戦況については①手に余る②他がやっているので、なるべくそれ以外のことを(とはいえ無視できないので取り上げもするが)。社会の変容とか、人たちの生活のこと。とりわけ、自分がかつて住み、今も義父母らの暮らしている、オデッサのこと。
基本的に毎日更新。主としてウクライナ全国メディア「ウクラインスカヤ・プラヴダ(УП)」、オデッサローカル紙「オデッサ・ライフ(ОЖ)」、ロシア独立系メディア「Meduza」(いずれも露語)の記事を翻訳紹介する。若干の私見や体験談も交えつつ。
※この記事はオデッサ(ウクライナ)情勢、現地報道まとめ(2022年3/15~6/28)続・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(6/30~9/22)続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(9/23~12/31)続々々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(2023年1/1~4/27)ウクライナ戦争側面史(オデッサを中心に)(5/15~8/2)の続きです
9/25
オデッサ港客船ターミナル大破
傷は治る、不快事は忘れる、凝りは寛解する。そんな人間の自然に反して憎悪を持続する、これを許さぬと誓ったものへの不許(ゆるさず)を、荼毘へと持ち越す。私から私へと繋いでいくルサフォビアの魔火のトーチ。
25日未明のミサイル攻撃によりオデッサ港の客船ターミナル(Морвокзал)が大破した。ランドマークだったガラス張りの元ホテル(閉業)も無残な姿に。УП、ОЖ

前→
←後

①巡航ミサイル「カリブル」②超音速対艦ミサイル「オニクス」③自爆ドローン「シャヘド」、計数十の飛翔体による「大規模かつ複合的な」攻撃(南方作戦司令部グメニュク報道官)。迎撃でカリブル11発とシャヘド19機を撃ち落とすも撃ち洩らしたもの&撃墜片の飛散・落下により一連の被害。オデッサ州では2人が死亡。УП、УП
下図で、赤丸が観光港、青丸が貿易港。今回被害にあったのは前者。オデッサ湾周遊クルーズ船が出ていたほか、往時(コロナ前)は世界一周するような大型クルーズ船も寄港した。日本の「飛鳥」も。

観光港は有名なポチョムキン階段の真下にある。ミサイルが直撃したのか撃墜片が落下したのか知らないが、美麗な階段の中腹に風穴があくこともあり得た。

廃ホテルはランドマークでありかつ、違法性のある(建築基準を満たさない)高層建築が廃墟化したまま十年放置されているという現状がオデッサのある種のダメさを象徴してもいたのだが、これでようやく撤去が必至となった。ありがとうだぜ糞ロシア。戦後このエリアは再開発される。よりよきオデッサになる。
事ここへ至ってホテルの所有者という人がのこのこ出てきてFBにコメント。「この地に美しいプロムナードを作りたいと前から思っていた。コンサートホール・観光船発着所・スケートリンク・サイクリングロード・飲食店・商店が立ち並び、市民が子連れで休日を過ごせるような気持ちのよい海岸通り。イスタンブールにあるようなそれ。バルセロナやコペンハーゲンにも劣らない」。あわせて所有者氏、同ホテルが長らく「無作為と無趣味の記念碑」となっていたこと、オデッサ市民から愛されず、再開発を必要としていたことを認めた。ОЖ
沿ドニエストル
上記オデッサ州への攻撃でミサイルに関連したものか、沿ドニエストルで(地対空?)ミサイルの破片が見つかった。弾頭部がキツカヌィ村の畑地か空き地かに落ちて不発弾化したもので、物的・人的被害なし。同「国」の内務省(自称)が写真も公開している。УП

モルドヴァの一部でありながらモルドヴァの権力が及ばぬ沿ドニエストル地域でのこと、モルドヴァ当局が直接調査することはできないが、現地には調査団が派遣される予定であるという。「何であれ、戦争の結果として生じた事態であることは間違いがない。そして、ウクライナにおける戦争を始めたのはロシアである」とモルドヴァのサンドゥ大統領。УП
ウクライナ反攻阻止の期限は「10月まで」
ISWが露政権内部の情報として伝えたところでは、プーチンはショイグに10月の初めまで、つまりは9月いっぱいで、①戦場の状況を好転させ②ウクライナの反転攻勢を阻止し③露軍にイニシアチヴを取り返させるよう命じた。
ウクライナの反転攻勢が始まったことをプーチンが初めて認めたのが6月9日のことで、そのときプーチンは⑴露の防衛線は鉄壁でありウクライナは戦果を挙げられないだろう⑵ウクライナ軍は人員また西側装備を大量に失うであろうと見得を切っていた。УП
……さて、どうなるか。
戦中切手「世界はウクライナとともに」
また新しい戦中切手。「勝利の兵器。世界はウクライナとともに」。チャリティ切手シート、売り上げの1割がドローン購入に充てられる。

戦車のチャレンジャーとかレオパルドとか、装甲車ブラッドレーとか、防空ミサイル「パトリオット」とか。続編としてATACMSとかストームシャドーとかミサイル系を描いたヴァージョンも出るという。УП
左肩に見える国旗のアーチは定めし武器供給諸国。この中に日本がないこと、仕方ないが、寂しさを感じる。他のところで大いにお金を出しているのは知っているが、一線級に感謝される存在ではない。今一番必要としているものを与えられないのだもの、仕方ない。
9/24
■穀物船、無事トルコに到達
チェルノモルスク港から出航した穀物船(22日の項)は無事トルコに到達した。最終目的地はエジプト。ここからはロシア軍のいない平和の海、当たり前の海。УП
■ペテルブルクで停電、その前には爆発
露ペテルブルク南郊(プルコヴォ空港~シュシャルィ地区)で24日晩、停電があった。停電の1時間前には大きな爆発音と明るい閃光。同地区では一時、水道の供給も止まった。УП
※杞憂かもしれないが仮に考えておく:ウクライナは露による冬季の電力インフラ破壊に対し①積極的防御(対空兵器による飛来物の撃滅)②消極的防御(特殊構造物による防護)の2段構えで臨むという話だったが(首相、22日)、③露本土への対称的攻撃というものをウクライナは行う……行いつつあるのではないか。それを肯定できるか。市民の生活の破壊。なるほど先にそれを始めたのは露である。だが露と同じ道徳レベルに落ちるのか。しかも結局、やろうと思っても、露と同じ規模で(すなわち陋劣さで)それを行う能力がウにはない。「思い知らせてやりたい」気持ちは分かる。留飲は下がるかもしれない。だがそれが戦争の終結を現実に1㎜でも近づけるか?露市民のあいだに悪魔のナチスウクライナ=米帝連合への憎悪を掻き立てるだけではないか?
9/23
■オデッサ夜襲
オデッサ州のレクリエーションゾーン(?)にミサイル「オニクス」2発飛来、空閑地への落下であって人・物にさしたる被害なしという(УП、УП)。詳細は全く分からないがドローンにとどまらずミサイルも飛んでくるようになった展開は怖い。
■クリミア攻撃
情報総局のブダーノフ長官によれば、22日のセヴァストーポリ黒海艦隊司令部攻撃で少なくとも9人が死亡、16人が負傷した。この中には複数のロシア軍将校が含まれる。この攻撃に西側供与の兵器が使用されたか否かには言及せず。なお露プロパガンダメディアは攻撃後数時間は司令部がミサイル攻撃を受けた旨を報道し、現地映像まで流したが、夕刻には本件への言及が一切なくなった。УП
※要は露としてしゃれにならん被害を受けたということだ。
■東も南もとる
NYTによれば、ワシントン訪問時のゼレンスキーの「年内にバフムートを解放する」との言(22日参照)は、領土解放作戦をめぐるウクライナと米国の見解の相違を示している。米国は①(バフムートに拘泥せず)南部突破に集中するべきだ、また②泥濘の季節までにメリトポリに進出してクリミアと露本土をつなぐ陸上回廊を切断するのはもう恐らくは無理なのでいったん攻勢を手控えて装備を整え兵士を休養させるべきだ、との立場。そこをゼレンスキーはどうやら①バフムートは飽くまでとる②冬に入っても攻め続ける構えのようだ、と。УП
■ゼレンスキー、ポーランド国民に感謝
ゼレンスキーがポーランドの都市ルブリンを訪れて民衆に謝意を述べた。「ウクライナにこのような力強い隣人がいることを誇らしく思う。皆様がたに感謝したい。すべてのポーランド人に。皆様は(戦争)最初の日から家族を開き、自宅を開放し、自分を開いて、手助けしてくれた」「我々の共通の道におけるあらゆる障害は、両国民が相互にもつ強固な結びつきに比べれば、何ほどのものでもない」УП
経緯1:当記事で全然取り上げておらず今さらで恐縮だが、てか皆さんご存知かと思うが、①露の黒海封鎖でウクライナ産穀物の海上輸送が困難に→②陸路による代替輸送が始まりポーランド他東欧諸国を通過するように→③これら諸国で農産品の価格が下落、地元農家が反発→④ポーランド他東欧諸国、ウクライナ農産品の禁輸措置を発動→⑤ゼレンスキー、先日の国連総会でポーランドを批判→⑥ポーランド首相、これに反発して「今後ウクライナに武器の輸出行わない」。このような経過で盟友だったウクライナ・ポーランドの関係が急激に悪化していた。(鶴岡先生によればポーランドの激越な反応は間もなく同国で総選挙が行われることと関係がある)
経緯2:ゼレンスキーは米NYの国連総会のあとワシントンを経てカナダに渡り、そのあとアイルランドに寄って、で最後ポーランドに寄った。ウクライナから飛行機は出ないので高官の(ほぼ)あらゆる外遊はポーランドを通る。
9/22
■露ぬき穀物輸送再開へまた一歩
オデッサ州チェルノモルスク港よりウクライナ産小麦1万7600トンを載せた輸送船が出発した。ウクライナ軍が設定した臨時回廊を通ってエジプトへ向かう。穀物船のウクライナ諸港からの出航は19日のそれに次いで2件目。УП
※ウクライナ軍が先月来行ってきたクリミア西岸への攻撃や「ボイコ鉄塔」掌握による露の黒海ドミナントの削ぎ落としのたまもの。このまま露抜きでウクライナ産穀物の輸送再開・世界食糧危機の解決が成るのだとしたら、またひとつ、戦争の上で生起する問題の解決に政治(外交)はクソの役にも立たたない、結局は戦って血で購い取るしかない、との例証が得られた形。
■ウ軍のクリミア攻撃が止まらない
22日白昼、セヴァストーポリの露黒海艦隊司令部にミサイル攻撃、少なくとも一名死亡(УП、УП)。また同日、半島のインターネットプロバイダー(複数)に対し「前例のないサイバー攻撃」が加わり、ネット接続に支障が出ているという(УП)。これらはいずれも露占領当局および露国防省の発表、ウクライナ側はコメントせず。
※レーダー等破壊されて半島西岸は思った以上に丸裸なのかもしれない。だがいいようにやられ過ぎている、このままやられっぱなしのロシアだろうかという気も。明日にも発狂して恐るべき垂直的エスカレーション(核…)をしかけてくるかもしれない。「攻め続けなければ。プーチンに息つく暇を与えてはいけない」とゼレンスキー。たしかにあの老人はプリゴジンの乱のとき奇妙なアポケーに陥って賊軍のモスクワ接近を十数時間ただ拱手傍観した。案外守りに入ると弱いメンタルなのかもしらん、なら叩けるうち叩けるだけ叩け。
■困難な冬となるのは確実(しかし……)
21日未明の大規模ミサイル攻撃による電力施設への被害は22日朝時点で克服された、と「ウクルエネルゴ」社。消費者への影響は僅少だった、とも。УП
シュムィガリ首相によれば「暖房シーズン(≒冬季)におけるエネルギーテロルは既に始まった」。しかもその始まりは21日でなく、変電所に対する最初の攻撃が行われた2週間前に遡るという。市民生活に今のところさしたる影響は出ていない。だがこの種の攻撃は今後も続くであろう。迎えるこちらは①アクティヴな防護(対空防衛)と②パッシヴな防護(特殊な構造物)の二段構えであり、今後これをさらに強化していく。「困難な冬とはなる。それは確実。だがまたひとつ確実なことは、我々は昨年より遥かに良く敵の意図を理解しているし、それに対して遥かに良く備えているということだ」УП
■バフムートと、それからあと2つの街を解放する
ゼレンスキーが米ワシントンにおける記者らとのディスカッションで意味深な発言。ウクライナはドネツク州バフムートを露の占領から解放し、「さらにもう2つの街を」解放するだろう、とのこと。「どの街かは言えない。それについて我々には計画がある。非常に、非常に複合的な計画だ」УП
※街(міста)だそうだ。村ではなく。一つは(希望も込めて)多分トクマク。あと一つどこだろう?
9/21
大規模ミサイル攻撃(電力網破壊の再開?)
21日未明、全土に大規模攻撃。露本土の戦略爆撃機10機から巡航ミサイル43発、うち36を撃墜、つまり7発被弾。УП
この攻撃により北西部ロヴノ(リヴネ)州中心部の電力施設が損傷し、隣のジトーミル州を含む一部で停電被害があった。また、ドニェプロペトロフスク・キエフ・ハリコフの各州で送電網が損傷。「ウクルエネルゴ(ウクライナ電力)」社のクドリツキー社長によれば、これをもってロシアがウクライナの電力網の破壊を目的とした大規模テロ行為を半年ぶりに再開したとするのは早計であるが、「情報総局の報告を通じて知っている:敵は非情であり冷酷であり、あらゆる倫理・法的規範をとうに踏み越えていると。ゆえに我々はあらゆるシナリオに備えている」「(電力)消費者の保護、また非常事態後の急速復旧のために行いうるあらゆることをしてきたし、しているし、これからもしていく」УП、УП
なおウクライナ空軍によれば、ロシアには現在600発ほどの高精度長距離ミサイル(キンジャル、カリブル、Kh-101/Kh-555、イスカンデル)があり、寒の到来とともにウクライナの燃料・エネルギー施設への攻撃を再開すると予測される。米国ほかから対空装備の追加支援を取り付けて防空能力の強化に努めねばならない。Patriot、Iris-T、NASAMSといった長距離システムもさることながら、敵がミサイルと併用してくるはずのシャヘド(自爆ドローン)を自動撃墜してくれる小型防空システムも必要とのこと(空軍報道官、УП)
一方、同じ21日、ロシアのトゥーラ市(モスクワ南郊)で大きな爆発があり、続いて市の一部で停電が起きたということだ。УП
※ウクライナのドローン攻撃? 今季はやられてばかりはいない、鏡像的に敵方にも被害を出していく、ということだろうか。
ロシアはろしあと書いても可
国家「国語のスタンダードに関する」委員会で、「非公式文書においてロシアの国号を小文字で表記することは、標準からの逸脱に当たらない」という方針が採択された。
英語と同様、ロシア語/ウクライナ語でも、固有名詞は頭文字を大文字で表記するのが一般的だが、22年以降ウクライナのたとえばマスメディアでは、ロシアとかプーチンという語をあえて語頭小文字で表記して侮蔑の念を込めるということがまま行われてきた。これにオフィシャルのお墨付きが下った形。以後、ロシアを”росія”、ロシア連邦を”російська федерація”、モスクワを”москва”と書いても「規範からの逸脱には当たらない」。УП
ウクライナ人の65%が親族友人に軍人を持つ
社会調査グループ「レイティング」が9月初旬に行った調査によれば、ウクライナ国民の65%が22年2月24日以降戦場で戦った/今も戦っている人を親族・友人に持っている。
22年夏の時点では54%であった。1年で11ポイント増。УП
9/20
ゼレンスキー国連安保理演説
ゼレンスキーが国連安保理で演説し国連(特に安保理)改革の必要性を訴えた。いわく、侵略国ロシアが安全保障理事会常任理事の席を占めその特権である拒否権の発動によってあらゆる議決を妨害していることが現在の国連機能不全の原因である。「侵略者が拒否権を握っていること。これこそが国連を袋小路に追いやった元凶だ」
改革の第一歩として国連総会の権限強化による安保理権力の相対化が提案された。「総会で3分の2の賛成票が集まれば――その3分の2はアジア、アフリカ、欧州、南北アメリカ、太平洋諸国の民衆の意志を反映しているものとする――(安保理における)拒否を覆す権限を、国連総会に付与する」
第二段階は、安保理常任理事会の拡充。現在安保理は米英仏中露とほぼ欧米で独占されているが、アフリカ、アジア、中南米、オセアニア諸国も加わるべきであると。さらに欧州からはドイツが常任理事化するべきであると。
第三段階は、侵略を予防する「予防的制裁」メカニズムの導入。国連総会のメンバーが侵略の脅威を訴え、安保理が妥当と認めた場合には、自動的に制裁が発動する、というもの。УП、Meduza
個人の感想:極めてまっとうな主張と思う。一と二はいわば国連への民主主義の導入である。建前に過ぎない全主権国家の平等・対等という理念を実現へ一歩近づける。少なくとも安保理常任理事5か国が「侵略特権」を有している現状はおかしい。三は、証言する、ゼレンスキーは露の22年2月侵攻が始まる前からこれを叫んでいた。侵攻したら制裁するぞと欧米はいう、だがどうして今それをしてはいけないわけがあるだろうか、予防的制裁ということもあるぜよ、と。そのころ露はウ国境に10万の兵力を展開して脅迫していた。私は、ゼのいう予防的制裁というのは、脅迫(侵略予備動作)それ自体に対する懲罰的制裁というタテツケであってもいいと思う。むろん、ここで目指される制裁は、今げんに西側が露に対して行っているような飛蚊のごとき制裁であってはならない。この10倍猛烈な、その国の経済や国民生活がたちまち立ち行かなくなるレベルの破滅的なそれでなければ。いずれにしろ改革は急務中の急務である。第一には露の侵略を止めるために、第二には中国の海峡アヴァンチュールを抑止するために。
なおゼレンスキーの登壇前にロシアの国連常駐代表が「安保理非常任理事国でないウクライナがグテーレシュ国連総長に次いで二番目に登壇するのはおかしい」と難癖をつけて演説を妨害しようとした。これに安保理議長を務めるアルバニアのラマ首相、順番はつとに決定済みで事前にどこからも異議は出ていなかったと指摘、「戦争を止めてください、そしたらゼレンスキーが演説することもないでしょう」とチクリ刺した。УП
冬
ウクライナ国防省情報総局によれば、ロシアは現在ウクライナの発電所等エネルギー施設の偵察を進めている。むろん寒の到来とともに破壊して周る目的である。対するウクライナ側は防備の強化を進めている。「昨冬は最も多い日で一度に120発のミサイルが使用された。今のロシアにそれほどの力はないが、依然として脅威ではある。何発撃たれようと撃墜せねばならない」情報総局報道官。УП
海
米ウォールストリートジャーナルの記事。
ウ海軍司令官ネイジパパによれば、ウクライナ軍は国産無人艇およびミサイルによる露艦攻撃で、露の黒海における制海権を著しく縮減することに成功した。これによりオデッサ諸港の活動と、商船の利用が再開する。
侵攻開始時点で露の黒海艦隊とウクライナ海軍の戦力比は12:1で露が圧倒的に優位であったが、①ウクライナが一連のドローン攻撃で露艦隊に深刻な損害を与えたこと②ウクライナが沿岸のミサイルとおびただしい機雷によって抑止を利かせていることにより、露艦の黒海北西部への立ち入りは困難になっている。
米海軍大学付属ロシア海洋研究所長マイケル・ピーターソン氏によれば、「ロシアはもはや黒海におけるイニシアチヴを握っていない」。「重要な変化が起きている。一連の些細な戦術的成功が積み重なって、それが今や戦略的意義を帯びだしている」
ロシアがこれほど脆弱な立場に追いやられるのは稀有なケース。なるほどロシアは海軍大国だが、軍艦が損傷した際に、どこかから代わりのものをもってくることができない。黒海と地中海(ひいては世界の海洋)をつなぐ唯一の隘路であるボスポラス海峡を擁するのはトルコであり、そのトルコは22年2月に軍事紛争の当事国の軍事船の通航を禁止している。
とはいえロシアは今も黒海で制”空”権を維持している。だがこれも、F-16戦闘機の取得で一変する。「オデッサ上空をF-16がパトロールしはじめれば黒海北西部にロシア機が一機も現れなくなることを請け合う」とウクライナ海軍司令官。(WSJ、УП)
9/19
■夜襲
19日早朝、オデッサ含むウクライナ各地にカミカゼドローン「シャヘド」30機と「イスカンデル」ミサイル1発が飛来、前者のうち27機を撃墜。УП
「シャヘド」のうち18機は西部リヴォフ州に飛来し、うち15を撃墜したものの、撃ち洩らした3機がリヴォフの工場倉庫に落ち、大型トラック15台分=300トンの人道支援物資(冬服、食料、発電機など。一部はヴァチカンから送られたもの)が灰燼に帰し、1人が死亡した。УП、УП
■東部
戦況については東部のことばかりニュースになっている。バフムート南郊の2つの村落、クリシチェーエフカおよびアンドレーエフカを最近ウクライナ軍が相次いで解放した(アメリカのウォッチャーまたビジネスマンに言わせれば「地図で見えるか見えないかという僅かな土地」)

露軍は両村落を取り返そうと攻撃をしかけてくるがウクライナ軍が首尾よくこれを撃退している由(ウクライナ側発表、УП、УП)
■黒海
チェルノモルスク港(オデッサのすぐ隣)からウクライナ産小麦3000トンを積載した輸送船がボスポラス海峡へ向けて出航した。同船はウクライナ海軍が設定した臨時回廊を通って先週チェルノモルスクへ入港していた。同港からは間もなくもう一隻の商船がウクライナ産穀物を積んでエジプトへ発つという。УП
7月にロシアが穀物合意から一方的に離脱して以降、ウクライナの黒海諸港からの穀物船の出航はこれが初めてになる。この報を受け、世界市場における小麦の価格がさっそく下落した。ただ下げ幅は1.3%と小さく、市場はロシアの出方を窺っている模様。ロシアは穀物合意からの離脱以後「ウクライナ諸港を利用する全ての船舶を武器輸送と疑って臨検する」と公言しており、8月には実際に露海軍が商船に砲撃を行い強制停止させ、臨検を行う事案もあった。ウクライナ海軍による臨時回廊の設定は、この露の専横に対し挑戦状を叩きつけた形。ロシアがこれにどう対応するか。УП
■障碍
開戦1年半で身体に障碍をもつウクライナ人の数は30万人増えた。従来の障碍者人工が270万人であったところ、現在は300万人。ウクライナはリハビリテーション施設の拡充を必要としているが、国防に予算が集中投下される現在、その費用は外国の支援に頼るしかない。ならびに、リハビリテーション専門家も大勢必用としている。→日本はこの方面で協力できるのではないか。УП
9/18
■ゼレンスキー語録
ゼレンスキーが米CBSテレビの番組に出演して色々語った。
・猛烈な突破
ウクライナ軍が露の防衛線のどこを突破する計画であるか、ゼレンスキーは知っている。もちろんそれを口外はしないが。「防衛線の突破は容易なわざではない。だが、それは行われる。最速で突破できるのはどこか、私には明言はできない……というのも、知ってしまっているから。我々がどこを突破しようとしているのかを。突破は猛烈なものとなる」УП
・少しでも多くを
100mでもいい、少しでも多くの領土を奪還し、前に進まねばならない。プーチンに息つく暇を与えてはならない。なるほど反転攻勢の進度は遅い。だがわが軍は前進している。なお、いま前線では砲撃合戦が行われており、露もウクライナも各4万発を1日で費消している。УП
・プーチンはまた核で脅す
プーチンによる核の恫喝は今後も行われると思う。手元に残ったほとんど唯一の武器がそれだから。人たちを殺害し、拷問にかけ、黒海を封鎖し、原発を占拠し、カホフカダムを破壊し……。もう全部やってしまった。脅迫の手段はもうそんなに残っていない。ではさて再び核使用を仄めかすタイミングだが、それは米国情勢が不安定化する米大統領選挙(11月)中、あるいは、電気代がかさみ人心が抑鬱的になる冬季であろう。その頃プーチンは再び核使用に言及しだして世界を不安にさせるだろう。УП
・プーチンは結局なにがしたいのか?
(我々を)屈服させたいのだ。民生インフラを選んで攻撃することの目的はそれだ。あの男(プーチン)は血ぬられた道を歩んできた。そのような者の言うことを真に受けてはいけない。彼はもう久しく人間ではないのだから。УП
■ブダーノフ語録
情報総局のブダーノフ長官がThe Economistのインタビューに答えた。
・まだ間に合う
ウクライナ軍は冬の到来前に露本国~ドンバス~クリミアの陸上回廊を破断することができるかもしれない。露はそれをさせまいと10月末に投入予定だった予備戦力を無理に投入しているが、たとえば露が現在東部のリマンやクピャンスクに展開させている第25諸兵科連合軍は必要人員の8割、必要装備の55%しか備えていない。反転攻勢は続いている。ウクライナにはなお時間がある。泥濘シーズンの到来までまだ1か月以上もある。УП
・ロシア本国攻撃の狙いは
ロシア本国にドローンを飛ばす狙いは3つある。第1に、露の対空防衛システムを消耗させること。第2に、軍用輸送手段および爆撃機を故障させること。第3に、軍事生産施設に損害を与えること。これらの副次的効果として、ロシアの民心に不安感を煽り、国内の経済活動を破壊することも狙っている。結果ご覧の通り、モスクワやサンクトペテルブルクの大型空港の封鎖も常態化している。УП
・露の優位性は人間の数(だけ)
(露が新たに動員を行う可能性について)人間の数量は露がウに対して持つ唯一の明白な優位性だ。人的リソースは露には無限にあると言っていい。質は低いが、量は十分だ。逆に、その他の資源は枯渇の瀬戸際である。露の経済はもって25年まで。武器は26年には枯渇する。軍事資源払底の明瞭な証左となったのが先日のプーチンの北朝鮮首脳との会談であった。УП
■ゼレンスキーNY入り
ゼレンスキーがNY入りした。国連総会に参加し一連の二国間会談を持つ。21日には米議会での演説やバイデンとの会談も予定されている。「国家の領土一体性は国連憲章をはじめあらゆる基本的国際文書の根本原則だ。ロシアの侵攻によって蹂躙されたそれを復権しなければならない。また、国連の、侵略を阻止・予防する力を強化せねばならない。これについてウクライナは国連加盟国に対し明確な提言を行う」УП
■マスク「So much death for so little」
米国の経済学者デヴィッド・サックスがX(旧Twitter)でウクライナの戦況地図を示しながら「名高い反転攻勢とやらの結果ウクライナが得た領土はあまりに僅少で地図にようやく見えるか見えないかというほどだ」と投稿、これにイーロン・マスクが「こんなちっぽけなもののためにあまりに多くの人が死んでいる(So much death for so little)」とリプした。マスクは停戦推進派で知られる。かつての言:「毎日毎日ウクライナ・ロシア双方の若者が大量に死んでいっている。わずかな土地を得るか失うかということのために。境界はそれでほとんど変わりはしないのに」УП
※ウクライナの国家意志(という得体の知れないもの)への共感が深い私としては反発も強く覚えるが、大事な視点と思う。この種の糾問に千度さらされて、千度「それでも戦う」と答えられるかどうか。
■マリャル解任
18日の閣議で国防次官6名の解任が決定された。報道官として長らく国防省の顔を務めたアンナ・マリャルもその任を降りた。УП

9/17
17日早朝ミサイル・ドローン複合攻撃、主たる標的はオデッサ州南部。ミサイル10発中6発、ドローン6機中6機撃墜。オデッサ州の穀物保管庫に被害。УП、УП
9/16
■露軍の黒海におけるパワーがどんどん減少している
13日のウ軍によるセヴァストーポリ軍港攻撃で露の大型揚陸艦および潜水艦が大破した一件を受け、露は黒海上に展開していた大型揚陸艦3隻をアゾフ海に配置換えした。УП
■露の魔弾備蓄がどんどん増大している
英国防省のインテリジェンスレポート(16日付)によれば、露は昨年と同様の電力インフラ破壊キャンペーンを今冬も展開する構えと見られる。昨季のそれは10月~3月にかけて行われた。攻撃には主としてKh-101ミサイル(露本土の戦略爆撃機から発射される)が使用されたが、同種のミサイルは今年4月以降使用頻度が減少しており、一方で同種のミサイルの生産は加速していると見られる。従って、露は同種のミサイルの備蓄を相当程度充実させており、これらをウクライナの電力インフラ破壊に集中投下する懸念には現実味がある、と。УП
■トランプが大統領なったらウクライナの独立自尊は終わる
トランプとプーチンがよろしくやっている。①米次期大統領候補のドナルド・トランプが「自分が大統領に選出された暁には24時間でウクライナ戦争を終わらせる」と豪語②プーチン、先週の東方経済フォーラムで「短時日で紛争を調停するという彼の意向は喜ばしいことでしかない」と称揚③トランプ「耳に快いお世辞。自分が真っ当なことを言っていると認めてもらったのと同じことだから。プーチンを部屋に引き込み、ゼレンスキーも部屋に引っ張り込んで、合意を結ばせる」УП
むろん碌なことにはならない。21世紀の38度線が引かれるだけ。このモンスターが米大統領になったらこの1年半の国際のあらゆる努力が水泡に帰し、ウクライナの主権と矜持は踏みにじられる。
9/14
■後方への攻撃(クリミアで大爆発)
引き続き相手方の後背への攻撃が行われている。13→14の夜、まず露→ウへ、シャヘド22機、うち17撃墜(УП)
一方のウ、保安庁と海軍の合同作戦で、クリミアのエフパトリヤ近郊に設置された露の地対空兵器を破壊した。まず保安庁の無人機で”目”すなわちレーダーとアンテナを潰し、そこへ海軍のミサイル「ネプトゥーン」2発を撃ち込んでミサイル発射装置を撃滅したとのこと。近隣住民によれば巨大な爆発が4度ほど続いた。УП、УП、УП
■来週の国連総会で穀物合意が議論される
グテーレシュ国連事務総長が来週NYの国連本部で開かれる国連総会にあわせてゼレンスキー・エルドアン・ラヴロフと会談し、黒海穀物イニシアチヴの再開について議論する意向を示した。「交渉の妥結に自身が楽観的か悲観的かは言わないが、私が①黒海イニシアチヴの再開②ウクライナ産品の輸出の再開③制裁の枠内で露の農産品および肥料の輸出を簡略化するための作業の継続のために可能なすべてを行う決意に満ちていることは請け合おう」УП
■珍金会談の評価(暫定)
米国務省ミラー報道官:会談の全容は不明。だが金が珍の神聖なる国益防衛闘争に無条件の支持を表明したことは無論、懸念の材料である。両者が軍事支援について討議したことは間違いない。だが珍がこうして金に支援を求めること自体が、侵略戦争が露にとって思わしくない推移をたどっていることを示唆している。「ロシア帝国の栄光を再建しようとしたプーチンが1年半で何万もの兵士を失い何十億ドルも空費し、あらゆる帝国主義的野心を潰えさせた挙句、金正恩にに助力を懇願している」という構図だ。УП
■秋のカルパチアへの誘い
ウクライナ西部カルパチア山脈の景勝地紹介記事がУПに。写真集として覗いてみてください。全然知らん部分のウクライナ。すごく美しい。


※ウクライナの人たちの典型的な休暇の過ごし方は、夏はオデッサで海水浴、冬はカルパチアでスキー。海は南にしかなく、山は西にしかない。
9/13
後方への攻撃①露→ウ、オデッサ州(あと穀物輸送のこと)
12→13の夜、オデッサ州西部イズマイル地区にまたしても大規模ドローン攻撃、32機を撃墜するも、港湾ほか民生インフラ・住宅に被害、7人が重軽傷を負った。УП、УП、УП、УП
解説:オデッサ州には海(黒海)の港と河(ドナウ川)の港とあって、どちらもウクライナ産穀物の輸出に使われる。露のオデッサ州西部イズマイル地区に対するここ2週間の執拗なドローン攻撃は、その後者を狙ったものである。夜間に数時間かけて間欠的にシャヘドを30機ほど。ワンパターンではあるが、防ぎきれない。(※お勉強:欧州を代表する大河であるドナウはドイツ南部に端を発しウィーンやブダペストを洗いルーマニア・ブルガリア国境をなして流れオデッサ州イズマイル地区にて黒海に注ぐ。赤ピンは同地区レニ)

一連の攻撃についてウクライナ地域領土インフラ発展相「ウクライナの輸出ポテンシャルを低減しようとする露の試みにも関わらず、諸港は稼働を続けている。ウクライナの港湾インフラへの攻撃は即ち世界の食料安全保障に対する攻撃である」「露は7月18日(穀物合意からの一方的離脱)以降、ウクライナの港湾インフラ105施設を破壊し又は損傷させた。ドナウ諸港への攻撃および海上封鎖によりアジア・アフリカ・欧州向けの穀物輸出が月あたり300万トン減少している」「(露の海上封鎖で海路が使用できないため)ウクライナ農産品の水上輸送の道はドナウ諸港が唯一のものとなっている。これを強力な対空防衛システムで守らなければ、ウクライナ農産品に依存している諸国に甚大な被害が出る」УП
英国政府によれば、露は穀物合意からの一方的離脱(7月)以降、ミサイルや自爆ドローンによって穀物28万トンを根絶やしにした。ウクライナはヒマワリ油の世界総輸出の5割・小麦の1割を生産する農業大国である。ドナウ川や鉄道といった代替手段による穀物輸出はウクライナにとって戦費の貴重な調達限となってきたが、これら経路は輸送費がかさみ、生産者にとって打撃となっている。専門家によれば、ドナウ川を通じたエジプトへの穀物輸出の費用は、昨年の侵攻前は1トン当たり69ドルだったが、現在は1トンあたり116ドルに高騰している。一方で、ドナウ川には港湾インフラが点在しており積荷のポイントが多いという優位性もあり、ドナウ川の輸送量は今後も拡大していく、との見方もある。УП
後方への攻撃②ウ→露、セヴァストーポリ
13日未明、ウ軍がクリミアのセヴァストーポリにある造船工場を攻撃し、露の大型揚陸艦「ミンスク」号を破壊、ディーゼル電気潜水艦「ロストフ・ナドヌー」号を損傷させた。攻撃には英供与の長距離ミサイル「ストームシャドー」が使用されたとみられる。УП、УП、УП、УП
ウクライナ軍には露潜水艦を発見・攻撃する手段が皆無で、唯一の可能性はドックに上がったところを撃滅することだったが、今回まさにそのことが行われた。揚陸艦への攻撃はこれで3度目だが、潜水艦へのそれは今回が初で、歴史的快挙という。「ストームシャドー」の威力に鑑みると潜水艦は(揚陸艦の方と同様)修理不可能なレベルまで損傷している可能性が高い。УП
この攻撃の際にまたしてもスターリンクの大規模な切断があったという(УП)。なお、パルチザン組織АТЕШによれば、攻撃の成功にはセヴァストーポリ市民による情報提供が与って力あった(УП)
同日、これとは別に、黒海北西海域でウ軍の攻撃により敵ボート「トゥネツ(まぐろ)」が撃滅されたということだ。哨戒用とみられる(ウ海軍発表、УП)
露の軍事生産力・現状
NYTが米欧ウ当局者の証言をもとに伝えたところによれば、
・露は西側の対露制裁を克服し、大規模侵攻始まる以前よりも多くのミサイルを生産する能力を獲得している。これから数か月の間、ウクライナは強化された攻撃に対して特に脆弱となる。
・制裁の結果、露は22年の2月から少なくとも6か月の間はミサイルその他兵器の生産を急激に減速することを余儀なくされた。だが露は欠乏した部品をアルメニア・トルコなど第3国から密輸し、22年末には生産力を復活させた。
・露はこの増大したミサイル生産力をもって秋冬のウクライナのエネルギーシステムに対する新たな攻撃を行う恐れがある。
・露が兵器製造に必要としている集積回路はハイテクというよりは市販レベルのそれであり、制裁迂回ルートの追跡は困難であるという。
・露は弾薬の生産量を倍加させ年間200万発を達成しており米欧の生産力を凌いでいる。だが露は戦争で年間1000万発の弾薬を使用しており、同じ烈度の戦争を続けるにはなお十分な数字ではない。
・軍事生産の増大は露経済を圧迫しており国内の金利は急上昇している。УП
珍金会談
北朝鮮の金正恩と露のプーチンが会談した。所は露極東のヴォストーチヌィ(あづま)宇宙基地。北朝鮮の人工衛星建設を露が手伝うんですかとの問いに「だからこそ我々はあづま宇宙基地にやってきたんですよ」と珍。金はロケット(≒ミサイル)技術に多大な関心を示したということだ。УП、УП
9/12
ボイコ鉄塔
ボイコ鉄塔の制圧をウ情報総局の一大戦果であるかのように語ってしまったが(昨11日の項参照)、ウクライナ海軍はその周辺海域において既に1年以上制海権を確立していたそうだ。22年6月にウ海軍が露艦ワシーリイ・ベフ(蛇島への武器・人員の輸送に使われていた)を撃滅して以降、露の当該海域への艦船の侵入は停止していた。だがその後も露の偵察機・攻撃機の侵入は続いていて、その意味で当該海域はグレーゾーンであった。加えて、露が小型の船艇で少人数をボイコ鉄塔の乗り込む可能性もあった。以上のことから、ゴムボート一艘で鉄塔に到達するというウ情報総局のミッションは、相当にリスキーなものではあったと。ウ海軍報道官発表、УП。
ゼレンスキーと汚職
・有責だが有罪でない
ウクライナ国民の支配的多数(約8割)が「国内の汚職に対してゼレンスキーは直接の責任を負っている」と考えていることを示す調査結果(昨11日の項参照)について、調査主体のキエフ国際社会学研究所がコメントを出した。いわく、「責任を負っている(ответственный)」ことと、「関与している(причастен)」ことは異なると。大統領支持率は飽くまで記録的な高水準(80-85%)を保っており、調査結果は支持率の低下ないし危機を意味するものではない。国民は国家経営の実態をよく把握せず、何について誰が責任を負っているのかがよく分かっていない。それで一番目立つ人間である大統領がやり玉に挙げられているに過ぎない。つまりは、今回の調査結果は、「汚職対策について決然たる行動をとってほしい」という、大統領に対する国民の需要とか要求の表れ、というふうに解釈すべきである。УП
※調査機関がわざわざこんなコメントを出すというのは。反響がよほど大きくて、政権からも圧力がかかったか。
・身中の虫追い
ゼレンスキーが22年2月24日以降の軍医委員会(военно-врачебные комиссия)の全ての決定に対し調査を行う命令書に調印した。同委員会は診断書の発行による徴兵忌避の幇助を繰り返したと見られる。УП
珍言集
プーチンが東方経済フォーラムで一連の珍言をなした。お慰みコンテンツ。
・戦争よくない、侵略かっこわるい
1956年のハンガリー動乱と1968年のプラハの春(ともにソ連の影響圏における民主化運動、ソ連軍が侵攻し戦車もて鎮圧)についてプーチン、「あれは誤りであった」「外交政策において他の国民の利益を侵害することは正しくない」УП。その命によって隣国を数十万の軍靴で踏み荒らし十数万人の兵士・民間人を殺害し数百万人を国外に流亡させ数千万人の生活を破壊している奴の言。
・ウクライナ側の損失は実は露国防省発表の1.5倍!
珍によれば、ウクライナ軍は反転攻勢始まってから戦車543両と装甲車1万8000両を失った。だがこの前日の露侵略省(自称「国防省」)の発表によれば、露が撃滅したウクライナ軍の戦車および各種車両の合計数は1万1779両に過ぎない。一方のウクライナ側の発表では、12日時点のロシア側の損失は戦車・車両合わせて1万3346両(昨年2月からの通算)で、露の損失はウ側の損失の「数倍大きい」という(ゼレンスキー、7月)。УП
※露もウも自陣の損失については絶対に公表しない。また、敵の損失についてはウの発表も額面通りに受け取るわけにはいかない。とはいえ露の損失についてのウの発表は英情報当局や米シンクタンクの分析と大筋一致と認識。そして露当局発表値と珍発言ではいくらなんでも乖離が大きすぎる。カンペなしに具体的数字を列挙して賢そうに見せるのは珍帝の十八番だが、無謬性神話に守られて数字の錬金術(虚言・放言)に淫するうちだいぶユルんでしまったものと見える。
・マスクは有能なビジネスマン
スターリンクの故意の停止によってウクライナ軍のクリミア攻撃を妨害した疑いで頃日とみに危険人物視が強まっている米実業家イーロン・マスクについて珍、ここぞと「傑出した人物」「活力旺盛・才気煥発のビジネスマン」と持ち上げてみせた(УП)。死のにおいしかしない。盟友プリゴジンを抹殺した後、はなむけに同じ言葉を用いた。
9/11
黒海
■ボイコ鉄塔
ウクライナ国防省情報総局によれば、ウクライナ軍は黒海に浮かぶ石油ガス採掘プラットフォーム「ボイコ鉄塔」の奪還に成功した。同施設はオデッサ南沖・クリミア西沖に位置し、2015年に露に占拠され、今次の戦争では露軍のヘリポートないしレーダー基地として機能していた。それが今回、ウ情報総局の「ユニークな」奪還作戦で、複数の石油採掘施設が奪還されたほか、戦利品として①無誘導弾の備蓄および②黒海を航行する船舶の追跡に使われるレーダーが鹵獲された(УП)
↑情報総局が発表した動画。ゴムボート一艘で強襲、遭遇した敵機を撃滅、制圧。こんなことができるのか。すぐに取り返されてしまうのでないといいが。改めてボイコ鉄塔のおおよその位置↓

このちょっと西に蛇島があり、蛇島はウクライナ側が有効に管理できている。何しろ慶賀すべき出来事だ。
■ロシアをのけ者にしないで<`ヘ´>
トルコのエルドアン大統領がG20サミット(@インド)場裏で、ウクライナ産穀物の黒海を通じた輸出の再開に関する交渉でロシアを「のけ者にしないよう」呼びかけた。この問題については露・ウクライナ・国連の代表者と会合が行われる予定だという。その場所・時期は未詳。УП
※私見。自らの外交的成果である穀物合意を延命させて国際紛争の調停に力ある地域大国として格好をつけたい気持ちは分かるが、状況が違う。合意から離脱するや港湾施設や穀物倉庫の爆撃を繰り返す糞テロリストどもと交渉することは何もない。
日本
■日本はハイテク部門でウクライナ復興支援に参与
日本のビジネス代表団(含む楽天)とウクライナ経済相の会談があり、日本側は戦後復興への関与に意欲を示し、再建を加速させるハイテク技術について一連の提案を行った。一例として、キエフ近郊の街ブチャに3000ヘクタールのグリーン産業ゾーンを創設し、グリーン水素を製造してブチャのエネルギー独立性を高める案が提示された。ほか、復興に役立つ技術として、①PTSDその他ストレス性疾患の診断・予防・治療のための医療技術およびプログラム②自律的に機能また保守を行う飲料水浄化システム③農産品学術支援システム(?)などが提案された。УП
世論調査
民主イニシアチヴ基金とキエフ国際社会学研究所の合同調査。汚職が国家の一大問題であるという市民の認識が露わに。①ビジネス環境にとって最大の敵は戦争による破壊(37%)でも不適切な税制(36%)でも国からの支援の乏しさ(36%)でもなく、汚職(47%)УП。②国内の汚職対策がパートナー諸国の軍事支援の条件になると考える人、55.1%。ならないと考える人、28.6%(УП)③政府や軍当局内の汚職に対しゼレンスキーは直接的な責任を負うと考える人、78%。負わないと考える人、18%。УП
9/10
キエフ夜襲
9→10日の夜、「シャヘド」33機がキエフ州を襲い、26機を撃墜、その撃墜片および撃ち洩らした7機により4人が負傷・家屋100棟あまりが損壊・学校/病院等が損傷した。УП、УП、УП、УП
領土解放作戦の今後(時間、F-16、ATACMS)
■残された時間
米ミリー統合参謀本部議長によればウクライナの反転攻勢に残された時間はあと1月~1か月半ほどである。「軍事行動を行うのに攻撃な気候が続く日がなお30-35日残っている。敗北と断ずるのは尚早だ」УП
■F-16
ウクライナ軍指導部内には「F‐16戦闘機は今冬(早くて2月)にも実戦投入可能」との見方がある。ウォールストリートジャーナルがウクライナ軍指導部の話として伝えた。①米による訓練が今月ないし来月始まる②英語に堪能な優秀なパイロットであれば5か月で訓練を終えられる③2月には実戦投入可能、というわけ。一方の米側では「F-16の実践投入は早くて24年半ば」との慎重論が強い。ただホッジス元米駐欧陸軍司令官のように「3か月で訓練可能」との声も。障害となるのは英語の習得。整備士の人材発掘・訓練も課題という。УП
■ATACMS
米バイデン大統領は近日中にウクライナへの長距離ミサイルATACMSの供与を決める可能性がある。フィナンシャルタイムズが米政府高官の話として伝えた。УП
9/9
■G20首脳宣言
インドで開催中のG20サミットで首脳らによる共同宣言が採択された。宣言は「妥協的」なものになった。「戦争に関してG20諸国の立場には大きな隔たりがあり、西側諸国は決然たる対露非難を盛り込むことを求めたが、グローバルサウス諸国は経済問題に焦点を当てることを求めた」と議長のモディ首相(インド)。ウクライナ外務省は遺憾の意を示し、文言を「添削」してみせた。

サミットにウクライナが参加していたらこうはならなかったであろう、「ウクライナぬきにウクライナの話はしない」という原則が徹底されるべきだ、とウ外務省報道官。なお、今回のG20サミットには露中首脳が不参加であり、西側諸国は習とプーチンの不在を利用してグローバルサウス諸国首脳との関係を強化するチャンスであったが、成果文書に決然たる対露非難を盛り込むには至らなかった。УП、УП
■もうひとつの妥協
そのG20サミットで、トルコのエルドアン大統領が諸国首脳に対し、穀物合意の再開のために露の要求の一部(露の農業製品の輸出に対する西側の制裁に緩和)を飲むよう求めた。Bloombergによればトルコの働きかけに欧米が左右されるとは考えにくい。トルコとしては飽くまで西側とロシアの間でバランスをとり、自らの外交的成果である穀物合意を復活させたい。УП
■林外相がウクライナを訪問
林外相が日本企業の代表団を引き連れてウクライナを訪問、シュムィガリ首相やゼレンスキー大統領と会談した。
・シュムィガリ首相「ウクライナの主権および領土一体性に対する日本の支援に感謝する。その財政および人道支援、対ロ制裁に。日本からはこれまでに21億ドルのマクロ金融支援を受けた。今後も協力を続けていく」。他、住宅の再建、グローバル食料安全保障、中小企業支援、人道的地雷除去(24機のクレーンが日本から供与されるという)、通信、インフラ、医療といった方面での協力の可能性が討議された。УП
・ゼレンスキー「本日、安全保障に関して非常に重要な成果があった。安全の保障に関する日本との二国間文書の準備を開始することで合意した。米英カナダとは既に作業を行っているが、これに日本も加わった」。ほか、ウクライナの復興と発展、電力、交通、地雷除去、社会部門、新規雇用の創出、通信(※このあたりの話を楽天の三木谷氏としたのであろう)、情報保護、インフラ保護、グリーンエネルギー、機械、農業といった話題が持ち上がったとのこと。УП
■ブダーノフ語録
情報総局のブダーノフ長官がまた私のようなやつが取り上げたくなることを言う。
・長期にわたる戦争になるとは思わない。これは情報総局が有している情報(主として敵側の)の分析に基づく個人的見解だ。露には物理的に長期の戦闘を行う力がない。ちなみに半年とか一年を「長期」と呼ぶのだとしたら、むろんその語法によれば長期戦になる。УП
・冬が来てもウクライナの反転攻勢は終わらない。「寒さと湿気と泥で困難にはなるが、何らかの形で戦闘行為は続く。反転攻勢は継続する」У
9/8
■魔の冬(電力インフラ破壊)
・ウ軍ナエフ将軍によれば、露の電力インフラに対する攻撃は9月末ないし10月諸島にも始まる可能性がある。
・概してウの対空装備は昨冬よりも充実しており、(探知・撃滅)効率の向上が見込まれる。パートナー諸国供与の防空システムに期するところが大きく、すでに配備されているドイツの防空システムGepardを中心に、それでカバーできない間隙を米供与の大口径機関銃たとえば米M2 Browningが埋めるという。
・ただし露はドローン生産力を高めており、これをミサイルと併用してウの対空防衛力を攪乱する可能性がある。米専門家サミュエル・ベンデットによれば、ウはドローン攻撃に対してよく防備を整えているが、敵ドローンの数量は増大傾向にあり、懸念なしとはしない。とはいえ露は無人機の千単位の生産という目標にはなお遠く、増えるといっても微量だ。
・ゼレンスキーによれば、昨8月、露はイラン製自爆ドローン「シャヘド」を2000機あまり飛ばした。
・米軍事専門家らの試算では、「シャヘド」は1機2万ドル。ウが昨冬使っていた西側供与の対空ミサイルはこの数倍値が張った。だが上述のGepardは弾1発あたり僅か1000ドル。より「経済的」だという。УП
■未明のドローン攻撃(第5次)
オデッサ州へ20機のシャヘドが飛び、うち16を撃ち落とした。被害不詳。УП
■黒海を開け、船を守れ
・シャルル・ミシェル欧州理事会議長が改めて露による海上封鎖と人工飢餓の惹起を非難した。「今この瞬間もロシアは主権国家ウクライナに対する攻撃を続けている。人々を殺害し、街々を破壊している」「ロシアの戦争はウクライナを遥か越え出て南アジアの人たちの生存まで脅かしている。2億5000万人が喫緊の食糧危機に直面している」「ロシアは穀物合意から離脱し、黒海を封鎖し、ウクライナ諸港を攻撃している。目を覆いたくなる醜聞だ」「こんなことが続いてはならない。商船が黒海への自由なアクセスを回復し、グテーレシュ国連事務総長のイニシアチヴに則り、3200万トンのウクライナ産穀物をとりわけ発展途上国の市場に届けなければならない」УП
・以上が基本として、ではどうやって海を開き船を守るか。英テレグラフによれば、ここ数週間、英王立空軍がウクライナから穀物を輸出する貨物船を保護しているらしい。黒海に実際に空軍機を飛ばしてロシアの活動を監視するとともに、ロシアによる民間船に対する不法な攻撃を抑止していると。なお英国は11月に国際食料安全保障サミットを開催する。テーマは「食糧安全保障の欠如と栄養失調の原因究明」УП
■ウメロフ、最高司令部会合メンバーに
大統領令で最高司令部会合および国家安全保障国防評議会から前国防相レズニコフが外され、新国防相ウメロフが加わった(УП)。ウメロフこんな顔の奴

■情報総局:ロシア本国のピンイント破壊でドミノを起こす
ウ国防省情報総局報道官によれば、情報総局にはロシア本国の破壊目標のリストが存在する。「軍事施設、軍需工場、補給拠点と、目標は夥しい。そのすべてに番号が振られており、それぞれの目標の重要性が測られ、優先順位がつけられている。狙いすました破壊によって露のポテンシャルを低減し、ドミノ効果を起こす――すなわち、ある工場の破壊によって、その製品に紐づいていた軍事製品が作れなくなる、というふうに」УП
9/7
■オデッサ州西部港湾ドローン攻撃(第4次)
未明またしてもオデッサ州西部イズマイル地区に自爆ドローン攻撃。この5日で4度目。港湾インフラに被害、2人が負傷。飛来シャヘドは全33機、うち25機撃墜。УП、УП、УП
■ルーマニア、シャヘド破片の自国領土への落下をNATOに報告
ルーマニアが露シャヘドの自国領土への落下(4日)についてNATOに報告した。ストルテンベルク事務総長「露の故意の攻撃とは見られない」УП、УП
■ゼレンスキー、新国防相をお披露目
国防省にてウメロフ氏の就任式が行われ、ゼレンスキーがいま国防省が直面している課題を素描した。官僚主義から脱却、実効的なデジタル移行。また、スピード感。国防の最優先課題が戦争である現在は、変化を瞬間的に起こす必要がある。「煩瑣な手続きに兵士たちの時間とエネルギーが奪わるようなことがあってはならない。電子化できるものはすべて電子化し、廃止できるものはすべて廃止する」「兵士の処遇について新しい哲学が必要だ。人間は消費財ではない。彼らの時間と力は国家の価値だ」「社会からの信頼を強化するための実効的な改革も必要だ」「ウメロフがこれらの課題によく対処できる人材であることを信じている」УП
ゼレンスキーは晩方の国民向け定例ビデオメッセージでもウメロフ氏を紹介。「強く、組織的な(системный)人物。国防のことを熟知している」「開戦当初から武器供給に関する交渉に携わっている。非常にセンシティブな交渉だ。そして結果を出してきた。捕虜の解放交渉にも従事している」「彼なら国防省の活動をリセットしてくれる。それが今まさに必要なことだ」УП
■ドイツの少年は嘘つきだった?
1日付で紹介したドイツにおける「ウクライナ語迫害」の事例、関係者の証言でだいぶ印象と異なる実相が明らかになった。従来説(少年の主観そして虚証に依拠した):ロシア語を話す男性がウクライナ語を話す少年を橋から突き落とした言語的憎悪に基づく殺人未遂事件。新説:掘割の中で児童らがふざけて汚い言葉を言い交していたのを男性が見とがめてロシア語で話しかけたところ児童らと男性の間で口論になり、10歳少年が鉄の支柱を伝って掘から上がろうとしたところ男性が彼のTシャツをつかみ、(少年の主観では)水に突き落とすような格好になったが、掘割の水は深さ20㎝程度であり、「落ちた」という表現も当たらない。少年が当初事態を大げさに言ったのは、遊びの過程で服が汚れて足に傷を負ったことで両親に叱られるのを恐れたためだという。言語の相克が背景にあったかどうかについては深追いせず、これで一件落着ということになりそう、だそう。УП
9/6
■空襲
5→6日の夜、33の飛翔体(ミサイル8・ドローン25)がウクライナを襲い、うち25を撃墜。またしてもオデッサ西端イズマイル地区が攻撃を受け、民間人1人が死亡した。УП、УП
■ルーマニア側にドローン残骸が落ちた?
4日のオデッサ州イズマイル地区へのドローン攻撃でドローンの一部がルーマニア側に落ちた落ちない問題に新たな展開、ドローンの破片と思しい物体がルーマニア側で発見された。ルーマニア大統領「この破片がロシアの無人機の一部であることが確認されたなら、この状況は絶対に受け入れがたいものであり、ルーマニアの主権および領土一体性に対する深刻な侵害である。早急かつプロフェッショナルな鑑定を求める」УП、УП
■ウメロフ、国防相に就任
議会の承認を受けウメロフ氏が国防相に就任した。就任演説で下記を宣した:①軍事生産力の向上の推進②F-16戦闘機を最大限活用するためのインフラの整備③全部局における監査の実施④徴兵システム改革(電子召集令状の導入、兵役適格者の統合リストの稼働、軍医委員会の全活動の電子化)УП、УП、УП
■また冬がくる
夏過ぎて冬遠からずということで、冬季の電力準備をテーマに最高司令部会合が開かれた。「テロ国家(ロシア)の考えうるあらゆることから重要インフラを保護するための総合計画」が討議されたとういことだ(ゼレンスキー、УП)
■凶弾
ドネツク州コンスタチノフカの中央市場が白昼ロシア軍の砲撃を受け17人が死亡、32人が負傷した。УП
■プリゴジンの死は確定ではない
ウクライナ情報総局のユソフ報道官によれば、ナンバー2のウトキンの死は100%だが、プリゴジンの死にはなお疑問の余地があり、事実の確定には今少し時間がかかる。УП
9/5
■徴兵逃れの手段としての入学
リサヴォイ教育科学相によれば、ウクライナでは25歳以上の男子学生が急増していて、21年比で5万5000人増えている。学生というステータスが兵役免除の事由になることから。この関連で、いま議会では30歳以上の学生に対する兵役免除の撤廃に関する法案が提出されており、リサヴォイ氏もこれを支持している。УП
■ルーマニア大統領「ドローン落ちてない」
例のウクライナとルーマニア間のライン割った割ってない論争で、あちらさんはついに大統領が出て「ライン割ってない」と断言した(УП)。ウクライナ側はその後目立った声明を出していないところを見ると、たぶん実際にあちらに落ちてはいないのだろう。
9/4
■オデッサ州にドローン攻撃(2日連続)
4日未明、32機のシャヘドがウクライナ各地に飛来、うち23機撃墜(УП)。オデッサ州は前日同様、州西端部(イズマイル地区)が狙われ、17機を撃墜するも、数機の着弾を許した(УП)
その撃ち洩らしたものの一部が国境を越えてルーマニアに落ちた/落ちないという話で一種奇妙な論争が持ち上がっている。ウクライナ側は国境警備・外務省・外相レベルで「ルーマニア側に落ちて爆発した」と主張しており(УП、УП)、ルーマニア国防省および外相はこれを明確に否定している(УП、УП)
※巻き込みたいウクライナと巻き込まれたくないルーマニアと。9/3の地図を見てもらえば分かるが、露が狙ってきてるのはウ/モルドヴァ/ルーマニアの国境が集中している地帯であり、リスキーな攻撃ではある。あるいは、それだけルーマニアが舐められているともいえる。とあるルーマニア青年の言葉を思い出す――NATOの圏域にもコアと周縁とある、ブリュッセルにとってルーマニアは今も緩衝地帯に過ぎない(「流亡の記」参照))
■トロ首脳会談
トルコのエルドアン大統領が露ソチでプーチンと会談したが、主たる議題である穀物合意への露の復帰について、双方は合意できなかった。「露は黒海穀物イニシアチヴへの早期復帰の準備がない」とエルドアン(УП)
※私の中ではつながった。たぶん露のこの2日のオデッサ州西部港湾インフラ攻撃は、トルコとの首脳会談を前に、露の穀物合意復帰の重要性(露ぬきの穀物輸出はあり得ないといういこと)を思い出させることにあった。というのも、頃日、露の禍々しい恐喝をよそに、外国商船のウクライナ諸港の利用がぼつぼつ始まってしまっていたから。露としては、露の穀物合意復帰の価値を吊り上げておいて、その見返りに、西側から制裁緩和を引き出したい。私のたちば:西側はじめ世界は、食物危機を兵器として使う陋劣、公の海を私し一人主人としてふるまう傲慢に、改めてテロ国家としての露の本質を見、このようなテロ集団とは一切の交渉を行わず、諸国共同の庇護のもと粛々と商船の運用を続けるべきだ。
■レズニコフ国防相辞任
レズニコフが議会へ辞表を提出した。声明で、国防相として550日の戦争を戦い、占領地の50%余りを解放したこと、パートナー諸国から武器支援を取り付けたこと、NATOとの接近、「調達部門における改革」、「自動化された兵員運用システムの導入」を成果として誇った。一方、次期国防相に内定しているウメロフも現職を辞すべく議会に辞表を提出。交代の準備が整いつつある。УП
9/3
■オデッサ州にドローン攻撃
3日未明、オデッサ州西端(モルドヴァ・ルーマニア国境至近)のレニ港にイラン製自爆ドローン「シャヘド」が大挙飛来した。ウ空軍発表では25機飛来で22機撃墜、つまり3機を撃ち洩らし、港湾インフラに被害、民間人2人が負傷。УП

隣接するブルガリア・ガラツ市(レニから25km)の市民は4~5度にわたり「地獄のような爆発音」を耳にしたということだ。「『ウクライナは平穏だ』などという愚劣な陰謀論じみた言説を流布する輩を黙らせるに十分な轟音であった」とある市民はSNSで。УП
この日ゼレンスキーは仏マクロン大統領と電話会談、その中で、「穀物回廊」の安全な運用と、オデッサ州の安全の強化について、個別に議論がなされたということだ。УП
F-16は春に翔ぶ
レズニコフ国防相によれば、F-16は来春にも実戦投入される(УП)。※ウクライナ語の一般的な用法として「春」は345月
レズニコフ更迭
ゼレンスキーが定例ビデオメッセージで明言:レズニコフ国防相の解任が決定された。後任は国家財産基金のルステム・ウメロフ総裁。「アレクセイ・レズニコフは550日余りの全面戦争を過ごした。国防省は新たなアプローチを、また軍・社会との新たな協力関係を必要としている」。今週中にも議会の承認にかけられるという(УП)
動画中、レズニコフへの評価あるいは労いの言葉なし、一連の汚職スキャンダルとの関連性も明かされず。
9/2
オデッサの日
9月2日はオデッサの日。1792年のこの日にロシア皇帝エカテリーナ2世がオデッサ港開設の詔勅を出したことをもって市の創建とす。みたいな人口に膾炙した語りはこの間にキャンセルされた(その端的な表現としてオデッサ中心部からエカテリーナ女帝像は撤去された)はずだったが、他に日もないので。
ゼレンスキーも定例ビデオメッセージで言及。「我々はオデッサを破滅から守った。我々はオデッサに安全を取り戻す。オデッサはいつだって、心軽く幸せな気分でいられる街だった。これからもそんなオデッサであり続ける」「オデッサは南部の支えだ。黒海の支柱だ。過去も今後も、ウクライナという国そのものと同様、グローバルな意義をもち続ける街だ。世界各地の人々の生活がオデッサにかかっている。つまり、オデッサ港を通じた、ウクライナ産品の輸出に。オデッサは文化都市であり、誰にとっても面白い街、一人一人を尊重することができる街だ」УП
ОЖ(オデッサライフ紙)が道行く人に「2月24日以後オデッサは変わったか?」と尋ねた。5人が5人ともウクライナ語で回答した(そのこと自体に驚く。だが「できればウクライナ語で」と誘導されていると思う。BGMもあいまって、芝居がかっている(作り物くさい)とすら感じる)
或る:そんなに変わらない。観光客や外国人が減った。全体として人が減った。でもいかなる戦争もこの街の精神は変えられない。都市生活はストレスフルなものだがこの100万都市は負の気をすべて海がさらってくれるので快適。だが晩に沿海通りを散歩する習慣とオペラ劇場のライトアップがなくなったことは寂しい。エカテリーナ2世像もなくなったが、それは結構なことだ。
或る:大きく変わった。もともと人らは善良だったが今は団結と相互扶助が一層強まった。その一方、人々は明るさを失った。分かりきった話だ、笑ってられる場合ではない。戦時中なのだ、ということをオデッサの人たちは忘れていない。ここにも敵との戦いがある。戦争が始まるとすぐに皆一致協力して土嚢を積み上げた。オデッサに「無関心な人」などいない。ミサイル攻撃でわが街の美しい建築が破壊されたことに大変な憤りを感じた。だが耐え抜こう、打ち勝とう。
或る:多くのオデッサ市民がウクライナ語に移行していることを嬉しく思う。人たちの距離が近づいた気がする。SNSでも、リアルでも。ウクライナの人は皆オデッサのことを心配している。今は国中がこんな状況だから、安全は感じられない。オデッサの人たちは絶えずストレスにさらされている。それでも戦争を耐え抜くことができているのは、内的状態のお陰だ。オデッサには元気の粒子みたいなものがあって、これが各人の心にあるから、立ち止まらないで前に進み続けることができる。自分たちの人生を生きることができる。
或る:人は確実に変わった。価値観が新しくなった。以前は金が欲しいとか旅行どこ行こうばかり考えていた人たちが、自らの生は神の掌中にあるという恭倹を抱くようになった。かつて祈ることを知らなかった人たちも、今は勝利を祈願している。私は牧師で2016年に東部(ドンバス地方)に赴き、そこで爆発音を聞いた。それがオデッサにまで来るなんて思いもしなかった。オデッサ人はより機敏になった。当初は空襲警報を無視していたが、敵の攻撃の被害を目の当たりにした今は全然ちがう。
或る:2月24日を境にオデッサは100%変わった。より親ウクライナになった。そのことの大切さが明らかになり、需要が生じた。とはいえそれ以前が全然違ったと考えるには及ばない。30年来のオデッサ市民だがずっとウクライナ語で話している(オデッサでウクライナ語を話すのはよそから来た奴だけだ、と言われないようにこれを言う)。この方向性は正しいと思う。エカテリーナ2世像の撤去に始まるこの動きを継続しなければならない。オデッサ市民は戦争を忘れない。つい二週間ほど前に私がかつて住み今も両親が住んでいる家の隣にミサイルが飛んできた。オデッサは事も無しなどと言う人は敵に味方しているに等しい。オデッサは勝利のために励んでいる、他のウクライナの街と同じように。ただ一つこの街で変わらないもの、それは、違法建築の横行だ(訳注:オデッサのとりわけ臨海エリアでは富裕層の夏期の中長期滞在を当て込んだホテル/高層マンションの粗製濫造が問題になっていた)。それは戦前もあったし、今もなお行われている。でも市当局の腐敗にメスを入れるのは戦争に勝ってからだろう。
ウクライナの長い槍
射程700kmの長射程国産ミサイルの実験成功の話が昨日あったが、今度はダニーロフが射程1500kmの超長射程ミサイルに触れた。いわく、2020年に承認された国産ミサイル・ドローン開発計画が実を結びつつあり、今に700kmどころから、1000-15000km離れた標的も国産兵器で攻撃できるようになる。あわせてダニーロフは、ロシア本国の施設でウクライナ軍の攻撃の標的になるのは軍事施設(軍事製品の工場など)だけであり、石油加工工場その他施設の爆発はウクライナ軍の管理外のロシア人パルチザンの手によるものである、と強調した。УП
戦況
いまウクライナ軍は南部において敵の第一防衛線を突破して第二防衛線にかかるところだが、タルナフスキー南部作戦司令官によれば、露軍の第二防衛線は、第一防衛線より格段に脆弱である。露軍は第一防衛線の構築に時間とリソースの6割を割いており、第二および第三には2割ずつしか割いていない。結局のところロシアの頼みの綱は第一防衛線の地雷原であり、それが突破されたいま、ロシアは優位性の大部分を失ったといえる。とはいえ「勝利が近づけば近づくほど困難さは増す。なぜか。悲しいことだが、(突破の過程で)最強・最良のものを我々は失うからだ」УП
9/1
■さらに2隻が出航
「ロシアの穀物合意からの離脱」を骨抜きにする。さらに2隻の外国商船(船籍はリベリアおよびマーシャル諸島)がウクライナ南部諸港から出航した。これで都合4隻。УП
■ウクライナ語の迫害
ドイツの某所でウクライナ語で会話していた児童の一団に行き会った推定40代の男(ロシア語話者)が「ロシア語で話せ」「戦争を始めたのはウクライナだ」などと難癖をつけ、児童らに暴行を働き、10歳男児を橋から突き落として頭部ほかに傷を負わせた。УП
※ある場所ではロシア語が迫害され、ある場所ではウクライナ語が。でも世界にどちらが足りないか、と言われれば、やっぱりウクライナ語への保護の方が足りない気がする。ロシア語話者のその「亜種」に対する優越意識の発露に私自身そこかしこで遭遇したし、先生に聞いたら、斯界では名門とされる私の母校で、ロシア語学習者は数としては減っていないという話だ(そしてウクライナ語を新たに教えようという動きも知る限りない)
■ロシアの最中枢に主戦派はほとんど残っていない
情報総局のブダーノフ長官が国内テレビのインタビューで述べたところでは、ロシアで真に決定権をもつ人たちの中に戦争賛成派は数少なくなっている。誰もが理解している:これは失敗であり、止めるなら早ければ早いほどいい、と。УП
※ブダーノフがこういうこと言うときは「事実を伝える」ことより「状況を創りだす」ことを志向している、と受け取るようにしている。つまり、プーチンとその取り巻きに、王様は裸なのではないか、という疑心を植え付けることを狙っての発言であると。
■プスコフへの攻撃はロシア内部から?
そのブダーノフの発言。衝撃を呼んでいる30日の露プスコフの飛行場へのドローン攻撃だが、ドローンの出発地はロシア国内だそうだ(УП)。これなども、さすがに今回はそうでしかあり得ないだろうな、と思いつつ、成程そのように言えば効果的であろうな(だって攻撃の起点については何も言わないこともできたのにあえて言ったのだもの)とも思う。
■不法出国者は本国に送還する?
ウクライナ議会における与党「国民のしもべ」の会派長ダヴィド・アルハミヤによれば、兵役義務者でありながら兵役不適格の証明書を偽装して外国に逃れたウクライナ人は、本国に送還される可能性がある。現時点でウクライナの警察当局に外国まで手を伸ばすことはできないが、ウクライナ刑法典に則った「国際的な法的援助」への取り組みが非常に活発化している、とのこと。УП
※日本にいるウクライナ避難民の中にも違法な方法で出国した人がいる(少なくとも一人知っている)。ウクライナ政府が求めたとき日本政府は本人の意思に反しての強制送還に応じるのだろうか。応じないでほしいが。ウクライナ政府も、戦意ないやつ狩り集めてどうするというの。
8/31
解放作戦の進捗、装備
■NATO事務総長「ウクライナ軍の成果は期待以上」
NATOのストルテンベルク事務総長はCNNのインタビューでウクライナの反転攻勢に対し改めて肯定的な評価を下した。「ウクライナ軍は少しずつ前進している。ロシア軍を撃退し、地雷原含む強固な防衛線を突破していっている。ウクライナが再び期待を凌駕するさまを目撃している。昨年の大規模侵攻開始時点で多くの専門家はもって数週間だと考えた。だが彼らは北(キエフ)を、東(ハリコフ)を、南(ヘルソン)を解放した。そして今また、さらに大きな成果を達成しようとしている」УП
■ウクライナ国産長射程ミサイル
ゼレンスキーによれば、射程700km(!)という長射程の国産ミサイルが成功裏に使用された(УП)。ダニーロフ国家安全保障会議書記も国産長射程ミサイルの実験に成功したと発表(УП)。現有の最長距離が英供与のストームシャドー250kmだから、飛躍的な伸長である。700kmあればオデッサから撃ってもクリミア全域が射程に入るし、ハリコフから撃てばモスクワにも届く。
■ウクライナにはF-16が160機必要
ゼレンスキーによれば、ウクライナにはF-16戦闘機が160機ほど必要である。反転攻勢のためというよりは、市民を守るため、黒海の穀物回廊を守るために。しかし現時点で約束されているのは50~60機ほどに過ぎない。また、飛行士の訓練とインフラの整備には時間がかかるため、実際に戦闘機がウクライナ上空を飛び始めるのは来年初めになる、とも。УП
先にイグナート空軍報道官は、老朽した機体を代替し、航空優勢を確立するためには、ウクライナには128機の戦闘機が必要だ、と述べていた。УП
※戦闘機関連のニュースを見るときこれら数字を基礎にして考えよう
■露軍、「クリル諸島」からウクライナ国境へ対空兵器を移送
露が2020年に北方領土に配備した地対空兵器が撤去された。対ウクライナ侵略戦争に転用するためと見られる。ほか、サハリンの軍事施設に保管されていた旧式の戦車や大砲もウクライナの前線へ送られる模様。トーキョー大学の軍事専門家ユー・コイズミが衛星写真を分析、共同通信が伝えた。УП
■マスメディアの論評は表面的で時に有害
ダニーロフ国家安全保障会議:外国メディアに近頃多く見られる「反転攻勢の遅れ」だの「攻撃の方向を間違っている」だの「戦力を分散させ過ぎている」だの「装備を失いすぎ」だのいう言説がウクライナのメディアにも伝えられ、また露プロパガンダに盛んに拡散されているが、こうした論評はあるいは時代遅れの、あるいは未検証のデータを根拠としており、しばしば表面的で、場合によっては有害である。このような戦争は第二次世界大戦以来初めてであり、この間に技術や兵器は著しく変容した。いま戦場で、またウクライナで起こっていることは全く新しい事象であり、その帰結はすぐには可視化しない。УП
他
■レズニコフ国防相、解任?
レズニコフ国防相が近々解任されるという話がある。後任は国家予算基金のウメロフ総裁になるとか。当のレズニコフは駐英大使に据えられる見込み。政府内の情報としてУПが伝えた。国防相の選任権は大統領にある。УП
■戦後のウクライナにはバリアフリー化が必須
ゼレンスキー「ウクライナ社会は戦争で身体に障害を負った膨大な退役軍人および市民を抱えることになる。ウクライナは模範的なバリアフリー社会とならなければならない。これには国と自治体が共同で取り組んでいく。その際、世界各国の経験の粋が参照される」УП
※体感では現状のウクライナ……少なくともオデッサは最悪のアンチバリアフリー環境だが、日本と違って相互扶助の精神が浸透しているので健常者が進んで手を差し伸べる(あるいは障碍者が助力を請うことをためらわない)ことでなんとかなっている。だが戦争の後遺症で膨大な障碍者が発生するという指摘に成程と思った。日本は戦後復興のフェーズで、この方面でも大いに貢献できるのではないか。
8/30
後方攻撃(露→ウ)
29→30日の夜、ウクライナ各地を44の飛翔体(ミサイル28発、攻撃ドローン15機)が襲ったが、うち43を撃墜した(УП)。オデッサ沖で海上発射式の巡航ミサイル(カリブル?)8発を撃墜して爆発音が鳴り響いたとのこと(УП、УП)
首都kキエフでは撃墜片が大手スーパー「アシャン」に落下して爆発が生じた(УП)
後方攻撃(ウ→露)
情報総局の作戦で露プスコフの軍用飛行場にドローン攻撃が行われ、軍用輸送機4機が損傷した。露ウ双方が確認している(УП、УП)
プスコフめっちゃ遠いが。いよいよ不可能事なくなってきた。エストニア領内からの攻撃が疑われてもおかしくない距離だが参戦ととられかねない行動にエストニア政府が同意することはさすがにないであろうと某(УП)

BBCによれば、ロシア本土とクリミアに対する攻撃は今年入ってから190回以上行われている。ウクライナ側は自らの攻撃であることを認めたり認めなかったりだが、基本的な綱領はゼレンスキーのかつての声明に示されている:「露本土へのっ攻撃は不可避であり、自然であり、絶対的に公正なプロセスである」УП
↓これまでどこに攻撃が行われてきたか

また、露独立系メディアによれば、ウクライナの特務機関は開戦から今日までに露/クリミア/ベラルーシ各地の9つの飛行場で24機の航空機を破壊または損傷させることに成功した。УП
8/29
世論調査
キエフ国際社会学研究所が6月に行った調査の結果がこのほど明かされた。УП、УП、УП
■ウクライナはこれからどうなる?
ウクライナの未来をどう思うか、との問いに、「良くなる」と答えた人が66.1%、「悪くはならないが、良くもならない」19.3%、「悪くなる」10.8%。

昨年6月また12月と比べると「良くなる」が10ポイントも下がっている。悲観勢が増えている。
■ウクライナの現状に満足してる?
いまウクライナで起きていることに満足しているか、との問いに、「満足している」と答えた人が10.2%、「満足と不満が半々」が25.5%、「不満」が59.7%。こちらも悪化している。

■右か、左か?
政治信条的にいうとあなたは何者?との問いに、「社会主義者または共産主義者」と答えた人が3.7%、「社会民主主義者」8.5%(この2者を「左派」とする)、「リベラル」6%、「国家民主主義者」13.7%、「国家主義者(ナショナリスト)」18.8%(この2者を「右派」とする)、「その他」6.4%、「分からん」43%。

左派と右派の比率は1:3。今回約19%を占めた「ナショナリスト」は露の大規模侵攻以前は3-4%の水準であり、全体として比重が右方に遷移している。
■私は誰?
自分というものを一言で定義するなら?「熊谷市民」「埼玉県民」「首都圏人」「日本人」「アジア人」「世界市民」と色んなレベルの帰属母体を用意して当てはまるものを選ばせたところ、「ウクライナ人」が圧倒的多数(79.5%)であった。

黄色が21年10月、赤が22年12月、緑が23年6月。黄色(侵攻前)時点でのアイデンティティ狭域自治体民(最上段。「俺は熊谷市民だ」)および広域自治体民(二番目。「俺は埼玉県民だ」)の減少分がちょうど国民(上から三番目。「俺はウクライナ人だ」)の増加分に当たっている。あと、自己規定「ソビエト市民」の人(下から4番目)の減少分がちょうど「欧州市民」(下から3番目)の増加分に等しい。このかんにどこが引っ込んでどこが出っ張ったか分かりやすい。
■戦争はいつ終わる?
戦争は「あと数か月で」終わるという人、9.4%。「半年から1年」という人、34.3%。「1年以上」42%。(赤が22年12月、緑が今)

段々と人たちが戦争の長期化を覚悟していっている。
■勝利とは何か
ウクライナにとって戦争に勝利するとはどういうことか(ロシアの攻撃が完全に停止する、というのは当然のこととして)?この問いに83.5%が声をそろえて「全領土の返還」と答えている。この場合の全領土とは91年国境、つまり、クリミア半島含む。

暑いウクライナ
この夏はウクライナも暑い。28日、各地で観測史上最高気温を記録した。

ニコラエフの38.5℃はえぐい(熊谷か)。隣のオデッサは34.8℃とまぁまぁ。30日あたりから気温は下がっていくそうだ。
プーチン10月訪中
児童誘拐魔プーチンが国際指名手配を受けてより初めて外国を訪問する。中国だ。10月の「一帯一路フォーラム」に参加する。
大規模侵攻始まって以来プーチンの外国訪問は隣接する旧ソ連諸国とイランに限られていた。なおプーチンの最後の訪中は22年2月、侵攻3週間前。北京冬季五輪に合わせての訪中だった。УП
8/28
ロボチノ解放、シャヘド、冬服スキャンダル、プーチンThe real nowhere man.
ロボチノ解放
言われていたことだが、このたびウクライナ国防省が確認した:ザポロージエ州の要衝ロボチノが完全に解放された。こらからトクマクを目指してさらに南下を進めていく。ひたすらに頭が下がる。マリャル国防次官は「南部こそ進攻の主要な方面である」とも明言。
なお東部では、バフムートを「蹄鉄状に」取り囲んでおり、市の南北の高地(既にウクライナ軍が押さえている)からさらに進軍して包囲を狭めつつあると。УП
シャヘドの組み立ては既にロシア国内で行われている
最近数回の攻撃で使用されている「シャヘド」(イラン製自爆ドローン)を分析した結果、すでにその最終的な組み立てがロシア国内で行われていることが分かった。現時点でロシアには同種のドローンを一から製造する力はないとみられるが、実際の生産力はいかほどなのか、どこで組み立てを行っているのか、どの企業が部品を供給しているのか、ウクライナの情報機関が情報収集に努めている。УП
国防省「冬用上着」スキャンダル
ウクライナ国防省が安価な夏用上着を高価な冬用上着の名目でトルコ企業より購入し、差額はどこへ行ったの発注側の担当者が着服したのそれとも受注側のトルコ企業のオーナーの一人に名を連ねているウクライナ議会議員の甥っ子が着服しちゃったの、という問題。
・レズニコフ国防相は改めて、報道は誤りで、納品されたのは飽くまで冬用の上着だと主張(УП)
・その冬用上着、オンラインショップで同じ型のものが国防省による購入価格の3分の2~半額以下で販売されているらしい(УП)
・国防省付属の汚職対策社会評議会によれば、今回の購入は「いささかの瑕疵はあったものの、基本的には規定通りに行われた」との評価。トルコ企業と某議員の家族の関係については調査中であると(УП)
惨めなプーチン
プーチンは9月半ばのG20ニューデリーサミットに出席しない。代わりにラヴロフ外相を派遣する(議長国インドのモディ首相談、УП)
プーチンは8月トルコを訪問する予定であったが果たせず、エルドアンの方が来週ロシアへ飛ぶことになった。ソチで首脳会談が行われるという。主たる議題は穀物合意へのロシアの復帰の可能性(УП)
ロシア大統領府は24年春のロシア大統領選挙におけるプーチンの対立候補の選定を進めている。選定の重要な基準の一つは「50歳以下でないこと」。あまり若すぎるとプーチンが相対的に爺さんに見えてしまうからという。УП、Meduza
8/27
プリゴジン死亡確定、ゼレンスキー語録、戦況点描。
プリゴジン死亡確定
露の捜査委員会が分子遺伝学検査のすえ死亡した10人全員の身元を確認。プリゴジン(とNo,2のウトキン)の死亡が確定した(УП)。あとは葬儀にプーチンが参列するしないでまた一波あって、コメントが出るなら出て、でもう蓋であろう。「複雑な運命の男、過ちも犯したが、有能なビジネスマンであった」で蓋棺事定。
ゼレンスキー語録
ゼレンスキーのインタビュー番組が放送された。その語録。
■超長期戦というシナリオ
戦争も色々だ。イスラエルは戦争中といえる。我々も、人的損失を抑えながら、長期の戦争を行う用意がある。そのようなこともあり得る。イスラエルの例に倣い、犠牲を最小化しながら。УП
■ロシアに攻め込むことはない
(ロシア本土で戦闘行為を行う用意はあるかとの問いに)それはリスクが大きすぎる。我々は確実に孤立(=国際的な支援を失う)する。УП
■クリミア解放は戦闘によって、それとも交渉によって?
ウクライナ軍がクリミアとの境界まで迫ったとき、政治的手段によるクリミアの脱軍事化が可能になる。ブダーノフ(情報総局長官)はときどきクリミアに「出張」に行ってるが。(※当のブダーノフは、クリミアは「複合的な方法により」解放する、と述べている。逆に、軍事を含まない方法によっては、解放は不可能であると)УП
■2024年には選挙を
大統領および議会選挙を24年に実施したいのは山々だが、実現は困難である。
自身(19年就任)の大統領任期は24年に切れる。だがウクライナ法は戦時中の選挙を禁止している。とはいえ米国は戦時中でも選挙を行うべきとの立場であり、選挙の問題は米国の支援を左右する問題になりかねない。ゆえに選挙は実施したいが、そのためには①法改正②外国からの資金援助③国際的なオブザーバー④在外避難民の選挙権保障が必要である。
②について:言葉は悪いが、借りた金で選挙をするつもりはない。兵器のための金を吸い取って選挙に投じることもまたしない。法がこれを許さぬ。だがもし皆さん(パートナー諸国)が財政支援をくれるなら、また議会がその必要性を認めるなら、早急に法律を改正しよう。
③について:(どうしても選挙を、というのなら)リスクを共有しようではないか。どうやって? オブザーバー(選挙監視団)に塹壕に入ってもらう。選挙の正当性のためには(全土隈なく選挙が行われ、また兵士たちも投票権を行使せねばならず、したがって)オブザーバーを前線に送り込む必要がある。
④について:欧州をはじめとする諸国が総勢700万人の国外避難民に投票を行わせる環境を整備しなければならない。ウクライナにはそれはできない。だが避難民から投票権を奪うわけにもいかない。УП
■他
大統領権限の強化を含む政体変更・憲法改正は国民投票による民意の支持によってのみ成立する(УП)。かつて資本の急速な蓄積の時代にオリガルヒの手に渡った一部戦略的エネルギー施設は再国有化されるべき、冬季の電力供給安定のために(УП)
戦況点描
・敵後方への攻撃、または敵後方での策動。露クルスクの飛行場へウ軍のドローン攻撃、敵機・敵ミサイル発射装置に損害を与えた模様(УП)。また、ベルジャンスクの工場で大規模火災、原因不明、同工場に露軍が兵器を運び込んでいたとの情報あり(УП)
・制海権闘争の焦点、ボイコ鉄塔。クリミア西沖・オデッサ南沖の海上にある石油ガス採掘プラットフォーム(おおよそ下図の位置)、これは有効に支配すればヘリポートやミサイル基地として利用できるものだそうで、それをめぐる両軍の戦いが続いている。УП、Meduza

なお、このちょっと西に蛇島がある。蛇島は現在ウクライナ軍が管理している(筈)。で、ボイコ鉄塔の方は、クリミア占領当局が経営する「黒海石油ガス」社が稼働中とのこと。
・導爆索。南部進軍において地雷原の突破がどのように行われているか。第36海兵旅団が戦場の動画を公表した。専用車両から索状を放出して、一列で地雷を起爆する。УП
導爆索すごぉいというより、美しき平原が露の完全に無意味で馬鹿馬鹿しい侵略によって黒煙のちまたと化していることへの憤り。
8/26
■航空機事故
北部のジトミル州でウ軍の訓練機2機が衝突し、パイロット3名が死亡した。うちの1人は名うての凄腕飛行士で(コードネーム:ジュース)、いまウクライナは悲願のF-16取得にようやく漕ぎつけつつあり、その操縦士の1人となるはずだったジュース氏の喪失がことに惜しまれている。ゼレンスキーもコメントを出し、今次の戦争における同人の功績を讃え、事故の原因究明を誓った。УП、УП、УП
今週のロシア語:авиакатастрофа(航空機事故)
■国防省スキャンダル
ウクライナ国防省にまた汚職スキャンダル。①УП(ウクラインスカヤ・プラヴダ)の調査報道で下記が報じられる:とあるトルコ企業がウクライナ国防省より「冬用上着」18万着の対価として3000万ドルを取得したが、実際に国防省が取得したのは「夏用上着」で、その値段は数倍に吊り上げられていた。当該トルコ企業のオーナーの一人はウクライナ議会の「国民のしもべ」(与党)会派議員の甥っ子で、当該議員は議会の「国家安全保障・国防・情報」委員会のメンバーであった。②この報道を受け、同じ与党会派の汚職対策委員会議長ラジナ氏が国家汚職対策局(NABU)に調査を求める意向を示した。③これを受け、レズニコフ国防相、もし嫌疑が事実に反しており、実際に納品されたのが夏用でなく冬用上着であったなら、ラジナ氏は議員職を辞し、また当該報道を行ったУП記者は退職し3年間記者活動を自粛するよう求めた。УП、УП

一生に一度くらいは『スキャンダル』の語なしに記事を書いてみたらどうだろう。
かような記事の読者が半減し、かつ記事が有害でなく、有益なものとなるよう願う。
夏用上着(冬用でなく)の購入に関する情報を拡散する全ての記者に請う:裏付けのない記事を削除し、国防省の公式的な立場を明らかにし、事態の解明を待つことを。
レズニコフはこう言うが、正直こちらとしては、УПみたいなところが気骨と独立性を保ち政権批判をちゃんとやってくれている方がどんだけ安心か知れない。
■オデッサからまた船が
オデッサ港からヴァルナ(ブルガリア)港へリベリア船が出航した。露の穀物合意離脱以後、商船のウクライナの港からの出航は2件目。УП
■ウクライナはなぜロシア本土にドローンを送り込むのか
NYT:この夏、ウクライナによるロシア本土(モスクワ中心部含む)への攻撃は頻度を増した。背景にあるのは反転攻勢の遅れである。一連の攻撃は露の軍事ポテンシャルを棄損してはいないが、エスカレーションを引き起こしてもいない。戦略的目的が何かあるとすれば、さしずめウクライナの兵士および国民の戦意の強化であろう。УП
■ウクライナの新生児命名事情
2023年上半期、ウクライナの赤ちゃんにどんな名前がつけられたか。法務省が人気の名前を明かした。
女児:アナスタシヤ、ヴィクトリヤ、ダリヤ、エヴァ、ズラータ、エカチェリーナ、ミロスラワ、マリヤ、ソフィヤ、ソロミヤ
男児:アンドレイ、ボグダン、ウラジーミル、ワシーリイ、ダニール、イワン、マトヴェイ、ニコライ、アレクサンドル、ヤロスラフ
(ロシア語発音に準拠)
ふつうに聖名目録(святцы)にある名ばかりで新味はない。ウクライナ人やロシア人の名前については何丘のこの記事が評判高い↓
8/25
オデッサ攻撃(未遂)、反転攻勢の現況、プリゴジンとワグネル(その後)。
オデッサ攻撃(未遂)
25日未明、露ミサイル4発がオデッサ州を襲ったが全弾撃滅した。黒海から「Kh-59」2発、アゾフ海から「カリブル」2発、またアゾフ海沿岸から「シャヘド」1機が飛来したが、全て撃墜。УП
反転攻勢の現況
ダニーロフ国家安全保障会議書記「困難な歩みではあるが、一日一日、全土解放へと前進している。敵は強力だ。なるべく兵員が死傷しないような方法で、計画に則って作戦を進めている」УП
ウォールストリートジャーナルによれば、米ウ高官は数週間にわたり「遅い反攻」を活性化する戦術・戦略について議論を続けている。米側の認識では反攻の時間はまだ尽きてはおらず、ウクライナ軍は成果を挙げるに手遅れということはない。ザルージヌィ総司令官も米側に対し「突破まであと一歩のところまで来ている」と言っている。とはいえ米側からは厳しいことも言われており、①反攻を行うには現今の支援で十分②来年も同じ規模の支援を行うのは望み薄③ウクライナは戦力を分散し過ぎている、との指摘があり、これを受けてウクライナ側は戦術を修正したとのこと。УП
米CNNによれば、ウクライナ軍は南部(ザポロージエ州含む)で露軍の第一防衛線を突破したと見られるそうだ。「南部前線ザポロージエ方面でウクライナ軍が露軍の第一防衛線を突破し戦略的要衝であるトクマクに向かって陣地を拡大している兆候が多く見られるようになっている」УП
プリゴジンとワグネル(その後)
ベラルーシの自称大統領ルカシェンコ:①自分は別にプリゴジンの身の安全を保証したわけではない②今度の一件にプーチンは不関与③ワグネル兵はベラルーシに留まり続ける。「私はプーチンを知っている。計算高く、冷静で、人事についてはより零細な問題でさえ決断を下すに慎重な男だ。これをやったのがプーチンだなどとは想像しがたい。逆に、もしそうなら、あまりにも乱暴で、素人じみた所業だ」「ワグネルはベラルーシで生きているし、生き続ける。駐屯地の解体を示す衛星写真などというものは……多すぎたからだ。要らない分を解体した。必要なだけ残している。1万人の兵力が留まり続ける」УП、УП
ペスコフ露大統領府報道官、プーチンはプリゴジンの葬式に行くかと問われて「大統領閣下は多忙である」。プーチンの関与については「西側メディアの完全なでっち上げ」УП
【個人の見解】
ルカシェンコはワグネルを私兵として手元にとどめて隣国への影響力を維持したい意図が見え見えだが、ワグネルという組織にプリゴジン死亡の際のある種の行動計画があったことは多分確実で(というのもプリゴジンはそもそも陣頭指揮型のリーダーで前線視察を繰り返し死亡の危険と常に隣り合わせであり、「乱」失敗後は暗殺の可能性を当然に危惧しただろうから)、ワグネル兵がベラルーシに残るかどうかは、その行動計画にそう記されているかいないかの問題でしかない。私が一番こうだったら素敵だと思うのは、プリゴジンが準備していた死後計画の発動によって、ウラジーミル・プーチンの過去数十年の闇の所業を暴露する文書が一挙全世界公開されることだ。とはいえFSBも馬鹿ではないから、そうした芽はしっかり摘んでいるかもしれない。「乱」から2か月の奇妙なプリゴジン生かしは、ワグネルの非常時計画の全貌を露当局が探知するための期間だったかも。それでプリゴジンだのウトキンだの殺しても大丈夫そうだと見極めがついたから、あのタイミングでやった(ついでにスロヴィキンも更迭した)のかも知れない。と思った。
8/24
ウクライナ独立記念日、プリゴジン横死。
プリゴジン横死
プリゴジンのビジネスジェットがモスクワからペテルブルクへ向かう途上で墜落、搭乗者は全員死亡した。搭乗者名簿にはプリゴジンの名もあり、プリゴジンはほぼ確で死んだものとみなされている。墜落の様子(Meduza)↓
【本当に死んだのか】
搭乗者名簿に名前があったとて、本当に乗っていたかどうかは。暗殺の不安は常にあっただろうし影武者もいたっぽいので、これ乗りますよと申告しておいて実は別便で飛ぶくらいのことはしそうなものだ。ワグネル機は2機あり、プリゴジン以下幹部らが乗った先発機は墜落したが、後発機は無事であった(УП)。とはいえFSBそこまで節穴だろうか。
あるいは、ある種の密約により、10人を人身御供にプリゴジンは「死に」、以後は変名で単に生物学的にのみ生きながらえるのかもしれない。(この場合はしかし、多分、その状態を「死んだ」と表現して差し支えない)
【どうして墜落したのか】
内側から爆破された説と、ミサイルで撃墜された説がある。西側情報機関は爆破説に傾いている模様(УП、УП)
【プーチンの関与は】
・プーチンが動画で弔意を述べている。語りだしは「第一報によれば」ワグネル職員が搭乗していたようだ、と慎重であったがプリゴジンについては確定的に死亡したものであるかのように終始過去形で語り、自ら暗殺指令を出したことを語るに落ちているという印象。
・米バイデン「ロシアではあらゆることが起きるし、あらゆることの背後にはプーチンが立っている」「私が彼(プリゴジン)なら乗り物には気を付けただろう。起こったことの真相は不明だが、(死亡したとして)驚きはない」УП
・ISWレポートによれば、プーチンの指令があったことはほぼ確実。逆にショイグやゲラシモフがプーチンの命令なしに撃墜を行えるとは考えにくい。なお、同じ24日に親ワグネルの露軍司令官スロヴィキンの更迭が報じられたことは偶然の一致でなく、要するに露政権はこの日をもって先の反乱の清算を行ったのだろう。УП
【個人的な感想】
心にポッカリ穴があいた。単純接触効果というやつで、いつかこのウクライナ戦争最大のトリックスターに愛着を覚えていたらしい。その理屈でいえば、こんなにその死を願っているプーチンも、死んだらやはり心にポッカリ穴が開くんだろう。

プリゴジン死亡(説)をめぐって早速たくさんのミームが作られた。これも一種の「心の穴をふさぐ」試みなのだろう。左上から時計回りに、「ショイグ、ゲラシモフ、俺はどこだ!?」(※墜落現場を指して。元ネタは「弾薬はどこだ!?」)「ウクライナのドローンがモスクワに飛来したときのロシア対空兵器(寝てる)→プリゴジンのビジネスジェットが飛行した際のロシア対空兵器(覚醒)」(※モデルはシャキール・オニール)「プリゴジン、コンサートの時間だよ!」(※ヨシフ・コブゾン。「ロシアの北島三郎」。故人。隠語で、死ぬことを「コブゾンのコンサートに行く」という)「本日の戦果:エヴゲーニイ・プリゴジン1体」(ウ空軍の定例発表のもじり)УП
【個人的な見解】
十中八九、死んだものと思っている。十中十、指令を出したのはプーチンその人。いっぱい殺してきたが、また10人ほど殺したというわけ。利心と忖度に支配された宮廷内に「皇帝陛下のご友人」を一存で始末できる者などいない。これまでのジャーナリスト暗殺などはさておき、今回ばかりはプーチン自身の裁可なしにはあり得ぬ。殺すことでしか自身を保てない醜悪な狂王。
【余波】
ベラルーシのワグネル駐屯地が解体され、兵員が次々ベラルーシを出国している。УП、УП
クリミア上陸作戦
独立記念日にブダーノフが大きめの花火を打ち上げた。情報総局が海軍と共同で特殊作戦を実施、特殊部隊をクリミアに上陸させた。場所は東端のエレノフカとかマヤクのあたり(下図)、一時ウクライナ国旗が翻り、交戦が勃発し、占領軍の人員・装備が損失を出したが、自陣は人的損失なしとのこと(УП、УП、УП)。全くすげえことをする。そんなことが可能なのか。

情報総局のブダーノフ長官によれば、今次のオペレーションの目的はクリミア住民に対し「解放の日は近い」というメッセージを送ることであった。こうした作戦は今後も続き、果ては全領土を解放すると(УП)
今回の作戦の新しかった点は人間を上陸させたということで、これまでクリミアへの攻撃は無人艇(海洋ドローン)による港湾・橋・船艇の爆破に終始していた。とはいえ無人艇による攻撃も、当然に続けていくそうだ。「カミカゼ海洋ドローンは7割ほど撃滅されるが、3割ほどは標的に到達している。ドローンは豊富にある」とブダーノフ(УП)。また、「露ははクリミア大橋をウクライナの水上ドローンによる攻撃から守るために船を故意に沈めて防塁と化しているが、この戦法は昔ながらのもので、かつ昔ながらに無効である」、とも。УП
独立記念日
8月24日はウクライナの独立記念日。ゼレンスキーは国民向けビデオメッセージで年頭の言葉を繰り返した。「全面戦争に小事なし」(У великій війні немає маленьких справ)
ウクライナの独立、は私には大きすぎる話だ。「ウクライナに栄光を」と叫ぶことも、私はしない。心に適わないことは私はしない。ただ、戦争が一刻も早く終わってほしい、ウクライナの人たちの生活が守られてほしい、いわれなき破壊を免れてほしい、とは、真率に願う。
全面戦争に小事なし――自分にできること、を再び探し始めようか。