課題に対処すべく、不一致を克服して協働することができる」「中・米が相互理解への正しい道を見いだせるかどうかが世界の平和な発展および人類の今後の運命にとって決定的な意義をもつ」УП

■隣国スロヴァキアで反ウクライナ内閣発足
先の総選挙で第1党となったSmer-SD党のロベルト・フィツォ党首が大統領の信任を受けスロヴァキア首相に就任した。信任式で大統領は新首相に対し諸隣国(含むウクライナ@戦争中)と良好な関係を築くよう呼びかけた。これに新首相「新政府は主権的(=必ずしもEU全体の方針に従わない、独自の)外交を行ってまいります」と返した。
重要閣僚は軒並み反ウクライナ勢が占めた。顕著な例:外務大臣にブラナル氏、元エンジニア、外交経験なし、今ウクライナで起きていることは「ロシアと米国の紛争」であり、ウクライナ政府は「自国民を相手に戦争を行っている」とする。ウクライナへの武器供与に反対の立場。УП

■露が新型国産ドローン使用か
露がウクライナのインフラ攻撃にシャヘドの廉価かつ軽量版にあたる国産ドローン「Italmas」をシャヘドと併用しているようだ。ISW。
露側の情報によれば実戦投入の一例目は23日のキエフ攻撃。長所は廉価で大量に製造&使用できること、またシャヘドより軽量かつガス駆動で芝刈り機みたいな音を立てながら飛んでくるため発見&撃墜されにくい(?因果関係?)こと。短所は積載できる爆薬もまた少ないこと。УП

■戦争が終わってもウクライナには帰りません
戦争を理由に国外に流亡したウクライナ国民の半数以上は戦争が終わっても帰国しない。人口社会研究所の所長という人がウクライナ人的資源フォーラム(Human capital UA)なるイベントで述べた。「戦争移民の半分は帰還する。望むらくは半数を取り戻せることを。それ以上は望むべくもない」だそうだ。ただ、帰還しないとした場合でも、国外のウクライナ人には「国外におけるウクライナのイメージを向上させる」という大事な役目が残る。УП
同じイベントでウクライナ経済相:政府は第二次大戦以後最大の移民危機を克服してウクライナ人を国内に取り戻さなければならない。国外避難民が帰還の是非を判断する際に最も重要になるのが、①安全②就労・就学・居住の可能性。すなわち、ウクライナが安全な国になっていること、また、そこで仕事を見つけられ、学校で学ぶことができ、また住む場所がきちんとあるということ。そのそれぞれの実現に向けて既に政府は動いている。具体的には、爆発物の除去、事業開始/拡大への融資、一部職種における職業訓練バウチャーの発行など。УП

■ウ露の裏チャンネル
戦争中でもウクライナとロシアの交渉チャンネルは存在しており、そこで喫緊の人道問題、すなわち捕虜の交換、戦没者の遺骸の交換、穀物回廊、ウクライナ人児童のロシアからの返還について交渉が行われている。第三国・機関が間に入ることもあり、たとえばトルコ、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヴァチカン、国際赤十字委員会などが仲介役になることがある。だが多くの場合は直接交渉である。両国国境やイスタンブールで激しく不快な対面会談、ないし電話会談が行われている由。ただ、こうした交渉の存在をウクライナ側もロシア側も喧伝はしない。ウクライナ国防省情報総局報道官「ロシアは敵であるから心情的に困難であるが、関係のいかんによらず交渉しないわけにはいかない。コミュニケーションのチャンネルを全て閉じてしまったら捕虜たちを取り戻すことができなくなる」УП

■密出国ビジネス
相変わらずやってる。オデッサ州で出国請負人が捕まった。一人あたま4500ドル(67万円)で徴兵適格の男性のモルドヴァへの不法出国を幇助していた。その警官は。
何しろSNSでクライアントを募集、一方では国境警備員を抱き込んでおいて、さて警官氏、オデッサで2人の徴兵適格者を拾い、自家用車でとあるオデッサ州内の国境通過ポイントへ。ほんじゃこれ約束のお金ねと国境警備員に一人あたま1000ドル、都合2000ドルを手渡したところ、お縄となった。正義感からか国交警備さん、本件を上司に報告していた、というわけ。お縄になるまでこの方式で警官氏が何人逃がしそれでいくら儲けていたかは今後の捜査に委ねられる。УП

■汚職対策への国民の評価
キエフ国際社会学研究所が9月末~10月初旬にかけて行った調査。汚職捜査や逮捕をめぐる報道がさかんに行われているが、実際のところ汚職撲滅は進んでいると思うか?
・然り、汚職撲滅の取り組みがなされており、成果も上がっている……59%
・否、ウクライナの汚職は絶望的であり、事態は改善していない……34%

問いの文言が変わっているため直接の比較はできないが、過去の調査をみると、「当局の汚職対策は効果的か?」との問いに対し「どちらかといえば効果的」と答えた人が18年では25%、22-23年冬季では50%と倍増している。この延長で考えれば、当局の汚職対策に対するウクライナ国民の見方はより楽観的になっているものと見られる。
興味深いのは、汚職対策に悲観的な人は、領土的譲歩に肯定的であることが多い。一部領土を手放すことと引き換えに停戦(和平)を結ぶこともやむなしと考える人の割合が、汚職対策に悲観的な人の中では25%、楽観的な人の中では4%に過ぎなかった。
とはいえ、汚職対策に悲観的な人のうち、領土的譲歩に飽くまで反対の立場の人は、66%の大勢を占める。汚職対策に楽観的な人の中では、領土的譲歩に反対の人が88%と圧倒的。УП

10/24

■クリミア待ってろ
ウ海軍広報談:クリミア橋は完全に破壊する、状況がそれを要請したときに。「ロシアと違って我々はシンボリズム(象徴的戦果)にはこだわらない。限定的なリソースをもとに戦闘を遂行する際にそれがどんなに有益なことか。あちらさんによくある『この日は大統領の誕生日だからそれまでに何かどこかを掌握しなければ』みたいなことはウチにはない。クリミア橋を完全に破壊することは無論だが、それを行うのは飽くまで状況がそれを要請したときだ。現状、橋の敵にとっての意義は、クリミアおよびドニェプル左岸への兵站だ。この兵站線を切断してクリミアを孤立させる必要が出てきたときに、橋は落とす」УП

またゼレンスキー、「クリミア全土を火力管制下に置くのも時間の問題」と豪語。すでに半島の西海岸から露の軍艦を引き揚げさせることに成功した。露ぬきの穀物回廊をすでに50隻の船が利用、さらに50隻から入港申請が来ている。またクリミアの内部には夥しい数の親ウ協力者がいる。「ウクライナが目指すのはウクライナ全土の解放。クリミアも含めてだ」УП

■電力
露はAIを用いて「ウクライナ全土で既に計画停電が行われている」との偽テレビニュースを作りSNSで拡散している。ウクライナ世論の攪乱が狙いと見られる。「電力状況はコントロール下にあり安定的」ゆえ心配するな、確実な情報は常に電力会社または国家機関の公式サイトを見るように、と電力会社。УП

また情報総局広報「露はミサイル備蓄を回復している。むろん22年の侵攻当初と比べれば遥かに少ないが、限定的な数量にもせよカリブルやキンジャルを新規製造しているし、一定期間ミサイルが飛んできていないということは、それだけミサイルが溜まってきているということだ。暖房シーズンが始まりつつある。昨冬みたような攻撃は今年も繰り返されるだろう」УП

■マスク
イーロン・マスクが改めてウクライナ戦争に関する自身の信条を鮮明に。ウクライナには決して耳に心地よくないそれ。いわく:中東とウクライナの軍事紛争が第3次世界大戦に発展するのを避けるために米国はウクライナに抗戦をやめさせロシアと手を結ぶべきだ。米国の政策によってロシアはイランおよび中国と同盟を結ぶことを強いられた。ロシア=中国=イランの同盟はグローバルな紛争で西側を打ち負かす可能性がある。とりわけ資源が豊富なロシアと莫大な産業ポテンシャルを持つ中国のコンビは脅威。ところでロシアが占領したウクライナ東部やクリミアはロシア語を話す人が大勢を占める地域であり、彼らはロシアの一部となることを心から望んでいる。それが証拠に、かの地に反露蜂起運動は見られない。そんな彼らに、ウクライナの一部となることを強いる理由はない。いったい何故、両国の兵士が毎日毎日死亡しなければならないのか、理解に苦しむ。ロシアがこれらの土地を手放すことはないし、兵力に劣るウクライナに失地回復のチャンスはない。停戦こそ、ウクライナの人たちにとって最良の出口なのだ。УП

■市町村
行政区分改革で「市型町(поселок городского типа)」の概念が撤廃され、以後の区分は、市(города)町(поселки)村(села)の3種に整理される。УП
市:人口1万人以上で多層階の建物が密集している居住区
町:人口5000人以上で主として一戸建てが並んでいる居住区
村:人口5000人未満で一戸建てが並んでいる居住区

10/23

■日本→ウクライナ、変圧器とソーラーパネル
ウクライナのエネルギー部門の支援のため、近い数か月のうちに日本からウクライナへ変圧器とソーラーパネルが供与される。エネルギー省副大臣と国際協力機構(JICA)代表団の会談で発表された。日本のウクライナ支援の40%が同国のエネルギー部門支援だそうだ。УП

■戦後ウクライナの基幹産業
ちょっと前の話題(УП10/12報道)だが、シュムィガリ首相がキエフ国際経済フォーラムで戦後ウクライナの基幹産業6分野を列挙してみせた。①軍事産業②農業③エネルギー資源(ガス、水素)④IT⑤建設⑥機械建設。УП

10/22

■ゼレンスキー檄
定例のビデオメッセージで:ウクライナに必要なのは結果だ。日に500mでいい、前進することだ。それがウクライナに力を与える。世界にウクライナを助けるモチベーションを与える。テロによってウクライナの意志を挫くことはでいない、ウクライナ人は決して屈服しない。「ウクライナを屈服させることは可能だ」などという幻想を二度とロシアが抱かないようにせねば。УП

■冬に備える
露による冬季の電力インフラ攻撃に備え、英国軍がウクライナ人技師のための2週間の訓練プログラムを策定した。ウクライナ側の要請により実現。各種兵器や爆発物の威力および特性、物理および空中障壁の構築法を学び、かつ、複数の起こりうるシナリオに依拠しながら、施設の脆弱性の発見、爆発からの距離の判定を訓練する。УП

10/21

■ハリコフ凶弾
21日晩、ハリコフ西郊のコロチチ町の郵便物集積所(民間郵便サービス「ノーヴァヤ・ポーチタ」)にミサイルが飛来、22日午前時点で職員6人が死亡、16人が負傷した。露ベルゴロド州から発射された「S-300」2発。空襲警報鳴るや否やの爆撃で、シェルターに駆け込む暇もなかったという。УП

■ATACMS
ウメロフ国防相が米オースティン国防相と電話会談、改めてATACMSの供与について謝意を述べた。ATACMSのプレゼンスは「戦場で大きな影響力を持っている」と。УП

10/20

■バイデン演説
19日晩、米バイデンが国民向けビデオメッセージを発出。いわく、
・この今は、民主主義と権威主義の闘争が世界規模で行われている「歴史の転換点」である。УП
・ハマスとプーチンは相異なる脅威であるが、「隣接する民主主義を根絶やしにする」希求において共通している。テロリストがテロの報いを受けない、または、独裁者が侵略の報いを受けないようなことがあれば、さらなる混沌、死、侵略が引き起こされる。プーチンとのその政権の、ウクライナを支配しようとする渇望また志向を阻止しなければ、災厄はひとりウクライナには留まらない。УП
・イスラエル・ウクライナ支援のための巨額の緊急予算を議会に要請した。「米国の安全を幾世代にもわたり保障するための合理的な投資」とのこと。УП

このバイデン演説への反応。まずゼレンスキー「非常に力強い演説。米国に感謝したい。自由と民主主義の破壊をともに阻止しよう」УП
一方の露大統領府「露連と我らが大統領に対するあのような口調は受け入れがたい」(※プーチンとハマスが同列に語られた点)УП


■ゼレンスキー南部訪問
ゼレンスキーがヘルソン州とニコラエフを歴訪した。軍および行政トップと一連の会談(戦況・情勢の報告を受けるなど)、軍事病院の慰問、勲章を授与するなど。УПУПУП

■露失
ドネツク北郊アドヴェーエフカ(アウディーイウカ)を遮二無二攻撃している露側に記録的な損失。20日朝のウクライナ側の発表で、先立つ一昼夜の露側の人的損失は1380人だそうだ。さらに戦車55両、装甲車120両。УП
ウ側も当然に相当の損失を出している筈だが(それをウ側が公表することはない)、にしても露、毎日毎日千人近く失っている。10日で1万人。それでも露の人的リソースはほぼ「無尽蔵」、動員をかければ「いくらでも」補充できるという、この狂った算数。青年千人や一万人の命のこの軽さ!

■Дія新機能:「不屈の拠点」関連情報
国民アプリ「Дія」に新機能。冬季の停電・断水時に駆け込んで充電したり暖を取ったり水分を摂ったりでいる「不屈の拠点」と呼ばれる場所(昨冬設置、全国数千か所)に関する情報が得られるようになった。最寄りのそれはどこか、そこにはどんな設備があるか、そこへ行くためのルートは。居住地域の地図を事前にダウンロードしておけばオフラインでも情報を取得できるそう。ただし「安全の観点からヘルソン・ドネツク・ザポロージエ・ルガンスク各州全域、またハリコフ・チェルニーゴフ・ドニェプロペトロフスク・ニコラエフ各州の一部地域では『不屈の拠点』の場所は表示されない」そうだ。飽くまで後方地域のためのサービス。УП

■国勢調査は行わない
閣議決定で今年予定されていた国勢調査がキャンセルされた。20年付の「23年に国勢調査を行う」との閣議決定は時宜を得ておらず、次回実施は「終戦ないし戒厳令の解除ののち」へと持ち越された。УП
独立ウクライナでは2001年に一度だけ国勢調査が行われている。

■「人道支援」の3分の1は偽装?
ウクライナ軍宛て人道支援物資9000件(23年1月~9月)のうち、実際に軍に届いたことが確認されたのは6000件ほどに過ぎなかった。関税庁密輸・関税規則違反取締局と国防省内部監査局の合同調査。営利目的の商品輸入を人道支援と偽って関税上の優遇を受けるなどのケースが考えられる。既に犯罪の疑いがある387件につき警察に届けが出された。УП

10/19

■ATACMS(続々)
クレバ外相がATACMSについて語った。①今度の供与は9月末の米ウ首脳会談の直接の成果②今後も継続的に供与がなされる③より長射程(300km)のモデルもくれるとよいのだが。УП

■各国首脳イスラエル詣で
今度は英スナク首相がイスラエルを訪問する。УП
独ショルツ、米バイデン、英スナク。いちはやく訪問を希望したがウクライナ側に謝絶されたゼレンスキーって一体。米はともかく英独首脳の表向きの訪問目的は「イスラエルとの結束を示すため」。実際ショルツなどちょっときてすぐいなくなってる。ゼレが掲げたのもまさにそれ(結束、団結。象徴的意義)だったが。

「三鷹会」第3回、
10月28日土曜、13時半から。
三鷹駅南口から徒歩5分、駅前コミュニティセンター4F会議室にて。
参加無料。
詳しくは「ウラガワ日記」ご覧ください。

10/18

■ATACMS
ウクライナが長距離ミサイルATACMS(射程165km)を入手したことについて、ISW分析。①これによって何が可能になるか。露後方の航空機と弾薬庫を攻撃できるようになる。まさに17日の攻撃で行ったように。②そのことの副次的効果は。露軍は航空機を占領地全域に分散配備するようになる、あるいは、前線から遠い場所へ引き下げることになる。それによって、露の防衛および攻勢に対する航空支援(特にヘリによる)が困難になり、また分散配備された航空機同士の連携が難しくなる。③なぜ米は秘密裡にこれを供与したか。奇襲効果のため。露の情報空間の混乱ぶりをみるに、ウクライナは所期の効果をあげたと評価できる。УП

同じくATACMSについてNYT報道。①ウクライナに供与されたATACMSは20発ほど。②今回供与されたのは950個の子爆弾をばらまくクラスター弾で、国際的に禁止されているもの。③射程が短いヴァージョンであることもあり、これが戦況の好転にどの程度資するかは未知数。先に西側が供与した戦車たちは結局のところ、ウクライナにほんの若干の優位性をしかもたらさなかった。④とはいえ165kmという射程には、露が航空支援および兵站に利用していた主要な基地ほぼ全てが含まれる。⑤供与が隠密に行われた理由は、奇襲効果とあともう一つ、搬入時に露に攻撃されないようにするため。УП

訪中中のプーチンがATACMSの件にコメント。米による同兵器の供与は「過ち」。これによって戦況が根本的に変化することはないし、露軍はこれを大丈夫撃退できるとのこと。УП


■プーチン
習近平と頓風珍が長時間の対面会談を行った。一帯一路フォーラムで。政治経済関係の深化(後者について:今年の貿易額は2000億ドルを超える見通し)また中露首脳間の「温かい実務関係」「強固な個人的友情」が寿がれた。УП

■文化や言語に罪はない説
ドイツ文化相がフランクフルトの図書見本市におけるスピーチでロシア文化のボイコットに反対する立場を表明。いわく、プーチンのロシアとは別に、人権団体、作家、反体制派、青年層、LGBT運動、環境活動などからなる「もうひとつのロシア」が存在しており、文化的ボイコットはこれら勢力の政権批判をも攻撃してしまう。そして「ロシア語はプーチンの所有物ではない」と。УП

この問題についてかつて「何丘マニフェスト」というものを書いた。

■「モルドヴァ語」は存在しない説
まず地図を出しておきますけども

ウクライナとルーマニアに挟まれたモルドヴァという国では主としてロシア語とルーマニア語が話されているのだが、モルドヴァ自身は自国内で話されるルーマニア語を「モルドヴァ語」と呼称していて(中身は全く同じ)、ルーマニア側からかねて顰蹙を買っていた。

このたびゼレンスキーが先週のルーマニア訪問で「モルドヴァ語」の不存在について閣議決定を下しますと約束して、事実そのことが行われ、ルーマニア首相が謝意を述べるに至った。いわく、「モルドヴァ語」などという概念はロシアが創作したフィクションであり、そのような述語を拒否することを決めてくれて、ウクライナさんありがとう、と。УП

経緯:91年のモルドヴァ独立(※ソ連からの)宣言ではモルドヴァの国語はルーマニア語となっていたのだが、94年制定のモルドヴァ憲法では国語=モルドヴァ語とされた。2013年には「独立宣言の文言は憲法条項に優越する」とのモルドヴァ憲法裁判所判決が出ている。

ちなみにロシア語とルーマニア語は全然系統が違う。ルーマニア(「ローマ人の国」)語はイタリア語に近い。むかしウィーンの場末の定食屋で給仕さんがややえきぞちっくな風貌で、厨房の会話に耳を澄ませると「スラヴ語っぽい語彙が混じったイタリア語っぽい言語」が聞こえた。ほんで「もしかしてルーマニアの方ですか」と聞いたらどんぴしゃだった。という自慢。

10/17

■ATACMS!
ウクライナが米国にずっと求めていた(しかし得られなくてやきもきしていた)長射程ミサイルATACMSが秘密裏にすでにウクライナに供与されていたことが分かった。流れ:17日早朝ウクライナ軍が露軍後方でいきなり大きな戦果を上げた(ベルジャンスクおよびルガンスクの飛行場で敵ヘリ9機・対空兵器・弾薬庫ほかを撃滅)→WSJほか報道で「攻撃には米供与のATACMSが使用された」→ゼレンスキー、ビデオメッセージで米国とバイデンに感謝を表明、「ATACMSが効果を証明した」と明言→ザルージヌィ総司令官がATACMS発射の模様を収めたという動画を公開→米大統領府、ウクライナが最近ATACMSを取得した旨を公式に追認。飛距離165kmのモデルだという。УПУПУПУПУП

■独ショルツ
ハマスの攻撃後はじめてイスラエルを訪れたのはドイツのショルツ首相であった。テルアビブ空港で空襲警報が鳴り機外へ出て滑走路に身を伏せる一幕も。このとき首相は対空兵器による2発の爆発を目撃したという。УПУП


■一帯一路
中国の一帯一路フォーラムに参加すべくプーチンが訪中。ハンガリーのオルバン首相と会談。久方ぶりの国際舞台。欧州の国の首脳との会談も久方ぶり。

10/16

■イスラエルとロシア/ウクライナ
・プーチンとネタニヤフが電話会談。イスラエル側の死者につき遺族に哀悼の意を示し、市民の犠牲を伴うあらゆる行為を非難するとともに、紛争調停に力を注ぎたい意向を示した。プーチンは既にイラン、エジプト、シリア、パレスチナ自治区のリーダーと電話会談をしたという。УП
・先にウクライナ大統領府はゼレンスキーのイスラエル訪問の意向をイスラエル側に伝えていたが、「時宜を得ず」として謝絶された。УП
※ぼやき:紛争が調停されるに越したことはない。だが調停役として適任なのは両当事者に通じているロシアか。これでロシアの株が上がるのか。そしてウクライナはお呼びでない、か……。ゼレンスキーは22年冬~春の諸国首脳キエフ詣でになぞらえ今こそ各国首脳はイスラエル詣でして対テロ団結を、と呼びかけ、自身がその先陣を切ろうとしたが(11日)、イスラエル側の回答は「時宜を得ず」。だが米バイデンは18日にイスラエルを訪問するというぜ(УП)。またウクライナはロシアとハマスを等号で結ぶ情報キャンペーンをしかけたがあまり国際社会に響いているようにも見えない。舫・・

■世論調査:政権不信と西側への失望
キエフ国際社会学研究所が先月末~今月初旬に行った調査。残念なことに、諸々の指標の低下がみられる。ウクライナ国民自身の戦争疲れとロシアのプロパガンダの奏功の反映か。УП
・「政治指導部と軍司令部の間に深刻な対立がある」と思う・・14%(22年9月)→32%(今回)
・「政治指導部と軍司令部は一つのチームとして結束して行動している」と思う・・71%→54%

・「政権は受け入れがたい妥協をロシアと結ぶ可能性がある」と思う・・5%→12%
・「政権はウクライナにとって受け入れがたい妥協は行わない」と思う・・87%→80%

・「欧米はウクライナに疲れ、支援は弱まり、ウクライナがロシアに譲歩することを望んでいる」・・15%→30%
・「欧米はウクライナ支援を継続し、ウクライナにとって受け入れ可能な条件で戦争が終結することを望んでいる」・・73%→63%

■敵性文化排除
アレクサンドル・ソクーロフの新作映画『スカースカ』(邦題『独裁者たちのとき』)がロシアで上映禁止に。「文化省より本日(上映を許可しない旨)通知を受けた。理由は示されていなかった」と監督。なおスターリンとヒトラーとチャーチルとムッソリーニが主役の同作はドイツでも上映が禁止されている。Meduza

■オイルタンカーに機雷
黒海のルーマニア沖でリベリア船籍の石油タンカーが漂流機雷と衝突し軽度の損傷を負った。乗員は無事。ロシアの機雷とは即断できないが戦争(ロシアの侵略戦争)がなければ起きなかったこと。УП

■プーチン、アドヴェエーフカへの期待を下方修正
ロシアにとって第二のバフムートとなっている(それを押さえて戦果を呼号したい、ために猛攻をかけている)ドネツク北郊のアドヴェエーフカだが、ISWの言説分析によれば、プーチン含むロシア指導部は期待値を下げる方向へレトリックを修正している。一例として、露国営テレビのインタビューでプーチンが「アドヴェーエフカで活発な防衛(активная оборона)を行っている」と述べたことが挙げられている。普通なら活発な戦闘行為(активные боевые действия)と言うところ、露軍の突破は困難と見て状況規定を後退させたものだそうだ。УП

■ロシアのドローンは中国から入っている
露財務相シルアノフが露議会下院の予算委員会会合で「今日ほぼすべての無人機は中華人民共和国から入ってきている」と述べた。ウクライナに対する大規模侵攻始まって以来はじめて公人がドローンの出所を公言した形。同人続けて言うことには、25年までに国産無人機の割合を4割ほどに高めたい、と。УП

10/15

■電力防衛戦争(に備える)
16日朝、ヘルソンの電力施設に空爆が行われ、一部地域で停電。白昼の攻撃でも送電線が損傷した(УПУП)。ゼレンスキー「こうした攻撃は冬の到来とともに増加する。地方政府および電力会社は準備を怠らぬよう」УП

英情報当局によれば、露の大規模ミサイル攻撃は9月21日~3週間ほど行われていない。露は冬季のより好適な条件下で強力な攻撃を行うために①備蓄の使用を控えている②新たなミサイルの納品を待っているものと見られる。かわりにこの間はウクライナ南部の穀物輸送ポテンシャルを殺ぐ無人機攻撃が繰り返されていた。ドナウ川沿いの港湾施設はルーマニア国境に近く、そのため露は、空中発射式の長距離ミサイルよりも高精度な無人機による攻撃を選好した。
大規模ミサイル攻撃の長期休止は過去にも例がある。最近だと今年3月9日~4月28日の51日間。冬季の一連のインフラ攻撃でミサイル用の弾薬備蓄が枯渇したためと見られている。УП

去年の電力破壊キャンペーンは10月10日に始まった。今日は10月16日。必ずや行われると言われながらなかなか始まらない。もしかしたら行われないのではないか、などと淡い期待を抱く(のが人情だが)のは禁物だろう。せめて一日でも遅く始まり、少しでも烈度ひくく、一日でも早く終わることを願う。

■プーチンと中東情勢
ウォールストリートジャーナルによれば、ハマスのイスラエル攻撃でプーチンとネタニヤフのある種の蜜月が終了した。ウクライナ侵攻で露が国際的孤立を深め、しかもイスラエルの仇敵イランが公然と露を軍事支援する中でさえ、ネタニヤフはプーチンと電話で連絡を取り続け、また西側からの圧力にもかかわらず、ウクライナに対する殺傷兵器・防空装備の供与を拒み続けた。その関係性が終焉を迎えたものと見られる。ハマスの攻撃でイスラエル人1300人余りが死亡したことにつき多くの国の首脳がネタニヤフに弔電を入れたが、プーチンはネタニヤフに電話をかけなかった。
もともとウクライナ戦争を機に中東におけるロシアの役割が変化し、同地域では地殻変動が起こっていた。イランはロシアへの「シャヘド」供与の見返りにYak-130航空機を取得、イランへのSu-35戦闘機の購入さえ見当されていて、中東における航空戦力のバランスが変化する可能性がある。
3月に大統領選を控えるロシアとしては遠方における戦争勃発はウクライナ戦争から注意をそらす上で好都合である。УП

■戦況(点描)
露軍は頃日ドネツク北郊のアヴデーエフカ(アウディーイウカ)に対する攻撃を強めている。ISWによれば、露は常になく多量の装甲車を用いて攻勢をかけ、同市の南北で若干の前進を遂げているが、ウクライナ側の防備は強固であり、進軍は困難であろうとのこと。УП
ウ軍参謀本部の15日朝の発表では、先立つ1昼夜にウ軍は露軍の人員880人・戦車8両・大砲33門を撃滅したということ。額面通りに受け取るものではないのだろうが、発表数千人はさすがに多い、これがここ数日続いている。敵損失が増加しているということ。УП

■ウクライナに日常を
クレバ外相によれば、戦争を機にウクライナから撤退したIKEA、H&M、Zaraといったブランドを復帰させるべく交渉を進めているそうだ。いちど撤退したマクドナルドは今年ウクライナに復帰している。そのきっかけを作ったのはクレバ外相と米ブリンケン国務長官の電話会談だそうだ。「国際的なビジネスがウクライナで稼働すればするほど、戦勝への確信をより強めることができる」と外相。УП

■戦時ドキュメンタリー4選
見るべき戦時ルポ動画4選と題する記事がУПに。「今日明日は休講です」「暗闇と隣り合う街」「駅の別れ」「ポーランド国境通過」。いずれも英語字幕付き、2~3分程度なのでよければご視聴を。第2のもののみ長尺(13分)で死体が出てくるので注意。

なんとも言葉が出ない。喉を扼す悲痛、そして、このすべてをcauseした者らへの燃える憤怒と憎悪。

10/14

■海
・ウ海軍が露の巡視船およびタグボートに損傷を与えた由。УП
・英情報当局によれば、海上封鎖したいのは山々な露であるが、現状ではデメリットがメリットを上回っている。即ち、商船を公然と攻撃すれば政治的なダメージを負うであろうし、下手に軍船を進出させると撃滅されるかもしれない。なら商船の航行を指をくわえて見ているしかない、と。УП
・という次第で新たに3隻からなる商船団がオデッサ諸港に向かっています。ウクライナ軍が自主的に設定した臨時回廊を使って既に29隻がウクライナの黒海諸港に入港、21隻が出航している。УП
・とはいえ露には飛び道具がある。露は穀物合意の離脱以降、南部諸港に17次にわたり大規模攻撃をしかけ、結果諸港の輸出ポテンシャルは40%も低下している。まあた、穀物30万トンが根絶やしにされた。УП

■冬
ゼレ「ロシアが何に向けて準備しているか、いかなるテロ行為を計画中であるか、世界は知っている。そして我々は、侵略者にどのような返報を行えばよいかを知っているし、強力に返報を行う」УП

■枢軸
ハマスが声明。「シオニストどものわが人民に対する侵略およびガザ包囲、人道支援物資の供給停止、市民への襲撃、これらに対する露大統領VVプーチンの立場を高く評価する」。プーチンはこの前日にイスラエルとハマスの双方に対し武力衝突による市民の犠牲を最小化あるいは無化するよう呼びかけた。それ自体は真っ当な主張だが①自ら侵略戦争を遂行中であり児童誘拐犯として国際指名手配されてる奴の発言②ハマスの初発のテロは飽くまで非難しない、の2点で際立つ。УП

■もくひょう
露軍は年内にドネツク州全域を掌握することを目標に設定している模様。その際重要になるのがアドヴェーエフカの高地を押さえることで、ゆえにアドヴェーエフカ(アウディーイウカ)に猛攻をしかけているが、ウクライナ軍によってあえなく一掃されています、と同市市長。УП

■敵の損失
その関係か、ウクライナ軍発表の敵損失がここ数日、明らかに増大している。14日朝の発表では、先立つ一昼夜の敵の人的損失は実に970人。УП

10/13

■ゼレ in オデッサ
ゼレンスキーがオデッサを訪問し地方トップと一連の会談。中心議題は冬の守り。УП
そこへオランダ首相も電撃訪問(ゼレの招きで)、パトリオットと巡視艇の供与を発表。УП
記者会見でゼレ「ウクライナは一部の国と冬季のための防空システム供与で合意した」УП

■Дiя+不屈の拠点
国民アプリДiяに「不屈の拠点」についての情報サービスを実装させる旨、閣議決定。不屈の拠点とは昨冬ロシアによるインフラ破壊への対応としてウクライナ各地に設置された電灯があり・充電でき・水が飲め・暖房と毛布があり・ネットが繋がる施設。1万3000か所あるそうだ。ただし各所で若干設備は異なっているらしく、今度の話は、以後アプリで①最寄りの「拠点」がどこにあるか、②そこにどんな設備があるかが分かるようになる、ことに加え、さらに③各「拠点」のレビューを利用者が行える。整備劣悪な「拠点」が摘発され点検される仕組み。すばらしい。УП
10月20日実装。1週間、このスピード感。すばらしい。10/20の項参照
⇒国民アプリДiяについては何丘の一連の記事で「Дiя」「Дия」と検索のこと

■世論調査(屈する屈せざる)
キエフ国際社会学研究所が9月末~10月初旬に行った調査。УП
①平和と独立維持のためには領土的妥協を甘受する……14%(23年5月時点で10%)
②たとえ戦争が続き新たな脅威が訪れるとしてもいかなる領土的妥協も認めない……80%(同、84%)
※反転攻勢開始前(5月)の時点と比べて「妥協やむなし」と考える人が有意に増えている

上記①「妥協やむなし」について、地域別に見ると、西部(リヴォフを中心とする)および中央部(キエフを中心とする)は5月→10月でほぼ不変。南部(オデッサを中心とする)は5月8%→10月21%。東部(ハリコフを中心とする)は5月13%→10月22%。
※すげぇ増えてる。

言語別に見ると(ウクライナにおける世論調査はいつもこれが面白い)、上記①「妥協やむなし」と②「決して妥協せず」の比率は、ウ語話者において11:84、露語話者において27:65。
※言語と思想信条には一定の相関性がある、ということ。ロシア語話者の中には、ロシアは飽くまで交渉とか妥協が可能な相手である、と考える人が(ウクライナ語話者に中でそう考える人より有意に)多い。

10/12

■ウクライナの現在の最重要課題3つ
ゼレによれば、この日の最高司令部会合で3つの緊要な問題について議論がなされた。①戦況②装備③中東情勢。②は武器および装備品(ミサイル、ドローン、装甲車、弾薬)の国内生産について、進捗は良好とのこと。③は地域に在留するウクライナ国民の保護や、不安定化の広域化を阻止するための友好諸国との取り組みについて。УП

■グラザー村
ハリコフ東郊グラザー村に対する5日の攻撃による死者は59人に上っている。いずれも民間人。人口330人の村の喫茶店で戦没者追悼集会が開かれたところを露のイスカンデルミサイルが襲い、老人子供まきびと教師、ある人は五体八つ裂きで即死、ある人は搬送された病院で死亡。УП

■アドヴェーエフカ
ドネツク北郊のアドヴェーエフカ(ウクライナ施政権下)に対する露軍の攻撃が激しさを増している。ウ軍報道官によれば、アドヴェーエフカ侵攻当初は露にとり同市は特段の意義を持たなかったが、今やその攻略は露軍の威信をかけたものになっている。УП
ISWによれば、同市周辺で露軍が一定の前進を見せているのは確かだが、それが全体の戦局に影響する可能性は低い。УП

■オデッサ州/ルーマニア
変わらずオデッサ州西部イズマイル地区のドナウ河港にシャヘド(自爆ドローン)が飛んできている。11→12の夜、総数33機が各地に飛来、うち28を撃墜。オデッサ州でも10機を撃墜したが撃ち洩らしたものが港湾インフラや家屋を破壊、一人が負傷。УП
この攻撃で破片の一部がルーマニア領土に落ちたらしく(それはそう、河の対岸はルーマニアというその河の港への攻撃)、同国外相が抗議ツイート。УП

■五輪
IOC(国際五輪委)がロシア五輪委を除名した。ロシア五輪委がウクライナ4州(ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポロージエ)のスポーツ組織を「編入」したことを受けての措置。以後ロシア五輪委は五輪委としての活動を認められず、IOCからいかなる資金援助も受けない。ただしロシア国籍者が個人資格で2024年パリ夏季五輪および2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪に出場することは可能。УП

■冬
ガルシチェンコ・エネルギー相によれば、露のエネルギーインフラ攻撃によりブラックアウト(全土停電)が起こる可能性はある。とはいえ準備は整えているので、停電は短時間に抑えられるだろうと。УП

■ブダーノフ語録
ウクライナ国防省情報総局長官キリル・ブダーノフへのインタビュー、byУП(ウ語、全文)。わりと毒の強いぎょっとするようなことを色々いう奴。以下シングルカット。
・露の継戦能力はあと2年はもつ
経済力で見て、露は2025年くらいまではさしたる問題もなく戦争を継続できる。装備の数量については、もって26年まで。人的リソースについては当分枯渇しない。とはいえ上限値まで突き進む覚悟が露にあるか、というのは別問題。УП
・露の怖いやつ4人
経済問題でリアルな影響力を持っているのは露大統領府副長官セルゲイ・キリエンコ。この人物がウクライナのエネルギーインフラ破壊の「主たる唱道者」である。一般に、露のウクライナに関するあらゆる決定に影響力を行使しているのが露大統領府長官アントン・ワイノ。「ウクライナではあまり知られていない名だが、その影響力は絶大である」。軍事部門で影響力ある人物といえばやはり国防大臣セルゲイ・ショイグ。ウクライナ国防省情報総局長官の危険なライヴァルと言えるのが、FSB(露保安庁)第5局長官セルゲイ・ベセーダ。「常にウクライナに問題をもたらす男。非常に困ったやつ。多くの害悪をウクライナにもたらした」УП
・電力戦争再び
冬季またウクライナは電力戦争を戦うことになる。露はここ最近ミサイル攻撃を抑制しており、(ウクライナの電力網を攻撃するための)力と手段は十分にある。敵は一定程度の備蓄を回復した。さほど多量ではないが、我が国の電力、のみか、石油ガス部門、工場、軍事施設に深刻なダメージを与えるには十分な備蓄を。いまウクライナにとって一番の問題は、防空だ。今あるより遥かに多くの防空装備がウクライナには必要だ。УП
・プリゴジンの死は確定ではない
ウクライナ情報総局はプリゴジンの死亡について確証は今もって得られていない。死んだのか死んでないのか、私は知らない。とはいえ結果として強敵であったワグネルが著しく弱体化したこと、元露航空宇宙軍司令官スロヴィキンがワグネルとの結びつきがもとで閑職に追われ影響力を失ったこと、これらはウクライナにとって歓迎すべきことでしかない。УП
・カディロフは本復した
一時深刻な健康不安が取り沙汰されたチェチェンのカディロフだが、腎臓を患い、一時は命の危険もあったが、現在は回復している。「好むと好まざるにかかわらず、事実は認めるべきだ」УП
・ロシアはハマスを支援した
ロシアはウクライナで鹵獲した歩兵用装備をハマスに譲渡した。これは確実だ。またロシアはFPVドローンで装甲車を攻撃するノウハウをハマスに伝授した可能性もある。ウクライナ戦争を戦った者にしかできない芸当で、かの地にウクライナ人はいない、であれば、ロシア人がやったということになる。また、9月24日に無線電波諜報および衛星通信傍受を行うロシアの人工衛星がイスラエル上空の静止軌道に移動したことが分かっており、同月22-24のロシア軍高官のイラン訪問で偵察情報の提供についてイラン側から打診があったことも分かっている。
なお、イスラエルにおける事象は、それがもし数週間のうちに収束するのであれば、ロシアとウクライナの戦争に影響しない。だが、長期化するならウクライナへの軍事支援にも影響が出るし、最悪の場合、グローバルな戦争に発展する恐れもある。УП

ちなみに米バイデン政権は、ハマスのイスラエル攻撃にロシアが関与したことを示す兆候は見られない、としている。УП

10/11

■売国奴
ウクライナ保安庁が5日のハリコフ東郊グラザー村攻撃(病院搬送後の死亡も含めて、死者実に55人。村の人口は330人)で露ミサイルの誘導を行った対敵協力者2名を特定した。30歳のウラジーミル・マモンと23歳のドミートリイ・マモンの兄弟、かつて村が敵の占領を受けたときにロシア側に寝返り、占領当局下で働き、ウクライナ軍によるハリコフ解放を前に家族を連れてロシアに逃走。その後も侵略者の利益になるようハリコフ州の脱占領地域の都市村落に住む親類・隣人・知人らと繁く連絡をとり親密な会話を装って軍の動向や地域内の人流について情報を収集していた。10月からはグラザー村における戦没軍人の追悼集会に関する情報の収集を開始、その正確な時間や場所が分かると、露当局に報告した。やり取りを見るに、攻撃が行われれば村の知人(情報提含む)ら市民が死亡することは、当人らも理解していた。
国家反逆罪等の適用案件であるが両名が在ロシアであるため居所の特定・処罰などは容易でない。УПУП

弟の方と、恐らくは現地住人の「事後」のやり取り。後者「もしこのことにヴォーヴァ(兄の方)が関与しているなら良心の呵責を受けるべき。どの旗(ロシア国旗かウクライナ国旗か)が掲げられるにせよ、村にもうあんた方の居場所はない。無辜を無残にもやってくれたもの。糞ったれ、皆が気の毒だ」

■イスラエル=ウクライナvsパレスチナ=ロシア?
おおよその構図は、ハマスをテロリストと断じイスラエル絶対支持を鮮明にしているウクライナと、ハマス(の凶行)への言及を避けつつイスラエルおよび米国の中東政策を非難しつつパレスチナに一定の理解を示すロシア、ということになっている。
まずゼレンスキー、イスラエルを訪問する意向を表明。ウ大統領府がイスラエル側に訪問の意志と同意要請を送って回答待ち。訪問目的は「イスラエルとの団結を示すため」。ゼはまた、露のウクライナ侵攻から数か月のうちに各国首脳が相次いでキエフを訪問したことを引き合いに、自分に続いて各国首脳もイスラエルを訪問するよう呼び掛けている。УП
一方のプーチン、戦争の原因の一つはイスラエルの入植政策であり、イスラム信者にとってパレスチナ問題とは即ち多年にわたる巨大な不正義に他ならない、との認識しめす。また、ロシアは首尾一貫してパレスチナ国家建設を是とする立場である、とも。УП
違うことを話している、と言えばそれまでだが、団結への志向と対立への志向という傾向性は指摘できる気がする。


■冬と防空(@ラムシュタイン
神出鬼没プレーを好むゼレンスキー、ルーマニア訪問は一国のみ訪問で諸国歴訪は今回はしませんよというアナウンスに反してベルギーに飛び、ブリュッセルでNATOウクライナ国防相会合(ラムシュタインフォーマット)に初めて対面参加した。5億ドルの追加支援の話(УП)などは専門家先生に解説していただいて、ここではウクライナ市民の生活に直結する冬季の防空についての発言を拾う。
・ゼレンスキー「この冬ロシアはインフラ絶滅戦術を踏襲して膨大なテロ行為をしかけるだろう。そこで空の守り。それがあれば都市部で正常な生活が保障され、経済が回り、黒海およびドナウ川の穀物回廊が機能する。今こそウクライナへの防空システムの供与を一歩前に進めるべきだ。ロシアの最重要戦略がテロル(恐怖による圧迫)であるときに、それを挫くことができれば、戦争の終わりを大きく近づけることができる」УП
・NATO事務局長ストルテンベルク「プーチンは再び冬を兵器として使う気だ。いまウクライナにまず必要なのは対空兵器だ。より新式の、より多くの対空兵器を供与することで、ウクライナは経済を守り、死活的インフラを守り、自分で弾薬を製造できるようにもなる」УП

■世論調査①誰を信じるか
ラズムコフセンターが9月末に行った調査。УП
・信頼する機関/組織は?
ウクライナ軍(93%)志願兵部隊(85%)ボランティア組織(84%)国家非常事態庁(消防隊など)(83%)国家親衛隊(81%)国境警備隊(76.5%)大統領(72%)国防省(71%)ウクライナ保安庁(66%)市民団体(60.5%)教会 (59%)警察(57%)市町村長(54%)…
・信頼できない機関/組織は?
政党(74%)役人(72%)司法制度(70%)国会(64%)検察庁(61%)政府(60%)民営銀行(59%)国家汚職対策局(53%)対汚職特別検察(52%)国家汚職予防機関(52%)…
・信頼する/信頼できない公人は?
「信頼」については、ゼレンスキー(75%)ヴィターリイ・キム(ニコラエフ州知事、64%)セルゲイ・プリトゥーラ(俳優・ウクライナ軍支援財団設立者、51%)ポドリャク(大統領府顧問、45%)。
信頼と不信が拮抗してるのがヴィターリイ・クリチコ(キエフ市長、信頼44%:不信39.5%)シュムィガリ(首相、44%:36%)ダニーロフ(国家安全保障会議書記、42%:35.5%)あたり。
要職であるが新任ゆえまだ評価が定まってないふうなのがウメロフ国防相(25%:21%)
「信頼できない」については、ボイコ(82%)チモシェンコ(82%)ポロシェンコ(73%)と「一昔前」の政治家がトップを固める。現大統領府長官のイェルマークが53%と意外に信頼されてない。

■世論調査②戦時下でも選挙を行うべきか
同じくラズムコフセンターの調査。УП
戦時下で国政選挙(大統領および国会議員選挙)を、
行うべき……15%
行うべきでない……64%

「行うべき」と考える理由は、民主主義のために必要だから(6%)ウクライナは民主主義国家だと世界に示すため、権力の交代の必要性、権力の更新の必要性(たとえ同じメンツが再選されるのだとしても)、選挙によって国内問題に関する社会の議論が活性化しその解決が加速されるから(各5%)

「行うべきでない」と考える理由は、そのための金がない(36%)戦時下で選挙は行わない旨法律に規定されているから(32%)投票者の安全が保証されないから(31%)戦時下では参政権および市民的自由の一部制限により選挙の民主性のスタンダードが遵守できないから(29%)被占領地住民が投票できないから(26%)国外避難者の投票が困難だから(24%)戦地の兵士たちが投票できないから(22.5%)(これらの問題の解消のために)オンライン投票を許可した場合にはロシアの特務機関が介入してくるから(14%)国内の政治闘争が激化し戦時にポピュリスティックな決定が下されてしまう恐れがある(13%)選挙のために戦時態勢が一時解除されるとなると安全および国防能力に悪影響が出る恐れがある(11%)選挙管理委員会や選挙監視団さらには候補者が中途で動員される可能性がある(9%)

私見:戦時下で選挙「行うべきでない」の方に十分すぎる説得力を感じる。行うべきでないと思う。ていうか、ふつうに無理だと思う。
また、行う必要がないと思う。こうした世論調査が選挙を一部代替している。あと、こうした世論調査を独立性の高い複数の調査機関が実施できていることそのものが、ウクライナで民主主義が機能していることの例証に他ならない。
ロシアでは果たして選挙という名の茶番が行われるのであろうが、選挙が行われるロシアより、選挙が行われないウクライナの方が民主的である。また、大統領自身が大統領の任期を伸ばしてそれで今度も大統領に再選される(のがやる前から確定している)ロシアより、国内法の規定に則り粛々と無選挙を貫くウクライナの方が、法治的である。
ところで、選挙には国家の資金とエネルギーが莫大に費やされる。いまウクライナはそのような余事にかまけず、国防に専念して人命を救うことの方が正義である。逆にロシアが人民とプーチン帝の社会契約更新という猿芝居に政治・財政的リソースを割いて悪事の遂行に専念できなくなることもまた寿がれるべきことだ。
というわけでわたくしは、ロシアで選挙が行われることも、ウクライナで選挙が行われないことも、ともに歓迎する。

なおゼレンスキー、訪問先のルーマニアでインタビューに応じ、もし戦時中にそれでも大統領選が行われたら出馬するかと問われて、「戦争が続いていれば、然り(出馬する)、戦争が終わっていたら、否(出馬しない)。戦争が行われている間は、降りるわけにはいかない」

同じインタビューで戦争終結の見通しについても(漠然と)語った。「その日(戦争が終わる日)について正確な日付は言うことができない。誰にも言えないだろう。私が知っていることはただ、我々が反攻を続けるということ、ロシアが我が国から立ち去るということ。たぶん、私はそれがいつになるかを知っている。だが、だがそれを皆さん方に言うわけにはいかない」「これは戦争の最後の段階だ。半ばではない。第1の段階が占領、続いて侵攻の停止とイニシアチヴの交代があった。たぶん、我々は、終結部にいる。資金も武器も、不安は多いが、我々は終結部にいるのだ。最も困難な部分に」УП

10/10

■ハマスとプーチンとゼレンスキー
老人プーチンが10日イラク首相との会談の中で中東情勢に言及した。「ウクライナ危機が続くなか、中東情勢まで急激に悪化した。これこそ米国の中東政策の失敗の好例である、との私の意見に、多くが賛同してくれることと思う」「米国は和平の一極支配(монополизировать)を試みたが双方に受け入れ可能な妥協案を見いだせなかった」そうだ。УП
ハマスのイスラエル攻撃は7日朝。ゼレンスキーは同日昼イスラエル支持の旗幟を鮮明にし翌8日夕にはネタニヤフとの電話会談まで行った。引き比べて露の御大の腰の重いこと重いこと、またその言うことの眠たいこと眠たいこと。

■ゼレンスキー訪ルーマニア
ゼレンスキーがルーマニアを訪問、大統領、首相、議会両院議長など、同国トップと一連の会合をもった。ウクライナ国防支援、二国間関係強化、国防産業複合体レベルでの協力、食料安全保障問題とりわけウクライナ農産品のトランジット国としてのルーマニアの役割について討議したという。УП
またゼレンスキー、ルーマニア大統領との合同記者会見で、ハマスを長期にわたり支援してきた国の一つとしてロシアを名指し。УП

10/9

■中東情勢のウクライナ戦争への影響
イスラエル・パレスチナ(ハマス)間の紛争。当記事ではウクライナ戦争への影響という点からのみ取り上げる。すでに色んな人が色んなこと言った。キーワードは分断と団結。
【団結】
ゼレンスキーがNATO議会@コペンハーゲンにオンライン参加し一種感動的な演説。まずロシア=ハマス=イランの悪の枢軸を非難し「この悪はどこまで遠く歩を進め得るか?否、我々が許す範囲より遠くへは決して(Як далеко може зайти таке зло? Не далі, ніж ми йому дозволимо)。我らの団結は、悪をとどめうるし、また止めるべきだ。彼らの血への飢(かつ)えでなく、我らの平和への希求こそが、世界の進むべき道を示すのでなければならない」。そして世界に団結を呼びかけた。「(アメリカをさして)今は国際舞台から対内紛争へと逃避しているときではない。引きこもるときではない」「欧州は積極的関与を。米国も積極的関与を。中国、インド、アラブ諸国よ、目を覚ませ、テロリストに目的を達成させてしまっては、どれほど多くのものが瓦解してしまうことか。トルコ、ブラジル、ラテンアメリカ、日本、豪州、カナダ、アフリカ諸国、中央アジア諸国、韓国、パキスタン、インドネシア、カリブ海・オセアニア諸国……すべての国に、積極的関与を求めたい。命を守るため、国際法を守るために。テロルにチャンスを与えてはならない」УП
【分断】
一方の露はこれを世界の分断の好機と見て利用しようとしている。ISW(戦争研究所)は「露政権は中東紛争再燃によって世界の関心および関与はウクライナから剥離するであろうとことさらに言い立ててウクライナ国民を不安にさせ・ロシア国民を鼓舞し・西側世論に楔を打ち込む情報キャンペーンを展開するであろう」と予言。УП
・すでに露高官からそうした声明が相次いでいる。一例としてペスコフ:ハマスのイスラエル攻撃で西側の対ウ支援の低下は「不可避」なんとなれば「可能性には自ずから限界がある」から。УП
・露がこうした声明の次元にとどまらず、はや中東紛争に裏から手を回しているという声も。ウクライナ国防省情報総局によれば、露はウクライナ戦争でウクライナ軍から鹵獲した欧米製兵器をハマスに供与している。狙いはウクライナの信用を失墜させ、同盟国間の関係を悪化させ、西側からの兵器供与にブレーキをかけること。すでに供与は行われており、次の一手は「ウクライナ軍は西側から供与された兵器をテロリストに常態的に転売している!」というフェイクニュースによってウクライナを非難することだという。УП
・こうした状況についてゼレンスキー「ロシアが中東における戦争の激化に利益を見出していることは確実だ。痛みと苦しみの源泉が新たに一つ生まれたことに乗じて、世界の団結を弱体化させ、分断と矛盾を増大させ、もって欧州における自由の根絶を加速しようとしている。ロシアのプロパガンディストどものあの喜びようを見よ。お仲間のイランは公然とイスラエルの攻撃者(ハマス)の肩を持っている。これがどれほど恐ろしいことか、世界はよく理解していない。先の世界大戦も始まりは局地的な侵略だったのだ」УП
・だが分断の画策者の方も分断の脅威と無縁でない。チェチェンのラムザン・カディロフがパレスチナ支持を表明。「ムスリム諸国のリーダーたちよ、欧米の友好国に呼びかけてほしい、戦闘員の殲滅という口実のもとに市民を空爆するなかれと。我々はパレスチナを支持する。そして我々は、この戦争に反対する。戦争だけでなく、情勢を加熱させようとするあらゆる試みに反対する」Meduza

■暖房シーズンの始まり
キエフの一部社会インフラ(病院・学校・幼稚園など)への暖房用温水の供給が始まった。住宅への供給はまだ。日中の平均気温が8度以下の日が3日続いたら暖房入れる。УП

10/6

■ハリコフ
病院で1人が死亡して5日のグラザー村(ハリコフ東郊)ミサイル攻撃の死者は52人に。ハリコフ州検察によれば「攻撃は非常に正確なもので、ロシアに数少ない高精度かつ高価なミサイルが使用された。攻撃の意図は不明だが、地元住人の手引きがあった可能性は確かにある。戦没軍人の追悼集会ということで、多数の軍人が集まっているとロシア側は考えたのかもしれない。だがそこにいたのは市民であった。その多くが女性であった」УПУП
拾われ、集められ、鳴るが、取る人のない電話↓

僻村の住民6人に1人が死亡するという恐るべき悲劇のあと、ハリコフ州では3日間の服喪が宣言されたが、すぐ翌日の6日、今度はハリコフ市中心部にミサイル攻撃、10歳少年とその祖母68歳が死亡、ほか28人が負傷した。УП

■ルーマニア
ゼレンスキーが来週ルーマニアを訪れるそうだ。欧州歴訪の予定はなく、ルーマニアだけ訪問する由。ということはオデッサに寄っていくことになる。УП
オデッサ州とルーマニアの国境(ドナウ川沿い)には6日未明もシャヘドが群来している。УПУП

■冬
ゼレンスキーが晩方のビデオメッセージで冬季のインフラ破壊は今年も確かに繰り返されるであろうと。「ロシアの現政権は常に、いつか行ったことを行う。全ての過ちを繰り返す。全ての悪を繰り返す。うまくいかなかったときは悪が足りなかったのだ(だからうまくいかなかったのだ)と考える。狂ったロジック。だがそういうものなのだと思うしかない。この冬、ロシアのテロリストどもは、再び我が国のエネルギーシステムの破壊を試みるであろう。そんなことでウクライナを屈服させることはできない、という意見を聞く耳を、彼らは持たない。だから『もっと多くの攻撃を』、ウクライナの防護をかいくぐる『もっと多くの試みを』と彼らは努める」УП

ここに暗鬱な観測あり。ロイターによれば、冬を前にウクライナのエネルギーシステムは不安定なままであり、暖房と電灯と水のない夜々が再び数百万ウクライナ市民を見舞うことは必至である。ウクライナは被害の詳細を公表していないが(センシティブな情報として秘匿)、客観的な事実、また要人の一連の発言からそう推せるそうだ。ウクライナおよび西側の専門家:「数千もの技術者が夏期数か月をかけて破壊された機器の修理にあたったし、最良の防空兵器が被害の軽減を助けるであろうが、資金も時間も越冬準備を全うするに十分ではなかった」「破壊されたものをただ修理することに多くの労力が費やされたが、では強靭性は高まったのか、昨年よりもよい状態で我々は冬を迎えるのかと問われれば、否と答えざるを得ない」
とはいえ強靭性増大のための付加的方策もなくはない。発電所を守るために土嚢とかコンクリート壁とか蛇籠(ガビオン)とかドローン捕獲用ネットを設置したり、ガス備蓄を独立以来最大規模に増やしたり、諸セクターの脱集権化、欧州からの電力輸入、一部企業および都市の自律化(再エネや発電機による)、色々な手立ては講じている。
なお、昨冬のインフラ攻撃は10月10日から3月まで続き、戦線から遠いところに住んでるウクライナ人は、この間平均35日を電気なしで過ごした。停電はしばしば断水を伴った。戦線に近いところに住んでるウクライナ人については言うにや及ぶ。УП

ひと冬に35日。改めて、鬼畜すぎて言葉がない。何度も言ってるがウクライナの冬は寒い。一番あったかいオデッサでもマイナス10度はザラ、黒海も波打ち際くらいは凍る。

ワンチャン、露が今年その蛮挙に出ないということはないものか。ウクライナ人2000万人くらい(全国民の半数)が署名してウラジーミル・プーチン宛てに真率な嘆願を行うということを妄想して、作文までしてしまった。

Владимиру Владимировичу Путину
Не лишайте нас света и тепла зимой, нам это не нравится.
от 20 млн граждан Украины

Мы слышали ваши аргументы: киевские нацисты, американские империалисты, от монополии к многополярному миру, освобожение русского народа от репрессии и так далее. Но в этом деле конкретно, это ваша армия атакует на нашу энергосистему, а наше правительство ее защищает. Конкретно ВЫ ставите нас под угрозу холода и тьмы, а не какой-то нацист в Киеве или империалист в Америке. Перестаньте, нам это не нравится.

日本はできることをしている。発電機とかすごい送ってるそうじゃん。そういうことこそが行われるべきで、市民レベルで1万円とか寄付しても、たぶん、そんな意味ない。私はするだろうし、するよう呼びかけるかもしれないけれども。

あと、これもそんなに意味ないとは思うけど、どうしても思ってしまうのは、日本の冬場のイルミネーション、あれ、やめませんか。やめてウクライナへの連帯を示しませんか。震災のときそうしたように。それでういた予算をウクライナ越冬支援に差し向けませんか。今年もどの駅の駅前でもイルミネーションやるのだろうが、やるせなくなるよ。

とりわけ昨冬某荻窪駅だか西荻だかが駅前ロータリーを流行りの色だからとばかり青黄二色でライトアップしているのを見たときは「連帯」の余りの偽善性に絶望を感じた。

10/5

■ハリコフ郊外の村落にミサイル、民間人51人死亡
畑地に囲まれた何でもないような村である。ハリコフ東郊のグラザー村。

5日白昼、追悼昼餐会で多くの村人が集まっていたカフェ兼食料品店にロシアのミサイルが降ってきて、51人が死亡した。村の人口は330人。各家庭から最低1人がこのイベントに参加しており、当時その建物には60人ほどの人がいた。瓦礫の下から次々死体が引き出された。6歳少年の遺体も。

ゼレンスキー「絶対的に自覚的なテロ行為(абсолютно сознательный теракт)」クリメンコ内相「あまりに正確に命中しているため地元住人の誰かが攻撃を手引きしたことも疑われる」УПУПУП

■夜襲
相変わらず深夜早朝にいやなもの飛ばしてくる。4→5日の夜、シャヘド29機、うち24撃墜。最近は大体クリミアの東側(下図赤ピンは今回の射場、クリミアのチャウダ岬)とかアゾフ海東岸あたりから発射される。でオデッサ/ニコラエフ州上空で撃ち落とす。УП


■パーチン@ヴァルダイ会議
露連のパーチン大統領という人がヴァルダイ会議で演説。西側批判。米国とその衛星諸国は軍事政治経済文化道徳価値観ヘゲモニーの樹立に猛進した、西側の富は幾世紀にもわたる植民地いや全地球の略奪によって築きあげられた、西側の歴史とは畢竟、終わりなき拡張のクロニクルである、その報いを受けるときがきた。何度も言っているように所謂「ウクライナにおける戦争」を始めたのは我々ではない、我々はむしろそれを終わらせようとしているのだ、キエフ政権が西側の直接援助のもと開始した今年10年目になる戦争を終わらせることこそが特別軍事作戦の使命なのだ。云々。Meduza

ついで御用記者との質疑応答。まずプリゴジンについて、なんでも露連捜査委員会の先日(на днях)の報告によれば、航空機墜落事故で死亡したワグネル指導部の体内からは手榴弾の欠片が見つかったのだそうだ。「航空機に対する外部からの作用はなかった。これは確証された事実だ」。あと、死骸の血液でアルコール/薬物検査をしなかったのは残念であった、そのような検査はぜひとも行うべきであった、「ペテルブルクのワグネル本社から100億ドルの現金とともにコカイン5キロが押収されたことは周知の事実」だ、云々。УП
ワグネル幹部爆殺は8月23日のことだが1か月半も経って、それも捜査委員会の公式発表でなくプーチンの口から新説が聞かれるのは全く奇妙なことだ。都合のよい事実ならあとからいくらでも出てくる。安心しろ、もう1か月もしたら捜査委員会が新たな報告をくれるよ、「やっぱりアルコール反応出ました、奴ら全員ヤク中でした!」「ほうらやっぱりね!」

オデッサについても一言ふれてくれた、ありがとう!「オデッサはもちろんロシアの街だ。ちょっとちょっとユダヤの街でもあるけどね。ほんのちょっとちょっとね(Одесса — это, конечно, русский город, но вот чуть-чуть еврейский. Вот чуть-чуть)」Meduza。そう言うときのОдессаの発音が相変わらず間違っている。アヂェッサでなくアデッサと言っている。オデッサっ子が一番嫌うやつ。

■日本の貢献
国連開発計画と日本政府の合同プロジェクトにより、ウクライナが新式大型単巻変圧器(Autotransformer)2基を取得した。ガルシチェンコ・エネルギー相によれば、昨冬のインフラ破壊キャンペーンで最大の標的となったのがまさにこの単巻変圧器で、その交換ないし製造には膨大な時間と資金がかかり、いまウクライナ全土で最も必要とされている代物だそうだ。ゆえに国連開発計画と日本の今回の支援は極めて貴重なもので、今冬のウクライナのエネルギー安全保障にとっては莫大な貢献と言えると。ほか開戦以来日本がエネルギー部門で複合的な支援(発電機の供与など)を行っていることも指摘されている。УП

10/4

■露艦は遠くなりにけり
海上の戦線がウクライナ本土沿岸から100海里(185km)まで遠のいて大分たつ。露船は今やクリミアのタルハンクト岬(下図)より先に出てこない。南部作戦司令部グメニュク報道官、УП

侵攻初期は砲弾が届く距離(数十キロ)までオデッサに迫ったが「モスクワ」撃沈以降は100海里より近づかないと。ただし海の誇示するべく航空機は飛ばしてきていて、オデッサ沖の蛇島には日に2~3発の爆撃が行われている。

なお、衛星写真によれば、露の黒海艦隊に属する多数の船舶がクリミアのセヴァストーポリから引き揚げられ(内訳はフリゲート艦2隻、ディーゼル潜水艦3隻、大型揚陸艦5隻、ミサイル艇数隻)、露本土クラスノダール地方ノヴォロシースクに移転した。УП

■クリミア上陸作戦
ウクライナ国防省情報総局の特殊部隊がクリミアに上陸し敵と交戦、敵に大幅な損害を与え自陣も損害を被り、退却したとのこと。УП

■防空
冬季のインフラ攻撃に備えパートナー諸国より追加の対空兵器の供与を受けるべく多様な枠組みで協議を続けている、とゼレンスキー(УП
またドイツが追加の防空装備の供与を計画中との話も。こちらはウクライナ沿岸を通ってルーマニアに向かう穀物輸送船を露の攻撃から守るため。「IRIS-T」1ユニットと自走対空砲「ゲパルト」1ダース余りを年内に、とのこと。УП

10/3

■黒海
Bloomberg:ウクライナの黒海3港(オデッサ、チェルノモルスク、ユージヌィ)が穀物輸送船の受け入れを再開した。ロシアは穀物合意からの一方的離脱後「ウクライナ諸港に向かう船を撃滅する」との脅迫を行ったが、これに対してウクライナは自力で安全な航路を開くという賭けに出た。そうして「賭け金はあがなわれた」。既に最初の10隻がこの航路を利用して無事に航行した。保険会社も海上保険の提供を再開しているとのことだ。УП
なお、9月の黒海諸港からの穀物輸出量は5万トン。ウクライナは今後も穀物の海上輸送について露と協力する可能性は皆無であり、国連・トルコほか西側パートナーとのみ協力していくとのこと(農業副大臣、УП

■外出禁止令
なぜ前線から遠い後衛地域(たとえばオデッサ)でも今もって深夜早朝外出禁止令が敷かれているのか?クリメンコ内相によれば、「規律の維持と、犯罪の予防」のためだそうだ。УП

10/2

■EU外相会合inウクライナ
キエフでEU外相「出張」会合が開かれた。EU域外でこうした会合が開かれるのは史上初。以下その点描。
・EU加盟への道。ゼレンスキーによれば、今回の会談の主要議題の一つがウクライナのEUとの統合であった。この方面におけるウクライナの目標は、年内にEU加盟交渉の開始にこぎつけることだという。それが可能なことだという手ごたえを今回の一連の会談・交渉で得られたということだ。УП
・穀物合意。ゼレンスキーがフォンデアライエン欧州委員長と代替穀物輸送路について協議。一部EU加盟国による一方的輸入規制の解除に向けて建設的対話を続けていくことで合意した。УП
・スロヴァキア。先月30日の議会選挙で親露政党が勝利を収めたスロヴァキアだが、そのことがウクライナ支援に関するスロヴァキア全体の方針にどの程度影響するかは未知数さしあたりどのような形で連立政権が発足するかを見て最初の結論を下すことができる、とウクライナのクレバ外相。УП

■イタリア
オデッサの大聖堂の修理にイタリアが参加する。大聖堂は7月、ロシアのミサイル攻撃により損傷していた。イタリア外相によれば「復旧にはイタリアでも最高の建築家たちが参加する」とのこと。УП

■ナイトクラブ
キエフの某ナイトクラブが深夜早朝の外出および営業禁止令を公然と破って営業を続けているそうだ。УП記者が同クラブ入口に20人ほどの客が列をなしているのを見とがめ付近にいた警官2名に「注意したらどうですか」と水を向けたが拒否された。のちクリメンコ内相にこの件を報告、なぜ警察は何か月もの間等閑視を続け近隣住民の通報も無下にするのか、と問うた。したところ内相、無視などしていないし警官は現場に駆けつけてはいるが、クラブのオーナーに規則の遵守を強制することはできないのだという。「外見上は営業しているのかどうか分からない。窓は暗いし音楽も聞こえてこないし、入場は予約制で裏口から通している。無理やり中に入るわけにはいかない。それには裁判所の令状が要る」УП

■黒海
カホフカダムの破壊とドニエプル下流域洪水を経て今、黒海の水質および生態系はどうなっているか?
・もたらされた環境破壊の全容は今もって不明。確かなことは、露の爆薬に由来する毒性物質が水に溶け込んでいること、露軍の潜水艦が発する超音波によってイルカの方向感覚が失われ岸に打ち上げられ死亡していること、ミサイル発射に伴う使用済み燃料が回表面に石油の被膜を作り、稀少な海鳥ほか生物の生存を脅かしていること。また海中に膨大な機雷が存在し、あらゆる生物にとっての脅威となっていること。
・毒性物質はドニエプル=ブーフ潟湖(Днепро-Бугский лиман、ニコラエフを通り南下して黒海に注ぐ南ブーフ川の出口、下図赤線の水域)に蓄積しており、東風ふけばこれがオデッサ湾に流れオデッサあたりの水質も悪化する。

・オデッサ湾の汚染やゴミは一部が潮流にさらわれて黒海沖へ拡散していったが一部は海底に沈殿し、または貝類や魚類に吸着した。海底に沈殿した汚染物質は秋冬の時化で巻き上がり、再びオデッサ湾にやってくるであろう。それがどのくらいの規模で、またどのくらい長期にわたり起きるかは予測が困難。早期に黒海全体に拡散して稀釈されればよいが。ただし流出した毒性物質の中には半減期が数十年という化学物質もあり、環境の完全な浄化には数十年かかる。
・黒海はもともとゴミの多い海であった。2016-2019の国際調査では黒海は地中海の倍ほどもゴミが多かった。戦争が始まり、カホフカダムの破壊、船舶の沈没、ミサイルの爆発、航空機の墜落などで、ゴミがどれだけ増大したかは、戦争が終わって現地調査が始まってみないと分からない。ОЖ

■オデッサ、夜の散歩(動画)
オデッサ住んでるあんちゃんの飾らぬ街並みうつす動画。本ブログで過去に何度か紹介したチャンネル。

10月1日の夜の散歩、オデッサの中心部。プーシキンスカヤ~リシェリエフスカヤ~デリバーソフスカヤ~ゴルサド。人が多い様子(兵隊向きの極めて健康そうな男性含め)、街が平和を謳歌している様子、建物の美しさとか石畳のホコテン通りの雰囲気の良さ(別に祭の日でもない)、感じていただければ。サムネの場面はストリートミュージシャンがロシア語で歌っていて若者が一緒に歌って盛り上がってる。撮影者「(このご時世に公然とロシア語で歌を歌うとは)こんなことがどうして可能なのか、にしても歌い手これ大丈夫か、リスキーなことしてるなぁ」。

3週間前この街を少し訪れた自分の感想は「戦前より明らかに人が減った」であって、その感想には自信があったが、一発で覆された。人ぜんぜんおるやん。私の感想って一体。もう私の言うこと何も信じなくてよい。

10/1

10月はウクライナ語で黄葉月(Жовтень)

■1分間
10月1日は「防衛者の日」であった。ロシアの侵略から祖国を守るべく戦って散華した兵士たちを追悼するため、10月1日午前9時から1分間、黙祷を捧げるよう、ゼレンスキーが全ウクライナ国民に呼びかけた。「その瞬間にどの場所にいて何をしている人も、そのしていることをやめ、堕ちた英雄たちを偲び、防衛者たちに感謝を捧げよう。そうして思い出そう、戦争の最初の1分間を。全てを変えてしまった1分間を。人生を以前と以後とに分けてしまった、2月24日の1分間を。2月24日は時計が0時を打ったそのときに始まったのではない。敵が侵攻をはじめたときだ。我々にとって2月24日の最初の1分間とは、敵の最初のミサイル攻撃、ウクライナに対する最初の攻撃のことなのだ」УП

■穀物船続々
ウクライナの黒海諸港からまた船が出た。今度はオデッサの両隣のチェルノモルスクおよびユージヌィ港から、農作物と鉄鉱石を載せた船が3隻(リベリアおよびパラオ船籍)。これとは別に、積み荷のために新たに5隻がこれら港に入る。ウクライナ産穀物12万トンをアフリカ・欧州諸国に運び出す船だという。УП
※正常に黒海ルートで穀物が輸出できさえすれば今のポーランドとの貿易摩擦も解消する

■スロヴァキアが親ロ反ウの枢軸に加わる
スロヴァキアの議会選挙で親ロ反ウの政党が勝利し第一党(与党)となった。Smer-SD党、党首はロベルト・フィツォ、ウクライナ支援を停止すると公言する。この人↓

同人はこれまでにもウクライナへの軍事的および政治的支援を停止する意向を表明している。いわく、ウクライナのEU加盟は幻想であり、ウクライナではナチズムが許容されているそうだ。УП

各政党の得票→УП。Smer-SD党の得票は23%に占めず、他党との連立政権となる。

同国のチャプワ大統領は投票率の高さを指摘しつつ「総選挙は自由かつ民主的なもので、社会の実像を反映したもの。将来に対して最も大きな責任を負うのが選挙に勝利した政党であることは当然だ。明日にもその政党に組閣を命じる」УП

ハンガリーのオルバン首相はお仲間の誕生を喜んでいる。「パトリオット(愛国者)と一緒に働けるのは良いことだ。楽しみにしている!」УП

EU内に親ロ反ウの枢軸が結ばれたようで憂鬱だが、とはいえ①連立の過程では親欧派の前首相の政治的影響力がものをいうであろう②実際の施政が選挙前の言辞をどこまで反映したものとなるかは未知数との(希望的)指摘も。

■ハリコフに「地下学校」
ハリコフにウクライナ初となる地下学校が建設される。ミサイル攻撃下でも子供が勉強できるようにと。なおハリコフでは今年9月から地下鉄を利用した地下学級というものが行われていて、教室は60ほどあるとういこと。УП
※地下鉄のある街はウクライナに2つしかない(首都キエフ、第二の都市ハリコフ。第三の都市オデッサには地下鉄がない)。にしても子供たちにそのような環境で学ばせるとは。自らは緑の木々とそゆふく風とぽかぽかお天道さまをひとりじめして地上で戦争に夢中、その一方で子供たちを暗い地下に閉じ込めてけんかはいけませんなどと教える。大人たちよ恥を知れ。地球は終わってる。人類終わってる。

9/30

EU外相ジョセップ・ボレルがオデッサを電撃訪問。泣かせること言ってくれた。「オデッサは歴史ある美しい街だ。その個性的な文化と精神性によってニュースの見出しに踊るべき街だ。だが現実には、プーチンの戦争の標的としてしか、ニュースに取り上げられることがない」УП

9/29

■露も停電させてやる
ウクライナ保安庁内の情報(※公式発表に非ず)によれば、ウクライナ軍が露クルスク州の変電所にドローン攻撃をしかけて戦果を上げた。露の重要軍事施設に電力を供給していた施設(だから攻撃は正当である)とのこと。一方で、「占領者どもは理解しはじめている。『ブラックアウト(大停電)』は単なる外国語でなく、自分たちが直面している現実であると。もし露が今後もウクライナのインフラの破壊を継続するなら、返報としてさらなる爆発を甘受することになる」とも。УПУП
※個人の立場:ウクライナが明白な意図と連続性をもってロシア国内の電力施設を叩いてロシア人の生活を闇と寒さに閉じ込めようとするなら(要するにロシアがウクライナに対して昨冬行い恐らくは今冬も行うだろうことをウクライナもまたロシアに対して行うとするなら)、これを支持しない

■冬の備え(芳しからず?)
「砲撃下で迎える二度目の冬:エネルギー部門の冬への備えはいかほどか」と題する論考が УП に。思ってたより状況は悪いのかもしれない。①シュムィガリ首相ら高官の声明に反して、昨年ずたぼろにやられた電力システムは現在も完全復旧に至っていない②そのため、仮にロシアの攻撃がなかったとした場合さえ、寒波が到来すれば計画停電は免れない可能性がある③しかしてロシアは攻撃してくるだろう。最大の脅威はシャヘド(自爆ドローン)である。シャヘドの「群来」に対しこちらは「殺虫剤」を開発中。直近の数週間でロシアの新戦術を見極め、対応策をいち早く打ち立てる必要がある。

■戦争の終わり方
何があればロシアは侵略の停止を考えるか。ラトビア大統領によれば、3つのファクターが考えられる。①ウクライナへの完全な支援②西側における兵器生産の増大③ウクライナの戦場における成功。УП
要するに西側が細かいことを気にせず本気で十分な質・量の軍事支援をウクライナに施すか、それとも露の軍事生産量を明らかに圧倒する量の弾薬・装備・ミサイル・無人機を製造してみせるかして、ロシアにこれはもうムリだと思い知らせれば、戦争は終わる。だが西側はそれが面倒くさいから、ウクライナが今の劣悪な状況でワンチャン赫々たる戦果をあげてくれないかなーと期待している。それでウクライナの反転攻勢が「遅い」などと実際どの口が言えるものか。

9/28

■夜襲
敵のシャヘド(自爆ドローン)が尽きない。連夜、数十機を飛ばしてくる。27→28日の夜、ウクライナ南部にシャヘド群来。44機中、34機撃墜。また偵察用無人機6機撃墜。УПУП

■冬に備える
ゼレンスキーがNATOのストルテンベルク事務局長とキエフで会談、冬季に向けた防空能力強化について話し合った。ゼはパートナー諸国からの防空システムの供給増大を訴え、スはこれを請け合った。「ともにこの冬を乗り越えよう、インフラと人たちの生活を守ろう」УП

■反転攻勢の進度
ゼレンスキーは先の訪米でバイデン以下米高官と一連の会談を持ったが、その中で反転攻勢の進度について議論が行われたかと問われ、クレバ外相:米軍高官は反転攻勢の効果を評価するに際しSNSや新聞でなく、戦場の現実に依拠する。彼らはいう、ウクライナ軍の南部また東部における達成は「真の意味で軍事的な奇跡である。地雷原やロシアの航空優勢といった諸条件を考慮すれば」と。要するに、「反転攻勢の速さについて批判の声は聞かれなかった。むしろ、どの問題をどう解決すればより効果的に前進することができるかについて、極めて具体的な議論が行われた」УП

■世論調査①労働人口動態
戦争を機に多くのウクライナ人が失職または転職し、戦前と同じ職場で働いている人は全体の半数に満たない。調査機関「レイティング」の9月初旬の調査。УП
・戦前と同じ職場が働いている……44%
・戦前と同じ職場だが、部分的な労働、またはリモート勤務になった……14%
・新しい仕事に就いた……15%
・失職したまま……25%

■世論調査②青少年のインサイト
ウクライナ国内のウクライナ青少年とウ国外、特にポーランドに避難したウクライナ青少年の、ヴィジョンの異同を調べた。調査機関「レイティング」、米共和党国際研究所ほか。УП

・上図、黄丸が「ウクライナの将来は明るいか?」これを年齢層別に聞いている。まずウクライナ国内の若者につき、10-12歳(以下、仮に「前期少年層」)の97%、13-15歳(「後期少年層」)の96%、16-35歳(「青年層」)の89%が「明るい」。国外(ポーランド)居住者につき、前期少年層の91%、後期少年層の87%、青年層の81%が「明るい」←年弱なほど楽観的。また、国内の方が楽観的。裏を返せば、年長でかつ国外にいる人ほど盲目的楽観を免れている

青丸は、移住について聞いた部分。まずウクライナ国内につき、「別の街への移住を望まない」人の割合は、前期少年層で75%、後期少年層で64%、青年層で65%。なぜ望まないのかについては、「今いる場所に満足している」44%、「家族や友達がいるから」40%、「生活に必要な資金が十分あるから」20%、「愛国心から」15%。←裏を返せば3割が移住を望んでいる。だが若者に一般的な異境への憧れかもしれないから戦争との関係については何とも言えない
一方の国外居住者については、「ポーランドに移住してからウクライナに一度も帰っていない」人の割合は、年少→年長の順に56%、76%、61%。帰国の条件については、「戦争が終わったら帰国する」47%、「近いうちに帰国する」19%、「しばらくしたら」11%、「帰国は考えていない」15%。←一度以上帰っている人が相当数いる。今のウクライナが「情勢をみて、また場所によっては、一時帰国するタイミングを見いだせないほどではない」が、全体として「完全帰国にまでは踏み切れない」状態と見られていることがよくわかる

赤丸「ウクライナの勝利を信じているか?」ウ国内の青年層の98%、国外の青年層の97%が「信じている」←国内も国外も変わらない

9/27

■冬と電力
「ウクルエネルゴ」のクドリツキー社長が改めて冬季の展望を示した。①ロシアからの一連の攻撃に備え同社は政府および軍と常時連携をとる②国内の変電所は能動的防御(対空火器)と受動的防御(防護壁)の2段構え③それでも電力の輸入なくしては冬を乗り越えることは困難であろう。УП

上記②についてシュムィガリ首相:ウクライナの対空防衛はより複合的になり、また経験値も蓄積している。去年はPatriotもNASAMSもIRIS-Tも何もなかった。また露のミサイルそのものが昨年よりも減っている。また③について、EUからの最大電力輸入量が、昨年500メガワットに対し、今年は1200メガワットに倍増している。УП

またウメロフ国防相:ロシアは冬季、ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃に注力するであろうが、「我々はこれに返報を行っていく」УП

なお、気象台によれば、ウクライナの10月は例年に比べて暖かくなる。全国の月平均気温は12-15°С。例年は8°Сという。11月もおおむね昨年より暖かくなる見通し。УП

■オデッサと言語
高等教育機関における言語法制違反、具体的には教壇におけるロシア語の使用の件数で、オデッサ州は全国トップであった。国語擁護全権南部代表ヴィトコ=プリスャジニュク女史「パラドキシカルなことに、私が事情聴取した教員は皆ウクライナ語が達者であった。授業を行うのに十分なレベルに達していた」「よくある抗弁は、学生からロシア語での説明を求められた(だからロシア語を使用した)、というもの。一部学生がロシア語での説明を求め、一部学生がそのことで苦情を寄せる、というおかしな状況になっている」УП

9/26

ルーマニア国境への攻撃

26日未明もオデッサ州西部イズマイル地区にドローン攻撃があり、ルーマニアとの国境通過ポイント(オルロフカ)の建物が損傷、倉庫、トラック30台、大型トラック6台に被害、2人が負傷した。この夜ウクライナを襲ったドローンの総数は38、撃墜はうち26機にとどまる。УПУП

先から同地区・ドナウ川の港湾施設に対するドローン攻撃が行われているが、そもそもドナウ川(下の地図、Danube)はその河口部でウクライナとルーマニアの国境をなしており、ウクライナのドナウ川港への攻撃は、即ちルーマニア(もしくはモルドヴァ)との国境きわっきわへの攻撃である。今回は(標的を誤ったのか何なのか)まさに国境通過ポイントへの攻撃となった。※ちなみに渡船で川を渡って国境を越える

オルロフカ国境通過ポイント被害詳細:深夜2時。トラック30台が損傷、うち6台が全焼。倉庫に軽微な損傷。主たる打撃は税関エリア。集積していた(特にウクライナに入国するための)税関待ちの国際輸送車両が被害にあった。管理棟は直撃を免れたものの爆発の衝撃波で窓が損傷し8割が要交換。空襲警報の発令から攻撃までは10-15分、国境警備の機動的対処により公共輸送機関は避難させられた。具体的には、ウクライナに入国するバスと、出国するバス、各1台。出国のバスには子供たちも乗っていた。こちらの手続きを速やかに済ませてルーマニアのフェリーに乗客を乗せ、これが岸を離れたタイミングで攻撃が始まった。入国のバスのほうも10分で手続きを済ませて避難させ、現場を立ち去ったタイミングで攻撃が始まり、バスの窓にひびが入った。運転手が負傷。УП

インフラ破壊(の応酬)

■露→ウ
・同じ26日未明のドローン攻撃で、ウクライナ中部チェルカッスィ州のインフラが損傷。УП
・25日晩、ニコラエフにミサイル攻撃、インフラが損傷。УП
■ウ→露(?)
露クルスク州の変電所で爆発、7集落で停電。ウクライナ保安庁内の情報によれば、ウクライナのドローン攻撃によるもの。「ウクライナ保安庁の特殊作戦は新たな段階に入った。ロシア人は理解すべきだ――もしウクライナのエネルギー施設への攻撃を続けるなら、厳酷な返報を受けることになる、と。そのためのリソースが我々にはある」УП

黒海

露の穀物合意離脱以後、ウクライナ海軍が独自に設定した臨時人道回廊を利用して、既にオデッサ諸港(ドナウ川でなく、黒海の)から7隻の船が出航した。「2隻入って7隻出た。うち5は大規模侵攻始まる前から港に入っていたもの」「問題の海域に露軍の船が入ってくることはもうない。あとは露の航空機そしてミサイルの脅威だけ」(ウクライナ海軍報道官、УП
※私見:穀物合意にロシアを復帰させなくちゃぁ~そのためには露の意向をくんで対露制裁も少しは解除してやらなくちゃだめかな?世界食糧危機を人質に取られてるからなぁ……とトルコや国連がおろおろしている間にウクライナ軍はクリミア西岸のレーダー破壊と船舶破壊、海上施設強襲・奪取によって自力で制海権を回復した。この延長でいくほかないのは明らかだと思うが。あとは制空の問題だけだというなら、①F-16の供与加速②NATO機による加盟国(ルーマニア・ブルガリア・トルコ)領空の厳重監視。国際的努力はそこ一点に向けられるべきだ、テロリストと交渉しようとなぞせず。としか思えませんが。

9/25

オデッサ港客船ターミナル大破

傷は治る、不快事は忘れる、凝りは寛解する。そんな人間の自然に反して憎悪を持続する、これを許さぬと誓ったものへの不許(ゆるさず)を、荼毘へと持ち越す。私から私へと繋いでいくルサフォビアの魔火のトーチ。

25日未明のミサイル攻撃によりオデッサ港の客船ターミナル(Морвокзал)が大破した。ランドマークだったガラス張りの元ホテル(閉業)も無残な姿に。УПОЖ

    前→
←後

①巡航ミサイル「カリブル」②超音速対艦ミサイル「オニクス」③自爆ドローン「シャヘド」、計数十の飛翔体による「大規模かつ複合的な」攻撃(南方作戦司令部グメニュク報道官)。迎撃でカリブル11発とシャヘド19機を撃ち落とすも撃ち洩らしたもの&撃墜片の飛散・落下により一連の被害。オデッサ州では2人が死亡。УПУП

下図で、赤丸が観光港、青丸が貿易港。今回被害にあったのは前者。オデッサ湾周遊クルーズ船が出ていたほか、往時(コロナ前)は世界一周するような大型クルーズ船も寄港した。日本の「飛鳥」も。

観光港は有名なポチョムキン階段の真下にある。ミサイルが直撃したのか撃墜片が落下したのか知らないが、美麗な階段の中腹に風穴があくこともあり得た。

何丘22年撮

廃ホテルはランドマークでありかつ、違法性のある(建築基準を満たさない)高層建築が廃墟化したまま十年放置されているという現状がオデッサのある種のダメさを象徴してもいたのだが、これでようやく撤去が必至となった。ありがとうだぜ糞ロシア。戦後このエリアは再開発される。よりよきオデッサになる。

事ここへ至ってホテルの所有者という人がのこのこ出てきてFBにコメント。「この地に美しいプロムナードを作りたいと前から思っていた。コンサートホール・観光船発着所・スケートリンク・サイクリングロード・飲食店・商店が立ち並び、市民が子連れで休日を過ごせるような気持ちのよい海岸通り。イスタンブールにあるようなそれ。バルセロナやコペンハーゲンにも劣らない」。あわせて所有者氏、同ホテルが長らく「無作為と無趣味の記念碑」となっていたこと、オデッサ市民から愛されず、再開発を必要としていたことを認めた。ОЖ

9/27追記:この攻撃でUNESCOの庇護下にある歴史建造物9件が損傷した。УП

沿ドニエストル

上記オデッサ州への攻撃でミサイルに関連したものか、沿ドニエストルで(地対空?)ミサイルの破片が見つかった。弾頭部がキツカヌィ村の畑地か空き地かに落ちて不発弾化したもので、物的・人的被害なし。同「国」の内務省(自称)が写真も公開している。УП

モルドヴァの一部でありながらモルドヴァの権力が及ばぬ沿ドニエストル地域でのこと、モルドヴァ当局が直接調査することはできないが、現地には調査団が派遣される予定であるという。「何であれ、戦争の結果として生じた事態であることは間違いがない。そして、ウクライナにおける戦争を始めたのはロシアである」とモルドヴァのサンドゥ大統領。УП

ウクライナ反攻阻止の期限は「10月まで」

ISWが露政権内部の情報として伝えたところでは、プーチンはショイグに10月の初めまで、つまりは9月いっぱいで、①戦場の状況を好転させ②ウクライナの反転攻勢を阻止し③露軍にイニシアチヴを取り返させるよう命じた。
ウクライナの反転攻勢が始まったことをプーチンが初めて認めたのが6月9日のことで、そのときプーチンは⑴露の防衛線は鉄壁でありウクライナは戦果を挙げられないだろう⑵ウクライナ軍は人員また西側装備を大量に失うであろうと見得を切っていた。УП
……さて、どうなるか。

戦中切手「世界はウクライナとともに」

また新しい戦中切手。「勝利の兵器。世界はウクライナとともに」。チャリティ切手シート、売り上げの1割がドローン購入に充てられる。

戦車のチャレンジャーとかレオパルドとか、装甲車ブラッドレーとか、防空ミサイル「パトリオット」とか。続編としてATACMSとかストームシャドーとかミサイル系を描いたヴァージョンも出るという。УП

左肩に見える国旗のアーチは定めし武器供給諸国。この中に日本がないこと、仕方ないが、寂しさを感じる。他のところで大いにお金を出しているのは知っているが、一線級に感謝される存在ではない。今一番必要としているものを与えられないのだもの、仕方ない。

9/24

■穀物船、無事トルコに到達
チェルノモルスク港から出航した穀物船(22日の項)は無事トルコに到達した。最終目的地はエジプト。ここからはロシア軍のいない平和の海、当たり前の海。УП

■ペテルブルクで停電、その前には爆発
露ペテルブルク南郊(プルコヴォ空港~シュシャルィ地区)で24日晩、停電があった。停電の1時間前には大きな爆発音と明るい閃光。同地区では一時、水道の供給も止まった。УП
※杞憂かもしれないが仮に考えておく:ウクライナは露による冬季の電力インフラ破壊に対し①積極的防御(対空兵器による飛来物の撃滅)②消極的防御(特殊構造物による防護)の2段構えで臨むという話だったが(首相、22日)、③露本土への対称的攻撃というものをウクライナは行う……行いつつあるのではないか。それを肯定できるか。市民の生活の破壊。なるほど先にそれを始めたのは露である。だが露と同じ道徳レベルに落ちるのか。しかも結局、やろうと思っても、露と同じ規模で(すなわち陋劣さで)それを行う能力がウにはない。「思い知らせてやりたい」気持ちは分かる。留飲は下がるかもしれない。だがそれが戦争の終結を現実に1㎜でも近づけるか?露市民のあいだに悪魔のナチスウクライナ=米帝連合への憎悪を掻き立てるだけではないか?

9/23

■オデッサ夜襲
オデッサ州のレクリエーションゾーン(?)にミサイル「オニクス」2発飛来、空閑地への落下であって人・物にさしたる被害なしという(УПУП)。詳細は全く分からないがドローンにとどまらずミサイルも飛んでくるようになった展開は怖い。

■クリミア攻撃
情報総局のブダーノフ長官によれば、22日のセヴァストーポリ黒海艦隊司令部攻撃で少なくとも9人が死亡、16人が負傷した。この中には複数のロシア軍将校が含まれる。この攻撃に西側供与の兵器が使用されたか否かには言及せず。なお露プロパガンダメディアは攻撃後数時間は司令部がミサイル攻撃を受けた旨を報道し、現地映像まで流したが、夕刻には本件への言及が一切なくなった。УП
※要は露としてしゃれにならん被害を受けたということだ。

■東も南もとる
NYTによれば、ワシントン訪問時のゼレンスキーの「年内にバフムートを解放する」との言(22日参照)は、領土解放作戦をめぐるウクライナと米国の見解の相違を示している。米国は①(バフムートに拘泥せず)南部突破に集中するべきだ、また②泥濘の季節までにメリトポリに進出してクリミアと露本土をつなぐ陸上回廊を切断するのはもう恐らくは無理なのでいったん攻勢を手控えて装備を整え兵士を休養させるべきだ、との立場。そこをゼレンスキーはどうやら①バフムートは飽くまでとる②冬に入っても攻め続ける構えのようだ、と。УП

■ゼレンスキー、ポーランド国民に感謝
ゼレンスキーがポーランドの都市ルブリンを訪れて民衆に謝意を述べた。「ウクライナにこのような力強い隣人がいることを誇らしく思う。皆様がたに感謝したい。すべてのポーランド人に。皆様は(戦争)最初の日から家族を開き、自宅を開放し、自分を開いて、手助けしてくれた」「我々の共通の道におけるあらゆる障害は、両国民が相互にもつ強固な結びつきに比べれば、何ほどのものでもない」УП
経緯1:当記事で全然取り上げておらず今さらで恐縮だが、てか皆さんご存知かと思うが、①露の黒海封鎖でウクライナ産穀物の海上輸送が困難に→②陸路による代替輸送が始まりポーランド他東欧諸国を通過するように→③これら諸国で農産品の価格が下落、地元農家が反発→④ポーランド他東欧諸国、ウクライナ農産品の禁輸措置を発動→⑤ゼレンスキー、先日の国連総会でポーランドを批判→⑥ポーランド首相、これに反発して「今後ウクライナに武器の輸出行わない」。このような経過で盟友だったウクライナ・ポーランドの関係が急激に悪化していた。(鶴岡先生によればポーランドの激越な反応は間もなく同国で総選挙が行われることと関係がある)
経緯2:ゼレンスキーは米NYの国連総会のあとワシントンを経てカナダに渡り、そのあとアイルランドに寄って、で最後ポーランドに寄った。ウクライナから飛行機は出ないので高官の(ほぼ)あらゆる外遊はポーランドを通る。

9/22

■露ぬき穀物輸送再開へまた一歩
オデッサ州チェルノモルスク港よりウクライナ産小麦1万7600トンを載せた輸送船が出発した。ウクライナ軍が設定した臨時回廊を通ってエジプトへ向かう。穀物船のウクライナ諸港からの出航は19日のそれに次いで2件目。УП
※ウクライナ軍が先月来行ってきたクリミア西岸への攻撃や「ボイコ鉄塔」掌握による露の黒海ドミナントの削ぎ落としのたまもの。このまま露抜きでウクライナ産穀物の輸送再開・世界食糧危機の解決が成るのだとしたら、またひとつ、戦争の上で生起する問題の解決に政治(外交)はクソの役にも立たたない、結局は戦って血で購い取るしかない、との例証が得られた形。

■ウ軍のクリミア攻撃が止まらない
22日白昼、セヴァストーポリの露黒海艦隊司令部にミサイル攻撃、少なくとも一名死亡(УПУП)。また同日、半島のインターネットプロバイダー(複数)に対し「前例のないサイバー攻撃」が加わり、ネット接続に支障が出ているという(УП)。これらはいずれも露占領当局および露国防省の発表、ウクライナ側はコメントせず。
※レーダー等破壊されて半島西岸は思った以上に丸裸なのかもしれない。だがいいようにやられ過ぎている、このままやられっぱなしのロシアだろうかという気も。明日にも発狂して恐るべき垂直的エスカレーション(核…)をしかけてくるかもしれない。「攻め続けなければ。プーチンに息つく暇を与えてはいけない」とゼレンスキー。たしかにあの老人はプリゴジンの乱のとき奇妙なアポケーに陥って賊軍のモスクワ接近を十数時間ただ拱手傍観した。案外守りに入ると弱いメンタルなのかもしらん、なら叩けるうち叩けるだけ叩け。

■困難な冬となるのは確実(しかし……)
21日未明の大規模ミサイル攻撃による電力施設への被害は22日朝時点で克服された、と「ウクルエネルゴ」社。消費者への影響は僅少だった、とも。УП
シュムィガリ首相によれば「暖房シーズン(≒冬季)におけるエネルギーテロルは既に始まった」。しかもその始まりは21日でなく、変電所に対する最初の攻撃が行われた2週間前に遡るという。市民生活に今のところさしたる影響は出ていない。だがこの種の攻撃は今後も続くであろう。迎えるこちらは①アクティヴな防護(対空防衛)と②パッシヴな防護(特殊な構造物)の二段構えであり、今後これをさらに強化していく。「困難な冬とはなる。それは確実。だがまたひとつ確実なことは、我々は昨年より遥かに良く敵の意図を理解しているし、それに対して遥かに良く備えているということだ」УП

■バフムートと、それからあと2つの街を解放する
ゼレンスキーが米ワシントンにおける記者らとのディスカッションで意味深な発言。ウクライナはドネツク州バフムートを露の占領から解放し、「さらにもう2つの街を」解放するだろう、とのこと。「どの街かは言えない。それについて我々には計画がある。非常に、非常に複合的な計画だ」УП
※街(міста)だそうだ。村ではなく。一つは(希望も込めて)多分トクマク。あと一つどこだろう?

9/21

大規模ミサイル攻撃(電力網破壊の再開?)

21日未明、全土に大規模攻撃。露本土の戦略爆撃機10機から巡航ミサイル43発、うち36を撃墜、つまり7発被弾。УП

この攻撃により北西部ロヴノ(リヴネ)州中心部の電力施設が損傷し、隣のジトーミル州を含む一部で停電被害があった。また、ドニェプロペトロフスク・キエフ・ハリコフの各州で送電網が損傷。「ウクルエネルゴ(ウクライナ電力)」社のクドリツキー社長によれば、これをもってロシアがウクライナの電力網の破壊を目的とした大規模テロ行為を半年ぶりに再開したとするのは早計であるが、「情報総局の報告を通じて知っている:敵は非情であり冷酷であり、あらゆる倫理・法的規範をとうに踏み越えていると。ゆえに我々はあらゆるシナリオに備えている」「(電力)消費者の保護、また非常事態後の急速復旧のために行いうるあらゆることをしてきたし、しているし、これからもしていく」УПУП

なおウクライナ空軍によれば、ロシアには現在600発ほどの高精度長距離ミサイル(キンジャル、カリブル、Kh-101/Kh-555、イスカンデル)があり、寒の到来とともにウクライナの燃料・エネルギー施設への攻撃を再開すると予測される。米国ほかから対空装備の追加支援を取り付けて防空能力の強化に努めねばならない。Patriot、Iris-T、NASAMSといった長距離システムもさることながら、敵がミサイルと併用してくるはずのシャヘド(自爆ドローン)を自動撃墜してくれる小型防空システムも必要とのこと(空軍報道官、УП

一方、同じ21日、ロシアのトゥーラ市(モスクワ南郊)で大きな爆発があり、続いて市の一部で停電が起きたということだ。УП
※ウクライナのドローン攻撃? 今季はやられてばかりはいない、鏡像的に敵方にも被害を出していく、ということだろうか。

ロシアはろしあと書いても可

国家「国語のスタンダードに関する」委員会で、「非公式文書においてロシアの国号を小文字で表記することは、標準からの逸脱に当たらない」という方針が採択された。
英語と同様、ロシア語/ウクライナ語でも、固有名詞は頭文字を大文字で表記するのが一般的だが、22年以降ウクライナのたとえばマスメディアでは、ロシアとかプーチンという語をあえて語頭小文字で表記して侮蔑の念を込めるということがまま行われてきた。これにオフィシャルのお墨付きが下った形。以後、ロシアを”росія”、ロシア連邦を”російська федерація”、モスクワを”москва”と書いても「規範からの逸脱には当たらない」。УП

ウクライナ人の65%が親族友人に軍人を持つ

社会調査グループ「レイティング」が9月初旬に行った調査によれば、ウクライナ国民の65%が22年2月24日以降戦場で戦った/今も戦っている人を親族・友人に持っている。
22年夏の時点では54%であった。1年で11ポイント増。УП

9/20

ゼレンスキー国連安保理演説

ゼレンスキーが国連安保理で演説し国連(特に安保理)改革の必要性を訴えた。いわく、侵略国ロシアが安全保障理事会常任理事の席を占めその特権である拒否権の発動によってあらゆる議決を妨害していることが現在の国連機能不全の原因である。「侵略者が拒否権を握っていること。これこそが国連を袋小路に追いやった元凶だ」
改革の第一歩として国連総会の権限強化による安保理権力の相対化が提案された。「総会で3分の2の賛成票が集まれば――その3分の2はアジア、アフリカ、欧州、南北アメリカ、太平洋諸国の民衆の意志を反映しているものとする――(安保理における)拒否を覆す権限を、国連総会に付与する」
第二段階は、安保理常任理事会の拡充。現在安保理は米英仏中露とほぼ欧米で独占されているが、アフリカ、アジア、中南米、オセアニア諸国も加わるべきであると。さらに欧州からはドイツが常任理事化するべきであると。
第三段階は、侵略を予防する「予防的制裁」メカニズムの導入。国連総会のメンバーが侵略の脅威を訴え、安保理が妥当と認めた場合には、自動的に制裁が発動する、というもの。УПMeduza

個人の感想:極めてまっとうな主張と思う。一と二はいわば国連への民主主義の導入である。建前に過ぎない全主権国家の平等・対等という理念を実現へ一歩近づける。少なくとも安保理常任理事5か国が「侵略特権」を有している現状はおかしい。三は、証言する、ゼレンスキーは露の22年2月侵攻が始まる前からこれを叫んでいた。侵攻したら制裁するぞと欧米はいう、だがどうして今それをしてはいけないわけがあるだろうか、予防的制裁ということもあるぜよ、と。そのころ露はウ国境に10万の兵力を展開して脅迫していた。私は、ゼのいう予防的制裁というのは、脅迫(侵略予備動作)それ自体に対する懲罰的制裁というタテツケであってもいいと思う。むろん、ここで目指される制裁は、今げんに西側が露に対して行っているような飛蚊のごとき制裁であってはならない。この10倍猛烈な、その国の経済や国民生活がたちまち立ち行かなくなるレベルの破滅的なそれでなければ。いずれにしろ改革は急務中の急務である。第一には露の侵略を止めるために、第二には中国の海峡アヴァンチュールを抑止するために。

なおゼレンスキーの登壇前にロシアの国連常駐代表が「安保理非常任理事国でないウクライナがグテーレシュ国連総長に次いで二番目に登壇するのはおかしい」と難癖をつけて演説を妨害しようとした。これに安保理議長を務めるアルバニアのラマ首相、順番はつとに決定済みで事前にどこからも異議は出ていなかったと指摘、「戦争を止めてください、そしたらゼレンスキーが演説することもないでしょう」とチクリ刺した。УП

ウクライナ国防省情報総局によれば、ロシアは現在ウクライナの発電所等エネルギー施設の偵察を進めている。むろん寒の到来とともに破壊して周る目的である。対するウクライナ側は防備の強化を進めている。「昨冬は最も多い日で一度に120発のミサイルが使用された。今のロシアにそれほどの力はないが、依然として脅威ではある。何発撃たれようと撃墜せねばならない」情報総局報道官。УП

米ウォールストリートジャーナルの記事。

ウ海軍司令官ネイジパパによれば、ウクライナ軍は国産無人艇およびミサイルによる露艦攻撃で、露の黒海における制海権を著しく縮減することに成功した。これによりオデッサ諸港の活動と、商船の利用が再開する。

侵攻開始時点で露の黒海艦隊とウクライナ海軍の戦力比は12:1で露が圧倒的に優位であったが、①ウクライナが一連のドローン攻撃で露艦隊に深刻な損害を与えたこと②ウクライナが沿岸のミサイルとおびただしい機雷によって抑止を利かせていることにより、露艦の黒海北西部への立ち入りは困難になっている。

米海軍大学付属ロシア海洋研究所長マイケル・ピーターソン氏によれば、「ロシアはもはや黒海におけるイニシアチヴを握っていない」。「重要な変化が起きている。一連の些細な戦術的成功が積み重なって、それが今や戦略的意義を帯びだしている」

ロシアがこれほど脆弱な立場に追いやられるのは稀有なケース。なるほどロシアは海軍大国だが、軍艦が損傷した際に、どこかから代わりのものをもってくることができない。黒海と地中海(ひいては世界の海洋)をつなぐ唯一の隘路であるボスポラス海峡を擁するのはトルコであり、そのトルコは22年2月に軍事紛争の当事国の軍事船の通航を禁止している。

とはいえロシアは今も黒海で制”空”権を維持している。だがこれも、F-16戦闘機の取得で一変する。「オデッサ上空をF-16がパトロールしはじめれば黒海北西部にロシア機が一機も現れなくなることを請け合う」とウクライナ海軍司令官。(WSJ、УП

9/19

■夜襲
19日早朝、オデッサ含むウクライナ各地にカミカゼドローン「シャヘド」30機と「イスカンデル」ミサイル1発が飛来、前者のうち27機を撃墜。УП
「シャヘド」のうち18機は西部リヴォフ州に飛来し、うち15を撃墜したものの、撃ち洩らした3機がリヴォフの工場倉庫に落ち、大型トラック15台分=300トンの人道支援物資(冬服、食料、発電機など。一部はヴァチカンから送られたもの)が灰燼に帰し、1人が死亡した。УПУП

■東部
戦況については東部のことばかりニュースになっている。バフムート南郊の2つの村落、クリシチェーエフカおよびアンドレーエフカを最近ウクライナ軍が相次いで解放した(アメリカのウォッチャーまたビジネスマンに言わせれば「地図で見えるか見えないかという僅かな土地」)

「アルチェモフスク」とあるところがバフムート。なおアルチェモフスクは露占領当局による一方的な命名で、GoogleMapの日本語表記がこれを採用しているのは異常事態。その下のキリル文字はバフムートとなっている

露軍は両村落を取り返そうと攻撃をしかけてくるがウクライナ軍が首尾よくこれを撃退している由(ウクライナ側発表、УПУП

■黒海
チェルノモルスク港(オデッサのすぐ隣)からウクライナ産小麦3000トンを積載した輸送船がボスポラス海峡へ向けて出航した。同船はウクライナ海軍が設定した臨時回廊を通って先週チェルノモルスクへ入港していた。同港からは間もなくもう一隻の商船がウクライナ産穀物を積んでエジプトへ発つという。УП

7月にロシアが穀物合意から一方的に離脱して以降、ウクライナの黒海諸港からの穀物船の出航はこれが初めてになる。この報を受け、世界市場における小麦の価格がさっそく下落した。ただ下げ幅は1.3%と小さく、市場はロシアの出方を窺っている模様。ロシアは穀物合意からの離脱以後「ウクライナ諸港を利用する全ての船舶を武器輸送と疑って臨検する」と公言しており、8月には実際に露海軍が商船に砲撃を行い強制停止させ、臨検を行う事案もあった。ウクライナ海軍による臨時回廊の設定は、この露の専横に対し挑戦状を叩きつけた形。ロシアがこれにどう対応するか。УП

■障碍
開戦1年半で身体に障碍をもつウクライナ人の数は30万人増えた。従来の障碍者人工が270万人であったところ、現在は300万人。ウクライナはリハビリテーション施設の拡充を必要としているが、国防に予算が集中投下される現在、その費用は外国の支援に頼るしかない。ならびに、リハビリテーション専門家も大勢必用としている。→日本はこの方面で協力できるのではないか。УП

9/18

■ゼレンスキー語録
ゼレンスキーが米CBSテレビの番組に出演して色々語った。
・猛烈な突破
ウクライナ軍が露の防衛線のどこを突破する計画であるか、ゼレンスキーは知っている。もちろんそれを口外はしないが。「防衛線の突破は容易なわざではない。だが、それは行われる。最速で突破できるのはどこか、私には明言はできない……というのも、知ってしまっているから。我々がどこを突破しようとしているのかを。突破は猛烈なものとなる」УП
・少しでも多くを
100mでもいい、少しでも多くの領土を奪還し、前に進まねばならない。プーチンに息つく暇を与えてはならない。なるほど反転攻勢の進度は遅い。だがわが軍は前進している。なお、いま前線では砲撃合戦が行われており、露もウクライナも各4万発を1日で費消している。УП
・プーチンはまた核で脅す
プーチンによる核の恫喝は今後も行われると思う。手元に残ったほとんど唯一の武器がそれだから。人たちを殺害し、拷問にかけ、黒海を封鎖し、原発を占拠し、カホフカダムを破壊し……。もう全部やってしまった。脅迫の手段はもうそんなに残っていない。ではさて再び核使用を仄めかすタイミングだが、それは米国情勢が不安定化する米大統領選挙(11月)中、あるいは、電気代がかさみ人心が抑鬱的になる冬季であろう。その頃プーチンは再び核使用に言及しだして世界を不安にさせるだろう。УП
・プーチンは結局なにがしたいのか?
(我々を)屈服させたいのだ。民生インフラを選んで攻撃することの目的はそれだ。あの男(プーチン)は血ぬられた道を歩んできた。そのような者の言うことを真に受けてはいけない。彼はもう久しく人間ではないのだから。УП

■ブダーノフ語録
情報総局のブダーノフ長官がThe Economistのインタビューに答えた。
・まだ間に合う
ウクライナ軍は冬の到来前に露本国~ドンバス~クリミアの陸上回廊を破断することができるかもしれない。露はそれをさせまいと10月末に投入予定だった予備戦力を無理に投入しているが、たとえば露が現在東部のリマンやクピャンスクに展開させている第25諸兵科連合軍は必要人員の8割、必要装備の55%しか備えていない。反転攻勢は続いている。ウクライナにはなお時間がある。泥濘シーズンの到来までまだ1か月以上もある。УП
・ロシア本国攻撃の狙いは
ロシア本国にドローンを飛ばす狙いは3つある。第1に、露の対空防衛システムを消耗させること。第2に、軍用輸送手段および爆撃機を故障させること。第3に、軍事生産施設に損害を与えること。これらの副次的効果として、ロシアの民心に不安感を煽り、国内の経済活動を破壊することも狙っている。結果ご覧の通り、モスクワやサンクトペテルブルクの大型空港の封鎖も常態化している。УП
・露の優位性は人間の数(だけ)
(露が新たに動員を行う可能性について)人間の数量は露がウに対して持つ唯一の明白な優位性だ。人的リソースは露には無限にあると言っていい。質は低いが、量は十分だ。逆に、その他の資源は枯渇の瀬戸際である。露の経済はもって25年まで。武器は26年には枯渇する。軍事資源払底の明瞭な証左となったのが先日のプーチンの北朝鮮首脳との会談であった。УП


■ゼレンスキーNY入り
ゼレンスキーがNY入りした。国連総会に参加し一連の二国間会談を持つ。21日には米議会での演説やバイデンとの会談も予定されている。「国家の領土一体性は国連憲章をはじめあらゆる基本的国際文書の根本原則だ。ロシアの侵攻によって蹂躙されたそれを復権しなければならない。また、国連の、侵略を阻止・予防する力を強化せねばならない。これについてウクライナは国連加盟国に対し明確な提言を行う」УП

■マスク「So much death for so little」
米国の経済学者デヴィッド・サックスがX(旧Twitter)でウクライナの戦況地図を示しながら「名高い反転攻勢とやらの結果ウクライナが得た領土はあまりに僅少で地図にようやく見えるか見えないかというほどだ」と投稿、これにイーロン・マスクが「こんなちっぽけなもののためにあまりに多くの人が死んでいる(So much death for so little)」とリプした。マスクは停戦推進派で知られる。かつての言:「毎日毎日ウクライナ・ロシア双方の若者が大量に死んでいっている。わずかな土地を得るか失うかということのために。境界はそれでほとんど変わりはしないのに」УП
※ウクライナの国家意志(という得体の知れないもの)への共感が深い私としては反発も強く覚えるが、大事な視点と思う。この種の糾問に千度さらされて、千度「それでも戦う」と答えられるかどうか。

■マリャル解任
18日の閣議で国防次官6名の解任が決定された。報道官として長らく国防省の顔を務めたアンナ・マリャルもその任を降りた。УП

9/17

17日早朝ミサイル・ドローン複合攻撃、主たる標的はオデッサ州南部。ミサイル10発中6発、ドローン6機中6機撃墜。オデッサ州の穀物保管庫に被害。УПУП

9/16

■露軍の黒海におけるパワーがどんどん減少している
13日のウ軍によるセヴァストーポリ軍港攻撃で露の大型揚陸艦および潜水艦が大破した一件を受け、露は黒海上に展開していた大型揚陸艦3隻をアゾフ海に配置換えした。УП

■露の魔弾備蓄がどんどん増大している
英国防省のインテリジェンスレポート(16日付)によれば、露は昨年と同様の電力インフラ破壊キャンペーンを今冬も展開する構えと見られる。昨季のそれは10月~3月にかけて行われた。攻撃には主としてKh-101ミサイル(露本土の戦略爆撃機から発射される)が使用されたが、同種のミサイルは今年4月以降使用頻度が減少しており、一方で同種のミサイルの生産は加速していると見られる。従って、露は同種のミサイルの備蓄を相当程度充実させており、これらをウクライナの電力インフラ破壊に集中投下する懸念には現実味がある、と。УП

■トランプが大統領なったらウクライナの独立自尊は終わる
トランプとプーチンがよろしくやっている。①米次期大統領候補のドナルド・トランプが「自分が大統領に選出された暁には24時間でウクライナ戦争を終わらせる」と豪語②プーチン、先週の東方経済フォーラムで「短時日で紛争を調停するという彼の意向は喜ばしいことでしかない」と称揚③トランプ「耳に快いお世辞。自分が真っ当なことを言っていると認めてもらったのと同じことだから。プーチンを部屋に引き込み、ゼレンスキーも部屋に引っ張り込んで、合意を結ばせる」УП
むろん碌なことにはならない。21世紀の38度線が引かれるだけ。このモンスターが米大統領になったらこの1年半の国際のあらゆる努力が水泡に帰し、ウクライナの主権と矜持は踏みにじられる。

9/14

■後方への攻撃(クリミアで大爆発)
引き続き相手方の後背への攻撃が行われている。13→14の夜、まず露→ウへ、シャヘド22機、うち17撃墜(УП
一方のウ、保安庁と海軍の合同作戦で、クリミアのエフパトリヤ近郊に設置された露の地対空兵器を破壊した。まず保安庁の無人機で”目”すなわちレーダーとアンテナを潰し、そこへ海軍のミサイル「ネプトゥーン」2発を撃ち込んでミサイル発射装置を撃滅したとのこと。近隣住民によれば巨大な爆発が4度ほど続いた。УПУПУП

■来週の国連総会で穀物合意が議論される
グテーレシュ国連事務総長が来週NYの国連本部で開かれる国連総会にあわせてゼレンスキー・エルドアン・ラヴロフと会談し、黒海穀物イニシアチヴの再開について議論する意向を示した。「交渉の妥結に自身が楽観的か悲観的かは言わないが、私が①黒海イニシアチヴの再開②ウクライナ産品の輸出の再開③制裁の枠内で露の農産品および肥料の輸出を簡略化するための作業の継続のために可能なすべてを行う決意に満ちていることは請け合おう」УП

■珍金会談の評価(暫定)
米国務省ミラー報道官:会談の全容は不明。だが金が珍の神聖なる国益防衛闘争に無条件の支持を表明したことは無論、懸念の材料である。両者が軍事支援について討議したことは間違いない。だが珍がこうして金に支援を求めること自体が、侵略戦争が露にとって思わしくない推移をたどっていることを示唆している。「ロシア帝国の栄光を再建しようとしたプーチンが1年半で何万もの兵士を失い何十億ドルも空費し、あらゆる帝国主義的野心を潰えさせた挙句、金正恩にに助力を懇願している」という構図だ。УП

■秋のカルパチアへの誘い
ウクライナ西部カルパチア山脈の景勝地紹介記事がУПに。写真集として覗いてみてください。全然知らん部分のウクライナ。すごく美しい。

※ウクライナの人たちの典型的な休暇の過ごし方は、夏はオデッサで海水浴、冬はカルパチアでスキー。海は南にしかなく、山は西にしかない。

9/13

後方への攻撃①露→ウ、オデッサ州(あと穀物輸送のこと)

12→13の夜、オデッサ州西部イズマイル地区にまたしても大規模ドローン攻撃、32機を撃墜するも、港湾ほか民生インフラ・住宅に被害、7人が重軽傷を負った。УПУПУПУП

解説:オデッサ州には海(黒海)の港と河(ドナウ川)の港とあって、どちらもウクライナ産穀物の輸出に使われる。露のオデッサ州西部イズマイル地区に対するここ2週間の執拗なドローン攻撃は、その後者を狙ったものである。夜間に数時間かけて間欠的にシャヘドを30機ほど。ワンパターンではあるが、防ぎきれない。(※お勉強:欧州を代表する大河であるドナウはドイツ南部に端を発しウィーンやブダペストを洗いルーマニア・ブルガリア国境をなして流れオデッサ州イズマイル地区にて黒海に注ぐ。赤ピンは同地区レニ)

一連の攻撃についてウクライナ地域領土インフラ発展相「ウクライナの輸出ポテンシャルを低減しようとする露の試みにも関わらず、諸港は稼働を続けている。ウクライナの港湾インフラへの攻撃は即ち世界の食料安全保障に対する攻撃である」「露は7月18日(穀物合意からの一方的離脱)以降、ウクライナの港湾インフラ105施設を破壊し又は損傷させた。ドナウ諸港への攻撃および海上封鎖によりアジア・アフリカ・欧州向けの穀物輸出が月あたり300万トン減少している」「(露の海上封鎖で海路が使用できないため)ウクライナ農産品の水上輸送の道はドナウ諸港が唯一のものとなっている。これを強力な対空防衛システムで守らなければ、ウクライナ農産品に依存している諸国に甚大な被害が出る」УП

英国政府によれば、露は穀物合意からの一方的離脱(7月)以降、ミサイルや自爆ドローンによって穀物28万トンを根絶やしにした。ウクライナはヒマワリ油の世界総輸出の5割・小麦の1割を生産する農業大国である。ドナウ川や鉄道といった代替手段による穀物輸出はウクライナにとって戦費の貴重な調達限となってきたが、これら経路は輸送費がかさみ、生産者にとって打撃となっている。専門家によれば、ドナウ川を通じたエジプトへの穀物輸出の費用は、昨年の侵攻前は1トン当たり69ドルだったが、現在は1トンあたり116ドルに高騰している。一方で、ドナウ川には港湾インフラが点在しており積荷のポイントが多いという優位性もあり、ドナウ川の輸送量は今後も拡大していく、との見方もある。УП

後方への攻撃②ウ→露、セヴァストーポリ

13日未明、ウ軍がクリミアのセヴァストーポリにある造船工場を攻撃し、露の大型揚陸艦「ミンスク」号を破壊、ディーゼル電気潜水艦「ロストフ・ナドヌー」号を損傷させた。攻撃には英供与の長距離ミサイル「ストームシャドー」が使用されたとみられる。УПУПУПУП

ウクライナ軍には露潜水艦を発見・攻撃する手段が皆無で、唯一の可能性はドックに上がったところを撃滅することだったが、今回まさにそのことが行われた。揚陸艦への攻撃はこれで3度目だが、潜水艦へのそれは今回が初で、歴史的快挙という。「ストームシャドー」の威力に鑑みると潜水艦は(揚陸艦の方と同様)修理不可能なレベルまで損傷している可能性が高い。УП

この攻撃の際にまたしてもスターリンクの大規模な切断があったという(УП)。なお、パルチザン組織АТЕШによれば、攻撃の成功にはセヴァストーポリ市民による情報提供が与って力あった(УП

同日、これとは別に、黒海北西海域でウ軍の攻撃により敵ボート「トゥネツ(まぐろ)」が撃滅されたということだ。哨戒用とみられる(ウ海軍発表、УП

露の軍事生産力・現状

NYTが米欧ウ当局者の証言をもとに伝えたところによれば、
・露は西側の対露制裁を克服し、大規模侵攻始まる以前よりも多くのミサイルを生産する能力を獲得している。これから数か月の間、ウクライナは強化された攻撃に対して特に脆弱となる。
・制裁の結果、露は22年の2月から少なくとも6か月の間はミサイルその他兵器の生産を急激に減速することを余儀なくされた。だが露は欠乏した部品をアルメニア・トルコなど第3国から密輸し、22年末には生産力を復活させた。
・露はこの増大したミサイル生産力をもって秋冬のウクライナのエネルギーシステムに対する新たな攻撃を行う恐れがある。
・露が兵器製造に必要としている集積回路はハイテクというよりは市販レベルのそれであり、制裁迂回ルートの追跡は困難であるという。
・露は弾薬の生産量を倍加させ年間200万発を達成しており米欧の生産力を凌いでいる。だが露は戦争で年間1000万発の弾薬を使用しており、同じ烈度の戦争を続けるにはなお十分な数字ではない。
・軍事生産の増大は露経済を圧迫しており国内の金利は急上昇している。УП

珍金会談

北朝鮮の金正恩と露のプーチンが会談した。所は露極東のヴォストーチヌィ(あづま)宇宙基地。北朝鮮の人工衛星建設を露が手伝うんですかとの問いに「だからこそ我々はあづま宇宙基地にやってきたんですよ」と珍。金はロケット(≒ミサイル)技術に多大な関心を示したということだ。УПУП

9/12

ボイコ鉄塔

ボイコ鉄塔の制圧をウ情報総局の一大戦果であるかのように語ってしまったが(昨11日の項参照)、ウクライナ海軍はその周辺海域において既に1年以上制海権を確立していたそうだ。22年6月にウ海軍が露艦ワシーリイ・ベフ(蛇島への武器・人員の輸送に使われていた)を撃滅して以降、露の当該海域への艦船の侵入は停止していた。だがその後も露の偵察機・攻撃機の侵入は続いていて、その意味で当該海域はグレーゾーンであった。加えて、露が小型の船艇で少人数をボイコ鉄塔の乗り込む可能性もあった。以上のことから、ゴムボート一艘で鉄塔に到達するというウ情報総局のミッションは、相当にリスキーなものではあったと。ウ海軍報道官発表、УП

ゼレンスキーと汚職

・有責だが有罪でない
ウクライナ国民の支配的多数(約8割)が「国内の汚職に対してゼレンスキーは直接の責任を負っている」と考えていることを示す調査結果(昨11日の項参照)について、調査主体のキエフ国際社会学研究所がコメントを出した。いわく、「責任を負っている(ответственный)」ことと、「関与している(причастен)」ことは異なると。大統領支持率は飽くまで記録的な高水準(80-85%)を保っており、調査結果は支持率の低下ないし危機を意味するものではない。国民は国家経営の実態をよく把握せず、何について誰が責任を負っているのかがよく分かっていない。それで一番目立つ人間である大統領がやり玉に挙げられているに過ぎない。つまりは、今回の調査結果は、「汚職対策について決然たる行動をとってほしい」という、大統領に対する国民の需要とか要求の表れ、というふうに解釈すべきである。УП
※調査機関がわざわざこんなコメントを出すというのは。反響がよほど大きくて、政権からも圧力がかかったか。

・身中の虫追い
ゼレンスキーが22年2月24日以降の軍医委員会(военно-врачебные комиссия)の全ての決定に対し調査を行う命令書に調印した。同委員会は診断書の発行による徴兵忌避の幇助を繰り返したと見られる。УП

珍言集

プーチンが東方経済フォーラムで一連の珍言をなした。お慰みコンテンツ。

・戦争よくない、侵略かっこわるい
1956年のハンガリー動乱と1968年のプラハの春(ともにソ連の影響圏における民主化運動、ソ連軍が侵攻し戦車もて鎮圧)についてプーチン、「あれは誤りであった」「外交政策において他の国民の利益を侵害することは正しくない」УП。その命によって隣国を数十万の軍靴で踏み荒らし十数万人の兵士・民間人を殺害し数百万人を国外に流亡させ数千万人の生活を破壊している奴の言。

・ウクライナ側の損失は実は露国防省発表の1.5倍!
珍によれば、ウクライナ軍は反転攻勢始まってから戦車543両と装甲車1万8000両を失った。だがこの前日の露侵略省(自称「国防省」)の発表によれば、露が撃滅したウクライナ軍の戦車および各種車両の合計数は1万1779両に過ぎない。一方のウクライナ側の発表では、12日時点のロシア側の損失は戦車・車両合わせて1万3346両(昨年2月からの通算)で、露の損失はウ側の損失の「数倍大きい」という(ゼレンスキー、7月)。УП
※露もウも自陣の損失については絶対に公表しない。また、敵の損失についてはウの発表も額面通りに受け取るわけにはいかない。とはいえ露の損失についてのウの発表は英情報当局や米シンクタンクの分析と大筋一致と認識。そして露当局発表値と珍発言ではいくらなんでも乖離が大きすぎる。カンペなしに具体的数字を列挙して賢そうに見せるのは珍帝の十八番だが、無謬性神話に守られて数字の錬金術(虚言・放言)に淫するうちだいぶユルんでしまったものと見える。

・マスクは有能なビジネスマン
スターリンクの故意の停止によってウクライナ軍のクリミア攻撃を妨害した疑いで頃日とみに危険人物視が強まっている米実業家イーロン・マスクについて珍、ここぞと「傑出した人物」「活力旺盛・才気煥発のビジネスマン」と持ち上げてみせた(УП)。死のにおいしかしない。盟友プリゴジンを抹殺した後、はなむけに同じ言葉を用いた。

9/11

黒海

■ボイコ鉄塔
ウクライナ国防省情報総局によれば、ウクライナ軍は黒海に浮かぶ石油ガス採掘プラットフォーム「ボイコ鉄塔」の奪還に成功した。同施設はオデッサ南沖・クリミア西沖に位置し、2015年に露に占拠され、今次の戦争では露軍のヘリポートないしレーダー基地として機能していた。それが今回、ウ情報総局の「ユニークな」奪還作戦で、複数の石油採掘施設が奪還されたほか、戦利品として①無誘導弾の備蓄および②黒海を航行する船舶の追跡に使われるレーダーが鹵獲された(УП

↑情報総局が発表した動画。ゴムボート一艘で強襲、遭遇した敵機を撃滅、制圧。こんなことができるのか。すぐに取り返されてしまうのでないといいが。改めてボイコ鉄塔のおおよその位置↓

このちょっと西に蛇島があり、蛇島はウクライナ側が有効に管理できている。何しろ慶賀すべき出来事だ。

■ロシアをのけ者にしないで<`ヘ´>
トルコのエルドアン大統領がG20サミット(@インド)場裏で、ウクライナ産穀物の黒海を通じた輸出の再開に関する交渉でロシアを「のけ者にしないよう」呼びかけた。この問題については露・ウクライナ・国連の代表者と会合が行われる予定だという。その場所・時期は未詳。УП
※私見。自らの外交的成果である穀物合意を延命させて国際紛争の調停に力ある地域大国として格好をつけたい気持ちは分かるが、状況が違う。合意から離脱するや港湾施設や穀物倉庫の爆撃を繰り返す糞テロリストどもと交渉することは何もない。

日本

■日本はハイテク部門でウクライナ復興支援に参与
日本のビジネス代表団(含む楽天)とウクライナ経済相の会談があり、日本側は戦後復興への関与に意欲を示し、再建を加速させるハイテク技術について一連の提案を行った。一例として、キエフ近郊の街ブチャに3000ヘクタールのグリーン産業ゾーンを創設し、グリーン水素を製造してブチャのエネルギー独立性を高める案が提示された。ほか、復興に役立つ技術として、①PTSDその他ストレス性疾患の診断・予防・治療のための医療技術およびプログラム②自律的に機能また保守を行う飲料水浄化システム③農産品学術支援システム(?)などが提案された。УП

世論調査

民主イニシアチヴ基金とキエフ国際社会学研究所の合同調査。汚職が国家の一大問題であるという市民の認識が露わに。①ビジネス環境にとって最大の敵は戦争による破壊(37%)でも不適切な税制(36%)でも国からの支援の乏しさ(36%)でもなく、汚職(47%)УП。②国内の汚職対策がパートナー諸国の軍事支援の条件になると考える人、55.1%。ならないと考える人、28.6%(УП)③政府や軍当局内の汚職に対しゼレンスキーは直接的な責任を負うと考える人、78%。負わないと考える人、18%。УП

9/10

キエフ夜襲

9→10日の夜、「シャヘド」33機がキエフ州を襲い、26機を撃墜、その撃墜片および撃ち洩らした7機により4人が負傷・家屋100棟あまりが損壊・学校/病院等が損傷した。УПУПУПУП

領土解放作戦の今後(時間、F-16、ATACMS)

■残された時間
米ミリー統合参謀本部議長によればウクライナの反転攻勢に残された時間はあと1月~1か月半ほどである。「軍事行動を行うのに攻撃な気候が続く日がなお30-35日残っている。敗北と断ずるのは尚早だ」УП

■F-16
ウクライナ軍指導部内には「F‐16戦闘機は今冬(早くて2月)にも実戦投入可能」との見方がある。ウォールストリートジャーナルがウクライナ軍指導部の話として伝えた。①米による訓練が今月ないし来月始まる②英語に堪能な優秀なパイロットであれば5か月で訓練を終えられる③2月には実戦投入可能、というわけ。一方の米側では「F-16の実践投入は早くて24年半ば」との慎重論が強い。ただホッジス元米駐欧陸軍司令官のように「3か月で訓練可能」との声も。障害となるのは英語の習得。整備士の人材発掘・訓練も課題という。УП

■ATACMS
米バイデン大統領は近日中にウクライナへの長距離ミサイルATACMSの供与を決める可能性がある。フィナンシャルタイムズが米政府高官の話として伝えた。УП

9/9

■G20首脳宣言
インドで開催中のG20サミットで首脳らによる共同宣言が採択された。宣言は「妥協的」なものになった。「戦争に関してG20諸国の立場には大きな隔たりがあり、西側諸国は決然たる対露非難を盛り込むことを求めたが、グローバルサウス諸国は経済問題に焦点を当てることを求めた」と議長のモディ首相(インド)。ウクライナ外務省は遺憾の意を示し、文言を「添削」してみせた。

サミットにウクライナが参加していたらこうはならなかったであろう、「ウクライナぬきにウクライナの話はしない」という原則が徹底されるべきだ、とウ外務省報道官。なお、今回のG20サミットには露中首脳が不参加であり、西側諸国は習とプーチンの不在を利用してグローバルサウス諸国首脳との関係を強化するチャンスであったが、成果文書に決然たる対露非難を盛り込むには至らなかった。УПУП

■もうひとつの妥協
そのG20サミットで、トルコのエルドアン大統領が諸国首脳に対し、穀物合意の再開のために露の要求の一部(露の農業製品の輸出に対する西側の制裁に緩和)を飲むよう求めた。Bloombergによればトルコの働きかけに欧米が左右されるとは考えにくい。トルコとしては飽くまで西側とロシアの間でバランスをとり、自らの外交的成果である穀物合意を復活させたい。УП

■林外相がウクライナを訪問
林外相が日本企業の代表団を引き連れてウクライナを訪問、シュムィガリ首相やゼレンスキー大統領と会談した。
・シュムィガリ首相「ウクライナの主権および領土一体性に対する日本の支援に感謝する。その財政および人道支援、対ロ制裁に。日本からはこれまでに21億ドルのマクロ金融支援を受けた。今後も協力を続けていく」。他、住宅の再建、グローバル食料安全保障、中小企業支援、人道的地雷除去(24機のクレーンが日本から供与されるという)、通信、インフラ、医療といった方面での協力の可能性が討議された。УП
・ゼレンスキー「本日、安全保障に関して非常に重要な成果があった。安全の保障に関する日本との二国間文書の準備を開始することで合意した。米英カナダとは既に作業を行っているが、これに日本も加わった」。ほか、ウクライナの復興と発展、電力、交通、地雷除去、社会部門、新規雇用の創出、通信(※このあたりの話を楽天の三木谷氏としたのであろう)、情報保護、インフラ保護、グリーンエネルギー、機械、農業といった話題が持ち上がったとのこと。УП

■ブダーノフ語録
情報総局のブダーノフ長官がまた私のようなやつが取り上げたくなることを言う。
長期にわたる戦争になるとは思わない。これは情報総局が有している情報(主として敵側の)の分析に基づく個人的見解だ。露には物理的に長期の戦闘を行う力がない。ちなみに半年とか一年を「長期」と呼ぶのだとしたら、むろんその語法によれば長期戦になる。УП
冬が来てもウクライナの反転攻勢は終わらない。「寒さと湿気と泥で困難にはなるが、何らかの形で戦闘行為は続く。反転攻勢は継続する」У

9/8

■魔の冬(電力インフラ破壊)
・ウ軍ナエフ将軍によれば、露の電力インフラに対する攻撃は9月末ないし10月諸島にも始まる可能性がある。
・概してウの対空装備は昨冬よりも充実しており、(探知・撃滅)効率の向上が見込まれる。パートナー諸国供与の防空システムに期するところが大きく、すでに配備されているドイツの防空システムGepardを中心に、それでカバーできない間隙を米供与の大口径機関銃たとえば米M2 Browningが埋めるという。
・ただし露はドローン生産力を高めており、これをミサイルと併用してウの対空防衛力を攪乱する可能性がある。米専門家サミュエル・ベンデットによれば、ウはドローン攻撃に対してよく防備を整えているが、敵ドローンの数量は増大傾向にあり、懸念なしとはしない。とはいえ露は無人機の千単位の生産という目標にはなお遠く、増えるといっても微量だ。
・ゼレンスキーによれば、昨8月、露はイラン製自爆ドローン「シャヘド」を2000機あまり飛ばした。
・米軍事専門家らの試算では、「シャヘド」は1機2万ドル。ウが昨冬使っていた西側供与の対空ミサイルはこの数倍値が張った。だが上述のGepardは弾1発あたり僅か1000ドル。より「経済的」だという。УП

■未明のドローン攻撃(第5次)
オデッサ州へ20機のシャヘドが飛び、うち16を撃ち落とした。被害不詳。УП

■黒海を開け、船を守れ
・シャルル・ミシェル欧州理事会議長が改めて露による海上封鎖と人工飢餓の惹起を非難した。「今この瞬間もロシアは主権国家ウクライナに対する攻撃を続けている。人々を殺害し、街々を破壊している」「ロシアの戦争はウクライナを遥か越え出て南アジアの人たちの生存まで脅かしている。2億5000万人が喫緊の食糧危機に直面している」「ロシアは穀物合意から離脱し、黒海を封鎖し、ウクライナ諸港を攻撃している。目を覆いたくなる醜聞だ」「こんなことが続いてはならない。商船が黒海への自由なアクセスを回復し、グテーレシュ国連事務総長のイニシアチヴに則り、3200万トンのウクライナ産穀物をとりわけ発展途上国の市場に届けなければならない」УП
・以上が基本として、ではどうやって海を開き船を守るか。英テレグラフによれば、ここ数週間、英王立空軍がウクライナから穀物を輸出する貨物船を保護しているらしい。黒海に実際に空軍機を飛ばしてロシアの活動を監視するとともに、ロシアによる民間船に対する不法な攻撃を抑止していると。なお英国は11月に国際食料安全保障サミットを開催する。テーマは「食糧安全保障の欠如と栄養失調の原因究明」УП

■ウメロフ、最高司令部会合メンバーに
大統領令で最高司令部会合および国家安全保障国防評議会から前国防相レズニコフが外され、新国防相ウメロフが加わった(УП)。ウメロフこんな顔の奴

■情報総局:ロシア本国のピンイント破壊でドミノを起こす
ウ国防省情報総局報道官によれば、情報総局にはロシア本国の破壊目標のリストが存在する。「軍事施設、軍需工場、補給拠点と、目標は夥しい。そのすべてに番号が振られており、それぞれの目標の重要性が測られ、優先順位がつけられている。狙いすました破壊によって露のポテンシャルを低減し、ドミノ効果を起こす――すなわち、ある工場の破壊によって、その製品に紐づいていた軍事製品が作れなくなる、というふうに」УП

9/7

■オデッサ州西部港湾ドローン攻撃(第4次)
未明またしてもオデッサ州西部イズマイル地区に自爆ドローン攻撃。この5日で4度目。港湾インフラに被害、2人が負傷。飛来シャヘドは全33機、うち25機撃墜。УПУПУП

■ルーマニア、シャヘド破片の自国領土への落下をNATOに報告
ルーマニアが露シャヘドの自国領土への落下(4日)についてNATOに報告した。ストルテンベルク事務総長「露の故意の攻撃とは見られない」УПУП

■ゼレンスキー、新国防相をお披露目
国防省にてウメロフ氏の就任式が行われ、ゼレンスキーがいま国防省が直面している課題を素描した。官僚主義から脱却、実効的なデジタル移行。また、スピード感。国防の最優先課題が戦争である現在は、変化を瞬間的に起こす必要がある。「煩瑣な手続きに兵士たちの時間とエネルギーが奪わるようなことがあってはならない。電子化できるものはすべて電子化し、廃止できるものはすべて廃止する」「兵士の処遇について新しい哲学が必要だ。人間は消費財ではない。彼らの時間と力は国家の価値だ」「社会からの信頼を強化するための実効的な改革も必要だ」「ウメロフがこれらの課題によく対処できる人材であることを信じている」УП
ゼレンスキーは晩方の国民向け定例ビデオメッセージでもウメロフ氏を紹介。「強く、組織的な(системный)人物。国防のことを熟知している」「開戦当初から武器供給に関する交渉に携わっている。非常にセンシティブな交渉だ。そして結果を出してきた。捕虜の解放交渉にも従事している」「彼なら国防省の活動をリセットしてくれる。それが今まさに必要なことだ」УП

■ドイツの少年は嘘つきだった?
1日付で紹介したドイツにおける「ウクライナ語迫害」の事例、関係者の証言でだいぶ印象と異なる実相が明らかになった。従来説(少年の主観そして虚証に依拠した):ロシア語を話す男性がウクライナ語を話す少年を橋から突き落とした言語的憎悪に基づく殺人未遂事件。新説:掘割の中で児童らがふざけて汚い言葉を言い交していたのを男性が見とがめてロシア語で話しかけたところ児童らと男性の間で口論になり、10歳少年が鉄の支柱を伝って掘から上がろうとしたところ男性が彼のTシャツをつかみ、(少年の主観では)水に突き落とすような格好になったが、掘割の水は深さ20㎝程度であり、「落ちた」という表現も当たらない。少年が当初事態を大げさに言ったのは、遊びの過程で服が汚れて足に傷を負ったことで両親に叱られるのを恐れたためだという。言語の相克が背景にあったかどうかについては深追いせず、これで一件落着ということになりそう、だそう。УП

9/6

■空襲
5→6日の夜、33の飛翔体(ミサイル8・ドローン25)がウクライナを襲い、うち25を撃墜。またしてもオデッサ西端イズマイル地区が攻撃を受け、民間人1人が死亡した。УПУП

■ルーマニア側にドローン残骸が落ちた?
4日のオデッサ州イズマイル地区へのドローン攻撃でドローンの一部がルーマニア側に落ちた落ちない問題に新たな展開、ドローンの破片と思しい物体がルーマニア側で発見された。ルーマニア大統領「この破片がロシアの無人機の一部であることが確認されたなら、この状況は絶対に受け入れがたいものであり、ルーマニアの主権および領土一体性に対する深刻な侵害である。早急かつプロフェッショナルな鑑定を求める」УПУП

■ウメロフ、国防相に就任
議会の承認を受けウメロフ氏が国防相に就任した。就任演説で下記を宣した:①軍事生産力の向上の推進②F-16戦闘機を最大限活用するためのインフラの整備③全部局における監査の実施④徴兵システム改革(電子召集令状の導入、兵役適格者の統合リストの稼働、軍医委員会の全活動の電子化)УПУПУП

■また冬がくる
夏過ぎて冬遠からずということで、冬季の電力準備をテーマに最高司令部会合が開かれた。「テロ国家(ロシア)の考えうるあらゆることから重要インフラを保護するための総合計画」が討議されたとういことだ(ゼレンスキー、УП

■凶弾
ドネツク州コンスタチノフカの中央市場が白昼ロシア軍の砲撃を受け17人が死亡、32人が負傷した。УП

■プリゴジンの死は確定ではない
ウクライナ情報総局のユソフ報道官によれば、ナンバー2のウトキンの死は100%だが、プリゴジンの死にはなお疑問の余地があり、事実の確定には今少し時間がかかる。УП

9/5

■徴兵逃れの手段としての入学
リサヴォイ教育科学相によれば、ウクライナでは25歳以上の男子学生が急増していて、21年比で5万5000人増えている。学生というステータスが兵役免除の事由になることから。この関連で、いま議会では30歳以上の学生に対する兵役免除の撤廃に関する法案が提出されており、リサヴォイ氏もこれを支持している。УП

■ルーマニア大統領「ドローン落ちてない」
例のウクライナとルーマニア間のライン割った割ってない論争で、あちらさんはついに大統領が出て「ライン割ってない」と断言した(УП)。ウクライナ側はその後目立った声明を出していないところを見ると、たぶん実際にあちらに落ちてはいないのだろう。

9/4

■オデッサ州にドローン攻撃(2日連続)
4日未明、32機のシャヘドがウクライナ各地に飛来、うち23機撃墜(УП)。オデッサ州は前日同様、州西端部(イズマイル地区)が狙われ、17機を撃墜するも、数機の着弾を許した(УП
その撃ち洩らしたものの一部が国境を越えてルーマニアに落ちた/落ちないという話で一種奇妙な論争が持ち上がっている。ウクライナ側は国境警備・外務省・外相レベルで「ルーマニア側に落ちて爆発した」と主張しており(УПУП)、ルーマニア国防省および外相はこれを明確に否定している(УПУП
※巻き込みたいウクライナと巻き込まれたくないルーマニアと。9/3の地図を見てもらえば分かるが、露が狙ってきてるのはウ/モルドヴァ/ルーマニアの国境が集中している地帯であり、リスキーな攻撃ではある。あるいは、それだけルーマニアが舐められているともいえる。とあるルーマニア青年の言葉を思い出す――NATOの圏域にもコアと周縁とある、ブリュッセルにとってルーマニアは今も緩衝地帯に過ぎない(「流亡の記」参照))

■トロ首脳会談
トルコのエルドアン大統領が露ソチでプーチンと会談したが、主たる議題である穀物合意への露の復帰について、双方は合意できなかった。「露は黒海穀物イニシアチヴへの早期復帰の準備がない」とエルドアン(УП
※私の中ではつながった。たぶん露のこの2日のオデッサ州西部港湾インフラ攻撃は、トルコとの首脳会談を前に、露の穀物合意復帰の重要性(露ぬきの穀物輸出はあり得ないといういこと)を思い出させることにあった。というのも、頃日、露の禍々しい恐喝をよそに、外国商船のウクライナ諸港の利用がぼつぼつ始まってしまっていたから。露としては、露の穀物合意復帰の価値を吊り上げておいて、その見返りに、西側から制裁緩和を引き出したい。私のたちば:西側はじめ世界は、食物危機を兵器として使う陋劣、公の海を私し一人主人としてふるまう傲慢に、改めてテロ国家としての露の本質を見、このようなテロ集団とは一切の交渉を行わず、諸国共同の庇護のもと粛々と商船の運用を続けるべきだ。

■レズニコフ国防相辞任
レズニコフが議会へ辞表を提出した。声明で、国防相として550日の戦争を戦い、占領地の50%余りを解放したこと、パートナー諸国から武器支援を取り付けたこと、NATOとの接近、「調達部門における改革」、「自動化された兵員運用システムの導入」を成果として誇った。一方、次期国防相に内定しているウメロフも現職を辞すべく議会に辞表を提出。交代の準備が整いつつある。УП

9/3

■オデッサ州にドローン攻撃
3日未明、オデッサ州西端(モルドヴァ・ルーマニア国境至近)のレニ港にイラン製自爆ドローン「シャヘド」が大挙飛来した。ウ空軍発表では25機飛来で22機撃墜、つまり3機を撃ち洩らし、港湾インフラに被害、民間人2人が負傷。УП

隣接するブルガリア・ガラツ市(レニから25km)の市民は4~5度にわたり「地獄のような爆発音」を耳にしたということだ。「『ウクライナは平穏だ』などという愚劣な陰謀論じみた言説を流布する輩を黙らせるに十分な轟音であった」とある市民はSNSで。УП

この日ゼレンスキーは仏マクロン大統領と電話会談、その中で、「穀物回廊」の安全な運用と、オデッサ州の安全の強化について、個別に議論がなされたということだ。УП

F-16は春に翔ぶ

レズニコフ国防相によれば、F-16は来春にも実戦投入される(УП)。※ウクライナ語の一般的な用法として「春」は345月

レズニコフ更迭

ゼレンスキーが定例ビデオメッセージで明言:レズニコフ国防相の解任が決定された。後任は国家財産基金のルステム・ウメロフ総裁。「アレクセイ・レズニコフは550日余りの全面戦争を過ごした。国防省は新たなアプローチを、また軍・社会との新たな協力関係を必要としている」。今週中にも議会の承認にかけられるという(УП

動画中、レズニコフへの評価あるいは労いの言葉なし、一連の汚職スキャンダルとの関連性も明かされず。

9/2

オデッサの日

9月2日はオデッサの日。1792年のこの日にロシア皇帝エカテリーナ2世がオデッサ港開設の詔勅を出したことをもって市の創建とす。みたいな人口に膾炙した語りはこの間にキャンセルされた(その端的な表現としてオデッサ中心部からエカテリーナ女帝像は撤去された)はずだったが、他に日もないので。

ゼレンスキーも定例ビデオメッセージで言及。「我々はオデッサを破滅から守った。我々はオデッサに安全を取り戻す。オデッサはいつだって、心軽く幸せな気分でいられる街だった。これからもそんなオデッサであり続ける」「オデッサは南部の支えだ。黒海の支柱だ。過去も今後も、ウクライナという国そのものと同様、グローバルな意義をもち続ける街だ。世界各地の人々の生活がオデッサにかかっている。つまり、オデッサ港を通じた、ウクライナ産品の輸出に。オデッサは文化都市であり、誰にとっても面白い街、一人一人を尊重することができる街だ」УП

ОЖ(オデッサライフ紙)が道行く人に「2月24日以後オデッサは変わったか?」と尋ねた。5人が5人ともウクライナ語で回答した(そのこと自体に驚く。だが「できればウクライナ語で」と誘導されていると思う。BGMもあいまって、芝居がかっている(作り物くさい)とすら感じる)

或る:そんなに変わらない。観光客や外国人が減った。全体として人が減った。でもいかなる戦争もこの街の精神は変えられない。都市生活はストレスフルなものだがこの100万都市は負の気をすべて海がさらってくれるので快適。だが晩に沿海通りを散歩する習慣とオペラ劇場のライトアップがなくなったことは寂しい。エカテリーナ2世像もなくなったが、それは結構なことだ。

或る:大きく変わった。もともと人らは善良だったが今は団結と相互扶助が一層強まった。その一方、人々は明るさを失った。分かりきった話だ、笑ってられる場合ではない。戦時中なのだ、ということをオデッサの人たちは忘れていない。ここにも敵との戦いがある。戦争が始まるとすぐに皆一致協力して土嚢を積み上げた。オデッサに「無関心な人」などいない。ミサイル攻撃でわが街の美しい建築が破壊されたことに大変な憤りを感じた。だが耐え抜こう、打ち勝とう。

或る:多くのオデッサ市民がウクライナ語に移行していることを嬉しく思う。人たちの距離が近づいた気がする。SNSでも、リアルでも。ウクライナの人は皆オデッサのことを心配している。今は国中がこんな状況だから、安全は感じられない。オデッサの人たちは絶えずストレスにさらされている。それでも戦争を耐え抜くことができているのは、内的状態のお陰だ。オデッサには元気の粒子みたいなものがあって、これが各人の心にあるから、立ち止まらないで前に進み続けることができる。自分たちの人生を生きることができる。

或る:人は確実に変わった。価値観が新しくなった。以前は金が欲しいとか旅行どこ行こうばかり考えていた人たちが、自らの生は神の掌中にあるという恭倹を抱くようになった。かつて祈ることを知らなかった人たちも、今は勝利を祈願している。私は牧師で2016年に東部(ドンバス地方)に赴き、そこで爆発音を聞いた。それがオデッサにまで来るなんて思いもしなかった。オデッサ人はより機敏になった。当初は空襲警報を無視していたが、敵の攻撃の被害を目の当たりにした今は全然ちがう。

或る:2月24日を境にオデッサは100%変わった。より親ウクライナになった。そのことの大切さが明らかになり、需要が生じた。とはいえそれ以前が全然違ったと考えるには及ばない。30年来のオデッサ市民だがずっとウクライナ語で話している(オデッサでウクライナ語を話すのはよそから来た奴だけだ、と言われないようにこれを言う)。この方向性は正しいと思う。エカテリーナ2世像の撤去に始まるこの動きを継続しなければならない。オデッサ市民は戦争を忘れない。つい二週間ほど前に私がかつて住み今も両親が住んでいる家の隣にミサイルが飛んできた。オデッサは事も無しなどと言う人は敵に味方しているに等しい。オデッサは勝利のために励んでいる、他のウクライナの街と同じように。ただ一つこの街で変わらないもの、それは、違法建築の横行だ(訳注:オデッサのとりわけ臨海エリアでは富裕層の夏期の中長期滞在を当て込んだホテル/高層マンションの粗製濫造が問題になっていた)。それは戦前もあったし、今もなお行われている。でも市当局の腐敗にメスを入れるのは戦争に勝ってからだろう。

ウクライナの長い槍

射程700kmの長射程国産ミサイルの実験成功の話が昨日あったが、今度はダニーロフが射程1500kmの超長射程ミサイルに触れた。いわく、2020年に承認された国産ミサイル・ドローン開発計画が実を結びつつあり、今に700kmどころから、1000-15000km離れた標的も国産兵器で攻撃できるようになる。あわせてダニーロフは、ロシア本国の施設でウクライナ軍の攻撃の標的になるのは軍事施設(軍事製品の工場など)だけであり、石油加工工場その他施設の爆発はウクライナ軍の管理外のロシア人パルチザンの手によるものである、と強調した。УП

戦況

いまウクライナ軍は南部において敵の第一防衛線を突破して第二防衛線にかかるところだが、タルナフスキー南部作戦司令官によれば、露軍の第二防衛線は、第一防衛線より格段に脆弱である。露軍は第一防衛線の構築に時間とリソースの6割を割いており、第二および第三には2割ずつしか割いていない。結局のところロシアの頼みの綱は第一防衛線の地雷原であり、それが突破されたいま、ロシアは優位性の大部分を失ったといえる。とはいえ「勝利が近づけば近づくほど困難さは増す。なぜか。悲しいことだが、(突破の過程で)最強・最良のものを我々は失うからだ」УП

9/1

■さらに2隻が出航
「ロシアの穀物合意からの離脱」を骨抜きにする。さらに2隻の外国商船(船籍はリベリアおよびマーシャル諸島)がウクライナ南部諸港から出航した。これで都合4隻。УП

■ウクライナ語の迫害
ドイツの某所でウクライナ語で会話していた児童の一団に行き会った推定40代の男(ロシア語話者)が「ロシア語で話せ」「戦争を始めたのはウクライナだ」などと難癖をつけ、児童らに暴行を働き、10歳男児を橋から突き落として頭部ほかに傷を負わせた。УП
※ある場所ではロシア語が迫害され、ある場所ではウクライナ語が。でも世界にどちらが足りないか、と言われれば、やっぱりウクライナ語への保護の方が足りない気がする。ロシア語話者のその「亜種」に対する優越意識の発露に私自身そこかしこで遭遇したし、先生に聞いたら、斯界では名門とされる私の母校で、ロシア語学習者は数としては減っていないという話だ(そしてウクライナ語を新たに教えようという動きも知る限りない)

■ロシアの最中枢に主戦派はほとんど残っていない
情報総局のブダーノフ長官が国内テレビのインタビューで述べたところでは、ロシアで真に決定権をもつ人たちの中に戦争賛成派は数少なくなっている。誰もが理解している:これは失敗であり、止めるなら早ければ早いほどいい、と。УП
※ブダーノフがこういうこと言うときは「事実を伝える」ことより「状況を創りだす」ことを志向している、と受け取るようにしている。つまり、プーチンとその取り巻きに、王様は裸なのではないか、という疑心を植え付けることを狙っての発言であると。

■プスコフへの攻撃はロシア内部から?
そのブダーノフの発言。衝撃を呼んでいる30日の露プスコフの飛行場へのドローン攻撃だが、ドローンの出発地はロシア国内だそうだ(УП)。これなども、さすがに今回はそうでしかあり得ないだろうな、と思いつつ、成程そのように言えば効果的であろうな(だって攻撃の起点については何も言わないこともできたのにあえて言ったのだもの)とも思う。

■不法出国者は本国に送還する?
ウクライナ議会における与党「国民のしもべ」の会派長ダヴィド・アルハミヤによれば、兵役義務者でありながら兵役不適格の証明書を偽装して外国に逃れたウクライナ人は、本国に送還される可能性がある。現時点でウクライナの警察当局に外国まで手を伸ばすことはできないが、ウクライナ刑法典に則った「国際的な法的援助」への取り組みが非常に活発化している、とのこと。УП
※日本にいるウクライナ避難民の中にも違法な方法で出国した人がいる(少なくとも一人知っている)。ウクライナ政府が求めたとき日本政府は本人の意思に反しての強制送還に応じるのだろうか。応じないでほしいが。ウクライナ政府も、戦意ないやつ狩り集めてどうするというの。

8/31

解放作戦の進捗、装備

■NATO事務総長「ウクライナ軍の成果は期待以上」
NATOのストルテンベルク事務総長はCNNのインタビューでウクライナの反転攻勢に対し改めて肯定的な評価を下した。「ウクライナ軍は少しずつ前進している。ロシア軍を撃退し、地雷原含む強固な防衛線を突破していっている。ウクライナが再び期待を凌駕するさまを目撃している。昨年の大規模侵攻開始時点で多くの専門家はもって数週間だと考えた。だが彼らは北(キエフ)を、東(ハリコフ)を、南(ヘルソン)を解放した。そして今また、さらに大きな成果を達成しようとしている」УП

■ウクライナ国産長射程ミサイル
ゼレンスキーによれば、射程700km(!)という長射程の国産ミサイルが成功裏に使用された(УП)。ダニーロフ国家安全保障会議書記も国産長射程ミサイルの実験に成功したと発表(УП)。現有の最長距離が英供与のストームシャドー250kmだから、飛躍的な伸長である。700kmあればオデッサから撃ってもクリミア全域が射程に入るし、ハリコフから撃てばモスクワにも届く。

■ウクライナにはF-16が160機必要
ゼレンスキーによれば、ウクライナにはF-16戦闘機が160機ほど必要である。反転攻勢のためというよりは、市民を守るため、黒海の穀物回廊を守るために。しかし現時点で約束されているのは50~60機ほどに過ぎない。また、飛行士の訓練とインフラの整備には時間がかかるため、実際に戦闘機がウクライナ上空を飛び始めるのは来年初めになる、とも。УП
先にイグナート空軍報道官は、老朽した機体を代替し、航空優勢を確立するためには、ウクライナには128機の戦闘機が必要だ、と述べていた。УП
※戦闘機関連のニュースを見るときこれら数字を基礎にして考えよう

■露軍、「クリル諸島」からウクライナ国境へ対空兵器を移送
露が2020年に北方領土に配備した地対空兵器が撤去された。対ウクライナ侵略戦争に転用するためと見られる。ほか、サハリンの軍事施設に保管されていた旧式の戦車や大砲もウクライナの前線へ送られる模様。トーキョー大学の軍事専門家ユー・コイズミが衛星写真を分析、共同通信が伝えた。УП

■マスメディアの論評は表面的で時に有害
ダニーロフ国家安全保障会議:外国メディアに近頃多く見られる「反転攻勢の遅れ」だの「攻撃の方向を間違っている」だの「戦力を分散させ過ぎている」だの「装備を失いすぎ」だのいう言説がウクライナのメディアにも伝えられ、また露プロパガンダに盛んに拡散されているが、こうした論評はあるいは時代遅れの、あるいは未検証のデータを根拠としており、しばしば表面的で、場合によっては有害である。このような戦争は第二次世界大戦以来初めてであり、この間に技術や兵器は著しく変容した。いま戦場で、またウクライナで起こっていることは全く新しい事象であり、その帰結はすぐには可視化しない。УП

■レズニコフ国防相、解任?
レズニコフ国防相が近々解任されるという話がある。後任は国家予算基金のウメロフ総裁になるとか。当のレズニコフは駐英大使に据えられる見込み。政府内の情報としてУПが伝えた。国防相の選任権は大統領にある。УП

■戦後のウクライナにはバリアフリー化が必須
ゼレンスキー「ウクライナ社会は戦争で身体に障害を負った膨大な退役軍人および市民を抱えることになる。ウクライナは模範的なバリアフリー社会とならなければならない。これには国と自治体が共同で取り組んでいく。その際、世界各国の経験の粋が参照される」УП
※体感では現状のウクライナ……少なくともオデッサは最悪のアンチバリアフリー環境だが、日本と違って相互扶助の精神が浸透しているので健常者が進んで手を差し伸べる(あるいは障碍者が助力を請うことをためらわない)ことでなんとかなっている。だが戦争の後遺症で膨大な障碍者が発生するという指摘に成程と思った。日本は戦後復興のフェーズで、この方面でも大いに貢献できるのではないか。

8/30

後方攻撃(露→ウ)

29→30日の夜、ウクライナ各地を44の飛翔体(ミサイル28発、攻撃ドローン15機)が襲ったが、うち43を撃墜した(УП)。オデッサ沖で海上発射式の巡航ミサイル(カリブル?)8発を撃墜して爆発音が鳴り響いたとのこと(УПУП
首都kキエフでは撃墜片が大手スーパー「アシャン」に落下して爆発が生じた(УП

後方攻撃(ウ→露)

情報総局の作戦で露プスコフの軍用飛行場にドローン攻撃が行われ、軍用輸送機4機が損傷した。露ウ双方が確認している(УПУП
プスコフめっちゃ遠いが。いよいよ不可能事なくなってきた。エストニア領内からの攻撃が疑われてもおかしくない距離だが参戦ととられかねない行動にエストニア政府が同意することはさすがにないであろうと某(УП

BBCによれば、ロシア本土とクリミアに対する攻撃は今年入ってから190回以上行われている。ウクライナ側は自らの攻撃であることを認めたり認めなかったりだが、基本的な綱領はゼレンスキーのかつての声明に示されている:「露本土へのっ攻撃は不可避であり、自然であり、絶対的に公正なプロセスである」УП
↓これまでどこに攻撃が行われてきたか

また、露独立系メディアによれば、ウクライナの特務機関は開戦から今日までに露/クリミア/ベラルーシ各地の9つの飛行場で24機の航空機を破壊または損傷させることに成功した。УП

8/29

世論調査

キエフ国際社会学研究所が6月に行った調査の結果がこのほど明かされた。УПУПУП

■ウクライナはこれからどうなる?
ウクライナの未来をどう思うか、との問いに、「良くなる」と答えた人が66.1%、「悪くはならないが、良くもならない」19.3%、「悪くなる」10.8%。

昨年6月また12月と比べると「良くなる」が10ポイントも下がっている。悲観勢が増えている。

■ウクライナの現状に満足してる?
いまウクライナで起きていることに満足しているか、との問いに、「満足している」と答えた人が10.2%、「満足と不満が半々」が25.5%、「不満」が59.7%。こちらも悪化している。

■右か、左か?
政治信条的にいうとあなたは何者?との問いに、「社会主義者または共産主義者」と答えた人が3.7%、「社会民主主義者」8.5%(この2者を「左派」とする)、「リベラル」6%、「国家民主主義者」13.7%、「国家主義者(ナショナリスト)」18.8%(この2者を「右派」とする)、「その他」6.4%、「分からん」43%。

左派と右派の比率は1:3。今回約19%を占めた「ナショナリスト」は露の大規模侵攻以前は3-4%の水準であり、全体として比重が右方に遷移している。

■私は誰?
自分というものを一言で定義するなら?「熊谷市民」「埼玉県民」「首都圏人」「日本人」「アジア人」「世界市民」と色んなレベルの帰属母体を用意して当てはまるものを選ばせたところ、「ウクライナ人」が圧倒的多数(79.5%)であった。

黄色が21年10月、赤が22年12月、緑が23年6月。黄色(侵攻前)時点でのアイデンティティ狭域自治体民(最上段。「俺は熊谷市民だ」)および広域自治体民(二番目。「俺は埼玉県民だ」)の減少分がちょうど国民(上から三番目。「俺はウクライナ人だ」)の増加分に当たっている。あと、自己規定「ソビエト市民」の人(下から4番目)の減少分がちょうど「欧州市民」(下から3番目)の増加分に等しい。このかんにどこが引っ込んでどこが出っ張ったか分かりやすい。

■戦争はいつ終わる?
戦争は「あと数か月で」終わるという人、9.4%。「半年から1年」という人、34.3%。「1年以上」42%。(赤が22年12月、緑が今)

段々と人たちが戦争の長期化を覚悟していっている。

■勝利とは何か
ウクライナにとって戦争に勝利するとはどういうことか(ロシアの攻撃が完全に停止する、というのは当然のこととして)?この問いに83.5%が声をそろえて「全領土の返還」と答えている。この場合の全領土とは91年国境、つまり、クリミア半島含む。

暑いウクライナ

この夏はウクライナも暑い。28日、各地で観測史上最高気温を記録した。

ニコラエフの38.5℃はえぐい(熊谷か)。隣のオデッサは34.8℃とまぁまぁ。30日あたりから気温は下がっていくそうだ。

プーチン10月訪中

児童誘拐魔プーチンが国際指名手配を受けてより初めて外国を訪問する。中国だ。10月の「一帯一路フォーラム」に参加する。
大規模侵攻始まって以来プーチンの外国訪問は隣接する旧ソ連諸国とイランに限られていた。なおプーチンの最後の訪中は22年2月、侵攻3週間前。北京冬季五輪に合わせての訪中だった。УП

8/28

ロボチノ解放、シャヘド、冬服スキャンダル、プーチンThe real nowhere man.

ロボチノ解放

言われていたことだが、このたびウクライナ国防省が確認した:ザポロージエ州の要衝ロボチノが完全に解放された。こらからトクマクを目指してさらに南下を進めていく。ひたすらに頭が下がる。マリャル国防次官は「南部こそ進攻の主要な方面である」とも明言。
なお東部では、バフムートを「蹄鉄状に」取り囲んでおり、市の南北の高地(既にウクライナ軍が押さえている)からさらに進軍して包囲を狭めつつあると。УП

シャヘドの組み立ては既にロシア国内で行われている

最近数回の攻撃で使用されている「シャヘド」(イラン製自爆ドローン)を分析した結果、すでにその最終的な組み立てがロシア国内で行われていることが分かった。現時点でロシアには同種のドローンを一から製造する力はないとみられるが、実際の生産力はいかほどなのか、どこで組み立てを行っているのか、どの企業が部品を供給しているのか、ウクライナの情報機関が情報収集に努めている。УП

国防省「冬用上着」スキャンダル

ウクライナ国防省が安価な夏用上着を高価な冬用上着の名目でトルコ企業より購入し、差額はどこへ行ったの発注側の担当者が着服したのそれとも受注側のトルコ企業のオーナーの一人に名を連ねているウクライナ議会議員の甥っ子が着服しちゃったの、という問題。
・レズニコフ国防相は改めて、報道は誤りで、納品されたのは飽くまで冬用の上着だと主張(УП
・その冬用上着、オンラインショップで同じ型のものが国防省による購入価格の3分の2~半額以下で販売されているらしい(УП
・国防省付属の汚職対策社会評議会によれば、今回の購入は「いささかの瑕疵はあったものの、基本的には規定通りに行われた」との評価。トルコ企業と某議員の家族の関係については調査中であると(УП

惨めなプーチン

プーチンは9月半ばのG20ニューデリーサミットに出席しない。代わりにラヴロフ外相を派遣する(議長国インドのモディ首相談、УП

プーチンは8月トルコを訪問する予定であったが果たせず、エルドアンの方が来週ロシアへ飛ぶことになった。ソチで首脳会談が行われるという。主たる議題は穀物合意へのロシアの復帰の可能性(УП

ロシア大統領府は24年春のロシア大統領選挙におけるプーチンの対立候補の選定を進めている。選定の重要な基準の一つは「50歳以下でないこと」。あまり若すぎるとプーチンが相対的に爺さんに見えてしまうからという。УПMeduza

8/27

プリゴジン死亡確定、ゼレンスキー語録、戦況点描。

プリゴジン死亡確定

露の捜査委員会が分子遺伝学検査のすえ死亡した10人全員の身元を確認。プリゴジン(とNo,2のウトキン)の死亡が確定した(УП)。あとは葬儀にプーチンが参列するしないでまた一波あって、コメントが出るなら出て、でもう蓋であろう。「複雑な運命の男、過ちも犯したが、有能なビジネスマンであった」で蓋棺事定。

ゼレンスキー語録

ゼレンスキーのインタビュー番組が放送された。その語録。

■超長期戦というシナリオ
戦争も色々だ。イスラエルは戦争中といえる。我々も、人的損失を抑えながら、長期の戦争を行う用意がある。そのようなこともあり得る。イスラエルの例に倣い、犠牲を最小化しながら。УП

■ロシアに攻め込むことはない
(ロシア本土で戦闘行為を行う用意はあるかとの問いに)それはリスクが大きすぎる。我々は確実に孤立(=国際的な支援を失う)する。УП

■クリミア解放は戦闘によって、それとも交渉によって?
ウクライナ軍がクリミアとの境界まで迫ったとき、政治的手段によるクリミアの脱軍事化が可能になる。ブダーノフ(情報総局長官)はときどきクリミアに「出張」に行ってるが。(※当のブダーノフは、クリミアは「複合的な方法により」解放する、と述べている。逆に、軍事を含まない方法によっては、解放は不可能であると)УП

■2024年には選挙を
大統領および議会選挙を24年に実施したいのは山々だが、実現は困難である。
自身(19年就任)の大統領任期は24年に切れる。だがウクライナ法は戦時中の選挙を禁止している。とはいえ米国は戦時中でも選挙を行うべきとの立場であり、選挙の問題は米国の支援を左右する問題になりかねない。ゆえに選挙は実施したいが、そのためには①法改正②外国からの資金援助③国際的なオブザーバー④在外避難民の選挙権保障が必要である。
②について:言葉は悪いが、借りた金で選挙をするつもりはない。兵器のための金を吸い取って選挙に投じることもまたしない。法がこれを許さぬ。だがもし皆さん(パートナー諸国)が財政支援をくれるなら、また議会がその必要性を認めるなら、早急に法律を改正しよう。
③について:(どうしても選挙を、というのなら)リスクを共有しようではないか。どうやって? オブザーバー(選挙監視団)に塹壕に入ってもらう。選挙の正当性のためには(全土隈なく選挙が行われ、また兵士たちも投票権を行使せねばならず、したがって)オブザーバーを前線に送り込む必要がある。
④について:欧州をはじめとする諸国が総勢700万人の国外避難民に投票を行わせる環境を整備しなければならない。ウクライナにはそれはできない。だが避難民から投票権を奪うわけにもいかない。УП

■他
大統領権限の強化を含む政体変更・憲法改正は国民投票による民意の支持によってのみ成立する(УП)。かつて資本の急速な蓄積の時代にオリガルヒの手に渡った一部戦略的エネルギー施設は再国有化されるべき、冬季の電力供給安定のために(УП

戦況点描

・敵後方への攻撃、または敵後方での策動。露クルスクの飛行場へウ軍のドローン攻撃、敵機・敵ミサイル発射装置に損害を与えた模様(УП)。また、ベルジャンスクの工場で大規模火災、原因不明、同工場に露軍が兵器を運び込んでいたとの情報あり(УП

・制海権闘争の焦点、ボイコ鉄塔。クリミア西沖・オデッサ南沖の海上にある石油ガス採掘プラットフォーム(おおよそ下図の位置)、これは有効に支配すればヘリポートやミサイル基地として利用できるものだそうで、それをめぐる両軍の戦いが続いている。УПMeduza

なお、このちょっと西に蛇島がある。蛇島は現在ウクライナ軍が管理している(筈)。で、ボイコ鉄塔の方は、クリミア占領当局が経営する「黒海石油ガス」社が稼働中とのこと。

・導爆索。南部進軍において地雷原の突破がどのように行われているか。第36海兵旅団が戦場の動画を公表した。専用車両から索状を放出して、一列で地雷を起爆する。УП

導爆索すごぉいというより、美しき平原が露の完全に無意味で馬鹿馬鹿しい侵略によって黒煙のちまたと化していることへの憤り。

8/26

■航空機事故
北部のジトミル州でウ軍の訓練機2機が衝突し、パイロット3名が死亡した。うちの1人は名うての凄腕飛行士で(コードネーム:ジュース)、いまウクライナは悲願のF-16取得にようやく漕ぎつけつつあり、その操縦士の1人となるはずだったジュース氏の喪失がことに惜しまれている。ゼレンスキーもコメントを出し、今次の戦争における同人の功績を讃え、事故の原因究明を誓った。УПУПУП
今週のロシア語:авиакатастрофа(航空機事故)

■国防省スキャンダル
ウクライナ国防省にまた汚職スキャンダル。①УП(ウクラインスカヤ・プラヴダ)の調査報道で下記が報じられる:とあるトルコ企業がウクライナ国防省より「冬用上着」18万着の対価として3000万ドルを取得したが、実際に国防省が取得したのは「夏用上着」で、その値段は数倍に吊り上げられていた。当該トルコ企業のオーナーの一人はウクライナ議会の「国民のしもべ」(与党)会派議員の甥っ子で、当該議員は議会の「国家安全保障・国防・情報」委員会のメンバーであった。②この報道を受け、同じ与党会派の汚職対策委員会議長ラジナ氏が国家汚職対策局(NABU)に調査を求める意向を示した。③これを受け、レズニコフ国防相、もし嫌疑が事実に反しており、実際に納品されたのが夏用でなく冬用上着であったなら、ラジナ氏は議員職を辞し、また当該報道を行ったУП記者は退職し3年間記者活動を自粛するよう求めた。УПУП

レズニコフ国防相
レズニコフ国防相

一生に一度くらいは『スキャンダル』の語なしに記事を書いてみたらどうだろう。
かような記事の読者が半減し、かつ記事が有害でなく、有益なものとなるよう願う。
夏用上着(冬用でなく)の購入に関する情報を拡散する全ての記者に請う:裏付けのない記事を削除し、国防省の公式的な立場を明らかにし、事態の解明を待つことを。

レズニコフはこう言うが、正直こちらとしては、УПみたいなところが気骨と独立性を保ち政権批判をちゃんとやってくれている方がどんだけ安心か知れない。

■オデッサからまた船が
オデッサ港からヴァルナ(ブルガリア)港へリベリア船が出航した。露の穀物合意離脱以後、商船のウクライナの港からの出航は2件目。УП

■ウクライナはなぜロシア本土にドローンを送り込むのか
NYT:この夏、ウクライナによるロシア本土(モスクワ中心部含む)への攻撃は頻度を増した。背景にあるのは反転攻勢の遅れである。一連の攻撃は露の軍事ポテンシャルを棄損してはいないが、エスカレーションを引き起こしてもいない。戦略的目的が何かあるとすれば、さしずめウクライナの兵士および国民の戦意の強化であろう。УП

■ウクライナの新生児命名事情
2023年上半期、ウクライナの赤ちゃんにどんな名前がつけられたか。法務省が人気の名前を明かした。

女児:アナスタシヤ、ヴィクトリヤ、ダリヤ、エヴァ、ズラータ、エカチェリーナ、ミロスラワ、マリヤ、ソフィヤ、ソロミヤ
男児:アンドレイ、ボグダン、ウラジーミル、ワシーリイ、ダニール、イワン、マトヴェイ、ニコライ、アレクサンドル、ヤロスラフ
(ロシア語発音に準拠)

ふつうに聖名目録(святцы)にある名ばかりで新味はない。ウクライナ人やロシア人の名前については何丘のこの記事が評判高い↓

8/25

オデッサ攻撃(未遂)、反転攻勢の現況、プリゴジンとワグネル(その後)。

オデッサ攻撃(未遂)

25日未明、露ミサイル4発がオデッサ州を襲ったが全弾撃滅した。黒海から「Kh-59」2発、アゾフ海から「カリブル」2発、またアゾフ海沿岸から「シャヘド」1機が飛来したが、全て撃墜。УП

反転攻勢の現況

ダニーロフ国家安全保障会議書記「困難な歩みではあるが、一日一日、全土解放へと前進している。敵は強力だ。なるべく兵員が死傷しないような方法で、計画に則って作戦を進めている」УП

ウォールストリートジャーナルによれば、米ウ高官は数週間にわたり「遅い反攻」を活性化する戦術・戦略について議論を続けている。米側の認識では反攻の時間はまだ尽きてはおらず、ウクライナ軍は成果を挙げるに手遅れということはない。ザルージヌィ総司令官も米側に対し「突破まであと一歩のところまで来ている」と言っている。とはいえ米側からは厳しいことも言われており、①反攻を行うには現今の支援で十分②来年も同じ規模の支援を行うのは望み薄③ウクライナは戦力を分散し過ぎている、との指摘があり、これを受けてウクライナ側は戦術を修正したとのこと。УП

米CNNによれば、ウクライナ軍は南部(ザポロージエ州含む)で露軍の第一防衛線を突破したと見られるそうだ。「南部前線ザポロージエ方面でウクライナ軍が露軍の第一防衛線を突破し戦略的要衝であるトクマクに向かって陣地を拡大している兆候が多く見られるようになっている」УП

プリゴジンとワグネル(その後)

ベラルーシの自称大統領ルカシェンコ:①自分は別にプリゴジンの身の安全を保証したわけではない②今度の一件にプーチンは不関与③ワグネル兵はベラルーシに留まり続ける。「私はプーチンを知っている。計算高く、冷静で、人事についてはより零細な問題でさえ決断を下すに慎重な男だ。これをやったのがプーチンだなどとは想像しがたい。逆に、もしそうなら、あまりにも乱暴で、素人じみた所業だ」「ワグネルはベラルーシで生きているし、生き続ける。駐屯地の解体を示す衛星写真などというものは……多すぎたからだ。要らない分を解体した。必要なだけ残している。1万人の兵力が留まり続ける」УПУП

ペスコフ露大統領府報道官、プーチンはプリゴジンの葬式に行くかと問われて「大統領閣下は多忙である」。プーチンの関与については「西側メディアの完全なでっち上げ」УП

【個人の見解】
ルカシェンコはワグネルを私兵として手元にとどめて隣国への影響力を維持したい意図が見え見えだが、ワグネルという組織にプリゴジン死亡の際のある種の行動計画があったことは多分確実で(というのもプリゴジンはそもそも陣頭指揮型のリーダーで前線視察を繰り返し死亡の危険と常に隣り合わせであり、「乱」失敗後は暗殺の可能性を当然に危惧しただろうから)、ワグネル兵がベラルーシに残るかどうかは、その行動計画にそう記されているかいないかの問題でしかない。私が一番こうだったら素敵だと思うのは、プリゴジンが準備していた死後計画の発動によって、ウラジーミル・プーチンの過去数十年の闇の所業を暴露する文書が一挙全世界公開されることだ。とはいえFSBも馬鹿ではないから、そうした芽はしっかり摘んでいるかもしれない。「乱」から2か月の奇妙なプリゴジン生かしは、ワグネルの非常時計画の全貌を露当局が探知するための期間だったかも。それでプリゴジンだのウトキンだの殺しても大丈夫そうだと見極めがついたから、あのタイミングでやった(ついでにスロヴィキンも更迭した)のかも知れない。と思った。

8/24

ウクライナ独立記念日、プリゴジン横死。

プリゴジン横死

プリゴジンのビジネスジェットがモスクワからペテルブルクへ向かう途上で墜落、搭乗者は全員死亡した。搭乗者名簿にはプリゴジンの名もあり、プリゴジンはほぼ確で死んだものとみなされている。墜落の様子(Meduza)↓

【本当に死んだのか】
搭乗者名簿に名前があったとて、本当に乗っていたかどうかは。暗殺の不安は常にあっただろうし影武者もいたっぽいので、これ乗りますよと申告しておいて実は別便で飛ぶくらいのことはしそうなものだ。ワグネル機は2機あり、プリゴジン以下幹部らが乗った先発機は墜落したが、後発機は無事であった(УП)。とはいえFSBそこまで節穴だろうか。
あるいは、ある種の密約により、10人を人身御供にプリゴジンは「死に」、以後は変名で単に生物学的にのみ生きながらえるのかもしれない。(この場合はしかし、多分、その状態を「死んだ」と表現して差し支えない)

【どうして墜落したのか】
内側から爆破された説と、ミサイルで撃墜された説がある。西側情報機関は爆破説に傾いている模様(УПУП

【プーチンの関与は】
・プーチンが動画で弔意を述べている。語りだしは「第一報によれば」ワグネル職員が搭乗していたようだ、と慎重であったがプリゴジンについては確定的に死亡したものであるかのように終始過去形で語り、自ら暗殺指令を出したことを語るに落ちているという印象。
・米バイデン「ロシアではあらゆることが起きるし、あらゆることの背後にはプーチンが立っている」「私が彼(プリゴジン)なら乗り物には気を付けただろう。起こったことの真相は不明だが、(死亡したとして)驚きはない」УП
・ISWレポートによれば、プーチンの指令があったことはほぼ確実。逆にショイグやゲラシモフがプーチンの命令なしに撃墜を行えるとは考えにくい。なお、同じ24日に親ワグネルの露軍司令官スロヴィキンの更迭が報じられたことは偶然の一致でなく、要するに露政権はこの日をもって先の反乱の清算を行ったのだろう。УП

【個人的な感想】
心にポッカリ穴があいた。単純接触効果というやつで、いつかこのウクライナ戦争最大のトリックスターに愛着を覚えていたらしい。その理屈でいえば、こんなにその死を願っているプーチンも、死んだらやはり心にポッカリ穴が開くんだろう。

プリゴジン死亡(説)をめぐって早速たくさんのミームが作られた。これも一種の「心の穴をふさぐ」試みなのだろう。左上から時計回りに、「ショイグ、ゲラシモフ、俺はどこだ!?」(※墜落現場を指して。元ネタは「弾薬はどこだ!?」)「ウクライナのドローンがモスクワに飛来したときのロシア対空兵器(寝てる)→プリゴジンのビジネスジェットが飛行した際のロシア対空兵器(覚醒)」(※モデルはシャキール・オニール)「プリゴジン、コンサートの時間だよ!」(※ヨシフ・コブゾン。「ロシアの北島三郎」。故人。隠語で、死ぬことを「コブゾンのコンサートに行く」という)「本日の戦果:エヴゲーニイ・プリゴジン1体」(ウ空軍の定例発表のもじり)УП

【個人的な見解】
十中八九、死んだものと思っている。十中十、指令を出したのはプーチンその人。いっぱい殺してきたが、また10人ほど殺したというわけ。利心と忖度に支配された宮廷内に「皇帝陛下のご友人」を一存で始末できる者などいない。これまでのジャーナリスト暗殺などはさておき、今回ばかりはプーチン自身の裁可なしにはあり得ぬ。殺すことでしか自身を保てない醜悪な狂王。

【余波】
ベラルーシのワグネル駐屯地が解体され、兵員が次々ベラルーシを出国している。УПУП

クリミア上陸作戦

独立記念日にブダーノフが大きめの花火を打ち上げた。情報総局が海軍と共同で特殊作戦を実施、特殊部隊をクリミアに上陸させた。場所は東端のエレノフカとかマヤクのあたり(下図)、一時ウクライナ国旗が翻り、交戦が勃発し、占領軍の人員・装備が損失を出したが、自陣は人的損失なしとのこと(УПУПУП)。全くすげえことをする。そんなことが可能なのか。

情報総局のブダーノフ長官によれば、今次のオペレーションの目的はクリミア住民に対し「解放の日は近い」というメッセージを送ることであった。こうした作戦は今後も続き、果ては全領土を解放すると(УП

今回の作戦の新しかった点は人間を上陸させたということで、これまでクリミアへの攻撃は無人艇(海洋ドローン)による港湾・橋・船艇の爆破に終始していた。とはいえ無人艇による攻撃も、当然に続けていくそうだ。「カミカゼ海洋ドローンは7割ほど撃滅されるが、3割ほどは標的に到達している。ドローンは豊富にある」とブダーノフ(УП)。また、「露ははクリミア大橋をウクライナの水上ドローンによる攻撃から守るために船を故意に沈めて防塁と化しているが、この戦法は昔ながらのもので、かつ昔ながらに無効である」、とも。УП

独立記念日

8月24日はウクライナの独立記念日。ゼレンスキーは国民向けビデオメッセージで年頭の言葉を繰り返した。「全面戦争に小事なし」(У великій війні немає маленьких справ)

ウクライナの独立、は私には大きすぎる話だ。「ウクライナに栄光を」と叫ぶことも、私はしない。心に適わないことは私はしない。ただ、戦争が一刻も早く終わってほしい、ウクライナの人たちの生活が守られてほしい、いわれなき破壊を免れてほしい、とは、真率に願う。

全面戦争に小事なし――自分にできること、を再び探し始めようか。

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