ウクライナ戦争側面史Ⅳ

オデッサ/ウクライナ/ロシア

ウクライナ戦争の経過を毎日観察するページ。観察しつつ、感じ・考えるための材料にしていただければ。

原則毎日、基本的に午前中に、前日分を更新する。ネタ元は主としてУП=ウクライナ・プラヴダ。私の基本的な立場は次の3定言に集約される――「戦争は生活の破壊である」「Russia, STOP THE WAR」「Крим — це Україна」。

「ネコ」と称する記事に拙ブログの更新状況(本記事含む)また本記事の裏話をまとめているので併せてご覧いただきたい。YouTuberにたとえれば、本記事がメインチャンネル、「ネコ」がサブチャンネルである。

※本記事は同趣旨の記事の第8弾です。先行記事:オデッサ(ウクライナ)情勢、現地報道まとめ(2022年3/15~6/28)続・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(6/30~9/22)続々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(9/23~12/31)続々々・オデッサ(ウクライナ)現地報道まとめ(2023年1/1~4/27)ウクライナ戦争側面史(オデッサを中心に)(5/15~8/2)ウクライナ戦争側面史Ⅱ(8/24~11/30)ウクライナ戦争側面史Ⅲ(2023年12/24~2024年3/17)

5月2日

■すきびつ
英エコノミスト紙のインタビューで情報総局副長官スキビツキーが色々語った。

・ロシアにはウクライナ不安定化「3層」計画がある。①戦場での優位確立・拡大②ウクライナ不安定化工作(5月20日に形式上大統領任期満了を迎えるゼレンスキーの正当性に疑義を挟む等)③国際舞台でのウクライナの孤立化(スイス平和サミットの破綻工作など)。これが激化する5月こそ極めて重要な月となる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/3/7454040/
・戦場の戦闘のみでウクライナが戦争に勝つ見込みはない。このような戦争は交渉によってしか終結し得ない。仮に遠い将来ウクライナがロシア軍を国境へと追い出すことに成功したとしても、それで戦争が終わりとはならない。いま両陣営が行っていることは、いわば潜在的な交渉を前に有利なポジションを占める試みだ。本格的な交渉が始まるのは早くても2025年後半であろう。このときまでにロシアは深刻な「向かい風」にあう。ロシアの軍事生産力は拡大中だが2026年初頭には頭打ちとなる(物資と技士の不足のため)。両陣営とも終局的には武器不足に陥る。もっとも、先に武器が枯渇するのはウクライナであろうが。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/3/7454050/
・チャソフ・ヤール陥落は時間の問題だ。そして、同市が占領されると、ドネツク州内の残りの大都市への道が開けてしまう。今日明日の話ではないが、こちらの弾数しだいだ。ロシアは戦勝記念日(5月9日)を盛大に祝うために何らかの目立った戦果を必要としている。あるいは、5月9日に間に合わなければ、翌週のプーチン訪中までに。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/3/7454051/

■ちゃそふ
AP通信が露軍の猛攻を受け陥落間近と見られるドネツク州チャソフ・ヤールの空撮映像を公開した。緑野と森に囲まれた小邑の「世界崩壊後」の姿。バフムートやアドヴェーエフカを彷彿とさせる。無傷な建物は一つとしてなく、かつて1万2000人が暮らした町は今ほぼ無人。

ロシア軍にとりチャソフ・ヤールの取得は即ち物理的高地の取得となりそこからウクライナ東部防衛の根幹をなす諸都市への攻撃が可能になる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/2/7453921/

■いんふら
米ヘインズ国家情報長官:ロシアはウクライナのインフラへの攻撃を強化している。その目的は①武器・軍人の輸送を困難にする②国防産業を鈍足化させる③交渉の可能性を検討させること。この攻撃的な戦術は今後も続くであろうし、戦争が早期に終わる見込みは薄い。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/2/7454003/

■おです
1日晩のミサイル攻撃でオデッサ市内の民間郵便最大手「ノーヴァヤ・ポーチタ」物有センターが破壊され、15.5トンの郵便物(価額300万グリヴニャ)が灰燼に帰した。

https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/05/2/713203/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/05/2/713169/

■すいす
ゼレンスキー:6月半ばにスイスで開かれるグローバル平和サミットは正義ある世界の回復の端緒となる。グローバルなパワーのみがロシアに平和を強制し得る。そのためには可能な限り多くの国をサミットに招く必要がある。一方で理解しておくべきは、このサミットを破綻させるべく、プーチンはあらゆる術策を尽くすであろうということだ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/05/2/7454030/

4月29日

■オデッサ……

オデッサ沿岸部に夕刻クラスター弾攻撃。5人死亡、30人余り負傷。海沿いに立つ瀟洒なお城(キヴァロフ城、国際人道大学所有)が炎上。この周辺はレクリエーションゾーン、健康増進ランニングコースが通っており長い春の宵を人らそぞろ歩いて楽しんでいた。何丘も訪れたことあり。気持ちのいいエリアだ。クラスター弾頭搭載の「イスカンデル」ミサイル。クラスター弾の使用に「一人でも多く人間を殺す」以外の目的はあり得ない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453517/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453542/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/30/7453612/
(↑こちらの記事内の動画で散弾炸裂の様子がよく分かる)

■攻撃
ドネツク/ザポロージエの両州でウクライナ軍がロシア兵の集積地をピンポイント攻撃。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453402/
そのこともあってか、29日朝のウ大本営発表で、先立つ一昼夜に無害化したロシア兵の数、実に1320人。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453413/

■吉報
ポーランド=ウクライナの国境が封鎖を解かれ全面開通した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453439/

■来訪
ストルテンベルクがキエフに来た。
https://www.eurointegration.com.ua/rus/news/2024/04/29/7184879/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453534/

■ロシア資産
凍結ロシア資産のウクライナ支援転用でウクライナ軍は少なくとも2028年末まで戦争が遂行できる。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/713006/
ドイツは反対。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/713039/

■非戦男性
リトアニア大統領および首相、徴兵適齢のウクライナ男性の本国送還への支持を表明。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/29/7453545/

4月27日

■夜襲
またしてもウクライナの電力施設の破壊を目指した陋劣極まりなきミサイル攻撃。26→27日の夜、ミサイル6種34発、うち撃墜は21発止まり。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/27/7453232/
リヴォフ州に複数の巡航ミサイルと超音速ミサイル「キンジャル」、重要エネルギーインフラ施設2つに着弾、火災。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/27/7453235/
全体で4つの火力発電所が攻撃され損傷を負った。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/27/7453231/

■ウクライナの敗北も勝利も不定の未来
ISW:ウクライナが将来的に全土奪還できるかどうかは西側・ロシア・ウクライナで今後とられる夥しい決定に依存するのであり、あたかも既定の事実であるかのようにウクライナの勝利または敗北を語るような議論は、当事者たちが戦争の経過をいかにダイナミックに変えうるかを無視してしまっている。
米国の今次の対ウ軍事支援はウクライナ全土奪還を可能にするものではない。武器弾薬が前線に届き始めるのが数週間後、それによって戦況がどう変わるか、6月に始まると見られるロシアの‘24夏期攻勢がどのような規模・形態をとるか、その後で行われるであろうウクライナの反転攻勢はまたどのような規模・形態のものとなるか。すべては開かれた未来であり、戦争の最終的な結果について議論するのは余りに時期尚早である。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/27/7453224/

■人殺しの巣窟
英情報当局によれば、ロシアで殺人罪に問われたロシア軍人は23年通じて116人。22年の13人、21年の11人から900%増となっている。
また、特赦兵1万5000人が戦地からロシアへ帰還しており、元囚人190人に対し刑事告訴がなされている。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/27/7453274/

4月25日

■男よ帰れかし軍(いくさ)へ:独
独当局は「ドイツで在留資格を取得ないし更新する際に必ずしも有効なウクライナ旅券を所持している必要はない」との立場。また、在ドイツのウクライナ大使館/領事館がウクライナ市民に対する旅券の発給を「軍務に服していないことのみを理由に」拒んだ場合、かつまた、当人の国外渡航に相当な必要性が認めれらた場合には、独当局は旅券に代わる国外渡航用の書類を発給しうる、とした。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/25/7452977/
※先のウクライナ外務省決定により徴兵適齢のウクライナ人男性は在外公館で領事サービス(旅券の発給等)を受けられなくなった。不法に出国した潜在的戦力を国内に還流させることを目指した措置。これへの対応が各国で分かれている:積極的に協力する国(ポーランド等)と、恐らくは人道上の配慮から、消極的な国(ドイツ等)と

■男よ帰れかし軍へ:米
米国はこの問題に関しなお立場を一決できていないそうだ。「複雑な問題」、ただし「ウクライナは自らの政策を決定する権利を有す」、とはいえ在米男性のウクライナ送還に米国として協力することの是非は未決。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/25/7453012/
※では、日本はどうする? 日本政府も他人事ではない、当然に判断を迫られる。恐らくはギリまで日和見して最終的には米国に追随するのだろうが、私としては、本人の意思に反して本国への帰還を促すようなことはしてほしくない。不法に出国したものであっても、本来は軍務に耐える壮健な青年男性であっても、本人が日本への居留を継続し・本国に帰還しないことを希望するならば、その意を重んじて、そのまま日本に住まわせてやるべきだ。殺し・殺さない自由は、ある一国の法制とか政策を超えた人間の普遍的権利であると信ずる。

■民主主義への夢と絶望
米ギャラップ社による国際調査で、「民主主義は欠陥があるかも知れないが、それでも最良の統治形態である」と考えるウクライナ人は64%で、41か国中の第6位(スウェーデン、オーストリア、ドイツ、スペイン、スイスに続く)。なお最下位は日本。また、「わが国は人民の意思によって指導されている」と考えるウクライナ人は44%で、全体の11位。日本は下から5番目。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/25/7452948/

4月24日

■Thank you, America!!
待望のウクライナ支援法が米国で成立した。総額610億ドル(9.5兆円)。23日に上院可決、24日にバイデン大統領が署名。調印後の会見でバイデン「支援供与が即時に行われるよう自ら監督する。これから数時間以内にウクライナへの武器発送が開始される。防空ミサイル、砲弾、弾薬、装甲車などがこれに含まれる」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452795/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452796/
米国防総省によれば、軍事支援の第一便(通算56便目)は総額10億ドル。細目も発表されている(割愛)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452800/
今次の軍事支援には長距離ミサイルATACMSも含まれている由(射程・弾数不明)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452814/
なお、このほど判明したところでは、米国は本支援法の成立に先立ち3月時点で既にウクライナにATACMSを隠密供与しており、しかもウクライナ軍は既にそれを露標的に使用していた。これは米バイデン大統領が3月に承認した総額3億ドルの軍事支援(PDA方式=米大統領権限による在庫武器供出)に含まれるもので、「相当に多数の」ATACMSが供与され、ウクライナ軍はこれを過去に少なくとも2回――4月15日のザポロージエ州ベルジャンスク攻撃、4月17日のクリミア攻撃(前線から165km離れた地点)使用。米大統領府によれば、同兵器の供与のきっかけとなったのは、露による北朝鮮製ミサイルの使用、ならびに露によるウクライナ民生インフラへの大規模攻撃。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452810/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452825/
米大統領補佐官(安全保障部門)サリヴァン先生の慚愧:支援の遅れによりウクライナは半年の間弾薬の節約を余儀なくされ、結果、東部の一部領域――アヴデーエフカ含む――を失うことになった。追加支援の承認には余りに多くの時間がかかった。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452824/
ゼレンスキー:半年を議論と疑念のうちに徒過した。この半年の穴埋めに最善を尽くそう。この間に露侵略軍が成し得たこと・プーチンが今かかえているプランを、のしをつけて返却しよう。ありがとう、アメリカ!
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452807/

■露の侵攻プラン(チャソフ・ヤール)
ISWによれば、米国からの支援が到着するまでの今後数週間、ロシアが注力すると予想されるのは、①ドネツク州チャソフ・ヤール(ひいてはドネツク州全域の制圧)を目指した地上侵攻、②ウクライナ軍の地上補給の寸断を目指した輸送インフラ・武器庫などへのミサイル/ドローン攻撃。先に露「国防相」ショイグが「ウクライナの補給破断を目指した攻撃を強化する」意向を示していた。補給路を破壊すれば米国からの軍事支援の前線への到達を遅らせられる、との目論見。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452671/
チャソフ・ヤールの地理的重要性について下図参照。赤破線がチャソフ・ヤール市。バフムート攻略後の露軍は支配域を西に拡げてドネツク州全域を掌握したい。その際の足掛かりになるのが同市である。ここを制すればスラヴャンスク、クラマトルスク、コンスタンチノフカ、ドゥルジコフカといった都市への西進が格段に容易になる。露軍は象徴的な日付である5月9日(対独戦勝=「ファシストからの解放」記念日)までにチャソフ・ヤールを制圧することを目標に掲げている。露プロパガンダはこの日までに歴然たる戦果を上げることを渇望している。

ВСУ: Захват Часвого Яра упростит россиянам наступление на другие города Донецкой области
Если россиянам удастся захватить Часов Яр в Донецкой области – у них появится возможность начать наступление на Константиновку, Дружковку, Краматорск и Славянск...

■オデッサ
24日早朝、オデッサ市内の軍用廃車保管庫がミサイル攻撃を受けた。女性一名負傷、兵員に損失は出ていない由。(上記、露侵略プラン「補給路の破断」を参照のこと)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452703/

■燃えろよ燃えろ、ロシアのアブラ
再びウクライナによる露本土の石油関連施設攻撃。スモレンスク州の石油基地2か所で爆発。

Дроны СБУ поразили две нефтебазы в Смоленской области РФ – источник
Беспилотники Службы безопасности Украины поразили две нефтебазы в Смоленской области России.

■電力
電力不足が続いていたが、24日晩の時点でキエフ/オデッサ/フメリニツキーで全戸復旧。ハリコフではなお20万戸が停電。17~22時の間はヘルソン州を除く全国で工場の電気使用に制限がかかる。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/712867/

■露プラン:平和サミット壊乱
ゼレンスキー:スイスで6月15-16日に行われる平和サミットを破綻させるべくロシアは具体的な計画を練っており、その詳細をウクライナの情報当局は関知している。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452803/

■戦わない男は助けない
閣議決定により、在外公館(各国のウクライナ大使館)における18~60歳の男性へのパスポート発給が禁止された。ただし、合法に出国した者については禁止の対象とはならない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452811/
ポーランド国防相が「徴兵適齢の男性のウクライナへの送還に協力する用意がある」と述べた。「多くのポーランド人が、ウクライナ支援のためにどれだけ力を傾注しなければならないかという話を聞く一方で、ウクライナの若者がホテルやカフェで安穏としているのを見て、憤然としていることと思う」
欧州統計局によれば、今年1月時点でEU域内には430万人のウクライナ人がおり、うち86万人が成人男性(このうち相当数が不法出国者)。ポーランドは95万人に一時避難民のステータスを付与しており、ドイツに次ぐ第2位の戦争難民受け入れ国。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452830/
※実際どのくらい影響があることなのだろうか。また、適法性は、人道上の帰結は? 不法出国であっても成年であれば旅券をそもそも所持していないということはなかろうので、新規発給というよりは、旅券の期限切れ/紛失の際に、更新また発給を拒否するということであろう

■露軍事当局高官にスパイ容疑
露「国防省」副大臣イワノフが収賄容疑で逮捕されたが、実は収賄でなく国家反逆罪(対敵通謀)ではないかという疑惑が生じている。ウ情報総局内が3月に行ったサイバー攻撃で同局はイワノフ所管の機密文書を大量に盗み出すことに成功しており、そのことと関係があると(ウ情報総局内の情報)。イワノフの汚職についてはそれはそれとして公知の事実であったがお目こぼしにあっていたところ、国家反逆が確信されるに至ってプーチン直々に逮捕命令を出したらしい(露大統領筋の情報)。いま露政権中枢は、同人の「国防」副大臣という重要ポストに鑑み、これを収賄で押し通すのか、正式に国家反逆罪へと格上げするのか思案を重ねているところと見られる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452765/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/24/7452740/

4月23日

■支援(米)
米国の対ウ支援で供与される兵器の大半は既にドイツとポーランドの倉庫に入っており、法案が可決すれば即座にウクライナに供与できる態勢にある。CNN報道(米の公式発表ではない)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452566/

■支援(英)
予告されていた通り、スナク英首相がポーランドを訪れ、大型の対ウ軍事支援を発表した。内容は昨22日付を参照。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452601/

■夜襲
22→23日の夜、弾道ミサイル2発とシャヘド16機が飛来。うち後者15機をニコラエフ/オデッサ/キエフ/チェルカッスィの各州上空で撃墜。オデッサでは9人が負傷、うち4人が子供、14住戸が損傷。
と、言うは簡単だが……実際どれほどの恐怖であるかを思うべきだ。暗夜の強襲。

時はこれに無感覚になることを、忘却を、あまつさえ、この破壊をもたらすもの(ロシアという国)への宥和を、人に促す。これに抗し続けること。人間として許すべきでないことに対し、正当に瞋恚をたぎらせ続けること。何丘ブログはたとえばその目的に使うべし。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452483/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452475/

なお、この夜の攻撃にロシアはやや新味のある戦術を用いた。異なる間欠性で複数の方角に1-2機ずつシャヘドを飛ばし、撃墜を困難にするというもの。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452519/

■電力不足
電力不足が丸一日以上続いている(23日昼時点)。家庭の電力需要がピークを迎える18~22時はオフィス・工場(軍需除く)は電力使用が制限される。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/712766/

■ハリコフ
ハリコフのTV塔損傷によりハリコフおよび近郊の諸集落ではTVのデジタル放送が受信できない状態が続いている。※22日の攻撃で露ミサイルが250mのTV塔の140mのところに着弾し、塔の上部が崩落した。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/712764/

ISWによれば、ロシアはハリコフからウクライナ各地へ百万人の国内難民を溢れ出させる目的で、ハリコフへの物理攻撃および情報作戦を激化している。ただ、ウクライナが米国からの支援を早期に取得できた場合には、ロシア軍のハリコフへの地上侵攻については見込み薄であろうと。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452478/

■キエフ
キエフは今年も川開きしないそうだ。ドニエプルのビーチで甲羅干しするのがキエフ市民の夏の楽しみであったが「戦況に鑑み」「多くの人が日光浴中に防空警報が鳴った場合に十分なシェルターが確保できないため」昨年・一昨年と同様、ビーチシーズンをオープンしない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452515/

■在外ウクライナ男性
クレバ外相の命令により、徴兵適齢の男性は在外公館(各国にあるウクライナ大使館)の領事サービス取得が制限される。「国家の存亡がかかっているこのときに戦場で戦う義務を忌避して外国に落ち延びている者にその国家から領事サービスを受け取る権利はない」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452530/

4月22日

ウクライナにとってよい流れが生じている。米支援成立の見込みが立つと英国も「史上空前の支援」を発表、欧州の支援も弾みがつき、「ウクライナをこのまま敗北させない」という方向に西側が大きく舵を切った観がある。これは心強い。だけに、支援の到着までに急速に地歩を築くため近々でロシアが攻勢を活発化させるとの予測にも強い信憑性を感じる(一度取られると取り返すのが指南であることは23年夏季反攻で明証済み)

■支援(米)
・ゼレンスキーとバイデンが電話会談。長距離ミサイル「ATACMS」の供与について合意した。ゼレ:4つの優先課題がある。①防空②弾薬③長距離ミサイル④支援のスピード。今日の成果はATACMSに関する全面合意だ。ありがとう大統領、ありがとう議会、ありがとうアメリカ!
※射程なんぼのATACMSが供与されるのかは不明。300kmという超長射程が売りの兵器だが、先に米から供与されたのは射程160kmにセーヴされたヴァージョンだった(23年10月)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452457/
・米議会両院の代表団がキエフを訪れ、支援法案の可決が遅れたことの説明を行った。いわく、現法案はもともと上院が準備していた法案の改善版である――米国内のロシアの凍結資産を徴収やTikTokの非中国企業への売却要請などといった点を新たに盛り込んで超党派の合意を得ることにこそ時間がかかったのだと。今日の米国議会では物事はあまり急速には進まない。そのことが遺憾である、云々。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452451/
・ISW:米支援が早期に到着すればウ軍は露侵攻を抑制し得る。先に米議会上院諜報委員会長は「米議会上院を23日に可決し米大統領が24日に調印すれば、来週末までにウクライナにATACMS含む軍事支援が到着する」と述べていた。またゼレンスキーは「米国の軍事支援が早急に到着すればウクライナ軍は前線を安定化させイニシアチヴを取り返すことができる」と述べている。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452312/

■支援(英)
スナク首相が火曜ポーランドを訪れウクライナへの史上最大の軍事支援を発表する。その中には船艇60隻、長距離ミサイル「ストームシャドー」はじめ各種ミサイル(地対空含む)1600発、弾薬400万発、装甲車400両が含まれるという。英政府発表。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/23/7452471/

■支援(EU)
チェコ主導の弾薬供与とドイツ主要の防空設備供与の二軸で進んでいる。
まず前者につき、対ウ弾薬支援の第一便は5月末~6月頭に実施される見込み(ボレルEU外相談)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452428/
ドイツ主導の対ウ防空支援の方も参加国が増加していっている。22日はノルウェーが参加表明。またスウェーデンも、現状では財政面でのみの協力だが、パトリオットそのものの直接供与も排除されないと同国国防相。当のドイツはパトリオットを「最早期に」ウクライナに供給する意向。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452370/
https://www.eurointegration.com.ua/rus/news/2024/04/22/7184353/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452393/

■住宅
ロシアの侵攻により22年2月以降ウクライナで損壊した住宅の床面積は5000万平方m(1512万5000坪)に及ぶ。侵攻前のウクライナの住宅新設テンポは年1000万平米だったそうで、5年かけて作る分を2年で破壊した計算になる。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/712747/

■テレビ塔
ハリコフのテレビ塔がミサイル攻撃を受け損傷、TVのデジタル放送が寸断した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452449/

■ゼレンスキー語録
ゼレンスキーが仏メディアHugoDecrypteのインタビューに応じた。
・五輪休戦
仏マクロン大統領(パリ夏季五輪ホスト)提唱の五輪休戦について:その現実性を信じない。侵略者(※ロシア)は約束を決して守らない。エマニュエル(マクロン)も分かっている。彼自身がその証人だ。我々はノルマンディーフォーマット(ウクライナ東部紛争調停の枠組み)でともに働いたし、ミンスクプロセス(同)もともに経験した。フランス、ドイツ、ウクライナ――我々は皆、「ロシアが相手である限り、紛争の凍結などはあり得ない」ということの、生きた証人だ。プーチンの辞書に休戦の二字はなく、奴を掣肘できるような権威は存在しない。五輪も同様だ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452425/
・徴兵年齢引き下げ
27歳→25歳に徴兵年齢が引き下げられた(4/2大統領調印)ことについて:「2年間戦いっぱなしの部隊と交替できる部隊を準備する必要がある。そしてその部隊は、よく訓練された健康体から成る、立派な部隊でなければならない。兵士への敬意は人後に落ちぬが、どうしたって25歳の兵士と50歳の兵士とは異なる。頑健でかつテクノロジーに明るい若者が戦争には必要なのだ」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452419/

■ブダーノフ語録
情報総局長官ブダーノフ:5月半ば~6月頭にかけウクライナは深刻な状況に置かれるが、壊滅的な結末とはならない。前線だけでなく、ウクライナ全体のことを言っている。ロシアは複合的なアプローチを用いるから。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/22/7452332/

■世論調査
ロシアの公式メディアないし反体制メディア、また楽曲といったロシア語コンテンツを全く聞かないというウクライナ人は、全体の69~79%に及ぶ。逆にウクライナ語による楽曲その他ウクライナ語コンテンツへの関心は高まりを見せているという。24年1月後半、18歳以上のウクライナ在住者(被占領地除く)1200人に聞いた調査。
https://life.pravda.com.ua/society/vid-69-do-79-ukrajinskoji-auditoriji-vidmovilasya-vid-rosiyskogo-kontentu-opituvannya-301195/?_gl=1vrqpkf_gaMTkzNDUzNzMyOS4xNjk2Mjk1Mjg2_ga_6ELQ7YCNBS*MTcxMzgzMjM0MS42LjEuMTcxMzgzMzE5Ny4xOC4wLjA.

4月21日

■米国の対ウ支援
・米国のウクライナ支援法案は本23日に上院の審議にかけられる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452202/
・ISW:米国の対ウ支援が上院可決→大統領署名→ウクライナ到達→前線到達するまでに数週間はかかる。露はこの間隙をついて攻勢を強化するであろう。この間ウクライナはさらに戦況が悪化する見込みだがだが、①近く支援が届くことが分かっていればウクライナ側も備蓄を使い切る覚悟で戦える②物量差が拡大し続けたこの6か月間ロシア軍は僅かな成功しか収め得ておらず、今さら前線が崩壊するような突破は見込み薄であろう。ウクライナとしては、ひとまず支援の第一便の到着までを耐え凌げば、6月にかけて戦術的な状況を大幅に改善することができるだろう。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452210/
・米議会下院議長ジョンソンが何故ウクライナ支援の妨害者から一転、自ら法案を提出して対ウ支援の成立を主導するに至ったのか(極右議員による解任動議のリスクを覚悟で)。本人談では、このかん同人はバイデン大統領やCIA長官バーンズ以下安全保障部門の高官ら、またゼレンスキー大統領と一連の会談を重ね、ロシアの戦争犯罪、ウクライナの弾薬不足の現状、プーチンの西方拡大の脅威について認識を深め、キリスト教徒(福音主義者)としての良心が覚醒したと。NYT、УП
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452278/

■ゼレ語録
NBC Newsのインタビューでゼレ語らく、
・米国の支援承認でウクライナに勝機がもたらされる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452275/
・ロシアは5月9日(対独戦勝記念日)までにドネツク州チャソフ・ヤールを占領する計画。だがウクライナはこれを撃退し、露の6月大攻勢計画を頓挫させるであろう。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452296/

■露艦炎ゆ
ウ海軍のミサイル攻撃によりセヴァストーポリで爆発、露黒海艦隊の補給艦が炎上した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452265/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452221/

■オデッサ
21日白昼オデッサの港湾インフラに弾道ミサイル攻撃、4人が負傷。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452240/

■マスクと「出口戦略」
イーロン・マスクが呟いた「自分が最も憂慮していることは(戦争からの)出口戦略が存在しないことだ」。これにウ大統領長官顧問ポドリャク「この手のインフルエンサーの初歩的な論理の欠如に毎度ながら驚く。泣きたくなるほど単純な、現実的かつ客観的な“出口戦略”が存在する。即ち、侵略者が、他の主権国家から、即時撤退すること。すれば戦争の武力フェーズは即時に終結する。いや、分かるよ、単純な真実ほどときに認識しがたいということは。が、繰り返す:誰に惹起されたものでもない、占領・殺人・強奪を唯一の目的とした侵略をなす者が、他国領土から出て、盗んだものを返し、国際法の支配を回復する。これが“出口戦略”だ。これの何が難しい? この外にどんな“出口戦略”を探す/議論する必要がある?」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/21/7452286/

4月19日

短いまとめ。
①暗澹。後方諸都市への空爆が止まらない。各地で住宅ほか民生インフラが破壊され民間人が死傷している。
②快挙。ウクライナ軍がロシアのある種のミサイルとある種の航空機を初めて撃墜した。
③曙光。米議会にウクライナ支援法案採決に向けた動き。

■空爆
18→19日の夜、ミサイル各種22発・ドローン14機による中規模複合攻撃、うち15発・14機を撃墜。史上初めてKh-22ミサイルの撃墜に成功した。6発中2発。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451936/

■撃墜
さらに、Kh-22の発射に用いられた戦略爆撃機Tu-22M3そのものを撃墜した。ウクライナ国境から300kmの露スタヴローポリ地方にて。情報総局ブダーノフ長官によれば「一週間待った」狙い撃ち。これに用いられたのは先に露早期警戒管制機A-50を撃墜したのに用いたのと同一の手段という(УПによれば、即ち、長距離地対空ミサイルS-200改良版)
ブダーノフによれば、Kh-22はこれまで最も多くの破壊を諸都市にもたらしたミサイルであり、露がこの発射点を新たに模索しなければならなくなったことで「オデッサは少しくラクになる」そうだ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451925/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451934/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451946/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452051/

■オデッサ受難
19日白昼、オデッサ州ユージヌィ港に4発のミサイル。農産品ターミナルが攻撃されアジア・アフリカ諸国向け農産品入り容器(サイロ?)が破壊された由。なお、オデッサ州の港湾インフラへの攻撃はこれが第39次となる。総計で215施設・153移動手段・8商船が全損壊。26人が死傷した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452006/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/712663/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452066/

■NATO
ウクライナ=NATO評議会が開かれた。会談後の会見で、
NATO事務局長ストルテンベルク:ウクライナに防空装備が追加供与されることで合意した。NATO全域の現有リソースを洗い出し、ウクライナ支援の余地があることを確認。近く新たな支援が発表されるだろう。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452033/
ゼレンスキー:少なくともPatriot(もしくは同等の装備)が7基必要。これが最低限の数字だ。これで多くの命が救われるし、状況は本当に変わる。頼みます。第二に、久しく言い募っている、百万発の弾薬。これをいい加減戦場に送ってやりたい。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452036/

■米国
CIAバーンズ長官が米議会で演説。「今ウクライナ支援を可決しないとウクライナは年内に敗北する。あるいは、少なくともプーチンが停戦の条件を好き放題に設定することができるようになってしまう。逆に、米国の軍事支援があれば、ウクライナは24年を十分に耐え抜くことができる」。Politicoによれば、これは米政権高官による最も踏み込んだ警告。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451913/

■中国
ブリンケン国務長官が中国を非難。いわく、中国は今、露の侵略戦争に死活的に重要な部品の、最大の供給者である。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7452020/

■ドローン1
ウクライナのドローン開発は(米国が露本土攻撃に苦い顔をするのを無視して)旺盛に進んでいる。中には飛距離3000km、シベリアさえ射程に収めるスーパードローンも開発中という。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451961/

■ドローン2
露採油企業バシネフチが自社製油所をウクライナの攻撃から守るため対ドローンネットを設置したそうだ。巨大な鋼鉄の網で製油施設を物理的に覆ってしまうというもの。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/712636/

■さよならナターシャ
南部防衛軍のナタリヤ・グメニュク報道官(女性)が解任された。オデッサ含む南部情勢のスポークスマンとして長らく馴染みの顔であったので個人的に一抹の寂寥。後任は選定中。先に記者150人連名で同人解雇を求める声が上がっていた、いわく、同人は「ロシアの戦争犯罪の報道を禁止している」と。詳細不明。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/19/7451931/

4月17日

■米議会とウクライナ支援法案
長らくウクライナ支援をブロックしてきた米議会下院ジョンソン議長がウクライナ支援を含む対外支援法案を提出した。バイデン大統領はこれを歓迎、可決すれば即座に署名すると宣言。ウクライナ支援は610億ドルに及び、中には長射程ミサイルATACMSの早期供与も含まれる。採決は今週土曜(20日)に行われる予定。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451720/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451716/

■長い槍①ロシア→ウクライナ
17日朝、チェルニーゴフにミサイル「イスカンデル」、17人死亡、60人負傷。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451633/

キエフ北郊、チェルニヒウ(=チェルニーゴフ)

■長い槍②ウクライナ→ロシア
17日未明、ウクライナ軍がクリミアのジャンコイ軍用飛行場の攻撃に成功。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451724/
パルチザン運動体「アテシュ」によれば、攻撃はロシアの最新式地対空兵器S-400に命中した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451658/

■戦況
ISW:米国の支援遅延でウクライナ軍が効果的な防衛作戦を継続できなくなり、ロシアの攻勢に弾みがついている。この傾向が続けばロシア軍は戦術的に重要な成功を収める可能性がある。ロシアとウクライナの間では久しく「イノヴェーションとアダプテーション」、一方が戦術を革新すれば他方がそれに適応する、という競争が行われてきたが、現在はロシアのイノヴェーション(攻勢のタイミング・規模・組成・標的の変幻)に砲弾不足のウクライナ側が対応できていない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451577/

■寒波と電力
ウクライナに春の寒波到来、17日朝の時点で電力需要が前日比6.5%上昇し電力が逼迫している。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/712530/

キエフ10日間予報。左端、花月(=4月)18日木曜、雨、最高気温8度、最低6℃。

■ロシア語廃絶運動
7月17日にウクライナで言語新法が発効し、TV放送におけるウクライナ語使用がより徹底される。以後放送でロシア語は短いフレーズや単語レベルでのみ例外的に使用可能となり、ウクライナ語・ロシア語の二重言語放送は廃止される。タラス・クレメニ国家語擁護全権。
過去には憲法裁判所で「放送における二重言語使用はウクライナ語を唯一の国家語と定める憲法典に矛盾し、国家語で情報サービスを受ける市民の権利への侵害にあたる」との判決も出ている。
なお、現状でも、TV放送については、7~22時までの放送の90%はウクライナ語を用いることが義務付けられている。УП

■ナヴァーリナヤ①ウクライナの過ち
米Time誌のサイモン・シュスター記者がユリヤ・ナヴァーリナヤ(故ナヴァーリヌィ夫人)にインタビューを行った。いわく、この戦争は明白にプーチンの戦争であり、ロシアの戦争ではない。戦争を支持しているのは「攻撃的少数派」のみである。だがウクライナは反戦ロシア人を探すことを望んでいないように見える。なるほど人みな英雄ならず、彼ら(反戦市民)が街路に出ることは望み薄だ。だがこの人たちは、他の様々な手段で闘争に参加しうる。彼らを支援するのでなく、無視を決め込むのは、ウクライナ政府の過ちであると思う。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451699/

■ナヴァーリナヤ②影響力ある100人
同じくTime誌が今年の「最も影響力ある100人」のランキングを発表、ウクライナ関連では大統領府長官アンドレイ・イェルマークとユリヤ・ナヴァーリナヤがランクインした。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/17/7451675/

4月15日

■イスラエルとウクライナ
イランのイスラエル攻撃は2つの衝撃をもたらした。ひとつは大国イランが仇敵イスラエルについに直接攻撃を(それも大規模に)行ったということ。もうひとつは、そこで使用された数百の飛翔体を、イスラエルがほぼ完全に防御し得たということ。撃墜にはイスラエル自身だけでなく、米英などパートナー諸国も参加した。ここで浮かぶ一つの(当然)の疑問――どうして同じことをウクライナではできないか?
・イスラエル軍によれば、イランが発射したのは無人機170機、誘導ミサイル30発、弾道ミサイル120発(計320飛翔体)。このうちイスラエルに到達したのは「数発」。一説(米国政府内の情報)によれば、そもそも弾道ミサイルの半数は発射未遂あるいは標的未着に終わったそうだ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451314/
・米国の中東軍は少なくとも弾道ミサイル6発と攻撃ドローン80機を撃墜した。同じことをウクライナにしてやれないものか?→米大統領府:米国はウクライナの戦争に介入しないし、イスラエルでやったような飛翔体の撃墜を行わない。
https://www.eurointegration.com.ua/rus/news/2024/04/15/7183778/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/16/7451397/
・英空軍機が数機のドローンを撃墜した。同じことをウクライナでも?→キャメロン外相:できない。NATO軍とロシア軍の直接衝突に発展するのを防ぐため。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451328/
・ゼレンスキー:イスラエルの例で、防空における国際協力が可能であり、かつ非常に効果的であることが証明された。同盟諸国の決然たる行動がテロルからインフラを守った。同じような防護がウクライナでも可能なはずだ。イスラエルもまたNATO加盟国ではない。5条(集団自衛権)発動など要らない、必要なのは政治的な意思ひとつだ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451343/
・チェコ欧州相:イスラエルへの夜襲は国際的な防護によって撃退できた。ウクライナの領空防護に同じだけのエネルギーを割けないことが惜しまれる。
https://www.eurointegration.com.ua/rus/news/2024/04/15/7183779/

■露軍の春/夏期攻勢
ゼレンスキー:ロシアの春夏の計画について対外諜報庁と情報総局から重要な報告を受けた。敵は攻勢を強化してくるらしい。我々はこれに応戦する。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451372/

■ロシアの製油所へのドローン攻撃
・ロシアはウクライナのドローン攻撃で損傷した一部の製油所を急速に修理することに成功した模様。石油製品の生産力は3月末の14%減から10%減にまで回復した。なお、ロシアの製油所に対するドローン攻撃は4月2日(タタールスタン共和国タネコ製油所攻撃)を最後に報告されていない。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/712434/
・WP:米ハリス副大統領は2月のミュンヘン安全保障会議でゼレンスキーと会談しロシアの製油所への攻撃を自制するよう要請した。これにゼレンスキーは気色ばんでみせ、「バイデン政権の一致した立場を反映したものか確信が持てない」として、この要請を退けたということだ。
とはいえウクライナは2月以降も製油所攻撃を継続(むしろ加速)した。ウクライナ側の正当化根拠は①製油所はロシアの軍用車両/航空機その他に燃料を供給している②石油産業はロシアの戦時経済の根幹である③油価の高騰と生活費圧迫で市民社会に反戦機運を広げ得る。これを抑制しようとする米側の論理は①油価高騰は米大統領選でバイデン再選にマイナス②同様に欧州の対ウ支援世論にもマイナス③軍事合理性に疑問(ロシアの継戦能力は大して損なわれていないかわり、むしろウクライナのエネルギーインフラ攻撃を誘発し、結果的にウクライナの方が大打撃を受けた)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451334/

■五輪休戦
仏マクロン大統領がイスラエル、ハマス、ロシア、ウクライナ、スーダンに対し五輪休戦を呼び掛けている。特に22年北京冬季五輪のホスト国たる中国の役割に期待が示された。
パリ五輪は7月26日~8月11日開催。4月には聖火リレーがスタートする。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451284/

■テレマラソンは続く
ウクライナでは開戦以来テレマラソンというものが行われている。TV全局がある時間帯に同一の戦時ニュース番組を放送するというもの、番組名は「統一ニュース」。だが、当該番組への信頼性が低下しており(23年12月時点で信頼度43%。22年5月時点の69%から26ポイントも低下――KMIS)、「こんな番組やめて、余剰の資金を軍の装備調達に回したらどうか」という署名活動が行われていた。
これをシュムィガリ首相が一蹴した:情報安全保障は国防政策の立派な一部門であり、統一的な情報発信は情報空間におけるロシアの侵略に対抗するうえで重要。安全保障の或る構成要素から別の構成要素への資金転用は合目的的とは言えない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/15/7451280/

4月14日

■東部戦線急迫
ゼレンスキー:前線の状況、特にドネツク方面はここ数日急迫の度を増している。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451223/
ウメロフ国防相:東部方面の状況は緊迫している。ロシア軍はバフムートからの西進に注力している。我が軍は物量に劣るが効果的にこの計画を破綻させていっている。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451225/
スィルスキー総司令官:ロシアは5月9日(対独戦勝記念日)までにバフムート西郊のチャソフ・ヤール市を制圧し拠点都市クラマトルスクへの足掛かりを作る考えだ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451181/

■膠着状態
WP:ウクライナの空を膨大な無人機が哨戒しており、ウクライナ軍もロシア軍も、これら無人機に発見され殺害されることなしに戦場を移動することはほぼ不可能になっている。安価な小型無人機は当初ウクライナ側に優位性をもたらしたが、のちロシア側もこれにキャッチアップした。ここ数か月どちらの側も大幅な突破を見せていないのはこの点によるところが大きい。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451177/

■夜郎自大
ゼレンスキー:①米議会下院のウクライナ追加支援遅滞と②ロシアが制裁を迂回で来ている現状にテロリストどもは増上慢を深めている。「レトリックで空は守れない、思惟のみでテロ用ミサイル/ドローンの製造は止められない」「日曜未明、イランの攻撃をイスラエルが見事撃退し、最新式の防空システムの効力のほどがまざまざと示された。真の守りとはいかなるものかを世界が目睹した。しかも撃墜はイスラエル一国でなく、同盟諸国が合同で行った。一致協力してこそ最良の守りは成る、とはこういうことだ。同盟諸国はロシアのミサイル/ドローンにも目をつぶるべきではない」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451224/

■世論調査(仏)
世論調査によれば、フランスの若者の2人に1人が「フランスを守るためとあらばウクライナで戦闘に参加する用意がある」そうだ。「確実にそうする」17%「恐らくそうする」34%、計51%。
なお、ウクライナへの言及なしに「フランスを守るためとあらば武器を手に戦争に参加する用意がある」は57%、97年に廃止した兵役義務の復活を合目的的と考える人は62%。
※本調査はマクロン仏大統領の「ウクライナへの西側兵士の派遣も排除されない」発言より前に行われた
https://www.eurointegration.com.ua/news/2024/04/14/7183741/

■乙種合格
先に徴兵検査で乙種合格とされていた人の再受検が5月半ばに始まるそうだ。乙種合格の廃止に関する新法の発効は5月4日で、旧乙種合格者は同法発効から9か月以内(つまり、25年2月4日まで)に再受検が必要とされる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/14/7451212/

4月13日

イランがイスラエル攻撃を開始した。手始めに無人機(シャヘド?)を数十~100機。イスラエルは戦闘準備万端で上空を封鎖した。イランからイスラエルまでの飛行には数時間がかかる。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451143/

スィルスキー総司令官:東部戦線がここ数日で著しく緊迫化している。敵はリマンおよびバフムート方面で装甲車の支援のもと襲撃部隊の攻撃が活発化させ、またポクロフ方面でも戦車・装甲車数十両を使用して防衛線の突破を試みている。乾燥した気候が続き戦車の通行が用意になったことが背景にある。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451087/

ISW:ウクライナの国防産業が十分に成長すれば西側はもうウクライナにさほど武器を供与しなくてもよくなるがそのためには今、西側が防空システムをウクライナに十分備えさせてウクライナの国防産業を守ってやらなければならない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451073/

ドイツがウクライナにパトリオットを1基緊急追加供与する。同じく強力な防空システムであるIris-Tについても追加供与を協議中。ゼレンスキー、ドイツのリーダーシップは顕著であると激賞、他の諸国にドイツに倣うよう呼びかけた。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451122/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451125/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451138/

スハレフスキー総司令官補:24年1~4月のドローン調達量は既に昨年全体の3倍に上っている。その99%が国産。飛ぶものだけでなく、地上を行くものも、海上を行くものもある。飛ぶものに関しては、ロシア深部1200kmというのは、上限値ではない(さらに深部が攻撃可能なものもある)。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451133/

欧州最大の原発であるザポーロジエ原発(ロシアが支配)の原子炉6基が全て冷温停止状態に入った。22年以来初めてのこと。IAEAグロッシ事務局長「この措置を歓迎する。これで同施設の安全性は全体として向上する」
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/13/7451139/

4月11日

■全土空爆
11日未明、大規模攻撃。
・ミサイル42発・シャヘド40機(計82飛翔体)。うち18発と39機を撃墜。つまり24発と1機に着弾を許した。超音速ミサイル「キンジャル」6発は全く撃墜できず。
・標的は明白に各地のエネルギーインフラ。オデッサ、ザポロージエ、リヴォフ、ハリコフ、キエフの5州で発/変電所が損傷。
・状況が最も深刻なのはハリコフ。緊急停電が行われる中、懸命な復旧作業が行われているが、復旧の成否はひとえに「ロシアの次の攻撃がいつ・どの規模で行われるか次第」。ロシアはハリコフをエネルギーシステムから切断する試みを放棄していない。
・特段の被害は、キエフ/チェルカッスィ/ジトミルキエフの中央部3州にとって最大の電力供給源であるトリポリ火力発電所(キエフ南郊)の全壊。国営電力「ウクルエネルゴ」によれば、本発電所の喪失により電力需給は赤字化し、ピーク時間帯には全国の電力消費量を発電量がカバーできなくなる。
・「ウクルエネルゴ」は市民に対し夕刻の電力使用をセーヴするよう訴えている。消費と生産がなんとか均衡するように。
・ゼレンスキー「ウクライナに必要なのは防空システムだ、瞑目と長い議論ではなく。いま・ここで・ウクライナの力によってロシアのテロルを克服してみせなければ、世界はテロを犯罪とは認めないということになる。ロシアが今後もミサイルとシャヘドを飛ばし続けるなら、世界はテロを容認したことになる」
・クレバ外相「パトリオットが十分にあればキエフ近郊のトリポリ火力発電所を失うことはなかった」
・珍帝「ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃も当初目標の“非軍事化”の一環だ。エネルギー施設への攻撃はウクライナの軍産複合体に直接の影響を与える」「また、ロシアのエネルギー産業に対するウクライナの攻撃を受け、これへの報復を余儀なくされたものでもある」」「冬場にこれを行わなかったのは人道的な配慮からだ」(ルカシェンコとの会談で)
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450712/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450711/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450717/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/712279/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/712285/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/712295/
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/712317/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450857/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450866/

■防空システムの死
独Bild紙によれば、ウクライナの防空システム「パトリオット」「Iris-T」用のミサイルは、既に枯渇した。その他の防空システム用の備蓄も完全に、あるいはほぼ使いつくしている。なお、西側諸国の武器庫には、ウクライナにとって死活的に必要な防空システムが百単位、それ用のミサイルが数千発保管されている。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450815/

■オデッサの死者
オデッサの10日の攻撃による死者は5人に上った。搬送先の病院で男性が一人死亡。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/11/7450775/

4月10日(777日目)

■オデッサ受難
4月10日はオデッサ解放記念日(1944年、ナチスドイツからの)。これを祝って新世紀のナチズムが朝昼晩と三次にわたりミサイルだのドローンだの飛ばしてきた。まず早朝オデッサ州の電力インフラおよび交通インフラがシャヘドとミサイル計十数発(弾道ミサイル含む)で攻撃され鉄道員2名が負傷、白昼も複数のミサイルが飛来して一連の爆発音、晩方はとうとう人死にが出た――複数の弾道ミサイルが飛来しうちの一発がガソリンスタンドに命中して爆発、4人死亡(10歳少女含む)、14人負傷。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450527/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450550/
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450659/
https://odessa-life.od.ua/news/rashity-udarili-ballistikojj-po-odesskomu-rajjonu-est-pogibshie-i-tyazhelo-ranenye
https://odessa-life.od.ua/news/raketnyjj-udar-po-odesse-10-aprelya-postradali-zheleznodorozhniki
https://odessa-life.od.ua/news/v-odesse-silnye-vzryvy-rashisty-nanesli-udar-v-den-osvobozhdeniya-goroda

■動員法1
最高会議が10日、追加動員法案の第二読会を開始(=第二審議に着手)した。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450623/

■動員法2
最高会議で受刑者の動員を可能にする新法案が第一読会を通過した。ウクライナの安全保障の根幹に対する犯罪・2人以上の殺人・強姦といった罪状については刑期の減免の対象とはならない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450590/

■米1:露ウの火力差は早晩10:1に
NATO欧州連合軍司令官:米国の支援がなければウクライナの弾薬および地対空ミサイルは早期に枯渇し、戦場におけるロシアの火力優位は現状の5対1から近く10対1にまで拡大する。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450680/

■米2:ウは露の製油所を攻撃すな
米国防総省オースティン長官がウクライナによるロシアの製油所攻撃に公然と苦言を呈した。いわく、世界のエネルギー市場に悪影響を与えると。ウクライナは軍事標的のみに攻撃を集中させるべきだと。選挙の年に国内のガソリン価格が上がってほしくないのは米国も同じ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/7450516/

■スターリンクに代わるもの
英ワンウェブ(OneWeb)社とウクライナ最大手通信事業者キエフスターが提携し、前者の衛星コンステレーションを米スターリンクのそれを補強するものとして後者が使用することになった。先にハリコフが集中砲火を受け電力供給が寸断した際、同市の国営郵便(ウクルポーチタ)のスターリンク利用に障害が生じた。のち、活発な電子戦が行われているエリアではスターリンクが動作しないことが判明。こうした「穴」を埋めるもののとしてスターリンクのライバル企業の同様のサービスに白羽の矢が立った。ワンウェブ社は現在616の衛星を運用、これに先般打ち上げた36機が加わり年内に全地球ブロードバンドが実現する見込み。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/10/712255/

■市民の憩いの噴水さえ
キエフでは節電のため今年大型の噴水は動かさないことになった。たとえば独立広場(マイダン)の大噴水は休眠する。ただし、公園等の小規模な噴水は稼働させる。5月上旬に25か所を起動し、10月いっぱい噴水が楽しめる。УП

4月9日

■モルドヴァ
ISW:ロシアがモルドヴァ不安定化工作に注力している。目的は①モルドヴァのEU加盟阻止②将来のモルドヴァ軍事介入の口実づくり。やり口は、モルドヴァ国内の親露派地域(沿ドニエストル及びガガウズ自治区)の高官らに「モルドヴァ現政権はルーマニアの傀儡」などと発言させる。標的国の現政府(この場合はモルドヴァのサンドゥ政権)を背後の強国(EU)の傀儡と決めつけその主権に疑義を挟むのはロシアの常套手段。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/9/7450344/

■世論調査
ウクライナの人たちの精神状態をうかがわせる。全ウ「心の健康」プログラムの枠内でGradus Research社が行った調査。
①該当してるものにチェックせよ。「ストレスを感じ、あるいは神経過敏になっている」77%「不安や緊張を感じている」52%「気分が悪い、あるいは、夢見が悪くなった」47%「苛々する、怒りっぽくなった」42%「慢性的な疲労感」39%「情緒が不安定」32%「心の調和が乱されている」30%「倦怠感、強迫観念」29%「やる気/生産性の低下」27%「大きな音が怖い」28%「食欲減退」18%「常に泣きたい気持ち」14%
②ストレスの原因は? 「家族の安全が心配」70%「家族との別離が心配」29%「生命を失うリスク」51%「財産を失うリスク」35%「負傷するリスク」28%「仕事を失い収入がなくなるリスク」34%「出国ができないこと」17%「外国に行くのが怖い」5%
③ストレス/ネガティヴな感情をどう克服する?「ネットサーフィン」39%「テレビ/映画/ドラマ視聴」34%「コミュニケーション」32%「家族と過ごす」26%
УП

■徴兵
ウクライナで追加動員を前にした調整が行われている。誰に徴兵が及ぶか、また、誰が徴兵を免れるか。シュムィガリ首相「効果的な国防の要諦は前衛と後衛(戦場と銃後)のシナジーだ。ウクライナを守るのは一義的には軍人、だが軍人の活動は経済が回りインフラが稼働して初めて可能。そこで極めて重要となるのが、兵役義務の免除対象者の、公正かつ合理的な認定だ。ある人が兵役を免除され別の人が免除されない、その点について論理は明快でなければならず、軍内や民間に疑念の生じる余地があってはならない。ゆえに関係省庁に対しては、真の意味でエッセンシャルな職業のリストを、近日中に更新するよう命じる」
※先に文化省がサーカス団員を「エッセンシャルワーカー」認定して徴兵対象外としたことにつき不満と非難の声が出ていた。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/9/7450412/

■発電機
露の攻撃で電力危機に直面したウクライナに対しEUから発電機167個の緊急支援が行われる。すでに発送が行われている由。発電量は各1メガワットで中規模の病院ひとつ分という。
https://www.eurointegration.com.ua/rus/news/2024/04/9/7183381/

4月8日

■電力
ロシアによるウクライナの電力インフラ破壊キャンペーン分析、FT。
・3月22日~29日にかけロシアはウクライナの火力発電所7か所と水力発電所2か所を攻撃した
・それぞれの発電所における被害の規模については詳細未公表。ただ全体として、被害の規模は既に2022-23冬季を超えている
・ハリコフ州を含むいくつかの地域では発電所が「ほぼ完全に」破壊されている
・2022-23冬季との違いは①防御の手厚いキエフを避け、より手薄な地方都市(ただし産業上重要な)を集中攻撃している②攻撃に高価な高精度弾道ミサイルを使用している
ロシアの狙いはウクライナの電力システムに「恒常的かつ修復不能な損失をもたらす」こと
・一部施設は来年の冬まで完全に稼働を停止する可能性がある。民間電力最大手ДТЭК社(自社発電量の8割近くを喪失)「当座の目標は10月までに少しでも多くを復旧すること」
・情報総局によれば、ロシアは今後数週間のうちになお1度ないし2度大規模攻撃を仕掛けるに十分なミサイルを保有しているУП

■徴兵
サーカス団員は徴兵を免除する、との決定が下った。国立サーカスおよびハリコフ、オデッサ、リヴォフなど各都市のサーカス団、ならびに各都市のオペラ劇団は「特別な期間における、経済および市民生活にとって死活的に重要な組織」に該当し、徴兵の義務を免除する、と文化省。УП

■暖房
オデッサは7日付けで中央暖房を停止している。暖房シーズンの終わり。名実ともに春。ОЖ
じっさい今ウクライナだいぶ暖かい。オデッサ10日予報↓

連日最高気温20度越え、そら桜もさくわ。キエフ10日予報↓

4月7日

■枢軸
スロヴァキア大統領選挙で親露反ウ候補が決選投票を制した(53.12%対46.87%)。これで同国は議会多数派も政府も大統領府も一枚岩で親露反ウということになった。УП
ハンガリーのオルバン首相が祝電。УП
EU内に今や親露反ウの国ふたつあり、スロヴァキアとハンガリー、ともに①ウクライナに武器支援は行わない②ロシアとの対話によって戦争の終結を目指すべき、との立場。両国ともウクライナと国境を接する。

■電力
エネルギー相ガルシチェンコ:このままいくと夏場の電力需要ピーク時に計画停電を行うことになる。ロシアのここ数週間の電力インフラ爆撃は大規模かつよく計画が練られたもので、発電・送電ともに被害は甚大であり、現状では実際の破壊の規模を正確に把握することさえできていない(被害総額は数十億ドルに上る可能性もあり)。いまウクライナは損傷したものの代わりとなる電力設備を世界中で探しているが、十分な防空システムがなければ、それも水泡に帰す。УП

■ハリコフ
ハリコフ受難。7日も白昼市中心部にミサイルが。少なくとも4発着弾。3人負傷。УП
ロシアの目論見はハリコフを民間人の居住に適さない「グレーゾーン」に変えること、と英エコノミスト紙。УП
現にハリコフ州の一部地域では住民の強制避難が行われている。УП
ゼレンスキー:ハリコフの空の守りを強化する可能性を探っている。ウクライナの現有防空システムでは明らかに不足。だが実は世界に防空システムは余っている。政治的意思ひとつでその余剰防空システムはウクライナに譲渡されうる。いま「パトリオット」が置かれるべき場所はウクライナをおいてない。УП

■ウクライナへの関心を保つ
ゼレンスキー:ウクライナが世界の関心事であり続けるために各人がかつてなく多大な努力を傾けなければならない。(2024年は)一筋縄ではいかぬ年だ。多くの国で選挙が行われる。ただでさえ紛争と不安定が世界全体へ拡散し続けている中で、それをさらに推し進めようとするロシアの画策まである。УП

■露の夏季攻勢
ブダーノフ情報総局長官:ロシアは晩春~初夏にかけ攻勢を強化すると見られる。逆に、それまで前線に目立った変化は出ないだろう。状況は複雑だが管理できている。УП

■エイスク続報
情報総局内の情報では、露エイスクの飛行場に対する5日のドローン攻撃では、軍用機7機に大小の損傷を負わせたそうだ。УП

■CCホールテロ
露国営プロパガンダTV「第1チャンネル」にて、CCホールテロ発生から2週間半が経過したこのタイミングで、拘束した容疑者の尋問の様子とされる動画が放送された。あるいは耳が半削ぎされ、あるいは虚空の一点のみ見つめ、あるいは両目を閉ざした状態で、容疑者らが口々に語るのは、「キエフで100万ルーブルをもらう約束だった」。で、例によって、容疑者のスマートフォンには青黄のウクライナ国旗の写真などが見つかったそうだ。УП

4月6日

■動員
ウクライナ議会国防委員会で追加動員法案の審議が大詰め。10日にも議会本体の審議にかけられ、11日にも採決が行われる可能性がある。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450041/
※ウクライナ議会は三読会制。読会と呼ばれる審議を3度行い法文を確定させていく。上記法案は2月7日に第1読会を通過しており、近く第2読会が行われる。このかん国防委員会は第1読会で議員たちに付せられた4269か所の修整提案を逐一見直し、たとえば「各種教育機関の大学院生は徴兵が免除される」との修正案は容れたが、「賃金・納税額一定以上の者は徴兵免除」との修正案は棄却した。

■ゼレンスキー語録
テレマラソン(TV全局合同番組)でゼレンスキーのインタビューが流れた。
・ウクライナの動員について
追加動員法案の採決を近日中に行うよう議会に求めている。議会は責任を全うしていない。同法がなかなか成立しないことで、ロシアは「ウクライナの戦意低下」を言い募り、欧米諸国も「動員ひとつかけられないなら何のために支援するのか」と疑義を呈している。同法案は社会を「賛成派と反対派」「軍人と民間人」に分断してしまった。これは失策だ。議会は大衆迎合やめよ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450055/
・ロシアの追加動員について
ロシアで6月1日に30万人規模の追加動員が行われるとの観測を先に発表したが、この数は最終的な決定事項ではなく、数はさらに多い可能性もある。また、敵が新兵の教練に要する期間は僅か1か月。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450050/
・ウクライナの要塞化
あと2か月ほどで全方面で防壁の建造が完成する。一部では既に作業の98%が完了済み。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450064/
・ロシアのハリコフ侵攻説について
ハリコフはロシア地上軍の侵攻に対しては十分に堅固に守られている。同市の制圧計画なるものは悪意の偽情報だ。虚偽情報についてはロシアは相当な手練れ。実際に軍を前進させてみて、その様子を写真にとり、衛星写真にも撮らせ、それを西側メディアまたウクライナメディアを通じて拡散する。ウクライナ人自身がそうと知らずその拡散に加担してしまい、パニックの波を内発してしまう。重要なのはあらゆる細部をよくよく検討してみることだ。脅威を忘れてはならないが、誇張し過ぎてもいけない。同様に、ベラルーシからの侵攻説も否定される。現時点でいかなる現実的な脅威も見られないし、逆に我々が北部戦線に「流の歯」だの対戦車壕だの多重に構築していることは連中もよくよくご存知だ。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450052/
・空の守り
ただし、ハリコフの空の守り(地上軍の侵攻に対してでなく、空から飛来するドローン/ミサイルに対する守り)については大いに課題がある。防空システムが足りていない。敵の飛び道具からウクライナ全土をカバーするためには「パトリオット」25基が必要だ。また、F-16戦闘機については、今年西側からウクライナに供与されるのは、必要な数量の僅か1割でしかない。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450058/
・米国の支援
遺憾ながら我々は、米国の選挙闘争の虜囚になってしまっている。遺憾ながら戦争は、米国の内政問題に成り下がってしまっている――本来は世界の安全保障にかかわる事柄であるはずなのに。米議会が追加支援を可決してくれることを飽くまで信じているし、そうなるよう努めている。もし他に選択肢がなければ、借款でも受け入れる。「今」借りるか「来年」もらうかの二者択一なら、紐付きでもいいから今借りる。「生き残ること」、それが我々の唯一の選択肢だから。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450061/

■海上輸送
ウクライナがロシア抜きで独力で設定した海上回廊による貨物輸出は23年8月以来3600万トン(うち2500万トンが穀物)に上っており、既にロシアの参加のもと1年間機能した「穀物回廊」の輸送量を凌駕している。同回廊を利用した船の数は1286隻。今後135隻が400万トンの貨物を輸出する目処が立っている。
https://www.epravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/712102/

■オデッサ
6日白昼オデッサにミサイル攻撃(弾道ミサイル「イスカンデル」)、民間人1人死亡。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7450037/

■夜襲
5→6日の夜、ミサイル6発・シャヘド32機、うち2発・28撃墜。
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2024/04/6/7449987/

4月5日

■敵の飛行場を破壊しまくる
5日未明、ウクライナ保安庁とウクライナ軍が露ロストフ州モロゾフスクの飛行場にドローン攻撃を行い、少なくとも6機の軍用機を破壊し8機に深刻な損傷を負わせ、さらに軍人20名ほどを死傷させた。非公式情報。当該飛行場はウクライナ軍拠点/前線隣接諸都市への空爆に使用されている爆撃機Su-34および戦闘機Su-27の基地となっていた。УП
同日朝、さらに3つの露本土飛行場にドローン攻撃が加えられた。こちらはウクライナ情報総局とウクライナ軍の合同作戦。同じく非公式情報。サラトフ州エンゲルス2飛行場では3機の戦略爆撃機Tu-95MSに著しい損傷を負わせ、軍人7人を死亡させた(この中には戦略爆撃機のパイロット複数も含まれている可能性あり)。またクラスノダール地方エイスク飛行場では2機のSu-25を全壊させ、軍人4人を死亡させた。さらにクルスク市の軍用飛行場にも攻撃を行った由。УП

■オデッサ諸港から初のコンテナ船
ロシアの侵攻(22年2月)以来止まっていたコンテナ船の利用に先鞭がつけられた。例の海上回廊を通ってオデッサの西隣のチェルノモルスク港にコンテナ船が入港し、4日にはもときたコンスタンツァ(ルーマニア)へと帰っていった。ドナウ川ルートではコンテナ船の利用も再開していたが、これが海路にも拡大した形。УП

■露の情報工作
ISWによれば、ペスコフとショイグとラヴロフが情報工作を加速させている。目的は①ウクライナを交渉につかせロシアに有利な現状を追認させる②西側の関与を自重させること。
・ペスコフ露「大統領」府長官、あえて「ロシアはNATOと直接的な紛争状態にある」「NATOは既にウクライナをめぐる紛争に引き込まれている」と強調、NATO側の慎重論を喚起
・戦争遂行当局の首魁であるショイグ(「国防」大臣)が「和平交渉に用意がある」と発言
・ラヴロフによる「交渉に前向きな姿勢」の擬態
УП

4月4日

■あぶらを燃やして痩せさせる
NATOの見立てでは、ウクライナのドローンは既にロシアの精油インフラの10~15%を使用不能に追い込んだ。
・ロシアは3月、ベラルーシからのガソリン輸入を著しく増大、自国ガソリンの輸出を6か月間禁輸して、国内価格の安定化を図った
・またロシアは、石油製品の生産力の不足のため、原油の輸出を増大させる可能性がある
・一部のドローン攻撃はウクライナ国境から1000km離れたところまで到達しており、攻撃の規模は相当に大きい。こうした攻撃に対して十分な防護を備えた施設は今後ますます少なくなり、ロシア経済への影響は今後ますます大きくなることが見込まれる。УП

■世論調査①言語
以下、社会調査グループ「レイティング」が2月後半に行った調査。
Q:家庭で何語で話しているか。
ウクライナ語……59%
ウクライナ語とロシア語両方……28%
ロシア語……12%
※「ウクライナ語」と答えた人の9%が最近になって意識的にウクライナ語を話すようになった(91%は昔からウクライナ語を話していた)
※22年調査では家庭でウクライナ語を話す人は48%、ロシア語は18%だった
※オデッサ含む南部ではウクライナ語31%、両言語併用46%、ロシア語22%(УП

■世論調査②降誕祭
Q:この冬、降誕祭(いわゆるクリスマス)を何月何日に祝いましたか。
12月25日(世界標準)……53%
1月7日(ロシア式)……11%
※前年は12/25が42%、1/7が17%
※ウクライナが公式に認めている祭日は12月25日の方(23年夏議会承認・大統領調印)
※国家の祭日を1月7日から12月25日に移すことに関して、21年時点では26%しか支持がなかったが、22年12月には半数近くが支持に回った
※公式に祭日を移動させるに先立っては国民アプリДіяにて簡易的な世論調査が行われ、そこで12月25日を公式の降誕祭とすることに60%の賛同が集まっていた。УП

■世論調査③ゼレンスキー支持率
Q:ゼレンスキーの働きぶりを評価しますか。
全面的に評価する……22%
どちらかといえば評価する……41%
どちらかといえば評価しない……18%
全く評価しない……15%
※23年9月時点では「全面的に評価」42%。この5か月で20ポイントも急落した。УП

■世論調査④選挙
Q1:戦時下でも大統領選挙を行うべきでしょうか
行うべきでない……49%
行わない方が良い……18%
行った方が良い……13%
行うべきだ……17%
Q2:議会選挙についてはどうでしょうか
行うべきでない……44%
行わない方が良い……19%
行った方が良い……15%
行うべきだ……18%
※戦時下で国政選挙が行われないことについては国民の大多数の合意があると見てよい。5月20日以降のゼレンスキー統治の正当性にロシアがケチとつけてきたとき、さしあたり今回の結果を思い出そう。なおウクライナ憲法典には戦時下で大統領選挙は実施されないことが明記されており、法的にも5月20日(ゼレンスキーの現在の任期が切れる)以後のゼレ統治の継続は正当である
※Q1とQ2の数字に大差ないことから、ゼレンスキーへの信任というよりは、この非常時に国政選挙という大がかりなイベントにカロリーを使えないという国民の認識が示されたものと看取される。УП

■世論調査⑤
Q:戦争が終わった時ウクライナ領土はどうなっているでしょうか。
91年独立時点の領土を保全する……45%
22年2月24日以前の施政領域を回復する……16%
現在よりさらに多くの領土を失う……16%
ドンバスあり、クリミアなし……7%
クリミアあり、ドンバスなし……7%
ロシアに完全に占領される……1%(УП

■さらば「エカテリーナ広場」
オデッサ中心部のエカテリーナ広場およびエカテリーナ通りが改名されそう。新名称は「欧州広場」「欧州通り」。オデッサ議会の地名委員会が勧告書を策定、議会で承認されれば改称成る。なお、これと並行して走るプーシキン通りについては、改称に賛否ありなお議論が継続中。УП

4月3日

■動員(ロシア)
ゼレンスキー:ロシアは6月1日に30万人の追加動員をかける準備を進めている。なおウクライナは、ロシアが兵力の増強で何をしようとしているのか、正確に分かっている。УПУП
※3月末日プーチンは「春季召集で15万人が入営する」と述べており、また露「国防省」は3日、今年に入ってからの契約軍人は既に10万人を超えていると述べた。これとは別途、晩春に大規模な追加動員がかけられる、というウクライナ側の見立て。他ならぬゼレンスキー大統領が具体的な日付と数字とともに述べているので、相当に確度の高い情報ということだろう。

■動員(ウクライナ)
・ゼレンスキー:ウクライナでも動員は行われるが、(かつて言われた)50万人という大人数は必要ない。УП
・ISWによれば、動員年齢の引き下げ(27歳→25歳)はウクライナの軍事力の再生産および向上の半面に過ぎず、結局は西側からの物質的援助を受けて新兵をしかるべく武装させることが必要になる。УП

■暗鬱な未来予測(前線が崩壊する)
米Politicoがザルージヌィ体制下のウクライナ軍高官(匿名、複数)談として暗鬱な未来予測を伝えた。いわく、ロシアが夏に大規模攻勢をしかけた場合、前線が崩壊するリスクが高い。ウクライナには無人機も砲弾も兵員もあまりに足りていない。物量の不足を補うような新たな技術もない。西側の支援は遅れあるいは不足し、ウクライナ自身も新たな大規模動員をかける政治的意思に欠ける。残されたものはウクライナ軍の士気ひとつ、あるいは、ロシア軍が作戦を誤ることへの幽かな期待(そんなものは戦略とは呼べない)。ザルージヌィはこの戦争を「ワンチャンスの戦争」と呼んでいた。УП

■攻撃的な未来予測(クリミア橋を破壊する)
情報総局はクリミア橋(クリミア半島とロシア本土をつなぐ長大な橋)を落とすことは現実的と見ており、今年前半にも特別作戦を実行する計画である。英ガーディアン紙が情報総局内の情報として報じた。「目標達成のための手段の大半は既にそろっている」「ブダーノフ長官はゼレンスキー大統領の承認したプランに則ってロシアの黒海プレゼンス最小化を進めている」。とはいえロシアもこの間クリミア橋の防御を厳重にしており、どのような方法で実行するのかは不明。УП
前史:クリミア橋攻撃の成功事例は過去に2例。22年10月8日、プーチン古希の祝いの翌日、爆発物を積載したトラックに橋を渡らせ、それを起爆。また23年7月17日、水上ドローンにて。ほか、23年8月12日に同橋付近で一連の爆発、露「国防省」によれば、S-200による攻撃。ブダーノフによれば、このときの目標は「橋ではなかった」

■ハリコフ①地下学校
ハリコフで初の地下学校が竣工した。9月開校に向け詰めの作業。20教室あり、2交代制で児童生徒900人を受け入れ可能。1期生の募集は終了しており、今年は600人を受け入れる。「子供たちに安全な教育の機会を提供するために市内の他の地区にもこうした学校を作っていく計画だ」と市長。またハリコフの例にならいザポロージエでも地下学校を50校ほど設ける計画があるそうだ。УП
地獄のような話だ。地球は終わってる。風かよい陽のそそぐ地上は大人たちが戦争するのに使うから、未来ある子供たちは地下でしこしこ勉強しといてね。

せめて可愛い感じで良かった。

■ハリコフ②
ゼレンスキー:ウクライナのドローンによるロシアの製油所攻撃を批判する人は、まずはハリコフを訪れたらいい。ロシアの砲撃に絶えずさらされる街、光も水もなく生きる人たちのもとを。その後でなお何か言えるものなら言ったらいい。ロシアのインフラ攻撃についてこれまで多くの議論が交わされてきたが、それがロシアの攻撃を低減させることはなかった。結局のところ、ロシアに分からせるためには、力を使うしかない――強力な報復を行うしかない。パートナー諸国は、我々の報復を(批判ではなく、むしろ)支持して然るべきだ。УП

■ハリコフ③
情報総局:ロシア軍が今日明日にもハリコフに大規模進軍をしかける(あるいはベラルーシが参戦してくる)との風説は国情不安定化を図ったいぷそだ。IPSO、情報心理特別作戦。ウクライナへの再侵攻のための攻撃部隊の編制は行われていない。この事実は独立系の軍事アナリストらも確認可能なことだ。とはいえ戦線全体にわたり防護を強化する必要は確実にあり、いま猛烈な勢いでそれに取り組んでいるところ。УП
※Meduzaがクレムリン筋の情報として伝えたところでは、プーチン政権はハリコフを掌握し、それをもってSVO(特別軍事作戦)を徐々に幕引きさせる案を検討中であるらしい。一方、先にハリコフ市長は、なるほど砲撃は激化しているが、住民の避難が必要であるとは当局も軍も考えていない、としていた。

■日本
ゼレンスキーが岸田と電話で話した。ゼレは日本の財政支援(これまで120億ドル超)に感謝し「パートナー諸国にとっての模範」と持ち上げてみせ、ロシアの空爆や戦況について報告し、対露制裁や二国間安全保障協定について話し合った。УП

■防空(パトリオットをあと7基!)
クレバ外相がロイターのインタビューで防空システム支援を切訴。西側諸国に100ある「パトリオット」をせめて7基提供してくれれば遥かによく都市とインフラを守れる。現有の装備では明らかに足りなく、ロシアの攻撃は極めて苛烈で、西側のパトリオットは完全に余っている、この状況で、どうして提供してくれないのか理解ができない。もはや政治的な意思一つである。УП

■露①残存戦力
情報総局によれば、ロシアは戦闘爆撃機Su-34および多機能戦闘機Su-35を各100機ほど保有している。早期警戒管制機A-50Uは残り7機(3機が補修・改修中)УП

■露②CCホールテロ
米政府は露側に対し例のテロの2週間前にテロの標的としてCCホールを名指ししていたそうだ。ワシントンポストが米政府筋の情報として伝えた。もう一つの標的として米側はモスクワ市内のシナゴーグを挙げていて、その警告の翌日さっそく露保安庁は「モスクワのシナゴーグでIS戦闘員の襲撃を未然に防いだ」と発表していた。УП

露③ベルゴロドは住みよい街
ロシア建設省が国内諸都市の快適度ランキングを発表、その百万未満都市部門において、ウクライナと国境を接し爆音の絶えないベルゴロドが思いがけなく4位にランクインした。見えるものを見まいとし見えないものを見ようとするロシアの幻視力あっぱれ。УП

■露④Raiffeisen
戦争のスポンサーことライファイゼン(本拠スイス)銀行のロシアからの撤退を求めるオンライン署名が行われ、既に5万筆近くを集めている。УП署名ページ
同じことをJT(日本たばこ)についてもやればよい。私がやるしかないか。蟷螂の斧。

4月2日

■動員関連法
ゼレンスキーが一連の動員関連法に署名した。
・動員年齢の下限が27歳から25歳に引き下げられた。(※関連法案は23年6月には議会で可決しており、大統領は10か月もの間調印を忌避していた)УП
・兵役義務者の一元的かつ電子的なリストが創設される。24年第2四半期めどに。УП
・徴兵検査における「乙種合格」の廃止。以後は「合格」「不合格」の別のみ。旧乙種合格者は9か月以内に疾病負傷証明書の再交付を受けねばならない。なお、同じ法律で、①14歳以下の病気の子供の世話が必要なときは復員可能②子供の出生ないし負傷の際は一時復員可能、とされた。УП

■動員破綻工作
ウクライナの動員にケチをつける情報工作をロシアが仕掛けている。若いロシア人プロ俳優2名がウクライナ語で「あいつの息子はエリート、お前は肉(砲弾の餌食)」と連呼するビデオクリップが4月1日、親露テレグラムチャンネルで拡散しだした。二人の登場人物が対比されている:一方はビジネスジェットでスイスのアルプスを旅し美女と酒を飲み麻薬を楽しむ。他方は戦場に送られ負傷する。「お前は知ってるか、あいつら(※政治エリート)の息子たちは動員されていないということを」とのフレーズで動画は終わる。ウクライナ市民の不満を掻き立てることを露骨に目指した動画。УП
自分のことは棚に上げてよく言う。だが、それが事実かどうかは気になるところではある。ロシアの若い俳優たち映像作家たちがこのようなしみったれた事業に能力と才覚を費やしているのは哀れ。

■露本土攻撃①
露タタールスタン共和国当局によれば、同国エラブガ及びニジネカムスクにある工場が無人機攻撃を受け、爆発が起きた。非公式情報では、ウクライナ保安庁と情報総局の合同作戦。ウクライナ国境から1500km離れた遠方への超長距離攻撃だ。

エラブガにはシャヘドの組み立て工場があることが知られている。ニジネカムスクでは製油所の損傷に成功した模様。УПУП

■露本土攻撃②
こちらも情報総局の作戦で、セヴァストーポリの変電所が爆発が生じたらしい。それで同市一部地区に停電が起きた。これも非公式情報、露占領当局は特段の発表を行わず。УП

■ロシアの残弾数
情報総局によれば、ロシアの戦術および戦略ミサイル(射程350km超)は残り950発。大規模な複合攻撃(各種ミサイルとドローンを組み合わせた攻撃)をなお数回行うのに十分な余力を残している。なお、ロシアの新規ミサイル生産能力は種類により月産数発~数十発。「Kh-101」「イスカンデル」が各40発、「カリブル」なら数十発、「キンジャル」は数発。УП

■プーチン語録
珍「ソ連崩壊後我々の地政学上の仇敵たちは歴史的ロシア(※ロシア帝国の版図たるウクライナやバルト諸国も含むのであろう)およびその中核たるロシア=ロシア連邦に残されたものを最後まで破壊し尽くし自らの地政学上の利益に他者を屈従させることを目論んだ。要はロシア進軍に失敗したヒトラーやナポレオンのリヴェンジをかけようとしている連中がいるのだ」УП
壮大な歴史的妄想に憑りつかれたもの。文学や映画で繰り返し語られ固定・強化されてきた「俺たちはヒトラーを退けた、ナポレオンを退けた」という民族的記憶を掻き立てて現在の侵略戦争の正当化を図ったもの。

4月1日

■一陽来復
4月1日午前時点で緊急停電は全土どこにも行われてはおらず、ハリコフ及びザポロージエ(一部)のみ計画停電が行われている。前日の晴天で太陽光発電が好調、これにより全体の負荷が軽減され、電力需給は黒字化した。УП
実際かなり暖かくなっている。キエフの3月末日の最高気温は25.3℃と観測史上最も暖かかった。УП
キエフ10日間予報(4月2日~11日)↓

同、オデッサ


■サハラの砂
日本で黄砂とか言いますな、中国やモンゴルから黄色い砂が飛んでくる。黄色い蝶ちょが韃靼海峡渡っていく春先に。その同じころ、アフリカのサハラ砂漠から巻き上げられた砂が、ウクライナ全土を覆った。視界不良が生じ、呼吸器系疾患者は家の窓を閉めた。1日の高気温との関係性は不明。2日は強風のため砂が広範囲に拡散する。3~5日は降雨のため砂が落ち、その後は空気が清浄になる見込み。УП
(戦場のドローンの動作などに影響はないのだろうか)

■CCホールテロ
米国だけでなくイランもモスクワに対し(それもCCホールテロの数日前に)イスラム過激派によるテロの可能性を警告していた、との報道あり。ロイター、УП

何丘妄語:テロを、それが起こったロシアという国に局限して見るとき、起こったことは次の二択でしかない。諜報/治安機関がテロを未然に①防げなかったか、あるいは、②防がなかった。前者なら未曾有の大失態である。これほど息苦しい警察国家を築きながら、大型コンサートホールがひとつ丸潰れになり3桁が死ぬようなテロを防げなかった。後者なら、余りに許されざることである。政治利用――具体的には、テロをウクライナと結び付け、ウクライナに対する憎悪を焚きつけ、主戦論を掻き起こし、挙国一致体制の強化、大型動員の発動につなげる――要は対ウ侵略戦争の加速のために、自国民の生活と生命を犠牲にした。悪魔の所業だ(戦争の神に、そのいやさかのために、大型コンサートホールひとつと3桁の人命を供犠する、サタニズムの徒、プーチン)
後者であることを示す状況証拠は徐々に集まってきているように思う。今回のイラン警告説もそう。テヘランやワシントンがこの情報を確認してくれると有難い。ぎしぎし鳴る不協和音に今度ばかりはロシア国民も違和感を覚えないものか。それで反政権世論が爆発してくれるといいが。牙を抜かれたロシア人には無理かな。これほど明白にISによる犯行なのに、かの盟友ルカシェンコさえ早々にウクライナ逃亡説を否定しているのに、ウクライナ・ウクライナ・ウクライナとばかり言い続ける、プーチンとそのメガフォンたちの、異様さ、異常さ。無理かな。これでも無理なのかな、ロシア人の皆さん。殺人者、テロ首謀者、収奪者、児童誘拐犯、侵略者、プーチンよ、去れ! と、100万人行進。

3月31日

■ブチャ
3月31日はブチャ(を含むキエフ州)解放2周年だった。
ゼレンスキー、ブチャにて:他者に対してこれほど攻撃的になるためにロシアが手始めに破壊したのは自身のモラルであり、自らの政治信条を「暴力」と「憎悪」に設定することだった。このようなシステムは容易には制止できない。力で止める。団結によって止める。決意と、理解によって――まさに彼らが滅ぼそうとしているものによって(のみ止め得る)
ロシア軍がブチャに入ったのは22年2月27日。それから33日間の占領で、9000件の戦争犯罪が行われ、市民1400人余りが殺された(うち37人が子供)。3月31日、ウクライナ軍によって解放。УП

■ハリコフ復旧
ハリコフの電力がようやっと復旧した。31日はハリコフ州の電力使用に制限がかからなかった(22日の電力網破壊で深刻な損傷を被って以降初めて)。いま制限がかけられているのはその後度重なる電力網破壊を受けたオデッサ州。31日未明の攻撃で一時17万世帯が停電、同日昼現在も1万世帯に電力が行きわたっていない。УП

■夜襲
30→31日の夜、ミサイル16発、シャヘド11機。うち9発・9機撃墜。УП

3月30日

■人事の季節
当ブログで逐一報告はしていないが、26日のダニーロフ(国家安全保障会議書記)をはじめ、政権中枢の人事が相次いでいる。ゼレンスキーによれば、これは国家機関のリセットという大がかりなプロセスで、まだその全部が行われたわけではない(交替はまだ続く)そうだ。УП

■Domestic Violence
ウクライナでDV(家庭内暴力)が増加している? 2023年、DVとして警察に登録された事件は29万1000件で、前年比20%増。うち刑法違反として登録されたのは2701件で、これは実に前年比80%増という。内務省発表。同省は現在、刑法改正による罰則強化を目指している。УП
※なお人口3倍の日本における2020年度のDV「相談件数」は18万2188件。内閣府男女共同参画局

3月29日

■全土空爆
29日未明、またしてもウクライナの電力網を標的とした全土大規模空爆。ウクライナの防空システムを欺罔し凌駕するため多用な攻撃手段を用いたいわゆる「複合攻撃」で、使用されたのはミサイル5種36発、シャヘド60機(計99飛翔体)。うち26発・58機(計84)を撃墜。
中央部・西部の6州で火力・水力発電所ほか電力インフラが損傷し、住民に停電被害。
西部のリヴォフ州は超音速ミサイル「キンジャル」2発とシャヘド11機の攻撃を受け、後者は全機撃墜したが前者は防御できず、エネルギーインフラが損傷。死傷者は出ず。
УПУПУПУП

■オデッサ空爆
29日白昼、今度はオデッサに2発のミサイルが飛来。2発とも撃墜したが撃墜片で商店ほかに被害、5人負傷。УПУПУП

■人事①ダニーロフ、モルドヴァ大使に
国家安全保障会議書記を解任されたダニーロフを駐モルドヴァ大使に任命することで合意がとれた、とゼレンスキー。モルドヴァは小国だがウクライナにとっては地政学的に非常に重要な位置を占める(同国とウクライナのオデッサ州でロシアの飛び地=沿ドニエストルを挟み込んでいる)。先に駐英大使に任命されたザルージヌィ(前ウクライナ軍総司令官)に次ぐ、最側近の外交転身。УП

■人事②国家安全保障会議の課題
ダニーロフ解任後初の安全保障会議が開かれ、そこでゼレンスキーが新体制の安保会議の5原則を名指してみせた。①予見可能性の拡大。国家安全保障を左右するプロセスに対する予見可能性と影響力を強化する。②国家安保会議が現在抱える全タスクの履行継続。とりわけ制裁政策の監督。③ドクトリン(大綱)関連業務。国家の方針および体制の明確化、およびその実現。戦中だけでなく戦後も視野に。④サイバー安全保障と情報。敵の不安定化工作からの自国の保護および関係機関の調整について安保会議は現在より多くのことが可能な筈だ。⑤最高司令部会合(大本営)関連業務。意思決定の策定と、その実現の監督。УП

意味深長すぎて汲み尽くせぬが、とりま直訳しといた。今後の参照のため。

■人事③ザルージヌィはなぜ解任された?
名将の誉れ高く国民から絶大な人気を誇った前総司令官ザルージヌィの解任については依然として決定的な理由が不明であるが、このほど後任のスィルスキー総司令官が某メディアのインタビューでその点に触れた。いわく「軍人には一つの義務がある:我々は命令を疑わない。命令は遂行するのみだ。戦争の最中に大統領=最高司令官が決定をとった。ということは、それだけの理由があったのだ」УП

■ゼレンスキー語録
ゼレンスキーが米ワシントンポストのインタビューに応えた。
・米議会に追加資金の早期可決を懇望する。米議会の内部闘争のせいで半年を棒に振った。これ以上時間を浪費できない。ウクライナ支援懐疑派は事の重大性理解していない。もしウクライナが倒れればプーチンはロシアの敵とロシアの見方とに世界を分裂させてしまう。УП
米国はロシア本土の製油所に対するドローン攻撃に否定的だ。だが、我々がその実行に使っているのはウクライナ国産のドローンである。その限り、誰もこれを禁止することはできない。ロシアが我々のエネルギーシステムを攻撃してくる。ではなぜ、同じことを我々がやってはいけないのだろうか。ロシア人たちもガソリンやディーゼルや電気のない生活を甘受すべきだ。これが公正というものだ。他にどんな選択肢がある? ロシアのエネルギー部門に対し報復攻撃を行い、抑止体制を構築するしかないのだ。もしロシアがウクライナのエネルギーシステムに対する攻撃を止めれば、我々も止めるУП
・防空システムも弾薬も足りていない。前者は、どれだけ足りないかを語ってロシアを利することがないように秘するが、不足しているのは事実である。後者は、一日8000発撃たねばならないところ、2000発ほどしか手元にない。УП

3月28日

■ポーランド
ウクライナ産穀物のポーランドへの流入を阻止するべくポーランド農家らが国境を実力封鎖している問題に進展があった。
まず午前の時点で、ウクライナ副首相ステファニシナは「当該問題の解決に向けたポーランド側との対話は、現時点では行われていない」と述べていた。いわく、国境封鎖は実は対ウクライナだけでなく対バルト諸国、対ドイツでも行われており、ポーランド政府はこれをむしろ国内問題と受け止め、解決に努めていると。УП(10:49)
その後、ウクライナ←→ポーランド国境通過ポイント2か所で封鎖が解除されることが発表された。ただし解除は4月2日までの一時的なものであると。ともあれひとまず、列をなしていた大型トラック120台が通行のチャンスを得た。УП(14:15)
また同日、ポーランドのトゥスク首相とウクライナのシュムィガリ首相が会談し、当該問題が解決に「一歩近づいた」との発表があった。УП(15:32)

■チェコ
チェコが音頭をとり欧州域外から弾薬をかき集めてウクライナに送る所謂「チェコ・イニシアチヴ」、某伊紙の報道によれば、4月にもウクライナ側に第一便が届けられる見込みらしい。数量も当初予定の80万発でなく100万発であると。УП

■米国
ゼレンスキー、CBS Newsのインタビューで、ウクライナは米国からの支援なしにロシアに勝利することはできない、と明言。ほか:
・(米国の支援がなければ)さらに領土を失う。これを奪還するのは大変だ。領土の奪還は人命の喪失を伴う。率直にいえば、人命の方が大事だ。
・ロシアはウクライナとウクライナ人の存在を認めない。彼らはウクライナをロシアの衛星としか見ていない。今回はウクライナ。だが次はカザフスタン、バルト諸国、そしてポーランドだ。そのあとはドイツの東半分。プーチンが考えを変えることはない。プーチン自身を取り換えるしかない。
・米国の防空システムを強く必要としている。今ウクライナにある防空システムは全て欧州から運び込んだものだ。УП

■夜襲(オデッサ)
27→28の夜、シャヘド28機、うち26撃墜(オデッサ、ハリコフ、ドネプロペトロフスク、ザポロージエの各州上空)УП
ウ軍によれば、敵の狙いはまたしても電力インフラ、それから産業施設。あえて住宅街を飛行ルートに選び、撃墜したとしても撃墜片による家屋等の損傷は免れず、今回も戸建て住宅複数を巻き込む火災が発生した由。УП
オデッサにはミサイルも一発飛んできたが洋上で撃滅した由。УП

■オデッサ
オデッサ州はひとまず計画停電なしに済んでいる。好天で①需要が減じ②風力および太陽光発電で多くの電力が生み出せたため。УП

■露
ロシアは22年2月のウクライナ侵攻以降、外国企業1000社ほどがロシア市場から撤退したことによるロシアの経済損失は1070億ドル規模と見積もられるそうだ。ロイター、УП

3月27日

■再び灯がともる
27日正午時点でウクライナの電力供給に不足は生じていない。22日の大規模攻撃で受けた著しい損傷のため26日はオデッサ、ハリコフ、ドネプロペトロフスク、フメリニツキーの各州で計画/臨時停電が行われたが、ひとまず復旧に成功した。最も被害が深刻であったハリコフも重要インフラへの給電は全面復旧しており、家庭にも電気が行きわたっている。エンジニアたちに拍手、叩頭。УП

■CCホールテロ①ISW
モスクワの「クロッカス・シティ・ホール」におけるテロをめぐるロシアとベラルーシの主張の矛盾をISWが分析した。
プーチン説:犯行グループは犯行後ウクライナに向かっていた。ウ露国境にはウ側が用意した逃亡用の「窓」があった
ルカシェンコ説:犯行グループは犯行後ベラルーシに向かった(が、経路上の各州の治安措置強化を受けウクライナに進路を変更した)
ISW:ルカシェンコには事実を歪曲するインセンティヴが特になかったから本当のことを言ったまで。「犯行グループはベラルーシに匿ってもらうことを期待して同国に向かっていた」との見方が広がれば「犯人たちがベラルーシの方が安全だと考えるに至った根拠は何だろう」「彼らは誰の助力を期待していたのだろう」との疑義が浮上し、それがルカシェンコとその体制にとって破壊的な政治的帰結をもたらしかねないと考えて、むしろ先んじて「ベラルーシは彼らの逮捕に際し重要な役割を演じた」との情報を発信することを決めた。一方のロシア側は、自国の諜報/治安機関の大失態という現実を覆い隠すための情報工作について、依然として足並みを揃えることができていないようだ。УП

モスクワの銃乱射テロをめぐる日本の報道について思うところを「ネコ」の方に書いた。わたし自身は、ウクライナ関与説を全く信じていない。一般に世界でそれを唱えているのがロシアだけであるようなことは信じるに値しないし、今回は特に、それにウクライナが関与しているとすればロシアにあまりに有利であるような事柄なので、とりわけ強力な虚偽推定が成り立つと思っている。

■CCホールテロ②ブダーノフ
ウクライナ情報総局ブダーノフ長官「ロシアは遅くとも2月15日時点でテロの計画を関知していた。この情報は在シリアのグループの情報局からモスクワへ伝えられたものだ。では計画を知りながら実行を許した理由は何か。いくつか考えられる。第一に、宮廷闘争。高官人事の際に連中がよく使う手段だ。第二に、単純に、起こり得る事象の規模を当局が読み誤った。連中が予期したのはもっと小規模な事件で、それをウクライナのせいにする算段であった。諜報の世界には「管理可能な混沌」という術語がある。いつの時代も情報機関というものはそれを創り出すことを試み、そして失敗してきた。今回起きたことも同じだ。
ちなみに、この際言っておくが、それが敵であっても、市民に対するテロ行為を私は原則的に承認しないУП

■夜襲
26→27夜、シャヘド13、うち10撃墜(ハリコフ、スームィ、キエフの各州上空)。УП

3月26日

■ダニーロフ更迭
国家安全保障会議書記ダニーロフ(61)が突然更迭された。後任は対外諜報庁長官リトヴィネンコ(51)。
ダニーロフは2019年10月上記職位に就任。ゼレンスキーの大統領就任が同年5月。平時から戦時へ、4年間の歩みを共にした。ダニーロフ「悔いはない。時日は雷光のように飛び去った。大統領の信任に感謝を。人民よ、勝利を信じて進め」ゼレンスキー「本日、国家統治システムの再建の続きを行った。アレクセイ・ダニーロフに感謝を。彼は異なる方面へと転任される。それについては追って」УПУПУПУП

■CCホールテロ
ロシアのウソがほころびつつある(と願いたい)
まずベラルーシの自称大統領ルカシェンコ、クロッカスシティホールのテロ犯は「ベラルーシへと落ち延びることを企図したが、ロシアとベラルーシの一部地域で治安措置が強化されたことを見て取り進路を変更、ウ露国境へと向かった」УП
ブルームバーグによれば、プーチンの一部側近はウクライナ関与説を信じていない。УП
ISWによれば、テロを許したことはロシアの諜報/治安当局の大失態である。オープンソースのエビデンスの数々から本件がロシアに対する/ロシア内部での謀議でないことは明らかだが、それでもクレムリンはウクライナ関与説を強弁し続けている。虚偽の非難や情報工作を優先してISの国内暗躍という明白な脅威への対処を疎かにするようだと、ロシア国内の治安悪化や、住民の生命を危険にさらすことになりかねない。УП
ゼレンスキー「今日またしてもプーチンは妄想にかられウクライナを非難した。いかにも病気の、虚無的存在。自分以外は皆テロリストというわけだ。テロによって20年間も生きながらえてきたのは他ならぬ自分だというのに。奴こそがテロの最大の”窓”なのだ。奴が消えればテロの注文は消滅する。奴こそテロの注文主なのだから」УП

■冬の終わり
気温上昇を受け、電力負荷の軽減の意味もあり、各地で暖房シーズンが終了しつつある。ヘルソンは26日付けで終了、キエフも28日付で終了するそうだ。УП

■オデッサ
一連の攻撃による電力網の損傷のため、26日13時半時点でなお2万3000世帯に電気が行きわたっていないオデッサである。УП
なお25日夕のミサイル攻撃は、遊興休養エリアが被弾したということだったが、具体的には海沿いの「スポーツ宮殿」が被害にあったようだ。スケートリンクがあり、攻撃時には児童フィギュアスケート教室が開かれていた。夥しい窓ガラスが割れ、裂傷を負うなどで9人が病院に搬送されている。軍広報によれば、この攻撃でも「二重攻撃」の方式が採用された。同一地点に間隔をあけて(消防救急の現場到着を待って)二撃目を撃ち込むという卑劣なもの。УП

■謎の弾薬80万発改め、150万発(チェコ)
弾薬不足にあえぐウクライナにチェコ保有の弾薬80万発を供給するという「チェコ・イニシアチヴ」について、チェコ外相「当初より遥かに多くの弾薬を用意できそうだ。その数は150万発にも上る」「当該イニシアチヴは既に戦場で効果を発揮している――弾薬が手に入るという見込みによってウクライナは撃ち惜しみしなくてよくなり、戦況は好転している」「だが実際に弾薬を発送するに先立ち資金の調達が完了しなければならない」。果たしてそれはいつのことになるか。一説によれば6月。なんでもいいから早くしてくれ。発端となったチェコ大統領発言(「資金さえ調達できれば数週間のうちに80万発を送れる」)は2/17のことだった。УП

■呼んでも来ない(ポーランド)
ロシアのミサイルがポーランド領空を侵犯したことにつきポーランド外務省が抗議を申し入れるため駐ポ露大使に召喚をかけたところ、大使はこれを無視し、出頭しなかった。ポーランド側はこれに然るべき措置を取るそうだ。УП

■夜襲
この晩は12機のシャヘドが飛んできて、ニコラエフ州およびハリコフ州上空で全てを撃ち落とした。УП

3月25日

■オデッサ
オデッサには本当によくない時期だ。なんとか耐えてほしい。24日深夜から25日早朝にかけてシャヘド群来、2つの変電所が被弾して一部地域(オデッサ市ペレスィプ地区、わが義父母の住まう)への電力供給が寸断。路面電車やトロリーバスなど電気系の都市交通は稼働を停止している。УПУП
さらに晩方にもオデッサにミサイル攻撃が行われた。2発の弾道ミサイルが遊興・休養エリアに着弾、3人が負傷(重篤ではない)。爆音は市中に響き渡ったとのこと。УПОЖ
19時現在、30万世帯に電力が届いていない。25日オデッサは大雨、作業員が懸命な復旧作業を行っている由。ОЖ

■ハリコフ
22日の攻撃で大幅な電力不足にあえぐハリコフは、他の都市に先駆けて中央暖房を停止する(暖房シーズンを終了させる)そうだ。УП
幸いハリコフもだいぶ暖かくなっている。少しすれば最低気温も10度をやや下回るくらいまで上がる。

読み方:左端、3月26日火曜曇りときどき晴れ、最高気温14度、最低気温5度。ハリコフ10日間予報

■セヴァストーポリ
23日のセヴァストーポリ攻撃(ストームシャドー他による)で命中させたという露黒海艦隊の大型揚陸艦「ヤマル」は深刻な状態だそうだ。ウ情報総局。УП

3月24日

ロシアの空爆が止まらない。蝿だの錐だの飛ばしてくる。今度の標的は西部の都市リヴォフ(リヴィウ)

■リヴォフ
24日未明、リヴォフ州にミサイル20発(複数の超音速ミサイル「キンジャル」も使用された)・自爆ドローン「シャヘド」7機。標的は死活的インフラ(電力等)。リヴォフ市には被弾なし。同一の死活的インフラに2度の着弾。УПУП
一部ミサイルは一度ウクライナ領空からポーランド領空に出て、再びウクライナ領空に入ってリヴォフを襲うという軌道をとった。ウクライナの都市防空システムは基本的に東と南からの攻撃に備えて設置されているため、ロシア軍は攻撃の際はあえてミサイルを西から回り込ませることがあるそうだ。当然ながらポーランド領空の侵犯であるためポーランド軍には当該ミサイルを撃墜する権利があったが、①軌道分析で当該ミサイルがウクライナ領空へと回帰することが判明し、②撃墜片がポーランド市民に被害をもたらす可能性があったため、あえて撃墜しなかった。ポーランド軍発表。УП

■全体
全体として、23→24日夜の攻撃に使われたのはミサイル29発、シャヘド28機。うち18発と25機を撃墜。УПまたこの一週間(18月~24日)を通じて、ロシアはウクライナに対し約190発のミサイルと約140機のシャヘドを使用した。УП

■オデッサ
22日の空爆で停電に追い込まれたオデッサだが24日正午、ようやく全世帯に電気が行きわたった。УП
だが同日夕刻、電力需要のピーク時に、やはり計画停電が発動された。市民に節電が呼びかけられている。擁するに、それほど22日の被害は深刻で、電力需給はギリギリ、ということである。УП

■セヴァストーポリ
23日深夜にウクライナ軍がセヴァストーポリ(クリミア)にミサイル攻撃を行い(英供与のストームシャドーが使用された模様)、ロシア黒海艦隊の通信ハブその他施設、また大型揚陸艦「ヤマル」及び「アゾフ」に命中させた。ウ軍参謀本部発表、衛星写真でも裏付けられている。УПУПУП
ゼレンスキー「わが軍はクリミアと黒海の占領者どもを掃討するという困難な課題を段階的に達成しつつある」УП

3月23日

■被ダメ
22→23日の夜、シャヘド34機がウクライナを襲い、うち31機を撃墜した。УП
ISWによれば、ロシアがウクライナのエネルギーシステムに対し猛攻を開始した目的は、ウクライナの軍事産業ポテンシャルを壊滅させること。他ならぬ今それをやっている理由は、欧米からの支援の遅れており、ウクライナ軍の地対空ミサイルが枯渇しかかっていること。УП
22日の攻撃で最も深刻な被害をこうむったハリコフでは、23日21時現在も全世帯の3分の1に電気が届かず、半数に暖房が届いていない。УП

■与ダメ
23日未明、露サマラ州クイブィシェフスキー製油所で爆発。地元当局によれば無人機攻撃を受けてのもの。УП
英情報当局によれば、ロシアの石油製品生産力は既に10%ほど減殺されている。これを復旧しようにも、制裁のため設備調達がままならず、どうしても時間を要する。製油所への防空システム配備が発表されているが、ロシアのエネルギー産業は余りに巨大で、脆弱な施設を網羅的に守ることはとてもできまい。最も遠方でウクライナ国境から900kmの施設が攻撃を受けており、ウクライナの攻撃ドローンの行動半径は相当に巨大であることが窺える。УП

■テロ
事件から19時間経ってようやくプーチンが声明を出した。ISが犯行声明を出しており多くの傍証があるのに関わらず同組織には言及せず、「犯人4人は発見され拘束された・彼らはウクライに向かっており国境通過の”窓”が用意されていた」「テロの背後にいる者に正義の懲罰を加える」などと、テロとウクライナの関連付けに腐心した。こんな安いプロパガンダを考案するためにまる一日を要したかと思うと同情を禁じ得ず。УПMeduza

その間にロシアのプロパガンダTVは先走ってウクライナ国家安全保障会議書記ダニーロフが「22日のテロにはウクライナが関与している」などと発言するフェイク動画を放送した。憫笑を禁じ得ず。УП

ウ情報総局広報「テロ犯をウクライナに逃がす”窓”がウ露国境に用意されていたとの言いがかりについて。下記を理解するのに専門知識は不要だ。即ち、この2年間ウと露は全面戦争中であり、ウ露国境には軍・特務機関・シロヴィキに属するロシア人がひしめいており、国境線に沿って膨大な地雷が埋設され、かつ国境は航空機含めたあらゆる偵察手段によって両陣営から常時監視されている。今のベルゴロドやクルスクのように国境線が即ち前線になり活発な軍事行動が行われている場所もある。ゆえに”窓”は不可能。たぶんこの理屈は、ゾンビと化したロシア人ども(зазомбированное российское население)を除けば、世界の誰にも理解されると思う。このあと起こることの予測は簡単だ。さらなるモノガタリがでっち上げられ、ロシア国内でタガの引き締めが行われ、残り僅かな市民的自由と権利が捻りつぶされる。УП

ゼレンスキー「プーチンその他ごろつきどもが毎度おなじみの手法で責任転嫁を行った。この絶対的無価値物プーチン(ничтожество абсолютное Путин)はウクライナ侵略に夢中で国内のことなど意にも解さない。半日沈黙して、どうしたらテロをウクライナに結び付けられかを熟考して、やっと出した声明が完全に予想通りの内容であった。もしウクライナの土地でウクライナ人を殺害している数十万のロシア人が国内で治安維持にあたっていればあらゆるテロを防止するに十分であったろう。УП

3月22日

■全土空爆
ロシアの沈黙の火力が爆発した。22日未明、ウクライナ全土に大規模空爆。狙いは明確に電力インフラ、特にドニエプル川の水力発電所が狙い撃ちにされた。広い範囲で停電が起き、現在も復旧していない。

・攻撃の様態
いわゆる複合攻撃(комбинированный удар)。ウクライナ側の防空能力を攪乱・凌駕するため多種多様な攻撃手段が一挙に用いられた。ミサイル6種88発、自爆ドローン「シャヘド」63機。うち37発と55機を撃墜。逆に51発と4機を撃ち洩らした。弾道ミサイル「イスカンデル」12発と超音速ミサイル「キンジャル」7発は一発も撃墜できなかった。УП(09:11)

あらゆる方向から飛翔体が侵入し文字通りウクライナ全土を駆け巡ったおぞましい様相がよく分かる図。攻撃手段ごとに色分けしており、黄色がシャヘド、青がキンジャル

・被害
オデッサ含む8州でエネルギーインフラが損傷、各州で緊急停電。ドニエプル水力発電所(後述)が大打撃を受けたほか、火力発電所についても大多数が攻撃にあった。
最も被害が深刻なのがハリコフ。国営電力「ウクルエネルゴ」クドリツキー社長によれば「ハリコフ市に電力を供給する主要な電力施設は文字通り全て攻撃された」

東はハリコフ西はリヴォフまで広い範囲に被害が及んだ。🔥のマークが着弾、△が緊急停電の発生を示す

・水力発電所
集中砲火を浴びたのがドニエプル水力発電所であった(ウクライナ最大の水力発電所、ザポロージエ北郊に位置。第1と第2とあるうち、特に第2)。8発のミサイルが命中し、クレーン用の梁や支柱が直撃を受けて非常に深刻な状態。ただしダム決壊の恐れは今のところないという。УП(10:15)、УП(13:41)
・狙い
なぜ今か。逆に、なぜ冬の間はインフラ攻撃を行わなかった? 露「国防省」の公式声明によれば、今次の攻撃は露ベルゴロド・クルスク両州への侵入と占領に対する報復だそうだ。また一説によれば、ロシアの製油所に対するドローン攻撃に対する報復である。またの見方によれば、このような大規模攻撃には相当な準備期間が必要であり、単に冬に間に合わなかっただけ。ウクライナの電力網の破壊という既定路線を、ただ可能になったタイミングで実施しただけであると。
・今後
今回はちょうど金曜の攻撃で、概して週末は電力需要が低下するため、月曜が正念場となる。電力使用に一定の制限(計画停電等)がかかる可能性あり。今回はブラックアウト(全土停電)は回避できた。しかし、米国の軍事支援の遅れで地対空ミサイルが枯渇しかかっていることは周知の事実である。今回のような攻撃が今後も続き、かつ西側パートナーの支援が得られないならば、ブラックアウトは必定である。――と、政府内の消息筋。УП(17:30)
・語録
シュムィガリ首相:攻撃は第一にウクライナのエネルギー部門を狙ったものだった。ドニエプル水力発電所をはじめ、約20の変電所・発電所が損傷した。だが大事なのは、エネルギーシステムが全体として安定性を保っていることだ。強力な防護を築いたお陰で我々は攻撃を耐えた。出力不足は起きていないし、起きる予兆もない。電力供給の再開は3段階で行われる――⑴暖房・水道・病院など重要インフラ、⑵家庭、⑶工場。この完了には数日がかかる。УП(16:50)
ゼレンスキー:本日未明の攻撃は社会と生活に構造的損害を与えることを意図した極めて陋劣なテロそのものである。パートナー諸国に防空装備の供与を求める。УП(21:09)

■オデッサ
晩方にもオデッサ州に弾道ミサイル「イスカンデル」が飛んできた。インフラ破壊が狙いとされる。着弾地で火災。人的被害はなし。УП(19:28)

■米国がウクライナに「ロシアの製油所を攻撃するの止めろ」と言った?
英紙フィナンシャル・タイムズによれば、米国からウクライナ(特に情報総局)に対し「ロシアの精油所その他エネルギーインフラに対する攻撃を控えよ」との勧告が行われたらしい。理由は2つ、製油所への攻撃が、①油価の世界的高騰を引き起こしかねないから。燃料価格の高騰が米国の大統領選挙に悪影響を及ぼす可能性もある。②ロシアが対抗措置として何をしてくるか分からない。たとえばカザフスタンからロシアを通って世界の市場へと石油を輸出するパイプラインなど、西側諸国の利益に直結する重要なエネルギーインフラに対し何らかの行動を起こす可能性がある。УП
これに対しポドリャク大統領府長官顧問:米政府から公式な要請は受けていない。開戦2年、ウクライナの戦争遂行条件について指図することなどもはや誰にもできない。ウクライナは戦時国際法の枠内で敵の戦争遂行能力を減殺することができる。燃料は戦争遂行の基礎的手段だ。ウクライナは燃料インフラの破壊を続ける。ロシアがウクライナの死活的インフラを破壊するのはジェノサイド(虐殺)の意思によるが、一方のウクライナは戦争インフラを破壊しているだけだ。УП

■モスクワでテロ
モスクワ郊外の大型コンサートホールでテロがあり少なくとも40人が死亡した。覆面集団がライブの観客を銃で無差別に殺害したのち放火、コンサートホールは崩落した。УП
ウクライナ情報総局:プーチンの特務機関による意図的な扇動である。プーチンは同様の自国民に対する犯罪でキャリアをスタートさせた(※Wiki「ロシア高層アパート連続爆破事件」参照)。同じことをしてキャリアを閉じることを望んでいるようだ。УП
ウクライナ大統領府長官顧問ポドリャク:ウクライナが本件に完全に無関与であることを断言する。ウクライナは戦場でロシア正規軍と戦うのに手一杯であり、かつて一度として戦争の手段としてテロを利用したことはない。大規模動員をかけてロシアの軍国化を推し進め、またウクライナの民間人を標的としたミサイル攻撃を正当化するため(に政権が仕組んだ自演)であろう。УП

■「戦争のスポンサー企業」リストの件
ウクライナが「戦争のスポンサー企業」リストの公表を停止することを決めたのは、中国やフランスをはじめとする諸国からの圧力があったためだそうだ。ロイターが消息筋の情報として報じた。
当該ブラックリストには法的効力こそないもののの、リストに掲載された約50社のレピュテーション(声望)にとっては打撃であった。だが戦争3年目、ウクライナは諸国からの支援を従前の水準で維持することが難しくなっている。そこで、特に中国に対する一種の譲歩として、リストの削除を決めたと。УП

3月21日

■キエフに猛攻
21日未明、首都キエフが一挙31発のミサイル(イスカンデルとキンジャル各1含む)攻撃を受けた。だがウクライナの都市防空能力もさるもの、全弾を撃滅。ただし撃墜片で十数人の負傷者が出た。また家屋70棟余りが損傷。УПУПУП

狙いは情報総局の破壊だった可能性がある。ほぼ全弾が情報総局施設(複数)に向かっていた、と当の情報総局。УП
※ウクライナ国防省情報総局は現在さかんに行われているロシア国内の製油所に対するドローン攻撃の事実上の実行主体である。報復、ないし、一挙壊滅を本気で狙ってきたか。

■吉報1:東部
スィルスキー総司令官によれば「ウクライナ軍はウクライナ東部の情勢を安定化することに成功した」。УП

■吉報2:米国
米議会下院で多数派の共和党がついにウクライナ支援を容認か。ジョンソン下院議長「24年度予算については既にほぼ合意が成立しており今週中(22日)にも採決が行われる。その後は遅滞なくパートナー諸国(※ウクライナ、イスラエル含む)への追加支援の問題に移る」。ただし議会下院は22日より2週間の休暇に入る(またかよ)ため、ウクライナ支援法案の審議は4月8日に持ち越される(何が「遅滞なく」)。だが「我々はアメリカが世界で演じる役割を理解している。同盟諸国を支持し、テロリストと独裁者どもが世界を闊歩するのを許さない姿勢を強く打ち出す重要性を理解している」等の言葉はいかにも期待を抱かせる。УП

■世論調査①ウクライナと汚職
国家汚職対策局が昨年11‐12月に行った調査では、直近12か月で国内の汚職が悪化したと考えるウクライナ市民は全体の61.2%に及ぶ(前年の2倍強)。実業界に限っては46.3%(やはり22年の約2倍)。
市民の汚職体験で多いのが交番、建設や土地関係、医療、電気ガス上下水道の契約ないし修理。実業界では税関、治安機関、建設・土地関係、電気・ガス・水道供給。УП
では、汚職の克服について責任を負うのは誰か。市民間と実業界でそれぞれ調べたところ、大統領および大統領府(市民47.5%、実業界48.3%)国家汚職対策室(30.9%、32.4%)最高会議(28.3%、18.1%)国家汚職防止局(28.3%、18.1%)内閣、省庁(21.8%、25.1%)УП

■世論調査②モルドヴァ
隣国モルドヴァで行われた世論調査にガッカリ。УП
「ロシアが占領地を維持した状態で戦争は終結すべきだ」賛成55%・反対35%
「ウクライナとの戦争でロシアを打ち負かすことは不可能」賛成48%・反対36%
「ロシアとプーチンはウクライナにおける戦争で所期の目的を達成しつつある」賛成43%・反対35%
「ウクライナは勝利を収めるまで戦い続けなければならない」賛成43%・反対49%
「国際社会はウクライナにより多くの軍事援助を行うべきだ」賛成36%・反対58%

3月20日

■「戦争の国際スポンサー」リストの廃止
ウクライナ政府が「戦争のスポンサーたる国際企業」のリストの廃止を決めた。パートナー諸国の求めを容れての措置。良かったね、JT(日本たばこ)。同社の子会社(JTインターナショナル)はロシア人に煙草を売りさばいてロシアの国家歳入に大きく貢献し、ウクライナ政府から「戦争のスポンサー」に指定されていた。二重に救いようがない。その扱う製品はそもそもが人間の健康をむしばむものであり、しかもその売り上げでロシアのウクライナ破壊を支えているのだから。「毒を売った金でミサイルを作らせてる」と言って誇張がない。JT職員は恥じよ。リストがなくなったとて、同社が文字通りの「戦争のスポンサー」である事実は変わらない。(人たちよ、この機会だ、煙草吸うのやめたらどうか?)

詳細:これまでウクライナ国家汚職対策局のサイトに「戦争の国際スポンサー」のリストが公表されていた。これにつきパートナー諸国の外交当局から①当該リストは法的根拠を欠いていること②当該リストが「ロシアの侵略に対抗するための重要な決定を採択することを妨げている」こと(?)について度重なる申し立てがあり、ウクライナ政府が国家安全保障会議・保安庁・汚職対策局・最高検察庁の代表者を交えて討議した。結果、①こうした情報が法的規制なしに国家の名で発表されている状況は問題である②制裁に関する情報は既に国家制裁目録に網羅されている、との判断から、当該リストの廃止が決まった。УПУП
色々いうけど、結局は、大企業からの圧力に窮した各国政府があれやめてくれんかねとウクライナに頼み、ウクライナが各国との関係維持を優先してこれを了承したということだろう。

■ローマ教皇
「ウクライナよ白旗あげる勇気をもて」発言で炎上したローマ教皇が、またウクライナ戦争に言及し、ロシアとの和平交渉を呼び掛けた。УП

■ドローン200万機
フョードロフDX相:ウクライナは西側政府からの追加的な財政支援があれば年200万機(現在の2倍)のドローンを生産できる。今や国内に200社以上あるドローン製造企業の生産力をフルに動員すれば年産200万機が可能なところ、単純に資金が不足しているため、その半量ほどの契約しか政府は結べていない。УП

■地名
第何次目になるのだろう、またぞろ、ロシアとかソ連にちなむ地名をそうでないものに改称しようというキャンペーン。最高会議が新たなそれを準備している。今度の改名対象にはオデッサ州のユージヌィ市も含まれている。同市はポルト・アネンタリ(Порт-Аненталь)に改称されるという話。
ユージヌィはロシア語で「南」の意味、アネンタリは今のユージヌィ市あたりにかつてドイツ人入植者たちが造った集落の名だそうだ。「南」という言葉じたいにイデオロギー上問題のある含意はない。単純に「入欧」に力点を置いた改称ということになる。УПUNIAN

■世論調査:正義とは
「ウクライナを攻撃した戦争犯罪人の逮捕と裁判なしに正義は達成できない」と考えるウクライナ人は全体の75%に上る。社会調査グループ「レイティング」が昨年10月下旬に行った調査(の結果がこのほど発表された)УП
・正義の実現のためにウクライナ政府および社会が注力すべき優先事項は?
「犯罪者に罪を償わせること」55%
「占領者どもと協力関係にあった者の排除を通じた政権浄化」46%
「行方不明者の発見と国外追放者の復帰」30%
「犯罪の立件と賠償金の取得」約25%
「制裁の強化とロシア国債およびロシア人資産の凍結」約20%。
・どのような条件でなら恩赦(刑の免除)が可能か?
「その犯罪に殺人が含まれていない場合、あるいは、ウクライナの復興のために有益な労働を実行した場合」40%
「重要かつ真実らしい自供、あるいは、被害者への賠償金支払い」約25%
「具体的犯罪に関する自供」20%
「いかなる条件でも戦争犯罪を犯した者に恩赦は与えない」14%

■不正の論証
Meduzaが何やら複雑な数理分析を行って、先般ロシアで行われた「大統領選挙」で史上空前の規模の票数操作が行われていたことを突き止めた。省く。Meduza

3月19日

■あぶら燃やす
ロシア当局発表:ロシアの製油所等に対するドローン攻撃を防ぐため、「パンツィーリ」等の防空兵器の配備を進めている。УП
ウクライナ情報総局:「パンツィーリ」はとっくに配備されており、今回の発表は単に社会の不満を抑えるための欺瞞。石油関連施設の爆発炎上は今後も続きます。УП

■入り込んでかき回す
情報総局のユソフ報道官がテレビ放送で、国境のロシア側に侵出したロシア人部隊(ロシア義勇兵団、自由ロシア、シベリア大隊)をウクライナが「支援している」ことを認めた。「当該部隊はこれまで多くの戦線でウクライナ側に立ちウクライナ領土の解放のために勇敢に戦ってくれた。その彼らがロシアをプーチンから解放するために戦うなら、ウクライナがそれを助けるのは義務ですらある」УП

■正しく使わせる
米国防総省が新たに「Ukraine Oversight」なるウェブサイトを立ち上げた。米国からウクライナへの軍事支援が正しく使途通りに使われているかの監査情報がまとまっている。狙いは、米国内の対ウ支援懐疑派にくすぶる「米国民の血税が腐敗したウクライナ政治指導部に横領されているのではないか」「米国の兵器がウクライナ軍に目的外使用されているのではないか」といった疑念を払拭し、さしあたり米議会下院のウクライナ支援予算承認を実現すること。УП

■露「大統領選」その後①トルコ
トルコのエルドアン大統領がプーチンに祝電を送った。「トルコ=ロシア二国間関係の発展に期待する。トルコはウクライナに関する交渉のテーブルへの復帰についてあらゆる好適な役割を演ずる用意がある」УП
※トルコはウクライナの領土一体性を支持しウクライナに軍事・政治的支援を行う一方でロシアとの良好な関係を維持し対露制裁には反対の立場。交渉による戦争終結を是とする。

■露「大統領選」その後②УП
УП(ウクライナ・プラヴダ)は以後プーチンを「大統領」とは呼ばないそうだ。そのことには根拠も意義も十分にあると。УП
・根拠A:主論
УП編集部は、プーチンは法的正当性を失い、もはや国際的に認められたロシアの指導者ではないと考える。理由は①自身に都合のよい強引な改憲による3期目であること②長期にわたる組織的な対抗馬排除が行われたこと③電子投票や期日前投票(改竄が容易とされる)が実施されたこと。数理モデルに基づく調査では票数の3分の1~半分が水増し分とされる④占領地(クリミア及びウクライナ東部南部4州)における投票の強行。現地ではウクライナ市民に対する裁判なき処刑・恣意的逮捕・拷問が日常化しており、暴力を背景にした強制や、監督の目が行き届かないことに乗じた大幅な水増しが疑われる。占領地におけるプーチン再選賛成票は9割近いそうだが、いくらなんでも。⑤プーチンはウクライナ児童の誘拐犯として世界124か国が加盟する国際刑事裁判所より逮捕状を出されている。また国際法廷での判決こそなけれ、プーチンが侵略の罪について有責であることについては政治的・社会的に十分な合意がある。これら事由を総合すれば、プーチンは法的正当性を喪失した、と考える根拠は十分である。
・根拠B:傍論
我々はウクライナのメディアである。被占領地において、同胞たるウクライナ人が、ロシア人に銃口を突き付けられて投票を行い、それで「再選」なった人物を、どうして大統領などと呼べるか。また、複数の西側パートナー諸国から「プーチンは法的正当性を喪失した」との声明が出ていることも見逃せない。とりわけドイツ外務省はプーチンを大統領と称号することを停止した。

・結論その1
以上のことからУПは、以後プーチンについて、「大統領」との呼称を用いない。では、日々の報道において、その肩書はなんとするか?

・ベラルーシのケース①一致点
参照されるのはベラルーシのケースである。2020年のベラルーシ大統領選挙は事前・最中・事後にわたる膨大な不正にまみれた。これによりベラルーシの独裁者は合法性を失ったとの判断から、УПは他のウクライナメディアに先駆けて用語の改訂を宣言し、「自称大統領」との呼称を用い始めた(現在も用いている)。民衆の選んだ大統領ではない、という意味がここには込められている。この立場はウクライナ国内のジャーナリズムに広く支持され、多くの政治家にも踏襲され、ウクライナ外務省もその形式を採用するに至った。
・ベラルーシのケース②相違点
とはいえ、2020年ベラルーシと2024年ロシアには大きく異なる点がある。前者においては空前の規模の市民抗議が行われ、ピーク時は実に100万を超える有権者が街路に出て行進した。ルカシェンコは警察国家にものを言わせてこれを弾圧、3万5000人を逮捕し、「再選」を既成事実として、独裁と専制を強化した。これにより、「もし自由な投票と誠実な読票が行わればルカシェンコは再選されなかったのではないか」「ルカシェンコと国民は分離できる、あるいは、分離すべきなのではないか」という強い疑義が生じた。これがルカシェンコを「自称大統領」と呼ぶことの根拠である。
一方、今度のロシアではどうだろう。プーチンは結局のところ、多くのロシア国民の前に、疑いなき権威を保っている。不正選挙に抗議する100万人行進も見られなかった。ロシアの暴力はベラルーシの10倍であるとしてもだ。投票率77%だのプーチン得票率87%だのという天文学的数字はフィクションに違いないが、マイナス数%の得票は果たしていただろう。公正な票読みが行われいたとしても問題なくプーチンは当選していた。ロシア国民はプーチンを支持している。また、ロシア国民がウクライナ侵略戦争を支持していることを示す傍証も夥しい。これは「ロシア人のウクライナに対する戦争」なのである。「プーチンの戦争」などではない。したがって、ベラルーシのときのように統治者と国民を分離するような呼称は、ここでは正しくない。ゆえに我々はプーチンを「自称大統領」とは呼ばない。大統領たる正当性は喪失するが、ロシアという国のリーダーではあり続けるのだ。

・結論その2
というわけで、УПは以後、プーチンをこう呼ぶ。

■ロシアの統治者(правитель РФ)
■ロシアの指導者(руководитель РФ)
■ロシアのリーダー(лидер РФ)
■ロシアの首領(глава РФ)
■ロシアの事実上のリーダー(де-факто лидер РФ)

プーチンの就任式は24年5月7日だが、それ以後も上記呼称は変わらない。ただ、就任後に現在の内閣を解散して新たに首相や国務大臣を任命する際には、それら役職も連動して法的正当性を失う。よって、新たな政府は「事実上の政府(де-факто правительство)」「非合法政府(нелегитимное правительство)」等と呼び、新たな大臣は「非合法大臣(нелегитимный министр)」または、たとえば「ロシア外交部門トップ(глава российской дипломатии)」などとその機能で呼ぶ。こうした回りくどい呼称が不便なことは認めるが、現実をより正確に反映している。

・プーチンを「大統領」と呼ばないことの意義
プーチンの法的に正当な居場所はクレムリンでなくハーグ(国際刑事裁判所の法廷)である。だが国際法にはトロイカという概念があり、大統領と首相と外務大臣はその合法的な在任中、不逮捕特権を有する。これは絶対的なものではないが、克服するのが困難な障壁ではある。ロシア・ファシズムのゲッベルスたるセルゲイ・ラヴロフ(現ロシア外相)が逮捕を恐れず世界を飛び回っていられる理由もこれである。だがもしプーチンとその政府から正当性のヴェールを剥ぎ取ることができれば、もはや不逮捕特権は認められない。ウクライナ侵略をめぐる特別法廷の開廷が一歩近づく。むろん容易なことではない。だがウクライナが始めなければ誰が始めるか。よって、今からでもよし、今でなければ5月7日(プーチンの「大統領」就任式)からでもよし、プーチンの非合法性認定を、УПだけでなく、全ウクライナメディアが共有してくれることを望む。ウクライナ大統領や外務省の公式声明にも同様のことを望む。
また、もしプーチンの非合法性が広く認識されれば、国家あるいは民族としてのウクライナを根絶やしにすることを目論む人物との「交渉」などは意味を失う。ウクライナがその正当性を真っ向から否定している人物といかなる合意を結ぶことも不可能だから。

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